(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465736
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】吸熱用タオル
(51)【国際特許分類】
A47K 10/02 20060101AFI20190128BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
A47K10/02 C
D06M15/03
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-90840(P2015-90840)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-52499(P2016-52499A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0116384
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514202114
【氏名又は名称】ソン、デプ
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100181582
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 直斗
(74)【代理人】
【識別番号】100195109
【弁理士】
【氏名又は名称】八神 真由
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ソン、デプ
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/062731(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3074591(JP,U)
【文献】
特開平07−178008(JP,A)
【文献】
特開平06−049771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/02
D06M 13/00−15/715
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の水分と結合して吸熱反応を起こして、熱感を除去するタオルであって、
高吸水性と伸縮性を有する単一の生地からなり、吸熱機能を有するタオル体と、
前記タオル体に設けられ、吸熱機能を促進する多数の貫通口とを含み、
前記多数の貫通口は、前記タオル体の織造時又は織造後、前記タオル体の幅方向に沿って、長辺が配置された矩形状に形成され、前記タオル体の幅方向よりも長手方向に、より多く設けられて、前記タオル体は、長手方向に伸縮可能であり、
前記矩形状は縦の長さが横の長さよりも長く形成され、
前記タオル体の縁部には、シーム部材が設けられないことを特徴とする吸熱用タオル。
【請求項2】
前記貫通口は、前記長手方向に等しく設けられることを特徴とする請求項1に記載の吸熱用タオル。
【請求項3】
前記貫通口は、前記長手方向に互いにずらして設けられることを特徴とする請求項1に記載の吸熱用タオル。
【請求項4】
前記タオル体の表面には、発光部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の吸熱用タオル。
【請求項5】
前記発光部は、ストレート構造であることを特徴とする請求項4に記載の吸熱用タオル。
【請求項6】
前記発光部は、波模様であることを特徴とする請求項4に記載の吸熱用タオル。
【請求項7】
前記タオル体は、蛍光染料によって染色されることを特徴とする請求項1に記載の吸熱用タオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱用タオルに関し、特に、人体の水分と結合して吸熱反応(endothermic reaction)を起こして、熱感を除去すると共に、水分を早い時間内に乾燥して、使用者にヒンヤリ感を提供することができる吸熱用タオルに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、夏季のバカンス地、野外でのスポーツ観覧、野外の作業場などにおいて、太陽光の露出による冷熱感を提供するためのタオル又は頭巾を水に濡らして、使用者の首の周囲に着用することで、ヒンヤリ感を提供する方法が使用されている。
【0003】
ところが、このような方法では、タオル又は頭巾が湿った状態で使用されると、皮膚に水気が残って、使用者に不快感を誘発することだけでなく、衣類などを濡らすという不都合があった。
【0004】
また、皮膚にヒンヤリ感を与えるために、医薬部外品として使われる湿布剤や化粧品には、メントール、ソルビトル、薄荷油などを少量含有しており、これは、皮膚に清凉感を付与する機能はするが、実際に皮膚の温度を低くすることではなく、また、多量使用すると、皮膚にひどい刺激を誘発することと知られており、特に、顔の使用には制約が多かった。
【0005】
また、ヒンヤリ感を提供する方法として、使用者と接触するとき溶融するローションを使用することが知られている。溶融熱は、熱を使用者から奪って、ローションを溶融することに用いられる。溶融過程に関連する温度変化は全くなく、使用者から熱を奪うので、皮膚は実際に冷却される。すなわち、吸熱物質を用いて、使用者に冷熱感覚を提供する物質が開発されつつある。
【0006】
このような物質の他に、最近には、PVC素材の優れた吸水性をもった生地を用いて、使用者の身体に触れる部分の体温を低くし、高くなった水分は、生地の外部へ循環させるタオル(いわゆる‘クールタオル')が開発されて市販している。
【0007】
例えば、
図1に示しているように、一般の生地よりも水分を約1.5倍吸収するハニカム構造の生地を用いて、使用者に冷熱感を与えるタオルも市販されている。
【0008】
一方、吸熱反応を用いて、使用者に冷熱感を与える技術の一例が、下記の文献1〜3に示されている。
【0009】
例えば、日本特開1997-170108号公報(1997.6.30公開)には、炎天下のスポーツ観戦応援者の後頭部に着用して直射日光を遮断し、蒸発熱で着用部分のヒンヤリ感を保つため、吸収ポリマーなどの吸収材料を内蔵した頭巾について示されている。
【0010】
また、日本特開第2000-95679号公報(2000.4.4公開)には、屋外での作業やスポーツのとき、清凉感を長い時間持続するため、メントール及びペパーミントからなる香料、クーリング剤、アルコールなどを希釈したクーリング液を、衣服本体の収納部に含浸するクーリング液について示されている。
【0011】
更に、国際公開番号WO2005/068916(2005.7.28公開)には、シートの温度が1℃以上増加又は減少するように、シートが外部適用の非熱的刺激を受ける場合、発熱又は吸熱反応する1種以上の化学剤を含有した吸水性繊維シートについて示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述したような文献に示されている技術では、化学剤や吸収材を用いるため、その使用が煩雑であるという不都合があった。また、このような化学剤や吸収材を繰り返して使用するか、露出する場合、人体に有害であるという不都合もあった。
【0013】
また、前記のようなタオルを使用する場合、タオルの発熱量が低下するか、頻繁な使用によって、タオル自体が伸びるか、悪臭を誘発するという問題があった。すなわち、
図1のようなタオルを洗濯して繰返し使用すると、タオル全体の伸縮性が低下し、水気を吸収する機能が低下して、繰返し使用が困難であるという問題があった。
【0014】
更に、前記のようなタオルを使用者の皮膚と衣服との間、例えば、使用者の首とシャツとの間で使用する場合、シャツによってタオルが押されて、タオルの発熱機能が低下するだけでなく、シャツが湿るという問題もあった。
【0015】
なお、
図1の構造では、タオルの発熱及び吸熱機能によって、タオルの表面と裏面を、使用者が視覚的に区分して使用しなければならないという不便さもあった。
【0016】
上述した従来技術のタオルにおいては、二重構造からなり、吸熱機能を最大限に発揮し、且つ、タオルに吸収された水分の量を最小にするため、タオルを手で絞った後、タオルを叩くか、回して水分を除去する場合、周辺の人に不快感を与えるという問題もあった。
【0017】
一方、従来技術では、タオルを二重で製作するか、タオルの縁部で糸がほつれることを防止するために、縫製によりシーム(Seam)を設けることにより、製造コストが増えるだけでなく、使用時に、シーム部分が皮膚と接触して、使用者に不快感を与えるという問題もあった。
【0018】
本発明の目的は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、使用者の不快感を取り除く吸熱用タオルを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、使用時において、周辺の人に被害を与えない吸熱用タオルを提供することである。
【0020】
また、本発明の他の目的は、製造過程を単純化して、製作コストを節減することができる吸熱用タオルを提供することである。
【0021】
更に、本発明の他の目的は、照明のない状態で、使用者を容易に識別することができる吸熱用タオルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、本発明による吸熱用タオルは、人体の水分と結合して吸熱反応を起こして、熱感を除去するタオルであって、吸熱機能を有するタオル体と、前記タオル体に設けられ、吸熱機能を促進する多数の貫通口とを含むことを特徴とする。
【0023】
前記タオル体は、長手方向に伸縮可能である。
【0024】
また、前記貫通口は、前記長手方向に等しく設けられる。
【0025】
更に、前記貫通口は、前記長手方向に互いにずらして設けられる。
【0026】
なお、前記タオル体の表面には、発光部が設けられる。
【0027】
また、前記発光部は、ストレート構造である。
【0028】
更に、前記発光部は、波模様である。
【0029】
なお、前記タオル体の縁部には、シーム部材が設けられない。
【0030】
また、前記タオル体は、単一の生地で形成される。
【0031】
なお、前記タオル体は、蛍光染料によって染色される。
【発明の効果】
【0032】
本発明の吸熱用タオルによると、タオル体に多数の貫通口を設けることによって、横方向にのみ伸縮可能であり、吸熱機能を促進することができる。
【0033】
また、本発明による吸熱用タオルによると、タオル体の水分除去が、タオル体を使用者の両手の間で叩くことで済むので、周辺の人に被害を与えることがない。
【0034】
更に、本発明による吸熱用タオルによると、タオル体が単一の生地で形成され、タオル体の縁部には、シーム部材を設けなくても済むので、これによる製造工程を省いて、製作コストを節減することができる。
【0035】
なお、本発明による吸熱用タオルによると、タオル体の表面に発光部を設けるか、蛍光染料で染色することによって、照明のない状態でも、タオル体の着用者を容易に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、従来のタオル構造の一例を示す写真である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【
図3】
図3は、本発明によるタオルの使用例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明によるタオルの使用例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の前記及びその他の目的と新規の特徴は、本明細書の記述及び添付の図面によって、更に明確になるだろう。
【0038】
以下、本発明の構成を、図に沿って説明する。
【0039】
図2は、本発明の第1実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【0040】
図2に示しているように、本発明の第1実施例による吸熱用タオルは、人体の水分と結合して吸熱反応を起こして、熱感を除去するタオルであって、吸熱機能を備えたタオル体100と、前記タオル体100に設けられ、吸熱機能を促進する多数の貫通口101とを含む。
【0041】
前記タオル体100は、高吸水性と伸縮性を有する単一の生地からなり、前記タオル体は、長手方向に伸縮自在に設けられる。すなわち、
図2において、左右方向(長手方向)には、伸縮自在であり、上下方向(幅方向)には、伸縮がほとんど発生しないように設けられる。
【0042】
更に、本発明によるタオル体100に形成された貫通口101は、
図2に示しているように、ほぼ長方形であり、長手方向に等しく形成され、幅方向よりも長手方向に多く設けられるので、長手方向への伸縮に更に効率的である。また、タオル体100に多数の貫通口101を設けることによって、タオル体100で吸熱した熱源を、前記貫通口101を介して効率よく発散することができる。
【0043】
前記貫通口101は、タオル体100の織造時に形成するか、タオル体100の織造後、穿孔又はレーザ加工などの方法で形成することができる。
【0044】
また、本発明によるタオル体100の縁部には、
図2に示しているように、シーム部材を設けなくても済むので、製造工程において、タオル体100を一定の長さ及び幅方向に切断することによって完成される。
【0045】
そこで、従来技術に比べて、簡単な工程で形成することができるので、製造コストを節減することができる。また、タオルを使用者の皮膚と接触して使用する場合における、シーム部材による使用者の不快感を防止することができる。
【0046】
一方、本発明によるタオル体100は、蛍光染料で染色することによって、夜間又は照明のない作業場での使用者を容易に識別することができる。すなわち、照明がなくて使用者を識別し難い空間で、使用者が本発明によるタオル体100を着用、例えば、首まわりに着用する場合、タオル体100の発光によって、第3者が使用者を容易に識別可能であるので、不意の事故を防止することができる。
【0047】
本発明によるタオルは、
図2に示しているように、ほぼ長方形からなるが、これに限られず、ハンカチのような正方形、又は用途によって、三角状又は円状に設けても良い。また、そのサイズも、使用用途によって変わり、特定のサイズに限られるものではない。
【0048】
また、本発明では、前記タオル体100に吸熱効果及び清凉感を与えるようなキシリトール、 (Xylitol)、エリスリトール(Erythritol)、及びこれらの混合物の成分を内蔵する繊維製品を用いても良い。このように、本発明によるタオルでは、キシリトール成分を含有するので、タオルの発熱性を更に向上することができる。
【0049】
また、前記タオル体100に、脱臭機能を有するコーヒー成分を含有する繊維製品を用いても良い。このように、前記タオル体は、脱臭機能を有するので、繰返し使用しても、タオルの悪臭を減少することができる。
【0050】
上述したように形成された本発明によるタオルの使用方法については、
図3及び
図4によって説明する。
【0051】
図3及び
図4は、本発明によるタオルの使用例を説明するための図である。
【0052】
図3に示しているように、吸熱機能を有する本発明のタオル体100は、タオル体100に水分が過度にある場合、使用者の両手で、
図2に示しているタオル体100の両端を取って、使用者の前部で、
図4に示しているように、タオル体100を伸びさせることによって、タオル体100の過度な水分を除去することができる。すなわち、
図3及び
図4の状態を繰り返すことによって、タオル体100における水分の気化機能を最善の状態として、使用者の衣服などが湿らないようにすることができる。
【0053】
このように、タオル体100を長手方向に伸びさせることによって、タオル体100内にある過度な水分は、貫通口101を介して使用者の前部分に落とすことにより、使用者の周辺にある第3者への水分の分散を防止して、周辺の人に被害を与えない。
【0054】
本発明によるタオルの他の実施例について、
図5〜
図7によって説明する。
【0055】
図5は、本発明の第2実施例による吸熱用タオルの平面図であり、
図6は、本発明の第3実施例による吸熱用タオルの平面図であり、
図7は、本発明の第4実施例による吸熱用タオルの平面図である。
【0056】
第2実施例では、
図5に示しているように、貫通口101を長手方向に互いにずらして設けており、その他の構造は、第1実施例と同様であるので、これに関する説明は、省略する。
【0057】
この第2実施例では、貫通口101を互いに長手方向にずらしているので、第1実施例と比較して、幅方向への伸縮を防止し、且つ、長手方向への伸縮を促進することができる。このため、
図3及び
図4に示しているような機能を、より効率よく実現することができる。
【0058】
また、第3実施例では、
図6に示しているように、タオル体の表面に発光部110を設けており、その他の構造は、第1実施例と同様であるので、これに関する説明は、省略する。
【0059】
この第3実施例では、前記第1実施例でのように、タオル体100を蛍光染料で染色することではなく、発光部110を、二重のストレート構造とすることで、第1実施例と比較して、製造コストを節減することができる。
【0060】
また、前記第3実施例では、二重のストレート構造として説明したが、これに限られず、単一のストレート構造、又は多重のストレート構造に形成してもよい。また。
図6の構造では、長手方向に発光部110を形成した構造を示しているが、これに限られることではなく、幅方向に形成しても良い。
【0061】
一方、第4実施例では、
図7に示しているように、タオル体の表面に、発光部110を波模様で設けており、その他の構造は、第3実施例と同様であるので、これに関する繰返し説明は、省略する。
【0062】
この第4実施例では、前記第1実施例でのように、タオル体100を蛍光染料で染色することではなく、発光部110を波模様に設けることによって、第1実施例と比較して、製造コストを節減することができる。
【0063】
また、前記第4実施例では、発光部110を波模様として説明したが、これに限らず、星状、円状、多角状などの単一構造の連続した形状でもよい。
【0064】
以上、本発明者によって行われた発明を、前記実施例よって具体的に説明したが、本発明は、前記の実施例に限られず、その要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能なことは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
100 タオル体
101 貫通口
110 発光部