(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465809
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】回転斜板の位置センサ機構
(51)【国際特許分類】
F04B 1/32 20060101AFI20190128BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20190128BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
F04B1/32
F04B49/06 321Z
G01B7/00 101M
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-548546(P2015-548546)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-505758(P2016-505758A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013077286
(87)【国際公開番号】WO2014096129
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】1223048.8
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504422357
【氏名又は名称】イートン インダストリアル アイピー ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー,ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】マイティンガー,マルクス
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−197709(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0266211(US,A1)
【文献】
特表2002−504221(JP,A)
【文献】
特開2010−121464(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/014128(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/20−1/24
F04B 1/30−1/32
F04B 49/06
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型油圧ポンプ(10)に旋回可能に設置された回転斜板(1)の、現在の回転斜板角度を測定するためのセンサ機構であって、
前記ポンプに対する前記回転斜板の角度を制御するように動作可能な制御ピストン(2)と、該制御ピストン(2)に設置される位置マーカ(3)と、センサ(4)と、を含み、
該センサは、該センサに対する前記位置マーカの変動から、前記制御ピストンの線形移動を検出するように、前記制御ピストンに沿って配置され、
前記センサ(4)が線形磁歪位置センサであり、前記位置マーカ(3)が磁石であり、
前記線形磁歪位置センサは、磁歪材料で作られた線材と、該線材の一端に設けられたピックアップ部材と、前記線材の他端に設けられた制動装置とを含み、
前記ピックアップ部材は、前記線材の一端に接合された磁歪材料テープと、該磁歪材料テープが通過するように設けられたコイルと、前記磁歪材料テープを磁化させるための永久バイアス磁石とを含み、
前記センサの作用では、前記線材を通る電流波が、前記位置マーカの軸方向磁界との相互作用により、前記ピックアップ部材へ向かって前記線材を下流へと伝わる歪みパルスを発生させ、前記ピックアップ部材が前記歪みパルスを検出するものであり、
前記制動装置は、前記ピックアップ部材から離れる方向へ伝わる歪みパルスのエネルギーを吸収するように設置されていることを特徴とするセンサ機構。
【請求項2】
前記センサ(4)が、非接触方式で前記位置マーカ(3)の移動を検出するように適応していることを特徴とする請求項1記載のセンサ機構。
【請求項3】
前記センサ(4)が、前記制御ピストン(2)の移動方向と平行又は同軸に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ機構。
【請求項4】
前記制御ピストン(2)が、比例弁により駆動されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のセンサ機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のセンサ機構により、前記可変容量型油圧ポンプに旋回可能に設置された前記回転斜板の、現在の回転斜板角度を測定するための測定方法であって、
前記制御ピストン(2)が、前記ポンプに対する前記回転斜板(1)の角度を制御するように動作可能であり、
前記制御ピストンに沿って配置した前記センサ(4)により、前記制御ピストン(2)に設置した位置マーカ(3)の位置を検出するステップと、
前記センサに対する前記位置マーカの変動から、前記制御ピストンの線形移動を算出するステップと、を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項6】
前記回転斜板(1)の現在の回転斜板角度を、前記制御ピストン(2)の前記線形移動から算出することを特徴とする請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型油圧ポンプに旋回可能に設置された回転斜板の、現在の回転斜板角度を検出するためのセンサ機構、可変容量型油圧ポンプに旋回可能に設置された回転斜板の、現在の回転斜板角度を検出するための測定方法、可変容量型油圧ポンプの制御ピストンの動作を制御する制御装置、及び、可変容量型油圧ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸方向ピストン式可変容量型ポンプ等の可変容量型油圧ポンプは、油圧装置に広く使用されており、加圧された作動油を様々な用途のために提供する。例を挙げると、油圧式の土工用及び建設用機械、例えば、掘削機、ブルドーザ、ローダといったものは、油圧装置に強く依存して操作が行われるため、必要な加圧流体を提供するために、可変容量型油圧ポンプを用いることが多い。これらのポンプは、機械的な軸系、例えばエンジンによって駆動され、又、吐出量及びその圧力は、ポンプに旋回可能に設置された回転斜板の角度を制御することによって調整される。しかしながら、ポンプの動作は、要求される負荷の変動に起因する、圧力及び流出の変動に従わなければならない。油圧装置の動作が十分機能し予想できるものであるように、一貫した方法でポンプの吐出量を維持することが好ましい。このため、ポンプのストロークと故にその吐出量とに関連する、回転斜板の旋回角度を回転センサが検出することによって、回転斜板の位置を検出するステップを含む、制御工程を築く試みがなされてきた。
【0003】
米国特許第6,623,247号明細書B2版には、ポンプに旋回可能に設置された回転斜板を有する、可変容量型油圧ポンプを制御するための方法及び装置が開示されている。これらの方法及び装置は、ポンプの限界力に応じて所望の回転斜板角度を決定すること、現在の回転斜板角度を測定すること、ポンプの吐出圧値を測定すること、所望の回転斜板角度と現在の回転斜板角度と吐出圧とに応じて、サーボ弁のスプールを所望の位置へ移動すること、及び、所望の回転斜板角度の位置へ回転斜板を応答性よく移動すること、を含んでいる。現在の回転斜板角度を測定する手段は、回転斜板の角度センサ(例えば、分解器やひずみゲージ)を利用して回転斜板の角度を測定するように適応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,623,247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比例弁が制御装置によって駆動されていること、比例弁が制御ピストンを移動すること、制御ピストンが位置部材を介して回転斜板を旋回させること、そして最後に、制御装置へのフィードバック信号として回転斜板の旋回角度を検出すること、を含む制御ループによって、問題が生じるが、その理由は、制御ループ内のクリアランス(clearances)の数により、制御工程の不安定な動作が引き起こされる虞があるためである。
【0006】
そこで、本発明は、可変容量型油圧ポンプの、より安定した制御を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的は、独立クレームに係るセンサ機構及び測定方法によって達成される。好適な及び有利な実施形態は、従属クレームに従う。
【0008】
本発明に係る、可変容量型油圧ポンプに旋回可能に設置された回転斜板の、現在の回転斜板角度を測定するセンサ機構は、ポンプに対する回転斜板の角度を制御するように動作可能な制御ピストンと、制御ピストンに設置される位置マーカと、位置マーカの移動を検出するように制御ピストンに沿って配置されるセンサと、を含んでいる。このようなセンサ機構を利用することによって、制御ループ内の全てのクリアランスが、好適に除外される。これにより、既存の設計と比較して、より安定したポンプ制御が可能となる。
【0009】
好ましい実施形態によれば、センサは、位置マーカの移動を非接触方式で検出するように適応している。非接触のセンサ機構は、完全に摩耗しない形態を好適に提供する。
【0010】
より好ましくは、センサが、制御ピストンの移動方向と略平行又は同軸に配置されている。具体的には、センサが線形磁歪位置センサ(linear magnetostrictive position sensor)であり、位置マーカが磁石である。
【0011】
本発明に係る、可変容量型油圧ポンプに旋回可能に設置された回転斜板の、現在の回転斜板角度を測定する測定方法は、制御ピストンがポンプに対する回転斜板の角度を制御するように動作可能であり、そして、制御ピストンに沿って配置したセンサによって、制御ピストンに設置した位置マーカの位置を検出するステップと、センサに対する位置マーカの変動から、制御ピストンの線形移動(linear translation)を算出するステップとを含んでいる。特に、回転斜板の現在の回転斜板角度を、制御ピストンの線形移動から算出する。好ましくは、本発明に係るセンサ機構を利用する。
【0012】
本発明の別の対象は、可変容量型油圧ポンプの制御ピストンの動作を制御する制御装置に関連しており、その制御ピストンが、ポンプに対する回転斜板の角度を制御するように動作可能であり、現在の回転斜板角度が、本発明に係るセンサ機構で、及び/又は、本発明に係る方法によって測定されるものである。好ましくは、制御ピストンが比例弁によって駆動される。
【0013】
本発明の更に別の対象は、可変容量型油圧ポンプに関連しており、制御ピストンがポンプに対する回転斜板の角度を制御するように動作可能であり、ポンプが本発明に係る制御装置を含んでいるものである。
【0014】
添付の図面に関連して説明される、本発明に係る実施形態から、更なる利点や詳細な点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本技術の形態に係る回転センサを備えた可変容量型油圧ポンプの断面図である。
【
図2】本発明に係るセンサ機構の実施形態を備えた可変容量型油圧ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照すると、
図1には、本技術の形態に係る回転センサSを備えた、可変容量型油圧ポンプ10のX−Y面の断面図が示されている。本発明に係るセンサ機構については、同様の可変容量型油圧ポンプ10がY−Z面の断面図で示された、
図2に関連して説明することとする。以下の説明では、本発明に係る方法及び装置の双方について言及している。
【0017】
特に
図1及び
図2を参照すると、可変容量型油圧ポンプ10(以下、「ポンプ10」ともいう)は、シリンダブロック8内に環状に配列された複数(例えば、7つ又は9つ)のピストン11を有する、軸方向ピストン回転斜板式の油圧ポンプ10であることが好ましい。好ましくは、ピストン11は、ブロック8の縦方向中心軸に設置されるシャフト6の周囲に、等間隔に配置される。シリンダブロック8は、シリンダブロック・スプリング14により、バルブプレート20と反対側に強く付勢されている。バルブプレートは、吸入口24及び吐出口26を含んでいる。ピストン11の各々は、好ましくはボール及びソケット継手23によって、滑り部材12と接続されている。各滑り部材12は、回転斜板1との接触状態が維持されている。回転斜板1は、ポンプ10に傾斜可能に取り付けられ、その傾斜角度は制御性よく調整可能である。引き続き
図1及び
図2を参照すると、ポンプ10の動作が示されている。シリンダブロック8は、一定の角速度で回転する。結果として、各ピストン11が、バルブプレート20の吸入口24及び吐出口26の各々の上を周期的に通過する。回転斜板1の傾斜角は、ピストン11をシリンダブロック8の内外に振動変位(oscillatory displacement)させるため、作動油が、低圧ポートである吸入口24内に流入すると共に、高圧ポートである吐出口26の外側に流出する。好ましい実施形態において、回転斜板1の傾斜角は、回転斜板の旋回軸まわりにX方向に傾斜し、制御ピストン2によって制御される。この制御ピストン2は、回転斜板1の傾斜角度を増大させるように動作し、これにより、ポンプ10のストロークが増大される。ポンプ10は、加圧された作動油を、バルブプレート20の吐出口26へ供給する。
【0018】
さて、
図1を参照すると、本技術の形態に係る、現在の回転斜板角度を測定する手段は、回転斜板1の角度を測定するように適応している。
図1では、現在の回転斜板角度を測定する手段が、図示の例では回転斜板1に接続された分解器(resolver)である回転斜板角度センサSを含んでいる。
【0019】
次に、
図2に関連して、本発明に係るセンサ機構について説明する。本センサ機構は、ポンプ10に対する回転斜板1の角度を制御するように動作可能な制御ピストン2と、制御ピストン2上に設置される位置マーカ3と、位置マーカ3の移動を検出するように制御ピストン2に沿って配置されるセンサ4とを含んでいる。図示の実施形態では、センサ4が、制御ピストン2の中心軸と平行に配置されている。或いは、センサ4は、制御ピストン2の内側に同軸上に設置することもできる。このようなセンサ配置を用いることによって、制御ループ内の全てのクリアランスが、好適に除外される。これにより、既存の設計と比較して、より一層安定したポンプ制御が可能となる。更に、非接触のセンサ機構を適切に適用してもよく、こうすれば完全に摩耗のない形態が提供される。
【0020】
図2のセンサ機構の好適な実施形態は、制御ピストン2の移動方向と略平行に配置される線形磁歪位置センサ4を含んでおり、この場合の位置マーカ3は磁石3である。磁歪は、鉄、ニッケル、コバルトといった強磁性材料の特性である。磁界中に設置すると、これらの材料は、大きさ及び/又は形状が変化する。外部磁界と磁区との相互作用は、磁歪効果を発生させる。磁歪位置センサ4に使用されている強磁性材料は、鉄、ニッケル、コバルトといった遷移金属である。反対に、磁歪材料に圧力(stress)を加えると、それらの磁気特性(例えば、透磁率)が変化する。これは、ビラリ効果と呼ばれるものである。磁歪及びビラリ効果は、好ましくは双方とも、磁歪材料で作られた線材5(
図3参照)を含む磁歪位置センサ4の製作に利用される。線材5は、保護カバー7内に密閉され、ポンプ10の固定部分に取り付けられる。
【0021】
ここで、
図3の概略図に関連して、センサ機構の詳細を説明する。磁歪材料で作られた線材5の重要な特性は、ウィーデマン効果である。位置マーカ磁石3によって磁歪線材5に軸方向磁界が与えられ、更に電流が線材5を通過すると、軸方向磁界の位置にねじれ(twisting)が発生する。このねじれは、通常は永久磁石である磁石3の軸方向磁界と、線材5内の電流に起因して生じる磁歪線材5に沿った磁界との、相互作用によって引き起こされる。電流は、例えば、1又は2μ秒の短期パルスで印加され、結果として、機械的なねじれが超音波として線材5に沿って伝わる。従って、磁歪線材5は、導波路5とも呼ばれる。波は、導波材料内を音速、約3000m/秒で伝わる。磁歪位置センサ4の作用では、電流波と位置磁石3との相互作用により、歪みパルス(strain pulse)が発生し、この歪みパルスは、導波路5を下流へと伝わり、ピックアップ部材15によって検出される。軸方向磁界は、位置磁石3によって付与される。位置磁石3は、制御ピストン2に取り付けられる。導波線材5を密閉している保護カバー7の図示は省略する。位置磁石3の位置は、導波路5に対する最初の電流パルスの印加時に検出される。電流パルスは、位置磁石3の位置で発生することとなる音波を引き起こす。音波は、ピックアップ15によって検出されるまで、導波路5に沿って伝わる。この際、経過時間は、位置磁石3とピックアップ15との間の距離を意味する。ピックアップ15から離れる方向へ伝わる波からの干渉信号を回避するために、そのエネルギーを制動装置(damping device)16によって吸収する。ピックアップ15は、ビラリ効果を利用するものである。導波路5には、導波路5の一端の近傍に小片の磁歪材料テープ17が接合されている。このテープ17は、コイル18を通過すると共に、小型の永久バイアス磁石19によって磁化されている。音波が導波路5を下流へと伝わり、テープ17まで達すると、波に誘発される力(stress)により、透磁率が変化した波がテープ17内に引き起こされる。続いて、これはテープ内の磁束密度を変化させるため、ファラデー効果により、コイル18から電圧出力パルスが提供される。電圧パルスは、コイル端子21、22において電子回路(図示省略)により検出され、所望の出力へ調整される。
【符号の説明】
【0022】
1:回転斜板、2:制御ピストン、3:位置マーカ(位置磁石)、4:センサ、5:線材(導波路)、6:シャフト、7:保護カバー、8:シリンダブロック、10:可変容量型油圧ポンプ、11:ピストン、12:滑り部材、14:シリンダブロック・スプリング、15:ピックアップ部材、16:制動装置、17:テープ、18:コイル、19:永久バイアス磁石、20:バルブプレート、21、22:コイル端子、23:ボール及びソケット継手、24:吸入口、26:吐出口、S:分解器