特許第6465747号(P6465747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465747
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】エアブロー装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20190128BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B23Q11/00 K
   B08B5/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-103755(P2015-103755)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-215328(P2016-215328A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】赤池 和道
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155969(JP,A)
【文献】 特開平8−323308(JP,A)
【文献】 実開平4−106140(JP,U)
【文献】 特開2012−61486(JP,A)
【文献】 特開2003−285268(JP,A)
【文献】 米国特許第8296898(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿った主穴及び該主穴と交差する交差穴を有するワークをエアブローするエアブロー装置において、
前記ワークが載置されるテーブルと、
前記テーブルに設けられ、前記テーブルに載置された前記ワークの前記主穴に挿入される突起部と、
前記テーブルに設けられ、前記テーブルに載置された前記ワークによって押されるスイッチと、を備え、
前記突起部は、外周面に開口し、前記主穴の内側面に対向するエア吹出口を有し、前記スイッチが押されたときに前記エア吹出口からエアを噴出する
ことを特徴とするエアブロー装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアブロー装置において、
前記主穴は、前記ワークを貫通し、前記突起部が挿入される第1開口部と、前記第1開口部に対向した第2開口部と、を有し、
前記交差穴は、前記主穴の内側面に開放する内側開口部を有し、
前記突起部は、前記主穴の内側面のうち、前記内側開口部から前記第2開口部までの部分に嵌合する嵌合部を有する
ことを特徴とするエアブロー装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたエアブロー装置において、
前記ワークの外周には、前記突起部が挿入される前記主穴の第1開口部を頂点とする錐体部が形成され、
前記スイッチを、前記錐体部の傾斜面によって押圧される位置に配置する
ことを特徴とするエアブロー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載されたエアブロー装置において、
前記テーブルは、ワーク載置面に対して着脱可能に設けられ、前記ワークを支持する支持部材を備える
ことを特徴とするエアブロー装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアを噴射してワークに付着した残留物を吹き払うエアブロー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料等からなるワークに機械加工や表面処理を施した後に、ワークに機械加工された穴の内部に残留した切粉やショットブラストのショット玉のような残留物をエアによって吹き払うエアブロー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−82847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエアブロー装置では、作業者がトリガーを押し込み操作して圧縮空気を噴射させ、ガン本体の向きを変えることでエアの吹き付け角度や吹き付け位置を制御するガンタイプである。このため、作業者ごとにブロー強さに違いが生じたり、エアの吹き付け角度や吹き付け位置に違いが生じたりしていた。そのため、作業者によっては、残留物の除去に時間がかかったり、十分に残留物を除去できなかったりした。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、エアブローによるワークからの残留物除去作業を安定的に行い、エアブロー工程の品質向上を図ることができるエアブロー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、軸方向に沿った主穴及び主穴と交差する交差穴を有するワークをエアブローするエアブロー装置において、ワークが載置されるテーブルと、突起部と、スイッチと、を備えている。
前記突起部は、テーブルに設けられ、このテーブルに載置されたワークの主穴に挿入される。
前記スイッチは、テーブルに設けられ、テーブルに載置されたワークによって押される。
そして、突起部は、外周面に開口し、主穴の内側面に対向するエア吹出口を有し、スイッチが押されたときにこのエア吹出口からエアを噴出する。
【発明の効果】
【0007】
本願発明のエアブロー装置では、ワークがテーブルに載置されると、載置されたワークによってスイッチが押され、ワークの主穴に挿入された突起部のエア吹出口からエアが噴射される。
そのため、エアの噴射量や、エアのワークに対する噴射位置や向きが一定になり、作業者による作業バラツキを低減することができる。この結果、エアブローによるワークからの残留物の除去作業を安定して行うことができ、エアブロー工程の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1におけるワークである可動プーリを有する無段変速機を示す模式的な断面図である。
図2】実施例1のエアブロー装置を示す模式的な断面図である。
図3】実施例1のエアブロー装置を示す平面図である。
図4】実施例1のエアブロー装置においてワークセット直前状態を示す断面図である。
図5】実施例1のエアブロー装置においてワークセット・エアブロー状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のエアブロー装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
まず、実施例1のエアブロー装置の構成を、「ワークの構成」、「エアブロー装置の詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
[ワークの構成]
図1は、実施例1におけるワークである可動プーリを有する無段変速機を示す模式的な断面図である。以下、図1に基づき、ワークの構成を説明する。
【0012】
実施例1のエアブロー装置において、エアブロー対象であるワークは、ベルト式無段変速機を構成する可動プーリである。以下、ベルト式無段変速機及び可動プーリについて簡単に説明する。
【0013】
ベルト式無段変速機CVTは、入力軸に接続されたプライマリプーリと、出力軸に接続されたセカンダリプーリと、これらのプーリ間に巻回されたベルトと、を有している。そして、プライマリプーリ及びセカンダリプーリは、それぞれシャフト(入力軸又は出力軸)に固定された固定プーリと、シャフトの軸方向に移動可能にセットされた可動プーリと、を有している。この固定プーリと可動プーリは、それぞれ円錐状のプーリ本体を有しており、各プーリ本体の傾斜したシーブ面を対向して配置されることで、ベルトが巻回されるV字状溝を形成する。そして、可動プーリの軸方向移動により、固定プーリと可動プーリの間の距離を変更することでV字状溝の溝幅が増減し、ベルトの巻き付き径が調整されて、プライマリプーリからセカンダリプーリへの動力伝達比、すなわち変速比が変化する。
【0014】
前記可動プーリ1(以下、「ワーク」ともいう)は、図1に示すように、シャフト部11と、このシャフト部11の一方の端部11aから径方向に突出する円盤状のプーリ本体12(錐体部)と、を備えている。
前記シャフト部11には、軸方向に沿い、固定プーリ2のシャフト部21が差し込まれる主穴13と、主穴13に交差する交差穴14と、が形成されている。なお、この交差穴14は、可動プーリ1の軸方向位置(すなわち、固定プーリ2に対する可動プーリ1の位置ひいては変速比)を制御するための油圧回路を構成するものである。
前記プーリ本体12は、シャフト部11の一方の端部11aを頂点とする円錐形状を呈しており、シャフト部11の軸方向に対して直交する方向に延びた油圧受面12aと、油圧受面12aに対して傾斜する方向に延び、外縁部ほどプーリ本体12の厚みを薄くするシーブ面12b(傾斜面)と、を有している。なお、このシーブ面12bは、固定プーリ2のプーリ本体22に形成されたシーブ面22bに対向し、シーブ面12bとシーブ面22bによってベルト(不図示)が巻回されるV字状溝が形成される。
【0015】
前記主穴13は、シャフト部11の一方の端部11aに開放した第1開口部13aと、第1開口部13aに対向して他方の端部11bに開放した第2開口部13bとを有し、シャフト部11を軸方向に貫通する。
前記交差穴14は、シャフト部11の軸方向に対して直交する方向に延び、主穴13の内側面13cに開放した内側開口部14aと、シャフト部11の外周面に開放した外側開口部14bと、を有し、シャフト部11を径方向に貫通する。なお、この交差穴14は、ここでは主穴13を中心に複数形成されている。
【0016】
さらに、主穴13の内側面13cの途中位置には、段差部13dが形成され、この段差部13dから第1開口部13aまでの内径寸法R1が、段差部13dから第2開口部13bまでの内径寸法R2よりも大きい値に設定されている。すなわち、第1開口部13aの開口面積の方が、第2開口部13bの開口面積よりも大きくなっている。
そして、段差部13dから第1開口部13aまでの間の大径部分に、交差穴14の内側開口部14aが開放している。また、段差部13dから第2開口部13bまでの小径部分の内径寸法R2は、後述する円筒部5の先端嵌合部53の外径寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。そのため、主穴13に円筒部5が挿入された際、この小径部分には円筒部5の先端嵌合部53が嵌合し、大径部分と円筒部5の外周面5aとの間には隙間が確保される。
【0017】
そして、このワークである可動プーリ1の製造工程には、切削工程や、ショットブラストによる表面処理工程が含まれると共に、エアブロー工程が含まれる。つまり、切削工程では、主穴13や交差穴14内に切削屑が付着・残留することがあり、表面処理工程では、ショットブラストの際に可動プーリ1に衝突させたショット玉が、主穴13や交差穴14内に付着・残留することがある。このため、可動プーリ1の製造工程には、切削工程や表面処理工程の後工程として、エアを吹き付ける(以下、「エアブロー」という)ことで、切削屑やショット玉等の残留物を可動プーリ1から除去するエアブロー工程が設けられている。
【0018】
[エアブロー装置の詳細構成]
図2及び図3は、実施例1のエアブロー装置を示している。以下、図2及び図3に基づき、実施例1のエアブロー装置の詳細構成を説明する。
【0019】
図2に示すエアブロー装置3は、ワークである可動プーリ1のエアブロー工程にて使用され、主穴13及び交差穴14の内側にエアを吹き付けて残留物を除去するものである。このエアブロー装置3は、テーブル4と、円筒部5(突起部)と、スイッチ6と、を備えている。
【0020】
前記テーブル4は、ワークである可動プーリ1が載置される作業台であり、ワーク載置面41と、テーブル側エア供給路42と、を有している。
前記ワーク載置面41は、テーブル4の上側に形成された平坦面であり、可動プーリ1がシーブ面12bを対向した状態で載置される。このワーク載置面41には、円筒部5が一体的に突出形成されると共に、この円筒部5を取り囲むリング状の支持部材43が着脱可能に設けられている。さらに、ワーク載置面41には、スイッチ6が出没可能に配置されるスイッチ用凹部44が形成されている。
また、スイッチ用凹部44の底面44aには、テーブル側エア供給路42の途中位置に設けられたバルブ7を制御する内部スイッチ7aが露出すると共に、スイッチ6をスイッチ用凹部44からの突出方向に付勢する図示しないバネが設けられている。なお、このスイッチ用凹部44は、ワーク載置面41に可動プーリ1が載置された際、シーブ面12bによって覆われる位置に形成されている。これにより、スイッチ6が、ワーク載置面41に可動プーリ1が載置された際、プーリ本体12のシーブ面12bによって押圧される位置に設けられることとなる。
前記テーブル側エア供給路42は、テーブル4の内部に形成され、エア供給源Aに連通して、このエア供給源Aから供給されるエアを流通させる。前記バルブ7は、テーブル側エア供給路42を開閉する開閉弁であり、スイッチ6がバネの付勢力に抗して押し込まれて内部スイッチ7aを押圧すると、開放状態になってテーブル側エア供給路42内にエアを流通させる。また、スイッチ6がバネによって支持されて内部スイッチ7aを押圧していないと、閉鎖状態になってテーブル側エア供給路42内でのエアの流通が阻止される。
【0021】
前記円筒部5は、テーブル4のワーク載置面41から円筒形状に突出し、このワーク載置面41に可動プーリ1が載置された際、可動プーリ1の主穴13に挿入される。また、この円筒部5の内部には、テーブル側エア供給路42に連通した円筒部側エア供給路51が形成されている。
前記円筒部側エア供給路51は、テーブル側エア供給路42の接続部分から円筒部5の軸方向に延在した垂直部分51aと、垂直部分の先端から水平方向に屈曲する複数の分岐部分51bと、を有している。そして、各分岐部分51bは、円筒部5の外周面5aに開放すると共に、主穴13の内側面13cに対向したエア吹出口52に連通する。
ここで、複数のエア吹出口52は、支持部材43からの高さ寸法が、可動プーリ1の第1開口部13aから交差穴14の内側開口部14aまでの間隔寸法とほぼ同じ値に設定されている。また、この円筒部5の外径寸法R3は、可動プーリ1の主穴13の小径部分の内径寸法R1とほぼ同じ値に設定されており、先端部近傍部分(破線で示す部分)が、主穴13の小径部分に嵌合する先端嵌合部53(嵌合部)になっている。
なお、支持部材43の内径寸法は、円筒部5の外径寸法R3とほぼ同じ値に設定されており、支持部材43の内側に円筒部5が嵌合している(図3参照)。
【0022】
前記スイッチ6は、スイッチ用凹部44内に配置され、このスイッチ用凹部44から出没可能となっている。すなわち、このスイッチ6は、スイッチ用凹部44内に配置されたバネによって、スイッチ用凹部44から先端部分が突出した状態で支持されているが、バネの付勢力に抗して押し込まれるとスイッチ用凹部44内に没入する。そして、このスイッチ6は、スイッチ用凹部44内に没入したときに内部スイッチ7aを押圧する。
【0023】
次に、実施例1のエアブロー装置における作用を「エアブロー作用」と、「その他の特徴的作用」と、に分けて説明する。
【0024】
[エアブロー作用]
図4は、実施例1のエアブロー装置においてワークセット直前状態を示す断面図であり、図5は、実施例1のエアブロー装置おいてワークセット・エアブロー状態を示す断面図である。以下、図4及び図5に基づき、実施例1のエアブロー作用を説明する。
【0025】
ワークである可動プーリ1のエアブロー工程では、図4に示すように、シーブ面12bをワーク載置面41に向けた姿勢の可動プーリ1を、主穴13内に円筒部5が挿入されるように下降させる。この時点では、可動プーリ1はワーク載置面41にセットされていないため、スイッチ6はバネによって支持され、未だ内部スイッチ7aは押圧されていない。そのため、バルブ7は閉鎖状態になっており、テーブル側エア供給路42内でのエアの流通が阻止されている。
【0026】
その後、スイッチ6にシーブ面12bが接触し、可動プーリ1の下降動作に伴ってスイッチ6がバネの付勢力に抗して押し込まれていく。そして、図5に示すように、ワーク載置面41上に可動プーリ1を載置すると、可動プーリ1は一方の端部11aが支持部材43に支持され、円筒部5が主穴13内に完全に差し込まれる。一方、スイッチ6はスイッチ用凹部44に没入し、内部スイッチ7aを押圧してバルブ7が開放状態になる。これにより、エア供給源Aから供給されたエアがテーブル側エア供給路42を流通する。
【0027】
テーブル側エア供給路42内を流れたエアは、円筒部5の内部に形成された円筒部側エア供給路51の垂直部分51aへと流れ込み、複数の分岐部分51bを流れてエア吹出口52から噴射される。これにより、主穴13の内側面13cに付着していたショット玉等の残留物を吹き払うことができる。
なお、吹き払われた主穴13内の残留物は、円筒部5と主穴13の内側面13cとの間を通って、支持部材43上に落下する。
【0028】
また、エア吹出口52から噴射されたエアの一部は、主穴13の内側面13cに開放した内側開口部14aから交差穴14内へと流れ込み、可動プーリ1のシャフト部11の外周面に開放した外側開口部14bから吹き出される。これにより、交差穴14の内部に付着していた残留物も吹き払うことができる。
なお、吹き払われた交差穴14内の残留物は、プーリ本体12の油圧受面12a上に落下する。
【0029】
このように、円筒部5が可動プーリ1の主穴13内に差し込まれ、エア吹出口52が主穴13の内側面13cに対向した状態でエア吹出口52からエアが噴射されるため、エアを、主穴13の内側面13cに確実に吹き付けることができる。また、スイッチ6は、可動プーリ1をワーク載置面41に載置することによって押し込まれ、スイッチ6が押し込まれている間は、内部スイッチ7aが押圧されてバルブ7が開放状態を維持する。つまり、可動プーリ1をテーブル4上に載置している間は、エア吹出口52から一定量のエアが継続して噴射されることになる。
【0030】
これにより、エアの噴射量や、エアの可動プーリ1に対する噴射位置や向きが一定になり、作業者による作業バラツキを低減することができる。この結果、エアブローによる可動プーリ1からの残留物の除去作業を安定して行うことができ、エアブロー工程の品質向上を図ることができる。
【0031】
さらに、エア吹出口52から噴射されたエアは、主穴13から交差穴14へと流れ込み、この交差穴14の外側開口部14bから吹き出す。そのため、エアを交差穴14の内側から外側に向けて噴射することができる。これにより、交差穴14から吹き払われた残留物が主穴13内に入り込むことを抑制することができる。
【0032】
[その他の特徴的作用]
実施例1において、ワークである可動プーリ1に形成された主穴13は、可動プーリ1のシャフト部11の一方の端部11aに開放した第1開口部13aと、シャフト部11の他方の端部11bに開放した第2開口部13bと、を有し、シャフト部11を貫通している。
このようにシャフト部11を貫通する主穴13の場合、円筒部5の外周面5aと主穴13の内側面13cとの間に隙間が生じると、その隙間からエアが漏れ出てしまい、エア吹出口52から噴射されたエアの噴射力が低下するおそれがある。
【0033】
これに対し、実施例1のエアブロー装置3では、主穴13の内側面13cに形成された段差部13dから第2開口部13bまでの間の小径部分の内径寸法R2が、円筒部5の先端嵌合部53の外径寸法とほぼ同じ寸法に設定され、この小径部分に先端嵌合部53が嵌合する。また、段差部13dから第1開口部13aまでの間の大径部分に、交差穴14の内側開口部14aが開放すると共に、エア吹出口52の支持部材43からの高さ寸法が、第1開口部13aから内側開口部14aまでの間隔寸法とほぼ同じ値に設定されている。
【0034】
そのため、エア吹出口52から噴射されたエアが、主穴13の第2開口部13bから大気へと流れてしまうことを防止し、交差穴14内へ確実にエアを流通させることができる。これにより、エア吹出口52と交差穴14の内側開口部14aとの位置が対向していなくても、交差穴14内の残留物を十分に吹き払うことができる。また、主穴13内に噴射されるエアの噴射力が低下することも防止でき、主穴13内の残留物の除去も十分に行うことができる。
【0035】
また、実施例1のエアブロー装置3では、ワークである可動プーリ1の外周に、円筒部5が挿入される主穴13の第1開口部13aを頂点とする円錐形状のプーリ本体12が形成されている。そして、テーブル4に設けたスイッチ6を、このプーリ本体12の傾斜したシーブ面12bによって押圧される位置に配置している。
そのため、可動プーリ1のシャフト部11の一方の端部11aによってスイッチ6を押圧する構成(すなわち、シャフト部11の端面によってスイッチ6を押圧する構成)に比べて、可動プーリ1によるスイッチ6の押圧動作を安定して行うことができる。
【0036】
つまり、可動プーリ1をテーブル4のワーク載置面41にセットする際、鉛直方向に向けられた主穴13内からショット玉がこぼれ落ちてくることが予想される。このとき、こぼれ落ちたショット玉は、円筒部5の周囲に飛散して、円筒部5とスイッチ6との間に残留する可能性が高い。そのため、スイッチ6を可動プーリ1のシャフト部端面によって押圧する構成では、円筒部5とスイッチ6との間に残留したショット玉が、可動プーリ1のシャフト部端面に干渉して、スイッチ6の押圧動作が阻害されて、適切に押圧することができないおそれが生じる。
【0037】
これに対し、プーリ本体12の傾斜したシーブ面12bによって押圧される位置にスイッチ6を設けたことで、スイッチ押圧状態において、シーブ面12bとワーク載置面41との間に隙間を確保できる。そのため、円筒部5とスイッチ6との間に、ワークセット時にこぼれ落ちたショット玉が残留しても、スイッチ6の押圧動作を阻害することがない。この結果、スイッチ6を適切に押圧し、可動プーリ1によるスイッチ6の押圧動作を安定して行うことができる。
【0038】
なお、スイッチ6を可動プーリ1のシャフト部端面によって押圧する場合では、スイッチ押圧時に、スイッチ6の周囲に隙間が生じて、この隙間の分だけエアの漏れが増える可能性がある。しかしながら、シーブ面12bによってスイッチ6を押圧する構成にしたことで、主穴13の開口周縁であるシャフト部端面とワーク載置面41との間に、余計な隙間が生じにくく、エアの漏れを抑制してエア噴射力の低下を防止し、より安定して残留物を除去することができる。
【0039】
さらに、実施例1のエアブロー装置3では、テーブル4に対して着脱可能に設けられ、円筒部5を取り囲むと共に、載置された可動プーリ1を支持する支持部材43を備えている。
ここで、エアブロー装置3の使用を繰り返し、ワーク載置面41に対してワークである可動プーリ1の載置を繰り返すと、ワーク載置面41のうち可動プーリ1が接触する部分が摩耗してしまう。
しかしながら、可動プーリ1を支持する支持部材43をテーブル4に対して着脱可能に設けることで、可動プーリ1に接触する部分が摩耗しても、支持部材43を交換すればよいため、摩耗発生時のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0040】
次に、効果を説明する。
実施例1のエアブロー装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0041】
(1) 軸方向に沿った主穴13及び該主穴13と交差する交差穴14を有するワーク(可動プーリ1)をエアブローするエアブロー装置3において、
前記ワーク(可動プーリ1)が載置されるテーブル4と、
前記テーブル4に設けられ、前記テーブル4に載置された前記ワーク(可動プーリ1)の前記主穴13に挿入される突起部(円筒部5)と、
前記テーブル4に設けられ、前記テーブル4に載置された前記ワーク(可動プーリ1)によって押されるスイッチ6と、を備え、
前記突起部(円筒部5)は、外周面5aに開口し、前記主穴13の内側面13cに対向するエア吹出口52を有し、前記スイッチ6が押されたときに前記エア吹出口52からエアを噴出する構成とした。
これにより、エアブローによるワーク(可動プーリ1)からの残留物除去作業を安定的に行い、エアブロー工程の品質向上を図ることができる。
【0042】
(2) 前記主穴13は、前記ワーク(可動プーリ1)を貫通し、前記突起部(円筒部5)が挿入される第1開口部13aと、前記第1開口部13aに対向した第2開口部13bと、を有し、
前記交差穴14は、前記主穴13の内側面13cに開放する内側開口部14aを有し、
前記突起部(円筒部5)は、前記主穴13の内側面13cのうち、前記内側開口部14aから前記第2開口部13bまでの部分に嵌合する嵌合部(先端嵌合部53)を有する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、主穴13の第2開口部13bからのエアの抜けを防いで、交差穴14内の残留物除去を十分に除去することができる。
【0043】
(3) 前記ワーク(可動プーリ1)の外周には、前記突起部(円筒部5)が挿入される前記主穴13の第1開口部13aを頂点とする錐体部(プーリ本体12)が形成され、
前記スイッチ6を、前記錐体部(プーリ本体12)の傾斜面(シーブ面12b)によって押圧される位置に配置する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、スイッチ押圧状態で傾斜面(シーブ面12b)とワーク載置面41との間に隙間を確保することができ、ワーク(可動プーリ1)のセット時に、主穴13から残留物が落下して円筒部5の周囲に飛散しても、残留物がスイッチ押圧動作を阻害することがなく、エアブロー工程の品質を向上させることができる。
【0044】
(4) 前記テーブル4は、ワーク載置面41に対して着脱可能に設けられ、前記ワーク(可動プーリ1)を支持する支持部材43を備える
これにより、(1)から(3)のいずれかの効果に加え、エアブロー装置3の使用を繰り返し、ワーク(可動プーリ1)のテーブル4に対するに接触を繰り返したことで、テーブル4上に摩耗が発生しても、ワーク(可動プーリ1)を支持する支持部材43を交換すればよいので、摩耗時のメンテナンスを容易化することができる。
【0045】
以上、本発明のエアブロー装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0046】
実施例1では、ワークである可動プーリ1に形成した主穴13の内側面13cの段差部13dを設け、この主穴13の内径寸法を途中で変更することで、主穴13の内側面13cに円筒部5の先端部近傍を嵌合させる例を示したがこれに限らない。例えば、円筒部5の外周面5aに段差部を形成し、先端部分を大径にして主穴13に嵌合する嵌合部としてもよい。また、主穴13の内側面13cと円筒部5の外周面5aの両方に段差部を設け、主穴13の第2開口部13b側と、円筒部5の先端部側をそれぞれ大径にすることで、主穴13と交差穴14の交差位置(内側開口部14a)と第2開口部13bとの間に、主穴13の内側面13cに嵌合する嵌合部を形成してもよい。
さらに、段差部を形成することなく、円筒部5の外径寸法と主穴13の内径寸法の少なくとも一方を漸増していき、交差穴14の内側開口部14aから第2開口部13bまでの間の主穴13の内側面13cに、円筒部5が嵌合する構造であってもよい。
【0047】
実施例1では、エアブロー対象であるワークを、図1に示すベルト式無段変速機CVTの可動プーリ1とする例を示したが、例えば、ベルト式無段変速機CVTの固定プーリ2をワークとし、この固定プーリ2のエアブロー工程に、本願発明のエアブロー装置を適用してもよい。
また、ワークは、軸方向に沿った主穴と、主穴に交差する交差穴とを備えたものであればよく、ベルト式無段変速機CVTのプーリに限られない。さらに、交差穴は、主穴に対して直交する方向に延在していなくてもよい。主穴に連通する穴を交差穴という。
【0048】
また、突起部である円筒部5が円筒形状を呈する例を示したが、これに限らない。多角形形状(直方体等)であってもよい。また、ワークである可動プーリ1の外周に設けた錐体部であるプーリ本体12も、円錐形状に限らず、一方の端部11aを頂点とする角錐形状であってもよい。さらに、この錐体部は、頂点の位置とシャフト部11の一方の端部11aが一致していなくてもよく、シャフト部11の途中位置に錐体部の頂点を配置してもよい。つまり、シャフト部11の途中位置にプーリ本体12を設けてもよい。
【0049】
さらに、支持部材43は、円筒部5(突起部)を取り囲むリング形状を呈する例を示したが、これに限らない。実施例1のように支持部材43をリング形状にした場合では、この支持部材43が主穴13の第1開口部13aの全周に隙間なく接し、エアの漏れを防止できるが、ワークである可動プーリ1を安定して支持できれば、複数に分割してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 可動プーリ(ワーク)
11 シャフト部
12 プーリ本体(錐体部)
12b シーブ面(傾斜面)
13 主穴
13a 第1開口部
13b 第2開口部
13c 内側面
13d 段差部
14 交差穴
14a 内側開口部
14b 外側開口部
3 エアブロー装置
4 テーブル
41 ワーク載置面
42 テーブル側エア供給路
43 支持部材
5 円筒部(突起部)
5a 外周面
51 円筒部側エア供給路
52 エア吹出口
53 先端嵌合部(嵌合部)
6 スイッチ
7 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5