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特許6465971通信システムのための加入者局、及び、高データレートのCANベースの通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465971
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】通信システムのための加入者局、及び、高データレートのCANベースの通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   H04L12/28 200B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-522045(P2017-522045)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-531965(P2017-531965A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】EP2015073368
(87)【国際公開番号】WO2016062560
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】102014221346.0
(32)【優先日】2014年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ニッケル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホーゲンミュラー
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06404756(US,B1)
【文献】 特表2006−527942(JP,A)
【文献】 特開平08−307442(JP,A)
【文献】 特開平10−327173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システム(1)のための加入者局(10;30)であって、
前記加入者局(10;30)は、前記通信システム(1)の第1のバスシステムを用いて前記通信システム(1)の第2のバスシステムのバス(50)への当該加入者局(10;30)のアクセスを制御するための制御ユニット(12;34)を備え、
前記第1のバスシステムは、前記通信システム(1)の少なくとも2つの加入者局(10,20,30)のうちの1つが当該第1のバスシステムのバス(40)に排他的に衝突なしにアクセスできることが少なくとも一時的に保証されている通信が得られるように構成されており、
前記第2のバスシステムのバス(50)は、少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)を有し、前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)によって、前記通信システム(1)の前記少なくとも2つの加入者局(10;30)のメッセージ(51,53)を、それぞれ異なる別個の周波数領域において時間的に互いに独立して伝送することが可能であり、
前記第1のバスシステムは、CANプロトコルに基づいてメッセージ(41,42,43)を伝送するように構成されており、
前記第2のバスシステムは、少なくとも2つの高周波数チャネル(K1,K2乃至KNHF)によってメッセージ(51,53)を伝送するように、かつ、前記第1のバスシステムを介した場合よりも高レートで通信するように構成されており、
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムのバス(50)のためのアービトレーションを前記第1のバスシステムのバス(40)を介して実施するために、前記第2のバスシステムのバス(50)の所定のチャネルへのアクセスに関する占有情報を検出するために使用される、
ことを特徴とする加入者局(10;30)。
【請求項2】
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムのバス(50)の前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)への前記加入者局(10;30)のアクセスが解除された後、任意の長さを有するメッセージ(51;53)を前記第2のバスシステムの当該チャネル(K1,K2乃至KNHF)を介して送信するために、任意の期間の間、当該チャネル(K1,K2乃至KNHF)へのアクセスを保持する、
請求項1に記載の加入者局(10;30)。
【請求項3】
前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)の最大占有時間が規定されている、
請求項1又は2に記載の加入者局(10;30)。
【請求項4】
前記最大占有時間の後に前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)の自動的な解放を伴う固定パターンが規定されている、
請求項3に記載の加入者局(10;30)。
【請求項5】
前記第1のバスシステムのバス(40)と、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)とは、同一の媒体上に又はそれぞれ別個の並列の媒体上に構成されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項6】
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムの所定のチャネル(K1,K2乃至KNHF)を介してメッセージ(51;53)を送信する前に、当該所定のチャネル(K1,K2乃至KNHF)が占有されているというメッセージ(41:43)を前記第1のバスシステムのバス(40)を介して送信するように構成されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項7】
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムの前記所定のチャネル(K1,K2乃至KNHF)を介した前記メッセージ(51;53)の送信が終了した後、当該終了に関するメッセージ(41;43)を前記第1のバスシステムを介して送信するように構成されている、
請求項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項8】
前記加入者局(10;30)はさらに、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)の占有状態に関する情報を記憶するための記憶装置(13)を備え、
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)の現在の占有状態を監視し、当該監視に基づいて、前記記憶装置(13)に記憶されている前記占有状態に関する情報を更新するように構成されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項9】
前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)は、動的な帯域幅を有する、
及び/又は、
前記加入者局(10;30)において、前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)の、メッセージ(51;53)を受信するために有効な周波数の数は、さらに別の前記加入者局(30;10)において受信するために有効な周波数の数とは異なっている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項10】
前記制御ユニット(12;34)は、1つの加入者局(10;30)が前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)のうちの1つに排他的に衝突なくアクセスするために、前記メッセージ(51;53)を優先度に基づいて配列するように構成されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項11】
通信システム(1)であって、
第1のバス(40)と、
第2のバス(50)と、
少なくとも2つの加入者局(10;30)と、
を備え、
前記少なくとも2つの加入者局(10;30)は、少なくとも前記第1のバス(40)を介して互いに通信可能となるように互いに接続されており、
前記少なくとも2つの加入者局(10;20;30)の少なくとも1つは、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の加入者局(10;30)である、
ことを特徴とする通信システム(1)。
【請求項12】
高データレートのCANベースの通信方法であって、
通信システム(1)の第1のバスシステムを用いて前記通信システム(1)の第2のバスシステムのバス(50)への加入者局(10;30)のアクセスを、制御ユニット(12;34)によって制御するステップを備え、
前記第1のバスシステムは、前記通信システム(1)の少なくとも2つの加入者局(10,20,30)のうちの1つが当該第1のバスシステムのバス(40)に排他的に衝突なしにアクセスできることが少なくとも一時的に保証されている通信が得られるように構成されており、
前記第2のバスシステムのバス(50)は、少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)を有し、前記少なくとも2つのチャネル(K1,K2乃至KNHF)によって、前記通信システム(1)の前記少なくとも2つの加入者局(10;30)のメッセージ(51,53)を、それぞれ異なる別個の周波数領域において時間的に互いに独立して伝送することが可能であり、
前記第1のバスシステムは、CANプロトコルに基づいてメッセージ(41,42,43)を伝送するように構成されており、
前記第2のバスシステムは、少なくとも2つの高周波数チャネル(K1,K2乃至KNHF)によってメッセージ(51,53)を伝送するように、かつ、前記第1のバスシステムを介した場合よりも高レートで通信するように構成されており、
前記制御ユニット(12;34)は、前記第2のバスシステムのバス(50)のためのアービトレーションを前記第1のバスシステムのバス(40)を介して実施するために、前記第2のバスシステムのバス(50)の所定のチャネルへのアクセスに関する占有情報を検出するように構成されている、
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波数領域にある複数の可能な伝送周波数を有する高レートの伝送システムとCANシステムとが組み合わせられている、通信システムのための加入者局、及び、高データレートのCANベースの通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
CANバスシステムは、例えば自動車におけるセンサと制御装置との間の通信において使用される。CANバスシステムでは、ISO11898のCAN仕様書に記載されているようなCANプロトコルによってメッセージが伝送される。
【0003】
特に自動車のバスシステムは、より高い帯域幅、より低いレイテンシ時間、及びより厳格な実時間性へと継続的に発展し続けている。このために、仕様書“CAN with Flexible Data-Rate, Specification Version 1.0”(出典http://www.semiconductors.bosch.de)に従ってメッセージが伝送される、例えばCAN FD等のような技術が公知である。このような技術では、1Mbit/秒の値を超えるデータフィールドの領域にある比較的高いクロックを使用することによって最大可能データレートが増加される。
【0004】
しかしながら、既存のCANバスシステムをCAN FDよりも高速へと発展させる需要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の開示
従って、本発明の課題は、上述した問題を解決する、通信システムのための加入者局及び方法を提供することである。特に、CAN信号構造及び所要の通信装置をより高データレートへと発展させることを可能にし、かつ、従来のCAN加入者局との混合動作を可能にする、通信システムのための加入者局及び方法を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、請求項1に記載の特徴を有する通信システムのための加入者局によって解決される。前記加入者局は、第1のバスシステムを用いて前記通信システムの第2のバスシステムのバスへの当該加入者局のアクセスを制御するための制御ユニットを備え、前記第1のバスシステムは、前記通信システムの少なくとも2つの加入者局のうちの1つが当該第1のバスシステムのバスに排他的に衝突なしにアクセスできることが少なくとも一時的に保証されている通信が得られるように構成されており、前記第2のバスシステムのバスは、少なくとも2つのチャネルを有し、前記少なくとも2つのチャネルによって、前記通信システムの前記少なくとも2つの加入者局のメッセージを、それぞれ異なる別個の周波数領域において時間的に互いに独立して伝送することが可能である。
【0007】
本加入者局は、より高データレートへのCANバスの発展を提供し、相応の通信装置による既存のCAN通信の拡張が実現される。これによって、従来のCAN加入者局と混合されたバスシステム又はネットワークにおける拡張された加入者局又はノードの使用が容易になる。場合によってはこのために送受信装置(トランシーバ)の交換が必要となる。しかしながら、組み込まれたCANコントローラを有する既存のマイクロコントローラを継続して利用してもよい。
【0008】
本加入者局では、CAN信号構造と所要の通信装置とをCAN FDよりも高データレートへと発展させることを可能にする、物理層のための新しい概念が実施されている。
【0009】
本加入者局のさらに別の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
1つの実施例によれば、前記制御ユニットは、前記第2のバスシステムのバスの前記少なくとも2つのチャネルへの前記加入者局のアクセスが解除された後、任意の長さを有するメッセージを前記第2のバスシステムの当該チャネルを介して送信するために、任意の期間の間、当該チャネルへのアクセスを保持することができる。しかしながら、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルを介したメッセージの長さを、前記第1のバスシステムのために規定されているメッセージの長さの2倍にほぼ等しくすることも可能である。これに代えて又はこれに加えて、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルの最大占有時間を規定することも可能である。これに代えて又はこれに加えて、前記最大占有時間の後に自動的な解放を伴う固定パターンを規定することも可能である。
【0011】
前記第1のバスシステムを、CANプロトコルに基づいてメッセージを伝送するように構成し、前記第2のバスシステムを、少なくとも2つの高周波数チャネルによってメッセージを伝送するように、かつ、前記第1のバスシステムを介した場合よりも高レートで通信するように構成することも考えられる。
【0012】
可能な場合には、前記第1のバスシステムのバスと、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルとは、同一の媒体上に又はそれぞれ別個の並列の媒体上に構成されている。
【0013】
前記制御ユニットが、前記第2のバスシステムの所定のチャネルを介してメッセージを送信する前に、当該所定のチャネルが占有されているというメッセージを前記第1のバスシステムのバスを介して送信するように構成されている場合には有利である。これによって前記所定のチャネルの占有を把握することが可能となる。任意選択的に前記制御ユニットを、前記第2のバスシステムの前記所定のチャネルを介した前記メッセージの送信が終了した後、当該終了に関するメッセージを前記第1のバスシステムを介して送信するように構成することも可能である。
【0014】
前記加入者局はさらに、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルの占有状態に関する情報を記憶するための記憶装置を備えることができ、前記制御ユニットは、前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルの現在の占有状態を監視し、当該監視に基づいて、前記記憶装置に記憶されている前記占有状態に関する情報を更新するように構成されている。
【0015】
1つの実施形態では、前記少なくとも2つのチャネルのバンドリングはフレキシブルであることができ、及び/又は、前記加入者局において、前記少なくとも2つのチャネルの、メッセージを受信するために有効な周波数の数は、さらに別の前記加入者局において受信するために有効な周波数の数とは異なっていることができる。
【0016】
有利な1つの実施形態では、前記制御ユニットは、1つの加入者局が前記第2のバスシステムの前記少なくとも2つのチャネルのうちの1つに排他的に衝突なしにアクセスするために、前記メッセージを優先度に基づいて配列するように構成されている。
【0017】
上述した加入者局は、通信システムの一部とすることができ、前記通信システムはさらに、第1のバスと、第2のバスと、少なくとも2つの加入者局とを有し、前記少なくとも2つの加入者局は、少なくとも前記第1のバスを介して互いに通信可能となるように互いに接続されている。この場合、前記少なくとも2つの加入者局の少なくとも1つは、上述した加入者局である。
【0018】
上述した課題はさらに、請求項10に記載の高データレートのCANベースの通信方法によって解決される。前記通信方法は、第1のバスシステムを用いて通信システムの第2のバスシステムのバスへの加入者局のアクセスを、制御ユニットによって制御するステップを備え、前記第1のバスシステムは、前記通信システムの少なくとも2つの加入者局のうちの1つが当該第1のバスシステムのバス(40)に排他的に衝突なしにアクセスできることが少なくとも一時的に保証されている通信が得られるように構成されており、前記第2のバスシステムのバスは、少なくとも2つのチャネルを有し、前記少なくとも2つのチャネルによって、前記通信システムの前記少なくとも2つの加入者局のメッセージを、それぞれ異なる別個の周波数領域において時間的に互いに独立して伝送することが可能である。
【0019】
本発明のさらなる可能な実施形態は、上述した特徴又は実施形態若しくは実施例に関して、以下に記載する特徴又は実施形態の、明示的には記載していない組み合わせも含む。この場合には当業者は、個々の態様を改善又は拡張として本発明のそれぞれの基本形に追加するであろう。
【0020】
図面
以下では、本発明を、添付の図面を参照しながら、実施例に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施例に係る通信システムの概略的なブロック回路図である。
図2】第1の実施例に係る通信システムにおけるメッセージの送信の概略図である。
図3】第2の実施例に係る通信システムの入力部及び出力部の構造のブロック回路図である。
図4】第2の実施例に係る通信システムにおけるメッセージの送信の概略図である。
図5】第3の実施例に係る通信システムにおけるメッセージの送信の概略図である。
【0022】
図面では、同一の、又は、同等の機能を有する要素には、別段の指示がない限り、同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例の説明
図1は、車両、特に自動車、飛行機等、又は、病院等で使用可能な通信システム1を示す。
【0024】
図1において通信システム1は、複数の加入者局10,20,30を有し、これらの加入者局10,20,30は、第1のバス40と、場合によっては第2のバス50とにそれぞれ接続されている。第1のバス40を介して、信号の形態のメッセージ41,42,43を個々の加入者局10,20,30間で伝送することが可能である。第2のバス50を介して、信号の形態のメッセージ51,53を個々の加入者局10,30間で伝送することが可能である。加入者局10,20,30は、例えば自動車の制御装置又は表示装置とすることができる。
【0025】
第1のバス40は、複数の加入者局10,20,30と一緒に1つの第1のバスシステムを形成する。第1のバスシステムは、例えばCANバスシステム、CAN−FDバスシステム等とすることができる。全般的に、本実施例における第1のバスシステムは、加入者局10,20,30のうちの1つが第1のバス40に排他的に衝突なしにアクセスできることが少なくとも一時的に保証されている通信が得られるように構成されている。
【0026】
第2のバス50は、複数の加入者局10,30と一緒に1つの第2のバスシステムを形成する。第2のバスシステムを用いると、第1のバスシステムを用いた場合よりも高レートのデータ形式でメッセージ51,53を伝送することが可能である。
【0027】
図1に示されているように加入者局10は、通信制御装置11と、記憶装置13を備える制御ユニット12と、送受信装置14とを有する。これに対して加入者局20は、通信制御装置11と送受信装置24とを有する。加入者局30は、通信制御装置11と、記憶装置13と、送受信装置34とを有する。加入者局10,30の制御ユニット12及び送受信装置14,34は、図1には図示されていなくとも第1のバス40及び第2のバス50にそれぞれ直接的に接続されている。加入者局20の送受信装置24は、図1には図示されていなくとも第1のバス40に直接的に接続されている。
【0028】
通信制御装置11はそれぞれ、各加入者局10,20,30と、第1のバス40に接続された複数の加入者局のうちの他の1つの加入者局10,20,30との、第1のバス40を介した通信を制御するために使用される。このために通信制御装置11は、通信システム1の少なくとも1つの他の加入者局への/からの少なくとも1つのメッセージ41,51又は43,53を作成する又は読み取ることができる。この場合、通信制御装置11は、従来のCANコントローラのように構成することができる。
【0029】
制御ユニット12は、加入者局10と、第2のバス50に接続された複数の加入者局10,30のうちの他の1つの加入者局30,10との、第2のバス50を介した通信を制御することができる。記憶装置13には、第2のバス50の占有に関するデータを記憶することができる。制御ユニット12の機能は送受信装置34にも組み込まれており、従って、送受信装置34もまた制御ユニットである。
【0030】
送受信装置14,24,34は、第1のバス40を介して、加入者局10,20,30のうちの1つによって作成されたメッセージ41,42,43を別の加入者局10,20,30に送信すること、又は、別の加入者局10,20,30のうちの1つによって送信されたメッセージを受信することが可能である。送受信装置14,24は、その送受信機能に関して従来のCANトランシーバのように構成することができる。送受信装置34は、制御ユニット12と同様にしてさらに第2のバス50を介して、加入者局30によって作成されたメッセージ53を別の加入者局10に送信すること、又は、別の加入者局10,20のうちの1つによって送信されたメッセージ41,42,43,51を受信することが可能である。記憶装置13は、上述したように構成することができる。
【0031】
2つの加入者局10,30を用いることにより、ロバストな構成を実現することが可能となり、ひいてはCAN−FDよりも高データレートでのメッセージ51,53の伝送を実現することも可能となる。これに対して加入者局20は、その送信機能に関しても受信機能に関しても従来のCAN加入者局に相当し、CANプロトコルに基づいてメッセージ42を伝送する。
【0032】
制御ユニット12及び送受信装置34は、第2のバス50のためのアービトレーションを第1のバス40を介して実施するために、第2のバス50の所定のチャネルへのアクセスに関する占有情報を検出するために使用される。
【0033】
このために使用される伝送方法は、第2のバス50上における高周波数領域(HF)にある複数の可能な伝送周波数を有する高レートの伝送システムと、第1のバス40上におけるCANシステムとを組み合わせている。CANシステムは、第2のバス50のチャネルアクセスを制御するために使用される。接続構成として2つのバス40,50のために並列のバス構造が採用され、バス50へのアクセスは、追加的なアクセスメカニズムによる通常のCANアービトレーションを介してCANベースで実施され、このことは以下で説明される。
【0034】
従って、第1のバス40上におけるCANシステムと、第2のバス50上における複数の搬送波又はチャネルK1,K2等を有するHFシステムとが並列に動作され、この場合には、両方のバス40,50を同一の媒体上に又はそれぞれ別個の並列の媒体上に構成することが可能である。
【0035】
図2は、時間t軸上における周波数Fを示す線図において、HF領域がNHF個の搬送波に分割されており、チャネル番号K1,K2,・・・KNHFによって参照されていることを示す。HF媒体を第2のバス50に割り当てるために、全ての加入者局10,30がCAN媒体上、すなわち、第1のバス40上におけるメッセージ41,42,43を監視して、それぞれのチャネルK1,K2,・・・KNHFに関するステータスを記憶装置13に保存することが前提とされる。従って、それぞれのチャネルK1,K2,・・・KNHFごとに、占有されている状態(B)又は空き状態(F)がリスト又はテーブルに保存される。
【0036】
加入者局10,30が、それぞれCANマトリクスに従って固定のCAN識別子(ID)N1,N2,・・・を有するメッセージ51,53を送信しようとした場合、この加入者局10,30は、チャネル状態テーブルから空きのチャネル、例えばチャネルK5又はK2を選択し、第1のバス40によって実現されるCANチャネル上においてアービトレーションを開始する。
【0037】
図2では例として、アービトレーションに勝利したチャネルK5に関して、識別子N1を有するメッセージ51のアービトレーションが図示されている。バス40上におけるメッセージN1(K5,B)である、対応するメッセージ41のデータ部分において、チャネルK5のチャネル占有が通知される。この場合には2つのメッセージ種類が存在しており、すなわち、図2に図示されているようにそれぞれチャネル/搬送波番号が付された占有と解放とが存在する。アービトレーションに勝利した識別子N1を有するメッセージ51だけが、これに対応する加入者局10,30によっても送信可能となるので、これによってチャネルK5は、全ての加入者局10,30の占有テーブルにおいて「占有されている状態」として更新される。これによって図2に図示されているように、識別子N1を有するメッセージ51をチャネルK5上で伝送することが可能となる。
【0038】
メッセージ51の動的な長さを実現可能とするために、バス40によって実現されるCANチャネルはすぐに再び空き状態になり、チャネルK5上における送信を任意の長さで継続することが可能となる。識別子N1を有するメッセージ51が完全に送信完了されるとすぐに、識別子N1を有するこのメッセージ51が終端される。チャネルK5はさらに、バス40によって実現されるCANチャネル上におけるメッセージN1(K5,F)の形態のメッセージ41として空き通知を送信することよって実施される。メッセージN1(K5,F)の形態のこの空き通知は、アービトレーションを経て、メッセージN1(N5,F)のデータ部分において、K5のチャネル占有が今や空き状態であるとして通知される。アービトレーションが機能しない場合には、メッセージN1(K5,F)は待機しなければならない。
【0039】
同様にして、チャネルK2上における識別子N3を有するメッセージ53の送信が実施される。
【0040】
それぞれの加入者局10,30は、識別子N1,N2,N3・・・を有する1つのメッセージ51,53に対して1つのチャネルK1,K2,・・・だけを割り当てることができ、そしてこのチャネルをまた後で再び解放しなければならない。全ての加入者局10,30は、第1のバス40上におけるアービトレーション及びメッセージ41,42,43を監視し、アービトレーション後に占有情報を更新する。CAN制御チャネルである第1のバス40の過負荷は排除されている。なぜなら、全てのチャネルK1,K2,・・・KNHFが占有されている場合には空きメッセージだけしか許可されていないからである。他の全ての場合には、アービトレーションが、チャネルK1,K2,・・・KNHFのうちの1つの新たな占有を、常に最も高い優先度を有するメッセージを用いて発信する。このために、CANメッセージ・識別子N1,N2,・・・を適合させることによって優先行動を変更することができ、場合によっては占有されている状態(B)又は空き状態(F)のステータスの分だけ拡張することができる。
【0041】
従って、通信システム1では、高データレートのCANベースの通信方法が実施され、この通信方法においては、加入者局10の通信制御装置11によって例えば加入者局30に対してメッセージ51が作成され、それと同時に又はそれに続いて、第2のバスシステム50の所定のチャネルK1,K2,・・・KNHFへのアクセスに関する占有情報B,Fが、第1のバスシステム40を介したアービトレーションの実施によって検出され、アービトレーションがポジティブに完了した場合に、通信制御装置11によって作成されたメッセージが、第2のバス50の所定のチャネルを介して加入者局30に送信される。
【0042】
第1の実施例の修正形態によれば、第2のバス50の全てのNHF個のチャネルの占有中及び解放中に平均して全ての必要とされる2NHF個のメッセージ41,42,43を第1のバス40上で送信できるようにするために、第2のバス50上におけるメッセージ51,53は、第1のバス40上におけるメッセージ41,42,43の約2倍の長さを有することができる。これによって、高い帯域幅利用効率を達成することができる。
【0043】
第1の実施例のさらに別の修正形態によれば、一般的に最大占有時間TBmaxを規定することができ、これによってHFチャネルの全ての占有状態を確実に把握するために、新しい加入者局10,30は、この最大占有時間だけを待機すればよくなる。図2では、最大占有時間TBmaxは、メッセージN1又はN3の長さに一致し得る。任意選択的にTBmaxよりも長い占有も可能にするために、占有中に占有の延長を「示す」ことができる。ただし、この場合には、最大占有時間TBmax内に占有通知によって改めてアービトレーションを実施しなければならない。
【0044】
第1の実施例の上記の修正形態の場合には、解放メッセージを送信する必要なしにTBmax後に自動的な解放を伴う固定のパターンを使用することも可能である。この場合には、長いメッセージをセグメント化によって処理することが可能である。
【0045】
第1の実施例のさらにまた別の修正形態によれば、チャネルK1,K2,・・・KNHFのうちの1つの上で送信しようとする、既にアービトレーション中にある加入者局10,30は、他の加入者局30,10によるチャネル利用が本当に行われないことを保証するために、自身のアービトレーションフェーズ中にこのチャネルを監視することができる。これによって、記憶装置13における場合によってエラーを含み得るチャネル占有エントリを保護することができる。他の加入者局30,10によるチャネル占有、ひいてはチャネル利用が確認されると、エラーフレームの送信(エラーバースト)によってこのメッセージをアービトレーション後にもなお無効であるとして宣言することができる。
【0046】
第1の実施例のさらにまた別の修正形態によれば、送受信装置14,34及び/又は制御ユニット12において、それぞれ異なる数の有効な周波数を有する受信器が使用される。これによって加入者局10,30は、動作中により少ない数のチャネルK1,K2,・・・KNHFだけを監視すればよくなる。これによって記憶装置13のメモリ消費量が少なくなり、加入者局10,30によるメッセージの送受信がより高速になる。
【0047】
第1の実施例のさらにまた別の修正形態によれば、チャネルK1,K2,・・・KNHFの動的な帯域幅、すなわち、フレキシブルなバンドリングが使用される。これによって通信システム1をその時々の用途にフレキシブルに適合させることが可能となる。
【0048】
図3は、第2の実施例に係るバス40,50の入力部及び出力部の接続を示す。本実施例に係る通信システムは、先行する実施例において図1及び図2に関連して説明したものと同様に構成されている。
【0049】
図3によれば、バス40,50に外部のスプリッタ60が接続されている。これによってバス40,50の2つのライン出力部は、図3のスプリッタ60の右側に示されているようにスプリッタ60によって共通の1つのバスラインに統合されている。スプリッタ60は、第1のバス40の周波数を通過させるローパスと、第2のバス50の周波数を通過させるハイパスとを組み合わせたものとして構成することができる。
【0050】
こうすることによって1つの製品に対して複数の用途の可能性が生まれ、そうすると、この製品は、バス40,50の2つの方法を別個に実施することが可能となる。しかしながら、この製品において、用途に応じて、2つのシステムが共に又は別個に、独立した通信ネットワークとして動作してもよい。共に動作する場合には、バス40,50のためのそれぞれ別個のラインによって動作して、CANバスを介したアクセスだけを制御する可能性、又は、外部のスプリッタ60によって両方のライン出力部をバス40,50のための共通の1つのバスラインに統合する可能性がもたらされる。
【0051】
図4は、第3の実施例に係る通信システムにおけるメッセージの伝送を示す。本実施例に係る通信システムも、第1の実施例において図1に関連して説明したものと同様に構成されている。従って、本実施例に係る通信システムにおいてもメッセージ41,42,43が第1のバス40上で伝送され、さらに別の方法に基づいてメッセージ51,53が第2のバス50上で伝送される。第2のバス50は、第1のバス40に対して並列に別個のラインとして構成されている。第2のバス50上においてはさらに、第2の通信方法及び変調方法が広帯域領域において使用される。
【0052】
本実施例に係る通信システムにおいても、2つの独立したバス40,50上における調整された形態での伝送は、第1のバス40、例えばCANバスがアービトレーションを含む媒体アクセスのために利用されるように、かつ、第2のバス50上における通信が第1のバス40を介して調整されるように、構成されている。このことは、本実施例の場合には、図4に図示されているように同じ時間窓が使用されるが、これらの時間窓がさらに時間的にオフセットされて配置されている形態で実施される。
【0053】
これによって第2のバス50上におけるメッセージ51,53による通信を、有利には第1のバス40上におけるアービトレーションの完了後に開始することが可能となる。
【0054】
図5は、第4の実施例に係る通信システムにおけるメッセージの伝送を示す。本実施例に係る通信システムも、第1の実施例において図1に関連して説明したものと同様に構成されている。従って、本実施例に係る通信システムにおいてもメッセージ41,42,43が第1のバス40上で伝送され、さらに別の方法に基づいてメッセージ51,53が第2のバス50上で伝送される。第2のバス50は、第1のバス40に対して並列に第1のバス40と共通の1つのラインにおいて構成されている。第2のバス50上においてはさらに、第2の通信方法及び変調方法が広帯域領域において使用される。
【0055】
1つのバスライン上でそれぞれ異なる変調方法によって低周波数領域(CAN)と高周波数領域(高データレートによるロバストな伝送)とにおいて通信が行われる先行する実施例の場合のように、CANアービトレーションによる2つの方法の調整された構成を、それぞれ別個のバスラインを利用した場合と同様にして実施することができる。
【0056】
図5に示されているように、ここでも周波数領域におけるバス40,50の2つの方法の実質的な分離が実施される。第2のバス50上における伝送は、第1のバス40上における伝送よりも高い周波数で実施される。それと同時に、第1のバス40上におけるアービトレーションを介した媒体アクセスと、メッセージ41,42,43の長さとが、図4に示されているように調整される。ここでも時間オフセットを利用することができるが、必ずしも必須ではない。
【0057】
ただし、バス40,50をただ1つのライン上に実現する場合には、図5の個々の通信方法は、原則的に周波数領域において互いに重畳しないように構成されている。
【0058】
通信システム1と、加入者局10,20,30と、バス40,50と、本方法との上述した全ての構成は、個々に又は全ての可能な組み合わせにおいて使用することができる。特に、上述した実施例の全ての特徴を任意に組み合わせることができる。さらには、特に以下の変更が考えられる。
【0059】
各実施例に係るバス40を有する上述した第1のバスシステムは、CANプロトコルをベースにしたバスシステムに基づいて記載されている。しかしながら、各実施例に係る第1のバスシステムを、別の種類の通信ネットワークとすることも可能である。ただし、通信システム1の第1のバスシステムにおいて、少なくとも所定の期間の間、1つの加入者局10,20,30が共通の1つのチャネルに排他的に衝突なしにアクセスできることが保証されることを、必ずしも必須ではないが前提とすることが有利である。
【0060】
2つ以上のバス50を、第1のバス40に対して並列に動作させることも可能である。通信制御装置11、記憶装置12、及び送受信装置13は、これに相応して構成すべきである。システムが複数ある場合には、図3のスプリッタ回路によって個々の部分システムだけを組み合わせて、別個のバス40,50を考慮することが可能である。
【0061】
加入者局10,20,30の数は、任意に選択することが可能である。通信システム1において部分加入者局10,30だけを設けることも可能である。
【0062】
本明細書に記載された、従来のCANトランシーバの機能を上回る機能を、通信制御装置11によって構成すること、又は、別個のトランシーバによって構成することも可能である。これにより、CANからCAN−FDを経て、追加的な高レートの動作モードを有する新しい製品への移行が支援される。
【0063】
第2のバス50のチャネル上における伝送のために、複数の伝送形式を利用することが可能である。例えば搬送波ベースの伝送を使用することができ、この場合には、直角位相振幅変調方式(QAM)の変調シンボルが搬送波周波数に変調される。搬送波の変調は、適切なサンプリングが使用される場合にはデジタル領域において直接的に実施することも可能である。
【0064】
パルス振幅変調方式(PAM)の他に、直交周波数分割多重方式(OFDM)を、第2のバス50としての1つ(又は複数の)追加的なシステムのために可能な構成として使用することができる。このために、伝送すべきデータが複数の搬送波のシンボルにマッピングされ、OFDMシンボルの個々の周波数に割り当てられる。
【0065】
追加的な動作変形例として、第2のバス50上における高レートの伝送モードを、相手側の通信制御装置11又は制御ユニット12又は送受信装置34が全ての従前のCANモード、特にCAN−FD、パーシャルネットワーキング等を制圧するような形態で実施することができる。
【0066】
第2のバス50を介した高レートの伝送モードは、従前のCANモード、特に、CAN−FD、パーシャルネットワーキング等と共存して動作することができるように実施される。
【0067】
通信制御装置11又は制御ユニット12又は送受信装置34への機能の分割を、複数のモジュールへ分散させて実現することも可能である。これによって、従前のCANコントローラ及びCANトランシーバに相当する同様の可能な構成が得られるように努力がなされる。複数のモジュールを接続するために、アナログインタフェースもデジタルインタフェースも使用可能である。
【0068】
第1のバス40のためのCAN通信経路は、通常、通信制御装置11によるCANコントローラの他に、送受信装置14,24,34によるCANトランシーバと、コモンモードチョーク(CMC)も含む。これらのコンポーネントは、1つには図3の左側に示されているようにシステム側に設けることができるか、又は、外部側で考慮するスプリッタ60に組み込むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5