特許第6465737号(P6465737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6465737-自動調芯ローラを備えたベルトコンベア 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465737
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】自動調芯ローラを備えたベルトコンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/64 20060101AFI20190128BHJP
   B65G 39/071 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B65G15/64
   B65G39/071
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-91478(P2015-91478)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-204153(P2016-204153A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503192549
【氏名又は名称】有限会社 ヨコハマベルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝助
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2755894(JP,B2)
【文献】 特許第4302434(JP,B2)
【文献】 特許第4323222(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/64
B65G 13/00−13/12
B65G 39/00−39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと従動ローラとの間にベルトがエンドレス状にかけ渡されたベルトコンベアにおいて、
前記駆動ローラは、シャフトの中央部に形成された球状部を、ローラ胴の内周面に一体的に取り付けられた球面軸受けに相対回転できないように連結することで、前記ローラ胴が前記シャフトに対し揺動可能に支持された自動調芯ローラであり、
前記ローラ胴の表面に、軸方向に直交する断面が円環状であり、かつ、中央部において最大厚さを有し、両端部において最小厚さを有する合成樹脂からなる第1層を接着し、
前記第1層の表面に、軸方向に直交する断面が円環状であり、かつ、中央部において最小厚さを有し、両端部において最大厚さをするとともに、前記第1層の合成樹脂より、単位厚さ当たりの弾性係数が小さい合成樹脂からなる第2層を積層し、
前記ローラ胴の軸方向に直交するいずれの断面においても、前記第1層の厚さと第2層の厚さの和が一定となるように設定されており、
前記第2層の表面に、一定の厚さを有し、耐摩耗性の合成樹脂からなる前記ベルトとの接触面となる第3層を積層したことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項2】
前記第1層、第2層及び第3層を形成する合成樹脂材料と、前記第1層及び第2層の軸方向に沿う厚さの変化量、第3層の厚さを選定することで、前記駆動ローラの両端部から中央部に到る総合弾性係数の変化特性を調整したことを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベア。
【請求項3】
前記第1層、第2層及び第3層の両端面外側に、ベルトとの接触面を形成する開先付きワッシャを遊嵌したことを特徴とする請求項1または2に記載のベルトコンベア。
【請求項4】
前記第1層としてネオプレンゴム、前記第2層としてスポンジ状合成樹脂、前記第3層としてウレタンゴムを採用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルトコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ローラと従動ローラの間にスチール製やプラスチック製のベルトがエンドレス状にかけ渡されたベルトコンベアに関し、特に、蛇行防止機能をもつ自動調芯ベルトローラを備えたベルトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアは、各種の物品の搬送装置として多用されており、特にプラスチック製のベルトを用いるものは、食料品をはじめとして、様々な製造ラインで使用されている。
こうしたベルトの蛇行は、搬送品の位置決め精度を悪化させるばかりでなく、特に、高温環境下で使用される場合、ベルト寿命を急速に悪化させ、頻繁なベルト交換を余儀なくされている。
【0003】
特許文献1には、高温環境で使用されるベルトコンベアの例として、天板上に載せられたパンをすくい取り、別の工程に搬送するデパンナーが開示されている。
特許文献2、3には、ベルトの蛇行を防止するため、駆動側ローラ、従動側ローラのそれぞれを、球面滑り軸受けを介してシャフトに連結し、自動調芯を行う自動調芯ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2755894号公報
【特許文献2】特許第4302434号公報
【特許文献3】特許第4323222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2、3に記載されたベルトコンベアでは、確実にベルト蛇行を抑止するため、駆動側ローラ、従動側ローラの双方に自動調芯機構を配備することが好ましい。このため、コストアップを招くばかりでなく、従動側ローラに自動調芯機構を内蔵させるため、その径を大きくせざるを得ない。
【0006】
しかし、ベルトコンベアを特許文献1に示されるようなデパンナーとして用いる場合、直径数ミリ程度の極小ローラを採用しなければならない。あるいは、スナックや豆類のように、小型の食品を次の工程に移送させるためには、食品を落下させることなく、コンベア間での乗り継ぎを行う必要があり、各コンベアにおける搬送面の両端部に、直径数ミリ程度の極小ローラや、ナイフエッジと称される、折り返し部を採用しなければならない。
このような用途のコンベアでは、搬送面端部のローラに自動調芯機構を内蔵させることが非常に困難である。
【0007】
しかし、特許文献2、3に開示される自動調芯機構を駆動側ローラのみに内蔵させた場合、ベルト蛇行を長期間にわたり確実に抑止することができないケースがある。
駆動側ローラと従動側ローラの2本のローラで構成されるコンベアであって、双方に自動調芯機能を配備できる場合、例えば、駆動側ローラの左側で緩みが発生すると、張力が高い右側がベルトに内方に引き込まれ、従動側ローラの右側のベルト張力が弱まる。これにより、従動側ローラの左側がベルトを引き込み、左右の張力がバランスし、自動調芯が行われる。
【0008】
これに対し、搬送面両端部に、自動調芯機能を備えていない極小ローラを採用しなければならないようなコンベアの場合、極小ローラの一方側で緩みが発生しても、他方側でこれを抑制する作用力が発生せず、最悪の場合、ベルトの脱輪が発生する。
しかも、高温の食品を搬送する場合、ベルトが高温となるため、わずかな蛇行によっても、ベルト寿命を著しく低下して頻繁な交換が必要となり、稼働率の低下、メンテナンス費用の増大を招いている。
【0009】
そこで本発明の目的は、駆動側ローラの自動調芯機構を改良することにより、搬送面端部のローラに、自動調芯機構を配備できないような、極小径のピンローラ等を用いるベルトコンベアであっても、長期間にわたりベルト蛇行を確実に抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献2、3に開示されるように、駆動側、従動側とも自動調芯機構を備えたベルトコンベアを稼働させ、ベルトの挙動を計測したところ、垂直方向の揺動振幅は最大1.5mm程度発生し、水平方向、すなわち、ベルト張力方向の揺動振幅は、±0.4mm程度であった。一方、搬送面端部のローラに自動調芯機構を備えていないピンローラや、ナイフエッジは、機構上、ベルト張力方向の揺動はきわめて限定されるものの、ベルト張力に対し直交方向の揺動は可能である。
そこで、駆動側ローラにおいて、ベルト張力方向の揺動分を補完できれば、従動側ローラに自動調芯機構を配備しなくても、ベルト蛇行を防止できるのはないかという着想に基づいて、本発明に到った。
【0011】
すなわち、上記の課題を解決するため、本発明では、駆動ローラと従動ローラとの間にベルトがエンドレス状にかけ渡されたベルトコンベアにおいて、前記駆動ローラは、シャフトの中央部に形成された球状部を、ローラ胴の内周面に一体的に取り付けられた球面軸受けに相対回転できないように連結することで、前記ローラ胴が前記シャフトに対し揺動可能に支持された自動調芯ローラであり、前記ローラ胴の表面に、軸方向に直交する断面が円環状であり、かつ、中央部において最大厚さを有し、両端部において最小厚さを有する合成樹脂からなる第1層を接着し、前記第1層の表面に、軸方向に直交する断面が円環状であり、かつ、中央部において最小厚さを有し、両端部において最大厚さをするとともに、前記第1層の合成樹脂より、単位厚さ当たりの弾性係数が小さい合成樹脂からなる第2層を積層し、前記ローラ胴の軸方向に直交するいずれの断面においても、前記第1層の厚さと第2層の厚さの和が一定となるように設定されており、前記第2層の表面に、一定の厚さを有し、耐摩耗性の合成樹脂からなる前記ベルトとの接触面となる第3層を積層するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベルトコンベアは、以上のように構成されているので、従動側に自動調芯ローラを設置しない場合でも、長期の運転時間にわたってベルトの脱輪を効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明を、搬送面の両端にピンローラを採用したベルトコンベアの全体構成を示す図である。
図2図2は、本発明による駆動ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
図1は、本発明を、搬送面の両端部に直径5ミリ程度のピンローラを用いた小型食品搬送用のベルトコンベアに適用した実施例の全体構成を示す。
ベルト1は、搬送面両端部に配置されたピンローラ2、3間に掛け渡され、折り返されたベルト1は、本体4の下方において、駆動ローラ5に巻掛けられ、テンションローラ6を経て、エンドレスループを形成している。
【0015】
ベルト搬送面下方に沿う支持部を備えた本体4の下面には、駆動ベルト7を介して、駆動ローラ5を回転駆動する駆動モータ8が配備されている。また、その上方には、テンションローラ6を水平方向に移動させ、ベルト1のテンションを調整するテンション調整機構9が配備されている。
【0016】
本実施例では、駆動ローラ5に本発明による自動調芯機能を適用したもので、図2に軸方向の断面図を示す。
駆動ローラ5は、シャフト10に対し、ステンレススチール等からなる中空のローラ胴11が揺動できるよう、特許文献1あるいは特許文献2に開示される揺動機構を備えている。
すなわち、シャフト10の中央部に球状部10aが設けられており、この球状部10aは、ローラ胴11側に一体的に形成された球面軸受け12に揺動可能に支持されている。
球面軸受け12の中央にはピン13が中心方向に突出するように設けられ、球状部10aの表面に形成された、シャフト10の軸方向に沿うスリットと係合する。
これにより、ローラ胴11は、シャフト10に対し相対回転することなく、球面軸受け12が許容する範囲で、球状部10aの中心点で揺動できるようになっている。
【0017】
なお、ローラ胴11の内面には、両端付近に形成された凹部に、ゴムブーツ14が嵌入されており、シャフト10はゴムブーツ14の中央開口に挿通されている。
ゴムブーツ14は、コンベア稼働中、シャフト10とローラ胴11の内面が接触するのを防止するとともに、駆動ローラ5の内部に塵埃が進入するのを防止する。
なお、図2において、シャフト10の右側には、駆動ベルト7(図1参照)により、駆動モータ8の回転トルクが伝達されるトルク伝達ローラ(図示せず)が装着されている。
【0018】
ローラ胴11の表面には、中央部が厚く両端に沿って徐々に薄くなるようクラウン加工された、例えば、ネオプレンゴムのような合成樹脂からなるゴムライニングを、焼き付けあるいは接着材により貼着することにより、円環状の第1層15が形成されている。
そして、第1層15の表面には、より弾性係数が小さいスポンジ状合成樹脂等からなる、円環状の第2層16が積層されている。この第2層16は、その表面が円筒表面となるよう、第1層15の径の変化を補完して、中央部が薄く、両端に沿って厚くなるようにしている。
【0019】
すなわち、シャフト10に対し直交する断面では、第1層15の外径は、中央部においては最大直径の円であり、両端部において最小直径となっている。これに対し、第2層16の内径は、中央部において最小直径であり、両端部において最大直径となり、軸方向のいずれの断面でも、第1層15の厚さと第2層16の厚さの和は一定となっている。
【0020】
第2層16の表面には、さらに、耐摩耗性に優れたウレタンゴム等の合成樹脂からなる第3層17が一定の厚さで焼き付けあるいは接着材により積層され、その表面がベルト1との接触面を形成している。
【0021】
第1層15、第2層16、第3層17は、軸方向の両端で、軸方向に直交する端面を形成し、軸方向の幅は、ベルト1の幅より1mm〜2mm程度広くなるよう設定されている。この端面は、内方に向けてベルト1を案内する開先を備えたワッシャ18を介して、ステンレス製の締結リング19により、軸方向に移動しないよう拘束されている。第1層15、第2層16、第3層17の軸方向両端面と、内方側の外径が第3層17の外径より若干大きく設定されたワッシャ18との間には、わずかな隙間が設けられ、駆動ローラ5の回転時、ワッシャ18がベルト1と連れ回るようにすることで、ベルト1の端部の摩耗を防止するとともに、第1層15、第2層16、第3層17の軸方向両端面を保護する。
【0022】
ここで、図2において、第1層15、第2層16、第3層17の厚さをt、t、tとすると、前述のように、tは、中心部で最大、両端部で最小、tは、中心部で最小、両端部で最大、そして、tは一定で、軸方向に沿って、t+t+tは一定である。
ここで、第1層15、第2層16、第3層17の単位厚さ当たりの弾性係数をそれぞれk、k、kとすると、これらを総合した総合弾性係数Kは、
K=k・t+k・t+k・t
となる。
【0023】
スポンジ材などからなる第2層16の単位厚さ当たりの弾性係数kは、第1層15の単位厚さ当たりの弾性係数k1より小さいので、総合弾性係数Kは、両端部で最小、中央部で最大となる。そして、ベルト1の仕様、張力、搬送速度等に応じて、第1層15、第2層16、第3層17の各素材、そして、厚さを選定することにより、幅方向端部から中央部に向けた総合弾性係数Kの変化特性を最適値に設定することができる。
【0024】
図1において、駆動モータ8を稼働させ、ベルト1を周回させた場合、ベルト1には、搬送面における搬送品の分布や、各ローラのわずかな偏心、そして駆動モータ8のトルク変動等により、ピンローラ2、3のいずれかで、ベルト1の片側に緩みが発生する。
例えば、ピンローラ2の幅方向左側で緩みが発生した場合には、駆動ローラ5でも、幅方向左側が緩み、相対的に幅方向右側のテンションが高まる。
駆動ローラ5として、特許文献1、2の自動調芯機構を備えたものを採用した場合、これに伴って、シャフト10の中央部に設けられた球状部10aが、ローラ胴11側に形成された球面軸受け12で揺動し、駆動ローラ5の幅方向右側が内方に引き込まれる。これにより、幅方向右側のテンションが弱まり、結果として左のテンションが高まり、左側の緩みが解消される。
【0025】
通常はこれにより脱輪が防止されるが、ベルト1の左右でテンションのアンバランスがさらに大きくなると、ピンローラ2、3では、ベルト張力に対し直交する方向の揺動を吸収できないため、ベルト1の片側に発生したテンションのアンバランスを解消できず、ベルト1の端部を急速に劣化させるとともに、最終的には脱輪を招いてしまう。
【0026】
これに対し、本実施例では、ローラ胴11の表面に形成された、第1層15、第2層16、第3層17により、駆動ローラ5の幅方向端部では、総合弾性係数Kが小さくなっているため、テンションの変動を、柔軟に、しかも中央部と比較して大きなストロークで吸収する。
例えば、前述のように、ベルト1の幅方向からみて、左側で緩みが生じ、右側でテンションが高まった場合、駆動ローラ5の右側端部では、単位厚さ当たりの弾性係数が最も小さい第2層16が最大厚さとなっているため、テンションの上昇に伴いシャフト10が揺動する際、徐々に反発力を高めながら、しかも、中央部と比較して大きく沈み込む。これにより、左側のテンションが緩やかに上昇に転じ、ベルト1を中心方向に復帰させ、ベルト1の脱輪を効果的に抑止することができる。
【0027】
以上、極小径のピンローラを搬送面の両端部に配置し、その下面に駆動ローラを配置したベルトコンベアに適用した本発明を適用した実施例で説明したが、搬送面のうち、一方の端部に大径の駆動ローラ、他方の端部にピンローラを採用したベルトコンベアにも適用できる。
さらに、一方の端部に大径の駆動ローラ、他方の端部に大径の従動ローラを採用したベルトコンベアについても、駆動ローラのみに本発明を適用し、従動ローラを固定式のものとすることでコストの低減を図ることができる。
また、従動ローラにも、本発明の駆動ローラと同様の構造を採用すると、ベルトコンベアを超高速で運転しても、ベルトの蛇行を効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上、本発明によれば、従動側ローラに自動調芯機構を配備できない、ピンローラやナイフエッジなどを採用したベルトコンベアであっても、ベルトの蛇行を効果的に抑止することができるので、様々な用途のベルトコンベアに広く採用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0029】
1;ベルト 2、3;ピンローラ 4;本体
5;駆動ローラ 6;テンションローラ 7;駆動ベルト
8;駆動モータ 9;テンション調整機構 10;シャフト
10a;球状部 11;ローラ胴 12;球面軸受け
13;ピン 14;ゴムブーツ 15;第1層
16;第2層 17;第3層 18;ワッシャ
19;締結リング
図1
図2