特許第6465883号(P6465883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465883
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】心外膜アンカーデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-531904(P2016-531904)
(86)(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公表番号】特表2016-527033(P2016-527033A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】US2014049218
(87)【国際公開番号】WO2015017689
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】61/861,356
(32)【優先日】2013年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/895,975
(32)【優先日】2013年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/224,764
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515319530
【氏名又は名称】テンダイン ホールディングス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィドランド,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンソン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】イークヴァル,クレイグ
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0172978(US,A1)
【文献】 特表2008−534085(JP,A)
【文献】 米国特許第06406420(US,B1)
【文献】 米国特許第03976079(US,A)
【文献】 特表2009−519783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路の少なくとも一部を規定する基礎部材を含むテザー取付部材であって、前記基礎部材が、前記テザー通路に交差する係止ピンチャネルを規定する、テザー取付部材と、
前記係止ピンチャネル内に配置可能な係止ピンであって、前記係止ピンが前記テザー通路から間隔があけられている第1位置と、前記係止ピンが前記テザー通路に交差しかつその中に配置されたテザーの一部に係合して前記テザーを前記テザー取付部材に固定することができる第2位置との間で移動可能である係止ピンと、
前記基礎部材に回転可能に結合されたハブであって、前記係止ピンの一部を受け入れるように構成された湾曲チャネルを規定し、前記ハブが前記基礎部材に対して回転するときに前記係止ピンを前記係止ピンチャネル内で直線状に移動させるように構成されたハブと、を備える装置。
【請求項2】
前記テザー取付部材に結合可能なパッドであって、前記パッドが心臓の心外膜表面と前記テザー取付部材との間に配置されるように前記心外膜表面に接触するように構成されたパッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基礎部材に結合されたチューブ部材であって、前記テザー通路の一部を規定しているチューブ部材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記テザー取付部材に結合可能なパッドであって、前記パッドの縁まで延在するスロットを規定し、前記スロットを介して前記人工心臓弁から延在するテザーに結合されるように構成され、心臓の心外膜表面と前記テザー取付部材との間に配置されるように前記心外膜表面に接触するように構成されたパッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
基礎部材と、前記基礎部材に回転可能に結合されたハブ部材と、を含むテザー取付部材であって、前記基礎部材及び前記ハブが各々、人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路の少なくとも一部を規定し、前記基礎部材が、前記テザー通路に交差しかつそれに流体連通する係止ピンチャネルを規定する、テザー取付部材と、
前記係止ピンチャネル内に少なくとも部分的に配置された係止ピンであって、前記ハブが、前記係止ピンのドライバ部分が受け入れられるカムチャネルを規定する、係止ピンと、を備え、
前記ハブが、前記基礎部材に対して回転して、前記カムチャネルが前記係止ピンを前記係止ピンチャネル内で直線状に移動させて、前記係止ピンを前記係止ピンが前記テザー通路から間隔があけられている第1位置、及び、前記係止ピンが前記テザー通路に交差しかつその中に配置されたテザーの一部に係合して前記テザーを前記テザー取付部材に固定する第2位置から移動させるように構成されている、装置。
【請求項6】
前記テザー取付部材に結合されたパッドであって、前記パッドが心臓の心外膜表面と前記テザー取付部材との間で配置されるように前記心外膜表面に接触するように構成されたパッドをさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記基礎部材に結合されたチューブ部材であって、前記テザー通路の一部を規定するチューブ部材をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記基礎部材に結合されたチューブ部材であって、前記テザー通路の一部を規定するチューブ部材と、
前記チューブ部材の上に配置されたカバー部材と、をさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記基礎部材が、前記ハブの上の突起を受け入れて前記基礎部材に対する前記ハブの回転を制限するように構成された戻り止めを規定する、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1001] 本出願は、「Pursestring Epicardial Pad Device」の名称で2013年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/861,356号、及び、「Improved Epicardial Pad Device」の名称で2013年10月25日に出願された米国仮特許出願第61/895,975号に対する優先権及びそれらの利益を主張し、それらの開示の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、「Pursestring Epicardial Pad Device」の名称で2013年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/861,356号に対する優先権及びその利益を主張する、「Pursestring Epicardial Pad Device」の名称で2014年3月25日に出願された米国特許出願第14/224,764号の一部継続出願でもあり、それらの開示の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[1002] 本明細書には、人工心臓弁置換術等、医療デバイスを係留するデバイス及び方法に関する実施形態が記載されている。
【背景技術】
【0003】
[1003] 例えば人工心臓弁(例えば僧帽弁)等の医療デバイスを係留する既知のデバイスによっては、医療デバイスから延在する1本又は複数本のテザーを体内組織に固定することを含むことができる。例えば、1本又は複数本のテザーは、人工心臓弁から心臓の心室壁の開口部を通して延在することができる。テザーを係留又は固定する既知の方法によっては、穿刺部位の近くの組織に係合し又は当該組織を貫通するステープル又は他の締結具の使用を含む場合がある。こうしたデバイスは、比較的大きい輪郭を有し、所望の係留部位に経皮的に容易に送達することが困難である可能性がある。人工心臓弁を固定する既知の方法によっては、弁から延在するテザーを体内組織に縫合すること、又は縫合糸端を結びつけることを含む場合がある。こうしたデバイス及び方法は、テザーを所望の張力で固定するように操作することが困難である可能性がある。
【0004】
[1004] さらに、人工弁が経皮的に送達されて展開される場合等、開口部が心臓の心室壁又は心尖内に直接形成される場合、人工弁を適切な位置に固定することに加えて、穿刺部位を封止する有効性は患者の生命に対して重要であり、それは、心臓穿刺からの血行力学的な損失により数分以内でショック及び死がもたらされる可能性があるためである。さらに、穿刺部位が、心筋自体に位置するときに受ける外側の圧力は、心臓に対して遠位の穿刺部位よりはるかに高い。従って、例えば心臓穿刺部位を閉鎖するために、人工心臓弁を固定し、組織に係合しかつ組織を閉鎖する、改善されたデバイス及び方法は、本技術分野において既知であるこれらの問題及び他の問題を解決するために有用であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
[1005] 本明細書では、人工心臓弁を係留する装置及び方法が記載されている。いくつかの実施形態では、装置は、人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路の少なくとも一部を規定する基礎部材を含むテザー取付部材を含む。基礎部材は、テザー通路に交差する係止ピンチャネルを規定している。係止ピンが、係止ピンチャネル内に配置可能であり、係止ピンがテザー通路から間隔があけられている第1位置と、係止ピンがテザー通路と交差しかつその中に配置されたテザーの一部と係合してテザーをテザー取付部材に固定することができる第2位置との間で移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】人工僧帽弁が移植されている心臓の部分及び僧帽弁を適所に係留する心外膜アンカーデバイスの断面図である。
図2】一実施形態による心外膜アンカーデバイスの概略図である。
図3】一実施形態による心外膜アンカーデバイスの側面図である。
図4図3の心外膜アンカーデバイスの組立分解側面図である。
図5】心室壁の心外膜表面において穿刺部位から間隔を空けて配置されて示されている、図3の心外膜アンカーデバイスの側面図であり、心外膜係留デバイスのスリーブガスケットを非圧縮状態又は形態で示す。
図6図5の心外膜アンカーデバイス及び心室壁の側面図であり、係留デバイスが穿刺部位及び心室壁に対して圧縮され、ガスケットが圧縮状態又は形態にあるように示されている。
図7】別の実施形態による心外膜アンカーデバイスの組立分解側面図である。
図8】別の実施形態による心外膜アンカーデバイスの組立分解側面図である。
図9】一実施形態による心外膜アンカーデバイスに含めることができる可撓性パッドの上面図である。
図10図9の可撓性パッド及びそこを通して配置されているテザーの一部の斜視図である。
図11】一実施形態による係止ピン及びテザー取付部材の斜視図である。
図12図11のテザー取付部材の底面斜視図である。
図13】レバーアームが第1位置で示されている、実施形態による、アンカーデバイス内で使用することができるテザー取付部材の上面斜視図である。
図14】レバーアームが第1位置で示されている、図13のテザー取付部材の断面斜視図である。
図15】レバーアームが第1位置で示されており、テザーの一部がデバイスを通して延在している、図13のテザー取付部材の側断面図である。
図16】レバーアームが第2位置で示されており、テザーの一部がデバイスを通して延在している、図13のテザー取付部材の側断面図である。
図17】アンカーデバイスのアクセスアームが第1位置で示されており、テザーの一部がデバイスを通して延在している、一実施形態によるテザー取付部材の断面斜視図である。
図18】アクセスアームが第1位置にあり、テザーの一部がデバイスを通して延在しているように示されている、図17のテザー取付部材の側断面図である。
図19】送達デバイスが結合されている、図17のテザー取付部材の斜視図である。
図20】テザー取付部材及び図19の送達デバイスの一部の拡大図である。
図21】アクセスアームが第2位置で示されている、図17のテザー取付部材の上面斜視図である。
図22】別の実施形態による、心外膜アンカーデバイスの上面斜視図である。
図23図22の心外膜アンカーデバイスの上面図である。
図24図22の心外膜アンカーデバイスの組立分解図である。
図25】デバイスの係止ピンが第1位置で示されている、図22の心外膜アンカーデバイスの断面斜視図である。
図26図20の心外膜アンカーデバイスの側断面図であり、デバイスの係留ピンが第1位置で示されている。
図27】係止ピンが第2位置で示されている、図22の心外膜アンカーデバイスの底断面斜視図である。
図28図22の心外膜アンカーデバイスのハブ部材の上面斜視図である。
図29図22の心外膜アンカーデバイスのハブ部材の底面斜視図である。
図30図22の心膜パッドデバイスの一部の拡大上面図である。
図31】送達デバイスが結合されている、図22の心外膜アンカーデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1036] 本明細書には、例えば人工僧帽弁等の人工心臓弁を固定し係留するために使用することができる装置及び方法が記載されている。本明細書に記載する装置及び方法はまた、例えば、人工心臓弁を移植する処置を行うときに形成される、心臓の開口部を閉鎖するためにも使用することができる。本明細書に記載する装置及び方法はまた、他の医療デバイスを係留するため、及び/若しくは、診断処置又は治療処置の間に形成された他の体腔の穿刺部又は開口部を閉鎖するためにも使用することができる。
【0008】
[1037] いくつかの実施形態では、装置は、人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路の少なくとも一部を規定する基礎部材を含む、テザー取付部材を含む。基礎部材は、テザー通路に交差する係止ピンチャネルを規定している。係止ピンが、係止ピンチャネル内に配置可能であり、かつ、テザー通路から間隔が空けられている第1位置と、テザー通路と交差しその中に配置されたテザーの一部に係合してテザーをテザー取付部材に固定することができる第2位置との間で移動可能である。
【0009】
[1038] いくつかの実施形態では、装置は、基礎部材と、基礎部材に移動可能に結合されたレバーアームと、を含むテザー取付部材を含む。基礎部材及びレバーアームはあわせて、人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路を規定している。基礎部材は、テザー通路に交差しかつテザー通路に流体連通している係止ピンチャネルを規定し、係止ピンチャネル内に係止ピンが配置されている。レバーアームは、テザーの一部をテザー通路内に挿入することができる第1位置、及び、係止ピンがテザー通路内に配置されたテザーをテザー取付部材に固定する第2位置から移動するように構成されている。
【0010】
[1039] いくつかの実施形態では、装置は、基礎部材と、基礎部材に回転可能に結合されたハブ部材と、を含む、テザー取付部材を含む。基礎部材及びハブは、各々、人工心臓弁から延在するテザーの一部を受け入れることができるテザー通路の少なくとも一部を規定している。基礎部材は、テザー通路に交差しかつテザー通路に流体連通している係止ピンチャネルを規定し、係止ピンチャネル内に少なくとも部分的に係止ピンが配置されている。ハブは、係止ピンのドライバ部分が受け入れられるカムチャネルを規定している。ハブは、基礎部材に対して回転するように構成され、それにより、カムチャネルが、係止ピンを係止ピンチャネル内で直線状に移動させ、係止ピンを、係止ピンがテザー通路から間隔が空けられている第1位置、及び、係止ピンがテザー通路に交差しかつテザー通路内に配置されたテザーの一部に係合してテザーをテザー取付部材に固定する第2位置から移動させる。
【0011】
[1040] いくつかの実施形態では、方法は、テザー取付部材によって規定されたテザー通路内に、人工心臓弁から延在するテザーの一部を挿入するステップを含む。テザー取付部材は、テザーが延在する起点である心臓の心室壁の開口部に隣接して配置される。テザー取付部材は、テザー取付部材によって規定された係止ピンチャネル内に配置された係止ピンが、テザー通路に交差し、かつ、テザー通路内に配置されたテザーの一部に係合してテザーをテザー取付部材に固定するように、駆動される。
【0012】
[1041] 本明細書で用いる単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈に明確に述べられていない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「(1つの)部材」という用語は、単一部材又は部材の組合せを意味するように意図されており、「(1つの)材料」は、1種あるいは複数種の材料又はそれらの組合せを意味するように意図されている。
【0013】
[1042] 本明細書で用いる「近位」及び「遠位」という語は、例えば医療デバイスの術者に対してそれぞれ近づく方向及び離れる方向を指す。従って、例えば、(例えば、患者の身体に接触するか又は患者の体内に配置される)患者の身体に最も近い医療デバイスの端部は、医療デバイスの遠位端であり、遠位端とは反対側の、例えば医療デバイスの術者(又は術者の手)に最も近い端部は、医療デバイスの近位端である。
【0014】
[1043] いくつかの実施形態において、本明細書では、経カテーテル送達システムを用いて、閉鎖された鼓動する心臓内に配置することができる圧縮可能な人工心臓弁置換物(例えば人工僧帽弁)を係留するために使用することができる、心外膜パッドシステムが記載されている。こうした調整可能なテザー及び心外膜パッドシステムは、例えば、弁導入のために肋間空間又は剣状突起下(subxyphoid)空間を利用する処置等、低侵襲処置を介して、展開することができる。こうした処置では、人工弁は、送達システム内に適合するように圧縮させ、二次的に、送達システムから標的位置、例えば僧帽弁輪又は三尖弁輪内に放出することができるように、形成することができる。
【0015】
[1044] 圧縮可能な人工僧帽弁は、例えば、弁尖及び心房カフを含む管状ステント本体を特徴とする形状を有することができる。これにより、弁は、僧帽弁輪内にはまり、自己僧帽弁尖によって保持され得る。心尖テザーを用いて取り付けられる可撓性弁を使用することにより、心臓の動き及び形状との適合を可能にすることができる。心臓の形状及び動きは、心筋の厚増加及び連続したねじり運動によって複雑な二相左心室変形を示すものとして周知である。心尖に固定された心室テザーのさらなる使用は、弁周囲漏れを低減し、好ましくはなくすために、カフと心房肉柱との間に十分な張力を提供しながら、人工弁の環状位置を、弁が移動するのを可能にすることなく維持するのに役立つ。適合する人工弁の使用ならびに特別な形状及び特徴は、左心室流出路(LVOT)干渉問題を含む凝血及び血行力学的問題を低減するか又はなくすのに役立つことができる。多くの既知の弁は、血流による問題及び大動脈/大動脈弁圧縮問題に対処することができない。
【0016】
[1045] 構造的に、人工心臓弁は、一端(心房側端)にカフがある自己拡張型管状枠と、好ましくは弁の心室側端又はその近くの、1本又は複数本のテザーを取り付けることができる1つ又は複数の取付箇所と、安定化した組織若しくは他の好適な生物材料又は合成材料から形成することができる、弁尖を含む弁尖アセンブリと、を含むことができる。一実施形態では、弁尖アセンブリは、ワイヤ形状を含むことができ、そこでは、形成されたワイヤ構造が安定化した組織とともに使用されて、1枚、2枚、3枚又は4枚のうちのいずれかの弁尖(leaflet、valve cusp)を配置することができる弁尖支持構造が生成される。別の実施形態では、弁尖アセンブリは、ワイヤなしであり、安定化した組織及びステント本体のみを使用して、同様に1枚、2枚、3枚又は4枚のうちのいずれかの弁尖を配置することができる弁尖支持構造を提供することができる。
【0017】
[1046] カフ上部は、(例えば、編組ワイヤ又はレーザ切断チューブから形成された)管状ニチノール構造の一部を熱成形することによって形成することができ、それにより、下部は管状形状を保持するが、上部は開放されて管状形状ではなくなり、拡張して、種々の機能的な規則的又は不規則な漏斗状又はカラー状形状に形成することができる広がったカラー構造をもたらす。
【0018】
[1047] 人工僧帽弁は、本明細書に記載するように、アンカーデバイスに結合された1本又は複数本のテザーを介して、心臓の外部の位置で心臓に係留することができる。例えば、テザーは、本明細書に記載するように、人工僧帽弁に結合されて心臓から延出し、アンカーデバイスにより外部の位置(例えば、心外膜表面)に固定され得る。本明細書に記載するようなアンカーデバイスは、1本又は複数本のこうしたテザーとともに、こうしたテザーが管腔内空洞から外部係留部位まで延在することが望まれる可能性がある他の外科手術状況において使用することができる。
【0019】
[1048] 図1は、内部に経カテーテル人工僧帽弁PMVが配置され、かつ人工僧帽弁PMVを適所に固定する、本明細書に記載するような心外膜アンカーデバイスEADがある、心臓の左心室LV及び左心房LAの断面図である。図1は、人工僧帽弁PMVが、自己弁輪内にはめられ、かつそこに、人工僧帽弁PMVの心房カフAC、自己弁尖からの半径方向張力、及び取付部分Tpによって人工僧帽弁PMVにかつ心外膜アンカーEADに固定された心室テザーTによって保持されている状態を示す。心外膜アンカーデバイスの様々な実施形態について、具体的な実施形態を参照して以下より詳細に説明する。
【0020】
[1049] 図2は、一実施形態に係る心外膜アンカーデバイス100(本明細書では、「アンカーデバイス」又は「心外膜アンカー」とも呼ぶ)の概略図である。アンカーデバイス100を用いて、心臓の左心房と左心室との間に配置された人工僧帽弁PMVを係留又は固定することができる。アンカーデバイス100を用いて、例えば、図1に関して上述したように縫合テザー128を介して人工僧帽弁PMVを係留又は固定することができる。アンカーデバイス100はまた、人工僧帽弁PMVの移植中、心臓の心室壁(図2には示さず)に形成された穿刺部も封止することができる。他の用途では、アンカーデバイス100を用いて、医療デバイス(任意の人工房室弁又は他の心臓弁)を係留し及び/又は穿刺部等の開口部を封止することも可能である。
【0021】
[1050] アンカーデバイス100は、パッド(又はパッドアセンブリ)120、テザー取付部材124及び係止ピン126を含むことができる。いくつかの実施形態では、アンカーデバイス100は、図3図6に関して記載するように、スリーブガスケット(図2には示さず)を含むことができる。パッド120は、心臓の心外膜表面と接触することができ、任意の好適な生体適合性外科用材料から構成することができる。パッド120を用いて、人工僧帽弁を移植するときに形成された外科的穿刺部の封止を促進することができる。いくつかの実施形態では、パッド120は、パッド120の縁まで半径方向に延在するスロットを含むことができ、それにより、スロットを介してパッド120をテザー128の上に摺動させることにより、パッド120をテザー128に取り付けるか又はその周囲に配置することができる。こうした実施形態については、図9及び図10に関して後述する。
【0022】
[1051] いくつかの実施形態では、パッド120は、パッド120の穿刺部位領域内の内部成長を促進するように二重ベロア材料から作製することができる。例えば、パッド又はフェルトプレジェットは、Bard(登録商標)からPTFEフェルトプレジェットとして入手可能なもの等、フェルト状ポリエステルから作製することができ、呼び厚さが2.87mmである、任意の好適なサイズ又は形状に切断することができる。いくつかの実施形態では、パッド120は、テザー取付部材124より直径を大きくすることができる。パッド120は、円形状又はディスク形状、若しくは、他の好適な形状を有することができる。
【0023】
[1052] テザー取付部材124は、1本又は複数本のテザー128を結合する(例えば、結び付けるか又はピン留めする)ことができる係留及び取付台を提供することができる。テザー取付部材124は、テザー128を受け入れることができかつテザー128がテザー取付部材124を通過する際に通ることができるテザー通路(図示せず)の少なくとも一部と、係止ピン126を受け入れることができる係止ピンチャネル(図示せず)と、を規定する基礎部材(図示せず)を含むことができる。具体的な実施形態に関してより詳細に後述するように、係止ピンチャネルは、テザー通路に流体連通することができ、それにより、係止ピン126は、係止ピンチャネル内に配置されたとき、テザー通路を通過するテザー128に接触するか又はそれを貫通することができる。
【0024】
[1053] アンカーデバイス100が心室壁に対して締め付けられ、テザー128が所望の張力まで引っ張られた後、係止ピン126を用いて、テザー128を適所に保持することができる。例えば、テザー128は、パッド120の孔を通って、(アンカーデバイスがスリーブガスケットを含む場合)スリーブガスケットの孔を通って、かつ、テザー取付部材124のテザー通路を通って延在することができる。係止ピン126を、係止ピンチャネル134内に挿入するか又はその中で移動させることができ、それにより、係止ピン126は、テザー128がテザー取付部材124のテザー通路を通って延在する際、テザー128を貫通するか又は他の方法でテザー128に係合する。従って、係止ピン126は、テザー128に交差し、テザー128をテザー取付部材124に固定することができる。
【0025】
[1054] テザー取付部材124は、種々の好適な生体適合性材料で形成することができる。例えばいくつかの実施形態では、テザー取付部材124は、ポリエチレン又は他の硬質あるいは半硬質ポリマーから作製することができ、内部成長を促進するためにポリエステルベロアで覆うことができる。他の実施形態では、テザー取付部材124は、例えばNitinol(登録商標)等の金属又はセラミック材料から作製することができる。テザー取付部材124は、様々なサイズ及び/又は形状であり得る。例えばテザー取付部材124は実質的にディスク形状であり得る。
【0026】
[1055] いくつかの実施形態では、テザー取付部材124は、テザー128をテザー取付部材124内に装填する開放位置とテザー128をテザー取付部材124に固定する閉鎖位置との間で移動させることができるレバーアーム(図2には示さず)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、レバーアームが閉鎖位置まで移動すると、テザー通路は、係止ピンチャネルと交差関係になり、それにより、係止ピン126は、テザー通路内に配置されたテザー128に係合する。いくつかの実施形態では、レバーアームが開放位置にあるとき、器具を用いて係止ピンを係止ピンチャネル内で移動させることができ、それにより、係止ピンは、テザー通路内に配置されたテザー128と係合する。こうした実施形態では、係止ピン126がテザー128を固定した後、レバーアームを閉鎖位置まで移動させることができる。
【0027】
[1056] いくつかの実施形態では、テザー取付部材124は、テザー取付部材124の基礎部材に移動可能に結合されるハブを含むことができる。ハブは、係止ピン(又は係止ピンアセンブリ)126の一部を受け入れることができるチャネルを規定することができ、それにより、ハブは、回転する際、カムとして作用して、係止ピン126を係止ピンチャネル内で直線状に移動させる。先の実施形態と同様に、係止ピン126は、係止ピンチャネル内で移動する際、テザー通路内に配置されたテザー128に係合するか又はそれを貫通し、テザー128をテザー取付部材124に固定することができる。こうした実施形態については、本明細書において図22図31に関して説明する。
【0028】
[1057] 使用時、PMVが心臓内に配置された後、PMVから延在するテザーを、アンカーデバイス100のテザー通路内に挿入することができ、テザー取付デバイスに対する張力を所望の張力に調整することができる。別法として、場合によっては、PMVが心臓内に配置される前に、PMVから延在するテザーをアンカーデバイス100に結合することができる。アンカーデバイス100(例えば、特定の実施形態に応じて、係止ピン126がテザー通路に交差し、テザー通路内に配置されたテザーの一部に係合して、テザーをテザー取付部材に固定するように、テザー取付部材124若しくはレバーアーム又はハブ等のアンカーデバイスの何らかの部分)を作動させることができる。いくつかの実施形態では、テザーをテザー通路内に挿入する前に、アンカーデバイス100を作動させて、アンカーデバイス100を、テザーを受け入れるように構成することができる。例えば、テザー取付部材が基礎部材に移動可能に結合されたレバーアームを含む場合、テザーを挿入することができるようにレバーアームを開放位置に移動させる必要があり得る。いくつかの実施形態では、アンカーデバイス100は、テザー取付部材124の基礎部材に対してハブを回転させることによって作動させることができ、それにより、係止ピン126は、係止ピンがテザー通路から間隔を空けて配置される第1位置、及び、係止ピンがテザー通路と交差しテザーの一部と係合するか又はそれを貫通する第2位置から移動する。
【0029】
[1058] 図3図6に、心外膜アンカーデバイス100の一実施態様を示す。心外膜アンカーデバイス200(本明細書では、「アンカーデバイス」又は「心外膜アンカー」とも呼ぶ)は、可撓性パッド220、スリーブガスケット222、テザー取付部材224及び係止ピン226(図4に示す)を含むことができる。アンカーデバイス200を用いて、図5及び図6に示す縫合テザー228を介して人工僧帽弁(図3図6には示さず)を係留するか又は固定することができる。アンカーデバイス200はまた、人工僧帽弁の移植中に心臓の心室壁Vに形成された穿刺部230(図5及び図6を参照)を封止することも可能である。
【0030】
[1059] 可撓性パッド220(本明細書では「パッド」とも呼ぶ)は、心臓の心外膜表面に接触することができ、任意の好適な生体適合性外科用材料から構成することができる。パッド220を用いて、人工僧帽弁を移植するときに形成された外科的穿刺部(例えば、穿刺部230)の封止を促進することができる。パッド220は、パッド120に対して上述した材料と同じか又は同様の材料で作製することができ、様々なサイズ及び形状であり得る。パッド220は、円形形状又はディスク形状を有するものとして示されているが、代わりに他の好適な形状を使用することができるということが理解されるべきである。より詳細に後述するように、パッド220は、テザー228(図5及び図6に示す)を受け入れることができる孔225(図4及び図6を参照)を規定している。
【0031】
[1060] スリーブガスケット222は、パッド220とテザー取付部材224との間に配置されることができ、パッド220とテザー取付部材224との間で発生する可能性がある間隙又は漏れを封止するために使用することができる。スリーブガスケット222は、例えば、テザー取付部材224及び/又はパッド220が穿刺部位に対して、例えば心室壁に対して締め付けられるときに圧縮され得るような、可撓性材料から作製することができる。スリーブガスケット222は、パッド220及びテザー取付部材224に結合された別個の構成要素とすることができ、又は、パッド220及び/又はテザー取付部材224と一体的にあるいは一体構造で形成されることができる。スリーブガスケット222を用いて、縫合テザー228の経路に沿って流れる可能性がある血行力学的漏れを防止することができる。スリーブガスケット222はまた、テザー228を受け入れることができる孔(図示せず)も規定することができる。
【0032】
[1061] テザー取付部材224は、1本又は複数本のテザー228(図5及び図6を参照)を結合する(例えば、結び付ける)ことができる係留及び取付台を提供することができる。テザー取付部材224は、テザー228を受け入れることができかつテザー228がテザー取付部材224を通過する際に通ることができる軸方向テザー通路235と、係止ピン226を受け入れることができる係止ピンチャネル234と、を規定する、基礎部材240を含む。係止ピンチャネル234は、テザー通路235に流体連通することができ、それにより、より詳細に後述するように、係止ピン226は、係止ピンチャネル234内に配置されると、テザー通路235を通過するテザー228に接触することができる。係止ピン226を用いて、アンカーデバイス200が心室壁Vに対して締め付けられた後にテザー228を適所に保持することができる。例えば、テザー228は、パッド220の孔225を通って、スリーブガスケット222の孔(図示せず)を通って、かつ、テザー取付部材224のテザー通路235を通って延在することができる。係止ピン226を係止ピンチャネル234に挿入することができ、それにより、係止ピン226は、テザー228がテザー取付部材224のテザー通路235を通して延在する際にテザー228を貫通する。従って、係止ピン226は、テザー228に横方向に交差し、テザー228をテザー取付部材224に固定することができる。
【0033】
[1062] テザー取付部材224は、任意の好適な生体適合性材料から作製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、テザー取付部材224は、ポリエチレン若しくは他の硬質又は半硬質ポリマーから作製することができ、内部成長を促進するためにポリエステルベロアで覆うことができる。他の実施形態では、テザー取付部材224は、例えばNitinol(登録商標)等の金属又はセラミック材料から作製することができる。テザー取付部材224は様々なサイズ及び/又は形状であり得る。例えば、テザー取付部材224は実質的にディスク形状とすることができる。
【0034】
[1063] いくつかの実施形態では、テザー取付部材224は、実質的にディスク形状であり、直径を例えば1.0cm〜3.0cmの間とすることができる。他の実施形態では、テザー取付部材224は、直径を例えば0.2cm〜5cmとすることができる。例えば、例えばヘルニア修復、胃腸修復等で使用するために、サイズの大きいテザー取付部材224の方が望ましい場合もある。
【0035】
[1064] 縫合糸を捕捉して係留するために使用されるテザー取付部材224のディスク形状は、ねじ又はかえしで組織内に穴をあける縫合アンカーとは異なり、アンカーの部位で組織にほとんど又はまったく外傷を与えることなく使用することも可能である。さらに、ディスク状テザー取付部材224は、ステッチを使用する代わりに、テザー228の上で容易にかつ迅速に摺動させることができ、それにより、大きい穿刺部の有効な永久的閉鎖を可能にすることができる。縫付けにより大きい穿刺部を外科的に閉鎖することは、時間がかかりかつ困難である可能性がある。心臓の穿刺部を閉鎖するとき、閉鎖された穿刺部を外科医が縫い付ける必要があるという困難が加わることで、患者に対する致命的な合併症の可能性が増大する可能性がある。これは、経カテーテル技術を用いて胸腔を切開することなく、人工心臓弁が送達され展開される状況において特に当てはまる。この状況で閉鎖された心室穿刺部を縫い付けることは望ましくない可能性がある。
【0036】
[1065] 図5及び図6は、心臓の左心室壁V内の穿刺部位230を通って延在しかつアンカーデバイス200に結合されたテザー228を示す。図5は、心室壁Vの心外膜表面に対して締め付けられる前のアンカーデバイス200と、未圧縮状態又は形態にあるスリーブガスケット222と、を示す。任意選択的に、テザー228をテザー取付部材224に巻回して係留をさらに促進することができる。
【0037】
[1066] 図6は、心室壁Vの心外膜表面に対して締め付けられたアンカーデバイス200を示す。図6に示すように、アンカーデバイス200は、穿刺部位230に対して圧縮され心外膜表面に接触することができる。テザー228の端部232(図5に示す)は、テザー228がテザー取付部材224に固定された後、又は、アンカーデバイス200が心外膜表面に対して固定された後に、切り落とすことができる。
【0038】
[1067] 図7は、アンカーデバイス300がスリーブガスケット(例えば、上述したスリーブガスケット222)を含まないことを除き、アンカーデバイス200に類似する心外膜アンカーデバイス300(本明細書では、「アンカーデバイス」又は「心外膜アンカー」とも呼ぶ)の実施形態を示す。アンカーデバイス300は、上述した可撓性パッド220、テザー取付部材224及び係止ピン226とそれぞれ同じであるか又は類似するように構成することができる、可撓性パッド320、テザー取付部324及び係止ピン326を含むことができる。縫合テザー(図示せず)を介して人工僧帽弁(図示せず)を固定するためにアンカーデバイス200と同じか又は類似するアンカーデバイス300を使用することができる。アンカーデバイス300は、例えば、縫合テザーの経路に沿って流れる可能性がある血行力学的漏れを防止するために漏れ防止スリーブが不要である場合、使用することが望ましい可能性がある。
【0039】
[1068] 図8は、アンカーデバイス400がパッド(例えば、パッド220及び320)を含まないことを除き、アンカーデバイス200及びアンカーデバイス300に類似する心外膜アンカーデバイス400(本明細書では、「アンカーデバイス」又は「心外膜アンカー」とも呼ぶ)の実施形態を示す。アンカーデバイス400は、上述したテザー取付部材224、スリーブガスケット222及び係止ピン226とそれぞれ同じか又は類似するように構成することができる、テザー取付部材424、スリーブガスケット422及び係止ピン426を含むことができる。アンカーデバイス400を用いて、先の実施形態に対して上述したものと同じように又は同様に、テザー(図示せず)を介して人工僧帽弁(図示せず)を係留又は固定することができる。アンカーデバイス400は、例えば可撓性パッドが不要である場合、例えばテザーが新たな位置に移動するとき、使用することが望ましい可能性がある。こうした場合、心室穿刺部は小さく(例えば小径)、出血制御のためにパッドは不要である可能性がある。
【0040】
[1069] 図9及び図10は、本明細書に記載したような心外膜アンカーデバイスに含めることができるパッド520の実施形態を示す。パッド520は、軸方向孔525と、孔525に連通するスロット537と、を規定している。スロット537は、パッド520の外縁まで半径方向に延在し、それにより、パッド520をテザー528の長さに沿って摺動させることなく、パッド520をテザー528(図10を参照)の周囲に配置するか又はそこから取り除くことができる。例えば、パッド520は、テザーがスロット537内に挿入されかつパッド520の開口部525内に配置されるように、パッド520を側部から横方向に摺動させることにより、テザー528の周囲に配置することができる。パッド520は、例えばピン、クランプ等によってテザーに固定することができる。
【0041】
[1070] パッド520を取り除くために、パッド520を、側部から出るように、例えば心臓の心室の心尖の外側に同様に摺動させることができる。従って、アンカーデバイス全体を取り除くことなく、パッド520を取り除くことができる。パッド520は、先の実施形態(例えば、パッド220、320、420)に対して上述したものと同じか又は類似する材料で形成することができ、上述したように(例えば心室壁の)穿刺部位を閉鎖するために使用することができる。
【0042】
[1071] パッド520はまた、心尖において、動きの量を制限しかつ心尖を通過するイントロデューサシースを使用することも可能にすることができる。例えば、シースが引き戻されるとき、スロット付きパッド520を側部から入るように摺動させることができ、それによりシース除去中のテザー張力の制御が可能になる。スロット537のあるパッド520はまた、上述したようにシースとは無関係に使用することも可能である。
【0043】
[1072] 図11及び図12は、本明細書に記載するようなアンカーデバイス内に含めることができるテザー取付部材624の実施形態を示す。テザー取付部材624に対して本明細書に記載した様々な特徴は、他の実施形態(例えば、124、224、324、424)に対して本明細書に記載したテザー取付部材に含めることも可能である。上述したように、係止ピン626(図11に示す)を用いて、先の実施形態に対して上述したものと同様にテザー/縫合糸をテザー取付部材624に固定することができる。
【0044】
[1073] ディスク形状を有するテザー取付部材624が示されており、巻回チャネル632、軸方向テザー通路635、半径方向チャネル633、及び係止ピン626を受け入れることができる係止ピンチャネル634を規定する、基礎部材640を含むことができる。基礎部材640はまた、各々がテザー通路835と連通している近位開口部615及び遠位開口部617も規定している。基礎部材640は、近位開口部615に面取り縁又は食付き部627を含み、遠位開口部617に面取り縁又は食付き部629を含み、縫合糸(例えばテザー)がテザー通路635内に容易に通されるのを可能にし、縫合糸に対するテザー取付部材624の横方向切断力を低減させることができる。半径方向チャネル633により、術者は、係留されるように意図されたテザー(図示せず)を迅速に捕捉して取り付けることができる。巻回チャネル632により、術者は、テザー取付部材624の周囲にテザーを迅速に巻回することができる。半径方向チャネル633とともに巻回チャネル632を使用することにより、術者はテザーを迅速に係留することができる一方で、特定の用途に対して適切であるようにテザー(図示せず)に対する張力を調整するようにアンカーデバイスを解いて再校正することができる。
【0045】
[1074] 図13図16は、心外膜アンカーデバイス700の別の実施形態の一部を示す。心外膜アンカーデバイス700は、テザー取付部材724と、可撓性パッド又は布部材(図13図16には示さず)と、を含む。テザー取付部材724は、先の実施形態に対して上述したものと同様に内部に係止ピン726を受け入れることができる係止ピンチャネル734と、周方向のパッドチャネル742と、を規定する、基礎部材740を含む。パッドチャネル742を用いて、心外膜アンカーデバイス700の可撓性パッド又は布部材(図13図16には示さず)をテザー取付部材724に固定することができる。例えば、先の実施形態に対して上述したようにアンカーデバイス700が心室壁に固定されるとき、可撓性パッドが心室壁と接触するように、テザー取付部材724の遠位端部分に可撓性パッドを配置することができる。
【0046】
[1075] テザー取付部材724はまた、テザー728(例えば、図15及び図16を参照)を受け入れることができるテザー通路735と、テザー通路735にそれぞれ連通している近位開口部715及び遠位開口部717と、を規定している。遠位開口部717に又はその近くに面取り縁又は食付き部729が含まれ、それにより、テザー728(図15及び図16を参照)をテザー通路735内に容易に通すことができ、テザー728に対するテザー取付部材724の横方向の切断力が低減する。
【0047】
[1076] 基礎部材740に、基礎部材740とあわせてテザー通路735を規定するレバーアーム738が結合されている。レバーアーム738は、図16に示すような、ばね部材739によって下降位置まで付勢される第1位置と、図13図15に示すような、テザー728をテザー通路735内に配置することができるようにレバーアーム738が伸長位置に配置される第2位置との間で移動させることができる。例えば、レバーアーム738を図15に示す矢印Aの方向に回転させて、その第2位置すなわち伸長位置まで移動させることができる。場合によっては、縫合糸又はコードを使用して、レバーアーム738を伸長した第2位置に引っ張ることができる。
【0048】
[1077] 例えば図14及び図15に示すように、第1位置にあるとき、係止ピン726の先端は、レバーアーム738及びテザー通路735から間隔をあけて配置されている。係止ピン726がテザー通路735から間隔を空けて配置されるとき、図15に示すように、テザー728をテザー通路735内に挿入することができる。そして、テザー728を所望の張力まで締め付けることができ、その後、図16に示すように、レバーアームを、第1位置に戻るように付勢されるまで解放することができる。レバーアーム738が第1位置まで移動する(例えば、付勢される)とき、テザー728がテザー通路735を通って延在している状態で、係止ピン726はテザー728を貫通するかテザー728に交差し、その後、係止ピンの先端は、レバーアーム738によって規定された空洞736内に配置されて、テザー728をテザー取付部材724に固定する。
【0049】
[1078] 図17図21は、テザー取付部材824と、可撓性パッド又は布部材(図17図21には示さず)と、を含む心外膜アンカーデバイス800の別の実施形態の一部を示す。テザー取付部材824は、基礎部材840と、基礎部材840に枢支結合されたレバーアーム838と、を含む。基礎部材840は、周方向のパッドチャネル842を規定し、その内部で、可撓性パッドをテザー取付部材824に結合することができる。例えば、先の実施形態に対して上述したように、アンカーデバイス800が心室壁に固定されるとき、可撓性パッドが心室壁に接触するように、テザー取付部材824の遠位端部分に可撓性パッドを配置することができる。
【0050】
[1079] レバーアーム838及び基礎部材840はあわせて、図17に示すように、テザー828を受け入れることができるテザー通路835を規定している。基礎部材840はまた、各々がテザー通路835に流体連通している遠位開口部817及び開口部815も規定している。テザー828は、遠位開口部817(心室壁に最も近接して移植される側)を通して挿入され、基礎部材840によって規定されるテザー通路835の一部を通って、かつ、レバーアーム838によって規定されるテザー通路835の一部を通って延在し、開口部815から出ることができる。上述した実施形態と同様に、基礎部材840は、テザー通路835の遠位開口部817に面取り縁又は食付き部829を含み、それにより、テザー828をテザー通路835に容易に通すことができ、テザー828に対するテザー取付部材824の横方向切断力が低減する。
【0051】
[1080] レバーアーム838は、係止ピン826を移動可能に配置することができる係止ピンチャネル844を規定している。係止ピン826は、ドライバ部分846及び貫通部分849を含む。図17及び図18に示すように、係止ピンチャネル844は、係止ピン826のドライバ部分846を移動可能に配置することができる、直径が変化する部分を含む。例えば、ドライバ部分846は、係止ピンチャネル844の内壁にねじ式に結合することができ、それにより、係止ピン826を、図17に示す、ドライバ部分846が係止ピンチャネル844の部分839内に配置され、貫通部分849がテザー通路835から間隔があけられている第1位置と、ドライバ部分846が係止ピンチャネル834の部分845(図17及び図18に示す)内に配置され、かつ、貫通部分849がテザー通路835を通って延在してテザー828と係合するか又はそれを貫通する第2位置との間で、移動させることができる。レバーアーム838はまた、さらに詳細に後述するように、係止ピンチャネル844と連通し、かつ、係止ピン826を係止ピンチャネル844内で移動させるために使用することができる打込み工具を受け入れることができる、開口部847も規定している。
【0052】
[1081] レバーアーム838を、例えば図17及び図18に示すような、レバーアーム838が基礎部材840から近位方向に延在する第1位置すなわち開放位置と、図21に示すような、レバーアーム838の近位面819が基礎部材840の近位面821と実質的に同一平面である第2位置すなわち閉鎖位置との間で、移動させる(例えば、回転させる、旋回させる)ことができる。レバーアーム838が第1位置すなわち開放位置にあるとき、図19及び図20に示すように、レバーアーム828に送達器具848を結合することができる。送達器具848は、係止ピン826を係止ピンチャネル834内で移動させるように係止ピン826のドライバ部分846に係合することができる、図18に示すドライバ849(例えば、ねじ回し)を含むことができる。
【0053】
[1082] 動作時、テザー828は、テザー通路835内に挿入され、開口部815から出てかつ送達器具848内に延在することができる。そして、テザー828を所望の張力まで締め付けることができる。テザー828が所望の張力にある状態で、その後、送達器具848のドライバ849は、図17に示すような第1位置から、貫通部分849がテザー828を貫通するか又はそれに係合して、テザー828をテザー取付部材824に固定する第2位置まで、係止ピン826を移動させることができる。例えば、送達器具848のドライバ849は、係止ピン826を第1位置から第2位置までねじ式に移動させることができる。テザー828がテザー取付部材824に固定された後、送達器具849を取り除くことができ、図21に示すように、レバーアーム838を第2位置すなわち閉鎖位置まで移動させることができる。
【0054】
[1083] 図22図30は、別の実施形態による心外膜アンカーデバイスを示す。心外膜アンカーデバイス900は、テザー取付部材924、パッドアセンブリ920、チューブ部材955及びチューブカバー部材956を含む。テザー取付部材924は、基礎部材940、ハブ950、保持リング952、係止ピンアセンブリ926及びピン部材953を含む。係止ピンアセンブリ926は、ドライバ部分946及び貫通部分949を含む。基礎部材940は、周方向のパッドチャネル942、保持チャネル951及び係止ピンチャネル934を規定している。パッドチャネル942を用いて、パッドアセンブリ920をテザー取付部材924に結合することができる。保持チャネル951は、ハブ950を基礎部材940に保持するために用いられる保持リング952の外縁を受け入れることができる。基礎部材940はまた、例えば図23図25及び図30に示すように、切取部又は戻り止め943も規定している。
【0055】
[1084] チューブ部材955は、基礎部材940に結合され、基礎部材940、ハブ950及びチューブ部材955はあわせて、テザー(図示せず)を受け入れることができるテザー通路935を規定している。カバー部材956は、例えばDacron(登録商標)等の布材料から形成することができる。テザーチャネル935は、係止ピンチャネル934と交差し、それと流体連通している。
【0056】
[1085] パッドアセンブリ920は、パッド頂部958、パッド底部959、及び、それらの間に配置された充填部材957を含む。パッド頂部958及びパッド底部959は各々、例えば、可撓性布材料で形成することができる。パッド頂部958及びパッド底部959は各々、チューブ部材955が通過することができる中心開口部を規定することができる。例えば図25図27に示すように、パッド頂部958の一部は、基礎部材940のチャネル942内に受け入れられる。
【0057】
[1086] ハブ950の外縁部分は、保持チャネル951内に受け入れられ、それにより、さらに詳細に後述するように、ハブ950は、基礎部材940に対して回転して係止ピンアセンブリ926を作動させることができる。例えば図28及び図29に示すように、ハブ950は、突起962を備えたアーム961を含む。突起962は、基礎部材940の切取部943内に受け入れられ、ハブ950の回転に対する止め具又は制限部として作用することができる。ハブ950によって規定されるスロット963により、アーム961は撓曲することができ、突起962を切取部943から出入りするように移動させることができる。例えば図27及び図29に示すように、ハブ950は、ハブ950の底部に湾曲チャネル950を規定している。湾曲チャネル950は非対称(例えば、らせん状)であり、係止ピンアセンブリ926のドライバ部分946を受け入れる。ハブ950が基礎部材940に対して回転する際、ハブ950はカムとして作用して、係止ピンチャネル934内で係止ピンアセンブリ926を直線状に移動させる。係止ピンアセンブリ926は、図25及び図26に示すような、貫通部分949がテザー通路935の外側に配置される第1位置、及び、図27に示すような、貫通部分949がテザー通路935を通って延在する第2位置から移動させることができる。ピン部材953(例えば図26を参照)は、アンカーデバイスの他の構成要素より放射線不透過性であり、従って従来の撮像モダリティを用いて術者(例えば医師)に可視であることにより、術者が、係止ピンアセンブリ926が第2位置に完全に移動したことを確認することができるようにする、金属材料で形成することができる。
【0058】
[1087] 使用時、係止ピンアセンブリ926が第1位置にあるとき、例えば人工僧帽弁に結合されかつ心臓の心室壁の穿刺部位を通って延在するテザー(図示せず)を、テザー通路935に挿入することができる。そして、ハブ950を180度回転させて、係止ピンアセンブリ926を係止ピンチャネル934内で直線状に移動させることができ、それにより、貫通部分949はテザー通路935を通って延在し、テザーに係合するか又はそれを貫通して、テザーをテザー取付部材924に固定する。例えば、係止ピンが第1位置にあるとき、ハブ950の突起962は各々、基礎部材940の切取部943のうちの1つの中に配置される(すなわち、第1突起は第1切取部にあり、第2突起は第2切取部にある)。そして、ハブ950を180度回転させることができ、それにより、突起962は基礎部材940の切取部943から出るように移動し、180度の最後に、突起962は基礎部材940の切取部943のうちの他方の中に移動する(すなわち、第1突起はこのとき第2切取部にあり、第2突起はこのとき第1切取部にある)。
【0059】
[1088] 基礎部材940はまた、切取部分966も含み、送達デバイスを心外膜アンカーデバイス900に結合するために使用することができる側部開口部967(例えば、図22及び図23を参照)を規定することができる。例えば、図31は、結合アーム968を有する送達デバイス948と、アーム968から内側に延在する結合ピン(図示せず)とを示す。側部開口部967は、結合ピンを受け入れることができ、切取部分966には、結合アーム968を係合させることができる。
【0060】
[1089] 様々な実施形態について上述したが、それらは、限定としてではなく単に例として提示されていることが理解されるべきである。上述した方法は、所定の順序で発生するいくつかの事象を示すが、いくつかの事象の順序は変更することができる。さらに、事象のうちのいくつかは、可能な場合は並列処理で同時に行うことができるとともに、上述したように逐次行うことができる。
【0061】
[1090] 上述した概略及び/又は実施形態は、いくつかの向き又は位置で配置されるいくつかの構成要素を示すが、構成要素の配置は変更することができる。実施形態が特に図示されかつ記載されているが、形態及び詳細の様々な変更を行うことができることが理解されよう。本明細書に記載する装置及び/又は方法のいかなる部分も、相互に排他的な組合せを除き、あらゆる組合せで結合することができる。本明細書に記載する実施形態は、記載した異なる実施形態の機能、構成要素及び/又は特徴の様々な組合せ及び/又は副組合せを含むことができる。
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