特許第6466416号(P6466416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6466416-高速光検出器 図000003
  • 特許6466416-高速光検出器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466416
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】高速光検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   H01L31/10 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-515730(P2016-515730)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-522578(P2016-522578A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014060432
(87)【国際公開番号】WO2014191275
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】13002838.4
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512074467
【氏名又は名称】メラノックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】マレック グルゼゴーツ チャシンスキ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラエ パンタッツィ チティーカ
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−124404(JP,A)
【文献】 特開2006−229156(JP,A)
【文献】 特開2000−223736(JP,A)
【文献】 特開2012−146806(JP,A)
【文献】 特開2011−176094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0153417(US,A1)
【文献】 米国特許第06740908(US,B1)
【文献】 特開2004−111763(JP,A)
【文献】 特開2011−258809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10 − 31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出器であって、
意図する範囲内の波長の光を吸収するように構成された第1のバンドギャップエネルギーと、第1の電界と、第1のドーピング濃度とを有し、GaAs化合物を含む第1の半導体材料を含む第1の層と、
前記第1の層の隣接側と接続し、前記第1のバンドギャップエネルギーよりも高い第2のバンドギャップエネルギーを有し、AlGaAs化合物を含む第2の半導体材料を含む第2の層と
前記第1の層を前記第2の層に接続させる第3の層であって、前記第3の層の厚みに沿って傾斜バンドギャップエネルギーを有する第3の半導体材料を備える第3の層と、
前記第2の層とは反対の前記第1の層の隣接側に配置され、第4のバンドギャップエネルギー及び第4のドーピング濃度を有する第4の半導体材料を含む第4の層とを備え、
前記第1の層、前記第2の層、及び前記第3の層におけるドーピング濃度の分布は、前記第2の層内に確立される非ゼロ電界が、同一の逆バイアス状況下で前記第1の層内に確立される電界よりも小さくなるというものであり、
前記傾斜バンドギャップエネルギーは、前記第1の層に面する前記第3の層の側における前記第1のバンドギャップエネルギーに実質的に等しい値から、前記第2の層に面する前記第3の層の側における前記第2のバンドギャップエネルギーに実質的に等しい値に増大し、
前記光検出器は、前記第1の層とは反対の前記第4の層の隣接側に配置されるコンタクト層を更に備え、前記コンタクト層は、バンドギャップエネルギー及び第4のドーピング濃度よりも大きいドーピング濃度を有する半導体材料を含み、入射光が前記コンタクト層に直接入射する光検出器。
【請求項2】
前記逆バイアス状況下で、前記第1の層の少なくとも一部が、実質的に空乏状態であり、前記第2の層における前記ドーピング濃度は、前記第1の層における前記ドーピング濃度よりも高い請求項に記載の光検出器。
【請求項3】
前記第2の半導体材料は、軽度にn型にドープされた半導体材料である請求項に記載の光検出器。
【請求項4】
前記第1のバンドギャップエネルギー及び前記第2のバンドギャップエネルギーは、前記第1の層及び前記第2の層の厚みに沿って実質的に均一である、
請求項に記載の光検出器。
【請求項5】
前記第3の半導体材料は、前記第1の層に面する前記第3の層の側において前記第1の半導体材料と実質的に等しい組成から、前記第2の層に面する前記第3の層の側において前記第2の半導体材料と実質的に等しい組成に徐々に変化する傾斜組成を有する請求項に記載の光検出器。
【請求項6】
前記第3の半導体材料は、前記第2層のドーパントと同一の型のドーパントによってドープされた領域を備える請求項に記載の光検出器。
【請求項7】
外部電気回路に結合する第1のオーミックコンタクトをさらに備え、
前記第4の層は、前記第1の層から前記第1のオーミックコンタクトへの輸送電流の抽出を容易にするための電流拡散層として機能するように構成される請求項に記載の光検出器。
【請求項8】
前記第1の層は前記第1のドーピング濃度を有し、前記第4のドーピング濃度は、前記第1のドーピング濃度よりも高い請求項に記載の光検出器。
【請求項9】
前記第4のバンドギャップエネルギーは、前記第1のバンドギャップエネルギーよりも高い請求項に記載の光検出器。
【請求項10】
外部電気回路に結合されるように構成された第2のオーミックコンタクトと、前記第2のオーミックコンタクトと前記第1の層とは反対側の前記第2の層の側面との間に配置された第5の層と、をさらに備え、
前記第5の層は、前記第2のバンドギャップエネルギーよりも高い第5のバンドギャップエネルギーを有するとともに、第5のドーピング濃度を有する請求項に記載の光検出器。
【請求項11】
第1及び第2のオーミックコンタクトの少なくとも一方はリング形状を有する請求項10に記載の光検出器。
【請求項12】
前記第2の層と前記第5の層との間に配置されるバリア層をさらに備え、
前記バリア層は、第6のバンドギャップエネルギーと第6のドーピング濃度を有する第6の半導体材料を含み、
第6のバンドギャップエネルギーは、第2のバンドギャップエネルギー及び第5のバンドギャップエネルギーよりも高い請求項10に記載の光検出器。
【請求項13】
前記第6の半導体材料は、nドープされたAlGaAs化合物を含み、
前記バリア層は、20nmの厚さを有する請求項12に記載の光検出器。
【請求項14】
前記第1の半導体材料は、真性GaAs化合物を含み、
前記第2の半導体材料は、真性または軽度にnドープされたAlGaAs化合物を含み、
前記第3の半導体材料は、アルミニウムの濃度が段階的に変化する軽度にnドープされたAlGaAs化合物を含み、
前記アルミニウムの濃度は、前記第1の層に隣接する前記第3の層の第1の側において実質的にゼロの値であり、前記第2の層に隣接する前記第3の層の第2の側へ向かう前記第3の層に亘って徐々に増加し、
前記第2の側における前記アルミニウムの濃度は、前記第2の半導体材料の前記AlGaAs化合物のアルミニウムの濃度と実質的に等しい値である請求項1に記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ベースの光検出器に関し、より具体的には、速度応答が向上した高速光検出器の構造及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検出可能な電気信号に光信号を変換することができる半導体ベースの光検出器は、光通信ネットワーク等の様々な技術分野において広く使用されている。即ち、PINフォトダイオードとも呼ばれるp‐i‐n接合に基づくフォトダイオードは、p−n接合と比較して入射光に対する迅速な応答から、高速光検出器として特に適している。従来のp‐i‐n接合は、p型の半導体層(p層)、n型の半導体層(n層)、及びp層とn層に挟まれたi層とも呼ばれる真性の(ドープされていない又は軽度にドープされた)半導体層を含む。光検出器として動作する際、p‐i‐n接合は、逆バイアス状況にある場合が多く、基本的に光が無ければ電流を伝導しない。価電子帯レベルから伝導帯レベルに電子を励起するのに十分なエネルギーを備える光子がi層によって吸収されると、一対の「自由な」電子‐正孔キャリアが生成される。正孔にはp層によって、電子にはn層によって夫々提供されるより低いエネルギーレベルによって形成される強い電位勾配の影響下で、「自由な」電子及び正孔キャリアは、夫々n層及びp層に向かってi層内を反対方向に素早く移動し、それにより、外部回路によって電子信号として検出されて入射光信号と関連付けられることができる光電流を生成する。従来は、p層及びn層の夫々の上にオーミックコンタクトが設けられ、それにより、PINフォトダイオードのアノードコンタクト及びカソードコンタクトを夫々提供する。
【0003】
従来のPIN光検出器では、光電流は、基本的に、光吸収層として機能する真性層に生じる「自由な」キャリアに起因する。光吸収と、p型及びn型の半導体領域との間での光生成キャリアの輸送には、同一の空乏半導体層が使用されるため、従来のPIN光検出器の帯域幅、即ち、入射光に対する応答速度は、電子キャリアと比べて真性層内の正孔キャリアの非常に遅い輸送時間によって制限されることが多い。
【0004】
光検出器の帯域幅を拡大する一般的な方法は、電荷キャリアの輸送時間を減少するように光吸収層の垂直長さ(即ち、高さ又は厚み)を減少することである。これは、より大きな比容量に直接つながるため、容量を特定の規定値未満に維持するために、フォトダイオードの面積及びそれによる光検出面積を減少しなければならない。同時に、フォトダイオードの量子効率又は応答性は、光吸収領域の厚みの減少と共に減少する。
【0005】
従って、PINベースの光検出器特性の向上は、一方で帯域幅、他方で光検出領域の応答性及びサイズの間のトレードオフを示唆しており、これらのパラメータの内のいずれが光検出器の目的の用途に最も重要であるかによって決定されることが多い。
【0006】
比容量を減少するためのアプローチは、対象の波長域の光を吸収しない真性のドリフト層を導入することにある。概略的に言えば、光吸収層において発生したキャリアは、電界及び夫々のキャリア移動度に比例するドリフト速度で収集層及び電極へ走行する。一般的に、キャリア速度は、それが飽和するまで電界と共に増加する。しかしながら、電子キャリアに関する飽和速度は、通常、正孔キャリアに関する飽和速度よりも低い電界において達成される。従って、大抵の従来のシステムの場合のように、印加される外部電界が制限され、正孔キャリアは、その飽和速度に到達しない場合が多い。正孔は電子よりも遅く走行するので、フォトダイオードの照射はp側から行われることが多く、正孔が走行する実効距離はより短くなることが分かるはずである。より速いキャリア(電子)のみがさらなるドリフト層を走行しなければならないように光検出器を設計することによって、ドリフト層は、輸送時間全体に対しては僅かに寄与するだけであるが、フォトダイオードの比容量を減少することには大きな効果を有する。
【0007】
PINフォトダイオードの周波数応答及び飽和出力を向上するためのアプローチが、特許US5,818,096に提案されている。このアプローチは、従来のPINフォトダイオードのように同一の空乏の真性半導体層を使用する代わりに、2つの半導体層間で光吸収とキャリア走行の機能を分離することにある。特に、p型半導体層は、光吸収層として使用され、真性の非吸収半導体層は、キャリア輸送層として使用される。この構成では、キャリア走行層へのキャリア注入の応答時間は、基本的に、p型光吸収層における電子の拡散時間によって決まる。正孔キャリアは光吸収層内の電子の移動に関して応答するだけなので、光吸収層における正孔キャリアの応答時間は極めて短いため、電子輸送層における正孔キャリアのより遅いドリフト速度は、フォトダイオード応答に直接的には寄与しない。この結果、周波数応答及び飽和出力が向上される。しかしながら、この飽和出力における増大は、フォトダイオードの応答性が低くなることを示唆している。
【0008】
公開特許出願US2007/0096240A1は、飽和出力が低くなることと引き換えに応答性を改善するフォトダイオード構造を提案している。提案のフォトダイオード構造は、一般的な真性の光吸収層に加えて、さらなる光吸収層としてpドープ層やnドープ層を含む。この場合、ドープされた(非空乏化)吸収層内の少数キャリア(即ち、ドーピングキャリアとは反対の極性のキャリア)の移動は、基本的に、夫々の拡散時間によって決まる。さらに、少数キャリアは、この時、ドープされた吸収層から真性層まで急速に拡散し、従って、従来のPINフォトダイオードと比べて合計の輸送時間には大きく影響しない。さらなるドープ吸収層は、全体的な光吸収体積を増加するので、フォトダイオード応答性も高まる。
【0009】
特許出願WO03/065416は、帯域幅を大きく減少することなくデバイスの応答性を高めるために改良したPINフォトダイオードを記載している。提案のフォトダイオードは、光吸収層として機能する第2のp型半導体層によって結合されたp型半導体層及びn型半導体層を有する。第2のp型半導体層は、キャリアのパスに沿って、アノード付近の高い値からカソードへ向かって低い値へ変化する傾斜pドーピング濃度を有する。傾斜pドーピング濃度は、吸収層内のキャリアの輸送時間を大幅に減少することなくフォトダイオードの正味吸収を増大する。かかる傾斜したドーピングは、同一の厚みの真性半導体と比べて容量を増大するが、傾斜したドーピングによって生成された疑似電界は、電子に対して、増大した容量を補償するより速い速度を与える可能性がある。
【0010】
従って、光検出器の応答性と容量の間との望ましいバランスを維持しながら向上した応答時間を提供することができる高速光検出器が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、既存のシステムの上述の欠点及び不利益を考慮してなされたものであり、その目的は、光検出器の量子効率及び比容量を所望のレベル内に維持しながら向上した応答速度を有する光検出器を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。有益な実施形態は、従属請求項の主題によって規定される。
【0013】
本発明によれば、光検出器であって、意図する範囲内の波長の光を吸収するように構成された第1のバンドギャップエネルギーを有する第1の半導体材料を含む第1の層と、前記第1の層の隣接側と接続する第2の層であって、前記第1のバンドギャップエネルギーよりも高い第2のバンドギャップエネルギーを有する第2の半導体材料を含む第2の層とを備え、前記第1の層、前記第2の層、及び前記第1と第2の層との間の領域うちの少なくとも一つにおけるドーピング濃度の分布は、前記第2の層内に確立された非ゼロ電界が、同一の逆バイアス状況下で前記第1の層内に確立された電界よりも小さくなるというものである光検出器が提供される。
【0014】
本発明のさらなる発展形態では、前記ドーピング濃度は、前記第1の層の少なくとも一部が、前記逆バイアス状況下で実質的に空乏状態であるようなものである。
【0015】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記第2の層における前記ドーピング濃度は、前記第1の層における前記ドーピング濃度よりも高い。
【0016】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記第2の層に隣接する前記第1の層の領域における前記ドーピング濃度は、前記第1の層の前記領域外の前記第1の層の大部分における前記ドーピング濃度よりも高い。
【0017】
本発明の他の発展形態では、前記第1の層に隣接する前記第2の層の領域における前記ドーピング濃度は、前記第2の層の前記領域外の前記第2の層の大部分における前記ドーピング濃度よりも高い。
【0018】
本発明のさらなる発展形態では、前記第2の半導体材料は、軽度にn型にドープされた半導体材料でもよい。
【0019】
本発明のさらなる発展形態では、前記第1のバンドギャップエネルギー及び前記第2のバンドギャップエネルギーは、前記第1の層及び前記第2の層の厚みに沿って実質的に均一である。
【0020】
本発明のさらなる発展形態では、前記光検出器は、さらに、前記第1の層を前記第2の層と接続させる第3の層であって、前記第3の層の厚みに沿って傾斜バンドギャップエネルギーを有する第3の半導体材料を備える前記第3の層を備える。
【0021】
本発明のさらなる発展形態では、前記傾斜バンドギャップエネルギーは、前記第1の層に面する前記第3の層の側における前記第1のバンドギャップエネルギーに実質的に等しい値から、前記第2の層に面する前記第3の層の側における前記第2のバンドギャップエネルギーに実質的に等しい値に増大する。
【0022】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記第3の半導体材料は、前記第1の層に面する前記第3の層の前記側において前記第1の半導体材料と実質的に等しい組成から、前記第2の層に面する前記第3の層の前記側において前記第2の半導体材料と実質的に等しい組成に徐々に変化する傾斜組成を有してもよい。それに加えて、又はその代わりに、前記第3の半導体材料は、前記第2の層のドーパントと同一の型のドーパントがドープされた領域を含んでもよい。
【0023】
本発明のさらなる発展形態では、前記第3の層は、前記第2の層及び/又は前記第1の層に含まれ、前記第3の層は、前記第2の層及び/又は前記第1の層の端側に設けられる。
【0024】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記光検出器は、さらに、外部電気回路に結合されるように構成される第1のオーミックコンタクトと、前記第1のオーミックコンタクトと前記第2の層とは反対側の前記第1の層の隣接側との間に配置される第4の層であって、第4のバンドギャップエネルギー及び第4のドーピング濃度を有する第4の半導体材料を備える第4の層とを備え、前記第4の層は、前記第1の層から前記第1のオーミックコンタクトへの輸送電流の抽出を容易にするための電流拡散層として機能するように構成される。
【0025】
前記第4のバンドギャップエネルギーは、前記第4の層が窓層であるように前記第1のバンドギャップエネルギーよりも高くてもよい。
【0026】
本発明のさらなる他の発展形態では、前記光検出器は、さらに、外部電気回路に結合されるように構成される第2のオーミックコンタクトと、前記第2のオーミックコンタクトと前記第1の層とは反対側の前記第2の層の隣接側との間に配置された第5の層であって、第5のバンドギャップエネルギー及び第5のドーピング濃度を有する第5の半導体材料を備える第5の層とを備え、前記第5の層は、前記第2の層から前記第2のオーミックコンタクトへの輸送電流の抽出を容易にするための電流拡散層として機能するように構成される。
【0027】
さらなる発展形態では、前記第1及び第2のオーミック電極の少なくとも一方はリング形状を有する。
【0028】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記光検出器は、さらに、前記第2の層と前記第5の層の間に配置された第7の層であって、第7のバンドギャップエネルギー及び第7のドーピング濃度を有する第7の半導体材料を備える第7の層を備え、前記第7のバンドギャップエネルギーは、前記第7の層を通る少数キャリアの流れが遮断されるように前記第2のバンドギャップエネルギー及び前記第5のバンドギャップエネルギーよりも高い。
【0029】
本発明のさらなる発展形態によれば、前記第1の半導体材料はGaAs化合物を備え、前記第2〜第7の半導体材料のうち少なくとも一つはAlGaAs化合物を備える。
【0030】
添付の図面は、本発明の原理を説明するために本明細書に組み込まれてその一部を形成する。図面は、本発明がどのようになされて使用されることができるかを図示及び記載した例のみに本発明を限定するものと解釈されるべきではない。図面は、本発明がどのように実施されて使用されることができるかの有利な例や代替的な例を示す目的しかなく、図示の実施形態のみに本発明を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、本実施形態のいくつかの態様は、個々に、又は様々な組み合わせにおいて、本発明に係る課題解決法を形成してもよい。以下に説明する実施形態は、従って、単独又はその任意の組み合わせのいずれかにおいて検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
さらなる特徴及び利点は、添付の図面に示す本発明の様々な実施形態の以下のより具体的な記載から明らかになり、図面では、同様の参照記号は同様の要素を指している。
図1】本発明の一実施形態に係る光検出器の断面図を示す。
図2図1に示す光検出器のバンド図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によって構成された光検出器の有利な実施形態を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0033】
後述のように、「真性半導体」という用語は、純粋な、ドープされていないという当該技術のその一般的な意味の範囲内で理解されるべきであり、非意図的にドープされた軽度にドープされた半導体も含んでもよい。「ドープされた」という用語は、後述する真性半導体のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するn型又はp型にドープされた半導体を指すために使用される。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る光検出器の断面図を示す。図示の実施形態では、光検出器100は、基板101とは反対の光検出器100の側である上側から垂直に照射される。しかしながら、入射光が底側、即ち、光検出器基板101の側を照らす他の構成が構想されてもよい。さらに、「上」及び「底」という用語は、光検出器100の相対する側を特定することだけを目的として使用される相対的な用語と解釈されるべきであり、使用時の光検出器100の物理的な向きに関して限定するものと解釈されるべきではない。
【0035】
光検出器100は、光吸収層として機能する第1の半導体層102と、入射光106の側とは反対の光吸収層102の隣接側に配置され、光吸収層102に接続する第2の半導体層104とを備える。第2の半導体層104は、後述のように、ドリフト層とも呼ばれるキャリア走行層として機能する。光検出器100は、さらに、光吸収層102とドリフト層104との間に配置された第3の半導体層105を備え、第3の半導体層105は、光吸収層102とドリフト層104の隣接側同士を接続している。第3の半導体層105は、後に説明するように、傾斜バンドギャップエネルギー層、即ち単純な傾斜層である。
【0036】
ドリフト層104に隣接する側とは反対の光吸収層102の隣接側において、フォトダイオード100は、さらに、ドープされた半導体材料からなる第4の半導体層110を備え、第4の半導体層110は、後述のように、電流拡散層として機能する。第4の半導体層110と同じ型のドープされた半導体材料、図示の実施形態ではp型半導体を含む第1のコンタクト層112が、電流拡散層110の上部に設けられている。第1のコンタクト層112は、光検出器構造の上部に堆積した第1のオーミックコンタクト114との電流拡散層110の電気的接触を改善するためのものである。第1のコンタクト層112は、キャッピング層として機能してもよい。コンタクト層112上に形成される第1のオーミックコンタクト114は、好ましくは、下方の半導体層を完全には被覆せず、垂直な入射光106がp型コンタクト層112を直接照らすことができるようにリング形状を有する。第1のオーミックコンタクト114のこの設計により、入射光106は、オーミックコンタクト114を通らずに下方の半導体層に直接伝達される。他の実施形態では、第1のオーミックコンタクト114は、閉鎖円形状等の他の設計を備えてもよい。
【0037】
光検出器100は、さらに、光吸収層102に隣接する側とは反対のドリフト層104の側に配置された第5の半導体層116を備える。第5の半導体層116も、光検出器100のこの側で電流拡散層として機能するので、第5の半導体層116は、第4の半導体層110とは反対の極性のキャリアを提供する不純物がドープされた半導体材料を備える。第5の半導体層116と基板101の間には、第5の半導体層116と同じドーピング型の半導体材料を含む第2のコンタクト層118が設けられる。図1に示すように、第2のコンタクト層118は、上方に形成された垂直に積層された半導体層の範囲を超えて基板101上に延在している。第2のコンタクト層118は、電流拡散層116と第2のコンタクト層118上に堆積した第2のオーミックコンタクト120との間の電気的結合を向上する。第1のオーミックコンタクト114と同様に、第2のオーミックコンタクト120は、好ましくは、第2のコンタクト層118上に堆積して半導体層の垂直積層構造の周りに同心的に配置された平らなリングの設計を備える。他の実施形態では、第2のオーミックコンタクト120は、その他の設計を採用してもよく、例えば、垂直積層構造の各側にて第2のコンタクト層118上に堆積した2つの平行なストライプ電極として設けられてもよい。
【0038】
第1のオーミックコンタクト114及び第2のオーミックコンタクト120は、好ましくは、アルミニウム、銀、金又は銅等の導電性材料からなる。本実施形態では、第1及び第2のオーミックコンタクトは、夫々、フォトダイオード100を外部回路(図示せず)に電気的に接続するためのアノードコンタクト及びカソードコンタクトとして機能する。
【0039】
図1を参照して説明するように、光検出器100は、基板101上に垂直に積層された層のヘテロ構造として形成される。本実施形態では、基板は、GaAs化合物からなる。しかしながら、その他の種類の基板が使用されてもよい。即ち、基板は、AlGaAs化合物等の分布ブラッグ反射器(DBR)を提供するのに適した材料のものでもよい。他の実施形態では、第2のコンタクト層118自体は、光検出器構造の基板として機能してもよい。
【0040】
光検出器100を形成する層のさらなる細部を図2を参照して説明し、図2は、図1に示す光検出器100に関するバンド図を示す。バンド図200は、図1に示す垂直方向124における光検出器層の厚みに沿う伝導帯端202と価電子帯端204の
変化を概略的に示す。各層に関するバンドギャップエネルギーは、バンド図200の垂直方向における各層の伝導帯端202と価電子帯端204との間の分離として描かれている。バンド図200における水平方向は、図1に示される光検出器100のアノード114とカソード120との間のキャリアの導電パスを表す。
【0041】
光検出器100の構造の基礎となる原理は、トリミングしたドーピングプロファイルによって大幅に低い電界において高い移動度によって特定されるドリフト層と結合した、印加された電界が高い薄い光吸収層を使用することにある。
【0042】
より高い移動度を備える電荷キャリアのみがドリフト層104を走行しなければならないように光検出器100を設計すると有利である。この原理は、GaAs及びAlxGa1-xAs(X=0…1)化合物等の、電子が正孔よりも高い移動度を有する半導体材料に対して特に有利である一実施形態によって示されている。本実施形態は、電子のみ(より高い移動度を備えるキャリア)がドリフト層104を走行しなければならないが、正孔(より低い移動度を備えるキャリア)は、電流拡散層110に到達する前に光吸収層102の厚み未満又は最大でもそれに等しい距離を走行するだけでよい。
【0043】
光検出器100では、吸収層102は、真性の半導体材料を備え、対象の範囲内の波長を有する光子の吸収によって光吸収層102内での電子‐正孔対の発生を可能にするバンドギャップエネルギー206を有する。対象範囲が850nmの波長に近いという特定の場合において、光吸収層102は、好ましくは、真性のGaAs(i‐GaAs)半導体材料からなる。他の真性半導体材料に対するドープされていないGaAsのより低いバンドギャップエネルギーは、光通信において対象の波長における光吸収に適している。光吸収層102の垂直長さ(厚み)は、光検出器100にとって望ましい特定の特性に応じてカスタマイズされてもよい。光吸収層102の厚みに適した範囲は、約0.1μm〜2μmである。そのドープされていない状態のため、光吸収層102は、基本的に、光検出器100の動作中は空乏状態にあり、必要に応じて光吸収層102内に高電界プロファイル(電位勾配)が確立されることを支援する。高電界により、光吸収層102内の「自由な」キャリアの輸送時間を減少することが可能になる。
【0044】
ドリフト層104は、ドリフト層104が基本的にキャリア輸送層として機能するようにバンドギャップエネルギー208を有する半導体材料を備える。図2に示すように、ドリフト層104のバンドギャップエネルギー208は、光吸収層102のバンドギャップエネルギー206よりも大きい。特に、バンドギャップエネルギー208は、対象の範囲内の光波長においてドリフト層104によって光の吸収を防止、又は少なくとも大幅に減少するのに十分に大きい。図示の実施形態では、ドリフト層104は、真性又は軽度にn型にドープされたAlGaAs(AlxGa1-xAs,X=0…1)化合物半導体合金を含む。好ましくは、ドリフト層104には、最大5μmの垂直厚みが使用されてもよい。使用される特定の厚みは、その他の層、特に光吸収層102の相対的な厚みによって決まり、光検出器100に対して所望の特徴に応じてカスタマイズされてもよい。
【0045】
ドリフト層104における電界は、後で説明するように光吸収層102における電界よりも低い。光吸収層102に対するドリフト層104における電界の減少は、光吸収層102に関する価電子帯端204及び伝導帯端202におけるより高い勾配からドリフト層104に関するより低い勾配への変化として図2に描かれている。この特有の勾配プロファイルは、上述の背景技術等の既知のPINフォトダイオード構造における吸収及び収集層の構造全体に現れる従来の一定の勾配とは対照的である。図2に描かれるように光吸収層102とドリフト層104との間の価電子帯端及び伝導帯端の勾配の差にも拘らず、光吸収層102及びドリフト層104のバンドギャップエネルギーは、夫々の層の厚みに沿って本質的に均一なままである。
【0046】
本実施形態では、より高い電界の光吸収層102からより低い電界のドリフト層104への移行は、傾斜層105によって行われる。傾斜層105は、その垂直厚みに沿って徐々に変化する組成を有する半導体材料を備える。かかる半導体組成の段階的変化は、バンドギャップエネルギーの対応する段階的変化によって達成される。好ましくは、傾斜層105内の半導体組成は、バンドギャップエネルギーが、光吸収層102に直接隣接する傾斜層105の側では、光吸収層102のバンドギャップエネルギー206に実質的に等しく、ドリフト層104に直接隣接する傾斜層105の側ではドリフト層104のバンドギャップエネルギー208に実質的に等しい第2のバンドギャップエネルギーに向かって傾斜層105の垂直厚みに沿って徐々に変化するように、変化する。本実施形態では、半導体材料の組成は、図2に示すドリフト層104に向かって傾斜層105に沿うバンドギャップエネルギーの段階的な増加が得られるように変化する。
【0047】
光吸収層102に対するドリフト層104での電界の減少は、光吸収層102、ドリフト層104、及びそれら2つの層の間の、図示の実施形態では傾斜層105を含む領域におけるドーパント濃度の分布によって実現される。有利な実施形態では、ドリフト層104における電界は、光吸収層102に隣接する傾斜層105の領域をn型ドーピングすることによって減少する。このドープされた領域は、傾斜層105よりも実質的に薄くてもよいが、傾斜層105と同じ厚みでもよい。ドリフト層104における電界の所望の減少を達成するのに、薄いドープ領域ほど高いドーピングレベルを要するが、厚い領域ほど低いドーピングレベルで済む。ドリフト層104における電界の特定の減少を達成する主な要因は、光吸収層102に直接隣接するドープされた領域に導入されたn型ドーパントによる合計の固定の比電荷であると認められる。本発明の他の実施形態では、ドリフト層104における電界の減少は、ドリフト層104自体の大部分のn型ドーピングによって達成される。また、この実施形態では、ドリフト層104における電界の減少は、単位面積当たりのn型ドーパントによる合計固定電荷によって制御されると認められる。その他の実施形態は、傾斜層105の一部のドーピングとドリフト層104の一部又は全体のドーピングを組み合わせてもよい。いずれにしても、ドリフト層104内で電界の所望の減少を生じるn型ドーパントの濃度は、キャリア輸送には関与するが対象領域において光を基本的に吸収しない層、即ち、傾斜層105及びドリフト層104に分布される。さらに他の実施形態は、ドリフト層104、又は、層105及び104を含む領域、及び/又は、層104に隣接する層102の領域における特定の箇所に置かれた大幅に高いドーピングレベルを備える1つ又は数か所の非常に狭い領域に沿って分布する可変のドーピングレベルを使用してもよい。上述のドーパント濃度の分布は、当該技術において周知であるため本明細書には記載していないドーピング技術を使用して達成されてもよい。
【0048】
また、一般に、電荷キャリアは、真性半導体材料においてより高い移動度を有すること、及び、この移動度は、この材料におけるドーピング濃度の上昇とともに低下することが認められる。従って、真性又は軽度にドープされたドリフト層104を採用すると有利である可能性があるが、ドリフト層104における電界の減少は、主に、キャリアの輸送時間に対する低下した移動度(ドーピングによって生じる)の影響が大きくならないように傾斜層105のほんの一部だけをドーピングすることによって達成される。
【0049】
光吸収層102が真性GaAs半導体材料を備え、ドリフト層104が真性又は軽度にnドープされたAlGaAs化合物を備える図示の実施形態では、傾斜層105は、傾斜濃度xのアルミニウムを含む軽度にnドープされたAlxGa1-xAs化合物を備える。パラメータxは、このとき、光吸収層102に直接隣接する側にてほぼゼロの値(GaAs)を採用し、ドリフト層104に直接隣接する側にて、ドリフト層104に使用されるAlxGa1-xAsのx濃度と類似の値に到達するまで傾斜層105に亘って徐々に増加する。傾斜バンドギャップエネルギーは、基本的に、少数キャリア、即ち、nドープされた半導体層の場合は正孔に対して作用する疑似電界を傾斜層105内に生成する。本実施形態では、傾斜層105は、僅かにドープされたn型半導体である。従って、生成された疑似電界は、基本的に、正孔の輸送速度を上げることによってドリフト層104から注入される正孔キャリアに作用する。この効果は、図2において、傾斜層105の価電子帯端の増大した勾配によって描かれている。また、傾斜層105は、光吸収層102とドリフト層104との間のバンドギャップエネルギーの差から生じる光吸収層102とドリフト層104の価電子帯端の間の不一致を補償する。さらに、光吸収層102に近い領域内の傾斜層105のバンドギャップエネルギーは、光吸収層102のバンドギャップエネルギーと同等であるため、入射光子は、傾斜層105の一部の上方で吸収される可能性もある。他の実施形態では、傾斜層105は、傾斜半導体化合物に加えて、又はその代わりに、傾斜したドーピング濃度を示してもよい。傾斜したドーピング濃度は、両方の種類のキャリア、即ち、正孔及び電子に作用するさらなる電界を生成し、従って、夫々の輸送時間を減少することに寄与する。従って、p‐i‐n結合に亘って変化する電界を慎重に調整することで、両種類のキャリアのより短い輸送時間を達成することができる。
【0050】
他の実施形態では、傾斜層105は、AlxGa1-xAs化合物の2つ以上の層の複層構造として実施されてもよく、各層は、先立つ層(1つ又は複数)における濃度xに対して徐々に増加する濃度xを有する。他の実施形態では、バンドギャップ傾斜効果提供傾斜層105は、光吸収層102及びドリフト層104の何れか又は両方に組み込まれる傾斜組成の領域によって置き換えられてもよい。この構成では、傾斜層105は物理的には存在しないが、光吸収層102及び/又はドリフト層104に含まれており、光吸収層102とドリフト層104は、この場合、夫々の対応する隣接側によって直接接続されている。上述の傾斜層105と類似の材料組成における傾斜は、光吸収層102(又はドリフト層104)の大部分の材料組成やドーピングからのドリフト層104(又は光吸収層102)の大部分の材料組成やドーピングへの段階的移行が達成されるように、ドリフト層104と接続する光吸収層102の端領域内、又は光吸収層102と接続するドリフト層104の端領域内で実施することができる。
【0051】
上述のように、光吸収層102とpコンタクト層112との間にはp側電流拡散層110が配置されている。p側電流拡散層110は、アノード114へ光検出器100の電流を抽出することを支援する機能を有する。即ち、アノード114がリングコンタクトである場合、p側電流拡散層110は、光検出器100の抵抗を減少することを支援する。好ましくは、p側電流拡散層110は、直接隣接する光吸収層102に光吸収を制限するように光吸収層102のバンドギャップエネルギー206よりも十分に高いバンドギャップエネルギーを有する半導体材料を含む。この意味で、p側電流拡散層110は、光検出器100の上側(即ち、図示の実施形態ではp側)に入射する光が減衰せずに通過することを可能にするため、窓層として機能する。さらに、光吸収層102と比べてp側電流拡散層110の非常に高いバンドギャップエネルギーも、光吸収層102に生じた電子キャリアがアノード114に向かって流れることを防止する。また、p側電流拡散層110は、光検出器100の光応答にノイズ成分を追加するアノード114から光吸収層102への電子の流れを遮断することにも寄与する。好ましくは、p側電流拡散層110に使用される半導体材料は、pドープされたAlGaAs化合物である。p側電流拡散層110のドーピング濃度は、好ましくは、光吸収層102のドーピング濃度よりも高く、pコンタクト層112のドーピング濃度よりも大幅に低い。好ましくは、pコンタクト層112は、pドープされたGaAs化合物等の重度にドープされたp型半導体である。
【0052】
上述のように、光検出器100は、光検出器100のn側にも電流拡散層116を備える。n側電流拡散層116は、p側電流拡散層110と類似の機能を提供するが、光検出器100のnドープ側の特性に適応させている。特に、n側電流拡散層116は、好ましくは、対象の波長における入射光の吸収に寄与せず、アノード114に向かう光生成正孔キャリアの移動を促進するように、ドリフト層104、傾斜層105及び光吸収層102のバンドギャップエネルギー208よりも高いバンドギャップエネルギーを有するnドープされた半導体材料を備える。さらに、n側電流拡散層116のバンドギャップエネルギーは、nコンタクト層118のバンドギャップエネルギーよりも大幅に高い。従って、nコンタクト層118からドリフト層104への正孔キャリアの流れも遮断され、それにより、光検出器100の応答におけるノイズ成分を減少する。好ましくは、n側電流拡散層116は、nドープされたAlGaAs化合物層として設けられる。nコンタクト層118に適した材料は、nドープされたGaAs材料である。
【0053】
電流拡散層の厚みは、光検出器構造のその他の層の厚み等の光検出器100の特性に応じてカスタマイズされ、それらの特定のドーピング濃度は、所望の電流拡散機能を提供するために当該技術において一般的に使用されている任意のものでもよい。好ましくは、p側電流拡散層110及び/又はn側電流拡散層116の厚みは、実質的に1μmから2μmとの間である。その他の実施形態では、光検出器のp側及び/又はn側における電流拡散層の存在は省略してもよい。例えば、光検出器が、基板としても機能するnコンタクト層を有する実施形態では、光検出器の底部全体が導電性であるため、光検出器のn側における電流拡散層の機能はあまり重要ではない。かかる構成では、n側電流拡散層は省略してもよい。
【0054】
カソード側からドリフト層104及び光吸収層102への正孔キャリアの流れを阻止するためのさらなる寄与が、ドリフト層104とn側電流拡散層116の間に配置された薄い半導体バリア層122によって提供されてもよい。カソード側からの正孔キャリアがドリフト層104に進入してしまった場合、正孔キャリアは、アノード114に向かってドリフト及び吸収領域内へ掃き出され、光検出器応答においてさらなるノイズ成分を生じる。かかるノイズ成分が重要ではない場合、バリア層122は、光検出器100の構造において省略してもよい。バリア層122に関するドーピング濃度及びバンドギャップエネルギーは、バリア層122自体における少数キャリア、即ち、ドーピングの極性とは反対の極性のキャリアの流れに対抗する所望のキャリア遮蔽効果を提供するように選択される。好ましくは、バリア層122のバンドギャップエネルギーは、隣接するドリフト層104のバンドギャップエネルギー及びn側電流拡散層116のバンドギャップエネルギーよりも大きい。図示の実施形態では、バリア層122は、略20nmの垂直厚みを有するnドープされたAlGaAs化合物からなる。しかしながら、その他の半導体材料及び/又はドーピング濃度は、バリア層に関する所望の遮断効果を達成するために光検出器の特定のパラメータに基づいて、当業者によって容易に決定することができる。他の実施形態では、バリア層122は、エッチング停止層としても機能してもよい。
【0055】
他の実施形態では、光検出器100は、さらに、アノード114から光吸収層102への電子キャリアの流れを遮断するように光吸収層102とp側電流拡散層110との間に配置されたpドープされた半導体のバリア層を備えていてもよい。pドープ及びnドープされたバリア層は、このとき、特定の用途に応じて光検出器のp側及びn側の両方又は一方のみに設けられてもよい。
【0056】
上述のように光検出器100のGaAs/AlGaAsベースの構造を形成するために使用されるドーピングレベル及び厚みの例示的な値が表1にまとめられている。当該技術において一般的に使用されているように、p++という記号は、重度にpドープされた材料を指し、p及びnは、夫々、適度なレベルのpドーピング及びnドーピングを指す。
【0057】
【表1】
【0058】
図1及び図2には示されていないが、光検出器100は、性能を改善するためのさらなる機能層を備えていてもよい。例えば、より低ドーピングの「セットバック」層が、真性半導体層の隣に挿入されてもよい。さらに、上述の実施形態は、GaAs及びAlGaAs材料に基づく層のヘテロ構造を有する光検出器を参照して説明したが、本発明は、選択された半導体材料が、上述のバンドギャップエネルギー及び/又はドーピング濃度の相対関係に従うバンドギャップエネルギー及び/又はドーピング濃度を有する限り、GaAa及びAlGaAsの代わりに夫々その他の化合物又は基本的な半導体材料を使用して実施してもよい。さらに、本発明は垂直に照らされる構造を参照して記載されているが、本発明の原理は、導波路構造を有する光検出器に適用してもよい。当業者には容易に認識されるように、「垂直に照らされる」及び「垂直積層構造」という用語は、光検出器の使用又は構造を垂直な向きに限定することを意図せず、水平積層構造に沿う光信号の検出及び/又は垂直積層構造を有する光検出器等、その他の向きが採用されてもよい。さらに、上述の光検出器構造の原理は、共振空洞増強(RCE)型の光検出器に埋め込むことができるので有利である。
【符号の説明】
【0059】
100 光検出器
101 基板
102 光吸収層
104 ドリフト層
106 入射光
105 傾斜バンドギャップ層(傾斜層)
110 窓、p型電流拡散層
112 キャッピング及びpコンタクト層
114 アノード
116 n側電流拡散層
118 nコンタクト層
120 カソード
122 少数キャリア(正孔)に対するバリア(及びエッチング停止として機能することができる)
124 垂直方向
200 バンドギャップ図
202 伝導帯端
204 価電子帯端
206 光吸収層のバンドギャップエネルギー
208 ドリフト層のバンドギャップエネルギー
図1
図2