(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明導電層がパターン化されており、透明導電層がパターンを形成するパターン形成部と、透明導電層が除去されたパターン開口部とを有する請求項1に記載の透明導電性フィルム。
パターン形成部に白色光を照射した際の反射光と、パターン開口部に白色光を照射した際の反射光との反射率差ΔRの絶対値が0.5%以下である請求項2に記載の透明導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<透明導電性フィルム>
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、図面に示した形態は実寸比ではなく、また、説明の便宜上、部分的に拡大又は縮小して示している箇所がある。
図1〜
図2は、それぞれ、本発明の透明導電性フィルムの実施形態を模式的に表す断面図である。
図1〜
図2の透明導電性フィルム10において、透明フィルム基材1の片面に、ハードコート層2、高屈折率層3、低屈折率層4、及び透明導電層5が順次形成されている。
図2は、透明導電層5がパターン化された透明導電性フィルム10を示しており、透明導電層5がパターンを形成するパターン形成部Pと、透明導電層5が除去されたパターン開口部Oを有する。
【0021】
(透明フィルム基材)
透明フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0022】
図1の実施形態の透明導電性フィルム10の透明導電層5が、
図2の実施形態のように、パターン形成部Pとパターン開口部Oとのパターン化された場合において、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの間の反射率差をより効果的に低減する観点から、透明フィルム基材1の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.45〜1.70であることがより好ましく、1.50〜1.70であることがさらに好ましく、1.52〜1.65であることが特に好ましい。屈折率を上記範囲とする観点から、透明フィルム基材1の材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
【0023】
透明フィルム基材1の厚さは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、2〜100μmの範囲内であることがより好ましい。透明フィルム基材1の厚さが2μm未満であると、透明フィルム基材1の機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして誘電体層2、透明導電層5を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚さが200μmを超えると、透明導電層5の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0024】
透明フィルム基材1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、フィルム基材上に形成されるハードコート層2との密着性を向上させるようにしてもよい。また、ハードコート層2を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、フィルム基材表面を除塵、清浄化してもよい。
【0025】
(ハードコート層)
ハードコート層2は、透明フィルム基材1上に形成されている。ハードコート層2の形成材料としては、ハードコート層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0026】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0027】
ハードコート層2には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、微粒子、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0028】
ハードコート層2の厚さは特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上2.0μm以下がより好ましい。ハードコート層の厚さが過度に小さいと、透明フィルム基材からのオリゴマー等の低分子量成分の析出を抑止することができず、透明導電性フィルムや、これを用いたタッチパネルの視認性が悪化する場合がある。一方、ハードコート層の厚さが過度に大きいと、クラックが発生したり、透明導電層の結晶化時やタッチパネルの組み立て時の加熱によって、ハードコート層形成面を内側として透明導電性フィルムがカールする場合がある。
【0029】
ハードコート層2の屈折率は特に限定されないものの、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率や厚さとの関係の観点から、1.48以上1.53以下が好ましく、1.50以上1.52以下がより好ましい。
【0030】
(高屈折率層)
高屈折率層3は、反射特性の制御を目的として、ハードコート層2上に設けられるものである。高屈折率層3の材料としては、NaF(1.3)、Na
3AlF
6(1.35)、LiF(1.36)、MgF
2(1.38)、CaF
2(1.4)、BaF
2(1.3)、BaF
2(1.3)、SiO
2(1.46)、LaF
3(1.55)、CeF(1.63)、Al
2O
3(1.63)などの無機物(括弧内の数値は屈折率を示す)や、屈折率が1.4〜1.6程度のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などの有機物、あるいは上記無機物と上記有機物の混合物が挙げられる。
【0031】
上記材料の中でも、高屈折率層3の材料は、有機物が好適に用いられる。特に、有機物として、アクリル樹脂を含む紫外線硬化型樹脂を使用するのが望ましい。高屈折率層3が有機物であれば、屈折率の調整が容易となるとともに、透明導電層5及び低屈折率層4をエッチングによりパターン化する際に、高屈折率層3がエッチングによってパターン化されないようにすることが可能である。
【0032】
高屈折率層3は、ナノ微粒子を有していてもよい。高屈折率層3に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、3nm〜35nmの範囲が好ましく、5nm〜20nmの範囲がより好ましい。また、高屈折率層3中のナノ微粒子の含有量は5重量%〜200重量%が好ましく、50重量%〜150重量%であることがより好ましい。高屈折率層3中にナノ微粒子を含有することによって、高屈折率層3自体の屈折率の調整を容易に行うことができる。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、体積基準による粒度分布の平均粒径(D
50)であり、粒子を水中に分散させた溶液を、光回折/散乱法によって測定することで求められる。
【0033】
ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
高屈折率層3は、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライコーティング法、及びウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。中でも、高屈折率層3は、ウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。透明フィルム基材は、一般にフィルム中のフィラー等の存在に起因して、その表面に凹凸を有しているが、高屈折率層3がウェットコーティング法により製膜されると、基材の表面凹凸が緩和された均一な膜が形成されやすい。そのため、高屈折率層3の表面も平滑化され、その上に形成される低屈折率層4や透明導電層5の膜質を良好とすることができる。
【0035】
また高屈折率層3がウェットコーティング法により製膜されることで、透明フィルム基材1からのオリゴマーの析出も抑制され得る。一般にポリマーを加熱すると、解重合反応により生じたオリゴマーがフィルム表面に析出する場合があるが、特にポリエステル等の縮合ポリマーではその傾向が顕著である。そして、透明導電層5の製膜時やアニール(結晶化)時の加熱により、フィルム基材からオリゴマーが析出し、これが透明導電層5の結晶化を阻害したり、透明導電性フィルムの視認性に悪影響を与える場合がある。これに対して、透明フィルム基材1上の高屈折率層3がウェットコーティングにより製膜されている場合は、これがオリゴマー封止層としても作用し得るために、上記のようなオリゴマー析出による悪影響の発生を抑止し得る。
【0036】
透明導電性フィルム10における色味の発生を抑制し、かつ透明導電層5がパターン化された場合において、パターン形成部とパターン開口部との反射率差を抑制するという観点から、透明導電性フィルム10では、透明導電層5側から離された位置に高屈折率層3を配置し、近い側に低屈折率層4を配置して、異なる屈折率を有する層を設けている。また、上記同様の観点から、高屈折率層3の屈折率は1.60以上1.70以下であればよいが、1.60以上1.68以下であることが好ましく、1.62以上1.65以下であることがより好ましい。
【0037】
高屈折率層3の厚さは25nm以上35nm以下であればよいが、27nm以上33nm以下であることが好ましく、28nm以上32nm以下であることがより好ましい。高屈折率層3の厚さが前記範囲内であれば、透明性を確保できる上、透明導電層5がパターン形成部Pとパターン開口部Oとにパターン化された場合であっても両者の反射率差が効果的に低減されるとともに、色味の発生も抑制された視認性に優れる透明導電性フィルムとすることができる。
【0038】
(低屈折率層)
低屈折率層4は、反射特性の制御や、透明導電層5との密着性を目的として、高屈折率層3上に設けられるものである。低屈折率層4の材料としては高屈折率層3の形成材料として示した有機物や、無機物、あるいは有機物と無機物の混合物を好適に用いることができる。有機物としてはアクリル樹脂を含む紫外線硬化型樹脂が好ましく、無機物としては、SiO
2、MgF
2、Al
2O
3などが好ましく、中でも、SiO
2が好ましい。低屈折率層4を無機物により形成することで、エッチングによりパターン化が可能である。
【0039】
低屈折率層4も、屈折率の調整の容易化を目的としてナノ微粒子を有していてもよい。低屈折率層4に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、3nm〜35nmの範囲が好ましく、5nm〜20nmの範囲がより好ましい。また、高屈折率層3中のナノ微粒子の含有量は5重量%〜200重量%が好ましく、50重量%〜150重量%であることがより好ましい。ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては高屈折率層3と同様のものを好適に採用することができる。
【0040】
低屈折率層4も高屈折率層3と同様、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライコーティング法、及びウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。中でも、低屈折率層4は、ウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。例えば、透明導電層5として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である低屈折率層4の表面が平滑であると、透明導電層の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、低屈折率層4もウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
【0041】
透明導電性フィルム10における色味の発生を抑制し、かつ透明導電層5がパターン化された場合においてパターン形成部とパターン開口部との反射率差を抑制するという観点から、低屈折率層4の屈折率は1.40以上1.50以下であればよいものの、1.42以上1.49以下であることが好ましく、1.43以上1.48以下であることがより好ましい。
【0042】
低屈折率層4の厚さは40nm以上50nm以下であればよいが、41nm以上49nm以下であることが好ましく、42nm以上47nm以下であることがより好ましい。低屈折率層4の厚さを前記範囲内とすることにより、透明性を確保できる上、透明導電層5がパターン形成部Pとパターン開口部Oとにパターン化された場合であっても両者の反射率差が効果的に低減されるとともに、色味の発生も抑制された視認性に優れる透明導電性フィルムとすることができる。
【0043】
(透明導電層)
透明導電層5は、低屈折率層4上に設けられる。透明導電層5の形成材料は特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
【0044】
透明導電層5の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電層の厚さが15nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電層の厚さが35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
【0045】
透明導電層5の屈折率としては、透明導電層5がパターン化された場合において、パターン部とパターン開口部との反射率差を抑制することに加えて、両者の色相の差を抑制する観点から、低屈折率層4の屈折率より大きいことが好ましく、具体的に透明導電層5の屈折率は、1.95〜2.05程度が好ましい。
【0046】
透明導電層5の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、非晶質の透明導電層5を形成した後、必要に応じて、加熱アニール処理を施して結晶化することができる。
【0047】
なお、エッチングにより透明導電層5をパターン化する場合、先に透明導電層5の結晶化を行うと、エッチングが困難となる場合がある。そのため、透明導電層5のアニール処理は、透明導電層5をパターン化した後に行うことが好ましい。さらに低屈折率層4をもエッチングによりパターン化する場合には、透明導電層5及び低屈折率層4をエッチングした後に透明導電層5のアニール処理を行うことが好ましい。
【0048】
本実施形態の透明導電性フィルムにおいて、高屈折率層3と低屈折率層4の光学厚さの合計は、10〜120nmであることが好ましく、15〜100nmであることがより好ましく、20〜80nmであることがさらに好ましい。また、高屈折率層3、低屈折率層4及び透明導電層5の光学厚さの合計は、45nm〜155nmであることが好ましく、50nm〜140nmであることがより好ましく、55nm〜130nmであることがさらに好ましい。なお、光学厚さは、屈折率と厚さの積で表される。
【0049】
また、
図2に示すように、透明導電層5がパターン化される場合において、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの反射率差を低減する観点から、パターン形成部の光学厚さの合計とパターン開口部の光学厚さの合計との差は、35nm〜90nmであることが好ましく、40nm〜80nmであることがより好ましく、25nm〜70nmであることがさらに好ましい。
【0050】
透明導電層5、及び必要に応じて低屈折率層4は、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種のパターン形状にパターン化することができる。パターン形状としては、例えば、各パターン形成部Pが短冊状に形成され、パターン形成部Pとパターン開口部Oとがストライプ状に配置された形態が挙げられる。
図3は、本実施形態の透明導電性フィルム10の模式的平面図であり、透明導電層がストライプ状にパターン化された形態の一例である。なお、
図3では、パターン形成部Pの幅がパターン開口部Oの幅より大きく図示されているが、本発明は、かかる形態に制限されるものではない。
【0051】
本実施形態の透明導電層5がパターン化された透明導電性フィルムは、透明フィルム基材1の片面又は両面に、ハードコート層2、高屈折率層3、低屈折率層4及び透明導電層5が上記のように積層されるものであれば、その製造方法は特に制限されない。例えば、常法に従って、透明フィルム基材の片面又は両面に、透明フィルム基材1側からハードコート層2、高屈折率層3及び低屈折率層4を介して、透明導電層5を有する透明導電性フィルムを作製した後に、必要に応じて透明導電層5を、エッチングしてパターン化することにより製造することができる。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクによりパターン形成部Pを覆って、エッチング液により、透明導電層5、及び必要に応じて低屈折率層4をエッチングする方法が好適に用いられる。
【0052】
透明導電層5としては、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズが好適に用いられるため、エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、及びこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。
【0053】
また、低屈折率層4を透明導電層5と同様にエッチングによりパターン化する場合、透明導電層5をエッチングした場合と同様のマスクによりパターン形成部Pを覆って、エッチング液により、低屈折率層4をエッチングすることが好ましい。低屈折率層4をエッチングする場合の形成材料としては、前述通り、SiO
2等の無機物が好適に用いられるため、エッチング液としては、アルカリが好適に用いられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、及びこれらの混合物があげられる。なお、低屈折率層4をエッチングによりパターン化する場合、前述のごとく、高屈折率層3は、酸又はアルカリによって、エッチングされないような有機物により形成するのが好ましい。
【0054】
本実施形態の透明導電フィルムでは、透明導電層5がパターン化された場合において、パターン形成部に白色光を照射した際の反射光と、パターン開口部に白色光を照射した際の反射光との反射率差ΔRの絶対値は0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。また、パターン形成部の反射光とパターン開口部の反射光の色差ΔEは、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。反射率差ΔRの絶対値や色差ΔEを上記範囲内とすることで、パターン観察を抑制してより見栄えの良好な透明導電性フィルムを得ることができる。
【0055】
なお、本明細書において、「反射率」とは、特に断りのない限り、可視光(波長380〜780nm)の領域において波長5nm間隔で測定した反射率の平均値を表す。また、「色相」とは、JIS Z8729に規定されているL
*a
*b
*表色系における、L
*値、a
*値、b
*のことであり、「色差」とは、L
*の差ΔL
*、a
*の差Δa
*、及びb
*の差Δb
*を用いて、下記式で表される値のことである。
ΔE={(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2}
0.5
【0056】
透明導電性フィルムの色相b
*値は実用可能な透明性を発揮する限り特に限定されないものの、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが好ましい。透明導電性フィルムにおけるb
*値を上記範囲とすることにより、色味(特に黄色味)の発生を効率良く抑制することができる。
【0057】
一般に、透明導電層は金属酸化物から形成されるために、屈折率が高く、表面での反射率が高い。一方、透明導電層5がパターン化された場合のパターン開口部に露出する低屈折率層は透明導電層に比して屈折率が低く、表面での反射率が低い。そのため、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの間に、反射率差が生じて、パターンが視認され易くなる傾向がある。これに対して、本発明では、透明フィルム基材1と透明導電層5との間に高屈折率層3及び低屈折率層4という屈折率の異なる2層を設け、さらにその厚さや屈折率を上記範囲に調整することで、界面多重反射により、透明導電層表面での反射光を干渉により打ち消して、パターン形成部Pでの反射率が低減される。そのため、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの、反射率差が低減され、パターンが視認され難くなる。
【0058】
また、透明導電層5側から近い方を低屈折率層4とし、遠い方を高屈折率層3とすることで、反射率差が低減されることに加えて、パターン化部とパターン開口部とのスペクトル形状の相違も小さくなる傾向がある。
【0059】
<タッチパネル>
透明導電性フィルム10は、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、透明導電層がパターン化された場合であっても、パターン形成部とパターン開口部の視認性の差、特に反射率の差が小さく抑えられることから、投影型静電容量方式のタッチパネルや、多点入力が可能な抵抗膜方式のタッチパネルのように、所定形状にパターン化された透明導電層を備えるタッチパネルに好適に用いられる。
【0060】
タッチパネルの形成に際しては、透明導電性フィルムの一方又は両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルムの透明導電層5が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。
【0061】
透明導電性フィルムと基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0062】
本発明の透明導電性フィルムには視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合には透明導電性フィルムに貼り合わせる透明基体の外表面(粘着剤層とは反対側の面)に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。一方、静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、防眩処理層や反射防止層は、透明導電層5上に設けられることもある。
【0063】
上記の本発明にかかる透明導電性フィルムを、タッチパネルの形成に用いた場合、タッチパネル形成時のハンドリング性に優れる。そのため、透明性及び視認性に優れたタッチパネルを生産性高く製造することが可能である。
【実施例】
【0064】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
<屈折率>
ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層の各層形成用塗布液を準備し、これらの硬化物についての屈折率をJIS K7105に準拠して測定し、各層の屈折率とした。具体的には、未処理のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという。)上にバーコーターを用いて形成用塗布液(後述)を塗布し、80℃で60分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯を用いて0.6J/cm
2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。この操作を2回繰り返して2層の硬化膜が積層された硬化物を形成した後、PETフィルム上から硬化物を剥がした。得られた硬化物について、アッベ屈折率計を用い、測定光(ナトリウムD線)を入射させて25.0±1.0℃で4回測定し、測定値の平均を各層の屈折率nD25とした。
【0066】
<各層の厚さ>
ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層及びITO膜の厚さは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システム「MCPD2000」(商品名)を用い、干渉スペクトルの波形を基礎に算出した。
【0067】
<パターン見栄え(目視)の評価>
後述の手順により透明導電層(ITO膜)をパターン化及び結晶化した透明導電性フィルムについて、透明導電性フィルム(サンプル)のITO形成面を視認側とし、裏面側(PETフィルム側)に黒色のアクリル板を貼り合わせて遮光層を形成し、サンプルの裏面からの反射や裏面側からの光の入射が殆どない状態とした上で、目視にて評価を行った。パターンがほとんど視認されなかった場合を「○」、パターンが視認された場合を「×」として評価した。
【0068】
<パターン見栄え(反射率差ΔR(Y値))の評価>
後述の手順により透明導電層(ITO膜)をパターン化及び結晶化した透明導電性フィルムについて、日立ハイテク社製の分光光度計「U−4100」(商品名)の積分球測定モードを用いて、ITO膜への入射角を2度として、波長380〜780nmの領域におけるパターン形成部とパターン開口部の反射率を波長5nm間隔で測定した。次いで、パターン形成部とパターン開口部の平均反射率を算出し、これらの平均反射率の値からパターン形成部とパターン開口部との間の反射率差ΔR(Y値)を算出した。なお、前記測定は、透明導電性フィルム(サンプル)の裏面側(PETフィルム側)に黒色のアクリル板を貼り合わせて遮光層を形成し、サンプルの裏面からの反射や裏面側からの光の入射がほとんどない状態で測定を行った。
【0069】
<パターン見栄え(色差ΔE)の評価>
後述の手順により透明導電層(ITO膜)をパターン化及び結晶化した透明導電性フィルムについて、D65光源を用いて、パターン形成部及びパターン開口部のそれぞれの透過光のL
*、a
*及びb
*を分光光度計(Dot−3:村上色彩技術研究所製)にて測定し、以下の式を用いてパターン形成部の反射光とパターン開口部の反射光の色差ΔEを算出した。また、この際に得られたb
*値を透明導電性フィルムの色味の評価の指標として用いた。
ΔE={(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2}
0.5
【0070】
<全光線透過率の測定>
全光線透過率は、後述の手順で形成した透明導電層(ITO膜)をパターン化せずに結晶化した各測定サンプルについて、JISK−7105に準じて、ヘイズメーター(スガ試験機社製、品名「HGM−2DP」)を用いて測定した。
【0071】
<色相b
*値の測定>
色相b
*値は、後述の手順で形成した透明導電層(ITO膜)をパターン化せずに結晶化した各測定サンプルについて、D65光源を用い、透過光のb
*を分光光度計(Dot−3:村上色彩技術研究所製)にて測定した。
【0072】
[実施例1]
(ハードコート層の形成)
厚さ50μmのPETフィルムからなる透明フィルム基材(屈折率1.65)の両面に、ハードコート層形成用塗布液として紫外線硬化型アクリル樹脂(大日本インキ化学工業社製、品名「GRANDIC PC−1070」、屈折率1.52)を乾燥後の厚さが2.0μmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cm
2の紫外線を照射することで、ハードコート層(屈折率1.52)を形成した。
【0073】
(高屈折率層の形成)
屈折率1.52の紫外線硬化型アクリル樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「GRANDIC PC−1070」)に酸化ジルコニウムのナノ粒子(日産化学社製、品名「OZ−S30K−AC」、平均粒径10nm)を配合し、屈折率を1.65に調整した高屈折率層形成用塗布液を用意した。
【0074】
次に、一方のハードコート層の表面に高屈折率層形成用塗布液を乾燥後の厚さが30nmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cm
2の紫外線を照射することで、高屈折率層(屈折率1.65)を形成した。
【0075】
(低屈折率層の形成)
屈折率1.52の紫外線硬化型アクリル樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「GRANDIC PC−1070」)にナノシリカ粒子(日産化学社製、品名「PGM−ST」、平均粒径15nm)を配合し、屈折率を1.45に調整した低屈折率層形成用塗布液を調整した。
【0076】
形成した高屈折率層の表面に低屈折率層形成用塗布液を乾燥後の厚さが45nmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cm
2の紫外線を照射することで、低屈折率層(屈折率1.45)を形成した。
【0077】
(ITO膜の形成)
次に、形成した低屈折率層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ24nmのITO膜(屈折率2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0078】
(ITO膜のパターン化)
上記ITO膜上に、ストライプ状にパターン化されるようにセロハンテープを貼り合わせた後、これを50℃、10重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に10分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。得られたITO膜のパターン幅は6mmであり、パターンピッチは6mmであった。その後、セロハンテープを除去し、ITO膜のパターン化を行った。
【0079】
(ITO膜の結晶化)
ITO膜のエッチングを行った後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
【0080】
[実施例2]
ハードコート層の厚さを1.5μmとし、高屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.63に調整し、低屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.47に調整し、低屈折率層の厚さを40nmとしたこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0081】
[実施例3]
低屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.43に調整したこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0082】
[比較例1]
高屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.58に調整したこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0083】
[比較例2]
高屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.75に調整したこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0084】
[比較例3]
高屈折率層の厚さを20nmとしたこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0085】
[比較例4]
高屈折率層の厚さを40nmとしたこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0086】
[比較例5]
低屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.38に調整したこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0087】
[比較例6]
低屈折率層形成用塗布液の屈折率を1.52に調整したこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0088】
[比較例7]
低屈折率層の厚さを35nmとしたこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0089】
[比較例8]
低屈折率層の厚さを55nmとしたこと以外は、実施例1と同様に透明導電性フィルムの作製及び透明導電層のパターン化を行った。
【0090】
各実施例及び比較例の透明導電性フィルムの評価結果を表1に示す。本評価結果をパターン見栄え評価と光学特性評価の観点から総合して考慮した透明導電性フィルムの総合評価も併せて示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1から、実施例の透明導電性フィルムでは、色相b
*値が小さく、透明導電層がパターン化された場合においてもパターン形成部とパターン開口部との間の反射率差が小さいため、色味の発生も抑制されるとともに、パターンが視認され難くなっており、総合的に良好な結果であったことがわかる。一方、比較例1〜7のサンプルでは、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差及び色差が実施例と比較して高くなっており、パターンの見栄えが劣った結果となっている。比較例8では、目視評価は良好であったものの、色相b*の値が高く黄色味を帯びてしまい、総合的な判断では実施例に劣った結果となっている。