特許第6465711号(P6465711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465711
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20190128BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190128BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20190128BHJP
【FI】
   F25B47/02 550H
   F25B47/02 570M
   F25B1/00 101E
   F24F11/41 200
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-62023(P2015-62023)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-180564(P2016-180564A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】濱島 哲磨
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−159329(JP,A)
【文献】 特開昭62−200144(JP,A)
【文献】 特開2003−302131(JP,A)
【文献】 特開平07−027453(JP,A)
【文献】 特開平08−061813(JP,A)
【文献】 特開2002−107014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
F24F 11/41
F25B 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、
前記圧縮機、前記四方弁、前記室外熱交換器、前記膨張弁、及び前記室内熱交換器を順次接続する冷媒配管と、
前記室外熱交換器と前記膨張弁との間の冷媒配管と、前記圧縮機の吸込み口と前記四方弁との間の冷媒配管とを接続し、開閉機構が設けられたバイパス配管と、
室外温度を検知する室外温度センサと、
前記圧縮機、前記四方弁、前記膨張弁、及び前記開閉機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、除霜運転時、前記室外温度センサにより検知された室外温度が所定温度以上のときに前記バイパス配管の開閉機構を開き、前記室外温度が前記所定温度を下回るときに前記開閉機構を閉じることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器、室内熱交換器、膨張弁に流すとともに、四方弁により冷媒が流れる向きを変えることで暖房運転と冷房運転とを切り換え可能な冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
冷凍サイクル装置は暖房運転時に室外熱交換器の温度が低下すると、室外熱交換器が有する多数のフィンに霜が付き、室外熱交換器の熱交換性能が低下する。このため、室外熱交換器に一定以上の量の霜が付いたことを検出したら、冷凍サイクル装置の制御部は、四方弁により冷媒が流れる向きを冷房運転のように切替える。冷媒により室外熱交換器を加熱し、室外熱交換器に付いた霜を溶かす除霜運転(リバース除霜)を行う。
【0004】
除霜運転中は、暖房運転が中断されるため、除霜運転に要する時間を短縮することが望ましい。
そこで、室外熱交換器と膨張弁との間の冷媒配管と、圧縮機の吸込み側と四方弁との間の冷媒配管とをバイパス配管で接続し、除霜運転中にこのバイパス配管を介して高温の冷媒を圧縮機に吸込ませて圧縮機の吸込み圧力を上昇させ、圧縮機から吐出される冷媒の温度を上げることにより、除霜運転を効率良く行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−159329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、外気温度が例えば−15℃を下回るような極寒の環境下でも暖房運転が可能な冷凍サイクル装置が望まれており、冷凍サイクル装置の使用条件を低温側に拡大する傾向にある。
しかしながら、極寒の環境下で上述のようなバイパス管を用いた除霜運転を行うと、大量の液冷媒が圧縮機に吸込まれ、圧縮機の損傷を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、極寒の条件下においても暖房運転が可能な冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、これらを順次接続する冷媒配管と、室外温度を検知する室外温度センサと、制御部を備える。室外熱交換器と膨張弁との間の冷媒配管と、圧縮機の吸込み口と四方弁との間の冷媒配管とを開閉機構が設けられたバイパス配管により接続する。制御部は、除霜運転時、室外温度センサにより検知された室外温度が所定温度以上のときにバイパス配管の開閉機構を開き、所定温度を下回るときは開閉機構を閉じる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の冷凍サイクル装置を示す概略構成図。
図2】実施形態の冷凍サイクル装置における暖房運転開始制御のフローチャート。
図3】実施形態の冷凍サイクル装置における除霜運転制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態においては、冷凍サイクル装置として空気調和装置を例に説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置(空気調和装置)100は、圧縮機1と、四方弁2と、室外熱交換器3と、膨張弁4と、レシーバタンク5と、室内熱交換器6と、アキュムレータ7とが冷媒配管Pを介して順次接続されて構成されるヒートポンプ式の冷凍サイクルを備える。この冷凍サイクルサイクルには、R32冷媒が充填される。
【0012】
室外熱交換器3と膨張弁4との間の冷媒配管P1と、四方弁2とアキュムレータ7との間の冷媒配管P2とは、バイパス配管8により接続される。バイパス配管8は、その中間部にバイパス配管8を開閉する開閉弁(開閉機構)9と流量調整用のキャピラリチューブ(減圧器)10とを備える。
【0013】
冷房時は、実線矢印で示すように、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2、室外熱交換器(凝縮器)3、膨張弁4、レシーバタンク5を通って室内熱交換器(蒸発器)6に流れ、その室内熱交換器6から流出する冷媒が四方弁2、アキュムレータ7を通って圧縮機1に吸込まれる。暖房時は、破線矢印で示すように、四方弁2の流路が切換わることにより、圧縮機1から吐出される冷媒が室内熱交換器(凝縮器)6に流れ、その室内熱交換器6から流出する冷媒がレシーバタンク5、膨張弁4、室外熱交換器(蒸発器)3、四方弁2、アキュムレータ7を通って圧縮機1に吸込まれる。
【0014】
室外熱交換器3および室内熱交換器6は、所定ピッチを有して並設され、互いの隙間に熱交換空気を流通させる複数枚の伝熱フィンと、これら伝熱フィンを貫通して設けられ、内部に冷媒を導通させる伝熱管とを具備するフィンチューブ熱交換器である。
室外熱交換器3の近傍に室外ファン11が配置され、室内熱交換器6の近傍に室内ファン12が配置される。
【0015】
膨張弁4は、入力される駆動パルス信号のパルス数に応じて開度が連続的に変化するいわゆるパルスモータバルブである。
レシーバタンク5は、冷凍サイクル内で発生する余剰冷媒を溜める冷媒量調整容器であり、アキュムレータ7は、冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離する気液分離器である。
【0016】
室外熱交換器3の暖房時の入口側に冷媒温度センサ15が取り付けられる。四方弁2とアキュムレータ7との間の配管P2に冷媒温度16が取り付けられる。室外熱交換器3の近くの室外空気吸込側に室外温度センサ17が取り付けられる。
冷媒温度センサ15は、暖房時に室外熱交換器3に流入する冷媒の温度TEを検知する。冷媒温度センサ16は、圧縮機1に吸込まれる冷媒の温度TSを検知する。室外温度センサ17は、室外熱交換器3の近傍の室外空気の温度Toを検知する。
【0017】
圧縮機1のモータにインバータ(図示しない)が接続される。インバータは、交流電源の電圧を直流変換し、その直流電圧を所定周波数Fの交流電圧に変換して出力する。この出力周波数Fに応じた回転数で圧縮機1のモータが動作する。
【0018】
圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、膨張弁4、レシーバタンク5、アキュムレータ7、バイパス配管8、開閉弁9、キャピラリチューブ10、室外ファン11、およびインバータが室外ユニットAに収容され、室内熱交換器6および室内ファン12が室内ユニットBに収容される。これら室外ユニットAおよび室内ユニットBに、制御部20が接続される。
【0019】
制御部20は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、主要な機能として次の(1)〜(2)の制御手段を含む。
(1)冷凍サイクル装置の暖房運転開始時、温度センサ17の検知温度Toと第1の設定値Tos1との比較により、通常の暖房運転を行うか、通常の暖房運転に先立ち所定時間tsが経過するまで冷房サイクルにて運転を行うかを選択する第1制御手段。
(2)冷凍サイクル装置の除霜運転開始時、温度センサ17の検知温度Toと第2の設定値Tos2との比較により、バイパス配管8の開閉弁9を開いて除霜運転を行うか、開閉弁9を閉じて除霜運転を行うか、を選択する第2制御手段。
【0020】
つぎに、制御部20が実行する制御を図2のフローチャートを参照しながら説明する。
冷凍サイクル装置100の暖房運転開始に際し(ステップS1のYES)、制御部20は、外気温度センサ17の検知温度(外気温度)Toと第1の設定値Tos1とを比較する(ステップS2)。
外気温度Toが第1の設定値Tos1(例えば−5℃)以上の場合(ステップS2のYes)、制御部20は、通常の暖房運転を開始し(ステップS3)、暖房運転開始制御を終了する。
【0021】
一方、外気温度Toが第1の設定値Tos1(例えば−5℃)未満の場合(ステップS2のNo)、制御部20は、四方弁2を冷房運転と同じ位置にして冷房サイクルで運転を開始する(ステップS4)。
そして、制御部20は、タイムカウントtを開始する(ステップS5)。タイムカウントtが一定時間tsに達していなければ(ステップS6のNO)、制御部20は、タイムカウントtを継続する(ステップS5)。タイムカウントtが一定時間tsに達していれば(ステップS6のYES)、制御部20は、圧縮機1を停止し、四方弁2を暖房運転の位置に切り換える(ステップS7)。そして、制御部20は、通常の暖房運転を開始し(ステップS3)、暖房運転開始制御を終了する。
【0022】
外気温度が低い環境下においては、圧縮機1、室外熱交換器3、アキュムレータ7等の室外ユニットAに収容される部品において冷媒が寝込みやすい。この冷媒が寝込んだ状態では、外気温度も低く、冷媒の圧力も低い。このとき、暖房運転で圧縮機を起動すると、吸込み圧力が負圧となりやすく、圧縮機1の摺動部への冷凍機油の供給が阻害され、圧縮機1の損傷を引き起こすおそれがある。
そこで、上記のように、外気温度Toが第1の設定値Tos1未満の低外気温時は、所定時間が経過するまで冷房サイクルで運転を行い、冷凍サイクル内を予熱する。冷房サイクルで運転を行うことにより室外熱交換器3が加熱され、暖房運転に切り換えたときに圧縮機1の吸込み圧力が負圧となりにくくなり、負圧による圧縮機1の損傷を防ぐことができる。
なお、制御部20は、暖房運転開始前の冷房サイクル運転時は、除霜運転のときと同じように室内ファン12を停止させ、室内に冷風が送風されないようにする。
【0023】
つぎに、制御部20が実行する除霜運転時の制御について図3のフローチャートを参照しながら説明する。
冷凍サイクル装置100が暖房運転を開始し、除霜条件が整う(ステップS11のYES)と、制御部20は、外気温度センサ17の検知温度(外気温度)Toと第2の設定値Tos2とを比較する(ステップS12)。なお、制御部20は、冷媒温度センサ15のより検知される冷媒温度TE、冷媒温度センサ16により検知される冷媒温度TS、室外温度センサ17により検知される室外温度Toに基づき除霜が必要か否かを判断する。
外気温度Toが第2の設定値Tos2(例えば−15℃)以上の場合(ステップS12のYes)、制御部20は、バイパス配管8の開閉弁9を開いて(ステップS13)、除霜運転を開始する(ステップS14)。除霜運転に際し、制御部20は、四方弁2を暖房運転の位置から冷房運転と同じ位置に切換える。
【0024】
冷凍サイクル装置100が除霜運転を開始し、除霜運転終了条件が整うまで除霜運転を継続し(ステップS15のNO)、除霜運転終了条件が整うと(ステップS15のYES)、制御部20は、バイパス配管8の開閉弁9の開閉状態を判断する(ステップS16)。
開閉弁9が開いていれば(ステップS16のYES)、開閉弁9を閉じて(ステップS17)、除霜運転を終了する(ステップS18)。ステップS16において開閉弁9が閉じていれば、ステップS18に進んで除霜運転を終了し、除霜運転制御を終了する。
【0025】
上記のように、除霜運転時に、バイパス配管8の開閉弁9を開くことで、室外熱交換器3を流出した高温の冷媒の一部が、膨張弁4および室内熱交換6をバイパスして圧縮機1に吸込まれる。これにより、圧縮機1の吸込み圧力および冷媒の温度が高くなり、圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなる。圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなることで除霜時間を短縮することができる。
しかしながら、外気温度が−15℃を下回るような極寒の環境下でバイパス配管8の開閉弁9を開いて除霜運転を行うと、バイパスされる液冷媒の量が多くなり、圧縮機1が液圧縮を起こし、圧縮機の損傷を引き起こすおそれがある。
そこで、上記のように、外気温度Toが第2の設定値Tos2未満の極寒の環境下では、除霜運転時にバイパス配管8の開閉弁9を閉じる。これにより、圧縮機1における液圧縮を防ぐことができる。
【0026】
以上説明した実施形態によれば、外気温度に応じてバイパス配管8の開閉弁9の開閉を制御することにより、極寒の条件下においても暖房運転が可能な冷凍サイクル装置を提供ことができる。
【0027】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…圧縮機、2…四方弁、3…室外熱交換器、4…膨張弁、5…室内熱交換器、8…バイパス配管、9…開閉弁(開閉機構)、17…室外温度センサ、20…制御部、100…冷凍サイクル装置(空気調和装置)
図1
図2
図3