(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのコントローラは、前記歩容周期の約30〜62.5%の前記範囲内で前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、引張力を約1900N未満の予め定められたレベルまで増加させた後、前記引張力を前記予め定められた閾値引張力以下まで再び減少させるように構成される、請求項2に記載の動作制御システム。
前記少なくとも1つのコントローラは、前記歩容周期の約30〜62.5%の前記範囲内で前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、引張力を約300N未満の予め定められたレベルまで増加させた後、前記引張力を前記予め定められた閾値引張力以下まで再び減少させるように構成される、請求項2に記載の動作制御システム。
前記少なくとも1つのコントローラは、遊脚相に概して対応する前記歩容周期の前記第2の部分の間に前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、前記アンカー要素取付点における引張力を実質的にゼロまで減少させるように構成される、請求項6に記載の動作制御システム。
前記少なくとも1つのコントローラは、前記歩容周期の約0〜62.5%の前記範囲内で前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、引張力を約400N未満の予め定められたレベルまで増加させた後、前記引張力を前記予め定められた閾値引張力以下まで再び減少させるように構成される、請求項6に記載の動作制御システム。
前記歩容周期の第1の部分の間の前記少なくとも1つのコントローラによる前記少なくとも1つのアクチュエータの自動的な作動は、前記少なくとも1つの作動部材の内部の引張力が、約20N〜50Nの定義済みの閾値まで増加したことが測定されることによってトリガされる、請求項1に記載の動作制御システム。
前記動作制御システムは複数のアクチュエータをさらに備え、前記複数のアクチュエータは、第1の作動部材と動作可能に関連付けられた第1のアクチュエータを含み、前記第1の作動部材は、第1の関節の第1の側の前記第1のアクチュエータに取付けられる近端と、前記第1の関節の第2の側に配置される第1のアンカー要素取付点に取付けられる遠端とを有し、前記複数のアクチュエータは、第2の作動部材と動作可能に関連付けられた第2のアクチュエータを含み、前記第2の作動部材は、第2の関節の第1の側の前記第2のアクチュエータに取付けられる近端と、前記第2の関節の第2の側に配置される第2のアンカー要素取付点に取付けられる遠端とを有し、前記動作制御システムはさらに、
前記第2の作動部材の内部の引張力を表わす信号を出力するように構成される第3のセンサを備え、
前記少なくとも1つのコントローラは、前記第1および第2のセンサから出力される前記信号を受信し、それに応答して、前記歩容周期の前記第1の部分の間に前記第1のアクチュエータを自動的に作動させ、第1の予め定められた閾値引張力よりも大きい力を前記第1の作動部材を介して前記第1のアンカー要素取付点に印加して、前記第1の関節の周りに有益なモーメントを発生するように、かつ、前記歩容周期の少なくとも前記第2の部分の間に前記第1のアクチュエータを自動的に作動させ、前記第1のアンカー要素取付点における引張力を前記第1の予め定められた閾値引張力以下のレベルまで減少させるように構成され、
前記少なくとも1つのコントローラはさらに、前記第1および第3のセンサから出力される前記信号を受信し、それに応答して、前記歩容周期の第3の部分の間に前記第2のアクチュエータを自動的に作動させ、第2の予め定められた閾値引張力よりも大きい力を前記第2の作動部材を介して前記第2のアンカー要素取付点に印加して、前記第2の関節の周りに有益なモーメントを発生するように、かつ、前記歩容周期の少なくとも第4の部分の間に前記第2のアクチュエータを自動的に作動させ、前記第2のアンカー要素取付点における引張力を前記第2の予め定められた閾値引張力以下のレベルまで減少させるように構成され、
前記歩容周期の前記第1の部分および前記歩容周期の前記第3の部分の各々は、立脚相の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の動作制御システム。
前記動作制御システムは複数のアクチュエータをさらに備え、前記複数のアクチュエータは複数の作動部材を含み、前記複数の作動部材は複数の関節にまたがるように配置されており、前記動作制御システムはさらに、
前記複数の作動部材の内部の引張力を表わす信号を出力するように構成される複数のセンサを備え、
前記少なくとも1つのコントローラは、前記複数のセンサから出力される前記信号を受信し、それに応答して、前記複数の作動部材の各々についての前記歩容周期の予め定められた部分の間に前記複数のアクチュエータのそれぞれを自動的に作動させ、予め定められた力プロファイルをそれぞれの関節を横切って印加して前記関節の周りに有益なモーメントを発生するように構成される、請求項1に記載の動作制御システム。
計算した前記歩容パーセンテージを用いて、前記コントローラと動作可能に関連付けられた非一時的な物理的記憶装置に記憶された平均歩容パーセンテージを更新する行為をさらに備える、請求項24に記載のウェアラブルロボットシステムを制御する方法。
36%の平均歩容パーセンテージにおいて前記第2のセンサの内部に現在受動的に発生している前記力の電流値または前記ステップの前記ピーク力値の少なくとも一方が、36%の平均歩容パーセンテージにおいて前記第2のセンサの内部に受動的に発生している前記力の前記先行して記憶された値の対応値または前記ステップの前記ピーク力値よりも、予め定められた閾値差よりも大きい差だけ大きいか小さいという、前記比較する行為における前記コントローラによる判断に応答して、補助位置プロファイルの初期振幅、最大振幅、または両方を補正する行為をさらに備える、請求項26に記載のウェアラブルロボットシステムを制御する方法。
供給される正のパワーの量を最大にするために、かつ吸収される負のパワーの量を最小にするために、前記ウェアラブルロボットシステムによって人間に供給されるパワーの判断に応答して、補助位置プロファイルの初期振幅、最大振幅、または両方を補正する行為をさらに備える、請求項27に記載のウェアラブルロボットシステムを制御する方法。
ユーザにとって有益な所望の補助パワープロファイルに一致するために、前記ウェアラブルロボットシステムによって人間に供給されるパワーの判断に応答して、補助位置プロファイルの初期振幅、最大振幅、または両方を補正する行為をさらに備える、請求項27に記載のウェアラブルロボットシステムを制御する方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、アクチュエータシステムと組合わせて用いられ、歩行、走行、昇り降り等の自然動作に能動的な補助を提供し得る軟性外骨格スーツシステムに向けられる。
【0029】
先行技術の剛体外骨格とは異なり、本概念に従う軟性外骨格スーツは、可撓性材料およびアクチュエータを利用して外骨格装置に関連するヒューマンファクタ課題に特に対処し、耐負荷外骨格を有さず、むしろユーザの生物学的骨格に依存して力の印加および負荷の伝達を補助する。
【0030】
軟性外骨格スーツは、剛体構成要素を有する旧来の外骨格と比べて機械インピーダンスおよび運動学的制限を大きく減少させ、ユーザの自由度を大幅に拘束または制限しない。そのようなシステムによって、肢位置(1つまたは複数)を直接制御するのではなく、(たとえば歩容周期の重要な部分の間に)制御されたエネルギのインパルスを加えることによって、移動に補助を提供し、運動(たとえば歩行/負荷支持)を大幅に拘束することなく運動の代謝コストを減少させることが可能である。
【0031】
図1は、本概念の少なくともいくつかの局面に従う軟性外骨格スーツ100の実施形態を示す。上述のように、軟性外骨格スーツ100は、1つ以上の接続要素(たとえば102〜105,107)を用いて1つ以上の関節(たとえば
図1に示されるような股関節および足関節)にモーメントを印加するように構成される。これらの接続要素は、張力が関節に補助モーメントを課すように、関節を横切って事前に張力を印加され得る。少なくともいくつかの実施形態に従うと、ユーザは軟性外骨格スーツ内の事前張力を選択的に増加または減少させ得る。このユーザ選択的な事前張力修正の特徴は、(たとえば1つ以上の接続要素の機能的長さを調節することによって)チャネルに沿って張力を調節するように構成される機械または電子機械張力印加装置によって制御される1つ以上の独立チャネル(たとえばスーツ全体ならびに/または左/右および/もしくは前/後の独立制御部)を含み得る。事前張力印加はさらに任意に、許容可能な事前張力の快適さに関してコントローラにフィードバックを提供するユーザ入力を用いてまたは用いずに、軟性外骨格スーツコントローラによって調節および/または最適化され得る。さらに他の局面では、ユーザは、(たとえばバックルにウェビングをループに通してループ状にすることによって、かつ取付用ベルクロ領域を用いることによって)1つ以上の接続要素またはアンカー要素の長さを調節することによって、1つ以上の接続要素またはアンカー要素内の張力を有利に調節し得る。
【0032】
図1は、腰ベルト110、ノード115、大腿ブレース120、および腰ベルトと大腿ブレースとを接続する接続要素102,103を含む軟性外骨格スーツ100を示す。腰ベルト110は腰を取囲み、支持部材として腸骨稜に係合する。腰ベルト110に加えて、または腰ベルト110の代わりに、1つ以上の付加的な支持要素(たとえば肩ストラップ(図示せず))を利用してもよい。腰ベルト110を腰の細い部分で体にきつく合わせることによって、自然な身体特徴が腰ベルトを所定位置に維持するのを助ける。大腿ブレース120は、接続要素102,103を股関節上で大腿に沿って案内および位置合わせするための大腿上の支持点またはノードを提供し、大腿のテーパ形状のおかげで、大腿は大腿ブレースに印加される上向き張力に抵抗する支持点として用いられ得る。腰ベルト110と大腿ブレース120との間に張力を印加すると、腰ベルト110のみを用いて達成されるよりも高い初期張力の生成が可能になる。
【0033】
一例として、接続要素102,103は、歩行時、接続要素102,103内の張力が、股関節が伸展した時に股関節の屈曲を助長するモーメントを印加するように、張力を印加され得る。プッシュオフ直前の歩容周期の部分(30〜50%)の間、股関節はパワーを吸収する。軟性外骨格スーツは、股関節伸展に抵抗することによってこの時のエネルギ吸収を助け得る。この直後、歩容周期の50〜70%で、股関節は正のパワーを提供する。軟性外骨格スーツは、股関節に相補モーメントを印加することによってこのパワー生成も助け得る。さらに、接続要素102,103は、膝関節の周りを下方に伸び、脹脛の下の脚後部で出合う脹脛接続要素107に(たとえば直接的にまたは大腿ブレース120を介して間接的に)接続され得る。
【0034】
本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107は、足(たとえば上向き張力に抵抗するアンカー点)に直接的に(たとえばユーザの履物の内部で、ソックスまたは裏地とユーザの履物の内面との間で)または間接的に(履物を介して)係合する踵アタッチメントまたアンカー要素に接続される。接続要素107は、さらに、または代替的に、履物(たとえばブーツ)の外側に位置する点に直接的にまたは間接的に(たとえば媒介アンカー要素を介して)取付けられ得る。ゆえに、本概念のいくつかの局面において、軟性外骨格スーツはユーザの足(片足または両足)で終端し、下位の(下方の)アンカー点は、ユーザの足(片足もしくは両足)またはユーザの履物に係合するアンカー部材を含む。
【0035】
ユーザの片足もしくは両足に、またはその近くに軟性外骨格スーツをアンカー固定する上記構成の各々において、接続要素はしっかり固定されて張力を印加され、軟性外骨格スーツの剛性を推進し、かつ踵に力を効果的に印加して足底屈に必要なモーメントを発生する(または足底屈を補助する、これはケース毎に異なり得る)。
【0036】
接続要素107からの力がユーザの足または履物に印加される実施形態では、力は、たとえば、踵を包囲するファブリックを介して、ユーザの足の下もしくは足にしっかり固定されるインソールインサートを介して、またはソックス状のウェビング構造を介して、踵骨(踵)に印加され得る。力は、踵自体(または履物の踵部分)に印加されて背屈を補助し得るか、または接続要素、ファブリック、もしくはウェビング等(たとえば印加に適切なワイヤ、ケーブル、ギア、ギアトレイン、レバー等)を介して踵から足の上面(または履物の上部)に再び導かれてそれに下向きの力を印加して足底屈を補助し得る。
【0037】
インソールインサートは、たとえば、踵接続要素を介して剛体または半剛体要素の後部に力を印加可能な剛体または半剛体要素を含み得る。接続要素102〜105からの張力は次に、脹脛接続要素107に、インソールインサートに取付けられたヒール接続要素に(または代替的に履物の踵もしくは後部に、または足上に配置されたソックス状構造もしくはウェビング構造の踵もしくは後部に)印加され得る。踵接続要素は、踵接続要素に印加される張力が足関節の足底屈(たとえば足のプッシュオフ動作)をもたらすように、踵の下を足裏に沿って伸び、足の上面を取囲む1つ以上の接続要素に結合し得る。
【0038】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツは、特定の生体力学活動(たとえば歩行等)用に構成、設計および最適化される。体が歩行などの正常な非補助動作を実行すると、筋組織は代謝エネルギを消費して体の骨を動かし、体重を片足から他方の足に伝達し、前方推進力のための、かつ重力に抵抗するためのエネルギを提供する。筋肉は特定の関節セットにモーメントを印加し、これによって、時間が調整された調和した態様で関節が伸展および屈曲して一歩ずつ進む。
【0039】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツは、関節にモーメントまたはトルクを印加して、当該関節に対する体の動きを補助または抑制するように構成され得る。モーメントが有益であり動作を補助するか、または有害であり動作に反対するかにかかわらず、動作は、適用される動作のタイミングおよび外骨格スーツの接続要素の構成の関数であり得る。動作は普通、関節の周りの身体部分の反復動作を含み、適切な時間に特定の方向に外部モーメントを印加すると、筋肉が及ぼす力を補って動作を補助し得る。関節が反対方向に関節接合している時に印加される同じモーメントは、筋肉が及ぼす力に反対し、動作に対する抵抗を提示し得る。
【0040】
軟性外骨格スーツの接続部材は、自然な身体構造によって関節の回転中心から自然にオフセットしている(たとえば脚の径が大きくなるほど軟性外骨格スーツが回転中心から遠くに変位する)。本概念の少なくともいくつかの局面において、この距離を、スペーサ(たとえばファブリック、フォーム要素、パッド等)などの受動的要素、またはアクチュエータなどの能動的要素を用いて増加させ、軟性外骨格スーツと着用者の体との間の距離を増加させるか、またはそのような能動的要素の場合は軟性外骨格スーツと着用者の体との間の距離を動的に増加させることができる。さらに、関節が互いに動くと、1つ以上の軟性外骨格スーツ接続部材の作用線が関節に対して変化し、その接続部材に沿って力が印加される場合はモーメントが変化し得る。さらに、ノードおよび/またはアンカー要素を印加力に応答して軟性外骨格スーツの動作時に動かして、1つ以上の軟性外骨格スーツ接続部材の作用線を変化させることもできる。たとえば、大腿ブレース120と履物接続要素130(たとえば
図2A参照)との間に伸びる接続部材107(たとえば
図1参照)は、脚が歩容周期の30〜70%の間に動くと、膝関節の回転軸「A」に対して位置が変化し得る。接続部材107の位置の相対変化によって、それらの運動時期の間に軟性外骨格スーツが膝関節にまたは膝関節を横切って印加し得るモーメントが変化する。ゆえに、歩容周期の30〜70%で接続部材107に張力が印加される場合、接続部材107は歩容周期の30〜40%で膝関節を伸ばす小さいモーメントを提供し、歩容周期の50%では膝関節にモーメントをほとんど提供せず、歩容周期の60〜70%でより大きいモーメントを提供する。
【0041】
本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107は互いにやや非対称に配置され、外側(外部)脹脛接続要素107が膝関節回転軸Aのやや後ろに配置され、内側脹脛接続要素107が外側(外部)脹脛接続要素のやや前方に、または膝関節回転軸のやや前方に配置される。この構成によって、膝関節回転中心を厳密に通る引張力を導くことが常に容易になる。動的に、歩容の初期段階では、内側脹脛接続要素107は膝関節回転中心のやや前にあり、外側脹脛接続要素107は当該中心を通るか当該中心のやや後ろにあり、歩容のより後の段階では、これによって膝関節の周りの有効モーメントアーム(およびモーメント)が減少する。
【0042】
本概念の少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100は、一端が(たとえば腰ベルト100もしくは同等の腰に位置決めされる接続部材を介して)肩および/または股関節に、他端が(たとえば履物接続要素130を介して)踵にアンカー固定された状態で、多関節を横切って伸びるように構成される。履物接続要素130は、着用履物の外側に取付けられる、ユーザの足に取付けられる、および/または着用履物の中に配置される任意の接続要素(1つまたは複数)を含み得る。軟性外骨格スーツ100構造は、この例では、腰ベルト110と大腿ブレース110との間の長さ(S1)を有する第1のコネクタ要素104を含み、大腿ブレースはそれ自体が長さ(S2)を有する。長さ(S3)を有する第2のコネクタ要素107が大腿ブレース110の底部に取付けられ、外側腓腹筋に沿って走り、履物接続要素130に接続される。第1のコネクタ要素104(S1)は、運動時の股関節角度の変化に従って変化する。大腿ブレース110の長さ(S2)は、関節をまったく横切らない体のセグメント上を大腿ブレースが伸びるため、一般に固定される。第2のコネクタ要素107の長さ(S3)は、膝関節角度と足関節角度との相対変化に基づいて変化する。全体として、2つのアンカー点(股関節および足関節)同士の間の距離は長さS1、S2、およびS3の組合せであり、軟性外骨格スーツの選択的な張力印加は望ましくは多関節の複合効果を考慮する。
【0043】
発明に従うと、その関節セットに印加されるモーメントのタイミングを理解することによって、軟性外骨格スーツは、時間が調整された態様でその関節セットのいくつかまたはすべてにモーメントを印加し、自然な筋肉運動によって生じるモーメントを補い、筋機能が低下した人々については消費する代謝エネルギを減らすか移動度を回復しつつ同じレートで体を動かすことができるように構成され得る。これらのモーメントは、受動的または能動的な態様で生じ得る。受動構成では、自然動作によって、軟性外骨格スーツの支持特徴と接続要素との間で軟性外骨格スーツ内に張力が生じ、動作周期の特定の時間に特定の関節にモーメントを生じさせることができる。能動構成では、パワードであるか否かにかかわらず1つ以上のアクチュエータを用いて軟性外骨格スーツ内に張力を生じさせることができ、これが動作周期中の特定の時間に特定の関節にモーメントを発生する。発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツは、筋組織が発生する力を補う力を体に対して能動的および受動的に発生して体が行う仕事を減らし、所与の動作の代謝コストを当該動作の非補助実行と比べて減らすことができるように構成され得る。これは、自然な体の動きを用いて張力を受動的に生成し得る軟性外骨格スーツ構成を、軟性外骨格スーツに張力を能動的に印加する1つ以上のアクチュエータと組合わせて、調和した態様で用いることによって達成され得る。
【0044】
本概念の少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツは、ユーザの筋肉がユーザの動作からエネルギを吸収する態様と同様に、ユーザの動作からエネルギを吸収するように構成される。たとえば、歩行周期中のさまざまな時間において、筋肉は、たとえば胴が重力の影響下で前のめりになると胴の動作を阻止するために、または立脚に備えて脚を減速するために、パワーを吸収する。これらおよび他の時間中にパワーを吸収するために、筋肉は偏心収縮し、力を印加しつつ印加された外力の下で伸び得る。これらの状況において(または筋肉が等尺性収縮している時にパワーが筋肉/腱によって吸収される状況において)筋肉が印加しなければならない力の量を減少させるため、および/または軟組織損傷の確率を低くするため、軟性外骨格スーツは、いかなる時でも活動筋と平行な力を印加して、そうでなければ潜在的に有害または最小限に有益であり得る体からのパワーを吸収し得る。この吸収パワーは次にエネルギ貯蔵装置(たとえばばねシステム、弾力性部材等)を介してハーベストされ、後の何らかの時点(たとえば歩容周期中の後の点)で体に戻され得る。一例として、吸収パワーはばねを圧縮することによってハーベストされ得、ばねはその後、印加圧縮力の減少に応答して膨張する。圧縮したばねはラッチまたは何らかの他のメカニズムを用いて任意に一時的に保持またはロックされて、エネルギが軟性外骨格スーツシステム内に戻される時までばねを圧縮状態に保ち得る。別の例では、吸収パワーは、それを電気エネルギに変換してエネルギをバッテリに貯蔵することによってハーベストされ得る。潜在的に、エネルギは、所与の設計包絡線に適切な油圧、空気圧、または化学エネルギ貯蔵などであるがこれらに限定されない他の手段を介して貯蔵され得る。パワー吸収からのエネルギ貯蔵は、スーツの受動および能動モードの双方で起こり得る。受動モードでは、エネルギ貯蔵は受動メカニズム(たとえばクラッチスプリング等)を用い得、能動モードでは、軟性外骨格スーツは、これらのスキーム、またはアクチュエータを直接引張って貯蔵エネルギを発生し、たとえば他の時間に軟性外骨格スーツを作動させるために用いられるのと同じ電気モータを逆駆動するスキームを付加的に用い得る。
【0045】
たとえば
図2Aに示されるように、脹脛接続要素107は、足に係合する履物接続要素130に張力を印加する。膝関節に対する脹脛接続要素107の位置に依存して、脹脛接続要素107内の張力は膝関節にモーメントを印加し得る。脹脛接続要素107を膝関節の軸の前方に位置決めすることによって、脹脛接続要素107内の張力は膝関節の伸展を助長し得、脹脛接続要素107を膝関節の軸の後ろに位置決めすることによって、脹脛接続要素107内の張力は膝関節の屈曲を助長し得る。脹脛接続要素107を膝関節の軸を通るように位置合わせすることを用いて、膝関節にモーメント(有益または有害)を生じさせることなく張力を伝達することができる。
【0046】
発明の受動構成の実施形態に従うと、脹脛接続要素107は、正常歩行時に、軟性外骨格スーツ内に生じる張力によって適切な時間に脚関節の1つ以上(たとえば股関節、膝関節および/または足関節)に有益なモーメントが印加されて自然な筋肉運動を補うように、非弾性部材(たとえばケーブル、ストラップ等)または弾性部材によって踵接続要素に接続され得る。たとえば、正常歩行歩容では、歩容周期中の約半分(50%)で脚が後方に伸展する。この結果、腰ベルト110から大腿前部の接続要素102〜105を下方に、脹脛接続要素107に沿って、膝関節の周りに、かつ脚後部を下方に踵ストラップへ伸びる張力が軟性外骨格スーツ内に生じる。張力は股関節内に有益なモーメントを生じさせ、1つ以上のアクチュエータからの能動的な力に加えてこの張力によって貯蔵されるエネルギが潜在的に放出されると、股関節伸展を補助し、その後股関節が屈曲するのを補助し、足を前進させ得る。張力はさらに、足関節内に有益なモーメントを生じさせ得、1つ以上のアクチュエータによって印加される能動的な力に加えて背屈を補助し、その後足関節の足底屈を補助することによって、足を前方向にプッシュオフさせる。
【0047】
発明の能動構成の実施形態に従うと、ユーザの動作は、適切な時間に踵接続要素を能動的に引張って足のプッシュオフエネルギを増加させる1つ以上の能動構成要素を追加することによってさらに補助され得る。この実施形態では、踵接続要素は、予め定められた時間に踵接続要素を引張って踵の周りに有益なモーメントを印加する作動ケーブルまたは他の作動部材に接続され得る。作動ケーブルまたは他の作動部材は、直接的にまたは媒介パワートレインを介して、所定の時間に特定のモーメントを生じさせる力を印加するようにコントローラによって制御されるモータまたは他のアクチュエータに接続される。一例では、脹脛接続要素107を脚後部の1つ以上の履物接続要素130に接続するためのケーブル(たとえば実質的に非圧縮性のシースを含むボーデンケーブル)が設けられる。足関節のプッシュオフを補助するために印加されるそのような力は、股関節の屈曲も補助し得る。
【0048】
1つ以上の履物接続要素130は、履物の表面から横方向におよび/または垂直に変位し得ることに留意すべきである。たとえば、履物接続要素130は、履物後部、上部、または底部に取付けられるか一体化される剛体スパー、剛体ビーム部材、または調節可能なビーム部材の上に配置され得る。このように、印加力の場所は、(たとえばモーメントアームを増加させるために)履物に対して変更され得る。
【0049】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツは、アンカー点に配置される複数のアンカー要素を提供し、アンカー点として良好に作用する体の自然な特徴に軟性外骨格スーツが係合できるように構成される。しかし、本概念の他の局面に従うと、体のそのような自然な特徴がなく、負荷を加えると普通は望ましくない結果がもたらされる場所にアンカー点または支持点を確立することが望ましい場合がある。これらの実施形態に従うと、1つ以上の接続要素または支柱を用いて、所望の場所に配置された支持点から体の異なる場所、たとえば体の自然な特徴(たとえば肩、腸骨稜等)に対応する1つ以上のアンカー点に力を伝達することができる。
【0050】
たとえば、上記の
図2Aに示されるボーデンケーブルの実施形態では、ボーデンケーブルシースは、ユーザのバックパック上の点から脚の側部に沿って下方に脹脛の後ろの場所まで伸び得る。ゆえに、ボーデンケーブル(またはNokon(登録商標)ブランドのケーブルなどの他の種類のケーブル)は、脹脛接続要素107同士が脹脛の下の足の後部で出会う点で脹脛接続要素に締結され得、ケーブルシースの近端はアクチュエータのハウジング(たとえばドライブモータおよびプーリシステムを含む肩掛バックパック)に結合されて外骨格スーツ内の張力を維持するのを助ける。同様に、本明細書中の他の所に記載されるように、他のケーブル種類または作動要素(たとえばリボン、ファブリック等)を用いて、アクチュエータ(1つまたは複数)から、力の印加が望まれる特定の場所まで(たとえば軟性外骨格スーツのファブリックまたはスーツ内のチャネルを介して)ルーティングしてもよい。
【0051】
そして、ボーデンケーブルシース144が軟性外骨格スーツに取付けられる点と中心ケーブル142が軟性外骨格スーツ100に取付けられる点との間に力が生じ得る。この結果、軟性外骨格スーツ100内の、腰ベルト110と、脚後部の足関節コネクタ要素130に接合するボーデンケーブルシース144の端における支持点との間に張力が生じ得る。この張力は、ユーザが歩くとバックパックが下肢と同様に動き、ボーデンケーブルシース144の近端と、軟性外骨格スーツの下部接続部材のための接続点113を提供するボーデンケーブルシースの遠端との間の距離が変化するという意味で、動的であり得る。さらに、股関節も動き、股関節上のアンカー点と、使用時に軟性外骨格スーツ内の張力に影響を与え得る下脚のアンカー点との間の距離が変化する。
【0052】
ゆえに、軟性外骨格スーツの有益なモーメントは、有益なモーメントを生じさせて筋作用を補い得る力を印加する受動および/または能動構成要素によって高められ得る。補助すべき自然動作、および動作の実行時に各関節が消費するパワーの生体力学を分析することによって、補足モーメントを特定して所望レベルの補助を受けることができる。
【0053】
たとえば、正常歩行時、体を前進させる過程で体が片脚から他方の脚に支持を移すと、体によってパワーが消費される。このパワーの大部分は股関節および足関節によって与えられ、足関節は歩容周期の約50%または半ばで大きい正モーメントを有する。発明のいくつかの実施形態によると、歩容周期の約35%から60%で足関節に正モーメントを印加することによって歩行補助が提供され得る。
【0054】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツ100は、1つ以上の関節(たとえば足関節)に印加される正モーメントが有益であり得る時にさらに離れているかさらに離れる支持点を特定することによって、体のさまざまな部分の自然動作を利用するように設計され得る。軟性外骨格スーツ100は、関節の周りに伸びて1つ以上のノードまたはアンカー点を用いて張力を確立して関節の軸の周りに有益なモーメントを生じさせる接続要素を有して構成され得る。たとえば
図2Aの例では、軟性外骨格スーツ100は、(腰ベルト110を介した)股関節と履物接続要素130との間に張力を印加され、歩容周期中の適切な時間に足関節に有益な足底屈モーメントを生じさせ得る。さらに、軟性外骨格スーツ内の張力は、モーメントが股関節および/または膝関節動作に有益である歩容周期内の点(1つまたは複数)の各々または双方で、股関節上に案内されて股関節屈曲を助長する有益なモーメントを印加し得、および/または膝関節上に案内されて膝関節伸展を助長する有益なモーメントを印加し得る。
【0055】
軟性外骨格スーツ100内に増加したまたは付加的な張力を生じさせて増加したおよび/または付加的な有益なモーメントを提供し得る1つ以上のアクチュエータを設けることによって、付加的な代謝エネルギが保存され得る。たとえば、
図2Aに示される軟性外骨格スーツ100では、アクチュエータケーブル142を用いて、足関節軸から数センチメートル変位している踵を引張ることによって、足関節に正モーメントを印加することができる。上述のように、本概念の一実施形態では、ケーブルは、実質的に非圧縮性のシースを含むボーデンケーブルである。別の実施形態では、シース自体が、たとえばエネルギを貯蔵および放出する弾力性シースを有することによって、またはばね要素をシースに組込むことによって、動的性質を提供するように構成される。
【0056】
上述のように、アクチュエータケーブル142の遠端は、
図2Aの例に示されるように、踵から足の下に伸びてから足の甲に巻付くアンカー要素に直接的にまたは間接的に(たとえば接続要素を介して)取付けられる。ドライブモータおよびプーリシステムが、オンボードコントローラ(たとえばコンピュータ)によって制御されるアクチュエータケーブル142の近端またはドライブモータに結合され、所望の期間中(たとえば歩容周期の35%から60%)にアクチュエータケーブルを作動させて動作補助を提供し得る。センサ(たとえばフットストライクセンサ、関節角度センサ等)を有利に用いて、アクチュエータケーブル142のケーブル作動をユーザの歩容周期と同期させる。一例として、1つ以上のコネクタ要素、ノードまたはアンカー要素内の力センサによって引張力が検知され、これらの力が(たとえばいくつかの運動周期にわたって)コントローラによって監視および評価されて歩容周期が推定され、その後、コントローラは、2、3以上の運動周期にわたって、または作動を可能にするユーザによる指示の後に、アクチュエータ(1つまたは複数)に漸進的に係合する。代替的に、コントローラは、ユーザからの、またはストラップ内の力センサによって検知された引張力からの手入力などの、他のフィードバックによってユーザの歩容を推測し(たとえばコントローラはいくつかの運動周期にわたってストラップ内の力を監視し得る)、その後、さらにいくつかの運動周期にわたって、または作動を可能にするユーザによる指示の後に、作動が漸進的にランプアップしてもよい。
【0057】
上述のように、本明細書中の軟性外骨格スーツの概念を展開させて、活動の特定の点で補助を提供することによって、歩行などのさまざまな活動の代謝コストを減少させ、関節を横切る軟組織(筋肉、腱および靭帯)に対する負荷を減少させることができる。ユーザが活動(たとえば歩行)時に消費するエネルギが減少すると、ユーザは補助がない場合よりも疲労が小さくなる。疲労は最終的にパフォーマンスの劣化(たとえば歩容の破綻)につながり、負傷のリスクを高め得る。代謝コストの減少は、疲労に関連する負傷のリスクを減少させ得る。本概念の少なくともいくつかの局面に従うと、軟性外骨格スーツシステムは、軟性外骨格スーツを着用せずに活動(たとえば歩行)を行っている時にユーザが経験するレベルよりも低くユーザの代謝を減少させることができる。軟性外骨格スーツはさらに、各関節において力のいくらかを軟性外骨格スーツに支えさせることによって、軟性外骨格スーツに対する応力も減少させることができる。
【0058】
図2Aに示される軟性外骨格スーツ100は、一例として、衣類の下または上に着用される布、テキスタイル、またはウェビング(たとえば合成および/または天然繊維、ケブラー等)を含む複数の接続要素を含む。アクチュエータユニット200は背中に(たとえば肩掛バックパック内に、肩掛フレームに取付けられて等)、腰に(たとえば腰ベルトに取付けられて等)、またはユーザが使用する装置(たとえばバイク、車椅子、カヤックまたはカヌー、歩行器等)の内部または上に着用され得る。
図2Aでは、ボーデンケーブルユニット140がアクチュエータユニット200から伸び、軟性外骨格スーツ100を履物接続要素130に接続する。アクチュエータユニット200がユーザが使用する装置の内部にまたは装置によって支えられる構成では、ボーデンケーブルシース144は(たとえば腰ベルト110上の)固定アンカー点に有利に取付けられ得、その後、シースおよびボーデンケーブル142が下降して履物接続要素130に取付けられる。上述のように、軟性外骨格スーツ100は、ユーザの体に沿った、体への、かつ体からの力の伝達を制御するための1つ以上の接続要素(たとえば102〜105,107)、ノード(たとえば113)およびアンカー点を含む。軟性外骨格スーツシステム100はさらに任意に、歩行時に足に印加される力を検知するための、またはそうでなければヒールストライクに対応する実質的に最大の力の点で作動させる(オンオフを切替える)ためのフットセンサ150または作動可能スイッチを含む。歩容の判断を補助するために使用可能なセンサは、たとえば、フットスイッチ、慣性計測装置(IMU)、加速度計、筋電図(EMG)センサ、選択場所のユーザの皮膚の歪みを検出するための歪みセンサ、スーツ内の引張力および/または剪断力を検出するための軟性外骨格スーツに内蔵されたセンサ、アクチュエータ位置を検出するためのモータまたは他のアクチュエータ内のセンサ、ケーブル内の力を検出するためのボーデンケーブルまたはボーデンケーブルシースの一部と直列のセンサ、または他のセンサを含むがこれらに限定されない。
【0059】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツ100は、ボーデンケーブルユニット140のケーブル142の遠端をシース144内に後退させる1つ以上のアクチュエータユニット200(たとえば
図2A〜
図2B参照)を含み得る。ケーブル142の遠端は履物接続要素130に接続され得、ボーデンケーブルシース144の遠端は脹脛後部で軟性外骨格スーツ100に接続され得る。ケーブル142が後退すると、ケーブル142は履物接続要素130を上向きに引張り、シース144は軟性外骨格スーツ100を脹脛後部の取付点から押下げる。そして、軟性外骨格スーツ100は、接続要素(たとえば
図1参照)を通り腰ベルト110を介してユーザの骨盤に上向きに力を伝達する。そして、ユーザの骨構造は、力を下方に足関節へ、かつ足を介して地面へ伝達し返す。
【0060】
軟性外骨格スーツ100によって発生する力は、ユーザの筋組織と平行に作用することによってユーザの筋組織を補完するように有利に構成される。これは、接続要素(たとえば
図1の102〜105)およびノード(たとえばノード1、
図1)を体に沿った所定場所に沿って伸びるように構成することによって達成される。そのように構成される場合、軟性外骨格スーツが移動に必要な残りの力を提供するため、ユーザの筋肉は歩容周期の一定部分の間、より少なく活性化され得る。この筋活動の減少を用いて、ユーザの代謝率を低下させ、時間と共に経験する疲労レベルを減少させることができる。
【0061】
発明のいくつかの実施形態に従うと、代謝減少は、筋肉がパワーを発生するのと同時に体にパワーを印加することによって、かつ筋肉がパワーを吸収する間に体からパワーを吸収することによって達成される。足関節は、歩容周期中の約40〜60%で大パルスのパワーを発生し、これは1つのヒールストライクから次のヒールストライクに及ぶ。脚が体を地面からプッシュオフする時に起こる足関節におけるこのパワー入力は、歩行周期中の任意の関節の最大パワーバーストである。発明のいくつかの実施形態に従うと、筋組織がそれらのパワースパイクを発生する動作周期中の点で最大パワースパイクを経験する関節に補助力またはモーメントが印加され、代謝減少が効果的に達成され得る。たとえば、関節パワーの評価に基づいて、発明に従うと、軟性外骨格スーツ100は、歩容周期の約40〜60%の間のこの時点の間に足関節に補助力を印加するように構成され得る。
【0062】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツ100は足関節から上方に骨盤まで伸び得、付加的にまたは代替的に、膝関節および股関節および足関節にモーメントを生じさせ得る。多関節系では、印加される力は関節の各々に有益に影響を与え、それによって、より効果的な補助を提供し得る。これらの局面に従うと、軟性外骨格スーツ100は、そのようなモーメントがこれらの関節に有益に影響を与える歩行周期中の時に膝関節および/または股関節にモーメントを生じさせることができる。1つの場所/関節で軟性外骨格スーツの張力または変位を発生する自然な動きおよび/またはアクチュエータは、したがって、1つよりも多い場所/関節に有益であり得る。
【0063】
発明のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツ100は多数の機能を提供し得る。軟性外骨格スーツ(たとえば100)は、たとえば股関節および/または足関節を通る精密制御された有益なモーメントを生じさせ得る。上述のように、モーメントは、それが自然な筋組織を補助する場合は有益であると考えられる。開示される軟性外骨格スーツのアーキテクチャおよび接続要素のトポロジは望ましくは、ユーザの筋肉が提供する力に近似する力ベクトルをできる限り最良に模倣するように構成される。
【0064】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツは剛性を最大にするように最適化される(たとえばそれを体のアンカー部分のアンカー要素にストラップでしっかり固定する)。足関節外骨格における下部直列ばね剛性について、必要なパワーは1/kとして増加する。したがって、軟性外骨格スーツをできる限り剛性として、着用者に補助力を印加する際により高いパワー効率を提供することが望ましい。さらに、高い外骨格スーツ剛性は、運動時および/または作動時にユーザの体に対する軟性外骨格スーツの変位を減少させ、ノードおよび接続要素の位置ずれのリスクを減少させて擦れを減少させる。しかし、さまざまな用途によって、最小剛性および/または(たとえば補助が不要な時は剛性を最小にして透明性を高め、補助が必要な時は剛性を最大にするために)ユーザの活動に基づいて剛性を変えることができる可変剛性(たとえばコントローラによって自動的に変えられるか手動制御される)が好まれると考えられる。
【0065】
軟性外骨格スーツ100のフィット性およびその剛性の双方は、外骨格スーツの張力および位置合わせに影響され得る。軟性外骨格スーツが、初期の設定によってにせよ、または使用時の軟性外骨格スーツ100の動きによってにせよ、不適切に位置合わせされると、生じるモーメントは最適ではなく、より重要なことに、モーメントは必要に応じて生じるのが停止するため、モーメントは気が散るか、または時間と共に有害にすらなり得る。軟性外骨格スーツの機能性または効率が悪影響を受けないように、軟性外骨格スーツ100は、ユーザが動いたり軟性外骨格スーツが作動されたとしても体上の正確な場所にあり続けることが望ましい。使用時に軟性外骨格スーツ100を適切な配置に保つことを容易にするため、軟性外骨格スーツの着用後に軟性外骨格スーツ(たとえばアクチュエータケーブル(1つまたは複数)、接続要素等)に事前に張力を印加することが有利である。軟性外骨格スーツ内の初期張力は、手動で(たとえば同時に複数の構成要素内の張力を調節するストラップ、バックル、フィッティング、ケーブル、制御部等を調節することによって)、または1つ以上のアクチュエータ(たとえばモータ駆動メカニズム)を用いて自動で調節され得る。
【0066】
本概念の少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100は、軟性外骨格スーツ100の脱ぎ着を容易にするために、かつユーザが1つ以上の接続要素を締付けるおよび/または緩めることによって軟性外骨格スーツを快適にぴったりと合わせることができるように、手動および/または自動であり得る1つ以上の調節部材を含む。たとえば、手動または自動の調節部材は、シース144の内部で、コネクタ113(これは次にアンカー部材130に取付けられる)に取付けられるケーブル142を後退させるおよび/またはケーブル142に張力を印加するように有利に利用され、これによって軟性外骨格スーツ100を引下げてアンカー部材130を引上げ、ケーブル142のすべての弛みを無くし、システム内に少量の張力を生じさせる。本概念のいくつかの実施形態に従うと、ユーザは、運動(たとえば歩行)時に外骨格スーツの存在をほとんど検出しないように張力を設定し得る。そして、システム張力のその点から軟性外骨格スーツ100に対して作動が適用され得る。
【0067】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、ボーデンケーブルなどのアクチュエータ作動部材(1つまたは複数)を用いて、作動システム200(
図2A、
図2B)の質量を、作動中の足および足関節から離して位置決めする。そのような作動部材(1つまたは複数)を用いて、作動システム200はユーザの腰に取付けられるか、またはバックパック内に運ばれ得る。少なくともいくつかの局面に従うと、ボーデンケーブルを利用する作動システム200は、ユーザの動作に悪影響を与えない経路に沿ってケーブルシースをルーティングすることができる。ボーデンケーブルのシース144が軟性外骨格スーツに取付けられ得る多くの方法がある。一例として、1つのシース用取付スキームは、軟性外骨格スーツの1つ以上の点に配置されるオス/メスコネクタと、ケーブルシースの適切な箇所に沿って配置される対応するオス/メスコネクタ(1つまたは複数)とを含む。別の構成では、ケーブルシース144は軟性外骨格スーツに固定して取付けられ(たとえば縫付、結合剤、接着剤等)、軟性外骨格スーツに形成されたチャネルを通ってルーティングされ、ベルクロ取付部材を用いて軟性外骨格スーツに取付けられるか、または1つ以上の結束部材を用いて軟性外骨格スーツに取付けられ得る。
【0068】
たとえば作動システム200がボーデンケーブルを利用する場合、小型のギア式モータを設けてプーリを駆動するか、または代替的に、
図2Aの例に示されるように、プーリを直接駆動する大型モータを用いてケーブル142を引張り、踵に補助力を印加してもよい。たとえばリニアモータおよび油圧/空気圧アクチュエータなどであるがこれらに限定されない他の駆動メカニズムも、もちろん使用可能である。利用する作動システム200の態様は、補助すべき動作、およびそのような補助動作についての具体的な重量および性能要件に一部依存する。歩行の補助に向けられたいくつかの局面に従うと、アクチュエータシステム200は、100W未満の平均出力を提供するように構成される1つまたは複数のバッテリを利用し、これは、代謝利点を保ちつつ軟性外骨格スーツ100作動システム200の重量を最小にする。たとえば、ユーザが運ぶ付加的な質量は、ユーザの代謝の対応する予測可能な増加(たとえば背中上に1キログラム追加されるごとに約0.9%の割合で)をもたらすため、ユーザが支える場合に作動システム200の重量を最小にすることは一般に有益である。
【0069】
図3は、本概念の少なくともいくつかの局面に係る軟性外骨格スーツ100の例を示す。軟性外骨格スーツ100は、示されるように、接続要素102,103によってノード1を通って接続要素104,105に接続される腰ベルト110を含み、接続要素は次に大腿ブレース120に接続される。大腿ブレース120は、脹脛ストラップ107によってT−コネクタ113に接続される。軟性外骨格スーツ100は、ユーザの自然動作に対応するように、かつ作動システム200およびケーブル142(たとえば
図2A参照)によって発生する力を自然動作の力と調和させるように調節可能にされ得る。ユーザが歩くと、作動システムによって発生してケーブルに伝達される力はユーザの踵に印加され、歩行時のユーザの筋組織の仕事が減少する。
【0070】
歩行および走行時、脚の筋肉は、人の質量中心を前進させ、重力に抵抗して直立姿勢を維持するため、歩容周期中に股関節、膝関節および足関節にモーメント(モーメント力)を発生する。これらのモーメントは、人をヒールストライクおよび体重受容から立脚を介してプッシュオフおよび遊脚に案内するためにこれらの関節の周りに筋肉によって発生するため、時間と共に大きさおよび方向が変化する。上述のように、本概念の局面に従う軟性外骨格スーツシステム100は、作動システム200およびケーブル142によって発生する力の時間を調整して足関節における自然なモーメントを補い、代謝負担を減少させて移動度を向上させることが望ましい。いくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100構造は股関節および膝関節の周りにも伸び、歩容周期中に股関節および膝関節に有益なモーメントを提供する。作動システム200がケーブル142を後退させてユーザの足に力を印加すると、シース144はさらにT−コネクタ113および軟性外骨格スーツ100に下向きの力を印加し、これによって次に歩容周期中に股関節および膝関節に有益なモーメントが印加され得る。
【0071】
いくつかの局面に従うと、軟性外骨格スーツ100のT−コネクタ113に印加される力によって、軟性外骨格スーツにおいてT−コネクタ113と腰ベルト110との間に張力が生じる。ノード1および大腿ブレース120は、張力を膝関節および股関節上に位置合わせして各関節に有益なモーメントを提供することを助ける。成人健常者にとって、平地を自己選択したスピードで歩行するパワーは、大部分が股関節および足関節で発生し、膝関節で消散する。次に、筋肉が代謝エネルギを消費してこれらのモーメントを発生する。上述のように、本明細書中に開示される軟性外骨格スーツの局面の利点の1つは、足関節にエネルギを加えてプッシュオフ時の足底屈を補助し、立脚後期に股関節のエネルギを吸収するのを補助し、立脚のさらに後の部分でエネルギを加えることによって、歩行の代謝コストを減少させることである。足関節にエネルギを加えると、プッシュオフ時に必要な大きい足関節モーメントおよびパワーを発生するのに必要な筋活動を減少させることができ、それによって必要な代謝コストを減少させることができる。歩行の代謝コストを減少させるため、本明細書中に開示される軟性外骨格スーツは自然な歩容力学を有利に可能にする。軟性外骨格スーツのいくつかの局面において、足関節に印加されるエネルギは、踵を引上げて足底伸展を推進および/または引起こすケーブルによって提供される。ケーブルシース144からの力は、軟性外骨格スーツ100の接続要素を介して上方に分散される(たとえば
図2A参照)。
【0072】
図3に見られるような軟性外骨格スーツ100アーキテクチャは、腰ベルト110を(ユーザの下腿にしっかり固定される)大腿ブレース120に接続し、大腿ブレースは履物(たとえばブーツ、靴等)接続要素130に接続される。腰ベルト110および大腿ブレース120は、ユーザの大腿の前方中間部でノード1とインタラクションする接続要素102,103によって接続される。大腿ブレース120および履物接続要素130は、接続要素107と、足関節にアクチュエータ力を印加するケーブル142とによって接続される。腰ベルトとノード1との間の接続要素102,103、およびノード1と大腿ブレース120との間の接続要素104,105は、たとえば、効率的な動作の妨げとなるシステム内のいかなる弛みも取除くために、両側を共に引張ってそれらを所望の位置でベルクロで接続することによって、または一方側でスライドもしくはバックルを通る他方側を引張ることによって、事前に張力を印加され得る。接続要素104,105における事前張力印加は、たとえば、ノード1が所定位置にしっかり固定されて大腿ブレースがユーザの大腿の周りに位置決めされ締付けられた後に行われ得る。したがって、軟性外骨格スーツ100は、双方とも円錐形状であり、ゆえに印加される事前張力に対する抵抗を提供する大腿(大腿ブレース120)と骨盤(腰ベルト110)との間で事前に張力を印加される。
【0073】
たとえば
図2A〜
図2Bおよび
図3に示される軟性外骨格スーツ100によって足関節に力が印加されると、張力はさらに膝関節および股関節を横切って軟性外骨格スーツを上方に骨盤まで再び導かれる。接続要素に(さらに)張力が印加されると、それらは股関節、膝関節および足関節の周りにモーメントを、ならびに軟性外骨格スーツ−ユーザ接触のさまざまな点においてユーザに対する垂直力を生じさせる。いくつかの局面に従うと、軟性外骨格スーツ100は、これらのモーメントおよび力がユーザの自然な歩容に悪影響を与えてユーザが付加的な代謝エネルギを消費しないように、ユーザに有利にフィットして位置合わせされる。接続要素、ノードおよびアンカー点の配置および向きは、外骨格スーツのさまざまな要素に張力がかけられると1つまたは複数の対象関節(たとえば股関節、膝関節および/または足関節)の周りに有益なモーメントを生じさせるように選択される。
【0074】
軟性外骨格スーツ100の剛性が増加するにつれ、軟性外骨格スーツは、所望の補助レベル、および軟性外骨格スーツの構成要素(たとえばノード、接続要素等)の最小変位の双方が提供される態様で、ユーザに作動力をより良く伝達可能である。上述のように、軟性外骨格スーツ100は、たとえば腰ベルト110を腸骨稜の上に配置することによって骨盤が力を支えることができるようにすることによって、1つ以上のアンカー点(たとえば骨盤、肩等)に有利に依存して外骨格スーツ剛性を高めることができ、これによって下位のおよび内側/外側の力を分散させるための解剖学的レッジが与えられる。
図1の例に示されるように、軟性外骨格スーツ100は、脚に発生した力を、双方がノード1から始まる接続要素102,103を介して骨盤の両側に伝達する。(たとえば各脚の)ノード1からの力を骨盤の両側に分散させる接続要素102,103を設けると、作動力全体が同じ側の骨盤骨上にアンカー固定されるのとは対照的に、作動からの力を骨盤の両側に分散させることができ、それぞれの腸骨稜に対するピーク点の力が減少し、使用時の軟性外骨格スーツの快適さが高まる。さらに、ノード1を反対側の股関節に接続する接続要素(たとえば
図1の103)を用いると、軟性外骨格スーツは、それが反対側の股関節に取付けられる角度のために反対側の腸骨稜に対して水平力および鉛直力を生じさせ得る。この水平力は、腰ベルト110を腸骨稜の上部に接して付勢するのを助けるため、腰ベルトが滑り落ちないようにするのを助ける。
【0075】
図7に示されるように、接続要素1(腰バンド)に対する力は体の周りをほぼ水平に進むが、接続要素3に対する力は下向きに角度が付いている。共に作用するこれら2つの接続要素からの合力ベクトルはそれら2つのベクトル同士の間にあり、体の矢状面内に観察されるようにこの区域において丸まっている骨盤に対してほぼ垂直である。体に対して垂直に引くと、大負荷を印加しつつ接続要素を所定位置に残すことができ、不快感を生じさせ得る接線方向の動作が回避される。
【0076】
図7におけるノード1の位置によって、足関節から上がってくる力をそれぞれの脚上の一点にルーティングすることができ、力はその後、骨盤の両側に再び導かれる。本概念のいくつかの局面に従うと、ノード1を腰ベルト110に接続する接続要素を調節して力の方向を腰ベルトに向けて調節することによって、ノード1は、軟性外骨格スーツ100がさまざまな関節上に発生するモーメントの制御を可能にする。
【0077】
大腿ブレース120は、膝関節の回転中心に対する脹脛接続要素107(たとえば
図1参照)の位置に対応するために脹脛接続要素にやや角度を付けることを可能にすることによって、軟性外骨格スーツ100内の張力を維持するように構成され得る。脹脛接続要素107は、アクチュエータケーブル142を介して履物接続要素130に接続され得る。履物接続要素130は、履物(たとえばブーツ、靴等)の踵の周りのハーネスとして作用し得る1つ以上の要素(たとえばストラップ(1つまたは複数)等)を含み得る。履物接続要素130はユーザの足との剛性接続を提供し、履物上に力を分散させ得る。たとえば、アクチュエータケーブル142が履物接続要素130に上向きの力を及ぼすと、当該力は接続要素または材料のシステムを介して足裏および足の前部に伝達され、上向きの力が踵後部に及ぼされ、下向きの力が前足の甲に及ぼされる。履物接続要素130は、アクチュエータケーブル142に踵の剛性取付点を提供し、足関節に効果的に力を印加する。履物接続要素130はさらに、上向きの作動力を踵後部に、さらに足の甲に伝達して足の甲に下向きの力を印加することによって足関節の両側の足底屈を補助する力を印加することによって、プッシュオフ時の足底屈モーメントを補助する。
【0078】
少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100は、所定サイズに切出されるかまたはそうでなければ形成されて互いに縫付けられる平坦な材料(たとえばウェビング、ファブリック等)で構成される。
図4は、本概念の少なくともいくつかの局面に係る軟性外骨格スーツのフラットパターンレイアウトの一例を示す。腰ベルト110は複数のセグメントに分けられて形成され得、これらを従来のベルト固定装置と同様に重ね合わせすかしっかり固定して、腰ベルトをさまざまな腰寸法の人々に対して調節することができる。一例として、
図4に示されるセグメントまたはパネルは、リップストップナイロンおよび融着芯地層の1つ以上の層で、またはリップストップナイロンの1つ以上の層およびフォームパディングの一層(たとえば厚みが1/16″から1/2″のポリウレタンまたはエチレンビニルアセテート(EVA))で構成され得る。接続要素は、たとえば、1/2″〜3″のポリエステルウェビングで構成され得る。一局面において、接続要素102,103は幅が2″のポリエステルウェビングで形成されるが、残りの接続要素の残余は幅が1″のポリエステルウェビングで形成される。いくつかの接続要素(たとえば脹脛接続要素107の遠端)は縫付けられてループを形成し、他の接続要素または構造との接続を容易にし得る。バックル(たとえばプラスチックバックル)を用いて接続要素を締結して締付けることができる。大腿ブレース120は一片または二片を含み得、少なくともいくつかの局面において、フックおよびループファスナ(たとえばベルクロ(登録商標))が片側に縫付けられた伸縮性綾織材料(たとえばポリエステル綿混紡)で構成される。
【0079】
図5は、本概念の少なくともいくつかの実施形態に係る軟性外骨格スーツの接続要素がどのように配置および構成され得るかの説明的な例を提供する。
図5では、軟性外骨格スーツの異なる接続要素は、ストラップ1(腰ベルト接続要素)、ストラップ2(同一の股関節接続要素へのノード1)、ストラップ3(反対の股関節接続要素へのノード1)、ストラップ4(大腿接続要素−外側)、ストラップ5(大腿接続要素−内側)、ストラップ6(脹脛接続要素への大腿接続要素−外側)、ストラップ7(脹脛接続要素への大腿接続要素−内側)、ストラップ8(脹脛接続要素−外側)、ストラップ9(脹脛接続要素−内側)を含む。
【0080】
図5では、腰ベルトは平らにされ、ユーザと反対方向を向く側を提示するように示されている。この図は、腰ベルトおよびそれに直接取付けられた接続要素の概観を提供する。発明のいくつかの実施形態に従うと、腰ベルトは、端において接続要素およびバックルに接合され得る上部ベルト接続要素および底部ベルト接続要素を含み、接続要素およびバックルによって、腰ベルトと体上の任意の接触点(たとえば腸骨稜)との間に配置されるフォームまたは他のパディングを用いて腰ベルトをユーザの腰の周りに締結することができる。
図5の接続要素2および3は、
図5および
図6Bに示されるように、腰ベルト110から垂れ下がり、ノード1の上部に接続する。
図5の接続要素4および5はノード1の底部から垂れ下がり、大腿ブレース200の上部に接続する。
図6A〜
図6Bでは、
図5に一部が示される軟性外骨格スーツは説明のためマネキンに着せて示されている。
【0081】
腰ベルト110は、軟性外骨格スーツが鉛直力の下で引下げられないように、または大腿ブレースを外骨格スーツの骨盤部分に取付ける接続要素の角度の結果である水平力によって腸骨稜上を滑らないようにする。ベルトはさらに、腰ベルト接続要素を締付けることによって、骨盤の周りに配置される張力によって滑り落ちることが防止される。ベルトは、ベルトの一部が寛骨の腸骨稜の上を通る骨盤の周りに張力を生じさせることによってこれを達成する。骨盤は、足関節のT−コネクタ113から軟性外骨格スーツ100の接続要素を通って上方に腰ベルト112まで伝達される力の支持部またはアンカー点として作用する。
【0082】
いくつかの実施形態に従うと、骨盤は、膝関節および肩などの他の骨のランドマークと比べて、歩容周期全体にわたって比較的小さい可動域を有する。骨盤は、歩容周期全体にわたって合計約12°回転する横断面内にその最大の動きを有する。比較して、膝関節は矢状面内に約50°動き、肩の動きは常時ユーザの姿勢に大きく依存する。したがって、本概念に従うと、骨盤の使用は、主に歩容補助に向けられる本概念に従う軟性外骨格スーツ110の実施形態にとって好ましい。骨盤の可動域および歩容周期全体にわたるさまざまな脚のセグメントの位置の周期性によって、骨盤とさまざまな脚のセグメントとの間の距離が歩容周期全体にわたって十分予測可能になり、これは、歩容周期中の特定の時間に軟性外骨格スーツ100の張力を維持可能な適切なアンカー点の選択を通知するのに役立つ。さらに、骨盤構造はレッジを規定し、これに腰ベルト110を効果的に取付けて鉛直力および水平力の双方をアンカー固定することができる。
【0083】
軟性外骨格スーツ100の剛性は、ユーザ−軟性外骨格スーツインターフェイスのコンプライアンスによって一部決定される。ユーザと軟性外骨格スーツ100との間のインターフェイスのコンプライアンスが低いほど、動作時の軟性外骨格スーツの剛性は高くなる。安定した低コンプライアンス特徴にアンカー固定することによって、軟性外骨格スーツはユーザの体により高い力を伝達することができる。さらに、骨盤の対称性は、負荷をユーザの体上に均一に分散させることを可能にする。体の両側に作動力を分散させることによって、任意の一点において軟性外骨格スーツから体に作用する垂直力を減少させることができ、褥瘡、摩擦およびラビングの形成を最小にするのを助け、それによって外骨格スーツの知覚される快適さを増大することができる。上述のように、本概念の少なくともいくつかの局面において、作動力はさらに、または代替的に、体上の1つ以上の他の場所(たとえば胴、肩等)に分散され得る。
【0084】
少なくとも一局面において、腰ベルト110は上部ベルト接続要素および底部ベルト接続要素を含み、上部ベルト接続要素は(それが腸骨稜上で静止する場所で上部ベルト接続要素上に設けられたフォームパディングを任意に用いて)寛骨の上に配置され、底部ベルト接続要素は腸骨稜の直下にあるように配置される。これら2つの接続要素は、組合わされて、安定した取付プラットフォームを提供する。
【0085】
腸骨稜にある骨盤は、軟性外骨格スーツのコンプライアンスを最小にするための好適なアンカー点を提供する。上述のように、軟性外骨格スーツは、腰ベルトがその上に静止し得る腸骨稜におけるレッジを提供する骨盤のジオメトリを活用する。これによって、鉛直力および水平力の双方をアンカー固定することができる。水平力は、骨盤の側部を囲む接続要素(たとえば下部ベルトストラップ)によっても抵抗され得る。コンプライアンスを減少させるとより剛性の軟性外骨格スーツが可能になり、これはスーツおよび着用者に効果的に力を印加するのに有用であり得る。軟性外骨格スーツが一定の剛性レベルに達すると、軟性外骨格スーツを介してユーザに伝達される力からユーザを保護するのに有用であり得る。多層ファブリックまたはフォームパディングなどのパディングを用いて、これらの力をユーザ上のより広い表面積全体に広げ、さらに、これらの力の衝撃を減少させる減衰媒体を提供することができる。しかし、このパディングはシステムのコンプライアンスを増加させ得、ゆえに、コンプライアンスおよび剛性を最適化して効率と快適さとのバランスを達成するための、制御すべき別の変数を提示する。
【0086】
少なくともいくつかの局面において、ノード1(たとえば
図1、
図5、
図6B参照)は、それぞれの脚に対する足関節作動に起因する力が集中し、その後、分割されて、ユーザの骨盤の両側に分散される接合部として構成され得る。ユーザの大腿上のノード1の位置を調節することは、力平衡および軟性外骨格スーツ100張力を維持するのに有用であり得る。力は、大腿ブレース120を軟性外骨格スーツの腰ベルト110に取付ける1つ以上のストラップを介して分散され得る。
【0087】
図1および
図6B、
図7に一例として示されるように、ノード(たとえば
図6Bのノード1)は、本概念の少なくともいくつかの局面に従って大腿の前額面の中央に配置され、
図6Aに示されるように接続要素2および接続要素3によって調節され得る。大腿上のノード1の鉛直方向の配置は、ユーザのサイズおよびノードから大腿の上部までの距離に従って調節され得、これらはユーザ毎に異なるが、股関節屈曲に干渉しないように一般に十分下方に離れている。適切な鉛直方向の配置は、ノード位置が設定された後に軟性外骨格スーツを着用しているユーザに股関節を屈曲させて、それが股関節屈曲に干渉するか否かを確かめることによって確認することができる。ノードの配置を用いて軟性外骨格スーツ100内の力経路を最適に位置合わせおよび調節することができ、これによって、本概念のいくつかの局面に従うと、力不均衡のために回転する大腿ブレース120に関連する問題を防止または減少させることができる。不適切に位置合わせされた力経路は股関節および膝関節に望ましくないモーメントを生じさせ得、不自然な動作、筋疲労および痛みを引起こし得る。ノード1(たとえば
図5、
図6B、
図7参照)を用いることによって、足関節作動に起因する力が足関節から大腿前部に制御された直線経路で伝達され、骨盤の両側にさらに分散され得る。このように1つの接合部(ノード)に入る接続要素を用いると、接続要素を外骨格スーツ上に締付ける、緩めるまたは再び位置決めすることによって、股関節および膝関節の周りの張力経路をよりコヒーレントに調節することができる。これによって、歩容周期全体にわたって軟性外骨格スーツが股関節および膝関節に発生するモーメントのより良い制御および微調節が可能になる。
【0088】
発明のいくつかの実施形態に従うと、ノード1を利用する軟性外骨格スーツの特定の構成は、よりはるかに高い外骨格スーツ剛性を達成可能な骨盤の両側に力経路をアンカー固定するため、他の方法で達成可能であるよりもはるかに高い外骨格スーツ剛性を達成するのを助ける。ノード1を使用すると、軟性外骨格スーツ100は、腰ベルトの剛性がより大きい骨盤上に力を分散させることができ、この結果、軟性外骨格スーツは変位にほとんど悩まされずにより高い力を維持することができる。ノード1を腰ベルト110に接続する接続要素は、内側、外側および鉛直方向に拘束される際にノードの位置にしっかり固定され得る。接続要素4および5(たとえば
図7参照)に張力を印加して腰ベルト110と大腿ブレース120との間の軟性外骨格スーツ内に事前張力を確立することができ、これによって、骨盤に接して下向きにかつ大腿に接して上向きに軟性外骨格スーツに予め負荷を加えることによって軟性外骨格スーツ剛性が増加する。接続要素4および5の張力印加に起因する正確な前負荷は、ユーザ毎に異なり得るユーザの快適さに従って調節可能な大腿前部を横切る心地よい張力を定性的に生じさせることによって達成され得る。
【0089】
本概念の少なくともいくつかの局面に従うと、腰ベルト110(たとえば
図1参照)は、腰ベルト内に張力が維持されている時に最適に機能する。腰ベルト110に適切に張力が印加されなければ、軟性外骨格スーツ100は作動が適用されるとたるむ。
【0090】
腰ベルト110の適切な鉛直方向の配置は、適切な軟性外骨格スーツ剛性を維持するために望ましい。本概念のいくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツ100は、ユーザに作用する力の大部分に対するアンカーとして骨盤上の腸骨稜を利用する。腰ベルト110が腸骨稜によって支持されていない場合は、軟性外骨格スーツ100は、それが体の他の特徴によって支持されない限り、初期の剛性と同じ剛性を提供できない場合がある。腰ベルト110の設定位置が低過ぎると、または位置が使用時に低くなり過ぎると、ベルトがユーザの股関節動作に干渉して不快感(たとえば股関節屈筋の痛み)を引起こし、軟性外骨格スーツの機能性を低下させ得る。
【0091】
軟性外骨格スーツの局面を評価する際、立脚初期から中期に股関節を横切って生じる張力は股関節屈筋および中臀筋の筋疲労につながり得ることが発明者らによって判明した。立脚初期から中期では、股関節が屈曲し、ゆえに、この屈曲に抵抗するモーメントを生じさせるためには、張力が股関節の回転中心の後ろからその下に、かつ大腿前部まで進むことが必要である。ゆえに、
図5または
図6Bの接続要素2が股関節の回転中心の下に進むと、そのようなモーメントを生じさせ得る。これらのモーメントを生じさせる接続要素2をもたらし得る可能性のある方法は2つある。第1は、ノード1が大腿上であまりにも低く位置決めされることである。第2は、接続要素2が腰ベルトのさらに後ろに取付けられることである。接続要素2は、ノード1(
図5または
図6B参照)が大腿中心に対して正確に位置決めされると、(たとえばベルクロ(登録商標)を介して)腰ベルトに直接取付けられ得る。ノード1が正確に配置されると、接続要素2をノード1から腰ベルトに一直線に伸ばして(すなわち接続要素が滑らかで着用者と面一であり続けることを確認して)、接続要素2が腰ベルトに対して適切な取付角度を確実に有するようにすることによって接続要素2を腰ベルト110に取付けることによって、ノード1がしっかり固定され得る。一般に、ノード1は、大腿中心に、骨盤(たとえば腸骨稜)の約10cm内側に、膝蓋骨の真上に横方向に位置決めされ得、大腿と胴との間のしわの真下に鉛直方向に位置決めされ得る。接続要素2および3の各々は、それぞれ体の同じ側および反対側で、この点から骨盤の側部(腸骨稜の側部)まで上向きに角度を付けて伸び得る。外側接続要素2は水平に対して約40〜65°の角度を付けられ得、接続要素3は水平に対して対応するより小さい角度を有し得る。
【0092】
ノード1が不正確な水平場所に配置されると、外骨格スーツの不利な回転が起こる。たとえば、ノード1(たとえば
図1、
図3、
図6B参照)が大腿中心の左または右に配置されると、軟性外骨格スーツ内の張力は脚の対称性に対して不均衡になり、脹脛接続要素107がもはや膝関節の回転中心と正確に位置合わせされないように不均衡の方向において大腿ブレース120の回転を(反復周期にわたって)引起こし、ユーザに対して不正確なモーメントを生じさせる。
【0093】
本概念の少なくともいくつかの局面において、ノード1は、大腿の屈曲点の数センチメートル下で大腿中心に直接配置される。このおおよその鉛直方向の位置は、ノードが位置決めされた後に着用者に股関節を屈曲させて、ノード1がその股関節屈曲に何らかの点で干渉するか否かを確かめることによって決定され得る。名目上、ノード1は屈曲点の近くに配置されるが、股関節屈曲に干渉するほど近くはない。ノード1は、水平方向の位置ずれによって軟性外骨格スーツが望ましくないように回転し得るため、大腿中心に水平方向に位置決めされるべきである。ノード1が大腿に対して正確に位置決めされると、ノード1はまず、ノード1から腰ベルトに接続部材2を直線に伸ばして接続部材2を腰ベルトに取付けることによってしっかり固定され、これによって接続部材2は腰ベルトに対して適切な取付角度を確実に有し、第2の接続部材3はノード1バックルを通ってループ状にされ、接続部材3をしっかり固定する際にノード中心位置が移動しないように注意しながら取付けられる。ノード1の鉛直方向の配置は、水平方向の配置ほど軟性外骨格スーツの機能にとって重要ではない。ノード1が大腿上であまりにも高く位置決めされると、ノード1はユーザの股関節屈曲に干渉し、明白になる。
【0094】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、大腿ブレース120は下腿に巻付き得る。一局面において、大腿ブレース120は互いに接合される二片、すなわち、ユーザの方向を向くフックおよびループファスナ(たとえばベルクロ(登録商標))を有し得る前片と、ユーザと反対方向を向くフックおよびループファスナ(たとえばベルクロ(登録商標))を有し得る後片とを含む。脹脛接続要素107は二層同士の間に挟まれ、フックおよびループファスナ(たとえばベルクロ(登録商標))によって所定位置にしっかり固定され得る。
【0095】
本概念の少なくともいくつかの実施形態に従うと、大腿ブレース120の底部は膝蓋骨の上部の約3〜6センチメートル(好ましくは約4〜5cm)上に配置されるが、この距離はユーザの生理機能に依存して変化し得る。好ましくは、大腿ブレース120は、脹脛接続要素107のより広い調節可能範囲を可能にするようにさらに高く位置決めされる。筋肉量が少量から中程度のやせ形から標準サイズのユーザについては、大腿ブレース120は膝蓋骨の4センチメートル上に位置決めされ得る。大腿径がより大きいユーザについては、大腿ブレース120は膝蓋骨の5または6センチメートル上に位置決めされて脹脛接続要素107の正確な位置決めを可能にし得る。ゆえに、膝上の大腿ブレース120の位置は、大腿ブレース120に取付けられる脹脛接続要素107の適切な配置を提供するように、かつ脹脛接続要素107が膝関節の可動域に干渉しないことを確実にするように選択され得る。さらに、大腿は典型的に脚を上がるにつれて径が大きくなるため、これによって脹脛接続要素が膝関節区域に接触することを回避することができ、それによって膝関節区域内の擦れを回避することができる。
【0096】
軟性外骨格スーツ100の少なくともいくつかの局面に従うと、脹脛接続要素107が大腿ブレース120を出る場所および角度は調節可能である。この調節可能性によって、ユーザは、脹脛接続要素107を膝関節の回転中心に対して適切に位置決めしつつ、ユーザの特定の生理機能および筋組織に対応するように軟性外骨格スーツを調節することができる。膝関節の回転中心に対する脹脛接続要素107の配置の調節を用いて、膝関節に正確なモーメントが確実に生成される。
【0097】
発明のいくつかの実施形態に従うと、大腿ブレース120は、軟性外骨格スーツに張力が印加されると水平負荷を平衡させることによって外骨格スーツ剛性に寄与し得る。この水平負荷は、軟性外骨格スーツの負荷経路が、足関節から骨盤へ上向きに進むにつれてやや角度を付けられていることに起因し得る。膝関節の回転中心に対する脹脛接続要素107の正確な配置に対応するため、大腿ブレース120において方向転換が起こる。脹脛接続要素107の正確な配置は、軟性外骨格スーツが作動されると張力が膝関節を横切って生じるため、望ましい。脹脛接続要素107が膝関節の回転中心に対してどこに位置決めされるかに依存して、この張力に応答して発生するモーメントはユーザを助け得るか、または邪魔し得る。軟性外骨格スーツ張力がユーザの自然な膝関節モーメントに悪影響を与えないようにするため、張力は作動時に膝関節の回転中心と一直線に、またはそのやや前にあり得る。大腿ブレース120上の脹脛接続要素107の位置、および脹脛接続要素107が大腿ブレース120を出る角度は、張力が膝関節の回転中心と一直線に、またはその前にあるように調節され得る。
【0098】
外側脹脛接続要素107内の張力がT−コネクタ113(
図3〜
図4参照)に印加されると、同じことが脚の他方側の外側脹脛接続要素107にも起こっており、内側および外側脹脛接続要素107上のこれらの力が大腿ブレース120で集中する。脹脛接続要素107の各々は、固定アタッチメント(たとえばバックル、ベルクロ(登録商標)、クラスプ等)を介して大腿ブレース120に結合される。脹脛接続要素107に作用する力の方向は、脹脛接続要素107を互いに引離すように作用し、大腿ブレース120への2つの脹脛接続要素107取付点同士の間のファブリックに張力をかける。結果的な張力プロファイルは、大腿ブレース120の底部で大腿ブレース120内の最高張力(最大ベクトル)を提供し、大腿ブレースの底部からの高さが増加すると張力が減少する(より小さいベクトル)ことが分かった。力プロファイルは、印加される力の方向、および脹脛接続要素107が大腿ブレース120に対してどのように角度を付けられるかの双方に依存するため、ユーザによっては、水平力は大腿ブレース120の上部で符号が反対になる可能性がある。
【0099】
脹脛接続要素107は大腿ブレース120に取付けられ、脹脛筋肉の大部分の下の脛の後部で互いに接合し得る。2本のストラップが脹脛筋肉の大部分の下で出会う接合部は、ボーデンケーブルシース144が軟性外骨格スーツ100に取付けられ得る点である。上述のように、本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107の長さ、角度、および大腿ブレース120への接続場所はすべて、生理機能が異なるユーザに対応するように調節可能である。いくつかの実施形態では、脹脛接続要素107の正確な配置を提供する調節要因は4つあり、これらの変数の各々についての重要な目的は、脹脛接続要素107をユーザの膝関節の回転中心に対して正確に位置決めすることである。4つの調節要因とは、(1)脹脛接続要素107が大腿ブレース120を出る場所、(2)脹脛接続要素107が大腿ブレース120を出る角度、(3)膝蓋骨の上の大腿ブレースの鉛直方向の位置、および(4)脛に対するボーデンケーブルT−アタッチメントの鉛直方向の場所である。
【0100】
上述の要因は、ユーザの大腿周囲および大腿長に対して調節可能である。本概念の少なくともいくつかの局面に従う軟性外骨格スーツの実施形態がそれらの要因の1つ以上におけるそのような変動性を可能にする場合(たとえば、特定のユーザに設計されるかフィットするスーツでは、軟性外骨格スーツはそのような後の調節可能性を提供しなくてもよい場合がある)、脹脛接続要素107の最適配置は、脹脛接続要素107に張力が印加されると、脹脛接続要素107はユーザの自然な歩容周期に悪影響を与えることになるモーメントを膝関節において生じさせないようなものである。脹脛接続要素107がユーザの自然な歩容周期に悪影響を与えることになるモーメントを膝関節において生じさせないことを確実にするための1つの方法は、張力を膝関節の回転中心に通すことによって軟性外骨格スーツが膝関節にモーメントを生じさせないことを確実にすることである。しかし、膝関節は歩容周期全体にわたって広い可動域全体で屈曲および伸展し、瞬間回転中心が絶えず変化するため、この手法は実現が困難である。この目的を達成するための別のより実際的な方法は、ユーザの自然な歩容に悪影響を与えないモーメントの生成を可能にすることである。
【0101】
正確な脹脛接続要素107の配置をさらに示すため、膝関節および足関節力学の理解が役立つ。本概念の少なくともいくつかの局面において、歩行運動を補助するように構成される軟性外骨格スーツは、歩容周期の約30%から歩容周期の62%にかけて起こる立脚終期および前遊脚期の間に作動される。立脚終期の開始時(30%歩容周期)、腓腹筋(腓筋)およびヒラメ筋(内腓筋)はそれらの収縮を徐々に増加させて、増加する足底前足屈筋モーメントに対抗し、筋および腱組織に弾性エネルギを貯蔵し、体が前のめりになると起こるヒールリフト/プッシュオフ時に反跳する。この活動は、踵が上がって枢軸点が前足に移動した時に足関節が足底屈し始めると増加する。さらにこれが起こる際に、膝関節屈曲がその最低点(40%で約5°)に達する。この屈曲減少は、体重が今や前足上に前のめりになっており、落下する体の力ベクトルが膝関節の回転中心の前に置かれて膝関節の受動的な伸展が生じると起こる。しかし、この伸展は後筋動作、すなわち、膝関節および足関節の行動によってすでに緊張している腓腹筋、ならびに膝関節を横切る膝窩筋によって抵抗される。最小屈曲角度に達する(40%歩容周期)と、その点で膝関節はヒールライズのために体ベクトルの前にすでに移動しているため、膝関節は即座に屈曲し始める。この点において、膝関節伸展に抵抗するように作用していた後筋は、今や股関節屈曲と、今や膝関節の回転中心の後ろにありしたがって膝関節屈曲を受動的に推進している体ベクトルとを推進している。立脚終期は、対側肢の初期接地(50%歩容周期)で終了する。前遊脚期の開始(50%歩容周期)と共に体重が他方の足に移動し、膝関節が自由に屈曲できるようになる結果、アキレス腱の弾性収縮力、後筋の活動および膝関節の回転中心の後部にある体ベクトルの受動的活動が起こる。しかし、股関節屈曲があまりにも迅速に起こると、大腿直筋が膝関節を減速させるため、膝関節に伸展モーメントが生じ、ゆえに前遊脚期中の伸展モーメントは常に存在するとは限らず、脚がどの程度迅速に屈曲するかに依存する。
【0102】
上記の説明から、作動期中の膝関節を横切る軟性外骨格スーツの張力について三点指摘される。第一に、歩容周期の30から40%の間にそのような張力が膝関節の回転中心の前に存在する場合、張力によって後筋(腓腹筋および膝窩筋)は屈曲の減少を低下させるためにさらに働くことになる。これは、外骨格スーツを着用している人々に「過度の張力」という感覚を引起こし、これは、脹脛接続要素107を大腿ブレース120上のより後部の位置に動かすことによって補正することができる。第二に、歩容周期の40から50%の間に張力が膝関節の前にある場合、張力は、その点で、体ベクトルが回転中心の後ろにあるために受動的にかつ後筋のために能動的に起こっている股関節屈曲に抵抗することになる。この点において、脹脛接続要素107を膝関節の回転中心の前に配置すると後筋を酷使する可能性が高いため、脹脛接続要素を膝関節の回転中心と一直線に、またはその後ろに配置することが有益であろう。第三に、歩容周期の50から62%の間に張力が膝関節の前にある場合、張力は、アキレス腱の反跳のために受動的に起こっている膝関節の屈曲動作、および後筋の直接的な筋作用に抵抗することになる。膝関節の屈曲モーメントは前遊脚期中に大腿直筋によって抵抗されることもあるが、常にそうであるとは限らず、歩容周期のこの部分から予想され得る伸展モーメントは常に起こるとは限らない。
【0103】
脹脛接続要素107は、広範なユーザ生理機能についてユーザの自然な歩行周期、または他の運動周期を妨害しないモーメントを生じさせるように有利に張力を印加されることができる。適切な軟性外骨格スーツ接続要素の位置決めを決定する(たとえば、体重、パワー、代謝効果、快適さ、および異なる生理機能の変動性の最適なバランスを達成するために)ための第1の試練は、単に人毎に異なる大きな寸法上の分散であった。第2の試練は、作動期の終わりに近いプッシュオフ(50%歩容周期)のあたりで膝関節が伸展から屈曲に変わるレートであった。ストラップが膝関節の回転中心の後ろに移るのが早すぎると、ユーザの自然な歩容を妨害する望ましくない屈曲モーメントが生じる。ゆえに、本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107は、不利なモーメントを回避するために膝関節の回転中心と一直線にまたはその後ろに位置決めされる。
【0104】
いくつかの実施形態に従うと、脹脛接続要素107は、着用者が直立起立位にある時にそれぞれの作用線が膝関節の有効回転中心を通過するように位置決めされる。この位置は、脛骨の両側の大腿骨と脛骨との接合部を見つけ、表面の解剖学的構造を観察することによって決定され、適切な位置はそれぞれ大腿骨および脛骨上の骨突起によって特定され、これら同士の間に前後方向に走る「谷」すなわち窪みがある。横から膝関節を見た場合、脹脛接続要素107が正常に通過する場所は、膝関節の後側(後部)から約30%〜40%の距離である。これがまさに当てはまる人々もいる。他の人々(たとえば大柄の人、筋肉質の人)にとっては、正確な配置は、近似および試行錯誤手法を用いて個別的に決定される。
【0105】
望ましくは、軟性外骨格スーツ100が着用者に加えるモーメントは、軟性外骨格スーツが透明であるかまたは別の方法で実質的に邪魔にならないように、着用者によって自然に生じるモーメント(すなわち、動作時の自然な生物学的モーメントにできる限り等しい関節(1つまたは複数)の周りのモーメント)を反映する。軟性外骨格スーツ100からの関節モーメントが所与の時間における動きの自然なモーメントと逆になり得る状況では、軟性外骨格スーツ100は望ましくは、(たとえば接続要素107を膝関節の回転中心を通過させることによって膝関節モーメントをできる限り小さくするために)関節の周りのモーメントアームを最小にする。
【0106】
本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107は、ボーデンケーブルシース144(たとえば
図2A参照)が軟性外骨格スーツに接続するT−コネクタ113で終端する。いくつかの実施形態に従うと、T−コネクタ113は腓筋の大部分の下に位置決めされる。腓筋はコンプライアントであり突出しており、したがって、T−コネクタ113が作動時にその上に配置されると、筋肉に食込み、それによってシステムのコンプライアンスを増加させてユーザの不快感を引起こす。腓筋の下の空間はコンプライアンス度がはるかに低く、脹脛接続要素107が腓筋の大部分を収容するためにより深く角度を付けられているのとは対照的により直線的な経路で脛を下降することも可能にする。脹脛接続要素107が鉛直に対してより大きい角度で脛を下降する場合、軟性外骨格スーツは張力を印加されると今やまっすぐになろうとするため、軟性外骨格スーツの力経路の効率が低下する。
【0107】
本概念の少なくともいくつかの局面において、脹脛接続要素107は、腓筋の大部分を迂回するように位置決めされ、これによって脹脛接続要素107は鉛直に対してより直線的に脛を下降することができる。脹脛接続要素107の端のT−コネクタ113は、T−コネクタ113を踵の中心線と直接的に一直線に位置決めすることによって、水平に対して正確に位置決めされ得る。脹脛接続要素107を鉛直に対して正確に位置決めするために、接続要素は、T−アタッチメントが履物(着用している場合)の上に位置決めされるように、または名目上T−コネクタ113が腓筋の大部分の下に位置するように調節され、これによって脹脛ストラップが脹脛の大部分をうまく迂回することができる。いくつかの実施形態に従うと、より剛体の構成要素のいくつかは、より軟性の、かつよりコンプライアントな構成要素に置換えられ得る。
【0108】
1つ以上の履物接続要素130は、ユーザの足に剛性インターフェイスを与えるように提供される。少なくともいくつかの局面において、履物接続要素130は、ブーツの近部(たとえば踵)および遠部(たとえば上部の先芯等)の周りに配置されたハーネスを含む。そのような履物接続要素130は、踵における作動に起因する上向きの力を足の前部に中継し、そこで下向きの力を加える。このように上向きの水平力を足の前部に伝達することは、発生する相補的なモーメントのおかげで足関節足底屈を推進することを助ける。
【0109】
少なくともいくつかの局面において、履物接続要素130は、ユーザの履物(たとえばブーツ、靴等)の(たとえば上側)中央の中央部に、かつ履物の踵とインステップとの間の空間に巻付くように配置される1つ以上の接続部材を含む。履物接続要素130は、示されるように足関節に巻付き、履物接続要素130が踵から滑り落ちないように拘束し、より高い剛性を提供するために上向きに張力を印加し続けられるように配置される1つ以上の接続部材を含む。1つ以上の接続部材はさらに、履物接続要素130が履物に対して内側および外側に滑らないように拘束するように有利に配置される。少なくともいくつかの局面において、1つの接続部材の底縁は、履物の踵の端縁の周り約0.5cmに有利に配置される。この位置決めは、ノード2の正確な位置決めに起因する。履物接続要素130は、アクチュエータケーブル(たとえばボーデンケーブル等)取付点として作用する接続部材を含み、これは直接的におよび/または別の接続部材を介して、踵に作動力を伝達する。ノード2は望ましくは、鉛直方向において踵の裏のできる限り近くに、かつ内側−外側方向において踵の中央に直接的に配置される。ノード3は足底中心のやや後ろに配置され、その位置はノード2の配置によって決定される。
【0110】
ブーツアタッチメントを正確に着用する方法の一例では、まずノード2が踵上に配置され、次に1つ以上の履物接続要素130が履物に対して適切な位置に置かれた後、履物接続要素が必要に応じて順次調節される(たとえば張力を印加される/緩められる)。
【0111】
履物接続要素130は、任意に、しかし有利に、履物接続要素を着用者の足の周りにしっかり固定するように(たとえばベルクロ(登録商標)等を用いるなどして締付けるか締めることによって)調節され得る1つ以上のファスナを含む。
【0112】
本概念の少なくともいくつかの局面において、履物接続要素130は、まるでソックスのように履くことができるソックス状構造を含む。さらに代替的に、履物接続要素130は足を踏み入れる構造を含み、これは次に折重ねられて足を包み、この位置で1つ以上のファスナが締付けられるか締められて(たとえばベルクロ(登録商標)等)履物接続要素130を着用者の足の周りにしっかり固定する。本概念の少なくともいくつかの局面において、履物接続要素130は、ウェビングが着用者の踵の下および前足の上に伸びる一片または複数片のテキスタイル系構造を含んでもよい。
【0113】
履物接続要素130は、ボーデンケーブル142アクチュエータへの接続点を提供するブーツまたは靴上に配置されるハーネスの形態を取ってもよい。これらの解決策は「ブーツ外」解決策であり、ケーブル142を引張り踵に対して上向きにブーツ踵上に力を生じさせる。本概念の他の局面は、「ブーツ内」力アクチュエータを利用して足関節の周りにモーメントを生じさせる履物接続要素130を含み、そのような履物接続要素はケーブル取付インソールおよびケーブルガードを含む。そのような構成では、着用者に力を印加するために、ケーブルは、一端が靴の外部のアクチュエータに固定され(A)、他端が着用者の足インソールの下の靴の内部の物体に付けられた(B)状態で、着用者の靴またはブーツ内に伸びる。
【0114】
別の局面において、プラスチックまたはフォーム要素が前足上のウェビングと着用者の足との間に任意に挿入され、ウェビングが分離して用いられるよりも均一に足の甲に圧力を分散させる。別の局面において、足の甲および/または足関節上でミッドソールがウェビング(および任意に上述のようなフォームまたはプラスチック)と組合わされて、足に伝達すべきトルクのための付加的な経路を提供する。
【0115】
ケーブルまたはウェビングをインソール要素の下後部に取付けると固定点が提供され、この点において、ケーブルまたはウェビング上の点に印加される力が矢状面内の足関節に近接した着用者の踵に伝達され、関節の周りにトルクが生じる。このインソールは、部分的なインソールであってもよいし、完全なインソールであってもよい。インソールは、負荷を踵に分散させるためにカーボンファイバなどのいくつかの剛性要素を有することが望ましい場合がある。剛性要素が用いられる場合、インソールは有利にセグメントに分けられて母指球上の最大可動域を可能にし得る。本概念の少なくともいくつかの局面において、下肢の後部にケーブルガードが設けられる。作動のため、ケーブルは後退する必要がある。ケーブルがブーツと着用者の足との間で圧縮される状況では、ケーブル着用者とブーツとの間の摩擦のために擦傷および効率低下が生じ得る。ゆえに、ケーブルが自由に動くための開放チャネルを提供するシステムが望ましい。
【0116】
本概念のさまざまな局面において、ソックス状履物接続要素130は、ソックス状構造の上部に取付けられて脹脛接続要素107の底部へと直接上方に進む接続要素(たとえばウェビング)を介して軟性外骨格スーツ100に接続される。さらに別の局面では、履物接続要素130は、踵(たとえば着用者の踵、履物の踵)に巻付くように構成されるヒールカップを含む。さらに別の実施形態では、履物接続要素130は、着用者の足(たとえば踵)の一部または足全体の下の履物に入るインソールインサートを含み、そのようなインソールインサート、または上述のヒールカップは、後部および/または後外側部で、履物を出て軟性外骨格スーツアクチュエータケーブルに取付けられる接続部材(たとえばウェビング)に取付けられる。望ましくは、履物の内部に配置される任意の接続部材は、着用者との摩擦を最小にするための低摩擦シース、低摩擦コーティング、または低摩擦材料を含む。さらに別の局面において、履物接続要素130は、履物のソールの一部(たとえば踵のみ)または履物のソール全体の下に入るソールインサートを含む。接続部材(たとえばウェビング、ケーブル等)がソールインサートの後部および/または後外側部に設けられ、軟性外骨格スーツアクチュエータケーブルに取付けられる接続部材に接続される。
【0117】
発明のいくつかの実施形態に従うと、アクチュエータ200をさらに用いて、本概念に従う軟性外骨格スーツ100の着用時の歩行(または他の運動または活動)の代謝コストを減少させることができる。アクチュエータ200を用いて所望のモーメントの力を補い、たとえば(歩行については)、足関節筋が最大パワーを生成している歩容周期のトゥプッシュオフ部分の間に足関節の周りの力を補う。この行動を行うため、一例として、モータを用いてボーデンケーブル142(またはウェビング、リボン材料、ベルト、またはチェーンなどであるがこれらに限定されない他の可撓性伝達要素)に対して必要な力/変位を生じさせることができ、センサ150(たとえば
図2Aのフットスイッチセンサ150)を用いて関節位置を検知して作動タイミングを決定することができる。
【0118】
アクチュエータ200は、(たとえばケーブル142によってユーザのブーツ上の点と軟性外骨格スーツの底部との間の距離を変化させることによって等)少なくとも一部が1つ以上の関節を横切って体の遠部に伝達されてそのような体の遠部に力を付与することができる力を発生する。最小伸長性の軟性外骨格スーツでは、この縮小距離によって軟性外骨格スーツ100、履物接続要素(たとえばブーツアタッチメント)、およびケーブル142内に引張力が発生する。この引張力は、足関節の軸からオフセットした位置に印加されて関節の周りにモーメントを生じさせ得る。一例として、可撓性ボーデンケーブル142がシステム100によって用いられ、アクチュエータユニット200内のアクチュエータ(1つまたは複数)から軟性外骨格スーツ100に力が伝達され得る。たとえば
図2Aに示されるように、剛体のおよび/またはより重いアクチュエータ(1つまたは複数)200が遠くにまたは遠位に(たとえば下半身から離れたバックパック上に)装着され得る。
【0119】
本概念の少なくともいくつかの局面において、各肢(たとえば脚)は、1つ以上のアクチュエータを含み得る自身のアクチュエータユニット200によって駆動され得る。本概念のさらに他の局面において、各関節は、1つ以上のアクチュエータを含み得る自身のアクチュエータユニット200によって別個に駆動され得る。本概念のさらに他の局面において、複数の関節が、1つ以上のアクチュエータを含み得るアクチュエータユニット200によって駆動され得る。
【0120】
図8〜
図9に示される本概念に従う一実施形態では、各アクチュエータユニット200はドライブボックス223およびプーリモジュール224を含む。アクチュエータユニット200を用いてボーデンケーブル142を駆動し、ヒールストライクコンタクトを測定する(たとえばフットスイッチ150参照、
図8)ことによってユーザの歩容を検知する。ボーデンケーブル142はプーリモジュール224内のプーリホイール225に取付けられ、プーリホイール125の回転によって伸びて後退する。いくつかの実施形態に従うと、ドライブモータ222は、プーリモジュール224に結合される出力軸の駆動トルクを増加させてボーデンケーブル142を駆動し、ユーザの動作に補助を提供するギアリング249(たとえばギアボックス)を含む。他の局面において、モータ222は中間ギアリングなしでプーリモジュール224に直接接続される。ドライブモータ246は、モータ出力軸の回転位置を示すように構成されるエンコーダ248または他の位置センサを有利に含む。ドライブモータ246およびはエンコーダ248は、ドライブモータのパワー、スピードおよび方向を制御するために用いられるモータコントローラに接続される。
【0121】
本概念のいくつかの局面に従うと、1つよりも多いモータを制御するための集中型モータコントローラが設けられる。代替的に、各アクチュエータユニット200は、センサ入力を受信し、モータコントローラと通信してそのアクチュエータユニットのドライブモータ246の動作を制御するように構成される、自身の常駐システムコントローラ250を含む。システムコントローラ250(または任意に集中型モータコントローラ)は、たとえばPC/104標準に基づいたシステムであるがこれらに限定されない、コンピュータまたはマイクロプロセッサベースシステムを含み得る。ドライブモータ246は、ボーデンケーブル142の近端に係合するプーリ225を含むプーリモジュール224に直接的にまたは間接的に(たとえばギアトレイン249を介して)結合される。
【0122】
図8〜
図9に示されるように、プーリモジュール224はハウジングを含み、ハウジングは、プーリホイール225が第1の方向に回転すると、ボーデンケーブル142がプーリに巻付くことによってボーデンケーブル142の遠端がボーデンケーブルシース144の遠端内に後退し、プーリが第2の方向に回転すると、ボーデンケーブルがプーリから解かれることによってボーデンケーブル142の遠端がボーデンケーブルシース144から伸びるようにボーデンケーブルシース144に係合するように適合される。少なくともいくつかの実施形態では、プーリ225は、自身が第2の方向に回転するとケーブル142が駆動され伸長力を印加し得るように、ハウジングに収納される。
【0123】
上述のように、本概念の少なくともいくつかの局面において、1つのアクチュエータユニット200を用いて1本以上の肢および/または1つ以上の関節にエネルギを提供することができる。一例として、別個の肢への交流電力送電は、反対の肢の位相がずれた動き(たとえば脚は歩行時に典型的に位相がずれる)を利用する、肢同士の間のクラッチ切換送電を介して達成され得る。
【0124】
本概念に従う少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100制御システムは、(たとえば1つ以上のセンサを介して)ユーザの歩容を検知または判断し、ドライブモータ246を作動させて歩容周期の特定の時間中にボーデンケーブル142を引張るように、または歩容周期(もしくは他の動き)の特定の時間に力を導入するように構成される別の作動システムを作動させるように構成される。歩容周期中の所定の点でドライブモータ246を作動させると軟性外骨格スーツ100内に所定の張力を生じさせることができ、これによって足関節の周りに力が印加されて歩行を助ける。ユーザが着用する1つ以上のセンサ(たとえば1つ以上のフットスイッチ150、1つ以上の関節角度センサ等)を設けて信号を制御システムに送信し、制御システムはモータ作動をユーザの歩容周期(または他の動き)と同期させることができる。発明のさまざまな実施形態に従うと、センサは、特定の関節の角度位置を検知するセンサを含む、多くの形態を取り得る。たとえば、その全内容が引用により本明細書に援用される、共同所有されている国際公開第2013/044226号参照。いくつかの局面に従うと、センサは、歩容周期、たとえばヒールストライク時に足の圧力を検知する圧力センサまたは単純なオン/オフスイッチを含む。
【0125】
本概念の他の局面に従うと、1つ以上のセンサは、特定の場所の筋活動を検知するEMGセンサの形態を取り得る。これらの活動のパターンおよびスケールは、歩容周期(パターン)または必要な補助量(スケールに基づく)を決定し得る。地面に対するまたは着用者の点に対する、相対的または絶対的な関節位置を検出する他のセンサが歩容パターンを求めるために用いられ得、したがって、アクチュエータ起動を制御するために用いられ得る。他のセンサは、超弾性歪みセンサ、加速度計、慣性計測装置、内部計測装置(IMU)および/またはゴニオメータセンサを含み得るが、これらに限定されない。これらのセンサ、または他のセンサは、単独でまたは組合わされて、体位を示す動作を検出し得る。用いるセンサ(1つまたは複数)に依存して、そのシステムに特有のヒューリスティクスを展開して、体の筋肉が関節(たとえば足関節、膝関節、または股関節)に力をいつ印加するかを求めることができ、それによって軟性外骨格スーツ100は次に、適切な時間に、推定筋力に比例して力を印加するように構成され得る。たとえば、1つの可能性のあるスキームは、各関節の速度を推定し、着用者の近似剛体身体モデルを用いて各関節のトルクを推定することによってユーザの体の力学を推定することであり、そこから結果的な有益なトルクを生成するための適切な張力が求められる。
【0126】
代替スキームは、訓練期にEMG測定およびセンサを同時に記録することを含む。このデータを収集した後、機械学習アルゴリズムを用いて、いつ筋肉が収縮するかをセンサ入力の関数として予測する。その後、実際にはEMGセンサは用いられず、代わりに訓練アルゴリズムがセンサに基づいて筋活動を予測し、適切な筋肉が活性化されると軟性外骨格スーツに張力を印加する。
【0127】
別のスキームは、EMG、筋肉径を検出するセンサ、または何らかの他の手段を用いて筋活動を直接測定することを含む。そして、軟性外骨格スーツ100は、一定の筋肉または筋肉の組合わせの活性化に比例してに張力を印加され得る。
【0128】
発明のいくつかの実施形態に従うと、足とブーツのソールとの間に1つ以上のフットスイッチ150を位置決めしてヒールストライクを検知し、ユーザの歩容周期のレートの測定を提供する。フットスイッチまたはセンサを用いて、各足の踵が歩容周期中に最初に地面に触れる瞬間を検出し、制御システムはフットスイッチからの信号を用いて歩容期間を計算する。歩容周期中の任意の点における足関節の位置は、(平地および名目歩容であると仮定して)既知の足関節位置対時間曲線に基づいて推定され得る。推定した足関節位置を用いて、ボーデンケーブル142を後退させて軟性外骨格スーツ100に張力を印加すべき時を決定することができる。張力を印加された軟性外骨格スーツ100は、歩容周期のトゥプッシュオフ部分の間に足関節の周りにモーメントを提供し、筋肉が供給する力を補い、ユーザによる消費エネルギを減少させ得る。
【0129】
いくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100が所望の張力まで手動で引張られた後、ベルクロ(登録商標)または何らかの他の取付メカニズムを用いて軟性外骨格スーツ100の一部を別の部分に接続する。たとえば、ノード1(たとえば
図3、
図5参照)は、ベルクロ(登録商標)ファスナを有する接続要素を用いて腰ベルト110および大腿ブレース120に接続され得る。たとえば、
図7では、接続要素4および5は大腿ブレース120の底部でバックルを通ってループ状になってから、ベルクロ(登録商標)または他の締結構成要素(1つまたは複数)によって上向きに引張られるか自身の上に締結され得る。代替的に、接続要素2および3の各々は、ベルクロ(登録商標)を用いて直接、バックルを通ってループ状にならずに、または別の締結部材もしくは要素によって、腰ベルト110においてしっかり固定され得る。別の選択肢は、貫通バックルを通過するウェビング片を用いて、ウェビングに張力が印加された後にウェビングが後退して出ることを防止し、ウェビングの突出端を手動でピンと張ることである。
【0130】
本概念の少なくともいくつかの局面に従うと、各ボーデンケーブル142内の張力を連続的に測定するための力センサが用いられる。アイドラプーリ232(たとえば
図8参照)はボーデンケーブル142に接して付勢され、ケーブル142張力を検知するためのロードセル234(たとえば
図8参照)が用いられる。代替的に、ケーブル張力、またはより一般的には可撓性伝達要素張力を検知する他の手段が、ケーブルまたは可撓性伝達要素が軟性外骨格スーツに力を加える点に配置されるロードセルを含んでもよい。これらの測定値はログ記録され、軟性外骨格スーツに適切なレベルまで自動的に張力を印加するために用いられる。いくつかの局面に従うと、軟性外骨格スーツコントローラ(1つまたは複数)250(たとえばシステムコントローラ)は、自然な身体動作による軟性外骨格スーツの張力の増加を検出し、張力の増加を示すこの信号に基づいてアクチュエータ(1つまたは複数)200を介して作動を適用する。ゆえに、さまざまな局面において、軟性外骨格スーツコントローラ(1つまたは複数)は、外骨格スーツ内の力を連続的に監視するか、またはユーザの動作(1つまたは複数)、1つの活動、または複数の活動に適切なサンプリング周波数で外骨格スーツ内の力を監視する。軟性外骨格スーツが、ユーザの位置のジオメトリ変化のために少量の張力を印加されると、コントローラ(1つまたは複数)はその(小さい)力を検知し、軟性外骨格スーツを作動させて張力を適宜増減させ得る。歩行については、軟性外骨格スーツの張力印加は、たとえば、制御システムからモータ位置信号に一定のオフセットを適用することによって達成され得る。もちろん、張力印加はさらにまたは代替的に、1つ以上の調節部材(たとえばストラップ、バックル、クラスプ、ベルクロアタッチメント等)を操作することによって着用者によって手動で達成することもできる。
【0131】
いくつかの局面において、アクチュエータユニット200は、イーサネット(登録商標)(たとえば有線もしくは無線−WiFi)、ブルートゥース(登録商標)、I2Cなどの通信チャネル、または他のオープンなもしくは登録商標を持つ通信チャネル上でローカルまたはリモート外部コンピュータ(たとえばデスクトップまたはラップトップコンピュータ、タブレットまたはスマートフォン)と通信するように構成される。外部コンピュータは、たとえば、最初のパワーアップ時にアクチュエータシステム制御プログラムをブートアップし、外骨格スーツ張力などの制御パラメータを調節し、診断チェックを実行し、ソフトウェアを送信し、またはさらにはアクチュエータユニット200を遠隔操作するために用いられ得る。少なくともいくつかの局面において、制御システムはパワーアップ時に自動でブートし、アクチュエータユニット200の外部上の、またはハンドヘルド有線もしくは無線リモートコントロールもしくは電子装置(たとえばスマートフォンアプリ)上のスイッチから制御入力を受信する。他の局面において、制御システムは、ユーザの意図または行動を検出または予期して適切な補助を適用する予めプログラムされたアルゴリズムに基づいて自律的に動作する。
【0132】
一例の制御システム構成では、アクチュエータユニット200(たとえば
図8の例のアクチュエータ)は、Diamond Systems社のMM-32DX-ATアナログおよびデジタルI/O拡張ボードに接続されるPC/104フォームファクタ内のDiamond Systems社のAuroraシングルボードコンピュータ(たとえばプロセッサ250)によって制御される。コンピュータは、Diamond Systems社のJupiterパワー調節ボードを介して4セル(14.8〜16.8V)リチウムポリマーバッテリからパワー供給され得る。ボーデンケーブル142内の張力は、プーリモジュール224内のアイドラプーリ232に接して装着された50kgのビーム型ロードセル234(Phidgets、製品コード3135)を用いて検知され得る。ロードセル234上のフルブリッジ歪みゲージが、電気インターフェイス(たとえばポゴピン)を介して信号増幅器242(たとえばFutek社のCSG110)に接続される。増幅器/ロードセルの各対は、ロードセル234に既知の負荷を印加しつつ増幅器242の出力を調節することによって較正される。増幅器242は、ロードセル234上の力に対応する0〜10VのDC電圧を出力する。この電圧は、MM-32DX-ATのアナログ入力ピンによって読出される。増幅器242は、自身のオンボードパワーレギュレータを介してPC/104の14.8Vバッテリによってパワー供給され得る。
【0133】
本概念のいくつかの局面に従うと、ヒールストライクは、B&L Engineering社のフットスイッチ(製品コードFSW)などのフットスイッチ150(たとえば
図8)で検知され得る。フットスイッチ150は足底形状の力感知抵抗であってもよい。各フットスイッチ150の踵部分の末端は、それぞれ接地およびMM-32DX-ATのデジタル入力ピンに接続される。各フットスイッチデジタル入力と+5Vレールとの間の並列の1kΩおよび10kΩ抵抗がデジタルピンを引上げ得る。ヒールストライクが起こると、フットスイッチ150の2つの端子同士の間の抵抗が低下し、デジタルピンの電圧がほぼゼロに減少し、この状態変化はMM-32DX-AT I/Oボードによって読出され得る。フットスイッチ150は、ステレオケーブルに差込む3.5mmオーディオジャックに、およびプーリモジュール224内の対応する3.5mmオーディオジャックに配線され得る。フットスイッチ150への電気的接続は、ポゴピンインターフェイスを通ってPC/104コンピュータ250に伝えられ得る。オーディオジャックによってフットスイッチを外骨格スーツの残りから容易に切離すことができ、軟性外骨格スーツ100の脱ぎ着が容易になる。
【0134】
いくつかの局面において、PC/104コンピュータ250は、ドライブボックス223の外部の制御スイッチに接続される。PC/104の正電圧線およびモータコントローラバッテリを切断するための電源スイッチがドライブボックス毎に設けられる。2つの瞬間トグルスイッチおよびロッカースイッチが、ユーザ入力を、PC/104コンピュータ250で実行する制御アルゴリズムに提供する。ロッカースイッチを用いて制御アルゴリズムの歩行モードに従事することができ、瞬間トグルスイッチを用いて左または右モータを回転させて歩行前に軟性外骨格スーツに張力を印加することができる。これら3つのインターフェイススイッチは、10kΩプルアップ抵抗を有するMM-32DX-AT上のデジタル入力ピンに接続され、PC/104と共通の接地を共有する。各スイッチを起動すると、デジタル入力が接地に接続され、ピンが下に引かれる。ボックス装着スイッチに加えて、またはその代わりに、小型ハンドヘルド有線または無線リモート(図示せず)が設けられてもよい。リモートのスイッチはボックスのスイッチと並列接続されて二重機能性を提供し得る。ユーザ入力スイッチに加えて、またその代わりに、音声制御、タッチスクリーン、ウェアラブルコンピュータ、またはヘッドアップディスプレイ(たとえばGoogle Glassもしくは網膜検知もしくは他の入力を有するウェアラブルディスプレイ、たとえば無線接続トラックパッドもしくはソフトキー)を含む他のユーザインターフェイスシステムが軟性外骨格スーツに組込まれてもよい。
【0135】
いくつかの実施形態に従うと、ドライブボックス223は、Copley Controls社のAccelnet Panel ACPモータコントローラに接続されるMaxon motor社のEC-4 pole 30 246を含む。RS−422デジタルシグナリングを用いて500カウント/回転を有するHEDL 5540 3チャネルエンコーダ248がフィードバック用に用いられる。各モータコントローラは、一例として、合計+29.6〜33.6V用の直列の2つの4セル(+14.8〜16.8V)リチウムポリマーバッテリによってパワー供給される。モータコントローラは、
図8に示される例では、モータに最大で+24Vを供給する。Accelnet Panelモータコントローラ260は−10から10VのDC電圧を受付けてプーリの角度方向を変え、ケーブル142に張力を印加するかケーブル142を弛ませ得る。−10Vの信号は、パワーアップ時にプーリを開始点から動かして反時計回りに1回完全回転させることができ、+10Vの信号は、プーリを時計回りに1回完全回転させることができる。いくつかの局面に従うと、動作時、モータコントローラ260がパワーオンされるのはケーブル142ができる限り伸びた時だけなので、負電圧は用いられない。ソフトウェアでは、制御信号は正であるように限定され、モータを物理的な停止に追込むことによってシステムを損傷することが防止され得る。
【0136】
制御電圧は、MM-32DX-ATのアナログ出力ピンの1つから発生し得る。スムーズなモータ動作を保証するため、電圧信号はローパスフィルタを介して送られる。このフィルタは、R=68ΩおよびC=47μFのRC単極構成を含み、48.9Hzの遮断周波数を提供し得る。信号はさらに、アナログ入力で動作するデジタルフィルタを実現するモータコントローラによってフィルタリングされ得る。
【0137】
本概念のいくつかの局面に従うと、各プーリモジュール224は、照明されてシステムステータスのさまざまな状態を示す青色、緑色および/または赤色LED(たとえばプーリモジュールがドライブボックス223に正確に接続されている場合は緑色の照明)などの1つ以上のインジケータを含む。LED(1つまたは複数)のパワーおよび接地は、PC/104のバッテリからポゴピンインターフェイスに通され得る。1kΩ抵抗を用いて、電圧をバッテリから好適な駆動電流に下げることができる。
【0138】
本概念のいくつかの局面に従うと、ボーデンケーブル142は、内部の回路構成の接地として作用する金属プーリボックス224およびドライブボックス223シェルを介して接地される。ボーデンケーブル142を接地させると、ボーデンケーブルがアンテナのように作用して電気ノイズをロードセルおよびシステムの他の構成要素に伝達することが有利に防止される。
【0139】
本概念のいくつかの局面に従うと、アクチュエータユニット200は、(減少したデューティサイクルで動作する)200Wのブラシレスモータ222を用いてプーリ225およびケーブル142を補助軌道を通るように動かす。プーリ225は、モータトルクおよび回転速度を、ケーブルを介して足関節に印加され得る力および変位に変換する(
図9参照)。
【0140】
アクチュエータユニットによって提供される補助は、たとえば、テスト時の軟性外骨格スーツでは100Wであったが機能的限定ではないモータ供給パワーによって制限され得る。テストした軟性外骨格スーツでは、モータ246のデューティサイクルは周期の一部に最大で約200Wを提供した後、テスト用に選択された運転100W要件以下の平均パワー消費量を維持しつつ、周期の残りの部分では低電力消費に戻った(
図10)。
【0141】
本概念のいくつかの局面に従うと、Maxon Motors社のEC-4 pole 30ブラシレスモータ246が、高パワー−重量比およびコンパクトサイズを提供する高効率モータであるため用いられ得る。システムの性能要件に依存して、他のモータを用いてもよい。さまざまな上記の例において回転モータを用いたが、電気機械アクチュエータ(たとえばモータ、ソレノイド等)、空気圧アクチュエータ(たとえば空気圧シリンダ、マッキベン型アクチュエータ等)、および油圧アクチュエータ(たとえば油圧シリンダ等)を含むがこれらに限定されない他のアクチュエータを用いてもよい。本概念のさらに他の局面において、ギアヘッドを必要とせず、その結果として重量減少、ノイズ減少および効率改善を提供する異なる種類のモータを利用してもよい(たとえば高トルクおよび低スピード)。
【0142】
さらに、先の例ではケーブルアクチュエータ142システムがボーデンケーブルの動きを制御するプーリシステム224を含むとして開示されるが、軟性外骨格スーツと共に他のアクチュエータおよび/または可撓性伝達部材が有利に用いられてもよい。一例として、シースを有する(ボーデンケーブル)または有しない(上述のようなフリーケーブル)二点同士の間に接続されたケーブルまたはコードの長さを減少可能な任意のアクチュエータを用いてもよい。これらのアクチュエータは、補助すべき動き、そのような動作の文脈、禁忌、および代替の作動配置の利用可能性に依存して、人の上またはそれ以外のどこにでも配置され得る。アクチュエータ(1つまたは複数)は遠位に配置され(たとえばユーザの肩が支えるバックパックの中に)、アクチュエータ送電要素(たとえばケーブル)の近端が上述のように軟性外骨格スーツの好適な場所(たとえば履物アタッチメント要素130)に取付けられてもよい。代替的に、1つ以上のアクチュエータがアンカー点、接続要素および/もしくはノード同士の間に、またはケーブルの末端同士の間の長さの一部上に配置されてもよい。他の種類のアクチュエータの例は、空気圧または油圧リニアアクチュエータ、空気圧または油圧回転アクチュエータ、ボールまたはリードスクリューアクチュエータ、ベルトまたはケーブル駆動アクチュエータ、電気活性ポリマー等の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。
【0143】
本概念の他の局面に従うと、末端同士の間の長さを減少させるアクチュエータが用いられ、当該アクチュエータは、磁気または機械クラッチなどの1つ以上の半受動的なアクチュエータを含む。これらのアクチュエータは、補助を与えるべき時(たとえば膝関節が曲がった時)よりも点同士の間の長さが短い歩容の点で従事する。ケーブルが最小の張力レベルを有するようなケーブルの後退可能長さと共に、クラッチは、脚が自然に伸びると軟性外骨格スーツおよびケーブルの伸びによって力が生じるように、長さをより短い状態にロックする。これは半受動的システムに分類され、能動的システムよりも必要なエネルギレベルが低くて済むと予想される。
【0144】
本概念の他の局面に従うと、軟性外骨格スーツ内の張力を調節するためのさまざまなメカニズムが用いられ得る。いくつかの実施形態では、軟性外骨格スーツを作動させるのと同一のメカニズムを用いて軟性外骨格スーツ内の張力を調節することもできる。他の実施形態では、軟性外骨格スーツに張力を印加するための別個のメカニズムが、単独でまたはアクチュエータと共に用いられ得る。スーツ上の二点同士の間の長さを減少させるアクチュエータを用いて軟性外骨格スーツ能動的に短くすることができる。これを達成し得る1つのメカニズムは、ボーデンケーブルを引張るモータであり、そのシースは軟性外骨格スーツ上の一点に接続され、その中心はスーツ上の異なる点に接続される。これは、機械空気圧、油圧、または他のアクチュエータを用いて達成され得る。
【0145】
もちろん、上述のように、張力は、接続要素、アンカー点、およびノードの相対位置を物理的に調節する(たとえばバックルおよび/またはベルクロ(登録商標)を用いてストラップを調節し、引き紐、ワイヤまたはケーブルに張力を印加し、それを所定位置にロックする等)ことによって1つ以上の点において手動で調節され得る。別の例として、着用者はロックバックルを通るウェビングストラップを引張ってもよく、これによってウェビングストラップが解放後にしっかり固定される。別の例では、着用者はウェビング片(たとえば接続要素)を引張り、ベルクロ(登録商標)を用いてウェビングをスーツの一部にしっかり固定し得る。
【0146】
着用者はさらに、ラチェットメカニズム(たとえば腰ベルト110上に配置されるBoa Technology Inc.社が製造するような回転ラチェットメカニズム)を通るケーブル、またはケーブルを所定位置に設定張力でしっかり固定するように構成されるロック可能スプールを引張るか、または他の方法で張力を印加し得る。ラチェットメカニズムまたはスプールは、ボーデンケーブルの一端に(たとえばラチェットメカニズムが股関節に装着される場合はケーブルの上部に)に取付けられ、その他端は軟性外骨格スーツ上の2つの場所に接続され、それら同士の間の距離を減少させ、インタラクション要素(たとえば歯止め要素、ラチェット要素)は解放可能な固定を提供する。着用者はさらに、ケーブルが巻付いている中心ハブを回転させることによってラチェットメカニズムを前進させるか、またはねじ機構を用いて軟性外骨格スーツに張力を印加し得、ねじ機構は次に最終位置にロックされる。張力は、ボタンを押してラチェットメカニズムのインタラクション要素を解放する(たとえばレバーをラチェットギア歯から遠ざける)ことによって解放され得る。ラチェットメカニズムまたはスプールは、軟性外骨格スーツ着用者によって、またはアクチュエータ、たとえばギア式モータによって、(張力を印加するか解放するように)手動で回され得る。軟性外骨格スーツが補助システムとして作動されていない場合でも、軟性外骨格スーツは依然として張力印加モードで着用され得る。さまざまな構成において、ラチェットメカニズムは、着用者の腰もしくは股関節に(歩行または走行時の調節を容易にするために)、足関節の近くに、または潜在的に着用者の胴上またはその周りの他の場所に位置し得る。
【0147】
いくつかの実施形態に従うと、軟性外骨格スーツに張力を印加するためのメカニズムは、ねじ要素を含み得る。一局面において、キャリッジ要素がボーデンケーブルの端に接続され、内部にねじ要素が配置されるねじ山部によって昇降するように構成される。支持構造がキャリッジ要素をケーブルシースに対して所定位置に保持し、ねじを回転させることができるようにねじの上部がユーザに露出する。ねじを回転させるとキャリッジおよび取付けられたボーデンケーブル端が直線運動し、それによって軟性外骨格スーツ内の張力をそれぞれ増減する。設定の緩みの可能性を最小にするための任意のロック要素が設けられる。一局面において、ねじはねじ山を回転させるように小型モータまたは他のアクチュエータによって制御され得、その場合、ロック要素は不要である。
【0148】
上述のように、軟性外骨格スーツは任意に、軟性外骨格スーツのユーザが動くとプログラムに従って能動的に張力を印加され得る(たとえばケーブルが短くまたは長くなり得る)。代替的に、他の局面において、軟性外骨格スーツは1つ以上のアクチュエータを用いて自動的に張力を印加され、1つ以上の設定張力(たとえば固定値、固定値範囲、異なる移動部分についての異なる値または値の範囲、名目平均値、名目ピーク値等)で維持され、その設定点(1つまたは複数)はユーザによって調節され得る。この点において、システムは、軟性外骨格スーツ内の張力を検知して、張力を制御するコントローラに適切な入力を提供するように構成される。
【0149】
これらのメカニズムのすべてを用いて、軟性外骨格スーツは、たとえば軟性外骨格スーツを脱ぐの容易にするように、これらの張力印加メカニズムを解放することによって着用者にゆったりとフィットするようにされてもよい。そのような張力印加(または張力解放)装置によって、ユーザはたとえば、軟性外骨格スーツ上の一定点同士の間の第1の張力レベルおよび第2の張力レベル(第1の張力レベルよりも高いまたは低い)を保つことができる。軟性外骨格スーツは、同時に動作可能な多数の張力印加メカニズムを有利に含む。
【0150】
歩容周期中に、モータ(1つまたは複数)246は、所望のケーブル142軌道を達成するためのさまざまなトルクおよびスピードで動作し得る。より高いモータ効率は高速および低トルクで生じるため、発明のいくつかの実施形態は、歩容周期中にモータを最大効率のできる限り近くで動作させ続けるプーリおよびギアボックスを有するモータを含む組合わせを選択し得る。
【0151】
いくつかの実施形態に従うと、Maxon社のEC-4 pole 30は15,900RPMの名目連続スピードを有する。しかし、この実施形態については、モータはエンコーダの最大スピードである12,000RPMによって制限される。アクチュエータシステムで使用可能な代替エンコーダ(MR、ML型、500 CPT、3チャネル、Maxon社のLine Driver #225778使用)は最大モータスピードを増加させる。
【0152】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、このシステムのより良いモータは、高トルクに対して低名目連続スピードを有する。動作スピードが低下するとギアボックス内の必要なステージ数が減り、より高い全体効率につながる。
【0153】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、プーリ225およびギアボックス248は、モータの高速回転を、プーリホイール225によって駆動されるケーブル142の長くなるおよび短くなる移動に変換する。プーリホイール225およびギアボックス248は共に、所与の負荷状態についての最大ケーブル動程および最大ケーブルスピードを決定する。プーリホイール225径およびギア減速は、必要な最小ケーブル動程、ならびに生体力学および外骨格スーツ剛性の必要性を満たすのに必要な最大ケーブルスピードから逆算することによって決定され得る。全補助量は、これら2つの限定およびパワー予算によって決定された。
【0154】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、プーリホイール225はシングルラップ設計であってもよいが、他の実施形態ではプーリはマルチラップ設計であってもよい。シングラップ設計を用いる場合、プーリホイール225円周はケーブル動程距離未満であってはならない。いくつかの実施形態に従うと、ケーブル動程は、軟性外骨格スーツ100アーキテクチャおよびユーザの歩行の生体力学に基づき得る。いくつかの実施形態に従うと、ケーブル動程は3つの長さ、すなわちケーブル引長さ、外骨格スーツ張力長さ、およびボトムアウトを防止するための安全のマージンを含み得る。いくつかの実施形態に従うと、ケーブル動程には、設計パラメータおよびユーザ変動性の不確実性のため、十分な安全長さが与えられた。ケーブル引長さおよびケーブル張力長さは、参加者の身長が5′8″から6′5″の範囲の軟性外骨格スーツおよび前のアクチュエータシステムから測定された。これら3つの長さおよび計算したプーリ径は、表1に見ることができる。
【0156】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、シングルラッププーリを使用すると、340°(0.94rev)の使用可能角度が得られた。約70mmの選択プーリ径は、適切なケーブル長を提供した。一般に、プーリおよび曲げ半径が大きくなるにつれ、摩耗およびケーブル応力が減少するが、プーリまたはシャフトが小さくなるにつれ、はるかに高い変速比が与えられ得る。
【0157】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、ギアボックス244は、足関節を補助する時のケーブルの引きおよび解放時に必要な最大スピードを満たすように選択される。
図11に見られるように、最大補助ケースについてのケーブル変位は、周期の能動部分にわたって動作する三角形として処理され得る。先行する線は、センチメートル単位の命令モータ位置信号であり、それに続く線は,CME−2モータコントローラソフトウェア範囲によって測定される結果的なモータ位置である。正の変位はケーブルの後退に対応し、信号命令とモータ運動との間の遅延はモータコントローラ加速度制限に由来する。
【0158】
本概念の少なくともいくつかの局面に従うギア減速計算を示す表2に見られるように、所与のプーリ径(70mm)および最大モータスピードについての最大ケーブルスピードは37cm/secであることが分かった。最大ケーブルスピードから、必要なギア減速は107:1であることがわかり、減速が111:1のギアボックスが選択された。
【0160】
モータはそのスピード−トルク曲線内で動作し、高速引き時に印加される力はモータの寿命を保護するためにモータの限界を超えないことが望ましい。
【0161】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、非伸長性シースの内部で並進する非伸長性ケーブルを含むボーデンケーブルが利用される。ボーデンケーブル142は、アクチュエータユニット200から足関節に(履物接続要素130に伝達される力を介して)力を伝達する。ボーデンケーブルシース144は軟性外骨格スーツおよびアクチュエータユニット200に取付けられ、ケーブル142は履物接続要素130にアンカー固定される。ウェビングおよび/またはケーブルが軟性外骨格スーツのファブリック内のガイドを通って任意にルーティングされる。
【0162】
本概念の少なくともいくつかの実施形態に従うと、ケーブル内の現在のシステム張力は、データログ記録のため、および歩行前に軟性外骨格スーツに事前に張力を印加するために、制御システムに入力される。ケーブル内の張力の検知は、歩容制御アルゴリズムでも用いられ得る。プーリモジュール224のロードセル234は、ケーブルがボックスの外側からプーリに入る際にケーブルを小角度だけたわませる小型アイドラホイールに装着され得る。一般に、ケーブルをたわませるのに必要な力は、ケーブル内の張力と共に直線的に増加する。
【0163】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、B&L Engineering社のフットスイッチがユーザの履物内に装着され、1つ以上の特定の動作体重範囲内のユーザによる作動を可能にする範囲の感度を提供する)。圧縮されない場合、フットスイッチは数百メガオームの名目抵抗を有し、有効閉回路を形成する。抵抗はヒールストライク時(力の約300lbs)に14Ωに低下し、この値は909Ωプルアップ抵抗(10kΩと並列の1kΩ)よりもはるかに小さく、PC/104デジタルピンを引下げる。1kΩ抵抗を10kΩ抵抗に並列に追加して、たとえばヒールストライク時および踵のリフトアップ時などの移行動作時のオン/オフトグルを最小にした。
【0164】
軟性外骨格スーツのテスト構成において構成されるように、1.6GHzのIntel Atom CPU、RAMの2GBを有するDiamond Systems社のAurora PC/104コンピュータ250を使用し、4GB SSDディスクからのリアルタイムカーネルを用いてMS−DOSをブートした。MS−DOSインストレーションは、スタートアップ時に実行可能なxPC Targetバイナリを開始するように構成され得る。xPC Targetアプリケーションはホストコンピュータからの接続を待ち、ホストコンピュータ上のMATLAB/Simulinkからコンパイルプログラムを受信してプログラムを実行する。Aurora PC/104はDiamond Systems社のMM-32DX-AT I/O拡張ボードとペアリングされて32個のアナログ入力、4個のアナログ出力、および入力または出力として割当て可能な24個のデジタルピンを提供し得る。本概念のいくつかの実施形態に従うと、PC/104 xPC Targetの組合せは、有用な量の処理能力およ柔軟性を提供した。PC/104は、48.2 FLOPSおよびRAMの2GBが可能なデスクトップCPUを有し、スピードまたはメモリを心配することなく制御アルゴリズムを展開して発明で使用することができる。小型サイズおよび低消費電力のため、PC/104はポータブルシステムでの使用に好適である。本概念のいくつかの実施形態に従うと、Copley Controls社のAccelnet Panel ACPモータコントローラが、速度制御および位置制御可能な高機能コントローラである。これは多数のコマンド入力(RS232直列、CAN、PWM、アナログ電圧)を有する。Copley Controls社のソフトウェアによって、コントローラゲインの基本的な自己調整および計算が可能になる。
【0165】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、フルブリッジ歪みゲージ用の汎用増幅器としてFutek社のCSG110を用いた。Futek社のCSG110は、励起電圧およびmV/Vセンサ範囲を設定するためのDIPスイッチ、ならびにゼロ点および各特定のロードセルへのDC電圧出力のスパンを較正するための回転ポテンショメータを有する。Futek社のCSG110増幅器によって、ロードセルがPC/104とインターフェイスすることができる。
【0166】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、5個のバッテリを用いてこのシステムにパワーを供給した。4個のGens Ace社の14.8V 4S1P 5000mAh 40Cリチウムポリマーバッテリを用いて、ドライブボックス毎に2つのモータコントローラおよびモータ(肢毎に1つのドライブボックス)にパワーを供給した。バッテリの各対は、モータコントローラに29.6VのDCを供給するために直列配線される。5個目のバッテリは、各ドライブボックス内のPC/104コンピュータ、双方のFutek社の増幅器、プーリモジュールLED、および冷却ファンにパワー供給するために用いられるリチウムポリマーのGens Ace社の14.8V 2S1P 4000mAh 25Cである。PC/104バッテリは、モータコントロールバッテリ対およびシステム内のすべての構成要素と共通の接地を共有し得る。発明のいくつかの実施形態に従うバッテリは、システムへのアタッチメントであり得る。これらのバッテリはハウジングに収容されてもよく、端子コネクタは、200Wよりも大きいパワーを搬送可能な少なくとも2つの電気コネクタブレードに接触している。これらのブレードはモータハウジング内の噛合コネクタとインターフェイスして、モータにパワー供給可能なパワー接続を形成し得る。バッテリハウジングおよびモータハウジングは、ハウジングをしっかり固定するためのラッチなどの噛合保持特徴を有し、クイックリリース交換可能システムを形成し得る。
【0167】
リチウムポリマーバッテリを選択した理由は、それらが本願において許容可能な性能を提供するからである。リチウムポリマー化学構造は、最高のエネルギ貯蔵−重量比の1つを提供し、リチウムイオンよりもロバストかつ安全である。発明の他の実施形態では、軟性外骨格スーツは(たとえば太陽、風、自然な身体動作、体温、振動、充電ステーションとの誘導結合、コード付Liバッテリ充電ポート等からの)エネルギハーベスト要素を含み、スーツにパワー供給するのに必要な全体的なバッテリサイズを減少させ得る。
【0168】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、制御スキームは、センサからの入力に基づいてモータをどのように動かすかを決定する処理を含み得る。制御スキームは、PC/104埋込コンピュータで実行されるコードで実現され得る。いくつかの実施形態に従うと、制御スキームはSimulinkブロックおよびMATLABコードで書かれ得る。MM-32DX-ATアナログ拡張ボード用のSimulinkブロックは、入出力(たとえばI/O)を処理し得る。1つのSimulinkブロックを用いてすべてのセンサについての値を読出すことができ、別のSimulinkブロックを用いてモータコントローラに位置値を送信することができる。付加的なSimulinkブロックを用いてデータを捕捉してPC/104のディスクに保存するか、保存またはデバッギングのためにホストコンピュータに送信することができる。処理の大部分は、Simulinkブロックに埋込まれたMATLABスクリプトによって達成され得る。このMATLABスクリプトは、フットスイッチ状態、ユーザインターフェイスボタン、および現在のタイムステップを用いて所望のモータ位置を計算し得る。発明のいくつかの実施形態に従うと、Simulinkブロック図は、PC/104上で0.001秒(1ミリ秒)の固定タイムステップで実行され得る。
【0169】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、脚毎のモータ246出力は、ランタイム前に発生する台形軌道から計算され得る。この軌道は、所望の作動レベルに対応する単位幅および可変ピーク高さ(たとえば4cm振幅のパルス、6cm振幅のパルス)を有する。ユーザの歩容の歩調は、多数のヒールストライク同士の間のタイミングから計算され得る。特に、歩容期間は、所定の歩数、たとえば先の20歩について記録されて平均が取られ得る。ローパスフィルタには20歩の移動平均が十分であることが分かった。この平均歩容期間を用いて、脚毎の1つの完全な歩容周期全体にわたって台形軌道をスケーリングすることができる。各脚は独立して取扱われ得、脚毎の波形は独立して計算され得る。いくつかの実施形態では、両脚が同一に取扱われ得、計算された同一波形が各脚に用いられ得る。
【0170】
ヒールストライク時、制御スキームはルックアップテーブルを用いて必要なモータプルを発生し得る。歩容周期(GC)の0〜40%の平坦軌道は遅延として作用し、足が地面に置かれてユーザの股関節が足上の位置に旋回すると、軟性外骨格スーツを弛んだ状態で保つ。40%で始まり、モータはケーブルを引込み、トゥオフが起こる62.5%GCで軟性外骨格スーツに最大レベルまで張力を印加する。保持期間後、モータは次に83%GCでケーブルをゼロまで解き、新たな周期用にリセットする。
【0171】
軌道は、モータ246、ギアボックス244、およびボーデンケーブル142の物理的性能によって制限され得る。軌道の下方勾配は、モータの最大スルーレートによって制約され得る。さらに、モータコントローラは、モータの最大加速度を2500回転/sec
2に、かつモータの最大速度を11500rpmに制限し、台形軌道の鋭利な角部を効果的に丸めてやや(〜3%)右にずらし得る。最後に、この軌道は、踵が最初に地面に触れた時に始まる足首位置対時間チャートに基づいて発生し得る。本システムで用いられるフットスイッチはトリガするために大量の圧力が必要であり、ゆえに、踵が地面上にありユーザの体重が足に負荷を加え始めるまでヒールストライクは検知されない。これは正常な歩容周期の2〜6%、最も多くは2〜3%のどこかで起こる。
【0172】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、ユーザインターフェイススイッチは、ドライブボックス223の外側に、ハンドヘルドリモート上に、または無線装置を介して設けられ、制御スキームが機能する態様を修正する。歩行スイッチの係合が外れると、制御スキームは任意に実行し続けてもよいが、ヒールストライク後はパルス信号を出力しない。各張力トグルは、台形軌道から調べられるモータ位置に対してオフセットを加減算する。オフセットは、張力トグルがどれほど長く押下げられるかに依存して、大きさが増加する。
【0173】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、力センサの値はデータログ記録され、台形軌道の大きさを調節するために用いられ得るが、所望のモータ位置を計算するためには用いられない。発明のいくつかの実施形態に従うと、力センサはフィードバックループに組込まれて、所望のモータ位置の代わりに、歩容周期の間中、所望の力軌道に従い得る。
【0174】
本概念のいくつかの局面に従うと、ボーデンケーブルの代わりにダイレクトラインケーブルが用いられ得る。ダイレクトラインケーブルは、アクチュエータから作動点までのフリーケーブル含み得る。これによって、2つの端点同士の間にケーブルと一直線の力が生じる。本概念の他の局面に従うと、マルチポイントケーブルシステムが用いられる。たとえば、マルチポイントケーブルシステムは、角度移行点を通って経路に沿って遠端に移動し、端を含む移行点のいくつかまたはすべてを通ってその長さに沿って力および変位を伝達する、アクチュエータ120からのフリーケーブルを含み得る。ケーブルの端同士の間の各関節の周りのモーメントは、フリーケーブルの移行点に対するそれらの場所に依存する。ケーブルまたはウェビングは、ケーブルが端を出るまでシールドされるボーデンケーブルとは異なり、移行点および着用者に対して摺動するように構成され得る。マルチポイントケーブルおよび/またはダイレクトケーブルは、ワイヤおよびフィラメントロープ、ウェビング、たとえば軟性外骨格スーツ材料、弾性要素(たとえばゴム)または任意の他の可撓性力伝達要素の1つ以上を含み得る。
【0175】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、テキスタイル系力センサを用いて、2点AとBとの間の織ファブリックウェビングの直線変位を測定することができる。この直線変位測定は織基板の性質(たとえば弾性性質)と組合されて、力測定が計算され得る。力は、点AおよびBによって形成され、かつファブリックが他のコネクタと出合う当該線の端点で終端する共線に沿って測定され得る。織ウェビングは一般に、典型的にリボン形態(たとえば長さ、幅、および厚み)で作られる強靭な耐久ファブリックを提供する。ファブリックの長さに沿って直線的に力を印加すると、ファブリックに伸び(歪み)が生じる。この伸びを測定すると、ファブリックに印加される力によって特定の歪み測定がもたらされるように、比較的一定であった。この性質を用いて、テキスタイル系力センサは、測定された歪み(たとえば約0.05〜5%範囲内の測定された歪み)に基づいて力を計算し得る。本概念のいくつかの実施形態に従うと、テキスタイル系力センサを用いて、1つ以上の外骨格スーツアクチュエータの制御を助けることができる。アクチュエータ位置測定および力変位プロファイルと組合された力測定は制御システムによって用いられ、動作が検出されフィードバックが提供され得る。これはさらに、(剛性測定を介して)スーツ要素の正確な位置を決定することを助ける。
【0176】
発明のいくつかの実施形態に従うと、テキスタイル系力センサを用いて、任意の活動時に軟性外骨格スーツ要素内の力を再コード化し、軟性外骨格スーツの特定の区域内の力を測定することによって展開を助け、関節角度を測定することによって負傷を検出し、制御またはデータ分析のために関節角度を検出することができる。
【0177】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、センサは軟性外骨格スーツ上のさまざまな場所に配置され得る。一局面において、表面ベースセンサが、接続要素(たとえば織ウェビングファブリック)または他の要素の長さに沿った2点において当該接続要素または他の要素に付着するか取付けられる。別の局面において、全表面センサが、接続要素(たとえば織ウェビングファブリック)または他の要素の区域上の2点において当該接続要素または他の要素に付着するか取付けられる。別の局面において、接続要素または他の要素にポケットが(織材料に)形成されるか織込まれ、センサがポケットに入れられる(ポケットの材料性質は力を計算する際に用いることが必要となる)。さらに他の局面において、センサがウェビング内に直接構成される。さらに他の局面において、(任意の種類の)1つ以上のセンサ要素を支える接続要素または他の要素は多層材料または複合材料であり、センサ(1つまたは複数)は多層または複合材料の層同士の間に内部配置される。
【0178】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、直線変位を測定するセンサがシステムで用いられ得る。好ましくは、センサは、現在のウェビングについて約0.05〜5%の範囲内の歪みを測定可能であり得る。中間歪み範囲を有する旧来の歪みセンサは一般に、0%〜10%の歪み範囲のセンサを含む。他のセンサは、大きい歪み範囲を有する超弾性センサを含む(たとえばその全内容が引用により本明細書に引用される国際公開第2013/044226号に開示されるような液体金属)。代替的に、低い歪み範囲を有する旧来の歪みセンサは、歪みセンサが取付けられる区域に非常に高い剛性を与えてウェビング歪みを低下させることによって用いられ得る。
【0179】
図15A〜
図15Bに一例として示されるような本概念のいくつかの実施形態に従うと、作動は、動作、特に歩行、走行およびジャンプを補助するように股関節に提供され得る。また、股関節は胴に近いため、胴装着アクチュエータまたは肩装着アクチュエータから股関節自体に力が直接伝達され得る。アクチュエータ(1つまたは複数)200は、(
図15Bに示されるように)腰ベルトまたはバックパックなどによって人に取付けられ得、アクチュエータ(1つまたは複数)および他の付属構成要素(たとえばパワーシステム等)がそれに隣接していてもよく、または代替的に後側、前側、もしくは両方に分散されてシステム質量を分散させてもよい。股関節を横切る力の印加は、アクチュエータ200の近端に取付けられるケーブル、ウェビング片、リボン等の引張要素(たとえば800)を用いて遠端で股関節を引張ることによって達成され得る。この引張要素にはシースが不要であるため、摩擦が非常に低くなり、ゆえにシステムの効率が高くなる。股関節が胴の近くに位置している1つの利点は、軟性外骨格スーツの脱ぎ着が容易に達成されることである。ユーザの衣類の上のバックパックまたはファニーパック構造上に位置するアクチュエータ、および引張要素は、体の外側に残り、これも衣類の外側にあるブレースで大腿にしっかり固定され、ゆえに大腿に対して容易に取付けるおよび取外すことができる低プロファイル装置を提供し得る。
【0180】
本概念の少なくともいくつかに従う軟性外骨格スーツ100は、アクチュエータユニットから伸びて股関節に取付けられている引張力を印加するある長さのウェビング、ストラップ、ケーブル、または別の他の手段(以後「リボン」と称する)800を有するアクチュエータユニットを含む。動作時、アクチュエータ200はリボンを後退させて股関節を伸展させる力を生じさせ、リボンを伸ばしてリボンを弛ませ得る。
【0181】
アクチュエータ200がリボンを後退させると、リボンは、リボンの角度変化のために股関節が屈曲すると、臀部領域に入り込む傾向がある。この構成による不快感を防止するため、いくつかの解決策が可能である。1つは、上記図の左、中央に示されるように、リボンをアクチュエータ端において体からある程度オフセットさせることである。これによって、リボンが臀筋に入り込む前に達することが可能な股関節角度が増加する。別の選択肢は、幅広リボン(たとえば2″)を有して、着用者に対する圧力を最小にすることである。臀部領域に低摩擦材料をさらに着用して摩擦を減少させ、体に接して動くリボンの快適さを増加させてもよい。リボンの長い長さにわたってシースを用いて、すなわちボーデンケーブルを用いて、リボンの動作から体を保護してもよい。体に対する圧力を減少させる代替手段は、大腿アタッチメントにおいてリボンの遠端をオフセットさせることである。これは、大腿ブレースに取付けられる剛体または半剛体構成要素を用いて達成され得、これは「スパー」として後方に伸び、大腿からのリボン接続点のためのオフセットを提供し得る。たとえば、股関節アタッチメントシステムの一実施形態では、ファブリック片が前部にベルクロを用いて大腿の周りにしっかり固定され得る。アクチュエータは幅2″のリボンを用いてこの大腿ブレースに取付けられ得、このリボンの上部は上向きに引張られ得る。大腿ブレースは、大腿の円錐形状のために、ユーザの脚を上げることが制限される。さらに円錐形状のために、大腿ブレースが下降することを防止するものはほとんどなく、したがって、リボンを上向きに引張るリボンに対する張力がない場合、大腿ブレースは脚を滑り落ちる傾向を有し得る。大腿ブレースは、腰ベルトに接続される他の要素によって、または他の手段によって上向きに保持され得る。
【0182】
いくつかの局面において、アクチュエータ200可撓性伝達要素(たとえばリボン、ウェビング、ケーブル、ベルト等)はユーザの臀部領域上を下方に伸び、大腿(たとえば大腿ブレース)に係合する軟性要素に直接的にまたは間接的に接続する。一局面において、剛体または半剛体スパーを用いて大腿後部からのオフセットを作り出すことができる。一例では、半剛体要素が大腿後部に接続され、リボンを介して半剛体要素の底部に力が印加されると、当該要素は大腿から外向きに曲がり、大腿からのオフセット(およびモーメント)を増加させる。これは、不使用時に体に接して潰れる低プロファイルスーツを作るのに、かつ大きい力が必要な時により大きいモーメントアームを作るのに有用であり得る。中間の力では、モーメントアームは中間位置にあり得る。軟性、可撓性、剛体、および半剛体要素のさまざまな配置を含む、各々が異なる剛性量を有する要素の多くの他の構成が1つのシステムに用いられ得る。再生目的のシステムの要素として、ばねおよび他の弾性要素が含まれてもよい。
【0183】
本概念の1つ以上の実施形態に従うと、アクチュエータ200は、制御システムからの制御信号に応答してリボンに係合して巻付くように適合されるモータ駆動ドライブプーリを含む。ドライブモータは、トランスミッションを用いてドライブプーリに接続され得る。トランスミッションは、ドライブモータからドライブプーリにパワーを伝達するタイミングベルトおよびタイミングギアまたは一組のギアを含み得る。代替実施形態では、ドライブシャフトおよび1つ以上のギアまたはタイミングプーリを用いてドライブモータをドライブプーリに接続し、所定レートでリボンに巻付けてリボンから解いて動作補助を提供してもよい。アクチュエータはさらに、リボンに係合し、アイドラに印加される力を測定するアイドラプーリを含み得る。たとえば1つ以上の歪みゲージによって与えられる力信号は、リボンの作動を制御するアクチュエータコントローラに送信され得る。動作を検出し、アクチュエータを制御して補助を提供するための付加的なセンサがユーザの股関節または他の関節に設けられてもよい。たとえば、股関節の屈曲は、ユーザが動き始めたという指標であり得る。
【0184】
本概念のいくつかの実施形態に従うと、上述のように、片脚または両脚に制御システムを設けて、アクチュエータを制御してセンサから信号を受信し、動作を検出してアクチュエータ力を調節し、当該力を動作に調和させることができる。
【0185】
本概念の少なくともいくつかの局面において、軟性外骨格スーツ100は多関節を作動させるように構成される。たとえば、アクチュエータ200によって作動されるプーリ224は、複数組のボーデンケーブル142を作動させて異なる関節(たとえば足関節、股関節)に補助力を別個に提供するように構成され、関節は、関節運動学を測定して制御システムにそのような関節運動学を報告するセンサ350と動作可能に関連付けられている。例示的なセンサは、各々の全内容が引用により本明細書に援用される国際公開第2013/044226号、国際公開第2012/103073号、国際公開第2012/050938号、および米国特許第8,316,719号に開示されている。さらに、本概念の局面のいずれかは、各々の全内容が引用により本明細書に援用されるたとえば国際公開第2011/008934号または国際公開第2013/033669号に開示されている材料であるがこれらに限定されない他の能動的に制御される材料をさらに組込んでもよい。一例として、開示される局面のいずれかに従う軟性外骨格スーツは、一例として、足関節、膝関節および股関節の1つ以上に配置されて(すなわちそれぞれの関節の両側に取付けられて)矢状面内の人間の生物学的関節回転を測定する超弾性歪みセンサを含み得る。結果として得られる軟性外骨格スーツは非常に軽量であり、費用効率が高く、容易に脱ぎ着できる。
【0186】
この軟性外骨格スーツは、少なくともいくつかの局面において、弾性および非伸長性ファブリックの組合わせ、または下肢の関節を横切る力を印加可能な材料で形成される。力は、第1の端が関節の上でスーツに固定され、第2の端が関節の下で固定されるケーブルまたは他の引張要素を収縮することによって生じる。本明細書中に説明されるように、収縮ケーブルまたは他の引張要素は、軟性外骨格スーツの非伸長性部材を介してさまざまなアンカー点に力を伝達して負荷を運ぶ。そのように構成される場合、軟性外骨格スーツによって、多関節に対して同時に作用することができる。有利には、軟性外骨格スーツは、1つ以上の関節、望ましくは3つの関節(股関節、膝関節、足関節)の関節角度を測定するように構成されるセンサシステムを含む。本明細書中の例は、歩行または走行などの活動時のユーザの脚にかけられるインパルスに特に向けられるが、本概念は、歩行または走行以外の動作、および脚以外の肢(たとえば腕)を含むことを理解すべきである。少なくともいくつかの局面において、マルチプーリおよびドライブボックスが腕運動に補助を提供する。たとえば、1−N個のプーリ(Nは整数)を起動するように構成される1つのドライブユニットによって多関節作動能力が提供され、ドライブユニットは、複数のプーリを直接的にまたは間接的に(たとえば1つ以上のギアを介して)駆動するように適合される1つの入力(たとえばシャフト)を含む。連動して動作する股関節屈曲および足関節屈曲などの関節については、2つのプーリが同時に活動状態になり得る。2つ以上のプーリを起動することは、プーリ同士の間の永久接続、または1つ以上のプーリに同時に係合するセレクタを介して行われ得る。
【0187】
図12〜
図14は、本概念の少なくともいくつかの局面に従う軟性外骨格スーツについて実現され得る制御スキームのさまざまな局面を示す。そのような制御スキームは柔軟性があり、特定のスーツおよび用途に所望通りに適合され得る。一例として、
図12の軟性外骨格スーツ100は、スーツ剛性および圧力を測定するための(国際公開第2013/044226号に開示されるような)複数の超弾性歪みセンサを含む。一例として、そのような超弾性歪みセンサは、非毒性の共晶ガリウムインジウム(eGaIn)の導電液体マイクロチャネルに埋込まれた伸縮性シリコーンゴム(たとえばEcoFlex 0030, SmoothOn; PDMS, Dow Corning社)シートを含み得、チャネルが変形すると、長さの変化に対応する電気抵抗の変化が生じる(これは次に関節の回転に関連し得る)。示されるように、超弾性歪みセンサは、監視する関節の角度変化を測定するために足関節、膝関節および股関節を横切って配置される。超弾性歪みセンサは、たとえば
図12に示されるように、リアルタイムのスーツ変形を測定するために能動的なスーツの力経路と平行して配置され得る。
【0188】
制御システムは、人間動作パターン検出アルゴリズムまたはルックアップテーブルを介して、検知した関節の動き(たとえば角度の絶対変化のみを見て、時間、速度および/または加速度に対する角度変化を見て、等)を、複数の予測行為、たとえば水平面の歩行、上り斜面の歩行、下り斜面の歩行、水平面の走行、上り斜面の走行、下り斜面の走行、階段を歩いて上がること、階段を歩いて下りること、屈みこみ、這い歩き、ジャンプ、跛行、一方の肢を他方の肢よりも好むこと、等の1つと関連付けることができる。この動作データに基づいて、制御システムは、(1)データをローカルな物理的記憶媒体に記憶し、(2)データをオンボード通信システムを介して別のローカルもしくはリモートデバイスに無線送信し、(3)データを有線接続(たとえば通信ケーブル)を介して別のローカルまたはリモートデバイス、オンボード通信システムを介したデバイスに送信し、および/または(4)データを用いてリアルタイムの力補助制御を提供し、スーツを着用者の活動状態および環境にシームレスに適合させ得る。たとえば、軟性外骨格スーツ測定関節変形が、快適さ(たとえばユーザの好み)および/またはスーツの機械的能力考慮事項に基づいて規定される閾値よりも高い場合、制御システムは、これらの変形が所望の運転領域内に再び収まるまで補助レベルを自動的に減少させるように構成され得る。さらに、軟性外骨格スーツは、能動的なウェアラブルな外骨格と組合わせて用いられ得る。そのような実現では、測定データは、無線でまたは有線接続を介して外骨格のコントローラに送信され、外骨格を補助レベルに適合させることができる。さらに、軟性の超弾性センサを用いて着用者と軟性外骨格スーツとの間のインターフェイスの任意の点に対する圧力を測定し、これを用いて、快適さ考慮事項に基づいて補助レベルをオンライン適合させることもできる。
【0189】
力センサを用いてケーブル内の張力を測定する場合(たとえばインラインセンサ)、付加的な制御スキームが軟性外骨格スーツと共に用いられ得る。軟性外骨格スーツは、歩行の生体力学のため、受動的に張力を生じさせる。所与の脚について、この張力は、軟性外骨格スーツがどのように調節されるかに依存して歩容周期の約15〜35%で発生し始め、脚が地面から蹴出されると上昇する。この上昇力を制御システムへの入力として用いて、いつおよび/またはどのように(たとえば力プロファイル、力タイミング等)軟性外骨格スーツが作動されるべきであるかについての情報を与えることができる。
【0190】
この情報からの1つの制御スキームは、まず、水平面歩行時にピーク力が一定の閾値の大きさ(たとえばF
peak)である点までスーツに張力を印加することを含む。このようにスーツに事前に張力が印加されると、ケーブル上の力が監視され、ケーブル上の力は歩容周期の同じ点で閾値を予測通りに超えるため、当該力を用いて、ユーザが歩容周期のどこにいるか、またはこれからどこにいることになるのかを予測することができる。これに関して、
図18は、歩容周期中の軟性外骨格スーツ100の作動のタイミングと、2つの条件下、すなわちスーツに張力を印加した場合800およびスーツを作動させた場合810の対応するスーツ力とを示すグラフを示す。張力印加グラフ800は、スーツが一定の長さに設定された後、歩容周期の間中その長さが固定維持されることを意味する。作動グラフ810は、スーツ内の張力が、足関節においてボーデンケーブル等と共にスーツを引張ることによって変化することを意味する。グラフ800において、スーツ内の張力は、(
図9Dに示されるように)関節の異なる動作のため歩容周期の間に変化する。
図19は、作動した場合810について、ケーブル位置およびスーツ力の相対タイミングを示し、より特定的には、(歩容周期のパーセンテージとしての)歩容周期中の軟性外骨格スーツの作動のタイミングおよびケーブル位置(グラフ820)に対する対応のスーツ力(グラフ830)を示すグラフを示す。
【0191】
図18のグラフにおいて、張力は歩行周期の40%で50Nを超え、これは多くのステップにわたって反復可能である。この力は作動が各周期を開始する前に生じ、ゆえにこの情報は、ケーブルが作動されるか否かにかかわらず得ることができる。ゆえに、閾値力F
threshに接近する(または任意に等しくなるか超える)作動ケーブル内の力を制御システムが測定する
図18の例について、制御システムは、歩容周期中の着用者の位置のこの情報を利用して1つ以上の行動を取る(たとえば即座にまたは遅延後に作動させる)ことができる。たとえば、コントローラは、力が2つの連続するステップについて閾値を超える時同士の間の経過時間を見ることによって、またはいくつかの連続するステップに関して平均を取ることによって、人の歩容期間の推定を得ることができる。
【0192】
さらに、閾値力の大きさを超えることを示す閾値ケーブル力の大きさおよび/またはフラグについてのこの情報から、コントローラは、人がその時に自身の歩容のどこにいるかも知る。たとえば、コントローラは、歩容周期の40%でケーブルに対する位置制御プルを開始するように設定され得る。この場合、力が歩容周期の40%に対応する閾値を超えたことをコントローラが検出するたびに、コントローラは即座にプルを開始し得る。または、コントローラが歩容周期の43%で位置制御プルを開始することになっている場合は、コントローラは、歩容期間を用いて歩容周期の40%と歩容周期の43%との間の遅延を演算し、そのコンピュータ遅延の経過後にのみプルを予測通り開始する。
【0193】
さらに、人が自身の歩容周期のどこにいるかのより正確なアセスメントを得るために、コントローラはさらに経時的に張力を監視し、張力が異なる力閾値を超えるいくつかの点を見てもよい。一般に、力対時間のパターンは、人の歩行速度に依存して変化することになる。力対時間曲線の勾配を用いて、人の歩行速度(または歩容期間)を推定することもできる。ピーク張力は人の歩行速度の関数でもあり、張力は歩行速度が増加するにつれて減少するため、勾配を用いて、人が歩容周期のどこにいるかを予測することもできる。要約すると、コントローラは、当該推定を行うように構成され得る。
【0194】
(歩容、歩容期間中の現在の%)=f(ケーブル力(t)、ケーブル力(t−1)、…、ケーブル力(t−N))
式中、f()は関数であり、Nは経時的にケーブル力を追跡するために用いられるサンプルの数である。Nは、力センサのサンプルレートに依存して、1まで低くてもよく(勾配を推定するのに2つのサンプルを使用)、または100〜1000まで高くてもよい。勾配の良好な推定を得るため、力は歩容期間の約5〜10%の期間について調べられるべきである。すなわち、我々の歩容期間が1秒である場合は、勾配を推定するために、コントローラは現在時間から現在時間の0.05または0.1秒前に戻ってサンプルを用いるべきである。
【0195】
さらに、ケーブル(たとえばボーデンケーブル142)またはケーブル(たとえば多関節起動軟性外骨格スーツ)を位置プロファイル(歩容の%)を用いて引張る(および解放する)代わりに、他の制御選択肢もある。モータは、一定のピーク力に達するまで、何らかの特定の速度で引張ってもよい。モータはさらに、足関節における力が何らかの所定の力軌道に従うように引張ってもよい。モータはさらに、歩行の生体力学によって減少する力をモータが検出するまで何らかの特定の速度で引張ってもよい。歩行の生体力学および軟性外骨格スーツの変化する長さのために歩容周期の15〜35%で張力が軟性外骨格スーツおよびケーブル内で増加するのと同様に、軟性外骨格スーツおよびケーブル内の張力はさらに身体構造のために歩容周期の約60〜65%で減少し、軟性外骨格スーツが弛む。特に、ケーブルが固定長に保持されているか、または適度なもしくは低いレートでモータによって引張られている(および長さが減少している)としても、歩容周期の約60〜65%でリフトアップする足関節および膝関節の屈曲によって軟性外骨格スーツは弛む。生体力学によるこの力の減少は、ケーブルを再び解放して送り出すべき時のトリガとして用いられ得る。その点で、ケーブルは何らかの特定の速度で解放されるか、または一定の力軌道にに従って名目張力印加点に戻るべきである。
【0196】
一般に、ケーブル(1つまたは複数)に張力を印加して解放する処理は、力軌道、位置軌道、速度軌道、これらの何らかの組合わせ、または何らかの他のスキームに従って行われ得る。
【0197】
上述のように、ウェアラブルな歪みセンサ(たとえば液体金属導体、非導電伸縮性ファブリックに組込まれた導電繊維等を含む超弾性歪みセンサ)または他の種類(1つまたは複数)のセンサ(たとえば慣性系、異なる肢部分に取付けられた複数のジャイロスコープ/加速度計から測定される角速度等)を用いる人間生物学的関節角度のリアルタイム測定を用いて、
図13に表わされるように、日常のまたは現場の仕事を行う際に制御システムに軟性外骨格スーツおよび/または補助外骨格を通知することができる。着用者について、または着用者と同様の母集団(たとえば解剖学的に同様)について好適なベースラインが確立されると、これらの歪みセンサ(または位置データもしくはその導関数を提供する他のセンサ)によって提供される情報を用いて、歩行、階段の昇降、斜面歩行、屈みこみ、這い歩き、停止、ジャンプ等の異なる人間動作を分類することができる。人間動作のリアルタイム分析は、人が実世界の用途で(すなわち研究所外で)ウェアラブルな外骨格または補助装置を着用している時に極めて重要である。これらのさまざまな活動を行うために必要な補助は完全に異なり、歩行に効く方策は、ユーザが同じ作業(斜面歩行)の変形を行うか他の動きを行う場合にユーザに有益とならず、ユーザの動作を不安定にすることすらある。本概念の少なくともいくつかの局面に従うと、軟性外骨格スーツに組込まれるセンサ(たとえば歪みセンサ、圧力センサ、ジャイロスコープセンサ、加速度計等)が用いられて1つ以上の関節回転または肢動作(たとえば股関節、膝関節および/または足関節の回転)が測定されるか、または当該センサが用いられて1つ以上の関節回転または肢動作の判断が可能になり、この情報は、軟性外骨格スーツの着用者についての参照データ(たとえば着用者ベースラインデータ)または同様の特徴を有する母集団についての参照データ(たとえばルックアップテーブル、アルゴリズム等)と比較されて、動作の運動学および/または他の特性が判断される。判断された動作(1つまたは複数)は次に軟性外骨格スーツ制御システムによって用いられて、オンボードシステム(たとえば単関節種類についての作動時間および/または大きさ、複数の関節種類についての作動時間および/または大きさ等)に影響を与え得るか、またはローカルもしくはリモート外部システム(たとえば着用している外骨格)と通信するおよび/または影響を与え得る。ゆえに、得られた人間動作(1つまたは複数)の分類を用いて、リアルタイムで更新して着用者がどの動作(1つまたは複数)を行っているかについて制御システムに通知する状態機械を規定することができる。
【0198】
さらに、複数のユーザ(たとえば兵士の分隊)同士の間で複数の軟性外骨格スーツが展開される場合、複数の軟性外骨格スーツからの動作データはリアルタイムで1つ以上のローカルまたはリモート外部システムに通信され、動作データが分析され(単一で、または着用者毎の位置データ、呼吸、心拍数等他の測定データと組合わせされて)、総体として、集団の動作およびそのような動作の特性が判断され、推定値からの偏差の原因が推測され、訂正行為が開始されるか、または動作のそのような特性に応答して適切と見なされる他のローカルまたはリモートシステムを従事させる。一例として、兵士の分隊が道路に沿って歩行中であると予想され、兵士のGPSデータが兵士が道路の両側に移動していることを示した場合、GPSデータだけでは兵士が溝に避難しているのか、または単に車に道を開けているのかが示されない。しかし、同じGPSデータが、仮定される腹臥位または半腹臥位と組合わされた各兵士の素早い動作を示す情報と組合わされると、リモート制御システムにリアルタイムで送信されるそのような情報は、分隊が敵に攻撃された可能性があるという警告を自動的に開始することができ、近くの資源に関するデータを遠隔のまたは現場の適切な意思決定者に自動的にルーティングすることができる。ゆえに、軟性外骨格スーツデータは、個々のユーザについて軟性外骨格スーツ制御システムによって利用可能であるだけでなく、1つのチャネル(たとえば1つの軟性外骨格スーツ)または複数のチャネル(たとえば複数の軟性外骨格スーツ)からのデータを制御入力として利用し得る外部(コマンドおよび)制御システムによっても使用可能である。
【0199】
センサデータの上述の使用に従うと、そのようなセンサデータをさらに用いて、歩容期、スピードおよび振幅などのユーザの歩容についての情報を軟性外骨格スーツ制御システムに提供することができる。これらのパラメータによって、アクチュエータ(1つまたは複数)200によって歩行時にユーザの生物学的関節に供給される力プロファイルをリアルタイムで適合させることができ、補助の効率向上につながる。一例として、センサデータのそのような利用によって、不要となる上述のフットスイッチセンサなどの他のセンサを無くすことができる。
【0200】
図14は、検出された軟性外骨格スーツ着用者動作に基づいて軟性外骨格スーツ補助を変更するように適合される1つの例示的な高度制御アーキテクチャの例を示す。異なる動作を行う間に各関節が必要とする補助力は完全に異なるため、制御システムは、異なると考えられる活動時にユーザに適切な補助力を提供するように構成されるべきである。
図14では、
図68〜
図69に関連して上記に全体的に説明されたような人間動作パターン認識アルゴリズム出力が、制御システムに対して、ユーザに供給すべき基準軌道力を決定するように通知する。人間は、傾斜地形の歩行、走行等の異なる動作を行う時に自身の肢の生物学的インピーダンスを適合させる。入力(F
Ref)として力を用いて位置に基づくアドミッタンス制御を実現すると、内側位置制御ループが動的および摩擦成分を補償するという条件で、作動時にユーザが感じる仮想インピーダンス(慣性、減衰および剛性)(F
suit)を規定することができる。ゆえに、オンボード軟性外骨格スーツセンサを用いると、検知動作をアドミッタンス制御アーキテクチャと組合わせて利用し、
図14に示されるように、ユーザの動きに基づいて軟性外骨格スーツをユーザと働くように適合させ、より自然で効率的な作動を提供することができる。人間動作パターン認識を用いて、能動的な外骨格の補助力を変化させ、ユーザに供給する仮想インピーダンスを変化させる。
【0201】
軟性外骨格スーツ100、特に正常なおよび上り坂/下り坂歩行の双方の間に股関節伸展を補助するように構築されるシステム(たとえば
図15A〜
図15Bの軟性外骨格スーツ参照)に戻って、
図16は、軟性外骨格スーツが歩容周期の約0%から約25%の間に作動しており、歩容周期の約25%から約75%の間は作動しておらず、歩容周期の約75%から約100%の間に再び作動している水平歩行時の股関節トルクを示す。正トルクは股関節伸展(作動に関連する曲線の部分)に対応し、負のトルクは股関節屈曲(非作動に関連する曲線の部分)に対応する。そのような補助、位置に基づく制御、および力に基づくアドミッタンス制御を提供する際に2つの制御スキームが有用である。
【0202】
位置に基づく制御に関して、正常歩容時、ヒールストライクが起こる前に股関節伸展が始まる。位置に基づく制御スキームは、そのような特性を考慮する必要がある。正常歩容時のステップ周波数に関する情報を得るために、フットスイッチを用いてヒールストライクを検出する。前回のヒールストライクの時間から最後のヒールストライクの時間を引くことによって1ステップの時間が測定される。この情報は次にバッファに記憶され、これは結果的にステップ周波数を含む。バッファに記憶されたステップデータ、またはそこから得られるデータを平均することによって、最後のヒールストライク事象に特定の時間を足すことによって次のヒールストライクが予測され得る。その文脈において、位置制御とは、システム時間が次のヒールストライクの予測時間に達すると固定軌道がリプレイされることを意味する。位置コントローラを異なるスピードに適合させるために、固定軌道の時間スケーリングがなされ、つまり、軌道のピークは決して変化しないが、モータがその最大に達する時間は測定されたステップ周波数に依存して変化し得る。
【0203】
図17は、力プロファイル、モータ位置およびフットスイッチ信号の曲線を示す、地表面歩行時の記録データの抜粋を示す。曲線705から、モータは、曲線710によって示されるヒールストライクが起こる前に回転し始めることが分かる。スケーリングされたモータ軌道を再生することによって、曲線715によって示されるように、対応する力が発生する。なお、当該力はケーブル内の力であり、実際の股関節モーメントではない。そのような位置に基づく制御の主な不利点は、軌道を再生して所望の力を加えるためにシステムに少なくとも少し事前に張力を印加しなければならないことである。そうでなければ、システムは主に弛んだケーブルとなり、印加力が低下してしまう。
【0204】
力に基づくアドミッタンス制御に関して、力に基づく制御を有利に用いて股関節動作を追跡することができる。ケーブル内に若干の(<5V)張力を常に有することによって、コントローラは股関節動作に従うことができ、これによって位置に基づくコントローラの主な不利点が取除かれる。位置に基づく制御は印加モーメントおよびユーザの補助について良好な結果を示したため、システムの高度コントローラとしてアドミッタンス制御が選択される。モータは依然として位置制御され、これが内側制御ループを成形する。効率的な位置コントローラを開発することによって、慣性および摩擦などの物理的なシステム性質を無視することができる。外側アドミッタンス制御ループを追加することによって、システム挙動をシミュレートし、それに応じて物理システムに成形することができる。コントローラ設定点、所望値、および誤差は今や、その特定のケースにおける力である。
【0205】
股関節伸展の正確なトルクプロファイル(
図16参照)に従うために、最初にフットスイッチを用いてコントローラを同期させる。位置コントローラについての原理とまったく同じ原理が用いられる。アドミッタンスコントローラを用いることによって股関節動作を追跡すると、システムはフットスイッチなしでも働くことができる。フットスイッチは、ヒールストライクが起こる時間のみを提供可能である。同様の情報は、モータエンコーダを読出し、伸展が屈曲に変化する点をマークすることによって得ることができる。その特定の点を知ることによって、フットスイッチを用いるための原理と同じ原理を適用することができる。上述のように、モータエンコーダ信号を用いて股関節角度を推定する。しかし、コントローラを歩容と同期させるのに必要な唯一の情報は伸展と屈曲との変化であるため、正確な角度を知る必要はない。
【0206】
少なくとも上記に鑑みて、異なる活動を行う際に人間の生物学的関節に供給されるパワーを最適化するさまざまな非限定的な戦略を、
図20A〜
図34Bを参照して以下に述べる。
【0207】
ヒト被験者実験によって、発明者らは、軟性外骨格スーツアクチュエータ(1つまたは複数)によって着用者に供給されるパワーの観点で、異なる補助的戦略の性能を評価した。旧来、補助的戦略は予め定義され、歩容パーセンテージの関数としてのみ適合するため、それらは特定の歩容スピードおよび歩調にスケール変更される。これによってある程度の適合が保証されるが、装置から着用者への正のパワーの最適な供給は確保されない。
【0208】
実際、そのような方法は、生理学的なステップ毎の変動性の原因とならず、かつ、不正確なタイミングのために、着用者に供給される正のパワーの低下、および生物学的構造による負のパワー吸収の低下をもたらし得る。
【0209】
本概念に従う軟性外骨格スーツ制御システムの少なくともいくつかの局面において、関節角速度および加速度は1つ以上のセンサによって測定される。軟性外骨格スーツ制御システムは、印加力によって着用者の生物学的関節への正のパワーの増大がいつもたらされるかをリアルタイムで推定し、この情報を用いて、必要な力の印加をトリガすること、および印加力を適合的に修正して命令力プロファイルを必要に応じて修正することの両方を行う。このオンライン演算によって、歩容周期の正しい瞬間に正のパワーのみが供給されることが確実になる。また、ステップ毎の変動性の理由も完全に説明される。
【0210】
図20Aは、ユーザの履物に取付けられた(たとえば示されるようにブーツに取付けられた)ジャイロスコープを利用する制御システムの例を示す。
図20Bは、歩容(%)の関数としてのジャイロ速度(V)のプロットを示す。ジャイロスコープからの出力信号は制御システムによって用いられ、肢の角速度を推定し、関節スピードがいつ正であるかを判断する。関節スピードが正であると判断されると、または制御システムが関節スピードが正になると予測する時点において、制御システムは、関節へのパワー増大をもたらす関節への正の力の供給を開始するように軟性外骨格スーツアクチュエータ(1つまたは複数)200に指示する。
【0211】
人間の歩行運動学および動力学は、作動を供給する際に、かつ(たとえば
図2Bに示されるようにバックパック内に異なる重量を運ぶ)異なる負荷下でユーザ毎に若干異なるため、発明者らは、リアルタイムのパワー推定に基づいて、さまざまな異なる被験者、活動および動作状況により良く適した結果的なシステムおよび方法を提供するための最適な補助軌道を求めようと努めた。
【0212】
図21A〜
図21Bは、
図20Aに示されるジャイロスコープの実施形態および
図20Bに全体的に表わされるジャイロスコープデータについてのパワー計算を示す。黒破線900は、軟性外骨格スーツ100の着用者が軟性外骨格スーツからの補助なしで歩行している時に生物学的関節によって吸収/生成されるパワーを示す。線910は、軟性外骨格スーツの着用者が軟性外骨格スーツからの補助を受けて歩行している時に生物学的関節と能動的な軟性外骨格スーツとの組合わせによって吸収/生成されるパワーを示す。線920は、補助を受けて生物学的関節によって吸収/生成されるパワーを示し、線930は、能動的な軟性外骨格スーツから関節に供給されるパワーを示す。
【0213】
図21Aに示されるように、作動軌道によって、正常歩行(弛み前)に比べて生物学的関節によって吸収される負のパワー(能動足関節パワー)が減少するため、生物学的構造の効率が低下する。
図21Bに示されるように、より最適な作動軌道によって、正常歩行(弛み前)に比べて負のエネルギー部(能動足関節パワー)が保存され、歩行時に必要な正のパワーが減少する。全体的に、
図21Bに示される第2の作動軌道は、1つの歩容周期について全体のエネルギコストを減少させたため、より最適である。
【0214】
従来の剛体外骨格とは異なり、軟性外骨格スーツは可撓性を有し、着用者が1つ以上の活動(たとえば歩行)に従事する際に経時的に変形するか動く可能性がある。これは、軟性外骨格スーツが位置制御スキームを用いて制御される場合に問題を提起する。この位置コントローラに起因する補助プロファイルは、経時的に、かつ異なる動作毎に対応して修正されるからである。ピーク力および作動前に受動的に発生している力を含む、力プロファイルの主要な特徴を監視することによって、補助位置プロファイルを、経時的に、かつ異なる動作毎に力を一定に保つように自動的に調節することができる。
図22Aは、30Nの目標事前張力が望まれており、200Nのピークケーブル力が踵に印加される例を示す。線940は着用者に対する軟性外骨格スーツの初期位置を表わし、線960は軟性外骨格スーツの初期位置についての初期力を表わす。初期力は、歩容周期の約40%の直前に開始して印加される。人間−スーツインタラクション力の連続監視からのフィードバック(
図22B)によって、ベースライン位置およびそのピークを増加させることによって軌道が修正される(線950)。線970は、着用者に対する軟性外骨格スーツの修正または最終位置における軟性外骨格スーツの位置についての最終力を表わす。初期力(線960)から最終力(線970)への上向き矢印は、
図22Bに表わされる制御スキームに従って軟性外骨格スーツの差動運動の理由を説明するための初期力から最終力への印加力の修正を表わす。最終力は、歩容周期の約20%の直後で開始して印加される。補助プロファイルはさらに、軟性外骨格スーツの着用者の異なる動作(歩行、ジャンプ等)の検出に基づいて有利に修正される。
【0215】
図23A〜
図23Bは、
図20Aに一例として示されるような軟性外骨格スーツに組込まれたジャイロスコープからの情報を利用する軟性外骨格スーツの力に基づく位置制御に関するグラフを示す。ジャイロスコープで関節角速度を測定することによって、制御システムは、(たとえば
図2Aに示されるように履物接続要素130への)印加力によって着用者の生物学的関節への正のパワーの増大がいつもたらされるかをリアルタイムで推定し、この情報を用いて、命令力プロファイルの形状をトリガすることおよび修正することの両方を行うことができる。軌道が先に適用されている場合、これは、
図21A〜
図21Bに示したように生物学的構造によって吸収される負のパワーの減少を示唆している。
【0216】
足関節を補助するために、ジャイロ信号によってトリガされる力に基づく位置制御が実現され得る。制御システムは、軟性外骨格スーツ100に事前張力印加の力を加えて、スーツの能動性質を利用する。
図23Aは、150Nの所望のピーク力を用いるヒト被験者のテスト実験の際の、1標準偏差内の平均足関節作動プロファイルを示す。示される制御システムでは、制御システムは歩容周期の36%で25Nの事前張力に達するように設定され、スーツ張力はゆっくりと増加して歩容周期の47%で始まる足関節補助力に至り、スーツ構造および歩行運動学の両方を容易にするように適合されている。歩容周期の47%で、アクチュエータ(1つまたは複数)200は、歩容周期の約56%で150Nの(この例における)所望のピーク力に達するのに必要な力軌道を出力し、遊脚期中に肢の動作に干渉するのを回避するために歩容周期の65%で事前張力位置に比較的迅速に戻る。
【0217】
図23A〜
図23Bの制御システムでは、ジャイロは、ボーデンケーブル142を介することなどによって、目標の肢および関節(たとえば足関節モーメント)に対するアクチュエータの引張りのタイミングを制御する。足関節活動の例では、純粋な正のパワーを達成するために、アルゴリズムに従った引張りは、軟性外骨格スーツの着用者の踵にに取付けられたジャイロによって検出可能な足関節足底屈運動で開始すべきである。このアルゴリズムの利点は
図23Bのパワーレートプロットに見ることができ、このプロットにおいて、足関節の供給パワー(ワット)(曲線1000)はこの作動戦略についてほぼ純粋に正である。
図23Bは、ケーブルに対して外骨格スーツによって発生するパワー(「全パワー」)を示す。このパワーの一部は関節に供給され(「供給パワー」)、一部はスーツに行くかスーツから来る(「スーツパワー」)。足関節に供給されるパワー(「供給パワー」)は歩容周期全体にわたってほぼ常に正であり、負のパワーを吸収することによって歩容に悪影響を与えないことが分かる。
【0218】
図24A〜
図24Bは、ステップ遅延なしで歩容に同期補助を供給する制御方法(ゼロステップ遅延制御)を示す。移動を補助するウェアラブルシステムは典型的に、ヒールストライクを測定することによってそれらの制御アルゴリズムの時間を調整する。したがって、現在のステップ内の歩行時に歩容%を計算するためには、アルゴリズムには最後の3〜5歩の平均が必要である。この事実によって、ユーザがスピードおよび/または歩容および/または活動を変更する必要がある、でこぼこのまたは平坦でない地形を歩行している(たとえば斜面歩行、ジャンプ、屈みこみ等)時の異なる運動同士の間の移行が困難になる(すなわちスムーズでなくなる)。
【0219】
歩行を受動的に補助可能な本明細書中に開示される軟性外骨格スーツの固有の性質を利用することによって、制御システムは、ステップ遅延なしで歩容に同期補助を供給することができる(ゼロステップ遅延制御)。言い換えれば、このゼロステップ遅延制御では、以前のステップに関する情報が補助プロファイルを生成可能でなくてもよい。スムーズな移行を確実にするために、コントローラは、ヒールストライクに加えて、受動的に発生している人間−ロボットインタラクション力を監視して、単一の歩容周期中に複数のデータ点を得て、事前張力の力の所望のレベル(通常20から50N)を用いて補助的な能動プロファイルをトリガする。
【0220】
所与の脚について1つのヒールストライクから次のヒールストライクに及ぶ歩容周期の約30〜60%の間、腓筋および腱が体を上前方に持上げ、股筋肉および靭帯が脚を前方に振り動かす。最初に、置かれた足の上で体の質量中心が下向きに前のめりになると、脹脛および股関節が伸びることによってパワーを吸収する。歩容周期の約50%の後、腱および靭帯が弾性的に反跳すると、この吸収パワーは体に戻される。脹脛および股関節の筋肉は能動的に収縮し、この戻されたパワーを付加的なエネルギで補う。軟性外骨格スーツ100はこのようにしてもパワーを吸収および伝達し、アクチュエータ作動部材(1つまたは複数)は初期は固定長に保持され、体が前のめりになると軟性外骨格スーツ材料自体が伸びてスーツ下の組織が圧縮する。これはスーツ内に張力を引起こし、体からパワーを吸収する。ゆえに、多関節性の軟性外骨格スーツアーキテクチャは、体が印加すべき力に対して正確なポーズにあるときにのみ軟性外骨格スーツが緊張状態になるという点で、固有の性質を有する。受動的に発生している人間−スーツインタラクション力からの情報を用いて、所望の補助を供給することができる。
【0221】
図24Bは歩容周期の0%で起動するフットスイッチを示しており、歩容周期の36%で人間−スーツ力が印加される。
図24Aに示されるように、補助の起動は歩容周期の36%で起こり、その前に、スーツは(歩容周期の約20%から)張力を最大で約25Nの閾値まで受動的に増加させている。補助プロファイルは歩容周期の36%に続いて増加し始めるとして示されており、力は歩容周期の約54〜55%でピークの200Nに急激に増加し、その後急激に低下する。
【0222】
補助が提供される時の歩容%は以下のように計算される。
【0224】
初期の考慮事項として、ジャンプ、屈みこみ、または這い歩きなどの動作は同じ受動力を発生せず、したがって補助プロファイルをトリガせず、システムを完全透明モードに維持するため、着用者に干渉しない。
【0225】
制御アルゴリズムは以下のように働く。
第1に、制御システムは、ヒールストライクセンサまたはヒールストライクに関する情報を提供する他のセンサを介してヒールストライクを検出し、受動的に発生している力が特定の閾値(たとえば25N)に達するのを待つ。第2に、式(1)を用いてステップ内の歩容(%)が計算される。第3に、制御システムは歩容(%)に基づいて位置補助プロファイルをトリガする。第4に、制御システムはGait
av=36%における事前張力の力および当該ステップのピーク力値を監視する。第5に、制御システムは、所望の力を確実に実現するために補助位置プロファイル初期および最大振幅を補正する(位置に基づく力制御方法)。したがってこの制御方法は、ヒールストライクおよび受動力閾値現象を検出することのみによって、適時の同期した補助プロファイルを供給することができる。
【0226】
複数のステップにわたって、補助の量、事前張力および事前張力事象のタイミングは、ヒールストライクおよび最後のN歩の平均ステップ時間を用いて平均歩容%(Gait
av)を更新することによって更新され得る。
【0227】
したがって、歩容パーセンテージ推定および補助が両センサ(たとえば両フットスイッチ)からトリガされる力に基づく位置制御が提供される。制御位置プロファイルは、力に基づく位置制御を用いて受動的な事前張力レベルおよびピーク力を補正することによって適合される。平均歩容%(Gait
av)はヒールストライクを用いて計算される。最大位置プロファイル適合は1mm/ステップであり、ユーザが両フットスイッチからの正しい信号シーケンスを用いる時しか起動されないため、これは、動作同士の間の移行またはランダムなステップを取る際に、達成される力に大きく影響しない。結果によると、この制御は、障害物回避、ジャンプ、急な停止等の異なる事象についてロバストに働く。
【0228】
1つのセンサ読取が歩容周期の0%の後および歩容周期の36%の前に起こり、スーツ張力が第2のセンサとして使用可能である限り、センサの他の組合わせをゼロステップ遅延制御とともに用いることも可能である。
【0229】
本概念の他の局面に従うと、制御システムは、スーツ圧力監視に基づいて力プロファイルの自動調節を提供するように構成される。一例として、センサが軟性外骨格スーツ100に組込まれて、ユーザと力を支持する体のいくつかの主要な区域における人間との間の物理的インターフェイスにおける圧力レベルを測定することができる。軟性外骨格スーツ100のコントローラ(1つまたは複数)(たとえばプロセッサ(1つまたは複数)250)は、腸骨稜などの骨ばった区域を含むがこれらに限定されない1つ以上の異なる区域における圧力をリアルタイムで監視し、ピーク力および/または位置プロファイルを調節して、ユーザが感じる圧力を、ユーザの快適さに合わせて任意にユーザが構成可能な特定の範囲内に維持する。ゆえに、人間の1つ以上の主要な区域における軟性外骨格スーツインターフェイスへのリアルタイムの圧力の測定を用いて、快適さを確保することができる。
【0230】
図25は、着用者の異なる活動および生理学的状態に適合するように構成された、本概念の少なくともいくつかの局面に従う、軟性外骨格スーツ100の制御システムを示す。一実施形態では、
図25の制御システムは、低レベル歩容補助制御(低レベル歩容補助1050および低レベル外骨格スーツコントローラ1040によって表わされる)と、高レベルヒューマンアウェアネスエンジン(高レベルアクティビティ/アウェアネスエンジン1055、生理学的および運動学的信号処理1032、および補助力プロファイル生成1034によって表わされる)とを含む多層化制御アーキテクチャを利用する。低レベル軟性外骨格スーツコントローラ1040は、2つの主要な測定値、すなわちスーツ張力状態(
図25の「スーツ張力センサネットワーク」(3)によって提供される)および歩容運動学(
図25の「埋込み型ソフト運動学的センサネットワーク」(2)によって提供される)によって通知される。スーツ張力センサネットワークは、受動的な運動学に基づく張力情報を提供し、これは足関節および股関節で測定される張力パターンと組合わされて、歩容副期の検出を可能にする。これはたとえば、これらの複数の張力信号と歩容期のタイミングとの関連付けを探し出そうとするパターン認識および機械学習法によって達成され得る。
図25のセンサ(1)〜(3)からの情報は、有利に、しかし必ずとは限らないが、慣性計測装置(IMU)またはインソール圧力などの他の冗長センサからのデータとともに処理され、ロバスト制御(たとえば摂動およびスピード変化に対してロバスト)を確実にする。
【0231】
多関節低レベル制御戦略は、各関節において局所的に精密な制御を行うことなく制御され得る減少したパラメータセットを提供し、むしろ、制御は全関節にわたって互いに最適化される。これによって、筋肉群毎の補助のレベルが歩容の歩調、歩幅、関節角度オフセット(斜面歩行による)、および他の関節レベルの変数に対してロバストであることが確実になる。これによって、筋肉群毎の歩容のエネルギ関連段階(たとえば水平歩行時の足関節の前方推進、上り坂歩行時の股関節伸展の初期)のみの間における適時の補助供給が確実になる。
【0232】
高レベルアウェアネスエンジン1055は、全身センサネットワークからのデータを分析することによって、ユーザの生体力学的および物理的な応力状態を監視する。信号パターンを分析することによって、知的な活動−適合アルゴリズムが、低レベルコントローラによって生成された補助を、異なる歩容および活動(たとえば、水平、上り坂および下り坂歩行、這い歩き、および走行などであるがこれらに限定されない、兵士が典型的な任務中に経験する異なる歩容および活動)に動的に適合させる。アクティビティエンジンはさらに、軟性外骨格スーツ100の着用者が一時的な段階にあるのか、または非歩容運動(這い歩き、屈みこみ等)を行っているのかを検出することができ、これによって軟性外骨格スーツ制御は「超警告」モードになり、必要であればすぐに補助を開始することができる。ゆえに、軟性外骨格スーツ制御システムは、着用者の動き(または対応する動きの欠如)の状態を連続的に監視し、または高頻度で監視し、ユーザの要求に基づいて補助の量を適合させ、着用者が従事している1つまたは複数の活動に合わせて補助の量を修正する。
図25の高レベルアクティビティ/アウェアネスエンジン1055内に示されるように、兵士は超警告状態(左)、歩行(中)および降下(右)で示されている。
【0233】
さらに、上述の超弾性センサなどの運動学的および圧力検知用のソフトセンサは、上肢および/または下肢測定のために軟性外骨格スーツ材料(たとえばファブリック)に組込まれてもよい。代替的に、軟性外骨格スーツとは離れて別に、軟性外骨格スーツのユーザが着用する他の衣服は、上述の超弾性センサなどの運動学的および圧力検知用のセンサを含んでもよく、これらのセンサは、好適な通信プロトコル(たとえばブルートゥース(登録商標)等)を介して軟性外骨格スーツコントローラ(1つまたは複数)に無線リンクされ得る。
【0234】
本概念の他の局面において、信号処理法およびアルゴリズムを用いて軟性外骨格スーツ内の運動意図を検出し、検出した運動意図に基づいて着用者の物理的状態に補助を適合させる。そのような局面では、リアルタイムの生体力学的、物理的インタラクションおよび生理学的データが1つ以上のコントローラに入力され(たとえば1つ以上のセンサまたは1つ以上の検知システムから中央コントローラへのハードワイヤードおよび/またはワイヤレス出力)、当該コントローラは着用者の意図、行動および物理的状態を判断して、正確な補助が軟性外骨格スーツによって常に印加されていることを確実にする。
【0235】
生体力学的データの例は、(ジャイロスコープによって測定される)身体部分の角回転スピード、(加速度計によって測定される)身体部分の直線加速度、(慣性計測装置によって測定される)身体部分の角度位置、(フットスイッチによって測定される)フットコンタクトおよび他の歩容事象を含むが、これらに限定されない。物理的インタラクション測定値の例は、(ロードセルで測定される)ケーブル上のインタラクション力、(分布圧センサで測定される)皮膚上の圧縮力、せん断力を含むが、これらに限定されない。生理学的データの例は、心拍数、肌伝導度、EEG信号、表面筋電位信号を含む。
【0236】
さまざまなセンサデータを統合することによって、1つのセンサ種類に依拠する場合と比べて、よりロバストで精密な推定が展開され得る。必要であれば、これらのセンサからの情報を、慣性計測装置などの他の冗長センサからのデータと統合することもできる。この情報はコントローラにインターフェイスされ、筋肉群毎の補助の種類およびレベルが歩容の歩調、歩幅、水平および斜面歩行、耐負荷性および他の関節レベルの変数に対してロバストであることを確実にし得る。
【0237】
機械学習アルゴリズムおよび前処理技術を用いることによって、異なる人間活動および動作を検出可能であることが証明されている。歩行、走行、屈みこみ、または階段昇降などの人間動作をリアルタイムで検出することを有利に用いて、これらの異なる状況およびまたは変化する状況下で適切な補助を提供するようにウェアラブルな軟性外骨格スーツのコントローラ(1つまたは複数)に通知することができる。外骨格設計における以以前の研究の大部分は実験室環境で行われており、したがってユーザはトレッドミル上の歩行に限定されているが、本概念は、実際の体系化されていないシナリオにおける人間行動に直接適用可能である。軟性外骨格スーツのセンサからの情報は、人間動作パターンを検出してそれに応答するように適合された制御システムに入力され、当該システムによって解釈される。
【0238】
高レベルアウェアネスエンジン1055はさらに、全身センサネットワークからのデータ(たとえば体温、発汗、心拍数等)を分析することによって、ユーザの生体力学的および物理的応力状態を監視し得る。信号パターンを分析することによって、知的な活動−適合アルゴリズムは、ユーザがこれから従事する可能性がある異なる歩容および活動について生成される補助を適合させるように低レベルコントローラに通知することができる。たとえば、心拍数の急激な上昇は、兵士にとって認識される危険を意味している可能性があり、これに応答して、兵士は走る(たとえば危険に向かって進む、保護物の後ろを走る等)ことが必要となる。このように、軟性外骨格スーツ100は(たとえば兵士の)状態を連続的に監視し得、着用者の要求に基づいて補助の量を適合させ、そのような要求に応じて補助の量を修正し得る。
【0239】
さらに、軟性外骨格スーツセンサ(たとえば
図25の運動学的センサおよび/またはスーツ張力センサなどの組込まれたセンサネットワーク)は、ユーザが必要に応じて適切な補正行動(1つまたは複数)を取ることができるように視覚および/または音声フィードバックを提供してユーザに非正常または緊急事態(たとえば兵士の歩容の破綻、極限の肉体的ストレスまたはハードウェア故障(たとえばバッテリの減少))をユーザに警告するために、リアルタイムの生体力学的情報を監視してユーザに提供することができる。このアプローチは軟性外骨格スーツとユーザとの間に双方向のインタラクションフローを生じさせ、より高い認識レベルを促進し、より共生のインタラクションにつながる。
【0240】
以下に説明される
図26A〜
図26Bは、軟性外骨格スーツ100、軟性外骨格スーツ作動システムおよび着用者の間のリアルタイムのパワーフローを演算する制御方法に関する。軟性外骨格スーツの作動ケーブル(たとえばケーブル142)によって提供されるパワー、ならびに軟性外骨格スーツの取付点における(履物コネクタ130における)ケーブルの力およびスピードが計算され得る。次に、複数の負荷および無負荷周期の間に足関節ケーブルを引張り、力および変位の対を記録することによって、スーツ剛性が求められる。リアルタイムで、ケーブルのスピードおよびロードセルで測定されるエンドポイント力を用いることによってパワーフローが計算され得る。
【0241】
軟性外骨格スーツによって吸収されて戻されるパワーは、スーツおよびスーツ−人間直列剛性モデル内の力を用いて計算される。足関節における力を考慮すると、剛性モデルの逆数を用いて、体の圧縮およびスーツの伸びによって吸収されなければならない長さの相違が演算される。この変数の時間導関数を取ってスーツ内の力を掛けて、スーツパワーが演算される。スーツパワーは正であり、着用者からの、かつモータ246からのその吸収力に対応する。そして、人間に供給されるパワーは、スーツに入力されるパワーと演算したスーツパワーとの差を取ることによって計算され得る。スーツに入力されるパワーはスーツまたは着用者に入らなければならず、ヒステリシス損失はスーツパワーに既に含まれているからである。人間に/人間から伝達されるこのパワーは、足関節、股関節、および膝関節に供給されるパワーの合計である。この方法に必要なスーツ剛性モデルは、着用者が静止し続けている間にスーツを作動させ、結果として得られる力およびモータ位置を測定することによって開発された。以下に説明されるように、かつ
図26A〜
図26Bに示されるように、着用者に提供されるパワーのこの推定方法はかなり正確である。
【0242】
図26Aは、軟性外骨格スーツ100の「足関節スーツ」バージョン(たとえば
図2A参照)の力−変位関係を示し、
図26Bは、軟性外骨格スーツ100の「股関節スーツ」バージョン(たとえば
図15A〜
図15B参照)の力−変位関係を示す。スーツ内のヒステリシスはパワー計算について考慮された。
図26Bは、Vicon動作キャプチャシステムおよび力センサを用いることによって着用者に供給される測定パワーと、スーツおよび軟性外骨格スーツの剛性モデル内の力測定値を用いることによって推定されるパワーとの比較を示す。
【0243】
スーツの剛性モデルを用いることによって、パワーをリアルタイムで現場で計算することができる。
図27A〜
図27Bは、歩容パーセンテージの関数としてのパワー(ワット)のプロットを示す。
図27Aは、足関節における全パワー1100、スーツパワー1110、および着用者に供給されるパワー1120のプロットを示す。
図27Bは演算された剛性1130についてのプロットを示すのに対して、プロット1140は測定パワーを示す。ゆえに、高レベルコントローラは、パワーフローをリアルタイムで観察し、異なる活動を行なう際に着用者に伝達されるパワーを最適化するように軟性外骨格スーツおよび/またはアクチュエータ出力の1つ以上の特性を適合させるように構成可能である。
【0244】
軟性外骨格スーツ100によって提供される補助パルスの形状およびタイミングは、着用者に伝達されるパワー(スーツ剛性モデルから推定される)に基づいて最適化され得る。たとえば、補助パルスは、伝達パワーが厳密に正であるように、または所望のプロファイルと一致するように変更され得る。補助パルスは、着用者に伝達される所望のパワープロファイルを用いて開始し、アルゴリズムを逆に用いてアクチュエータの所望の位置を時間の関数として生成することによって調節され得る。
【0245】
軟性外骨格スーツ−着用者直列剛性モデルはさらに、スーツ内のモータ変位および力とともに、(他のセンサから、またはユーザの身長、体重、および結果的な肢長に基づいてどのように歩行するかのモデルを用いて)ユーザの関節角度の推定を用いることによって、着用者が静止しているときに、以前の測定を行なうことなくリアルタイムで推定され得る。
【0246】
本概念のさらに他の局面において、軟性外骨格スーツ100は、スーツ位置ずれの自動検出および通知を提供し得る。軟性外骨格スーツ100は、受動的に発生しているインタラクション力を監視する。好ましくは、受動的に発生しているインタラクション力のベースラインは、システムが受動的に発生している力の動的形状を監視できるように単に2、3歩正常に歩行することによって着用者によって生成される。力が正確である場合、システムは、システムが適切に位置決めされたことをユーザに通知し得る。付加的な受動力がある場合、または受動的に発生している張力の形状が正しくない場合、システムは、ユーザがウェアラブルシステムの1つ以上の構成要素の位置を再調節できるように、スーツが適切に位置合わせされていないことをユーザに通知する。測定力に基づいて、軟性外骨格スーツ100は任意にさらに、調節される可能性が最も高い候補構成要素を着用者に知らせてもよい。
【0247】
本概念のさらに他の局面において、軟性外骨格スーツ100コントローラ(1つまたは複数)は、
図20Aに一例として示したように、1つ以上のジャイロスコープ(たとえば踵に装着される、足に装着される、腕に装着される等)を利用して歩容事象を検出する。フットスイッチを、1つ以上の肢の1つ以上の部分に配置されて歩容事象を検出し、システムの冗長性を減少させるジャイロスコープセンサに置き換えてもよい。異なる歩行速度(0.67m/s、1.25m/s、1.78m/s)を有する1組のジャイロデータが、それぞれプロット1200,1210および1220として
図28Aに示されるように収集された。歩行速度は異なるが、4番目%(the 4th %)歩容事象および足関節正パワー事象検出は同一のままである。ゆえに、タイミング検出を用いる4状態の状態機械が、歩容事象を検出して補助プロファイルの時間を調整するように設計され得る。
【0248】
図28A〜
図28Bに示される4つの状態とは、(1)アイドル状態(IS)、すなわち非歩行状態、(2)遊脚初期〜中期状態(IMSS)、(3)遊脚終期〜初期接地状態(TSICS)および(4)立脚状態(SS)である。一歩容周期毎に、電圧が0vに降下するため、遊脚初期〜中期状態は固有である。これは、アイドル状態から歩行状態への状態機械へのエントリとして用いられる。そして、飽和期間後、ヒールを検出することによって遊脚終期〜初期接地状態に入る。立脚状態では、ジャイロが、地面フレームと比較して足の角速度7.5°/sに対応する1.7Vを超えると、システムが補助を開始する。さらに、経過時間が各状態についての正常時間を超えて状態機械がアイドル状態に設定し直されると、各状態の時間が測定される。このアルゴリズムは、歩行速度を変更する際にロバストに適合する。
【0249】
本概念に従うと、制御戦略は障害のある歩容を補助するようにも適合され得、障害のある歩容では、先の例とは異なり、制御戦略は、障害のない着用者に典型的な生理学的歩容の強い周期性に依拠することができない。障害のある歩容は生理学的歩容よりも不規則であり、各患者は損傷の種類、リハビリ治療の進行、および患者によって発達した代償的運動の種類に依存する異なる歩容パターンを有するからである。
【0250】
以下に説明される制御戦略は、任意の歩容パターンと組合せて使用可能である。
任意の歩容パターンとともに用いる第1の例示的な制御戦略では、障害のある歩容に対してハイブリッド制御が提供され、自動化された事象検出および理学療法士による手動調節が行なわれる。ウェアラブルな外骨格スーツのコントローラの全体アーキテクチャは2つの部分、すなわち(1)歩容事象を検出する自動化アルゴリズム、および(2)供給される補助のタイミング、種類および量を理学療法士などの個人が決定することができる手動インターフェイスを含む。第1の部分については、自動化アルゴリズムによって、角速度(ジャイロスコープ)、加速度(加速度計)、磁場(磁気計)、コンタクトスイッチ、および歪みセンサなどであるがこれらに限定されない多数の信号の測定が可能となる。このアルゴリズムは、歩容事象に関連付けられる信号パターンにおける規則性を利用し、そのような測定値を処理して、ヒールストライク、トゥオフ、および/または立脚中期などであるがこれらに限定されない歩容中に起こるいくつかの事象のタイミングを抽出し得る。この歩容事象の検出は、一局面において、歩容事象タイミングのこれらの測定値に対して一連の論理ルールを利用し、それらを組合せ、別の局面において、たとえば特定の事象を検出するように訓練された機械学習アルゴリズムを用いて実現されるエキスパートシステムを用いる。
【0251】
第2の部分については、供給される補助のタイミング、種類および量を理学療法士(または着用者)などの個人が決定することを可能にする手動インターフェイスが提供される。インターフェイスは、たとえば、コンピュータまたはハンドヘルド電子機器(たとえばスマートフォン)上に実現されるグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)ならびに/またはプッシュボタン、ノブ、および/もしくはスイッチを有するハンドヘルド機器またはウェアラブル入力パネルなどの手動インターフェイスを含み得る。このインターフェイスは、どのように構成されるにせよ、自動的に検出された事象(1つまたは複数)に対する、各モータからの補助が供給されるタイミングの調整を可能にする。このインターフェイスはさらに、各アクチュエータが供給する補助の量の調整、および異なる補助レベル同士の間の移行(たとえば移行速度、緩やかな移行、より急な移行等)の調整を可能にする。
【0252】
上記に鑑みて、このハイブリッド制御スキームの1つの可能性のある用途は、移動度に問題のある人々(たとえば発作事象、神経筋疾患、任意の他の病状または年齢に起因する)の歩容リハビリおよび歩容訓練の用途である。障害のある歩容には健康な歩容の規則性がないため、異なる歩容事象同士の間の時間遅延について仮定をすることが不可能である。たとえば、ヒールストライクと足関節プッシュオフ期との間の遅延は健康な歩容では規則的で予測可能であるが、障害のある歩容では予測不可能であり非常に不定である。この規則性および予測可能性の欠如は、このハイブリッドアーキテクチャによって補償され得る。アルゴリズムの自動化部分は、歩容中におこる1つ以上の事象を検出し得る。手動インターフェイスによって、理学療法士または個人が、自身の観察または感覚に基づいて補助の相対的なタイミングを調節することができる。
【0253】
任意の歩容パターンとともに用いる第2の例示的な制御戦略では、障害のある歩容のためのハイブリッド制御は、ジャイロスコープを用いたヒールストライク検出と、足底屈および/または背屈に対する補助の手動チューニングとを利用する。この制御スキームの一実施形態では、自動化事象検出は(たとえば加速度計、ジャイロスコープ、コンタクトスイッチ、および/または伸長センサ等からの測定値を用いて)ヒールストライクを検出し得、手動インターフェイスは、足底屈(足関節プッシュオフ期)または背屈(遊脚期)、または両方に対して補助が与えられる遅延をチューニングするために用いられ得る。この制御スキームの別の実施形態では、自動化事象検出は、プッシュオフ期前に起こる任意の事象を検出し得、手動インターフェイスは、遅延の時間を調整して足底屈を作動させるために用いられ得る。この制御スキームのさらに別の実施形態では、自動化事象検出はトゥオフ前に起こる任意の事象を検出し得、手動インターフェイスは、遅延の時間を調整して背屈を作動させるために用いられ得る。作動が起こる前の任意の時間に事象が検出されるこれらの実施形態によって、すべてが同じステップ内で起こるため、非常に高度の適合を達成することができる。
【0254】
任意の歩容パターンとともに用いる第3の例示的な制御戦略では、障害のある歩容のためのハイブリッド制御は、脚上の任意の数の歩容事象を検出し、これらの事象に基づいて軌道を規定するように適合される。この実施形態では、N個のセンサが体に配置される。これらのN個のセンサからの読取値を用いて、歩容中にM個の事象が検出される。一実施形態では、GUIなどの手動インターフェイスによって、これらの事象に関して補助がいつ生成されるかを判断することができる。M個の事象の各々は、補助を開始、修正、または停止する時間基準として用いられ得る。別の実施形態では、GUIなどの手動インターフェイスによって、その後の事象の各対同士の間に生じる補助の量および種類を判断することができる。別の実施形態では、手動インターフェイスは、理学療法士からの手動入力を学習して置換するエキスパートシステム(自動化アルゴリズム)に徐々に置き換えられる。
【0255】
任意の歩容パターンとともに用いる第4の例示的な制御戦略では、障害のある歩容のためのハイブリッド制御は、正常な脚の歩容事象を検出して障害のある脚への補助を作動させるように適合される。正常な脚の歩容事象の検出に基づく、障害のある脚を補助するこの制御アーキテクチャの例は、
図29A〜
図29Bに示される。
図29A〜
図29Bは、障害のある歩容の患者の両踵に装着されたジャイロスコープの信号についての可能性のあるパターンを示す。このアルゴリズムの可能性のある実施形態では、正常な脚における明らかな3ピークパターン(
図29B)が、障害のある脚を補助する時間基準(
図29Aに示される)として利用され得る。この例では、
図29A〜
図29Bの両方における立脚相は網掛け領域によって印を付けられている。正常な脚の遊脚期中のピーク(
図29B)を検出することによって、障害のある脚の遊脚期前に常に起こる事象についての基準を抽出することができる。この基準を用いて、遊脚期中に起こる背屈を作動させることができる。
【0256】
他の実施形態でも同等に、異なる種類のセンサを正常な脚の上に置き、反対側の障害のある脚の時間を調整するのに用いられ得る歩容事象を検出することができる。
【0257】
このアーキテクチャによってさらに、コントローラを、1つ以上のセンサによって健康な脚の運動パターンを観察するように構成することができ、障害のある肢が同様の歩容パターンに徐々に収束するように当該肢を作動させることができる。
【0258】
図30は医療制御のためのソフトウェアインターフェイスを示し、具体的には、スーツ上のセンサによって測定されるリアルタイムの歩容パラメータ、およびリアルタイムでスーツによって供給される補助のプロファイルおよびタイミングを制御する入力手段(データエントリ欄)を表示するグラフィカルユーザインターフェイス1300を示している。
【0259】
さまざまな局面において、グラフィカルユーザインターフェイス1300は、スーツセンサから計算されたリアルタイムの歩容データを表示し、患者の歩容に関する定量的情報を提供する。リアルタイムの歩容データは、たとえば、立脚対称性(各脚の片脚立脚状態の時間の量)、歩幅、スピード/歩調、膝関節屈曲、足底屈力、背屈の程度、および地上高を含み得るが、これらに限定されない。この出力は、定量的にまたはグラフで表示され得、臨床医は見たいパラメータを選択することができる。グラフィカルユーザインターフェイス1300はさらに、保存した歩容を表示し、データを用いてより長期的な傾向を示すことができ、これは臨床医または患者が通院の間に貯まったデータを見るのに役立つ。そのようなデータは、歩行速度に関する長期傾向、1日当たりの歩行距離、スーツによって供給される補助のレベル、および/または1日当たりのスーツ使用時間を含み得る。このデータはさらに、患者コンプライアンスを確認するのに、かつ第三者支払人のスーツの使用を正当化するのに役立つ。
【0260】
示されるように、GUI1300は、ユーザ(たとえば医療提供者、患者、研究者等)が、スーツによって提供される背屈および足底屈補助の力およびタイミングを制御することを可能にする。インターフェイスは、背屈および足底屈ケーブルに印加すべき最大力の入力を含む。研究者はさらに、計算された歩容周期に基づいて、力毎のランプアップおよびランプダウンの開始および終了時点を入力する。予め設定された許容力または位置限界を超える偶発的な入力を避けるため、安全対策が(たとえば認可された医療提供者によって)有利にインターフェイスに組込まれるか、またはインターフェイスに入力される。インピーダンス、力、および位置限界がインターフェイス内で修正され得る。さらに、新規の力プロファイルが生成されると、それは引出されて現在の力プロファイルの上に重ね合せられ、2つのプロファイル同士の間のすべての差が強調される。新規のプロファイルは、スーツに適用され得る前にユーザによって確認されなければならない。
【0261】
少なくともいくつかの局面において、GUI1300は、ユーザ(たとえば医療提供者、患者、研究者等)が力プロファイルの変化と時間同期されるコメントを入力することを可能にするコメントパネルを含む。そのようなコメントは、たとえば、特定の変更がなされた理由、うまく働いていたもの、うまく働いていなかったもの、または将来実現する必要があるものを詳述し得る。
【0262】
少なくともいくつかの局面において、GUI1300は軟性外骨格スーツ100から離れたコンピュータまたはデバイス上でアクセス可能であり、コンピュータおよび軟性外骨格スーツ100は、GUI1300に入力される変更が軟性外骨格スーツ制御システムに自動的に組込まれるように、(たとえば無線接続を介して)互いにネットワーク化される。ゆえに、患者を治療している臨床医、兵士を監視している監督者の両者とも軟性外骨格スーツ100データを監視し、軟性外骨格スーツの着用者(たとえば患者、兵士等)の特定の要求に合うように制御システムにリアルタイムの修正をもたらすことができる。臨床用途では、このインターフェイスによって、臨床医は、患者が自身のリハビリを通して進歩するにつれて軟性外骨格スーツ100を調節することができ、スーツは患者の完全な回復プロセス全体を通して適切な量およびタイミングの補助を確実に提供する。
【0263】
上記に加えてさらに、着用者と軟性外骨格スーツ100との間の人間/機械インターフェイスおよびインタラクションが、制御アルゴリズムに対するそのようなインタラクションの意味あいとともに以下に説明される。
【0264】
広範には、制御は、軟性外骨格スーツ内の能動要素(たとえば引張要素、作動装置等)が活動中に自身の長さを変更するように命令される戦略である。軟性外骨格スーツ100は、1ステップ内で、または多くのステップにわたって徐々に変わる(たとえば地形の緩やかな変化に有用である)変更を提供する軟性外骨格スーツ内の能動要素によってその長さを変更することができる。自動化および/または手動で調節可能な要素を用いてスーツの長さを変更することもできる。本明細書中に開示される軟性外骨格スーツ100は、とりわけ、(長さを増加させることによって)スーツが弛んだ後、スーツが着用者にとって完全に透明である、つまり着用者の動作を制限しないという点で固有である。
【0265】
軟性外骨格スーツ100は、2つの方法によって内部に張力を生じさせることができる。第1の方法は、能動要素が、自身の長さを変更してスーツを体にきつく引き寄せることである。第2の方法は、体が動くことができ、軟性外骨格スーツが、関節の動作によって、かつ軟性外骨格スーツ材料が関節からある半径で少なくとも1つの関節上に伸びるという事実によって、伸ばされることである。張力を生じさせるこれら2つの方法は、
図31A〜
図31Bに示される。
【0266】
図31A〜
図31Bは、作動セグメントを用いてスーツの長さを短くすることによって軟性外骨格スーツ100内に張力を生じさせるための方法およびシステムを示す。
図31Aは概念を示し、
図31Bは当該概念が軟性外骨格スーツの具体例に対してどのように用いられ得るかを示す。
図31Bでは、脹脛後部の矢印は軟性外骨格スーツのセグメントが短くなっていることを示し、骨盤および踵の矢印は、軟性外骨格スーツ内に力が引起されていること、かつ軟性外骨格スーツがこれらの場所で変位しないように体がこれらの場所で反力を印加する必要があることを示す。
【0267】
図32A〜
図32Bは、着用者の体の変化する構成のために軟性外骨格スーツ内に張力を生じさせるための方法およびシステムを示す。
図32Aは、テキスタイルまたは他の可撓性引張要素が関節の片側で身体セグメントに付けられ、次に関節が曲がると、テキスタイルまたは他の可撓性引張要素が関節の周りに半径r>0でルーティングされている場合はテキスタイルまたは他の可撓性引張要素内に張力が引起されることを示す。
図32Bは、腰前部および踵後部で着用者にアンカー固定される軟性外骨格スーツ100の可能な経路を示す。経路は膝関節を通るが、股関節の前および足関節の後ろで正の半径に位置している。着用者が
図32Bの中間画像に示される位置に動くと、軟性外骨格スーツは股関節および足関節上で伸びているため緊張する。軟性外骨格スーツが動かないように体によってスーツに及ぼされる力は、
図32Bの中間画像において腰および踵の矢印によって示される。他の脚位置では、軟性外骨格スーツは弛んでいる。
【0268】
軟性外骨格スーツ内にどのように力が生じるのかというこの理解を用いて、スーツ内の張力を制御するために用いられ得る多くのスキームがある。
【0269】
軟性外骨格スーツ100が(所与のポーズにおける体よりも長いように初期長さを選択することによって、または作動セグメントを延長することによって)弛むと、軟性外骨格スーツ内の力は実質的にゼロである(ジーンズを着用しているのと同様の力<2N)。軟性外骨格スーツ内にゼロの力、または実質的にゼロの力を有することは、着用者の動作を制限せず、着用者にとって一般に目立たないため、有用である。これは、着用者が一定の動作(たとえば階段の上り)時にのみ補助を望んでおり、他の動作(たとえば水平地面の歩行)時には軟性外骨格スーツによって邪魔をされたり制限されたくない場合に有用であり得る。
【0270】
別の可能性は、着用者が異なるポーズに動いたとしても維持される軟性外骨格スーツ100内の少量の正の力(0.0001〜10N)を有することである。これを達成するために、軟性外骨格スーツは、着用者のポーズ、動き、および立脚が変化するにつれて軟性外骨格スーツ内の張力の量を維持するように必要に応じて伸縮する作動セグメントを含む必要がある。軟性外骨格スーツ内に少量の正の力を維持することは、いくつかの理由で有用である。この少量の張力を維持しつつアクチュエータが進む位置軌道を用いて体の位置を判断することができ、これは制御に有用である。たとえば、アクチュエータは、体が一定のポーズに達する際により高い力を印加してもよいし、または体のポーズを用いて、(異なる関節(1つまたは複数)または反対方向の同じ関節(1つまたは複数)を作動させる)体の異なる負荷経路に接続されるアクチュエータを制御に知らせてもよい。軟性外骨格スーツ内に小さい力を維持する間のアクチュエータの位置軌道をさらにログ記録して、着用者がたとえばそれらの生体力学を監視するために経時的にどのように動いたかを判断してもよい。また、軟性外骨格スーツ内に小さい力を常に維持することによって、アクチュエータがより高い力を印加することが望まれる場合、アクチュエータはスーツの大量の弛みを巻き入れる必要がないため、アクチュエータはより高速に応答することができる。
【0271】
最後の可能性は、軟性外骨格スーツ内に大量の力(>10N)を有することである。この量の力は、たとえば歩行中の着用者を補助するために生物学的関節にトルクを印加するのに有用である。この量の力は、着用者が動作中の特定の時間にのみ利用される。たとえば、歩行時、軟性外骨格スーツは、歩容周期の主に40〜60%で起こる足関節におけるプッシュオフを補助し得る。または、誰かが着座から起立の手順を行なう際に補助を受けている場合、軟性外骨格スーツはその動作の間中ずっと力を提供し、その後、動作が完了すると力の提供を中止し得る。
【0272】
外骨格スーツがどのように使用され得るのかを理解するのに有用な第2の概念は、着用者への、または着用者からのパワー伝達の概念である。一方向において単関節を補助する外骨格スーツ、たとえば股関節伸展を補助する外骨格スーツを考えてみる。この場合、軟性外骨格スーツは張力を印加し、股関節をさらに引張って伸展させる。関節が印加力と同じ方向に動いている場合、軟性外骨格スーツは正のパワーを関節に伝達する。股関節伸展を利用する軟性外骨格スーツ100(たとえば
図15A〜
図15B参照)の局面において、これは、軟性外骨格スーツ内に力がある間の股関節伸展に対応する。逆に、関節が印加力と反対方向に動いている場合は、軟性外骨格スーツは負のパワーを関節に印加しており、言い換えれば、軟性外骨格スーツは関節からパワーを吸収している。股関節伸展を利用する軟性外骨格スーツ100(たとえば
図15A〜
図15B参照)の局面において、これは、軟性外骨格スーツ内に力がある間の股関節屈曲に対応する。
【0273】
図33および
図34A〜
図34Bに示されるように、軟性外骨格スーツ内に生じる力は、その下にある関節動作に依存する。言い換えれば、外骨格スーツの能動部分は、力が正のパワーを着用者に供給する周期中にのみ軟性外骨格スーツ内に大きい力を生じさせるように制御される。単関節を横切る外骨格スーツについては、関節の動作は、1つ以上のセンサ(たとえば関節上にもしくは関節の周りに、または対象の肢上に配置されるセンサ)によって監視され得るか、または1つ以上のセンサ(別の関節もしくは別の肢上にもしくはその周りに配置されるセンサであり、その出力は対象の関節または肢に関する補足情報を提供し得る)によって推測され得る。外骨格スーツが力を印加する方向に関節が動いている場合、アクチュエータは軟性外骨格スーツ内に大きい力を生じさせ得る。関節が反対方向に動き始めると、アクチュエータは軟性外骨格スーツ内に大きい力を生じさせることを停止するように動き得る。この戦略によって、軟性外骨格スーツは正のパワーのみを着用者に提供し、着用者からエネルギを吸収しないことが確実になる。
【0274】
大きい力が印加されていない周期の間、アクチュエータ(1つまたは複数)200はスーツ内に弛みを生じさせるように動き得るか、小さい力を印加しつつ着用者を追跡するように動き得るか、またはその何らかの組合せであり得る。アクチュエータ(1つまたは複数)200が小さい力を印加しつつ着用者を追跡している場合、アクチュエータの長さを用いて、軟性外骨格スーツ100が力を印加しているのと同じ方向に関節がいつ動いているかを検出することができる。アクチュエータが軟性外骨格スーツの側面を短くしている場合は、関節は軟性外骨格スーツが力を印加するのと同じ方向に動いている。アクチュエータ(1つまたは複数)が動いて軟性外骨格スーツの側面を長くする必要がある場合は、関節は反対方向に動いている。
【0275】
スーツに弛みがある場合、ジャイロスコープ、ソフト歪みセンサ等の他のセンサを用いて関節の動作を推定することができる。ジャイロスコープを用いて関節の速度を直接推定することができるため、正または負の読取値(たとえば矢状面内に測定される)は関節が屈曲または伸展している場合に直接対応する。軟性外骨格スーツから体に伝達されている正のパワーに対応する方向に関節が動いている場合、軟性外骨格スーツ100内に張力を生じさせることができる。関節角度センサについては、動作方向の変化を検出する必要がある。
【0276】
アクチュエータ(1つまたは複数)200が大量の力を軟性外骨格スーツ100に印加しており、体に正のパワーを印加している場合は、アクチュエータが軟性外骨格スーツ内の張力を解放すべき時間をいくつかの方法で検出することができる。ジャイロスコープ、ソフト歪みセンサ等のセンサを用いて関節の動作を推定することができる。代替的に、アクチュエータ長さを、軟性外骨格スーツ内の測定力、ならびに軟性外骨格スーツおよび着用者の力−変位特性のモデルとともに用いて、関節の動作を推定することもできる。スーツ−人間力−変位のモデルが力およびモータ位置とともにどのように用いられ得るか例が、
図33および
図34A〜
図34Bに示される。
【0277】
図33は、測定された人間−スーツシステム剛性を示す。着用者は、モータが作業時に作動されると自身の体が取ることになる形状に対応する一定のポーズ(たとえば着用者が歩容周期の10%にあるかのように着用者の足が前方にある)で起立する。そして、軟性外骨格スーツ100の作動部分の長さが変わり、軟性外骨格スーツ内の結果として得られる力が記録される。
図33のグラフは、アクチュエータ変位対引起こされた力を示す。モデルは方程式をデータに適合させることによって生成され、たとえば、二次方程式(力=a
*x
2+b
*xであり、式中xは変位であり、aおよびbは定数である)が曲線の上り勾配に適合し、指数関数(力=c
*exp(−d
*(x−xmax))であり、式中c、dおよびxmaxは定数である)が曲線の下り勾配に適合する。これによって、反復可能な力−変位特性が与えられる。データプロットの上下の矢印は、ヒステリシスループの周りの方向を示す。
【0278】
このモデルを用いて、スーツ内の力を考慮すると、力の時間履歴(力が上昇しているか下降しているかを判断するため)、およびアクチュエータ長さ、人物の位置を求めることができる。
図34A〜
図34Bは、歩行周期中の股関節モーメント(スーツ内の力のスケール変更されたバージョン)およびアクチュエータ(1つまたは複数)200の位置のプロットを示す。1つの歩容周期にわたる軟性外骨格スーツ内の力が、
図34Aの黒実線(「近似」)で示されている。逆数モデルを用いて、この力からスーツ−人間システムの変位が演算され、その結果は
図34Bの「x
s」1400である。アクチュエータの長さは、
図34Bにプロット「x
m」1410として示されている。股関節の位置は、
図34Bの「x
hip」1420によって示されている。これは未知であるが、関係x
hip=x
m+x
sによってスーツ−人間システム変位x
sおよびアクチュエータ長さx
mを用いて演算することができる。
【0279】
多関節を交差する軟性外骨格スーツ100には、同様の原理を用いることができる。軟性外骨格スーツ内に低い力を維持しつつ体を追跡するためにアクチュエータ(1つまたは複数)によって生成される変位は、交差する関節の角度の関数であり、軟性外骨格スーツの半径はそれらの関節においてオフセットしている。軟性外骨格スーツが交差する多関節の角度を追跡することができ、すべての角度が軟性外骨格スーツからのそれらの受ける正のパワーに対応する方向に動いている場合、軟性外骨格スーツ内に張力を生じさせることができる。
【0280】
一般に、軟性外骨格スーツ100が体に正のパワーを伝達可能である時にのみスーツ内に張力を生じさせることは最大限に有益でない場合がある。軟性外骨格スーツ100をより自然に感じるようにさせ、体と相乗作用的にするためには、体の機能(生物学的関節がパワーを吸収するときにパワーを吸収し、生物学的関節がパワーを生成するときに体にパワーを伝達すること)を複製することが有用であり得る。このように作用することによって、体がより自然な方法で動く(たとえば運動学を正常な歩行法により近づけて維持する)ことが可能となり得、これはより良い性能につながり得る。多関節を交差する軟性外骨格スーツ100を用いてこれを達成するために、軟性外骨格スーツ内の張力は関節角度の各々の関数であってもよい。
【0281】
したがって、軟性外骨格スーツ100内の張力は、関節角度の関数として生じ得る。アクチュエータ(1つまたは複数)200が連続的に動いてスーツ内に小さい張力を維持している場合、アクチュエータ長さを関節角度測定の代わりに、またはこれに加えて用いることができる。
【0282】
1つの関節が正のパワーを生成して他方の関節(1つまたは複数)がパワーを吸収している場合、または両関節が正のパワーを普通に生成しているが、一方は脆弱性または負傷のために通常よりも小さく体によって作動されている場合、多関節を交差する軟性外骨格スーツ100を用いて、1つの関節から別の関節(1つまたは複数)にパワーを伝達することができる。たとえば、大腿後部を横切り、膝関節を通って脛に至る軟性外骨格スーツ100は、股関節から足関節にパワーを伝達して歩容周期の60〜100%の間に前足を上げることができる。この装置は、足を背屈して上げる前脛骨筋が弱い筋ジストロフィーまたは脳卒中を患う人々にとって有用となる。大腿が動いて屈曲すると、股関節の動作のために軟性外骨格スーツ100内に張力が生じる。この張力は足の前部を引上げることによって、足が地面から離れるのを助ける。
【0283】
本概念に従うと、軟性外骨格スーツ100は多関節(多関節性の軟性外骨格スーツアーキテクチャ)を交差する必要はなく、代わりに1つの関節のみを交差してもよい。一例として、制御スキームを含む、本明細書中に開示される概念は、ユーザの履物の後ろに配置される、および/またはユーザの履物の1つ以上の履物接続要素に接続される脹脛との軟性外骨格スーツインターフェイスに等しく適用される。軟性外骨格スーツのアンカー点は、引張力の印加に抵抗するように寸法決めされた筋組織を含む解剖学的特徴を含み得ることが強調される。
【0284】
上記の説明は、本概念のさまざまな例示的な局面に言及する。これらの実施形態およびその明白な変形例の各々は、開示される発明の精神および範囲内にあると考えられ、その少なくともいくつかの局面が以下の請求項に記載される。限定ではなく一例として、軟性外骨格スーツ100の例に関して本明細書中に開示される制御システムは、ロボット(すなわちスタンドアローンロボット)、ウェアラブルロボットシステムおよび装置、たとえば旧来の外骨格系のウェアラブルロボットシステムまたは人工器官装置に等しく適用される。ゆえに、単に予めプログラムされた運動パターンに依存するのではなく、すべてのウェアラブルロボットシステム(本明細書中に開示されるような軟性外骨格スーツ、旧来の外骨格系のウェアラブルロボットシステム、人工器官装置、またはその組合せ)を、より適合性があるように作ることができる。さらに、多数の例の軟性外骨格スーツ力伝達がボーデンケーブルまたは他のケーブル種類に関連して説明されたが、本概念に従う力伝達は、可撓性ウェビングまたはリボン材料(たとえばファブリック、複合材料等)などであるがこれらに限定されない任意のさまざまな可撓性伝達要素を有利に用い得る。
【0285】
さらなる局面において、本明細書中に開示される制御システムは、モータ電流を入力として有利に用い得、コントローラ(1つまたは複数)はモータ電流を、作動部材に印加されるモータトルクの、かつそれに対応して、作動部材の取付点に作動部材を介して印加される力の指示として利用する。
【0286】
少なくともいくつかの局面において、制御システムは、(たとえばユーザによる力への適合を容易にするための)力の印加のランプアップおよび/または(たとえばユーザが突然「だるい脚」を有しているという感覚を最小にするための)力の印加のランプダウンを和らげるように、軟性外骨格スーツアクチュエータ(1つまたは複数)によって印加される力のプロファイルを修正するようにユーザ(または医療ケア提供者などの認可された第三者)によって構成可能であり得る。
【0287】
少なくともいくつかの局面において、制御システムは、システムのいずれかの構成要素が故障(たとえばセンサが高く故障または低く故障)した場合、制御システムは補正動作を取って、軟性外骨格スーツを、軟性外骨格スーツが着用者の邪魔をするのが最小限である構成にする、「フェイルセーフ」プロトコルを具体化している。