(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乾燥食肉製品の製造方法は、食品衛生法において、水分活性が0.87未満となるまで燻煙又は乾燥を行わなければならないことが規定されている。
【0003】
従来方法により製造される乾燥食肉製品としては、ミンチ肉を充填・乾燥したドライソーセージ類、及び単一肉塊に味付けをし、乾燥したジャーキー類などが主流である。
【0004】
ジャーキー類は、単一肉塊を原料とするため、乾燥後の食感は原料である単一肉塊の肉質に大きく影響され、一般的に、硬く、繊維質である。また、さきいかのようにほぐして食そうとする場合には、肉の繊維の向きが一定ではないため、均一にほぐすことが困難である。
【0005】
また、近年の消費者の嗜好の多様化により、乾燥食肉製品に柔らかい食感を求める消費者層も存在する。
【0006】
食感を柔らかくした乾燥食肉製品の製造方法としては、例えば、水蒸気加熱によりタンパク質を変性させ、一定方向に圧延した後、乾燥を行う方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、当該方法では、水蒸気加熱を行うことにより、風味及び食感が損なわれてしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、風味及び食感を損なうことなく、従来の乾燥食肉製品よりも柔らかい食感を有し、かつ適度なほぐれ感をもつ乾燥食肉製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、平板状の塩漬肉を積層し、押圧成形した後、乾燥及び/又は燻煙を行い、その後必要に応じてカットまたはほぐすことにより、従来の乾燥食肉製品よりも柔らかい食感及び適度なほぐれ感を有する乾燥食肉製品を製造できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づき、さらなる研究を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、代表的には、以下の項に記載の乾燥食肉製品の製造方法、及び当該方法により得られる乾燥食肉製品を提供するものである。
項1.
乾燥食肉製品の製造方法であって、
平板状の塩漬肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程、及び
押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程、
を含む、方法。
項2.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉を圧延する工程、
を含む、上記項1に記載の方法。
項3.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項1に記載の方法。
項4.
前記肉を圧延する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項2に記載の方法。
項5.
前記平板状の塩漬肉が、
単一肉塊を塩漬処理する工程、及び
塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程、
を経て調製された肉である、上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6.
前記平板状の塩漬肉が、
単一肉塊を平板状に成形する工程、及び
平板状に成形した肉を塩漬処理する工程、
を経て調製された肉である、上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
項7.
前記平板状の塩漬肉が、
単一肉塊を塩漬処理する工程、
塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程、及び
平板状に成形した肉を塩漬処理する工程、
を経て調製された肉である、上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
項8.
前記単一肉塊が、畜肉及び/又は家禽肉である、上記項5〜7のいずれかに記載の方法。
項9.
上記項1〜8のいずれかに記載の方法により製造された乾燥食肉製品。
【0011】
項A−1.
乾燥食肉製品の製造方法であって、
単一肉塊を塩漬処理する工程、
塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程、
平板状に成形した肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程、及び
押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程、
を含む、方法。
項A−2.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉を圧延する工程、
を含む、上記項A−1に記載の方法。
項A−3.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項A−1に記載の方法。
項A−4.
前記肉を圧延する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項A−2に記載の方法。
項A−5.
前記単一肉塊が、畜肉及び/又は家禽肉である、上記項A−1〜A−4のいずれかに記載の方法。
項A−6.
上記項A−1〜A−5のいずれかに記載の方法により製造された乾燥食肉製品。
【0012】
項B−1.
乾燥食肉製品の製造方法であって、
単一肉塊を平板状に成形する工程、
平板状に成形した肉を塩漬処理する工程、
塩漬処理した平板状の肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程、及び
押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程、
を含む、方法。
項B−2.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉を圧延する工程、
を含む、上記項B−1に記載の方法。
項B−3.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項B−1に記載の方法。
項B−4.
前記肉を圧延する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項B−2に記載の方法。
項B−5.
前記単一肉塊が、畜肉及び/又は家禽肉である、上記項B−1〜B−4のいずれかに記載の方法。
項B−6.
上記項B−1〜B−5のいずれかに記載の方法により製造された乾燥食肉製品。
【0013】
項C−1.
乾燥食肉製品の製造方法であって、
単一肉塊を塩漬処理する工程、
塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程、
平板状に成形した肉を塩漬処理する工程、
塩漬処理した肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程、及び
押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程、
を含む、方法。
項C−2.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉を圧延する工程、
を含む、上記項C−1に記載の方法。
項C−3.
前記乾燥及び/又は燻煙する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項C−1に記載の方法。
項C−4.
前記肉を圧延する工程の後、
肉の平板面に対して略垂直に切断する工程、及び/又は肉をほぐす工程、
を含む、上記項C−2に記載の方法。
項C−5.
前記単一肉塊が、畜肉及び/又は家禽肉である、上記項C−1〜C−4のいずれかに記載の方法。
項C−6.
上記項C−1〜C−5のいずれかに記載の方法により製造された乾燥食肉製品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乾燥食肉製品の製造方法によれば、柔らかい食感及び適度なほぐれ感を有する、新しい食感・形状の乾燥食肉製品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
乾燥食肉製品の製造方法
本発明の乾燥食肉製品の製造方法では、平板状の塩漬肉を用いる。平板状の塩漬肉とは、単一肉塊に対して塩漬処理及び平板成形処理を施した肉を意味する。単一肉塊とは、食品衛生法で規定されている単一肉塊であり、具体的には食肉(内臓を除く)の単一の塊を指す。
【0017】
本発明で用いる単一肉塊としては、畜肉及び/又は家禽肉であることが好ましい。畜肉としては、例えば、豚肉、牛肉、めん羊肉、馬肉等が挙げられる。家禽肉としては、例えば、鶏肉、鴨肉、七面鳥肉、家鴨肉等が挙げられる。原料となる肉の部位(肉の場所)は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、原料となる肉は、常法に従って、適宜、保存、解凍、整形などを行ってもよい。
【0018】
単一肉塊に対して塩漬処理及び平板成形処理を施す順序については特に限定されず、例えば、単一肉塊に対して塩漬処理を施した後、平板成形処理を施してもよいし、単一肉塊に平板成形処理を施した後、塩漬処理を施してもよい。換言すると、本発明において用いる平板状の塩漬肉は、(1)単一肉塊を塩漬処理する工程、及び塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程を含む方法、又は(2)単一肉塊を平板状に成形する工程、及び平板状に成形した肉を塩漬処理する工程を含む方法、のいずれの方法によって調製された肉であってもよい。単一肉塊に平板成形処理を施した後、塩漬処理を施す、即ち、上記(2)の方法により平板状の塩漬肉を調製する場合には、肉の全面に均一に風味付けを行うことができ、さらに塩分のばらつきを抑えることができるため好ましい。
【0019】
また、単一肉塊に平板成形処理を施した後に塩漬処理を施す場合において、単一肉塊に平板成形処理を施す前に、単一肉塊に塩漬処理(一次塩漬処理)を施してもよい。即ち、単一肉塊に塩漬処理(一次塩漬処理)を施した後、平板成形処理を施し、その後さらに塩漬処理(二次塩漬処理)を施してもよい。換言すると、本発明において用いる平板状の塩漬肉は、(3)単一肉塊を塩漬処理する工程、塩漬処理した単一肉塊を平板状に成形する工程、及び平板状に成形処理した肉を塩漬処理する工程を含む方法により調製された肉であってもよい。このように、塩漬処理を二度行うことにより、一度の塩漬処理では出難い風味を付与することができる。さらに、塩分のばらつきを抑えることができる。
【0020】
塩漬処理を行う方法は特に限定されず、常法に従って行えばよい。塩漬処理としては、例えば、肉を塩漬液に浸漬する方法(湿塩漬法)、塩漬剤を粉末のまま混合して肉表面に刷り込む方法(乾塩漬法)、注射器(インジェクター)を用いて塩漬液を肉中に均一に注入する方法(注射法)などが挙げられる。中でも、塩分ばらつきを抑える観点から、湿塩漬法又は注射法により塩漬処理を行うことが好ましい。
【0021】
湿塩漬法又は注射法において用いる塩漬液は特に限定されず、通常用いられる塩漬液を用いることができる。例えば、食塩、塩化カリウム、又はこれらの組み合わせ(以下、「食塩等」と記載する)、及び発色剤、並びに必要に応じてその他の成分を溶解した水溶液を用いることができる。発色剤の種類も特に限定されず、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等が挙げられる。中でも、亜硝酸ナトリウムが好ましい。塩漬液の好ましい一例としては、食塩、亜硝酸ナトリウム、砂糖、香辛料、調味料、酸化防止剤などを溶かした水溶液を挙げることができる。また、塩漬液の食塩等の濃度は特に制限されないが、塩漬処理に供される肉の形状等によって適宜調整することが好ましい。
【0022】
例えば、単一肉塊に塩漬処理を施す場合には、肉塊の表面から食塩等が浸透することとなるためある程度濃い濃度とすることが好ましく、さらに、乾燥後の最終製品に含まれる食塩等の量に応じて適宜調整することが好ましい。一例を挙げると、食塩等の濃度を3重量%以上とすることが好ましく、3〜25重量%程度とすることがより好ましく、5〜10重量%程度とすることが特に好ましい。
【0023】
また、例えば、平板成形処理が施された肉に塩漬処理を施す場合には、平板成形処理が施された肉は単一肉塊よりも食塩等と接触する面積が大きいことから、単一肉塊に塩漬処理を施す場合よりも低濃度とすることが好ましい。一例を挙げると、食塩等の濃度を1〜10重量%程度とすることが好ましく、4〜8重量%程度とすることがより好ましい。
【0024】
さらに、単一肉塊に塩漬処理(一次塩漬処理)を施した後、平板成形処理を施し、その後さらに塩漬処理(二次塩漬処理)を施す場合には、二次塩漬処理において用いる塩漬液(二次塩漬液)の食塩等の濃度は、一次塩漬処理において用いる塩漬液(一次塩漬液)よりも低濃度とすることが好ましい。一例を挙げると、一次塩漬液の食塩等の濃度を3重量%以上とすることが好ましく、3〜25重量%程度とすることがより好ましく、5〜10重量%程度とすることが特に好ましく、二次塩漬液の食塩等の濃度を、1〜15重量%程度とすることが好ましく、4〜8重量%程度とすることがより好ましい。
【0025】
塩漬処理の期間、即ち、肉を塩漬液に浸漬させる期間(湿塩漬法により塩漬処理を行う場合)あるいは、肉に塩漬液を注入した後に塩漬させる期間(注射法により塩漬処理を行う場合)は特に制限されず、製品に付与する風味によって適宜調整することができる。
【0026】
例えば、湿塩漬法により単一肉塊に塩漬処理を施す場合には、単一肉塊を塩漬液に浸漬する期間を、通常1〜21日程度とすればよく、4〜18日程度とすることが好ましく、5〜10日程度とすることがより好ましい。なお、注射法により単一肉塊に塩漬処理を施す場合には、単一肉塊に塩漬液を注入した後に塩漬させる期間を1〜2日程度とした場合であっても均一な塩漬処理を行うことができる。
【0027】
また、例えば、平板成形処理が施された肉に塩漬処理を施す場合には、単一肉塊に塩漬処理を施す場合よりも短期間とすることができる。湿塩漬法により塩漬処理を施す場合の一例を挙げると、平板成形処理が施された肉を塩漬液に浸漬する時間を、通常30秒〜100分程度とすればよく、30秒〜60分程度とすることが好ましく、30秒〜20分程度とすることが特に好ましい。
【0028】
さらに、単一肉塊に塩漬処理(一次塩漬処理)を施した後、平板成形処理を施し、その後さらに塩漬処理(二次塩漬処理)を施す場合には、一次塩漬処理の期間を通常と同程度の期間とし、二次塩漬処理の期間を一次塩漬処理の期間よりも短時間とすることができる。湿塩漬法により塩漬処理を施す場合の一例を挙げると、一次塩漬処理の期間を通常1〜7日程度、好ましくは1〜5日程度とすればよく、二次塩漬処理の期間を、30秒〜100分程度、好ましくは30秒〜60分程度、より好ましくは30秒〜20分程度とすればよい。
【0029】
塩漬処理の温度条件は特に制限されず、例えば、低温条件下、具体的には10℃以下の条件で行うことが好ましい。さらに、上記以外のその他の塩漬処理条件は常法に従って適宜設定すればよい。
【0030】
なお、本発明の属する技術分野において、「塩漬(えんせき)」と「塩漬け(しおづけ)」とは明確に区別される。「塩漬け(しおづけ)」は、対象物を食塩に漬け込むことを指す一般的な用語であるのに対して、「塩漬(えんせき)」は、対象物を少なくとも食塩及び発色剤を含む塩漬液(ピックル)に浸漬する操作を指す用語である。「塩漬(えんせき)」は「塩漬け(しおづけ)」に包含される特定の一態様であるといえる。
【0031】
平板成形処理は、単一肉塊を所定の厚みとなるように平板状に成形することにより行う。平板状に成形する肉の厚みは、後述する積層工程において肉を積層する際に支障をきたさない程度の厚みであれば特に限定されず、例えば0.1〜20mm程度、好ましくは0.5〜10mm程度、より好ましくは1〜5mm程度とすればよい。
【0032】
所定の厚みに成形するための方法は特に限定されず、例えば、肉塊のスライスにより行うことができる。スライスは常法に従って行うことができ、例えば、スライサー、水、鋭利な刃物等の公知の機器あるいは手段を用いて行うことができる。
【0033】
本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、上記した平板状の塩漬肉を積層する工程を含む。
【0034】
積層する平板状の塩漬肉の上下面の向きについては特に限定されない。また、積層する平板状の塩漬肉の枚数は、積層した肉の全体の厚み(高さ)が後述する押圧工程において支障をきたさない程度の厚み(高さ)となる枚数であれば特に限定されず、最終製品の大きさや、後述する押圧工程において用いる機器等に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、上記した方法により積層された平板状の塩漬肉(以下、「積層肉」と記載することがある)を、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程を含む。
【0036】
積層肉を平板面に対して略垂直に押圧成形する方法は特に限定されず、プレス機、リテーナー等の公知の機器を用いて行うことができる。また、押圧成形する際の圧力、押圧時間等の諸条件は、積層肉の厚み(高さ)や形状、積層された平板状肉の肉質、最終製品の種類や形状等に応じて適宜設定することができる。
【0037】
上記のように、平板状の塩漬肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧することによって、後述する燻煙及び/又は乾燥処理工程中に積層された平板状肉同士が食塩の作用により弱く結着する。その結果、柔らかい食感を有する乾燥食肉製品を製造することができる。
【0038】
本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、上記した押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程を含む。
【0039】
乾燥及び/又は燻煙処理は、食品衛生法に規定される基準に適合するよう、常法に従って行うことができる。具体的に食品衛生法では、製品の温度を20℃以下若しくは50℃以上に保持しながら、又はこれと同等以上の微生物の増殖を阻止することが可能な条件を保持しながら水分活性が0.87未満になるまで行わなければならないことが規定されている。
【0040】
本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、上記した工程に加えて、さらに他の工程を含めることもできる。その他の工程としては、例えば、圧延処理、スライス及び/又はカット処理、ほぐし処理などを行う工程を挙げることができる。
【0041】
圧延処理は、乾燥及び/又は燻煙処理後に行われることが好ましい。圧延処理の方法は、圧延ローラーやプレス機等の公知の機器を用いて行うことができる。圧延処理の条件は、圧延に用いる機器の種類、乾燥及び/又は燻煙処理が施された積層肉の厚み(高さ)、積層肉の乾燥度合い、最終製品の種類や形状等に合せて適宜設定すればよい。圧延処理を行うことにより、肉の繊維をほぐれやすくすることができ、最終製品とするためのスライス及び/又はカット工程やほぐし工程等が行い易くなり、さらに最終製品の食感をより良好なものとすることができる。
【0042】
スライス及び/又はカット処理は、最終製品の種類や形状に応じて適宜行うことができる。なお、スライス処理とは積層肉の積層面に対して略平行あるいは略水平方向に積層肉を切断することを意味し、カット処理とは積層肉の積層面に対して略垂直に積層肉を切断することを意味する。
【0043】
スライス処理は、スライサー、水、鋭利な刃物等の公知の機器あるいは手段を用いて最終製品の種類や形状に応じて所定の厚みとなるように行えばよく、好ましくは0.1〜10mm程度、より好ましくは0.5〜4mm程度、特に好ましくは1〜3mm程度とすればよい。カット処理は、カッター、水、鋭利な刃物等の公知の機器あるいは手段を用いて最終製品の種類や形状に応じて所定の大きさとなるように行えばよい。また、スライス処理及び/又はカット処理の前に圧延処理を行うことで、スライス処理及び/又はカット処理が行い易くすることができる。
【0044】
ほぐし処理は、さきいかを裂くようにして肉を引き裂く、あるいは肉の繊維を解きほぐす処理を指す。ほぐし処理は、手作業で、あるいはさきいか裂き機などの機器を用いて行うことができる。ほぐし処理を行うことによって、乾燥食肉製品をより柔らかい食感に仕上げることができる。また、ほぐし処理を行う前に圧延処理を行うことで、肉の繊維がほぐれるため、ほぐし工程を行い易くすることができ、さらに、ほぐした肉の毛羽立ちを良くすることができる。その上、肉の繊維がつぶれるため、乾燥食肉製品をより一層柔らかい食感に仕上げることができる。
【0045】
スライス処理及び/又はカット処理、及びほぐし処理は、それぞれ単独で行ってもよいし、両方の処理を行ってもよい。また、スライス処理及び/又はカット処理と、ほぐし処理を行う順序は特に限定されない。
【0046】
さらに、本発明の乾燥食肉製品の製造方法では、上記したその他の工程以外にも、必要に応じて、検査、水分活性の測定、冷却、包装等の工程を含めることもできる。また、例えば、包装後にさらに成形工程を含めることもできる。
【0047】
また、本発明の乾燥食肉製品の製造方法では、さらに上記したその他の工程以外にも必要に応じて、乾燥食肉製品分野における各種の公知技術を付加することができる。
【0048】
乾燥食肉製品
本発明は、上記した製造方法によって得られる乾燥食肉製品を含む。乾燥食肉製品とは、食品衛生法によって定められた規格に適合する食肉製品を指す。乾燥食肉製品の種類は特に限定されず、例えば、ビーフジャーキー、ポークジャーキー等のジャーキー類が挙げられる。
【0049】
本発明の乾燥食肉製品は、従来の乾燥食肉製品と比較して、柔らかい食感及び適度なほぐれ感を有しており、乾燥食肉製品として新しい食感・形状を有するものである。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下の実施例1及び比較例1では、いずれも骨見及び検品を行った豚もも肉(3kg)の単一肉塊を用いた。
【0051】
実施例1
豚もも肉100重量部に対し、食塩5重量部、水あめ24重量部、グルタミン酸ナトリウム3重量部、亜硝酸ナトリウム0.1重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.4重量部、その他調味料・香辛料10重量部、水37.5重量部の組成となるように調整した塩漬液に豚もも肉を浸漬し、4℃の冷蔵庫内で10日間漬け込むことにより塩漬処理を行った。塩漬処理後の豚もも肉をミートスライサーで1mm厚にスライスし、スライスした肉を6枚積層し、リテーナーを用いて押圧成形した。
【0052】
次いで、押圧成形した肉をリテーナーから取り出し、冷燻用スモークハウスにて乾燥、燻煙を行い、乾燥庫にて18℃、湿度70%の条件下で3日間乾燥した。乾燥後の肉の水分活性は0.87未満であった。乾燥後の肉を積層面に対して略垂直に約3mm幅となるようにほぐした後、包装して、乾燥食肉製品(実施例1)を得た。
【0053】
比較例1
豚もも肉を、実施例1と同様の組成となるように調整した塩漬液に浸漬し、実施例1と同様の条件により塩漬処理を行った。塩漬処理後の豚もも肉を、ミートスライサーで3mm厚にスライスした。
【0054】
次いで、スライスした肉を冷燻用スモークハウスにて乾燥、燻煙を行い、乾燥庫にて18℃、湿度70%の条件下で3日間乾燥した。乾燥後の肉の水分活性は0.87未満であった。燻煙及び乾燥後の肉を包装して乾燥食肉製品(比較例1)を得た。
【0055】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた乾燥食肉製品を22名のパネラーに食してもらい、それぞれの乾燥食肉製品の柔らかさについて評価を行ってもらった。なお、柔らかさの評価は、事前に比較例1の乾燥食肉製品をコントロールとして食してもらった後、実施例1及び比較例1の乾燥食肉製品を食してもらい、コントロール製品の柔らかさを基準として、5点:柔らかい、4点:やや柔らかい、3点:変わらない、2点:ややかたい、1点:かたい、の5点評価を行ってもらい、その平均値を採用した。
【0056】
さらに、実施例1及び比較例1の乾燥食肉製品について、どちらが好ましい柔らかさであるか、及びどちらが総合的に好ましいかを判断してもらった。
なお、比較例1の製品については、実施例1の製品との見た目や大きさの違いに起因する評価結果の差異を極力排除するため、実施例1の製品と同様の形状となるように成形したものを食してもらった。
【0057】
以上の評価試験の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示されるように、実施例1の乾燥食肉製品は、比較例1の乾燥食肉製品よりも柔らかい食感を有しており、しかもその柔らかさは乾燥食肉製品として好ましい柔らかさであると感じられるものであることが確認できた。さらに、実施例1の乾燥食肉製品は、比較例1の乾燥食肉製品よりも総合的に好ましいと感じられるものであり、嗜好性が高いことが確認できた。
【0060】
以上のことから、平板状の塩漬肉を積層し、平板面に対して略垂直に押圧成形する工程、及び押圧成形した肉を乾燥及び/又は燻煙する工程を経た場合には、これらの工程を経ない場合と比較して、消費者が好ましいと感じる適度な柔らかさを有し、嗜好性の高い乾燥食肉製品を製造できることが分かった。