特許第6465872号(P6465872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6465872複数の充填繊維を含むセメント系複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465872
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】複数の充填繊維を含むセメント系複合材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 16/06 20060101AFI20190128BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C04B16/06 A
   C04B28/02
【請求項の数】28
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-520334(P2016-520334)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公表番号】特表2016-523802(P2016-523802A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】EP2014060279
(87)【国際公開番号】WO2014202312
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/837,971
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ケロボ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル アティオグベ
(72)【発明者】
【氏名】トマス チライル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー レイニッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダン ヴォイトコ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ シェフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ランドルフ
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1888161(CN,A)
【文献】 特開昭61−235439(JP,A)
【文献】 特開2001−081626(JP,A)
【文献】 特開平04−074741(JP,A)
【文献】 特開平07−173722(JP,A)
【文献】 特表2008−500463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
D01F 1/00−6/96
D01F 9/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
セメント系組成物;および
前記セメント系組成物中に配置された複数の繊維であって、前記複数の繊維の各々は以下:
合成樹脂成分、
界面活性剤、および
金属酸化物
を含むものとする、前記複数の繊維;
を含む複合材料であって、
ここで、前記合成樹脂成分は、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよびそれらの組み合わせの群から選択され、かつ、前記複数の繊維の各々100質量部を基準にして少なくとも90質量部の量で存在し、
前記界面活性剤は、アルコールアルコキシレート、アルコールブロック/ヘテリックアルコキシレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体、脂肪アルコール、脂肪アルコキシアルコール、ポリアルキレングリコール、アルキルフェノールアルコキシレートおよびこれらの組み合わせの群から選択され、かつ、前記複数の繊維の各々100質量部を基準にして10質量部以下の量で存在し、
前記金属酸化物は二酸化ケイ素であり、かつ、前記複数の繊維の全質量を基準にして0.1〜5質量%の量で存在し、
前記界面活性剤および前記金属酸化物の各々は、独立して、前記複数の繊維の各々の全体に分散されている、前記複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤がアルコールアルコキシレートである、前記複合材料。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤がアルコールブロック/ヘテリックアルコキシレートである、前記複合材料。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤がポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体である、前記複合材料。
【請求項5】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤が脂肪アルコールである、前記複合材料。
【請求項6】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤が脂肪アルコキシアルコールである、前記複合材料。
【請求項7】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤がポリアルキレングリコールである、前記複合材料。
【請求項8】
請求項1に記載の複合材料であって、前記界面活性剤がアルキルフェノールアルコキシレートである、前記複合材料。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の複合材料であって、前記界面活性剤が100,000g/モル以下の平均分子量を有する、前記複合材料。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の複合材料であって、前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1またはそれらの組み合わせである、前記複合材料。
【請求項11】
請求項10に記載の複合材料であって、前記ポリオレフィンがポリプロピレンである、前記複合材料。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の複合材料であって、前記合成樹脂成分が少なくとも1,000g/モルの平均分子量を有する、前記複合材料。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の複合材料であって、前記セメント系組成物がさらにコンクリートと定義される、前記複合材料。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の複合材料であって、前記複数の繊維が前記複合材料100質量部を基準にして0.1〜5質量部の量で存在する、前記複合材料。
【請求項15】
セメント系組成物と、前記セメント系組成物中に配置され、かつ合成樹脂成分、界面活性剤および金属酸化物を含む複数の繊維とを含む複合材料を形成する方法において、前記方法が以下のステップ:
合成樹脂成分、界面活性剤および金属酸化物を合一することによって複数の繊維を形成させるステップ;および
前記複数の繊維をセメント系組成物中に配置することによって複合材料を形成させるステップ;
を含み、
その際、前記合成樹脂成分は、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよびそれらの組み合わせの群から選択され、かつ、前記複数の繊維の各々100質量部を基準にして少なくとも90質量部の量で存在し、
前記界面活性剤は、アルコールアルコキシレート、アルコールブロック/ヘテリックアルコキシレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体、脂肪アルコール、脂肪アルコキシアルコール、ポリアルキレングリコール、アルキルフェノールアルコキシレートおよびこれらの組み合わせの群から選択され、かつ、前記複数の繊維の各々100質量部を基準にして10質量部以下の量で存在し、
前記金属酸化物は二酸化ケイ素であり、かつ、前記複数の繊維の全質量を基準にして0.1〜5質量%の量で存在し、前記界面活性剤および前記金属酸化物の各々は、独立して、前記複数の繊維の各々の全体に分散されている、前記方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤がアルコールアルコキシレートである、前記方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤がアルコールブロック/ヘテリックアルコキシレートである、前記方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤がポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体である、前記方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤が脂肪アルコールである、前記方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤が脂肪アルコキシアルコールである、前記方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤がポリアルキレングリコールである、前記方法。
【請求項22】
請求項15に記載の方法であって、前記界面活性剤がアルキルフェノールアルコキシレートである、前記方法。
【請求項23】
請求項15から22までのいずれか1項に記載の方法であって、前記合成樹脂成分および前記界面活性剤を合一することによって前記複数の繊維を形成させるステップが、以下のステップ:
前記合成樹脂成分、前記界面活性剤および前記金属酸化物を第1の押出機で185℃〜215℃の温度で押出成形することによって、少なくとも1つのストランドを形成させるステップ;
前記少なくとも1つのストランドを水で急冷し、次いで前記水で急冷された少なくとも1つのストランドを切断することによってペレットを形成させるステップ;および
前記ペレットを第2の押出機で押出成形することによって前記複数の繊維を形成させるステップ
を含む、前記方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記第1の押出機がさらに単軸スクリュー押出機と定義される、前記方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記第1の押出機がさらに二軸スクリュー押出機と定義される、前記方法。
【請求項26】
請求項23から25までのいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の押出機が35:1〜45:1の長さ対直径の比(L/D)を有する、前記方法。
【請求項27】
請求項23から26までのいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の押出機が毎分140〜160回転(RPM)の速度で回転するスクリューを含む、前記方法。
【請求項28】
以下:
セメント系組成物;および
前記セメント系組成物中に配置された複数の繊維であって、前記複数の繊維の各々が以下:
ポリプロピレン、ここで、前記ポリプロピレンは、前記複数の繊維の各々100質量部を基準にして少なくとも90質量部の量で存在し、
アルコールアルコキシレート、アルコールブロック/ヘテリックアルコキシレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体、脂肪アルコール、脂肪アルコキシアルコール、ポリアルキレングリコール、アルキルフェノールアルコキシレートおよびそれらの組み合わせの群から選択される界面活性剤、ここで、前記界面活性剤は、前記複数の繊維の合計質量を基準にして10質量%以下の量で存在し、および
二酸化ケイ素、ここで、前記二酸化ケイ素は、前記複数の繊維の合計質量を基準にして0.1〜5質量%の量で存在する、を含むものとする、前記複数の繊維;
を含む複合材料であって、
ここで、前記界面活性剤および前記二酸化ケイ素の各々は、独立して、前記複数の繊維の各々の全体に分散されている、前記複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、複数の繊維を含む複合材料および該複合材料を形成する方法に関する。より具体的には、前記複数の繊維は、特定の合成樹脂成分、界面活性剤および金属酸化物を含む。
【0002】
関連技術の説明
熱可塑性材料(例えば、合成樹脂繊維)から形成される繊維は、化学的に不活性であり、非常に熱安定性であり、かつ複合材料の強化に理想的な高い引張強さを有する傾向にある。その結果、熱可塑性繊維で強化された複合材料は、典型的には、非強化材料と比較して、改善された物理的特性、例えば改善された引張強さ、改善された耐荷重能力、並びに収縮およびクラックの減少を示す。しかしながら、そのような繊維は、典型的には規則的な構造を有しておりかつ極性官能基を欠いているため、複合材料において望ましくない疎水特性を示す傾向があり、これによって延性および曲げ能力が乏しくなることがある。この望ましくない疎水特性によって、典型的には繊維と複合材料との間の接着不良が生じ、それによって、望ましくない特性、例えば脆性およびひび割れの傾向をも有する複合材料が生じる。
【0003】
合成樹脂繊維と複合材料との間の接着性を高めるための既存の技術には表面変性が挙げられるが、これは典型的には非経済的で持続不可能であって技術的に困難であり(例えばコロナ処理、プラズマ処理および火炎処理)、かつ環境に有害(例えばクロムおよび酸性酸化)である。他の表面変性には、親水性(または湿潤性)を高めるための湿潤剤での合成樹脂繊維のコーティングが挙げられる。しかしながら、こうした湿潤剤は合成樹脂繊維と複合材料との混合中に合成樹脂繊維から剥がれやすい。湿潤剤が剥がれると、合成樹脂繊維の疎水性部分が露出される。上記の通り、こうした露出は、脆性挙動およびひび割れの傾向を示す複合材料をもたらしうる。従って、改善された複合材料を開発する余地が残されている。
【0004】
発明の概要
本発明は、セメント系組成物を含む複合材料を提供する。前記複合材料はさらに、前記セメント系組成物中に配置された複数の繊維を含む。前記複数の繊維の各々は、合成樹脂成分、界面活性剤および金属酸化物を含む。前記界面活性剤および前記金属酸化物の各々は、独立して、前記複数の繊維の各々の全体に不均一に分散されている。
【0005】
本発明はさらに、前記複合材料を形成する方法を提供する。前記方法は、前記合成樹脂成分、前記界面活性剤および前記金属酸化物を合一することによって前記複数の繊維を形成させるステップを含む。前記方法はさらに、前記複数の繊維を前記セメント系組成物中に配置することによって前記複合材料を形成させるステップを含む。
【0006】
本発明のその他の利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより容易に正しく認識され、またより十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の繊維であって、該繊維の全体に配置されている界面活性剤を含む該繊維の一実施形態の断面を示す明視野反射光顕微鏡像である。
図2図2は、実施例の本発明による試料および比較試料の変位の関数としての、初期ひび割れ時の応力に正規化された引張応力の線グラフである。
図3図3は、実施例の本発明による試料および比較試料の偏差の関数としての荷重の線グラフである。
図4A図4Aは、界面活性剤および二酸化ケイ素を含む本発明の繊維の一実施形態のSEM断面像である。
図4B図4Bは、図5Aの繊維のSEM断面像であり、その際、界面活性剤は除かれたが二酸化ケイ素は残っている。
図5図5は、界面活性剤および二酸化ケイ素を含む本発明の繊維の他の実施形態のSEM断面像である。
図6図6は、界面活性剤および二酸化ケイ素を含む本発明の繊維の束の後方散乱電子(BSE)像である。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は複合材料を提供する。前記複合材料はセメント系組成物を含む。前記セメント系組成物は、セメント、コンクリート、モルタルまたはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含むか、または主にそれらからなることができる。一実施形態においては、「主に〜からなる」という用語は、前記セメント系組成物が、例えばアスファルトなどのような他の複合材料や組成物を含まないことを意味する。
【0009】
セメント:
一実施形態においては、前記セメント系組成物は、水硬性セメント結合剤と骨材と水との反応生成物である(または該反応生成物から形成される)。前記水硬性セメント結合剤は、前記セメント系組成物の形成の前、前記セメント系組成物の形成の間および/または前記セメント系組成物の形成の後に、セメントとも称されうる。前記水硬性セメント結合剤の非限定的な例は、ポルトランドセメント、メーソンリーセメントおよび/またはモルタルセメントであるか、またはそれらが含まれる。前記水硬性セメント結合剤は、前記セメント系組成物の形成の前に、前記セメント系組成物100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、40〜85質量部または60〜80質量部の量で存在しうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0010】
前記骨材には、当該技術分野において理解される通り粗骨材および/または細骨材が含まれうる。前記骨材は、前記セメント系組成物の形成の前、間および/または後に、前記セメント系組成物100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0011】
水は、前記セメント系組成物の形成の前、間および/または後に、前記セメント系組成物100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0012】
前記セメント系組成物は、他の材料、例えば石灰石、消石灰、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、減水剤、空気連行剤、促進剤、遅延剤、本発明の複数の繊維とは異なるポリマー繊維、鋼繊維またはそれらの組み合わせも含みうる。これらの材料および本発明における該材料の質量パーセントの使用量は、当業者によって選択されることができる。
【0013】
コンクリート:
他の実施形態においては、前記セメント系組成物はさらに、前記セメント系組成物の形成の前、前記セメント系組成物の形成の間および/または前記セメント系組成物の形成の後に、コンクリートと定義される。コンクリートは、水硬性セメント結合剤、例えばポルトランドセメントと、細骨材および/または粗骨材、例えば砂、砂利および砕石と水との反応生成物であることができる(または該反応生成物から形成されることができる)。前記水硬性セメント結合剤と前記骨材と水とは、典型的には十分に混合され、それによってコンクリートの不均一な混合物が生成される。典型的には、前記水硬性セメント結合剤および水は最初にゲルを形成し、このゲルは水和プロセスを経る。コンクリートの凝結時にこのゲルが硬質になることができ、それによって骨材が固定されかつコンクリートが硬化される。
【0014】
前記水硬性セメント結合剤は、前記コンクリートの形成の前に、前記コンクリート100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、40〜85質量部または60〜80質量部の量で存在しうる。前記骨材は、前記コンクリート形成の前、間および/または後に、前記コンクリート100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。水は、前記コンクリートの形成の前、間および/または後に、前記コンクリート100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0015】
モルタル:
さらに他の実施形態においては、前記セメント系組成物はさらにモルタルと定義される。モルタルは、水硬性セメント結合剤、例えばポルトランドセメントと、細骨材、例えば砂と水との反応生成物であることができる(または該反応生成物から形成されることができる)。モルタルの形成は、一般には上述のコンクリートと同様の水和プロセスに従う。前記水硬性セメント結合剤は、前記モルタルの形成の前に、前記モルタル100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、40〜85質量部または60〜80質量部の量で存在しうる。前記骨材は、前記モルタルの形成の前、間および/または後に、前記モルタル100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。水は、前記モルタル形成の前、間および/または後に、前記モルタル100質量部を基準にしてそれぞれ1〜98質量部、5〜50質量部または10〜30質量部の量で存在しうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0016】
複数の繊維:
前記複合材料はさらに複数の繊維10を含む。「繊維」という用語は、以下で「複数の繊維」、「複数の繊維の各々」またはその双方に置き換えられてよい。前記繊維10は、モノフィラメントの形態、揃えてフィブリル化された形態、リボンの形態またはいずれかのコア−シース形態、コア−シェル形態、単成分形態または2成分形態または従来技術において知られているいずれかの他の形態であってよい。前記繊維10は、従来技術において知られているいずれのサイズおよび/または寸法のものであってもよい。例えば、前記複数の繊維10の各々は、1/8〜3インチ、1/4〜2インチまたは1/2〜1インチの長さを有することができる。種々の実施形態においては、前記複数の繊維10の各々は、0.01〜2ミリメートル、0.03〜1ミリメートル、0.04〜0.5ミリメートル、0.01〜0.10ミリメートルまたは0.1〜0.2ミリメートルの直径を有することができる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。また、0.30ミリメートル以下の直径を有する繊維は「マイクロ繊維」と称されることができ、一方で0.3ミリメートル超の直径を有する繊維は「マクロ繊維」と称されることができる。
【0017】
前記複数の繊維10は、前記セメント系組成物中に配置される。換言すれば、前記複数の繊維10は、前記セメント系組成物の少なくとも1つの表面上に配置されてもよいし、前記セメント系組成物の全てまたは一部の中に配置されてもよい。前記セメント系組成物の少なくとも1つの表面が、前記複数の繊維10を含まないことも可能である。本発明の全体を通じて、「配置される」という用語は「分散される」という用語と互換的に用いられることができるものと理解されたい。特定の実施形態においては、前記複数の繊維10は前記複合材料100体積部を基準にして0.1〜10体積部の量で存在する。また、前記複数の繊維10は前記複合材料100体積部を基準にしてそれぞれ0.5〜5体積部、1〜3体積部または1.5〜2体積部の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0018】
合成樹脂成分:
前記複数の繊維10の各々は、合成樹脂成分12を含む。前記合成樹脂成分12は、従来技術において知られているいかなる合成樹脂であってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。例えば一実施形態においては、「主に〜からなる」という用語は、前記合成樹脂成分12が、非合成樹脂を、例えば前記合成樹脂成分としての使用のための選択肢として以下に記載されるもの以外の化合物を、含まないことを意味する。前記合成樹脂成分12は、固体または液体として提供されることができる。前記合成樹脂成分12は、単一繰返し単位から形成される単一重合体または異なる繰返し単位から形成される共重合体であってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。前記合成樹脂成分12は、これに限定されるものではないが例えば脂肪族モノマー、芳香族モノマーおよびそれらの組み合わせといったモノマーの重合生成物であってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。前記合成樹脂成分12は、例えば不飽和モノマー、例えば炭素−炭素二重結合を有するアルケンおよびジエン、炭素−炭素三重結合を有するアルキンおよびスチレンモノマーといったモノマーの重合生成物であってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。前記合成樹脂成分12は、単一重合体、共重合体またはそれらの組み合わせのポリマーブレンドであってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。特定の実施形態においては、前記合成樹脂成分12は、少なくとも1,000g/モルの平均分子量を有する。また前記合成樹脂成分12は、少なくとも3,000g/モル、少なくとも8,000g/モル、少なくとも10,000g/モル、少なくとも12,000g/モル、少なくとも13,000g/モル、少なくとも15,000g/モル、少なくとも25,000g/モル、少なくとも50,000g/モル、少なくとも100,000g/モル、少なくとも500,000g/モル、少なくとも1,000,000g/モルの平均分子量を有する。他の実施形態においては、前記合成樹脂成分12は、1,000g/モル〜2,000,000g/モルの平均分子量を有する。また前記合成樹脂成分12は、1,000g/モル〜1,000,000g/モル、1,000g/モル〜500,000g/モル、3,000g/モル〜100,000g/モル、3,000g/モル〜50,000g/モル、5,000g/モル〜25,000g/モル、5,000g/モル〜15,000g/モルの平均分子量を有する。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0019】
特定の実施形態においては、前記合成樹脂成分12は、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはそれらの組み合わせであるか、またはそれを含むか、または主にそれからなるか、またはそれからなる。例えば一実施形態においては、「主に〜からなる」という用語は、前記繊維10および/または前記合成樹脂成分12が、前記合成樹脂成分でも1種以上の上記のポリマーでもない他の有機および/または無機ポリマーを含まないことを意味する。種々の実施形態においては、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1またはそれらの組み合わせである。他の実施形態においては、前記ポリオレフィンエラストマーは、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムである。単に説明を目的として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリ塩化ビニルの一般的な化学構造式を以下に示す:
【化1】
【0020】
ここで、nは任意の整数であり、例えば350〜11,000の整数である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0021】
種々の実施形態においては、前記合成樹脂成分12はポリプロピレンである。前記ポリプロピレンは、アイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチックであってよい。単に説明を目的として、アタクチック、アイソタクチックおよびシンジオタクチックポリプロピレンの一般的な化学構造式を以下に示す:
【化2】
【0022】
ここで、nは任意の整数であってよい。適したポリプロピレンの非限定的な例は、Houston, TX在LyondellBasel Industries社よりPro-fax(登録商標)、例えばPro-fax(登録商標)6301の商品名で市販されている。
【0023】
前記複数の繊維10の各々は、典型的には、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にして少なくとも90質量部の前記合成樹脂成分12を含む。しかしながら、前記合成樹脂成分12はより低い質量%で使用されててもよい。また、前記複数の繊維10の各々は、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にしてそれぞれ、少なくとも92質量部、少なくとも94質量部、少なくとも96質量部、少なくとも97質量部、少なくとも98質量部または少なくとも99質量部の前記合成樹脂成分12を含むことができる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0024】
界面活性剤:
前記複数の繊維10の各々はさらに、界面活性剤14を含む。前記界面活性剤14は特に限定されず、従来技術において知られているいかなるものも含まれうる。例えば、前記界面活性剤14は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤またはこれらの組み合わせであってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。種々の実施形態においては、前記界面活性剤14は、アルコールアルコキシレート、アルコールブロック/ヘテリックアルコキシレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体、脂肪アルコール、脂肪アルコキシアルコール、ポリアルキレングリコール、アルキルフェノールアルコキシレートの1つ以上またはこれらの組み合わせであってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。前記界面活性剤14は、固体、ペースト、フレークおよび/または液体として提供されることができる。また前記界面活性剤14は、石鹸、洗剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、発泡剤、殺菌剤、腐食防止剤、帯電防止剤、表面活性剤、高分子界面活性剤、表面活性ポリマーなどであってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。例えば上記の1つ以上の実施形態においては、「主に〜からなる」という用語は、前記界面活性剤14が非界面活性剤を含まないか、または1種以上の界面活性剤を含むことができかつ1種以上の他の界面活性剤を含まないことができることを意味しうる。
【0025】
前記界面活性剤14は、前記複数の繊維10の各々の全体に不均一に分散されている。換言すれば、当業者によって理解されるように、前記界面活性剤14は前記繊維10に広くまたはほぼ均等に全体に分散されており、前記繊維10の断面は、この断面のほぼ全体に存在する界面活性剤14を示す(例えば図1参照)。
【0026】
典型的には、前記繊維10の全体に不均一に分散された前記界面活性剤14を含む前記繊維10は、親水特性を示す。この親水特性によって、前記セメント系組成物へのまたは前記セメント系組成物における前記繊維10の接着性を改善することができ、それによって前記複合材料の延性の向上が生じうる。この高められた延性によって、耐脆性および耐ひび割れ性がもたらされうる。
【0027】
前記界面活性剤14を含む前記繊維10は、様々なコーティング、例えば付加的な界面活性剤(これは、界面活性剤14として記載されたものと同一であっても異なってもよい)および/または潤滑剤でコーティングされてよく、かつ/または様々な処理、例えばコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、クロムおよび/または酸性酸化に供されてよい。しかしながら、こうしたコーティングおよび/または処理は必須ではないと理解されたい。
【0028】
特定の実施形態においては、前記界面活性剤14は100,000g/モル以下の平均分子量を有する。また前記界面活性剤は、90,000g/モル以下、50,000g/モル以下、25,000g/モル以下、20,000g/モル以下、15,000g/モル以下、10,000g/モル以下、7,000g/モル以下、5,000g/モル以下、2,000g/モル以下、1,000g/モル以下、または500g/モル以下の平均分子量を有することもできる。分子量とモル質量とは異なる物理的特性を表すものと理解されるが、本発明の前記界面活性剤14に関しては、分子量は以下で分子量とモル質量の双方を記述するために用いられることができる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0029】
特定の実施形態においては、前記界面活性剤14はアルコールアルコキシレートである。前記アルコールアルコキシレートは特に限定されないが、以下の式を有する脂肪アルコール部分を有するアルコールアルコキシレートであることができる:
【化3】
【0030】
ここで、Rは、C8〜C18の、例えばC8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17またはC18の分岐状または直鎖状アルキル基であり、mは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、nは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、oは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、pは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、R'は、−CH3、−CH2CH3およびそれらの混合物であり、R''は、−CH3、−CH2CH3およびそれらの混合物であり、R''は、−OH、−CH3、−O−C3〜C18−ヒドロキシアルキル基およびそれらの混合物である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0031】
また前記アルコールアルコキシレートは、以下の式を有する1つ以上の脂肪アルコール部分アルコキシレートを有するアルコールであってもよい:
【化4】
【0032】
ここで、Rは、C8〜C18の、例えばC8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17またはC18の分岐状または直鎖状アルキル基であり、xは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、yは、3〜14、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、zは、0〜20、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であり、pは、0〜14、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14であり、R'は、−CH3、−CH2CH3およびそれらの混合物であり、R''は、−CH3、−CH2CH3およびそれらの混合物であり、R''は、−OH、−CH3、−O−C3〜C18−ヒドロキシアルキル基およびそれらの混合物である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0033】
また前記アルコールアルコキシレートは、以下の式を有する1つ以上のオキシエチレート部分を有する脂肪アルコールであってもよい:
【化5】
【0034】
ここで、Rは、C10〜C13の、例えばC10、C11、C12またはC13の分岐状または直鎖状アルキル基であり、xは、4〜10、例えば4、5、6、7、8、9または10である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0035】
前記アルコールアルコキシレートは、典型的には非イオン性であるが、カチオン性、アニオン性、両性または両イオン性であってもよい。前記アルコールアルコキシレートは、1〜100のエトキシ化度を有することができる。また前記アルコールアルコキシレートは、20〜100、40〜100、60〜100または70〜90のエトキシ化度を有することもできる。エトキシ化度の増加によって、前記セメント系組成物への前記繊維10の接着性を高めることができる。典型的には、前記アルコールアルコキシレートは、500〜10,000g/モルの平均分子量を有する。また前記アルコールアルコキシレートは、1,000〜10,000g/モル、2,000〜4,500g/モル、2,500〜4,000g/モル、または3,000〜4,000g/モルの平均分子量を有する。適したアルコールアルコキシレートの非限定的な例は、Florham Park, NJ在BASF Corporation社より市販されている。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0036】
種々の実施形態においては、前記界面活性剤14はアルコールブロック/ヘテリックアルコキシレートである。他の実施形態においては、前記界面活性剤14は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック/ヘテリック共重合体(EO/POブロック/ヘテリック共重合体)である。
【0037】
前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、例えば以下の式を有するいかなるブロックまたはヘテリック/ブロックポリオキシアルキレン重合体であってもよい:
【化6】
【0038】
ここで、Yは、1〜6、例えば1、2、3、4、5若しくは6のxの官能価、および(i)2〜6個の炭素原子、例えば2、3、4、5若しくは6個の炭素原子および2〜3個の反応性水素原子、または(ii)6〜18個の炭素原子、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個の炭素原子および1〜3個の反応性水素原子、例えば1、2または3個の反応性水素原子を有する活性水素含有有機化合物の核である。Aは、典型的には、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物からなる群から選択される低級アルキレンオキシドである。最高で25質量%、最高で20%質量、最高で15質量%、最高で10質量%または最高で5質量%のAが、エチレンオキシドと混合された前記活性水素含有有機化合物と直接反応されることができ、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上または95質量%以上のAが、その後、ポリマーの生成に到達することができる。さらに、mは、0〜110、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109または110であってよい。nは、0〜26、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26であってよい。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0039】
前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、以下の式を有するブロックまたはヘテリック/ブロックポリオキシアルキレン重合体であってもよい:
【化7】
【0040】
ここで、Yは、1〜6、例えば1、2、3、4、5若しくは6のxの官能価、および(i)2〜6個の炭素原子、例えば2、3、4、5若しくは6個の炭素原子および2〜3個の反応性水素原子、または(ii)6〜18個の炭素原子、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個の炭素原子および1〜3個の反応性水素原子、例えば1、2または3個の反応性水素原子を有する活性水素含有有機化合物の核である。Aは、典型的には、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物からなる群から選択される低級アルキレンオキシドである。最高で25質量%、最高で20%質量、最高で15質量%、最高で10質量%または最高で5質量%のAが、エチレンオキシドと混合された前記活性水素含有有機化合物と直接反応されることができ、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上または95質量%以上のAが、その後、ポリマーの生成に到達することができる。さらに、mは、0〜110、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109または110であってよい。nは、0〜26、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26であってよい。oは、0〜26、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26であってよい。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0041】
また前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、以下の式を有するブロックまたはヘテリック/ブロックポリオキシアルキレン重合体であってもよい:
【化8】
【0042】
ここで、Yは、1〜6、例えば1、2、3、4、5若しくは6のxの官能価、および(i)2〜6個の炭素原子、例えば2、3、4、5若しくは6個の炭素原子および2〜3個の反応性水素原子、または(ii)6〜18個の炭素原子、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個の炭素原子および1〜3個の反応性水素原子、例えば1、2または3個の反応性水素原子を有する活性水素含有有機化合物の核である。Aは、典型的には、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物からなる群から選択される低級アルキレンオキシドである。最高で25質量%、最高で20%質量、最高で15質量%、最高で10質量%または最高で5質量%のAが、エチレンオキシドと混合された前記活性水素含有有機化合物と直接反応されることができ、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上または95質量%以上のAが、その後、ポリマーの生成に到達することができる。さらに、mは、0〜110、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109または110であってよい。nは、0〜26、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26であってよい。oは、0〜26、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26であってよい。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0043】
前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、典型的には非イオン性であるが、カチオン性、アニオン性、両性または両イオン性であってもよい。前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、第一級ヒドロキシル基を末端に有してもよいが、そうでなくてもよい。総じて、前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの繰返し単位から形成される。前記ポリエチレンオキシドは、EO/POブロック/ヘテリック共重合体のエトキシ化度に寄与し、これによって、上記の通り、前記セメント系組成物へのまたは前記セメント系組成物における前記繊維10の接着性が高められうる。典型的には、前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、5,000〜15,000g/モルの平均分子量を有する。また前記EO/POブロック/ヘテリック共重合体は、5,500〜14,000g/モル、6,000〜13,500g/モル、6,500〜13,000g/モル、または7,000〜13,000g/モルの平均分子量を有することもできる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0044】
特定の実施形態においては、前記界面活性剤14は脂肪アルコールである。他の実施形態においては、前記界面活性剤14は脂肪アルコキシアルコールである。さらに他の実施形態においては、前記界面活性剤14はポリアルキレングリコールである。
【0045】
特定の実施形態においては、前記界面活性剤14はアルキルフェノールアルコキシレートである。前記アルキルフェノールアルコキシレートは特に限定されないが、以下の式を有するアルキルフェノールアルコキシレートであることができる:
【化9】
【0046】
ここで、Pはフェニル基であり、Rは、C8またはC9の分岐状または直鎖状アルキル基であり、mは、3〜12、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、nは、0〜12、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0047】
前記複数の繊維10の各々は、典型的には、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にして10質量部以下の前記界面活性剤14を含む。また前記複数の繊維10の各々は、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にしてそれぞれ8質量部以下、6質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、または1質量部以下の前記界面活性剤14を含むこともできる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0048】
金属酸化物:
前記複数の繊維10の各々は、金属酸化物16をも含む。前記金属酸化物16は、典型的には、1個以上の酸素原子を例えば−2の酸化状態で含む。しかしながら、前記金属酸化物16はそのようなものに限定されず、従来技術において知られている1種以上のいかなる金属酸化物16であってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。一実施形態においては、「主に〜からなる」という用語は、前記金属酸化物16が前記金属酸化物16以外の化合物または複合体を含まないことを意味する。前記金属酸化物16の金属は、従来技術において知られているいずれのものであってもよく、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、または周期表の第IB族、第IIB族、第IIIA族、第IVA族、第VA族若しくは第VIA族の金属であることができる。一実施形態においては、前記金属酸化物16は二酸化ケイ素(SiO2)である。ケイ素は、典型的にはメタロイドまたは半金属と称されうるが、本発明の目的のために、ケイ素は前記金属酸化物16の目的のための金属と称される。しかしながら一実施形態においては、金属酸化物16という用語は半金属酸化物16と置き換えられることが企図される。
【0049】
当該技術分野で理解されるように、二酸化ケイ素はシリカとしても知られており、これらに限定されるものではないが、例えば石英ガラス、水晶、ヒュームドシリカ(例えば高熱法シリカ)、コロイダルシリカ、シリカゲル、エアロゲルおよびこれらの組み合わせの1つ以上の形態で存在しうる。本発明の金属酸化物16は、二酸化ケイ素および/または二酸化ケイ素の上記の形態の1つ以上のいずれのものであってもよいし、それを含んでもよいし、主にそれからなってもよいし、それからなってもよい。
【0050】
前記金属酸化物16は、典型的には、前記複数の繊維10中に、前記複数の繊維10 100質量部を基準にして0.01〜5.00、0.1〜5.0、0.2〜4.9、0.3〜4.8、0.4〜4.7、0.5〜4.6、0.6〜4.5、0.7〜4.4、0.8〜4.3、0.9〜4.2、1.0〜4.1、1.1〜4.0、1.2〜3.9、1.3〜3.8、1.4〜3.7、1.5〜3.6、1.6〜3.5、1.7〜3.4、1.8〜3.5、1.9〜3.4、2.0〜3.3、2.1〜3.2、2.2〜3.1、2.3〜3.0、2.4〜2.9、2.5〜2.8、または2.6〜2.7質量部の量で存在する。他の実施形態においては、前記金属酸化物16は、5〜99質量%の非晶質二酸化ケイ素を含むヒュームドシリカ(例えば反応性ポゾラン材料)である。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0051】
前記複合材料の中および/または前記セメント系組成物自体の中には、1種以上の金属水酸化物が存在してもよいし形成されてもよい。例えば、セメントの水和の間に生じる水酸化カルシウムが、前記繊維中の前記金属酸化物16、例えば二酸化ケイ素と反応することができ、それによって、前記繊維と前記セメント系組成物との間の接着性向上のための(付加的な)界面結合強度がもたらされる。このような反応によって、金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウムが生じうる。理論に束縛されることを企図するものではないが、前記金属酸化物16の存在によって、前記金属水酸化物と反応しうる場所として、前記繊維中に反応部位が形成されるものと考えられる。
【0052】
前記金属酸化物16は、前記界面活性剤14と同様に、独立して、前記複数の繊維10の各々の全体に不均一に分散されている。換言すれば、当業者によって理解されるように、前記金属酸化物16は前記繊維10に広くまたはほぼ均等に全体に分散されており、前記繊維10の断面は、この断面のほぼ全体に存在する金属酸化物16を示す(例えば図4Bおよび5参照)。前記金属酸化物16および前記界面活性剤14は、前記複数の繊維10中に同一または異なるパターンまたは量で分散されていてよい。
【0053】
添加剤:
前記複数の繊維10の各々は、1種以上の添加剤をも含むことができる。前記添加剤は、酸化防止剤および/または光安定剤であることができる。前記酸化防止剤は、第1および/または第2の酸化防止剤であってもよいし、それを含んでもよい。しかしながら、前記繊維は任意の数の酸化防止剤を含むことができるものと理解されたい。前記光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)であってもよいし、それを含んでもよい。前記添加剤は、典型的には、前記繊維10の形成の間の熱およびせん断による前記合成樹脂成分12および前記界面活性剤14の劣化を最小限に抑える。さらに前記添加剤によって、典型的には長期熱安定性を有する前記繊維10がもたらされる。
【0054】
前記第1の酸化防止剤は、前記複数の繊維中に、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にしてそれぞれ0.001〜1質量部、0.01〜0.2質量部、または0.05〜0.15質量部の量で存在することができる。適した主要酸化防止剤の非限定的な例は、Florham Park, NJ在BASF Corporation社よりIrganox(登録商標)、例えばIrganox(登録商標)3114(AO)およびIrganox(登録商標)B 1411(AO)の商品名で市販されている。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0055】
前記第2の酸化防止剤は、前記複数の繊維中に、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にしてそれぞれ0.001〜1質量部、0.01〜0.2質量部、または0.05〜0.15質量部の量で存在することができる。適した二次的酸化防止剤の非限定的な例は、Florham Park, NJ在BASF Corporation社よりIrgafos(登録商標)、例えばIrgafos(登録商標)168 (AO)の商品名で市販されている。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0056】
前記光安定剤は、前記複数の繊維中に、前記複数の繊維10の各々100質量部を基準にしてそれぞれ0.01〜2質量部、0.08〜1質量部、または0.1〜0.3質量部の量で存在することができる。適した光安定剤の非限定的な例は、Florham Park, NJ在BASF Corporation社よりChimassorb(登録商標)、例えばChimassorb(登録商標)2020の商品名で市販されている。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0057】
典型的には、前記複合材料の延性および曲げ靭性の増加によって前記複合材料の脆性が低下し、前記複合材料の引張強さおよびエネルギー吸収が増加する。前記複合材料の延性は、(1)前記複合材料のドッグボーン試験片を形成し、かつ(2)前記ドッグボーン試験片を引っ張って試験することによって測定できる。曲げ靭性は、ASTM C1550を用いて、円形パネル試験片を曲げて試験することによって測定できる。前記複合材料の非限定的な例を、延性について以下で評価する。
【0058】
複合材料を形成する方法:
本発明はさらに、前記複合材料を形成する方法を提供する。前記方法は、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を合一することによって前記複数の繊維10を形成させるステップを含む。前記複数の繊維10を形成させるために、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、従来技術において知られているいずれの方法によって合一されてもよい。非限定的な例においては、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、乾燥ブレンドされ、次に押出成形によりコンパウンディングされることができ、それによって押出物が形成される。前記押出物は、その後に押出成形され、紡糸され、次いで延伸されることができ、それによって前記複数の繊維10が形成される。
【0059】
特定の実施形態においては、前記複数の繊維10の形成の前に、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16が合一され、それによって混合物が形成される。前記混合物は、マスターバッチと称されることができる。前記混合物を形成させるために、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、従来技術において知られているいずれの方法によって合一されてもよい。前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、混合容器および/またはブレンダー、例えばヘンシェルミキサー中で合一されることができる。前記混合物を形成させるために、存在する場合には前記添加剤も、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16と合一されることができる。前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16、および存在する場合には前記添加剤は、前記界面活性剤14および存在する場合には前記添加剤が前記合成樹脂成分12を有する混合物中にほぼ均一に分散されるように、十分にブレンドされることができる。
【0060】
特定の実施形態においては、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を合一することによって前記複数の繊維10を形成させるステップは、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を第1の押出機で185℃〜215℃の温度で押出成形することによって少なくとも1つのストランドを形成させるステップを含む。前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を押出成形することによって少なくとも1つのストランドを形成させるステップは、コンパウンディングとも称されうる。前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、従来技術において知られているいずれの押出法によって押出成形されてもよく、例えば直接押出法、間接押出法および/または静水圧押出法によって押出成形されることができる。前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を押出成形することによって少なくとも1つのストランドを形成させるステップは、前記繊維10中での前記界面活性剤14の分散の増加をもたらすものと考えられる。前記繊維10中での前記界面活性剤14の分散の増加によって、前記セメント系組成物への前記繊維10の接着性が高められうる。さらなる非限定的実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0061】
前記第1の押出機は、少なくとも1つのストランドを形成させるための、従来技術において知られているいずれの押出機であってもよい。前記第1の押出機はさらに、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機と定義されることができる。種々の実施形態においては、前記第1の押出機はさらに、単軸スクリュー押出機と定義される。他の実施形態においては、前記第1の押出機はさらに、二軸スクリュー押出機と定義される。前記第1の押出機はさらに、(全)噛合型押出機と定義されることができる。前記第1の押出機はさらに、同方向回転型押出機と定義されることができる。前記第1の押出機は、35:1〜45:1、または36:1〜44:1、37:1〜43:1、38:1〜42:1、または39:1〜41:1の、長さ対直径の比(L/D)を有することができる。前記第1の押出機は、毎分140〜160回転(RPM)、または145〜155RPM、146〜154RPM、147〜153RPM、148〜152RPM、149〜151RPMの速度で回転するスクリューを含むことができる。前記第1の押出機のスクリューは、前記混合物の主要搬送体であることができる。前記第1の押出機は、Leistritz社の27mm同方向回転型二軸スクリュー押出機であることができる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0062】
種々の実施形態においては、前記第1の押出機は複数の加熱域を含み、例えば9個の加熱帯域を含み、各加熱帯域は185℃〜215℃の温度である。しかしながら、前記第1の押出機は、従来技術において知られているいずれの温度で運転されてもよいものと理解されたい。より具体的には、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16は、熱間押出および/または温間押出として押出成形されることができ、これは、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16の溶融温度に依存しうる。前記第1の押出機は任意の数の加熱帯域、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15個などの加熱帯域を有することができ、各加熱帯域は独立して185℃〜215℃の温度であることができる。さらなる非限定的な実施形態においては、1つ以上の前述の範囲内の全ての値および値範囲の整数および分数の双方が本明細書において明示的に企図される。
【0063】
他の実施形態においては、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を合一することによって前記複数の繊維10を形成させるステップは、前記少なくとも1つのストランドを水で急冷し、次いで前記水で急冷された少なくとも1つのストランドを切断することによってペレットを形成させるステップを含む。前記少なくとも1つのストランドは、水浴中で、噴霧急冷によっておよび/または水壁急冷によって急冷されることができる。他の実施形態においては、前記少なくとも1つのストランドは空気急冷により急冷され、それによってペレットが形成される。前記水で(または空気急冷により)急冷された少なくとも1つのストランドの切断は、従来技術において知られているいずれの切断法によって行われてもよく、例えばConAirペレタイザーを用いて行われることができる。前記ペレットは、従来技術において知られているいずれの寸法および/またはサイズ分布をも有することができる。種々の実施形態においては、前記ペレットは1/16〜1/4インチの直径および1/16〜1/4インチの長さを有する。
【0064】
種々の実施形態においては、前記合成樹脂成分12、前記界面活性剤14および前記金属酸化物16を合一することによって前記複数の繊維10を形成させるステップは、前記ペレットを第2の押出機で押出成形することによって前記複数の繊維10を形成させるステップを含む。前記第2の押出機は、前記複数の繊維10を形成させるための、従来技術において知られているいずれの押出機であってもよい。前記複数の繊維10を形成させるために、前記ペレットは押出紡糸により押出成形されることができる。前記複数の繊維10の形成に続き、前記複数の繊維10の各々の長さが1/4〜3インチとなるように前記複数の繊維10を切断することができる。しかしながら、前記複数の繊維10は従来技術において知られているいずれのサイズの長さに切断されてもよいものと理解されたい。
【0065】
前記方法はさらに、前記複数の繊維10を前記セメント系組成物中に配置することによって前記複合材料を形成させるステップを含む。前記複数の繊維10は、従来技術において知られているいずれの方法によって前記セメント系組成物中に配置されてもよい。前記複数の繊維10が前記セメント系組成物中に配置されさえすれば、前記複数の繊維10は、前記セメント系組成物の形成の前に、前記骨材、前記結合剤、水、前記セメント系材料、減水剤、空気連行剤、促進剤、遅延剤および/またはフライアッシュ中に配置されてよいものと理解されたい。
【0066】
同様または類似の結果が得られる限り、以下の実施例に多くの変更が加えられうるものと理解されたい。従って、本発明の複合材料の実施形態を説明する以下の実施例は、説明を企図したものであって、本発明の限定を企図したものではない。
【0067】
実施例
ポリプロピレン、界面活性剤、金属酸化物および添加剤を合一することによって、以下の第I表に示すようにヘンシェルミキサー中で混合物(実施例1〜3)を形成させる。以下の第I表に示すように、界面活性剤または金属酸化物を含まない付加的な混合物(比較例)も同様に形成させる。
【0068】
前記ポリプロピレンは粉末としての固形であり、公称12のメルトインデックスのポリプロピレン単一重合体から形成される。前記混合物を、界面活性剤、金属酸化物および添加剤がポリプロピレンと共に均一に分散されるように十分にブレンドする。前記混合物を、Leistritz社の27mm同方向回転型二軸スクリュー押出機(第1の押出機)中でコンパウンディングすることにより、少なくとも1つのストランドを形成させる。前記第1の押出機は、同方向回転型でかつ全噛合型の押出機である。前記第1の押出機のスクリューは主要な搬送を担い、回転数150RPMの速度で回転する。前記第1の押出機は40:1のL/Dを有する。前記第1の押出機はK−トロンスクリュー型フィーダーを具備する。前記第1の押出機は9つの加熱帯域を有し、各帯域は以下に示すような温度プロファイルを有する。
【0069】
帯域#2:190℃
帯域#3:195℃
帯域#4:200℃
帯域#5:200℃
帯域#6:200℃
帯域#7:200℃
帯域#8:200℃
帯域#9:200℃
溶融帯域:210℃
前記混合物を帯域#2および帯域#4中で加熱し、ダイを帯域#9中で加熱する。前記少なくとも1つのストランドを水浴中で急冷し、次いでConAirペレタイザーを用いて切断することによりペレットを形成させる。前記ペレットは約1/8インチの直径および約1/8インチの長さを有する。前記ペレットを第2の押出機中で押出成形することにより複数の繊維を形成させる。複数の(マイクロ)繊維を約1/2インチの長さに切断し、一方で複数の(マクロ)繊維を約2インチの長さに切断する。
【0070】
実施例1〜3および比較例についての繊維の組成を、以下の第I表に示す。これらの繊維間の性能差を、第II表に示した組成を有するコンクリート混合物において評価する。
【0071】
【表1】
【0072】
ポリプロピレンは、LyondellBasell Industries社よりPro-fax(登録商標)6301として市販されているポリプロピレン単一重合体である。
【0073】
界面活性剤は、BASF Corporationより市販されているEO/POブロック/ヘテリック共重合体である。
【0074】
HALSは、BASF CorporationよりChimassorb(登録商標)2020として市販されているヒンダードアミン光安定剤である。
【0075】
酸化防止剤は、BASF Corporation社よりIrganox(登録商標)B 1411(AO)として市販されている酸化防止剤である。
【0076】
金属酸化物は、Sigma-Aldrich社よりSilicon Dioxide,製品番号S5130として市販されている二酸化ケイ素である。
【0077】
第I表の実施例1〜3および比較例のマイクロ繊維をそれぞれコンクリートと合一し、それによってそれぞれ複合材料のドッグボーン試験片を形成させる。コンクリートおよび繊維を含む複合材料をまず注型成形することによって前記ドッグボーン試験片を形成させる。前記ドッグボーン試験片は、互いに向かい合う上端および下端と、該ドッグボーン試験片に沿って延在する頂面および底面とを有し、該頂面と該底面とは互いに向かい合う。次に、前記ドッグボーン試験片を7日間湿気硬化させ、次いで空気乾燥させる。その後、前記ドッグボーン試験片の頂面および底面をグラインダーで均す。その後、前記頂面および/または底面に、前記上端および前記下端の各々から60ミリメートル(mm)で印をつける。次に、前記ドッグボーン試験片を、第1および第2のクランプを備えたInstron試験機中に配置する。前記第1のクランプは前記ドッグボーン試験片の上端に70psiの圧力を印加し、前記第2のクランプは前記ドッグボーン試験片の下端に70psiの圧力を印加し、それによって前記ドッグボーン試験片が滑らないことを保証する。次いで、伸び(変位)が5mmに達するまで、または荷重がピーク荷重の50%だけ低下するまで、毎分0.03ミリメートル(mm/分)の負荷速度で前記Instron試験機により前記ドッグボーン試験片に荷重(引張応力)をかける。最後に、引張応力を変位に対してグラフに記入する。実施例1〜3のマイクロ繊維を含む複合材料を、比較例の繊維を含む複合材料と対比して延性について評価する。さらに、実施例1〜3のマクロ繊維を含む複合材料を、比較例の繊維を含む複合材料と対比して、曲げ靭性についてASTM C1550により評価する。以下の第II表に複合材料についての組成を示し、図2に、マイクロ繊維を有する複合材料についての、変位に対する引張応力により表される延性を示す。第III表に、マクロ繊維を有する複合材料についての組成の相対的有効性の値を示す。
【0078】
【表2】
【0079】
第II表中のコンクリート混合物は、結合剤、骨材および水の反応生成物であり、その際、前記結合剤は68質量部の量で存在し、前記骨材は15質量部の量で存在し、水は17質量部の量で存在する。
【0080】
0.04ミリメートルの直径を有するマイクロ繊維を、第I表中で実施例2および比較例について記載したのと同様に形成させる。その後、これらのマイクロ繊維を1.85%の体積分率でポルトランドセメント系コンクリート中に分散させ、それによって2種の混合物を形成させる。その後、前記繊維を含むコンクリートを湿気硬化させることによって、2種の試料、すなわち本発明による試料および比較試料を形成させる。これらの試料を評価して、図2に示すように一軸引張試験における変位の関数としての引張応力量および延性を決定する。この図は、本発明による試料の引張強さが比較例の引張強さよりもはるかに高いことを示している。
【0081】
0.82ミリメートルの直径を有する付加的なマクロ繊維を、第I表中で実施例2および比較例について記載したのと同様に形成させる。その後、これらのマイクロ繊維を0.6%の体積分率でポルトランドセメント系コンクリート中に分散させ、それによって2種の混合物を形成させる。その後、前記繊維を含むコンクリートを湿気硬化させることによって、2種の試料、すなわち本発明による試料および比較試料を形成させる。これらの試料を評価して、図3に示すようにASTM C1550により偏差の関数としてのエネルギー吸収を測定する。この図は、エネルギー吸収や靭性(曲線の下方の面積)が、比較試料よりも本発明による試料の方がはるかに高いことを示している。
【0082】
0.82ミリメートルの直径を有するさらなる付加的なマクロ繊維を、実施例1〜3および比較例から上記と同様に形成させる。その後、これらのマクロ繊維を0.6%の体積分率でポルトランドセメント系コンクリート中に分散させ、それによって4種の混合物を形成させる。その後、前記繊維を含むコンクリートを湿気硬化させることによって、4種の試料、すなわち3種の本発明による試料および比較試料を形成させる。これらの試料を評価して、上記に示すようにASTM C1550により偏差の関数としてのエネルギー吸収を測定する。試験後、様々な量の金属酸化物の有効性を評価し、以下の第III表に示すようにコンクリートに対する繊維の結合効率として報告する。その際、この結合効率とは、各実施例のエネルギー吸収を比較例についての値に正規化したものである。
【0083】
【表3】
【0084】
結合効率のこれらの値は、実施例1、実施例2および実施例3についての異なるレベルの金属酸化物が、比較例よりもそれぞれ31%、37%および27%優れた性能をコンクリートにおいて示すことを意味している。
【0085】
添付の特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載された表現および特定の化合物、組成物または方法に限定されるものではなく、これらは添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる特定の実施形態の間で変わりうるものと理解されたい。種々の実施形態の特定の特徴または態様を記載するために本明細書において依拠される全てのマーカッシュ群に関して、異なる、特別なおよび/または予想外の結果が、各マーカッシュ群の各構成要素から、他の全てのマーカッシュの構成要素とは無関係に得られるものと理解されたい。マーカッシュ群の各構成要素は、個々にまたは組み合わせて依拠されることができ、また添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に対する適切な根拠を提供する。
【0086】
本発明の種々の実施形態の記載において依拠される全ての範囲および部分範囲は、独立しておよび全体として添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものと理解されたく、またかかる値が本明細書に明確に記載されていない場合であっても、本明細書においては整数および/または分数を含む全ての範囲が記載および企図されるものと理解されたい。列挙された範囲および部分範囲が本発明の種々の実施形態を十分に記載しかつ可能にし、かつかかる範囲および部分範囲がさらに2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などに区切られうることは、当業者の当然とするところである。一例として、「0.1〜0.9」の範囲はさらに、下方三分の一、すなわち0.1〜0.3、中央の三分の一、すなわち0.4〜0.6および上方三分の一、すなわち0.7〜0.9に区切られてよく、これらは個々におよび全体として添付の特許請求の範囲の範囲内であり、かつ個々におよび/または全体として依拠されることができ、また添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に対する適切な根拠を提供する。
【0087】
さらに、「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などの範囲を規定または変更する用語に関して、かかる用語は部分範囲および/または上限または下限を含むものと理解されたい。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、本来、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲などの部分範囲を含み、かつそれぞれの部分範囲は個々におよび/または全体として依拠されることができ、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に対して適切な根拠を提供し得る。最後に、開示された範囲内の個々の数は、依拠されることができ、また添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に対する適切な根拠を提供する。例えば「1〜9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、および小数点(または分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これらは依拠されることができ、また添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に対する適切な根拠を提供する。
【0088】
本発明を例示的に本明細書において説明したが、用いられた用語は限定ではなく説明を企図したものであると理解されたい。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変更が可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、明示された様式以外の様式で実施されることができる。独立請求項、並びに単項従属および多項従属の双方を含む従属請求項の全ての組み合わせの主題が、本明細書において明示的に企図される。
【符号の説明】
【0089】
10 繊維、 12 合成樹脂成分、 14 界面活性剤
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6