(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダンプ回路は、前記第1ダンプ電流に加えて、前記電源回路の入力から第2ダンプ電流をシンク可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス受電装置。
前記ダンプ回路は、前記電源回路の起動完了前に前記第2ダンプ電流をシンクし、前記電源回路の起動完了後に前記第1ダンプ電流をシンクすることを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス受電装置。
前記ダンプ回路は、前記電源回路の出力と接続され、前記第1ダンプ電流を生成する第1電流源を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
前記ダンプ回路は、前記電源回路の出力と接地の間に設けられた第1ダンプ抵抗を含み、前記第1ダンプ抵抗の抵抗値に反比例する前記第1ダンプ電流をシンクすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
前記ダンプ回路は、前記電源回路の入力と接地の間に設けられた第2ダンプ抵抗を含み、前記第2ダンプ抵抗の抵抗値に反比例する前記第2ダンプ電流をシンクすることを特徴とする請求項2または3に記載のワイヤレス受電装置。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器への給電方式として、ワイヤレス給電が普及の兆しを見せている。ワイヤレス給電には、電磁誘導(MI:Magnetic Induction)方式と磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)方式の2つの方式が存在するが、MI方式では、現在、(1)WPC(Wireless Power Consortium)が策定した規格「Qi」と、(2)PMA(Power Matters Alliance)が策定した規格(以下、PMA)が主流となっている。
【0003】
図1は、PMA規格に準拠したワイヤレス給電システム100Rの構成を示す図である。給電システム100Rは、送電装置200R(TX、Power Transmitter)と受電装置300R(RX、Power Receiver)を備える。受電装置300Rは、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などの電子機器に搭載される。
【0004】
送電装置200Rは、送信コイル(1次コイル)202、ドライバ204、コントローラ206、復調器208を備える。ドライバ204は、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)あるいはハーフブリッジ回路を含み、送信コイル202に駆動信号S1、具体的には交流の駆動信号を印加し、送信コイル202に流れる駆動電流により、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送電装置200R全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、あるいはスイッチングのデューティ比、位相などを制御することにより、送信電力を変化させる。
【0005】
受電装置300Rは、受信コイル302、整流回路304、平滑コンデンサ306、電源回路308、変調器310、コントローラ312、を備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304および平滑コンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流I
RXを整流・平滑化し、直流電圧V
RECTに変換する。
【0006】
電源回路308は、直流電圧V
RECTを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷380に供給する。あるいは負荷380は二次電池を含み、電源回路308は二次電池を充電するチャージャーを含んでもよい。
【0007】
PMA規格あるいはQi規格では、送電装置200Rと受電装置300Rの間で通信プロトコルが定められており、受電装置300Rから送電装置200Rに対して、制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、FSK(Frequency Shift Keying)あるいはASK(Amplitude Shift Keying)された形で、受信コイル302(2次コイル)から送信コイル202に送信される。
【0008】
この制御信号S3には、たとえば、受電装置300Rに対する電力供給量を指示する電力制御データ(パケットともいう)、受電装置300Rの固有の情報を示すデータなどが含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流あるいは電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データにもとづいて、ドライバ204を制御する。
【0009】
受電装置300Rでは、負荷380に供給される負荷電流(電源回路308の出力電流)I
OUTが低下する軽負荷状態あるいは無負荷状態が発生する。これらの状態では、整流回路304から負荷側に流れる電流I
RECTが減少することとなり、給電システム100Rの動作が不安定となる場合がある。具体的には送信電力が一定の条件下で負荷電流I
OUT(整流電流I
RECT)が極端に小さくなると、整流電圧V
RECTが非常に大きくなってしまう。あるいは整流回路304として、同期整流回路(Hブリッジ回路)を用いた場合、整流回路304の出力電流I
RECTが小さいとHブリッジ回路のスイッチング制御が不安定となる。この問題を解決するために、整流回路304の出力には、ダンプ抵抗R
DUMPが接続される。軽負荷状態あるいは無負荷状態においては、ダンプ抵抗R
DUMPの抵抗値が下げられ、式(1)で与えられるダンプ電流I
DUMPを接地に引き込むことで、整流回路304が無負荷となるのを防止し、回路動作の安定性を確保する。
I
DUMP=V
RECT/R
DUMP …(1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、
図1の受電装置300Rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
ワイヤレス給電では、受電装置300Rにおいて受信電力P
RXが計算される。この受信電力P
RXは、異物検出(FOD:Foreign Object Detection)や、送信電力制御などに使用することができる。
【0012】
ここで受信電力P
RXには、ダンプ抵抗R
DUMPにおける消費電力P
DUMPも含めるべきであり、式(2)から計算することができる。V
RECTは実測値を用いてもよいし、その目標値を用いてもよい。
P
DUMP=V
RECT2/R
DUMP …(2)
ここで抵抗R
DUMPの抵抗値は、プロセスばらつきを有しており、また温度依存性を有する。したがって式(2)の計算において、抵抗R
DUMPの設計値を用いた場合、式(2)で計算された電力P
DUMPと、実際の電力には誤差が生ずる。
【0013】
また受信電力P
RXを測定する目的以外にも、整流回路304から負荷側に流れる電流I
RECTを高精度で測定し、制御に反映させたい場合もある。この電流I
RECTは、電源回路308に流れ込む電流I
INとダンプ電流I
DUMPの合計であるところ、ダンプ電流I
DUMPは、式(1)で与えられるため、抵抗値がばらつくと、ダンプ電流I
DUMPの電流量に誤差が生ずる。
【0014】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、回路内に流れる電流もしくは消費電力(受信電力)を正確に検出可能な受電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある態様は、ワイヤレス受電装置に関する。ワイヤレス受電装置は、受信コイルと、受信コイルの電流を整流する整流回路と、整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、平滑コンデンサに生ずる整流電圧を安定化し、負荷に供給する電源回路と、電源回路の出力から第1ダンプ電流をシンクするダンプ回路と、電源回路に流れる電流を検出し、電流量を示す電流検出信号を生成する電流検出回路と、を備える。
【0016】
電源回路に流れる電流には、負荷電流に加えて第1ダンプ電流が含まれるため、ダンプ電流を考慮した電流検出信号が生成される。したがってこの態様によれば、整流回路から負荷側に流れる電流、ひいては消費電力(受信電力)を正確に検出することができる。
また電源回路として、フィードバック制御をともなうレギュレータを用いる場合には、軽負荷あるいは無負荷状態において、発振マージンが小さくなり、位相補償をはじめとするフィードバックループの設計が難しくなり、もしくは系の安定性が低下する。この点に関して、この態様によれば、第1ダンプ電流が電源回路の最小負荷となるため、フィードバックループの設計を簡易化でき、あるいは系の安定性を格段に高めることができる。
【0017】
ダンプ回路は、第1ダンプ電流に加えて、電源回路の入力から第2ダンプ電流をシンク可能に構成されてもよい。
【0018】
ダンプ回路は、電源回路の起動完了前に第2ダンプ電流をシンクし、電源回路の起動完了後に第1ダンプ電流をシンクしてもよい。
電源回路の出力電圧が低い状態では、そもそも十分な量の第1ダンプ電流をシンクできず、あるいは、出力電圧が低い状態で第1ダンプ電流をシンクすると、突入電流などの要因となり得る。そこで、電源回路の起動完了前は、電源回路の前段でダンプ電流をシンクすることで、電源回路の出力電圧が低い状態でも、必要とされる量のダンプ電流を流すことができ、回路動作を安定化できる。
【0019】
ある態様のワイヤレス受電装置は、少なくとも電流検出信号にもとづき受信電力を計算する電力測定部をさらに備えてもよい。
【0020】
ある態様のワイヤレス受電装置は、電流検出信号にもとづいて、整流電圧の目標値を制御する目標電圧設定部と、整流電圧が前記目標値に近づくように値が調節される電力制御データを生成する電力制御部と、電力制御データを変調し、受信コイルを介してワイヤレス送電装置に送信する変調器と、をさらに備えてもよい。
【0021】
ダンプ回路は、電源回路の電流が小さいほど第1ダンプ電流を増加させてもよい。これにより、ダンプ回路での消費電力を実質的に一定に保つことができる。
【0022】
ダンプ回路は、電源回路の出力と接続され、第1ダンプ電流を生成する第1電流源を含んでもよい。またダンプ回路は、電源回路の入力と接続され、第2ダンプ電流を生成する第2電流源を含んでもよい。
ダンプ電流を、抵抗ではなく電流源によって生成することで、ダンプ回路を抵抗素子で構成する場合に比べて、ダンプ電流の精度を高めることができる。
【0023】
ダンプ回路は、その第1端子が電源回路の出力と接続される第1トランジスタと、第1トランジスタの第2端子と接地の間に設けられたフィードバック抵抗と、その第1端子が電源回路の入力と接続され、その第2端子がフィードバック抵抗と接続された第2トランジスタと、フィードバック抵抗の電圧降下が制御電圧に近づくように、第1トランジスタおよび第2トランジスタそれぞれの制御端子の電圧を調節するエラーアンプと、を含んでもよい。
これにより、単一のエラーアンプを用いて、第1、第2ダンプ電流の合計を、制御電圧に応じた量に安定化することができ、回路素子数を削減できる。
【0024】
ダンプ回路は、第1トランジスタの制御端子とエラーアンプの間に設けられた第1スイッチと、第2トランジスタの制御端子とエラーアンプの間に設けられた第2スイッチと、をさらに含んでもよい。
これにより、第1スイッチ、第2スイッチのオン、オフに応じて、第1ダンプ電流、第2ダンプ電流それぞれを個別にオン、オフさせることができる。
【0025】
ダンプ回路は、電流検出信号に応じた制御電圧を生成する可変電圧源をさらに含んでもよい。
【0026】
可変電圧源は、定電圧を発生する定電圧源と、定電圧源の出力と接地の間に直列に接続された複数の抵抗を含む分圧回路と、分圧回路に設けられた複数のタップそれぞれとエラーアンプの入力端子の間に設けられた複数のスイッチと、電流検出信号に応じて複数のスイッチを制御するデコーダと、を含んでもよい。
【0027】
定電圧源は、製造工程において定電圧を調節するためのリペア抵抗を含んでもよい。
【0028】
電流検出回路は、電源回路の検出対象の電流の経路上に設けられた第3トランジスタおよび第3トランジスタと制御端子が共通に接続された第4トランジスタを含むカレントミラー回路と、第4トランジスタに流れる電流を電圧に変換するI/V変換回路と、を含んでもよい。
【0029】
電流検出回路は、電源回路の検出対象の電流の経路上に設けられた電流検出抵抗と、電流検出抵抗の電圧降下に応じた検出信号を生成するセンスアンプと、センスアンプの出力信号を量子化し、電流検出信号を生成するA/Dコンバータと、を含んでもよい。
【0030】
ダンプ回路は、電源回路の出力と接地の間に設けられた第1ダンプ抵抗を含み、第1ダンプ抵抗の抵抗値に反比例する第1ダンプ電流をシンクしてもよい。またダンプ回路は、電源回路の入力と接地の間に設けられた第2ダンプ抵抗を含み、第2ダンプ抵抗の抵抗値に反比例する第2ダンプ電流をシンクしてもよい。
【0031】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のある態様によれば、回路の安定性を確保しつつ、回路内に流れる電流もしくは消費電力(受信電力)を正確に検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0035】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
図2は、実施の形態に係る受電装置300を備える電子機器500のブロック図である。受電装置300は、図示しない送電装置からの電力信号S2を受信し、そのエネルギーを平滑コンデンサ306に蓄え、負荷502に供給する。受電装置300は、Qi規格、PMA規格、あるいはその他の規格のいずれかに準拠し、あるいはそれらのうち複数の規格に準拠しうる。
【0037】
受電装置300は、受信コイル302、共振キャパシタ303、整流回路304、平滑コンデンサ306、電源回路308、およびコントローラ320を備える。
【0038】
受信コイル302は、送信コイルからの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイルに対して送信する。共振キャパシタ303は、受信コイル302に対して直列に接続され、受信コイル302および共振キャパシタ303は、受信アンテナを形成する。受信コイル302には、電力信号S2により誘起される電流I
RXが流れる。整流回路304の入力側は受信コイル302と接続され、電流I
RXを全波もしくは半波整流する。整流回路304はダイオードブリッジ回路(ダイオード整流回路)であってもよいし、Hブリッジ回路(同期整流回路)であってもよい。平滑コンデンサ306は、整流回路102の出力と接続され、整流回路102の出力電圧を平滑化する。
【0039】
整流電圧V
RECTを用いてプロセッサなどの電子回路を直接駆動することは困難であるため、電源回路308が設けられる。電源回路308は、平滑コンデンサ306に発生する直流電圧(整流電圧という)V
RECTを、所定電圧に安定化し、後段の負荷502に供給する。電源回路308は、リニアレギュレータおよび/またはスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)を含み、整流電圧V
RECTを適切な電圧レベルにレギュレートし、負荷502に供給する。また電源回路308は、送電装置200から供給された電力を利用して二次電池を充電する充電回路を含んでもよい。
【0040】
続いて実施の形態に係るコントローラ320について説明する。コントローラ320は、ダンプ回路322、電流検出回路324、電力測定部326、目標電圧設定部328、電力制御部330、変調器332を備える。コントローラ320は、その一部、あるいは全部が、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
図2には、かならずしもコントローラ320のすべての構成が示されるわけではなく、理解の容易化、説明の簡潔化のため、本発明と関係のないブロックは省略されている。
【0041】
従来では、電源回路308の入力側からのみダンプ電流をシンクしていたのに対して、本実施の形態では、ダンプ回路322は、電源回路308の出力から第1ダンプ電流I
DUMP1をシンクする。第1ダンプ電流I
DUMP1は、負荷502のスタンバイ状態、言い換えれば受電装置300が無負荷あるいは軽負荷状態であるときに、整流回路304の出力電流I
RECTがゼロとなるのを防止するために生成される。
【0042】
電流検出回路324は、電源回路308に流れる電流I
OUTを検出し、電流量を示す電流検出信号S11を生成する。
【0043】
ダンプ回路322は、電流検出回路324が検出した電流量にもとづいて、ダンプ電流I
DUMPの量を制御してもよい。具体的には、ダンプ回路322は、電源回路308の電流I
OUTが小さいほど第1ダンプ電流I
LOADを増加させる。
【0044】
電力測定部326は、少なくとも電流検出信号S11にもとづいて受信電力P
RXを測定する。変調器332は、受信電力P
RXを示すデータを変調し、受信コイル302から送電装置に送信してもよい。送電装置は、受信電力P
RXと自信の送信電力P
TXの関係にもとづく異物検出を行ってもよい。
【0045】
目標電圧設定部328は、整流電圧V
RECTの目標値DP(Desired Point)を制御する。目標電圧設定部328は、電流検出信号S11にもとづいて、整流電圧V
RECTの目標値REFを変化させてもよい。たとえば目標電圧設定部328は電流I
OUT(I
LOAD)が小さいほど、整流電圧V
RECTを増加させる。これにより電流I
OUTの変動にともなう受信電力P
RXの変動を抑制することができる。
【0046】
電力制御部330は、整流電圧V
RECTの測定値が目標値DPに近づくように値が調節される電力制御データD
PCを生成する。電力制御部330の信号処理/構成は、受電装置300がサポートする規格に応じて異なる。たとえばQi規格では、V
RECTとDPの差分を示す制御エラー信号CEが、電力制御データD
PCとなる。PMA規格では、V
RECTと目標値DPの比較関係にもとづいて電力制御データD
PCが生成される。
【0047】
変調器332は、電力制御データD
PCを変調し、受信コイル302を介してワイヤレス送電装置に送信する。
【0048】
ダンプ回路322は、第1ダンプ電流I
DUMP1に加えて、電源回路308の入力から第2ダンプ電流I
DUMP2をシンク可能に構成される。ダンプ回路322は、電源回路308の起動完了前に、第2ダンプ電流I
DUMP2をシンクし、電源回路308の起動完了後に、電圧V
OUTがある程度高くなると、第1ダンプ電流I
DUMP1をシンクする。起動完了とは、出力電圧V
OUTが所定のしきい値電圧を超えたことであってもよいし、出力電圧V
OUTがその目標レベルに安定化されたことであってもよい。
【0049】
以上が受電装置300の構成である。続いてその利点を説明する。
【0050】
整流回路304から負荷に流れる電流I
RECT(I
OUT)、受信電力測定、ダンプ電流制御、整流電圧V
RECTの目標値DPの制御など、受電装置300においてさまざまな用途に使用される重要なパラメータである。
【0051】
ここで電源回路308に流れる電流I
OUTには、負荷電流I
LOADに加えて第1ダンプ電流I
DUMP1が含まれる。したがって電流検出回路324により生成される電流検出信号S11は、ダンプ電流I
DUMP1を考慮したものとなっている。
【0052】
図1の受電装置300Rでは、ダンプ電流I
DUMPを正確に測定できないため、電源回路308の電流I
OUTが正確に測定できたとしても、整流回路304から負荷502に流れる電流I
RECT=I
OUT+I
DUMPは不正確であった。これに対して実施の形態に係る受電装置300によれば、ダンプ電流I
DUMP1を、電源回路308の電流の一部として正確に測定できるため、整流回路304から負荷502側に流れる電流I
RECTを正確に検出できる。
【0053】
また電流検出信号S11は、受電装置300の受信電力P
RXを計算するために使用される。その結果、受電装置300によれば、電流I
RECTが正確に測定できることのさらなる効果として、消費電力(受信電力)P
RXを正確に検出することができる。これを説明する。
【0054】
電力測定部326は、少なくとも電流検出信号S11にもとづいて受信電力P
RXを測定する。受信電力P
RXは、受電装置300の消費電力であり、たとえば整流回路304の出力電力P
RECTと、ダンプ回路322の消費電力P
DUMPとの合計である。なお受信電力P
RXには、コントローラ320の消費電力も含まれるが、P
RECT、P
DUMPに比べて小さいため、ここでは無視する。
【0055】
整流回路304の出力電力P
RECTは、I
IN×V
RECT(≒I
OUT×V
RECT)で近似される。ここで、第1ダンプ電流I
DUMP1にもとづくダンプ回路322の消費電力P
DUMP1は、V
OUT×I
DUMP1で与えられる。上述のように第1ダンプ電流I
DUMPは、電源回路308の電流I
OUTに含まれているため、P
RECTには、P
DUMP1が含まれていることとなる。
【0056】
つまり電流検出回路324は、受信電力P
RXを測定する際に、P
DUMP1(=V
OUT×I
DUMP1)の項を計算する必要はなく、P
RECT(=V
RECT×I
OUT)の項を考慮すれば足りる。ここで電流検出信号S11が示すI
OUTは正確であり、またV
RECTも正確に測定可能であるから、受電装置300によれば、受信電力P
RXを正確に測定できる。
【0057】
また電源回路308として、フィードバック制御をともなうレギュレータが用いられる。レギュレータは、リニアレギュレータであってもスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)であってもよい。
【0058】
一般的にレギュレータは、軽負荷あるいは無負荷状態において、発振マージンが小さくなり、位相補償をはじめとするフィードバックループの設計が難しくなり、もしくは系の安定性が低下するという問題がある。この点に関して、実施の形態に係る受電装置300によれば、第1ダンプ電流I
DUMP1が電源回路308の最小負荷となるため、電源回路308の無負荷状態を考慮する必要がないため、フィードバックループの設計を簡易化でき、あるいは系の安定性を格段に高めることができる。
【0059】
実施の形態では、電源回路308の起動完了の前後で、ダンプ電流I
DUMPの主たる経路を、電源回路308の入力側と出力側で切り替えることとした。これにより以下の効果が得られる。
電源回路308の出力電圧V
OUTが低い状態では、そもそも十分な量の第1ダンプ電流I
DUMP1をシンクできず、あるいは、出力電圧V
OUTが低い状態で第1ダンプ電流I
DUMP1をシンクすると、突入電流などの要因となり得る。そこで、電源回路の起動完了前は、電源回路の前段でダンプ電流I
DUMP2をシンクすることで、電源回路308の出力電圧V
OUTが低い状態でも、必要とされる量のダンプ電流を流すことができ、回路動作を安定化できる。
【0060】
加えて、電力測定部326が測定する受信電力P
RXには、第2ダンプ電流I
DUMP2にもとづく消費電力P
DUMP2=V
RECT×I
DUMP2の項を含めるべきであるが、第2ダンプ電流I
DUMP2の誤差が大きい場合には、この項P
DUMP2の誤差が大きくなってしまう。この点に関して、実施の形態に係る受電装置300では、電源回路308の起動完了前にのみ第2ダンプ電流I
DUMP2をシンクすることとしたため、I
DUMP2=0とすることで、項P
DUMP2を受信電力P
RXから無視することができる。
【0061】
なお後述のように第2ダンプ電流I
DUMP2を高精度な電流源により生成する場合には、P
DUMP2を正確に計算可能であるため、電源回路308の起動完了後においても、第2ダンプ電流I
DUMP2をシンクし続けてもよい。
【0062】
本発明は、
図2のブロック図および上述の説明から把握されるさまざまな態様に及ぶものであり、具体的な構成に限定されるものではないが、以下、具体的な構成例を説明する。
【0063】
図3は、ダンプ回路322の構成例を示す回路図である。
図3のダンプ回路322aは、第1電流源CS1、第2電流源CS2、電流設定部340を備える。第1電流源CS1、第2電流源CS2は可変電流源であり、それぞれが、電源回路308の出力、出力と接続され、第1ダンプ電流I
DUMP1、第2ダンプ電流I
DUMP2を生成する。電流設定部340は、電流検出回路324の電流I
OUTの検出結果および電源回路308の起動状態に応じて、第1電流源CS1、第2電流源CS2を制御する。たとえば電流設定部340は、電流I
OUTの検出値S11にもとづいて、ダンプ電流I
DUMPを設定し、電源回路308の起動状態に応じて、ダンプ電流の経路を、第1電流源CS1と第2電流源CS2で切り替えてもよい。
【0064】
電流源を用いてダンプ電流I
DUMPを生成することにより、
図1のようにダンプ抵抗を用いてダンプ電流を生成する場合に比べて、ダンプ電流I
DUMPの精度を高めることができる。またダンプ抵抗を用いた場合、その抵抗値(つまりダンプ電流)を、電流I
OUTに応じて連続的にあるいは多階調で変化させることが困難であるが、電流源を用いることで、ダンプ電流I
DUMPを連続的に、あるいは多階調で変化させることができる。
【0065】
図4は、ダンプ回路322cの構成例を示す回路図である。このダンプ回路322cは、
図3のダンプ回路322aの一形態と把握できる。
ダンプ回路322cは、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2、フィードバック抵抗R
S、エラーアンプ342、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、可変電圧源350を備える。
【0066】
第1トランジスタM1、第2トランジスタM2は、NチャンネルMOSFETである。第1トランジスタM1の第1端子(ドレイン)は、電源回路308の出力と接続され、第1ダンプ電流I
DUMP1の経路上に設けられる。フィードバック抵抗R
Sは、第1トランジスタM1の第2端子(ソース)と接地の間に設けられる。第2トランジスタM2の第1端子(ドレイン)は、電源回路308の入力と接続され、その第2端子(ソース)がフィードバック抵抗R
Sと接続される。フィードバック抵抗R
Sには、第1ダンプ電流I
DUMP1、第2ダンプ電流I
DUMP2の合計電流に比例した電圧降下(フィードバック電圧)V
Sが発生する。
【0067】
エラーアンプ342は、フィードバック抵抗R
Sの電圧降下V
Sと制御電圧V
CNTの誤差を増幅し、誤差がゼロとなるように、つまり電圧降下V
Sが制御電圧V
CNTに近づくように、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2それぞれの制御端子(ゲート)の電圧V
G1、V
G2を調節する。
【0068】
これにより、2つのダンプ電流I
DUMP1,I
DUMP2の合計が、目標レベルI
REF=V
CNT/R
Sに安定化される。第1トランジスタM1、第2トランジスタM2は、PチャンネルMOSFETであってもよいし、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0069】
第1スイッチSW1は、第1トランジスタM1の制御端子とエラーアンプ342の出力の間に設けられる。第2スイッチSW2は、第2トランジスタM2の制御端子とエラーアンプ342の出力の間に設けられる。第1スイッチSW1および第2スイッチSW2は、ダンプ電流I
DUMP1,I
DUMP2を切替えるために設けられる。すなわち第1スイッチSW1がオンのとき、第1ダンプ電流I
DUMP1が流れ、第2スイッチSW2がオンのとき、第2ダンプ電流I
DUMP2が流れる。本実施の形態では、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2は排他的にオンとなるが、変形例においてそれらは同時にオンとなってもよい。
【0070】
可変電圧源350は、電流検出信号S11(V
IS)に応じた制御電圧V
CNTを生成する。具体的には、電流検出信号S11が示す電流量が小さいほど、制御電圧V
CNTを高くし、ダンプ電流I
DUMPを増大させる。
【0071】
定電圧源352は、基準電圧V
REFを生成する。分圧回路354は、定電圧源352の出力と接地の間に直列に接続された複数n個(nは2以上の整数)の抵抗R1〜Rnを含む。複数のスイッチSWA1〜SWAnは、分圧回路354に設けられた複数のタップそれぞれと、エラーアンプ342の入力端子(+)の間に設けられる。デコーダ356は、電流検出信号S11に応じて複数のスイッチSWA1〜SWAnを制御する。定電圧源352、分圧回路354、スイッチSWA1〜SWAnおよびデコーダ356は、D/Aコンバータと把握することもできる。
【0072】
電流検出信号S11は、電源回路308に流れる電流I
OUTの電流量を示すアナログ電圧V
ISであってもよい。この場合、可変電圧源350には、複数のコンパレータCMP1〜CMPmが設けられる。mは2以上の整数である。複数のコンパレータCMP1〜CMPmによって、電流I
OUTの範囲がデジタル値に変換される。デコーダ356は、電流I
OUTの範囲に応じて、スイッチSWA1〜SWAnを制御する。
【0073】
定電圧源352は、製造工程において定電圧V
REFを調節するためのリペア抵抗R11,R12を含んでもよい。リペア抵抗R11,R12は、図示しないバンドギャップリファレンス回路由来の定電圧V
BGRを分圧し、基準電圧V
REFを生成する。
製造工程において、たとえば第1スイッチSW1およびSWA1がオンされる。リペア工程の前では、V
REFは初期値V
REF0である。このとき、V
CNT=V
REF0であり、ダンプ電流I
DUMP1は、以下の式で与えられる。
I
DUMP1=V
REF0/R
S
【0074】
フィードバック抵抗R
Sの抵抗値がばらつくと、I
BUMP1がばらつく。そこでリペア工程では、I
BUMP1を測定しながら、測定値が設計値となるように、リペア抵抗R11,R12の抵抗値をリペアする。これにより、素子バラツキが存在する場合でも、高精度にダンプ電流I
DUMP1、I
DUMP2を生成することができる。
【0075】
図5は、電流検出信号S11を生成する電流検出回路324の回路図である。
図5には、電流検出回路324とともに電源回路308が示される。
図5の電源回路308はリニアレギュレータであり、主として、出力トランジスタM21、M3、エラーアンプ370、トランジスタM22、抵抗R21,R22、チャージポンプ回路372、電流源374を含む。出力トランジスタM21およびM3は、電源回路308の入力端子P1と出力端子P2の間に設けられ、出力トランジスタM21のバックゲートはそのソースと接続され、出力トランジスタM3のバックゲートは、そのドレインと接続される。チャージポンプ回路372は、出力トランジスタM21のゲートに、電圧V
RECTより高い電圧V
Hを供給する。電流源374は、出力トランジスタM3のゲートに、定電流Icを供給する。電流源374に代えて、チャージポンプ回路372の出力とトランジスタM3のゲートの間に、抵抗を設けてもよい。抵抗R21,R22は、出力電圧V
OUTを分圧する。エラーアンプ370は、分圧された出力電圧V
OUT’と基準電圧V
REFの誤差を増幅する。出力トランジスタM3のゲートと接地の間には、トランジスタM22が設けられ、トランジスタM22のゲートには、エラーアンプ370の出力が供給される。これにより、出力電圧V
OUT’が基準電圧V
REFと一致するように、トランジスタM22のドレイン電流量I
M22が制御され、出力トランジスタM3の制御端子(ゲート)の電圧が調節される。これにより出力電圧V
OUTは、以下の電圧レベルに安定化される。
V
OUT=V
REF×(1+R21/R22)
【0076】
電流検出回路324は、カレントミラー回路360および電流/電圧(I/V)変換器362を含む。カレントミラー回路360は、電源回路308の検出対象の電流I
OUTの経路上に設けられた第3トランジスタM3と、第3トランジスタM3と制御端子(ゲート)が共通に接続された第4トランジスタM4を含む。第3トランジスタM3は、電源回路308の出力トランジスタを兼ねている。第4トランジスタM4には、第3トランジスタM3に流れる検出対象の電流I
OUTに比例した検出電流I
Sが流れる。
【0077】
カレントミラー回路360は、さらに第5トランジスタM5、エラーアンプ364を含む。エラーアンプ364は、第3トランジスタM3のドレイン電圧(すなわち出力電圧V
OUT)と、第4トランジスタM4のドレイン電圧を受け、第4トランジスタM4のドレイン電圧が、出力電圧V
OUTと一致するように、第5トランジスタM5のゲート電圧を制御する。これにより、第3トランジスタM3と第4トランジスタM4それぞれの、ゲート電圧、ドレイン電圧、ソース電圧が互いに等しくなり、検出電流I
Sと出力電流I
OUTの比の精度を高めることができる。
【0078】
I/V変換器362は、第4トランジスタM4に流れる検出電流I
Sを電圧V
ISに変換する。I/V変換器362は、検出電流I
Sの経路上に設けられた変換抵抗R31を含む。変換抵抗R31には検出電流I
Sに比例した、言い換えれば出力電流I
OUTに比例した電圧降下V
R31が発生する。バッファ(もしくはアンプ)366は、電圧降下V
R31を受け、電流検出信号S11に相当する電圧信号V
ISとして出力する。
【0079】
図5の電流検出回路324によれば、電源回路308に流れる電流I
OUTを高精度に検出できる。
【0080】
(用途)
最後に、実施の形態に係るワイヤレス受電装置300を用いた電子機器の例を説明する。
図6は、実施の形態に係る受電装置300を備える電子機器500を示す図である。
図6の電子機器500は、スマートホン、タブレットPCや携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレイヤであり、筐体501には、受信コイル302、整流回路304、平滑コンデンサ306、電源回路308等を含む受電装置300が内蔵される。
図6には、負荷502として、充電回路504、二次電池506、その他の電子回路508が示される。電子回路508は、無線(RF)部、ベースバンドプロセッサ、アプリケーションプロセッサ、オーディオプロセッサ等を含んでもよい。
【0081】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0082】
(変形例1)
図7は、変形例に係るダンプ回路322bの回路図である。ダンプ回路322bは、第1ダンプ抵抗R
DUMP1、第2ダンプ抵抗R
DUMP2、電流設定部340を備える。第1ダンプ抵抗R
DUMP1は、電源回路308の出力と接地の間に設けられ、第1ダンプ抵抗R
DUMP1の抵抗値に反比例する第1ダンプ電流I
DUMP2をシンクする。また第2ダンプ抵抗R
DUMP2は、電源回路308の入力と接地の間に設けられ、その抵抗値に反比例する第2ダンプ電流I
DUMP2をシンクする。第1ダンプ抵抗R
DUMP1、第2ダンプ抵抗R
DUMP2は、可変抵抗であり、電流設定部340は、電流I
OUTに応じて抵抗値を制御する。ダンプ抵抗R
DUMPを用いると、ダンプ電流I
DUMPの精度は低下するが、上述のようにI
DUMP1はI
OUTの一部として正確に検出可能であり、またI
DUMP2は、電源回路308の起動後にゼロとすることで測定する必要がなくなる。したがってのダンプ回路322bも有用である。
【0083】
(変形例2)
図8は、変形例に係る電流検出回路324aの回路図である。電流検出抵抗R41は、電源回路308の検出対象の電流I
OUTの経路上に設けられる。センスアンプ366は、電流検出抵抗R41の電圧降下V
R41を増幅し、電流検出信号S11を生成する。電源回路308は、リニアレギュレータであってもよいし、スイッチングレギュレータであってもよいし、二次電池の充電回路であってもよい。
あるいは電流検出抵抗R41に代えて、電源回路の出力トランジスタM21のオン抵抗を利用し、出力トランジスタM21のドレインソース間電圧V
DSにもとづいて電流検出信号S11を生成してもよい。
【0084】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。