特許第6465781号(P6465781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465781
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】防水装置の柱体
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20190128BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   E06B5/00 Z
   E04H9/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-183766(P2015-183766)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-57640(P2017-57640A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社LIXIL鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】深川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕二
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−190129(JP,A)
【文献】 特開2011−213476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 − 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水ラインを形成する防水板の端部を支えるための柱材と、
前記防水ラインの一方側にて前記柱材及び傾斜地面に固定される傾斜下ベース部材と、
前記防水ラインの他方側にて前記柱材及び傾斜地面に固定される傾斜上ベース部材と、
を有し、
前記傾斜下ベース部材の前記柱材に対する相対角度が調整可能に構成され、
前記傾斜上ベース部材の前記柱材に対する相対角度が調整可能に構成され、
前記傾斜下ベース部材及び前記傾斜上ベース部材は、
前記柱材が傾斜地面に設置された際に前記柱材を垂直に立設させる角度において、前記柱材に固定される、
防水装置の柱体。
【請求項2】
前記柱材と、前記傾斜下ベース部材及び前記傾斜上ベース部材は、
前記柱材に設けた貫通穴と、
前記傾斜下ベース部材及び前記傾斜上ベース部材に設けた貫通穴に、
固定ボルトを挿入して締め付けることで連結されるものであり、
前記柱材に設けた貫通穴、及び/又は、
前記傾斜下ベース部材及び前記傾斜上ベース部材に設けた貫通穴は、
長孔形状とする、ことを特徴とする請求項1に記載の防水装置の柱体。
【請求項3】
前記傾斜下ベース部材、及び、前記傾斜上ベース部材には、
前記傾斜下ベース部材、又は、前記傾斜上ベース部材が前記防水ラインの内側に配置される場合において、
前記防水ラインの内側から柱材を支えるための支持部が設けられており、
前記支持部と、前記柱材の間に形成される隙間には、
スペーサーが挿設可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防水装置の柱体。
【請求項4】
前記傾斜上ベース部材は、
前記傾斜地面に設置される底板部と、
前記底板部から平行に立設されて対向する一対の側板部、を有し
前記側板部の端面にて前記支持部が構成され、
前記支持部には、前記底板部と90度以下の角度をなす傾斜が設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防水装置の柱体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口や、地下施設への地上出入口などに設置され、豪雨時の雨水などの浸入を堰き止めるための防水装置に関し、より詳しくは、防水板を立設保持させるための柱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雨発生時などにおいて雨水などが出入口内に浸入することを防止するための防水板(止水板とも称される)を備える防水装置が知られており、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、通路などの開口部において、その両側に側柱を配置すると共に、側柱の間に中柱を配置し、側柱と中柱の間に防水板(止水板)を設置する構成が開示されている。
【0004】
ここで、中柱が設置される地面は必ずしも水平ではなく、勾配を有する傾斜地面で構成される場合が往々にある。例えば、地下駐車場の入り口のスロープなどが考えられ、このような傾斜地面に対し中柱を垂直に設置することが必要とされる。
【0005】
他方、特許文献2には、設置場所が水平でない場合において、機器の脚を垂直に立設させるための設置機構に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−021359号公報
【特許文献2】特開2011−213476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
傾斜地面に対し中柱を垂直に設置する場合には、中柱下端部と傾斜地面の間に勾配に合せた調整板(くさび等)を刺し込むことで、中柱を垂直に立設させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、中柱下端部と傾斜地面の間に勾配に合せた調整板を刺し込む対応では、まず、施工現場において勾配を実測し、その後、勾配に合せた調整板を個別に合うように製作し、中柱と調整板を組み付けた上で納品する必要がある。また、この対策では現場施工時において、勾配に対して角度が合わなかったときは製作し直すしかない。
【0009】
このため、施工現場での実測、調整板の製作、納品といった複数段階の工程が必要となって納期がかかるとともに、調整板を個別に作製するなど製造管理の負担も大きなものとなる。
【0010】
他方、特許文献2のように傾斜地面に対し柱(脚)を垂直に立設可能とする技術は存在するが、防水板の設置を考慮したものではなく、そのまま防水装置の中柱として適用できるものではない。具体的には、傾斜地面に板状の接地部材(第一平面)を載置し、その上に柱(脚)を立設する構成であるため、仮に、この構成を防水装置の中柱として用いるとすると、接地部材の厚さの分だけ防水板と傾斜地面の間に隙間が形成されることになり、水の浸入を防止できないことになる。また、接地部材と柱(脚)を連結させる接続部材についても、柱(脚)の両側に配置されており、仮に、柱(脚)に防水板を取り付けようとしても、接続部材と防水板が干渉してしまうことになる。以上のことから明らかなように、特許文献2の構成は、防水板を支える中柱としてそのまま適用できるものではない。
【0011】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑み、防水装置の防水板を支える柱体について、傾斜地面に対して容易に施工可能な新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1に記載のごとく、
防水ラインを形成する防水板の端部を支えるための柱材と、
防水ラインの一方側にて柱材及び傾斜地面に固定される傾斜下ベース部材と、
防水ラインの他方側にて柱材及び傾斜地面に固定される傾斜上ベース部材と、
を有し、
傾斜下ベース部材の柱材に対する相対角度が調整可能に構成され、
傾斜上ベース部材の柱材に対する相対角度が調整可能に構成され、
傾斜下ベース部材及び傾斜上ベース部材は、
柱材が傾斜地面に設置された際に柱材を垂直に立設させる角度において、柱材に固定される、防水装置の柱体とする。
【0014】
また、請求項2に記載のごとく、
柱材と、傾斜下ベース部材及び傾斜上ベース部材は、
柱材に設けた貫通穴と、
傾斜下ベース部材及び傾斜上ベース部材に設けた貫通穴に、
固定ボルトを挿入して締め付けることで連結されるものであり、
柱材に設けた貫通穴、及び/又は、
傾斜下ベース部材及び傾斜上ベース部材に設けた貫通穴は、
長孔形状とする。
【0015】
また、請求項3に記載のごとく、
傾斜下ベース部材、及び、傾斜上ベース部材には、
傾斜下ベース部材、又は、傾斜上ベース部材が防水ラインLの内側に配置される場合において、
防水ラインの内側から柱材を支えるための支持部が設けられており、
支持部と、柱材の間に形成される隙間には、
スペーサーが挿設可能に構成される、こととする。
【0016】
また、請求項4に記載のごとく、
傾斜上ベース部材は、
傾斜地面に設置される底板部と、
底板部から平行に立設されて対向する一対の側板部、を有し
側板部の端面にて支持部が構成され、
支持部には、底板部と90度以下の角度をなす傾斜が設けられている、こととする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
即ち、請求項1に記載の発明においては、柱材が垂直となるように柱体を組み立てることで、施工、納品を完了することができ、施工費用の削減、施工期間の短縮を図ることができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明においては、簡易な構成により、両ベース部材の柱材に対する相対角度を変更可能とする構成が実現できる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明においては、スペーサーを介して柱材を傾斜下ベース部材、又は、傾斜上ベース部材にて、防水ラインの内側から柱材を支持することができ、外側から受ける水圧により柱材が傾くことをより確実に防止できる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明においては、傾斜地面において傾斜上ベース部材を設置した際に、柱材を傾斜上ベース部材側に傾けるようにして垂直を出すことができる、つまり、背板部と支持部が互いに干渉することがなく、柱材を直立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】設置完了状態における防水装置の外観正面図。
図2】設置完了状態における防水装置の平面図。
図3】設置状態の中柱の側面図。
図4】設置状態の中柱の水平断面図。
図5】中柱を構成するベース部材について示す斜視図。
図6】柱体と各ベース部材の構成について示す斜視図。
図7】(A)はベース部材と柱材を仮組みした状態について示す図。(B)は柱材の角度調整について示す図。
図8】(A)は防水ラインLの「外側」が「傾斜上側」、「内側」が「傾斜下側」の場合について説明する図。(B)は防水ラインLの「外側」が「傾斜下側」、「内側」が「傾斜上側」の場合について説明する図。
図9】(A)は防水ラインLの「外側」が「傾斜上側」、「内側」が「傾斜下側」の場合の別実施例について説明する図。(B)は防水ラインLの「外側」が「傾斜下側」、「内側」が「傾斜上側」の場合の別実施例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は設置完了状態における防水装置2の外観正面図、図2は設置完了状態における防水装置2の平面図である。
【0024】
なお、以下の説明では、便宜のため、図1における矢印X方向を横方向、或いは、防水板1A,1B,1Cの「横幅方向」とし、図2における矢印D方向であって防水ラインLと直交する方向を「内外方向」とする。また、防水板によって防水が必要な出入口20(開口部)を内側と外側に区切る防水ラインLが形成され、防水ラインLを基準として道路側などの水嵩が増していく側を「外側」とし、屋内側などの水の浸入を防ぐべき側を「内側」として位置関係を説明するものとする。また、図1は、図2において外側から臨む正面図とする。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施例の防水装置2は、出入口20に対向して立設される一対のガイドレール50R,50Lと、ガイドレール50R,50Lの間に立設される中柱7と、ガイドレール50R,50Lと中柱7の間に、それぞれ、順次上から差し込まれる複数の防水板1A,1B,1Cと、を有して構成される。
【0026】
各防水板1A,1B,1Cは互いに嵌合/分離可能であり、コンパクトに倉庫内などに保管することができ、また、使用時及び撤去時における運搬作業も容易にできる。なお、本実施例の防水板1A,1B,1Cは互いに嵌合/分離可能であるが、これは運搬可能な単位重量とすることを目的としているためであり、一枚の板体にて構成されることとしてもよい。
【0027】
防水板1A,1B,1Cの横幅方向(図1紙面左右方向(矢印X方向))の両側端部は、ガイドレール50R,50Lに形成される縦溝や中柱7の縦溝に夫々呑み込まれ、防水板1A,1B,1Cが上下移動する際にはこれら縦溝によって各防水板がガイドされる。
【0028】
ガイドレール50R,50Lは、出入口20の両側方に配置される側壁60R,60Lの見込み面に付設されるほか、側壁60R,60Lに埋め込まれるものとすることや、側壁60R,60Lそのものに溝を形成して構成されるものであってもよい。ガイドレール50R,50Lは、その縦溝が垂直になるように施工され、施工後は側壁60R,60Lと一体化された状態で放置することができる。或いは、側壁60R,60Lに対し垂直に設置可能に着脱自在に設けられ、豪雨等の際に適時垂直に設置可能に構成されるものとしてもよい。
【0029】
中柱7は、出入口20の車の通行や人の通行の妨げとならないように、通常は設置されずに倉庫などに収容され、豪雨等の際に適時設置される。
【0030】
次に、傾斜地面に設置可能な中柱7の構造について詳細に説明する。なお、以下で説明する中柱7の構造は、図1図2に示されるガイドレール50R,50Lの構造に適用することも可能である。
【0031】
図3は設置状態の中柱7の側面図であり、図4は設置状態の中柱7の水平断面図(図3のA−A視)であり、図5は中柱7を構成するベース部材について示す斜視図であり、図6は柱体と各ベース部材の構成について示す斜視図であり、図7(A)はベース部材を傾斜地面に設置した状態について示す図であり、図7(B)は柱材の角度調整について示す図(図4のB−B視)である。
【0032】
図3乃至図7に示すように、中柱7は、柱材71と、傾斜地面Gにおいて柱材71を垂直に立設させる一対のベース部材であって、傾斜地面Gの傾斜下側に配置される傾斜下ベース部材72と、傾斜地面Gの傾斜上側に配置される傾斜上ベース部材73と、を有して構成される。
【0033】
以下詳述すると、中柱7の柱材71は、図6に示すように、一対の背板部71a,71bと、背板部71a,71b同士を間隔を空けて接続するブリッジ板部71c,71dと、各背板部71a,71bの端部においてブリッジ板部71c,71dと反対方向に延出される側板部71e,71f,71g,71hと、を有して構成される。背板部71aと側板部71e,71fにより略コ字状の縦溝部71wが形成され、同様に、背板部71bと側板部71g,71hにより略コ字状の縦溝部71vが形成される。また、背板部71a,71bの間には鉛直縦方向の溝が形成され、この溝にて防水板を上下方向にガイドする縦溝71m,71nが構成される。側板部71e,71f,71g,71hの下部には、それぞれ、上下に間隔を空けて貫通穴71x,71yが形成される。
【0034】
また、図5に示すように、傾斜下ベース部材72は、底板部72aと、底板部72aから平行に立設されて対向する一対の側板部72b,72cと、を有して構成される。底板部72aの略中央部には貫通穴72dが設けられ、側板部72b,72cには、それぞれ、上側の上貫通穴72xと下側の下貫通穴72yが設けられる。側板部72b,72cには、図7(B)に示すように、適宜保護用ゴム72pが取り付けられる。
【0035】
同様に、図5に示すように、傾斜上ベース部材73は、底板部73aと、底板部73aから平行に立設されて対向する一対の側板部73b,73cと、を有して構成される。底板部73aの略中央部には貫通穴73dが設けられ、側板部73b,73cには、それぞれ、上側の上貫通穴73xと下側の下貫通穴73yが設けられる。側板部73b,73cには、図7(B)に示すように、適宜保護用ゴム73pが取り付けられる。
【0036】
また、図5に示すように、傾斜下ベース部材72において、側板部72b,72cには、柱材71の背板部71a(図6図7(B)参照)と対向する支持部72s,72tが形成される。本実施例では、側板部72b,72cの端面にて支持部72s,72tが構成されている。なお、この支持部72s,72tは、側板部72b,72cに設けられる別部材によって構成されるものであってもよい。
【0037】
そして、図7(B)に示すように、この支持部72sと背板部71bの間には、隙間S1が確保され、この隙間S1に楔形状のスペーサー74が挿入される。このスペーサー74を挿入することにより、スペーサー74を介して柱材71(背板部71b)が支持部72sに当接し、支持部72sによって柱材71を防水ラインLの内側から押さえるようにして、外側から受ける水圧により柱材71が上貫通穴72x及び下貫通穴72yの長孔分だけ傾くことを防止できる。なお、スペーサー74の形状は特に限定されるものではないが、本実施例では、図7に示されるように、下側に尖端部を設けた楔形状とし、様々な大きさの隙間S1に対応可能としている。また、背板部71bに固定するためにビス75(図7(B))を通すための貫通穴74aを板厚方向に設けた構成としている。
【0038】
他方、図5に示すように、傾斜上ベース部材73において、側板部73b,73cには、柱材71の背板部71b(図6図7(B)参照)と対向する支持部73s,73tが形成される。本実施例では、側板部73b,73cの端面にて支持部73s,73tが構成されている。なお、この支持部73s,73tは、側板部73s,73tに設けられる別部材によって構成されるものであってもよい。
【0039】
そして、本実施例では、図5に示すように傾斜上ベース部材73の支持部73s,73tには、底板部73aと90度以下の角度R1をなす傾斜が設けられている。換言すれば、底板部73aの板面に直交する垂線73kに対し、側板部73b,73cの面内方向(矢印M1)に傾く角度R2の傾斜が設けられている。
【0040】
以上ように傾斜上ベース部材73の支持部73s,73tについて傾斜を設けることにより、図7(B)に示すように、傾斜地面Gにおいて傾斜上ベース部材73を設置した際に、支持部73sを垂直、或いは、垂直から傾いた状態とすることができ、柱材71を傾斜上ベース部材73側に傾けるようにして垂直を出すことができる、つまり、背板部71aと支持部73sが互いに干渉することがなく、柱材71を直立させることが可能となる。このことを実現するために、図5における傾斜上ベース部材73の角度R2は、想定される傾斜地面Gの角度R3(図7(B))よりも大きく設定される。
【0041】
なお、図5に示す傾斜上ベース部材73の角度R2は、本実施例の形態において、図7(B)に示すように背板部71aと支持部73sを干渉させないために設けられるものであり、この干渉が発生しない限りは、逆側(側板部72b,72cの面外方向(矢印M2))に角度R2が設けられるものでもあってもよい。
【0042】
また、図8(A)は、防水ラインLを基準として道路側などの水嵩が増していく側を「外側」とし、屋内側などの水の浸入を防ぐべき側を「内側」とした場合において、防水ラインLの「外側」が「傾斜上側」、「内側」が「傾斜下側」となる箇所に、中柱7が設置される例が示されている。この場合には、防水ラインLの内側に傾斜下ベース部材72が配置されるとともに、隙間S1にスペーサー74が挿入され、スペーサー74を介して傾斜下ベース部材72によって柱材71を内側から押さえるようにして、外側から受ける水圧により柱材71が傾くことを防止できる。
【0043】
他方、図8(B)は、防水ラインLの「外側」が「傾斜下側」、「内側」が「傾斜上側」となる箇所に、中柱7が設置される例が示されている。この場合には、防水ラインLの内側に傾斜上ベース部材73が配置されることになる。そして、この際、傾斜上ベース部材73(支持部73s)と背板部71bの間に隙間ができない場合には、傾斜上ベース部材73によって柱材71を内側から押さえるようにして、外側から受ける水圧により柱材71が傾くことを防止できる。なお、傾斜上ベース部材73(支持部73s)と背板部71bの間に隙間ができる場合には、スペーサー74を挿入してもよい。さらに、傾斜下ベース部材72側の隙間S2にスペーサー74を挿入することとしてもよい。
【0044】
なお、以上の例からも明らかなように、傾斜地面Gの勾配は、防水ラインLを挟んで「外側」が「傾斜上側」、「内側」が「傾斜下側」の場合(図8(A))と、「外側」が「傾斜下側」、「内側」が「傾斜上側」の場合(図8(B))が想定され、いずれの場合においても、本発明は適用できる。
【0045】
また、図8(A)(B)に示される傾斜地面Gに関し、例えば、地下駐車場に通じる車路に防水装置を設置することを想定すると、勾配の角度R3(傾斜角度)は、地上出口付近の緩和勾配区間に設定される角度に対応するものであり、縦断勾配(水平距離/垂直距離×100)が0%より大きく、8.5%以下であることが想定される。
【0046】
また、図9(A)(B)は、傾斜下ベース部材72と傾斜上ベース部材73について、上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yの位置、形状以外は同一の構成とする例について示している。図5で示される例との比較では、傾斜上ベース部材73について角度R2を設けない構成とするものであり、背板部71a,71bと傾斜下ベース部材72,傾斜上ベース部材73の間に形成される隙間S3〜S6については、適宜図示せぬスペーサーを挿設することができる。このスペーサーは、隙間の上側から挿入するほか、横側、或いは、下側から挿入されるものであってもよい。
【0047】
この例によれば、傾斜下ベース部材72と傾斜上ベース部材73について共通の部品を製作し、その後、上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yを適宜穴加工することでの対応が可能となり、穴加工前の部品の共通化が図られ、製作コストの削減が図られる。
【0048】
次に、中柱7の施工手順について説明する。
まず、図7(A)に示すように、柱材71の縦溝部71vの下部に傾斜下ベース部材72の側板部72b,72cを挿入し、また、柱材71の縦溝部71wの下部に傾斜上ベース部材73の側板部73b,73cを挿入した状態とする。そして、柱材71側の貫通穴71x,71yと、各ベース部材72,73の上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yの位置を合わせ、連結ボルト86x,86yを用いて柱材71と各ベース部材72,73を仮組みし、一体化させる。
【0049】
次いで、図7(B)に示すように、傾斜地面Gの所定の位置に打ち込まれためねじアンカー82,83に対し、各ベース部材72,73の貫通穴72d,73dの位置を合せつつ、固定ボルト84,85を挿し込んで各ベース部材72,73を傾斜地面Gに仮固定する。
【0050】
次いで、柱材71の縦溝を垂直にするための垂直出しが行われる。この垂直出しは、例えば、ガイドレール50R,50L(図2)の縦溝同士の間に水糸を張り、この水糸の位置と、柱材71の縦溝を合せることや、柱材自体を下げ振りで立設することもできる。
【0051】
また、本実施例では、各ベース部材72,73の上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yを長孔形状とし、長孔内での連結ボルト86x,86yの移動を許容することで、柱材71の両ベース部材72,73に対する相対角度を変更し、柱材71の垂直出しが行える。
【0052】
なお、上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yを長孔形状とすることに加え、或いは、上貫通穴72x,73xと下貫通穴72y,73yの代わりに、柱材71の側の貫通穴71x,71yを長孔形状とすることとしてもよい。或いは、柱材71や各ベース部材72,73において、上下二箇所(三箇所などより多くてもよい)に貫通穴を配置するほか、一箇所のみとし、その一箇所を丸穴、又は、長孔とすることも考えられる。また、上貫通穴72x,73x及び下貫通穴72y,73yは夫々が長孔になっているが、水平又は鉛直方向の長孔ではなく、図5に示す通り支持部72s,72t,73s,73t側から面内方向に下がった角度付長孔とし、下貫通穴72y,73yより上貫通穴72x,73xを幅広にすることが最良の形態である。
【0053】
次いで、柱材71を垂直に調整した状態で、連結ボルト86x,86yと袋ナット87(図4参照)を増し締めし、柱材71と両ベース部材72,73を強固に連結する。これにより、両ベース部材72,73に対する柱材71の相対角度を確定することができる。なお、意匠上の理由から袋ナットを使用しているが六角ナットを使用しても良い。
【0054】
次いで、スペーサー74を隙間S1に挿入するとともに、ビス75にてスペーサー74を背板部71bに固定する。
【0055】
以上のようにして、柱材71に対し、ベース部材72,73とスペーサー74が一体化され、傾斜地面G上に立設することができる。その後、固定ボルト84,85を緩めることで、中柱7を傾斜地面Gから取り外すことができる。
【0056】
また、柱材71とベース部材72,73を連結する前、或いは、連結した後において、図7(B)に示すように、柱材71の下端部にスポンジゴムなどからなるパッキン部材76が配設される。例えば、柱材71において傾斜下側に配置される背板部71bの下端部に沿うようにパッキン部材76が貼接される。このパッキン部材76により、中柱7の傾斜下側の部位において、柱材71の下端部と傾斜地面Gの間に生じる僅かな隙間を密閉することができ、柱材71と傾斜地面Gの間の隙間を通じた水の浸入を防止できる。
【0057】
以上のように、柱材71に対し、ベース部材72,73、スペーサー74、パッキン部材76が取り付けられた状態で、中柱7の施工作業が完了する。完了後は、各部材が一体となった中柱7は傾斜地面Gから取り外され、倉庫などで保管される。なお、中柱7が設置されない通常時では、傾斜地面Gのめねじアンカー82,83にキャップビスが取り付けられる。これにより、めねじアンカー82,83内の埃などの堆積を防止できる。
【0058】
実際に防水装置を使用する際には、図3で示すように各部材が一体となった中柱7を傾斜地面Gに載置し、固定ボルト84,85を締め付けるだけで、中柱7(柱材71)を垂直に設置できる。この際、再度の垂直出しの作業が必要とされることがないため、中柱7を誰でも短時間、かつ、容易に設置できる。
【0059】
そして、中柱7を設置した後は、防水板1A〜1Cを順次ガイドレール及び中柱の縦溝71mに上側から差込み、上部キャップ77を柱材71の上部に固定して設置を完了できる。
【0060】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図1乃至図3に示すように、
防水ラインLを形成する防水板1Aの端部を支えるための柱材71と、
防水ラインLの一方側にて柱材71及び傾斜地面Gに固定される傾斜下ベース部材72と、
防水ラインLの他方側にて柱材71及び傾斜地面Gに固定される傾斜上ベース部材73と、
を有し、
傾斜下ベース部材72の柱材71に対する相対角度が調整可能に構成され、
傾斜上ベース部材73の柱材71に対する相対角度が調整可能に構成され、
傾斜下ベース部材72及び傾斜上ベース部材73は、
柱材71が傾斜地面Gに設置された際に柱材71を垂直に立設させる角度において、柱材71に固定される、
防水装置の柱体(中柱7)とするものである。
【0061】
これにより、施工現場において、柱材71が垂直となるように柱体(中柱7)を組み立てることで、施工、納品を完了することができ、施工費用の削減、施工期間の短縮を図ることができる。なお、この中柱7の構造は、図1、及び、図2に示されるガイドレール50R,50Lとして用いることも可能である。つまり、防水板を連装する防水板において、間口が広い設置箇所(出入口20など)の中間部に配置され、両側の縦溝部に防水板が挿し込まれる中柱7として用いるほか、間口の端に設置され片側の縦溝部に防水板が挿し込まれる柱体の構成として利用することもできる。さらに、防水板を連装しない防水板において、間口の端に設置される柱体の構成として利用することもできる。
【0062】
また、図7(B)に示すように、
柱材71と、傾斜下ベース部材72及び傾斜上ベース部材73は、
柱材71に設けた貫通穴71x,71yと、
傾斜下ベース部材72及び傾斜上ベース部材73に設けた貫通穴(上貫通穴72x,73x,下貫通穴72y,73y)に、
固定ボルト84,85を挿入して締め付けることで連結されるものであり、
柱材71に設けた貫通穴71x,71y、及び/又は、
傾斜下ベース部材72及び傾斜上ベース部材73に設けた貫通穴(上貫通穴72x,73x,下貫通穴72y,73y)は、
長孔形状とする。
【0063】
これにより、簡易な構成により、両ベース部材72,73の柱材71に対する相対角度を変更可能とする構成が実現できる。
【0064】
また、図8(A)(B)に示すように、
傾斜下ベース部材72、及び、傾斜上ベース部材73には、
傾斜下ベース部材72、又は、傾斜上ベース部材73が防水ラインLの内側に配置される場合において、
防水ラインLの内側から柱材71を支えるための支持部72s,73sが設けられており、
支持部72s,73sと、柱材71の間に形成される隙間には、
スペーサー74が挿設可能に構成される、こととするものである。
【0065】
これにより、スペーサー74を介して柱材71を傾斜下ベース部材72、又は、傾斜上ベース部材73にて、防水ラインLの内側から柱材71を支持することができ、外側から受ける水圧により柱材71が傾くことをより確実に防止できる。
【0066】
また、図5に示すように、
傾斜上ベース部材73は、
傾斜地面Gに設置される底板部73aと、
底板部73aから平行に立設されて対向する一対の側板部73b,73cと、を有し
側板部73b,73cの端面にて支持部73s,73tが構成され、
支持部73s,73tには、底板部73aと90度以下の角度R1をなす傾斜が設けられている、構成としている。
【0067】
これにより、図7(B)に示すように、傾斜地面Gにおいて傾斜上ベース部材73を設置した際に、柱材71を傾斜上ベース部材73側に傾けるようにして垂直を出すことができる、つまり、背板部71bと支持部73sが互いに干渉することがなく、柱材71を直立させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、建物の出入口や、地下施設への地上出入口などに設置され、豪雨時に雨水などが出入口内に浸入するのを堰き止めるための防水装置について、特に傾斜地面が構成される箇所において好適に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1A 防水板
2 防水装置
7 中柱
20 出入口
50R,50L ガイドレール
71 柱材
71m 縦溝
72 傾斜下ベース部材
72s 支持部
73 傾斜上ベース部材
73s 支持部
74 スペーサー
G 傾斜地面
L 防水ライン
S1 隙間


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9