(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血漿または血清に対しては浸透可能性を示すが血球細胞を濾過せずに残留させることを保証する細孔径を有するセラミック材料から形成される、または前記セラミック材料を備える、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の全血処理用の中空糸膜濾材。
前記セラミック材料は、α酸化アルミニウム及び追加の金属酸化物を含有し、前記セラミック材料中に前記追加の金属酸化物が含まれる分量は、前記セラミック材料の全重量に対して0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントに相当する、
ことを特徴とする、請求項1乃至12、15、16または17のいずれか一項に記載された全血処理用の中空糸膜濾材。
前記全血処理用の中空糸膜濾材の円形断面が有する内径が、前記全血処理用の中空糸膜濾材の円形断面が有する外径よりも小さいとするならば、前記内径は、約0.2mm〜約2.0mmの数値範囲内である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の全血処理用の中空糸膜濾材。
前記全血処理用の中空糸膜濾材の円形断面が有する外径は、約0.5mm〜約2.0mmの数値範囲内であり、前記全血処理用の中空糸膜濾材の円形断面が有する内径は、約0.3mm〜約1.3mmの数値範囲内である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の全血処理用の中空糸膜濾材。
前記全血処理用の中空糸膜濾材の長手方向の長さは、約0.5cm〜約8cmであり、前記全血処理用の中空糸膜濾材が一本当たりに有する濾過膜表面領域の面積は、約3mm2〜約500mm2の数値範囲内である、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項24のいずれか一項に記載の全血処理用の中空糸膜濾材。
前記全血処理用の中空糸膜濾材に対しては修正処理が施され、前記修正処理は、前記全血処理用の中空糸膜濾材に対して上塗りコーティング処理または事前濡らし処理を行うことによって実現される、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項26のいずれか一項に記載の全血処理用の中空糸膜濾材。
前記クロスフロー型濾過処理方式に従う濾過処理は、前記全血処理用の中空糸膜濾材の長手方向に沿って全血サンプルを流すことによって実行され、全血サンプルを流す方向は、双方向であって、大気圧を所定の圧力増加幅だけ上回る圧力をかけることにより実行される、
ことを特徴とする請求項36記載の分離処理方法。
前記クロスフロー型濾過処理方式に従う濾過処理は、全血処理用の中空糸膜濾材の長手方向に沿って全血サンプルを流すことによって実行され、全血サンプルを流す方向は、双方向であって、大気圧を所定の圧力低下幅だけ下回る圧力をかけることにより実行される、
ことを特徴とする請求項36または請求項37に記載の分離処理方法。
【背景技術】
【0002】
医療技術の分野においては、血液から血漿/血清を分離して処置するための様々な種類の処理工程が公知であると共に、現時点での先端的技術である。血液中の液体成分から血球(血液細胞)を分離する最も一般的に知られた方法は、遠心分離法である。
【0003】
輸血の際には、輸血用の血液から白血球を取り除き、さらに血餅や凝血粒を取り除くためにフィルターが使用される。さらに、例えば、血液中の血餅、凝血粒および気泡を取り除く等のために、外科手術中においては動脈フィルターが適用される。患者の血液から取り出した血漿を浄化する際、または人為的に精製された血漿やドナーから提供された血漿と入れ替える際には、血漿交換フィルターが使用され、さもないと、患者の血液が細菌類、ウイルスまたはその他の不純物などによって汚染され、患者の生命に危険をもたらす。
【0004】
さらに、試験紙またはチップ上での微細加工技術(ラボ・オン・チップ技術)のいずれか一方に基づいて、全血分析のために使用されるマイクロマシン装置が知られている。これらの機械を使用する場合には、血液又は血漿/血清を分析するためにほんの数マイクロ・リットルの血液だけが必要とされる。全血から血漿/血清を分離する処理は、通常は、複数の異なる表面上での濡れ挙動やマイクロチャネル(微小流路)を用いた方法の適用等において見られるような流体力学的効果によって実現される。血液の分析結果を素早く取得可能である点に関してこの方法は魅力的であるものの、これらの分析方法によって得られる分析結果は、個々の検査手法に特有である僅か数種類の血液成分についての分析結果に限定されている。研究室や医療域間における既存の高度な医療システムにおいては、複数の血液成分を分析することにより患者の健康状態の全体的な概観図を与えることが可能であるが、上述したこれらの方法を適用したとしても、血漿/血清に基づく血液分析法を、当該高度な医療システムに代替可能なものとすることは不可能である。マイクロマシン装置についてさらに言うならば、血液の液体成分から血球(血液細胞)を分離するという課題は、まだ充分満足のいく程度に解決されているとは言えない。
【0005】
多くの国では、採血により得られた血漿/血清のサンプルを一定期間にわたって保存しておくことが可能な患者から充分な量の血液を採血することが義務付けられており、それにより、いわゆる貯蔵サンプルと呼ばれるサンプルを使用して血液分析の結果が検証される。しかしながら、現在に至るまで、血球(血液細胞)を含まない血漿/血清を充分な量だけ採取するという作業は、遠心分離法のみによって達成可能である。
【0006】
典型的には全血から血漿/血清を分離するために用いられる遠心分離法の処理工程は、人手または機械による多くの取り扱い作業を必要とする点で面倒であると同時に、多くの時間を要するので、救急医療の現場においては特に不都合である。
【0007】
血漿/血清の分析装置は、血漿/血清のサンプルを収容するための大きな容量を有しているが、上流部分において遠心分離法が適用されている場合には、全容量を使用しながら作動させることができず、その結果、分析装置はバッチ式で作動することとなるので、これが血液サンプルを処理する際のボトルネックとなって現れる。上述したボトルネックに起因する問題は、場合によっては、血漿/血清を生成するために遠心分離法による工程を用いる代わりに、血液に対する絶え間ない濾過処理を行う工程を用いることにより克服可能であるかもしれない。このような絶え間ない濾過を行うシステムは、血液について柔軟な分析処理を行うことを可能とする。すなわち、実行中の遠心分離処理工程を中断させることを全く必要とせずに、急患から採血された緊急性の高い血液サンプルの処理をより高い優先順位で行うことが可能となる。
【0008】
上記のように全血から血漿/血清を分離するための単純な濾過処理工程は、全血のサンプルを採血した直後に全血を血漿/血清と血球(血液細胞)に分離する処理を直ちに実施可能である点でさらなる技術的優位性がある。赤血球の安定性は、血液サンプルの貯蔵時間が長くなるほど低下するから、このことは、後続して行われる血液分析の品質という点で特に有益である。血液サンプルの採取の直後ではなくある時間だけ遅れて血漿/血清を分離する処理が行われた場合、これは血漿/血清の組成に悪影響を及ぼす。農村地域や開発途上国においては、血漿/血清を分離するのに利用可能な遠心分離装置が無かったり、血液サンプルを長時間かけて又は長距離にわたって輸送する必要があったり、さらに場合によっては、高温多湿の環境下で輸送しなくてはならないが、そのような農村地域や開発途上国においては、この点は特に重要である。
【0009】
ポイントオブケア検査用装置は、臨床検査室の外において、血液分析結果を素早く得るために、患者の直ぐ側でまたは非常に近い場所での素早い血液分析処理を提供することによって患者の治療に関して迅速な判断を行うために使用される装置であるが、先の処置に引き続いて行われる血液からの血漿/血清の分離処理は、このポイントオブケア検査用装置にとって有益となり得る。典型的には、ポイントオブケア検査は、臨床検査技師以外の者によって行われるが、これより先に血漿濾過処理工程を素早く行っておくことにより、迅速な血液分析が可能となると共に、ポイントオブケア検査用装置を新たな作動状態とすることが可能となる。何故なら、それらポイントオブケア検査用装置の大部分は、全血を処理対象として作動しているか、結果的に非常に僅かな体積の血漿/血清しか生成しない上述したマイクロマシン装置を使用して作動しているからである。さらに、全血から血漿/血清を分離する処理工程は、ポイントオブケア検査用装置の内部に組み込むことも可能である。
【0010】
従って、全血の濾過処理法は、全血から血漿/血清を取得するための代替的な手段として開発されてきた。しかしながら、当該技術分野において公知である濾過処理によって血漿/血清を取り出すための方法は、例えば、血球の凝集、血漿/血清の押し戻し圧、分子吸収容量、溶血反応(血球破壊)の程度および血球(赤血球、血小板および白血球)の漏洩などの点で問題がある。中でも溶血反応は重大な問題の一つである。何故なら、赤血球が破裂すると、後続の検査工程において検査対象として必要とされる一部の血漿/血清の濃度が変化してしまい、場合によっては、赤血球から流出したヘモグロビンの赤い色素に起因して光学的な測定技法を使用した血液分析が実施不可能となってしまうからである。さらに、血球が漏洩してしまう点もまた問題である。何故なら、血液細胞やさらにはその他の凝血粒などが血漿/血清の分析装置内にある壊れやすい毛細管部材や細い管状流路の中に詰まって塞いでしまうことにより、当該分析装置を損傷させてしまうからである。従って、信頼性の高い血液分析を行おうとすると、血液細胞の漏洩や溶血反応が起きていないことが保証されている血漿/血清しか(殆ど)使用できないことになる。
【0011】
遠心分離装置の使用を必要とせずに、全血から血漿/血清を分離することを可能にする中空糸膜を備える装置は、血漿交換療法(PET: Plasma Exchange Therapy)/アフェレーシス療法を実施するために使用されてきた。PETの実施中においては、全血から分離された血漿は除去され、全血から分離された血球(血液細胞)は血漿と置換された流体に混ぜられて患者の体内に戻される。この中空糸膜を使用して技術は、生体組織分離処理のために用いられる方法として、遠心分離法や従来式の濾過処理技術に取って代わるべき方法を提案している。
【0012】
米国特許US5,674,394には、全血から血漿/血清を分離するために使用される微小体積の血漿を生成する使い捨て可能な装置による濾過処理技術が開示されている。血漿/血清を取り出すための当該システムは、単独使用が可能な濾過ユニットを備え、当該濾過ユニットは、流体が相互に流通するのを可能にする2つの流入口を有し、と、流出口と、流入口から流出口へと血漿を選択的に浸透させる濾過膜を有している。当該流入口には、手動操作により作動させることができ、単独使用が可能なポンプが接続されている。複数のポンプの間における上記濾過膜に沿って流路が定義され、当該流路構成によって、全血は2台のポンプの間において濾過膜を通過しながら繰り返し交換され、その結果、血漿が濾過膜を通り抜けて流出口から出てゆく。
【0013】
米国特許US5,919,356には、流体(好ましくは、血液などのような体液)からサンプルを抽出するための装置が開示され、当該装置は、当該流体中に含まれる含有成分を当該流体から分離するための濾過手段と、サンプル抽出すべき流体が流体供給元から供給され、当該装置内を通過するように、当該流体の流れる流路を規制する流体導管と、流体中に含まれる含有成分の存在を検出する感知手段と、を有している。
【0014】
米国出願公開公報US2003/0206828には、可搬型でありかつハンドヘルド型である血液サンプル抽出装置が開示されており、当該装置は、流体保持用の内部容積部分を有し、当該内部容積部分は、血液分離処理用の濾過手段を含んでいる。当該濾過手段は、複数の細孔部を有し、当該複数の細孔部のそれぞれは、血液中の選択された構成成分(例えば、血漿/血清)が装置内部を通過することを可能とするような寸法を有する。当該濾過膜は、中空糸膜フィルターであり、当該中空糸膜フィルターは、流体導管の内部を流体導管の延伸方向に沿って延伸しており、当該中空糸膜フィルターの第1の端部は、流入口に近接配置されていると共に密封されており、当該中空糸膜フィルターの第2の端部の位置に配置された流出口との間で流体が流通可能となっている。
【0015】
全血から血漿/血清を効果的に分離することを可能とし、溶血反応を起こさずに血液細胞を一切含まない血漿/血清を適切な分量だけ迅速、安全かつ安定的に取得する方法の実施のために使用するのに適しており、全血から血漿/血清を分離するために使用される
濾材を実現することの必要性が依然として存在する。この種の濾過処理工程を使用することにより、採血した血液の遠心分離処理や遠距離輸送に要する時間遅延に起因して、患者から血液を採血した後に血液の品質が劣化するといった問題や、血液分析により得られた良好な分析結果が得られないといった問題が回避される。何故なら、血液から血球を分離する処理は、救急医療での緊急時に遠心分離処理を行う必要なしに、又は血液サンプルが収集されたその場で直ちに実施可能だからである。
【0016】
以上より、本発明は、全血から血漿/血清を分離するための手段として、全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することを目的とし、これにより、溶血反応や血球(赤血球、血小板および白血球)の漏洩により生じる上述した問題点を克服可能であるという点で、先行技術と比べて格別の技術的優位性を有する。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態では、例えば、溶血を(殆ど)発生させずに血液細胞を一切含まない血漿/血清を充分な分量だけ分離可能なクロスフロー濾過などによって全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することをさらなる目的とする。
【0018】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、
濾材の材質と表面特性が以下のように選ばれる全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。すなわち、本発明の幾つかの実施形態では、
濾材の材質と表面特性として、全血サンプルと中空糸膜
濾材との間の接触に起因して生じる溶血反応が低減されもしくは回避されるような材質と表面特性が選ばれる。これは、多孔質の濾過膜構造によって引き起こされるpHの急激な変化、浸透圧の変化または毛細管現象などのような好ましくない効果の発生が抑制されることを意味する。
【0019】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、以下のような全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。すなわち、好ましくは手動操作によって又は遠心分離手段を用いずに容易に自動化することが可能な方法で、血漿/血清の分離処理が実現可能な全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0020】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、遠心分離法などのような従来方式を使用した分離処理よりも時間をかけずに血漿分離が可能な全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0021】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、以下のような全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。すなわち、この点に関して留意すべきなのは、血球(血液細胞)を含んだ状態の全血処理用中空糸膜
濾材は、患者の体に戻すために回収される必要がないので、医用ディスポーザブル製剤として使用可能な点である。
【0022】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、多目的利用に適している全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0023】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、救急医療での緊急時に使用可能な全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。理想的には、全血からの血球の分離は、採血の実施場面において既に成されているべきであろう。そのような場合、取得された血漿/血清のサンプルは、引き続いて直ちに処理され、(例えば、ポイントオブケア検査用装置などのような)血漿/血清の分析装置へと直送され得るであろう。ここで、救急医療での緊急時とは、事故現場から搬送された患者を診断する場合のみならず、患者が診療所から搬送されてくる場合や、病院での手術中に容体に合わせて患者が管理されるような場合に、血液を処理するための全ての処理過程を含む。この点において、遠心分離処理によるボトルネック上の問題を克服したり、血漿分離処理がされる前の全血の長期にわたる処理や長時間にわたる輸送に起因して、誤った血液分析結果が得られるのを回避したりすることもまた本発明の目的である。
【0024】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、
濾材の目詰まりを起こさない全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0025】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、全血処理用の中空糸膜
濾材によって(例えば、摩擦力やその他の機械的な作用力に起因した)血液細胞の破裂が誘発されないような全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0026】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、全血のサンプルから血漿/血清を分離するのに使用可能な手段として、濾過された液体中に
赤血球が漏洩する危険性を低減するような全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0027】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、所望される場合には追加の検査を実施するために使用可能な凝集体を含んだ血液細胞成分を提供するのに適している全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。
【0028】
加えて、本発明に係る幾つかの実施形態のさらなる目的は、濾過された液体として、血液細胞を全く含まないか殆ど含まない血漿/血清を結果として生成し、血液分析の対象となる分子成分の分量が濾過処理によって相対的にほぼ変化しないまま維持されるような全血処理用の中空糸膜
濾材を提供することである。理想的には、そのような全血処理用の中空糸膜
濾材は、不活性かつ血液適合性のある物質で形成され、抽出物や凝血粒を逃がさず捉え、
濾材の固形表面上において特定の血漿/血清が吸収されることがなく、
濾材の固形表面と特定の血漿/血清とが交差反応を起こすこともないような中空糸膜
濾材であるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書中において使用される用語「全血」とは、(典型的には凝固していない)血漿成分と血液細胞成分とを構成成分として含む血液を指して言う用語である。血漿は、血液全体の体積の約50%〜60%を占め、赤血球(RBC)、白血球(WBC)および血小板を含む血液細胞成分は、血液全体の体積の約40%〜50%を占めている。また、本明細書中において使用されるように、用語「全血」とは、動物の体内の全血を意味しても良いが、好ましくは、人体を流れる全血を指して言うものとする。
【0033】
血液細胞の総数の約90%〜99%を占める赤血球は、変形されていない状態では、表面が両凹面状の円盤形状を有し、直径が約7μmで厚みが約2μmである。骨髄が化膿している間は、赤血球内において細胞核は失われる。それら赤血球は、原形質蛋白質のスペクトリンおよびその他の蛋白質類を含むことによって、必要に応じて形状を変化させるための変形自在性を与えられている。それら赤血球の独特で変形自在な形状により、赤血球は、非常に細い毛細管を通過しながら酸素と二酸化炭素を運搬するための最大限の表面積を持つことが可能となっている。赤血球が持つこの変形自在性は、濾過処理によって全血から赤血球を分離することを難しくしている。何故なら、赤血球は、自身の形状を細長く引き伸ばして自身の直径を約1.5μm程度まで縮小させることができるからである。通常の全血には、1マイクロ・リットルあたり約4,500,000個〜5,500,000個の赤血球が含まれている。体内で循環する血流内では、個々の赤血球の寿命は約120日間である。赤血球の中核的な構成成分の一つはヘモグロビンであり、ヘモグロビンは、酸素と結びつくことによって酸素を生体組織へと運搬した後に酸素を切り離し、体外に排出すべき排出物として肺に送るべき二酸化炭素と結びつく。ヘモグロビンが赤色色素として寄与することによって、赤血球は赤色を有し、その結果、血液全体も赤色を有することになる。赤血球は、血液の粘性の大きさに寄与し得る最も主要な要因である。
【0034】
白血球は、血液細胞の総数の約1%を占め、白色の血液細胞から成る別のグループ(リンパ球、顆粒球および単核白血球を含むグループ)に類別され得る。それら白血球は、遊出現象によって毛細血管から外に出ることができる。さらに、それら白血球は、アメーバ状の挙動と正の走化性によって生体組織の間の隙間を通って移動することができる。それら白血球は、約6μm〜20μmの直径を有する。白血球は、例えば、体外からの細菌類やウイルスの侵入に対抗する等のために機能する身体の防御機構に参画している。
【0035】
血小板は、最も小さい血液細胞であり、長さが約2μm〜4μmであり、厚みが0.9μm〜1.3μmである。それら血小板は、生体膜結合性を有する細胞断片であり、血液を凝固させるのに重要な役割を果たす酵素やその他の物質を含んでいる。特に、それら血小板は、血管に生じた破裂部分を塞ぐのを助けるために一時的に形成される血小板血栓を形成する。
【0036】
用語「血漿」とは、血液の液体成分とリンパ液を指して言い、血液の全体積のおよそ半分(例えば、血液の全体積の約50%〜60%)を占めている。血漿は細胞を持っておらず、血清と違って凝固していない。従って、血漿は凝固因子をすべて含んでおり、特に、フィブリノゲンを含んでいる。血漿の全体積の約90%〜約95%は水が占めており、透き通った黄色い液体である。用語「血清」とは、血液が完全に凝固可能な状態において血液から分離した透明な液体であり、その結果、凝固している間に特にフィブリノゲンが除去された血漿に相当する。血漿と同様に血清もまた薄い黄色である。血漿/血清の構成成分は、複数の異なるグループに分類されることが可能であり、これらのグループは、電解質、脂質代謝物質、(例えば、病原体の感染や腫瘍の存在などを示す)マーカー物質、酵素、基質、蛋白質、さらには薬剤やビタミン類などまでもが含まれる。
【0037】
本明細書中で使用される用語「血液細胞を含まない(Cell−Free)」とは、血漿/血清の体積中に赤血球、白血球および血小板を含む血球(血液細胞)を全く含んでいないか殆ど含んでいない血漿/血清のサンプルを表し、例えば、血液を遠心分離処理するなどにより用意される。血球(血液細胞)を全く含んでいないか殆ど含んでいない血漿/血清のサンプルは、引き続いて血漿/血清の分析を行う際に、分析システムが故障により停止するのを防止するために必要とされる。
【0038】
具体的事例における血漿の分析に関し、以下の表に記載のとおり、複数の関連する分子成分のグループから構成される検査対象物質が選択される。ヘパリン安定性を有する全血について、検査対象物質の基準となる濃度範囲は、適用される測定技法に依存して決まる。検査対象物質の濃度について以下の表に示す基準濃度範囲は、シーメンス社製の分析装置「Dimension」を使用することによって得られたものであり、シーメンス社製の分析装置「Dimension」は、血漿の分析のみならず、血清の分析にも使用されてもよい。
【表1】
【0039】
本明細書中で使用される表現「血漿または血清の
浸透可能性を保証する」とは、好適には、分析対象となる上記血漿または血清に含まれる構成成分のいずれもが、濾過処理によって完全に維持される訳ではない旨を意味する。好適には、分析対象となる血漿/血清に含まれる構成成分の濃度は、濾過前における全血のサンプルと比較した場合、濾過処理によって大きくは変化しない。さらに好適には、分析対象となる血漿/血清に含まれる構成成分の濃度は、約50%より大きくは変化せず、さらに好適には、約35%より大きくは変化せず、さらに好適には、約10%より大きくは変化せず、最も好適には、
約8%より大きくは変化しない。
【0040】
本明細書中で使用される用語「溶血」とは、例えば、化学的作用、熱的作用または機械的作用などに起因して赤血球が破裂し、その結果として、赤血球内のヘモグロビンやその他の内部組成成分が周囲の液体中に流れ出てしまうことを指して言う。溶血の発生は、血漿/血清がピンク色から赤色へと変わる色合いの変化を呈することにより視覚的に検知することができる。溶血は血清サンプルにおいても血漿サンプルにおいても共通して観察可能な現象であり、血液分析に際して実験室内で用いられる検査パラメータの信頼性を損なってしまう可能性がある。溶血には2通りの発生源があり得る。体内で起きる溶血は、自己免疫性溶血性貧血などのような病状や輸血反応に起因して発生する可能性がある。体外の容器内で起きる溶血は、血液の検査サンプルの不適切な収集、不適切な処理または不適切な輸送に起因して発生する可能性がある。特に、溶血は、血液サンプルが多孔質の
濾材中を通過する際に濾過処理の過程で発生する著しい血圧降下および高いせん断速度や高い伸長速度によって引き起こされる可能性がある。溶血を引き起こすその他の重要な要因は、細菌による汚染、圧力、温度、浸透圧が生じる環境、pH値、壁面との接触、摩擦力、血液の経時劣化および分離処理がされる前の全血サンプルの長期にわたる保存などである。
【0041】
溶血の度合いは、所定のヘモグロビン濃度(Hb,Hgb)を有する基準血漿溶液と対比することにより視覚的に検知することが可能である(
図1を参照)。ヘモグロビンを全く含まない基準溶液と血漿のサンプルとが同一色である場合には、それは、溶血が全く起きていないことを示している(この場合、血漿サンプルは、“o”区分に分類される)。約50mg/dlの濃度のヘモグロビンを含む基準溶液と比べて、血漿のサンプルが同程度に赤色またはそれよりも薄い赤色であるならば、それは、溶血が殆ど起きていないことを示している(この場合、血漿サンプルは、“n”区分に分類される)。この点に関し、「溶血が殆ど起きていない」とは、所与の血漿サンプルが示すヘモグロビン濃度が充分に低いことにより、(例えば、シーメンス社製の分析装置「Dimension」などにより)血漿サンプルを分析した場合に、依然として満足のゆく分析結果が得られることが保証されるようなヘモグロビン濃度が検知されたことを意味する。約100mg/dlの濃度のヘモグロビンを含む基準溶液と比べて、血漿のサンプルが同程度に赤色またはそれよりも薄い赤色であるならば、それは、溶血が中程度に発生していることを示している(この場合、血漿サンプルは、“m”区分に分類される)。約100mg/dlの濃度のヘモグロビンを含む基準溶液と比べて、血漿のサンプルがそれよりも濃い赤色であるならば、それは、著しい溶血が発生していることを示している(この場合、血漿サンプルは、“h”区分に分類される)。
図1に示される複数の基準溶液は、それぞれ、20,50,100,250,300および1000mg/dlのヘモグロビン濃度に対応する。
【0042】
全血の濾過処理に関し、基本的には、複数の異なるタイプの濾過処理工程が利用可能である。処理工程の技術的な観点から言うと、濾過処理工程は、以下の3種類の異なる動作モードに分類される。
−静的な動作モードとして使用されるデッドエンド濾過方式
−動的な動作モードとして使用されるクロスフロー濾過方式
−浸水型濾過処理システム。
【0043】
デッドエンド濾過方式の動作モードでは、供給液の流束方向は、典型的には、中空糸膜濾過部材の表面に対して直交しており、濾過される液体は、典型的には、中空糸膜
濾材と直交する向きに中空糸
濾材を通り抜けて流れるので、デッドエンド濾過方式の濾過処理モジュールは、2つの終端面を有する濾過処理モジュールとして動作させられる。濾過処理によって濾し出された全ての固形粒子は、中空糸膜の表面に堆積させられる。いわゆる被覆層と呼ばれるこの堆積層は、時間の経過に伴って流れ抵抗を増大させる結果を生じ、(典型的には、定圧動作モードにおいて)中空糸膜内に浸透して流れる流量は、時間の経過に伴って減少する。そこで、一定の濾過処理期間が経過した後に、当該濾過処理モジュールは、被覆層を除去するために洗浄されなくてはならない。従って、デッドエンド濾過方式は、典型的には、処理過程全体が不連続なものとなる。
【0044】
典型的なクロスフロー濾過方式の動作モードでは、供給液が流れる側において、供給液の流束方向は、中空糸膜濾過部材の表面に対して並行である。さらに、クロスフロー濾過方式の動作モードでは、分離されるべき固形粒子は、中空糸膜の表面上に堆積してゆき、被覆層を形成する。被覆層に対して並行に流れる供給液の流れにより、被覆層の形成を制御する仕組みが存在する。クロスフロー方向に沿って被覆層をせん断しようとする作用力が中空糸膜の表面に誘起され、当該せん断作用力は、中空糸膜上に堆積した固形粒子を被覆層から供給液の流れる先へと運び去る。従って、中空糸膜の表面上での固形粒子の堆積と固形粒子の再飛散との間の均衡状態が保たれるならば、被覆層も定常的な状態に保たれる。被覆層の前後における圧力降下幅が増大した場合には、濾過浸透液を使用した背面洗浄動作を一定流速で又は鼓動するように変化する流速で適用することによって被覆層を除去する。
【0045】
本明細書中で使用される用語「クロスフロー濾過処理」とは、中空糸膜濾過部材または別のタイプの濾過部材の表面に対して供給液の流れが接線方向に横切るように通過し、2本の排出流が生成されるような濾過処理工程を指して言う。浸透液すなわち濾過される液体の流れは、流体全体の中で、
濾材を通過した部分に相当する。この浸透液すなわち濾過された液体に含まれる可溶性および/または不溶性の構成成分が
濾材の細孔径よりも小さい大きさである場合には、この浸透液すなわち濾過された液体は、最初に供給された供給液流と同じパーセンテージ濃度の可溶性成分および/または不溶性成分を含んでいる。供給液流の残りの部分は、
濾材を通過することなく残留し、
濾材の表面を並行に横切って流れ続けながら、それにより濾過膜を浄化したり被覆層の厚みを増したりする滞留液流に相当する。この「濾過膜の浄化作用」とは、濾過膜の接線方向に沿った流れを使用して濾過膜上により厚く堆積した固形粒子が(例えば、デッドエンド濾過方式の処理工程において濾過ケーキとして観察されるような)濾過膜の目詰まりを起こすのを防止する働きであると解釈できる。
濾材の表面を横切るようにして滞留液流を繰り返し通過させることにより、濾過済み液の分量を徐々に増やすことが可能である。濾過処理装置の筐体における一方の端部から他方の端部へと流れる鼓動液流を発生させることに替えて、回流動作モードを設けることも基本的には可能である。
【0046】
基本的に、クロスフロー濾過方式は、本発明の目的である全血の濾過処理にとって非常に技術的優位性の高い処理方法である。何故なら、クロスフロー濾過方式は、加圧とせん断力に対して脆い血液細胞を濾過するのに特に適しているからである。中でも特に、赤血球は、細胞の変形を引き起こす静的な血圧降下に対して非常に脆弱である。濾過膜に沿ってクロスフロー方向の流動を適用することは、血液細胞が濾過膜の表面から距離を置いて液相内部を流れ続ける状態を維持することにより、膜浸透圧を上昇させた状態で濾過処理を行うと同時に溶血の危険性を低下させる。何故なら、濾過膜に沿ってクロスフロー方向の流動を適用することにより、高い膜浸透圧だけでなく、血液細胞の過多に起因する
濾材の目詰まりが効果的に避けられるからである。続いて行われる分析や保存を目的として血漿/血清を取得するためには、クロスフロー濾過方式で濾過処理される全血のサンプルは、典型的には、約0.01ml〜約10mlの分量を有しているべきである。
【0047】
本明細書で使用される用語「外側から内側へ」すなわち「内向きの」クロスフロー濾過方式とは、導管形状または毛細管形状の濾過材(例えば、中空糸膜濾過材)の一つの動作モードを記述するものである。この動作モードにおいては、供給液の流れは、濾過処理モジュールの外殻側に位置する濾過材の外側から流れ、濾過液が壁面部を介して濾過材の内側へと突き抜ける。典型的には、上述した滞留液の流れは、濾過材の外側において発生し、相対的に少ない度合いで一部の液体が濾過材自体の内側へと浸透してゆく。
図2に典型的な外向きクロスフロー濾過処理モジュールを記す。
【0048】
本明細書で使用される用語「内側から外側へ」すなわち「外向きの」クロスフロー濾過方式とは、中空糸膜濾過材における上述した「内向きの」動作モードと比較して逆の動作モードを記述する。この動作モードにおいては、供給液の流れは、濾過処理モジュールの濾過材の内側から流れ、濾過液が壁面部を介して濾過材の外側へと突き抜ける。典型的には、上述した滞留液の流れは、導管形状に形成された濾過材の内壁面に沿って発生し、相対的に少ない度合いで一部の液体が濾過材自体の外側へと浸透してゆく。
【0049】
「内向きの」濾過処理構成においては、中空糸膜濾過材の壁面に沿って流れる供給液の分量に関してより柔軟性を持たせることができる一方、「外向きの」濾過処理構成においては、「内向きの」濾過処理構成と比較して、中空糸膜濾過材の内径全体にわたって、流体の流動分布をより厳密に規制し、均質性が保証された濾過処理を実現できる。「外向きの」濾過処理構成は、生体工学的な原則論により忠実である。すなわち、血球は、血流の流速が最も高くなる血流の中央部分に自然と集まるようにできているので、口径の細い毛細管を血流が流れることにより、傾向として、血管の壁面に隣接して血球を殆ど含まない血漿から成る層が生成される。上述した血流における血球の分布は、中空糸濾過膜の目詰まりとそれに続く溶血作用が生じる危険性を提言するので、上述した血球分布は、本発明に係る濾過処理を促進すると考えられる。
【0050】
本明細書で使用される用語「中空糸膜
濾材」とは、好適には、導管形状または毛細管形状を有する濾過膜用の
濾材を指して言い、好適には、クロスフロー濾過処理方式に使用するのに適しており、さらに好適には、「外向きの」濾過処理モードでの使用に適している。「外向きの」濾過処理モードにおいては、デッドエンド型の濾過処理方式もまた実施可能である。しかしながら、本発明に従うならば、クロスフロー濾過処理を実施する方がより好適である。同様に、「内向きの」濾過処理モードにおいても、クロスフロー濾過処理方式とデッドエンド濾過処理方式の両者が実施可能であるが、やはり、クロスフロー濾過処理を実施する方がより好適である。上記のような中空糸膜
濾材は、相反転と呼ばれる技術を使用して用意される。相反転処理は、溶媒の蒸散と溶媒以外の成分の沈殿と、熱ゲル化処理によって達成される。基本的には、相分離処理工程は、例えば、大量のポリマー材に対して適用可能であるが、ガラス素材や合金素材に対しても適用可能である。しかしながら、上述した処理工程は、セラミック材に対しても適用可能である。
【0051】
セラミック製の中空糸膜
濾材は、原則的には、以下において後述する相反転処理工程によって用意されることが可能である。
【0052】
粘性を有する
紡糸原液は、少なくとも一種類のセラミック材質の紛体(主成分紛体)と、少なくとも一種類のポリマー材と、少なくとも一種類の溶媒と、任意付加的に、分散剤と、ポリマー添加剤および/または焼結助剤と、を含み、粉ひき処理および撹拌処理によって用意される。当該ポリマー材は、当該溶媒に溶けやすい可溶性を有する。上述した実施形態において好適なポリマー材は、例えば、ポリアクリル・ニトリルやポリエチル・スルホン等であり、好適な溶媒は、nメチル・ピロリドン等である。当該少なくとも一種類のセラミック材質の紛体は、好適には、主な成分として酸化アルミニウムを含んでいる。
紡糸原液の全重量に基づいて決まるポリマー材の分量は、1重量パーセントから50重量パーセントであり、
紡糸原液の全重量に基づいて決まる溶媒の分量は、10重量パーセントから90重量パーセントであり、
紡糸原液の全重量に基づいて決まるセラミック材質の紛体の分量は、3重量パーセントから50重量パーセントである。当該少なくとも一種類のセラミック材質の紛体は、好適には、体積粒径の中央値が約0.1μm〜約2.0μmであり、より好適には、約0.1μm〜約1.5μmである。典型的には、
紡糸原液に対して、さらなる添加物が均質に混ざるように添加され、例えば、分散剤、ポリマー添加剤、焼結助剤、その他の物質が添加される。これらの追加的な添加物が使用される分量の上限は、
紡糸原液の全重量に基づくならば約5重量パーセント程度である。
【0053】
上述した添加物の均質混入処理の後に、
紡糸原液は、複合部材で構成されたノズル部の横断面に環状に設けられた開口部を通って導かれ、セラミック製の中空糸膜
濾材を形成するための中空糸構造を与えられる。内径部分を流れる流体は、上記ノズルを介し、上記ノズルの射出軸方向に沿った内径体積空間を通るように導かれる。
紡糸原液の
紡糸速度は、好適には、毎秒約0.5m〜毎秒約15mである。内径を流れる流体の流速は、好適には、毎秒約0.06m〜毎秒約60mである。これを押し退け体積に換算した流速で表すと、
紡糸原液の
紡糸速度は、典型的には、毎時約0.01リットル〜毎時約5リットルであり、内径を流れる流体の流速は、典型的には、毎時約0.07リットル〜毎時約2.8リットルである。上記
紡糸処理工程は、摂氏約10℃〜約40℃の温度を有する雰囲気中で実施され、より好適には、摂氏約18℃〜約30℃の温度を有する雰囲気中で実施される。
紡糸ノズルの前段部において
紡糸原液に対して印加される超過気圧の押し出し圧力は、好適には、10バール未満とすべきであり、より好適な動作モードでは、6バール未満とすべきである。
【0054】
紡糸原液が、溶媒以外の物質から成り(典型的には)水性の沈殿槽と接触し、さらにノズル開口部において内径を流れる流体と接触した際には、
紡糸原液に含まれるポリマー材は水性の沈殿槽に対して不溶性であるので、
紡糸原液に含まれる溶媒は、水によって取り除かれ、その結果、
紡糸原液は凝固する(相反転する)。典型的には、内径部分を流れる流体は、
紡糸原液が通される水性沈殿槽内と同じ成分組成を有する。
紡糸原液が内径部分を流れる流体と水性沈殿槽に接触することで、中空糸構造の内壁面と外壁面において内側お外側の沈殿過程が開始される。内径部分を流れる流体と水性沈殿槽の溶媒の組成に応じて、さらには、
紡糸原液に添加した添加剤の種類に応じて、内径部分を流れる流体と水性沈殿槽の温度と粘性率、沈殿過程の進行期間中において多孔質膜構造が形成される過程を制御する拡散過程が影響を受ける。拡散過程の進行速度が速ければ、指状の細孔構造が形成され、拡散過程の進行速度が遅ければ、スポンジ状の多孔質膜構造が形成される。
【0055】
紡糸ノズルの開口部が水性沈殿槽の槽内に浸されていた場合には、
紡糸原液は、水性沈殿槽内に直接的に導かれる。さらに別の好適な
紡糸処理過程のプロセス設計においては、
紡糸ノズルの開口部と水性沈殿槽の水面との間に設けられるエアギャップの長さが最大で10cmを上限として調整される。好適には、水性沈殿槽内で及び内径を流れる流体として使用済みの水は、イオンを全く含まない水であり、このイオンを含まない水は、中空糸膜
濾材の生成の後に残留したイオンが濾過処理中に血漿中に染み込むことによる血漿の組成変化を防止するための反浸透作用によって生成される。
【0056】
凝固されたポリマー材は、中空糸膜濾過部材の中空糸構造を事前に定義する。結果的に生成される緑色の繊維状物質が水性沈殿槽内において堆積してゆき、残留した溶媒の成分分子は、洗い流されて除去される。続いて、結果的に生成された緑色の繊維状物質は、約1時間〜約24時間の期間にわたって摂氏約40℃〜約90℃の温度で乾燥処理される。続いて、当該繊維状物質は、加熱処理されて、摂氏約200℃〜約600℃の温度に保たれる。この加熱期間中にポリマー材は焼却されて繊維状物質の中から除去される。つづいて、当該繊維状物質はさらに加熱処理され、少なくとも約1時間、より好適には約1.5時間〜約12時間の期間にわたって摂氏約1000℃〜約2000℃の温度で、より好適には、約1350℃〜約1700℃の温度に保たれ、セラミック材質の部材が焼結生成される。最終的なセラミック製の中空糸膜濾過材の構造は、この焼結処理工程において生成される。この処理工程から、単一層により形成されるセラミック製の中空糸膜
濾材が生成され、さらに続いて、上塗りコーティング処理や事前濡らし処理等のような事前処理が施されることによって表面変成処理が施される。
【0057】
沈殿処理段階から上述した焼結処理工程が終わるまでの間に、典型的には、上述した繊維状物質の外径の熱収縮が生じる。この熱収縮は、沈殿処理段階の直後において上述した繊維状物質が最初に有していた外径と比べて約5%〜約30%の外径の縮小をもたらす。
【0058】
この処理過程の基本的な概念およびセラミック製の中空糸膜
濾材を生成するための物理的または技術的な原理は、先願の特許登録公報「DE199 10 012 C1」において開示されている。本願の発明者が考案した本発明に係る処理過程と上記先願の特許登録公報が開示する処理過程との間には幾つかの基本的な相違点がある。つまり、上記先願の特許登録公報は、多層構造の濾過膜部材を製造するために2種類のポリマー溶液を使用する処理過程を開示しているのに対して、本願の発明者が考案した処理過程は、単層構成の中空糸膜
濾材を製造するためにセラミックの粉体を含んでいる単一のポリマー溶液のみを使用する処理過程を開示している点が異なる。さらには、上記先願の特許登録公報が開示する処理過程では、ポリマーとして、多糖類、多糖類から生成された誘導体またはポリビニル・アルコールが使用されているが、本願の発明者が考案した処理過程では、ポリマーとして、ポリアクリル・ニトリルまたはポリエーテル・スルホンが使用されている。さらには、上記先願の特許登録公報が開示する処理過程では、溶媒としてn酸化アミンが使用されているのに対して、本願の発明者が考案した処理過程では、
紡糸原液を用意するための溶媒として、例えばnメチル・ピロリドンなどが使用されている。
【0059】
相反転により中空糸膜
濾材を製造する処理は、
本願出願人が出願した公開公報「DE 101 48 768 A1」においても開示されている。
【0060】
代替的に、セラミック製の中空糸膜
濾材は、相反転による中空糸成型効果に基づく高圧射出成型処理過程によっても製造することが可能である。この場合、
紡糸原液は、複合的な構成部材により構成されたノズルではなく、穿孔板の孔部を介して圧縮処理される。この孔部を有する穿孔板もまた、複合的な構成部材から成る開口部と共に設計されている。上述したように、糸状に
紡糸原液は、沈殿槽の中を通され、
紡糸原液は、緑色の糸状の形となるように固化させられる。上記孔部を有する穿孔板を通される
紡糸原液に加えられる圧力は、少なくとも20バール以上の圧力である。
【0061】
代替的に、セラミック製の中空糸膜
濾材は、相反転効果を用いずに、高圧射出成型処理過程によっても製造することが可能である。この場合、中空糸の材料は、溶解処理されまたは溶液の状態の粘性を有するポリマー材から直接的に射出成型され、当該射出成型処理の後に乾燥処理され、さらに焼結処理される。セラミック製の中空糸膜
濾材を製造するためのこの方法は、先願の出願公開公報「WO94/23829」および「WO2008/016292」に開示されている。
【0062】
これらの準備作業の後に、セラミック製の中空糸膜
濾材は、肌の表面の脂質による汚染を防ぐために、手にグローブをはめた状態で取り扱われる。
【0063】
本明細書中で用いられる用語「セラミック材料」とは、金属または非金属の化合物から出来ている無機物質の材料を指して言う。セラミック材料は、結晶または部分的に結晶を含む非晶質であっても良い。典型的には、セラミック材料は、粉状のセラミック物質から形成される。具体的には、それは、素地となる固化剤(ここでは、緑色の糸状部材に相当する)を形成するために、粉状のサラミック物質の懸濁液(ここでは、
紡糸原液に相当する)から形成されてもよい。素地となる固化剤の形状は、加熱処理(加熱と焼結)およびその後に行われる冷却によって安定化させられる。
【0064】
さらに、技術的な意味でのセラミック材料は、以下に示す複数の異なる物質カテゴリーに分類することも可能である。
−酸化物:例えば、アルミ酸化物、ベリリウム酸化物、セリア酸化物、ジルコン酸化物、チタニウム酸化物、シリコン酸化物、イットリウム酸化物。
−非酸化物:例えば、炭素化合物、ホウ素化合物、窒素化合物、ケイ素化合物。
−複合材料:例えば、強化微粒子状物質、強化繊維材、酸化物と非酸化物から成る複合材。
−さらに別の複合材料:例えば、ゼオライト材、
ペロブスカイトなど。
【0065】
本発明に係る幾つかの実施形態によれば、上記セラミック材料は、好適には、金属酸化物を備え、当該金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムから成る物質群の中から選択される。好適には、上記セラミック材料は、主として、酸化アルミニウムを備え、任意付加的に、酸化チタンなどのような別の金属酸化物をさらに混合したものを備える。上記セラミック材料の全重量中に酸化アルミニウムが占める比率が少なくとも98重量パーセント、好適には、約99重量パーセント、さらに好適には、99.5重量パーセントから99.9重量パーセントであり、任意付加的に、当該セラミック材料中に別の金属酸化物を約0〜約2重量パーセント、好適には、約0.1〜約1重量パーセント、さらに好適には、約0.1〜約0.5重量パーセントだけ含むようにするのが特に好ましい。
【0066】
本明細書中で用いられる酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)は、αアルミナ(α-Al
2O
3)またはγアルミナ(γ-Al
2O
3)として上記セラミック材料中に含まれている。好適には、上記セラミック材料を生成するのに用いられる酸化アルミニウムの体積粒径の中央値(メディアン値)は、約0.1〜約0.2μmである。
【0067】
中空糸膜
濾材において、サンプルから組成成分を分離するための所望の分離処理(例えば、全血サンプルから血漿/血清を分離する処理)を達成するためには、細孔径は重要な特性である。当該細孔径は、濾過膜上で濾過されずに残る分子の大きさ(分画分子量(MWCO: Molecular Weight Cut-Off))によって定義される。代替的に、当該細孔径は、細孔の個数または細孔の体積に関連した直径の中央値(メディアン値)によって定義され、好適には、体積に関連した細孔径の中央値(細孔径中央値)によって定義される。この観点から、さらに別の重要なパラメータとしては、体積に関連した細孔径の分散値(細孔径分散値)が挙げられる。さらに、細孔構造を記述するための特性値として、計測可能な孔隙率などのような他の特性値も使用可能である。
【0068】
MWCO(分画分子量)は、全溶質中における90%、好適には95%、さらに好適には99%が濾過膜によって濾過されずに残るような溶質分子重量(Daltonsa,Daを参照)、もしくは全分子量中における90%、好適には95%、さらに好適には99%が濾過膜によって濾過されずに残るような分子(例えば、球状タンパク)の分子量として定義される。
【0069】
細孔径中央値または細孔径分散値は、水銀圧入ポロシメータ測定法により決定することが可能である。水銀圧入ポロシメータ測定法においては、まず、サンプル・セルからガス成分が抜き取られ、続いて、真空引き状態に置かれた当該サンプル・セル内に水銀が投与され、当該水銀を当該サンプル・セル内へと圧入するために、圧力が加えられる。水銀圧入ポロシメータ測定法の実行期間中に、加えられた圧力(p)とサンプル・セル内に圧入された水銀の体積(v)が記録される。分析の結果として、圧入量-対-押し出し量の関係を記述する曲線グラフが得られる。サンプルの細孔構造を記述するパラメータは、取得されたデータから算出することが可能である。この技法の基本原理は、水銀がほとんどの物質に対して浸潤性を持たないので、強制的な圧入を行わない限り、水銀が毛細管現象の働きで細孔に流入してゆくことはないという事実に基づいている。液状である水銀は、高い表面張力(γ)を持つと共に、ほとんどの個体に対して高い接触角(θ)を示す。水銀を細孔空間内に圧入させるために細孔の半径(r)に反比例する大きさの圧力(p)を加えることが必要となる。これらの既知のパラメータに基づいて、細孔の半径(r)は以下のウォッシュバーン方程式によって決定される(Washburn 1921を参照)。
【数1】
ここで、rは、水銀が圧入される細孔の半径であり、γは、水銀の表面張力であり、θは、個体サンプルの表面上での水銀の接触角である。水銀の表面張力と接触角として一般に使用される値は、それぞれ480mNm
−1および140°である。従って、ウォッシュバーン方程式によれば、細孔の半径は、加えられた圧力から計算することができる。水銀圧入ポロシメータ測定法による測定は、DIN66133に従って行われる。
【0070】
総細孔体積(Vtot)は、決定された最大の圧力で圧入された水銀の総体積を表す。時として特定細孔表面領域とも呼ばれる総細孔表面領域(S)は、以下の計算式により算出される。
【数2】
総細孔表面領域(S)は、圧入曲線よりも上側を占める領域である。細孔径の平均値(d
mean)は、時として、平均細孔径または水力直径とも呼ばれ、細孔の端部における開口部分が円筒形状であるという仮定を置くならば、以下の式により算出される。
【数3】
【0071】
細孔径の中央値(d
median)は、圧入しようとする水銀の全体積の中の50%分がサンプル内に圧入される場合の細孔径である。一般に、平均細孔径は、細孔径の中央値と比べて細孔の直径としてより大きいのではなくより小さい値を強調する。
【0072】
体積で見た細孔の大きさに関する分布曲線は、累積残差曲線に関する以下の3つの値、すなわち、D10(細孔容積中の10%は、D10よりも大きな直径を有する細孔部分によって構成されている)、D50(D50は、細孔径の中央値(d
median)に等しく、細孔容積中の50%は、D50よりも大きな直径を有する細孔部分によって構成されている)およびD90(細孔容積中の90%は、D90よりも大きな直径を有する細孔部分によって構成されている)によって特徴付けられる。D10の値とD90の値とが互いに近い値であるほど、細孔の大きさの分散幅は小さくなり、当該分散幅は、D10/D90で表される比に等しく、細孔の大きさの分散幅は小さくなるほど当該比は1に近づく。
【0073】
加えて、水銀圧入ポロシメータ測定法は、材料の計測可能な孔隙率を与えることが
可能である。孔隙率は、材料中において空隙となっている空間量の尺度であり、材料の全体積中において空隙となっている体積が占める比率で表され、0から1までの間の値または0%〜100%までの間の値をとる。計測可能な孔隙率とは、材料の全体積中において、流体の流れが実質的に生じる体積分が占める比率を指して言い、(特にデッドエンド型濾過膜の細孔については)開口状態の細孔は算入対象に含まれるが閉鎖状態の細孔は算入対象から除かれる。
【0074】
細孔の容積上の大きさの分布、細孔径の中央値、細孔の全容積および特定細孔表面領域を判定するための完全に自動化された水銀圧入ポロシメータ測定装置は、(例えば、Porotec社から市販されている製品のように)商業的に利用可能である。他の測定装置やオプション機能を使用することにより、3000μm〜1.8nmの範囲の細孔の半径を判定することも可能となる。
【0075】
全血を濾過する際に生じる溶血の観点からは、上記セラミック材料の表面の粗さは、中空糸膜
濾材に関するさらに追加の特性である。
【0076】
セラミック材料として酸化アルミニウム(Al
2O
3)を備える中空糸膜
濾材の表面の粗さは、セラミック材料を準備するための準備方法に依存し、多数の要因と関係しているが、そのような要因の中でも特に、
紡糸懸濁液中におけるAl
2O
3の含有量、Al
2O
3を素材とする紛体の体積粒径の中央値(メディアン値)、焼結温度および焼結処理時間のような要因と関係している。一般に、中空糸膜
濾材を製造する際に、
紡糸懸濁液中に含まれるAl
2O
3の含有量を低くし、主成分となる紛体の粒径サイズを小さくし、焼結温度を高くし、焼結処理時間を長くすると、その分だけ、中空糸膜
濾材の表面が滑らかなものになる。この観点において、
紡糸懸濁液に含有される主成分紛体における容積上の細孔径の中央値が1μmである状態で準備された中空糸膜
濾材と比較して、
紡糸懸濁液に含有される主成分紛体における細孔径中央値が0.01μm〜0.3μmである状態で準備された中空糸膜
濾材の外表面は、より滑らかなものとなるとも言える(2007年に出版されたKang Li著:分離処理と反応処理のために使用されるセラミック濾過膜、John Wiley&Sons, Ltd.を参照のこと)。
【0077】
中空糸膜
濾材の表面が滑らかなものであれば、血液サンプルの濾過処理を行う際に、表面の粗さに起因して生じるせん断力によって引き起こされる赤血球の破裂がその分だけ容易には起こりにくくなるので、溶血もその分だけ起こりにくくなる。
【0078】
表面の粗さは、光学的な測定方法により判定することも可能であり、当該光学的な測定方法は、例えば、Nanofocus社から提案されたCMP(Confocal-Multi-Pinhole)技術を使用して実現されるμSurf装置を使用して実施することが可能である。このような非接触型の測定技術を使用することにより、3次元のマイクロ構造及びナノ構造を解析し、標準化された方法(特に、国際標準ISO25178に従って標準化された方法)に従って表面の品質を評価することが可能となる。特性パラメータは、Saであり、特性パラメータSaは、評価対象として定義された領域内における表面の高さを算術平均した値である。光学的な測定システムの技術的利点は、中空糸膜
濾材の内部に位置する表面上の粗ささえも解析することが可能である点である。測定結果において見られる表面の曲率の影響はコンピュータを使用した演算により除去することが可能である。
【0079】
さらに、溶血の発生を防止するという観点からは、中空糸膜
濾材の表面における浸潤性が低いことが技術的に有利である。何故なら、濾過膜が血液サンプルと最初に接触する際に起きる毛細管現象による効果を低減することが可能であると共に、濾過処理過程における血液の流束もまた低減することができるからである。濾過膜表面の浸潤性を低く抑える処理は、例えば、親水性が低く抑えられたコーティング剤により表面を上塗りコーティングすることにより実現される。物理的な理論に拘らなければ、濾過膜表面の浸潤性が低いということは、全血サンプルの濾過処理にとって技術的に非常に有利であるという仮定を置くことができるだろう。このような観点から、濾過膜表面の浸潤性が低いということは、ホウケイ酸ガラスで形成された表面を同じ化学組成のコーティング剤で処理した基準表面に対して水または血液の液滴が60°〜90°(好適には、80°〜89.9°)の接触角を有していなければならないことを意味するものと定義できる。この場合、上塗りコーティング処理をしなかった場合と比較すると、浸潤性は低減されているものの、以下のように定義の仕方によっては、上塗りコーティング処理された表面は依然として親水性を有しているとみなされる場合もある。つまり、表面が親水性であるとは、水または血液の液滴が表面に接触する際の接触角が90°よりも小さいと定義する場合と、表面が親水性であるとは、水または血液の液滴が表面に接触する際の接触角が90°よりも大きいと定義する場合とでは、親水性を有するか否かの判断は違ってくる。従って、浸潤性が低いという言い方は、
濾材表面の疎水性を完全には包摂していない。濾過膜の表面が疎水性を有する場合には、血漿の状態回復を緩慢かつ低くしたり血球細胞を損傷させて溶血を起こしたりするには、膜透過圧を高くする必要がある。
【0080】
浸潤性は、例えば、上塗りコーティング処理されたガラス膜の上で判定することが可能である。つまり、上塗りコーティング処理されていない親水性のガラス面上における水滴の接触角は約44°であり、上塗りコーティング処理済みのガラス面上における水滴の接触角は、上塗りコーティング処理の所定過程と水滴サイズに依存して、約60°〜約90°となり得る。
【0081】
一般に、全血との間の相互作用を全く示さないあらゆる材料や材質は、血液適合性を有する材料や材質と呼ばれる。全血との間の相互作用を全く示さないという言い方が特に意味するものは、例えば、血液凝固系を形成する血小板との間での相互作用により当該材料や材質が血液凝固を起こさないということである。従って、血液適合性を有する材料は、血栓形成効果を全く有さない。本発明の幾つかの実施形態に係る中空糸膜
濾材は、血液適合性を有することが好ましい。さらには、本発明の幾つかの実施形態に係る中空糸膜
濾材は、如何なる血液成分の濃度も吸収作用や化学反応によって変化させられることが無く、濾過膜表面が全血と接触しても溶血を起こさないことが好ましい。
【0082】
血液適合性をもたらし、血液成分に吸収作用が働くことを防止するためには、濾過膜表面をマイナスの電荷で帯電させるようにすることが技術的に有利である。流動電位測定によって濾過膜表面の電位を判定することにより、この帯電状態を測定することが可能である。個体部分の表面とそれを取り巻く液体部分とが接する界面は所定の電荷分布を示し、当該電荷分布は、個体部分のバルク相と液体部分のバルク相の電荷分布とは異なっている。電気化学二重層のモデルにおいては、この電荷分布は、固定層部分と可動層部分と分割され、固定層部分と可動層部分との間はせん断面によって隔てられている。この線断面に沿って固定部分の表面と液体バルク相との間の電気減衰に対してゼータ電位が割り当てられる。個体と液体の境界面に対して並行に外部圧勾配を加えることにより、固定層部分と可動層部分とが相対的に変位可能となり、ゼータ電位を実験的に計測可能とするような電荷の分離をもたらす。本発明の幾つかの実施形態に係る事例においては、セラミック製の中空糸膜
濾材である個体サンプルを含んだ測定対象セルの中を希薄電解質が循環させられる。その結果、電気化学二重層において、相対的な電荷の移動が生じ、流体のように流れる流動電位を発生させる。この流体のように流れる流動電気(または別の言い方をすれば、流体のように流れる電流)は、上記個体サンプルの両端面に設置された電極によって検出される。上述したゼータ電位は、この流体のように流れる流動電気(または、流体のように流れる電流)から算出することができる。これと同時に、上述した電解質の導電率、温度およびpH値を判定することができる。上記の測定は、Anton Paar社から市販されている分析装置SurPASSを使用して実施することが可能である。
【0083】
本発明に係る第1の実施形態は、セラミック材料を備える全血処理用の中空糸膜
濾材を対象としており、当該セラミック材料は、血漿/血清に対しては浸透性を保証しながら血液細胞(血球)を濾過せずに残すような細孔径を有する多孔質である。好適には、当該全血処理用の中空糸膜
濾材は、多孔質のセラミック材を備えており、当該多孔質セラミック材において、血漿/血清に対しては浸透性を保証しながら血液細胞(血球)を濾過せずに残すような細孔径を有する。好適な一実施形態においては、本発明は、セラミック材料を備える全血処理用の中空糸膜
濾材を対象としており、当該セラミック材料は、血漿に対する浸透性を保証可能な細孔径を有する多孔質である。
【0084】
好適な一実施形態においては、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材が有する細孔径は、血漿/血清に含まれる全ての構成成分に対する浸透性を保証し、そのような構成成分の中でも特に、電解質、脂質代謝物質、(例えば、病原体の感染や腫瘍の存在などを示す)マーカー物質、酵素、基質、蛋白質、さらには薬剤やビタミン類などに対して浸透性を保証する。従って、引き続いて行われる分析処理は、それぞれの構成成分における分子構成が濾過処理前から変化しないままの状態に基づいて行われるので、必要とされる分析処理の結果として、適切な判定結果を得ることが可能となる。
【0085】
好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、クロスフロー濾過方式の全血処理用中空糸膜
濾材である。当該中空糸膜
濾材は、内向き方向の濾過処理モードまたは外向き方向の濾過処理モードのいずれにおいても使用することが可能である。上述した流体状態内における血液細胞の分布態様に特有の利点を活かせるため、外向き方向の濾過処理モードの方がより好適である。本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材により濾過処理されることが可能な全血アンプルの量は、約0.01ml〜約10mlの範囲内であり、好適には、約0.1ml〜約5mlの範囲内であり、最も好適には、約0.5ml〜約3mlの範囲内である。上述した量の全血サンプルから、濾過処理の結果として、好適には、少なくとも約0.005mlの血漿/血清、より好適には、少なくとも約0.05mlの血漿/血清、最も好適には、少なくとも約0.25mlの血漿/血清を得ることが可能である。
【0086】
好適には外向き方向モードのクロスフロー濾過処理とすべきクロスフロー濾過処理を実現するために、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、好適には、両端部において開口部分を有するようにすべきである。これらの端部において、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、好適には、ポンプ式圧送装置に接続されることにより、濾過処理過程において濾過液の流束を生じさせるために必要とされる差圧を加える。好適には、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材が外向き方向モードのクロスフロー濾過処理において使用される場合、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、板状の筐体によって囲まれており、当該筐体は、濾過液を出し入れするための開口部を有している。
【0087】
上述したポンプ式圧送装置を使用することにより、濾過処理モジュールを介した全血サンプルの透過を複数回にわたって実行することが可能である。好適には、約1回〜約80回の全血サンプルの透過が実施され、より好適には、約10回〜約40回の全血サンプルの透過が実施される。全血サンプルを一回透過させる毎に多孔質の
濾材を通過した全血サンプルから所定量の血漿/血清が除去され、そのたびに血液細胞の濃度が増加してゆくことにより、供給される流体としての全血サンプルは濃縮されてゆくことになる。全血サンプルを透過させる回数は、全血サンプル内の血球濃度、全血サンプルの古さ、患者の容態、濾過処理モジュール内に設けられている中空糸膜
濾材の本数、繊維特性、濾過流速、システムの圧力、および分離された血漿/血清の必要量などに依存して決まる。外気圧と比較した場合の濾過処理モジュール内部の圧力上昇幅は、最大で約1.5バールとすべきであり、好適には、最大で約1.2バールとすべきであり、最も好適には約1.0バールとすべきである。当該圧力上昇幅は、濾過膜の膜間圧力降下を乗り越え、中空糸膜
濾材の細孔チャネルを通過する微小流束が受ける圧力降下を乗り越えるために加えられる。
【0088】
別の好適な実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、デッドエンド濾過方式の全血処理用中空糸膜
濾材である。
【0089】
さらに別の好適な実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、約8000kDaよりも少ない分子量の分子を通過させ、好適には、約10000kDaよりも少ない分子量の分子を通過させ、より好適には、約20000kDaよりも少ない分子量の分子を通過させる。換言するならば、分画分子量(MWCO)は、8000kDaよりも大きく、好適には、10000kDaよりも大きく、より好適には、20000kDaよりも大きい。その結果として、赤血球、白血球および血小板が濾過されずに残るが、血漿の構成成分は残らない。
【0090】
さらに別の好適な実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材が有する細孔径の中央値は、少なくとも約100nmであり、好適には、少なくとも約150nmであり、より好適には、少なくとも約190nmである。好適には、細孔径の中央値は、約100nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約150nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約190nm〜約1280nmの範囲内である。
【0091】
溶血防止の観点からは、細孔径の中央値は、好適には、約100nm〜約400nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約150nm〜約300nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約190nm〜約250nmの範囲内とするのが好ましい。血漿または血清の浸透性を保証する観点からは、細孔径の中央値は、好適には、約200nm〜約1500nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約300nm〜約1500nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約600nm〜約1400nmの範囲内とするのが好ましく、最も好適には、約1100nm〜約1400nmの範囲内とするのが好ましい。従って、上述した2つの特性の両方の観点からは、細孔径の中央値として技術的に有利な値は、約200nm〜約1300nmの範囲内であっても良く、より好適には、300nm〜600nmの範囲内とすべきである。
【0092】
さらに別の好適な実施形態では、細孔径についてのD10の値は、約150nm〜約5000nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約4500nmの範囲内とすべきである。さらに別の好適な実施形態では、細孔径についてのD90の値は、約30nm〜約1000nmの範囲内であり、より好適には、50nm〜750nmの範囲内とすべきである。D10/D90で表される比の値が15以下となるように、より好適には、12以下となるように、さらに好適には10以下となるようにすることは特に好ましい。
【0093】
溶血防止の観点からは、細孔径についてのD10の値は、約150nm〜約500nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約400nmの範囲内とすべきであり、細孔径についてのD90の値は、約50nm〜約200nmの範囲内であり、より好適には、約50nm〜約150nmの範囲内とすべきである。
【0094】
血漿または血清の浸透性を保証する観点からは、細孔径についてのD10の値は、約200nm〜約5000nmの範囲内であり、より好適には、約1000nm〜約4500nmの範囲内とすべきであり、さらに好適には、約2000nm〜約4200nmの範囲内とすべきであり、細孔径についてのD90の値は、約150nm〜約1000nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約800nmの範囲内とすべきであり、最も好適には、約200nm〜約700nmの範囲内とすべきである。
【0095】
従って、上述した2つの特性の両方の観点からは、細孔径についてのD10として技術的に有利な値は、約200nm〜約5000nmの範囲内としても良く、より好適には、約300nm〜約4000nmの範囲内としても良く、さらに好適には、約500nm〜約2500nmの範囲内としても良く、細孔径についてのD90として技術的に有利な値は、約100nm〜約800nmの範囲内としても良く、より好適には、約150nm〜700nmの範囲内としても良く、さらに好適には、約200nm〜約400nmの範囲内としても良い。
【0096】
さらに別の好適な実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材が有する細孔径の平均値は、約100nm〜約1500nmの範囲内とすべきであり、好適には、約150nm〜約1300nmの範囲内とすべきであり、さらに好適には、約150nm〜約1250nmの範囲内とすべきである。溶血防止の観点からは、細孔径の平均値として技術的に有利な値は、約100nm〜約500nmの範囲内であり、好適には、約100nm〜約300nmの範囲内であり、さらに好適には、約100nm〜約200nmの範囲内である。血漿または血清の浸透性を保証する観点からは、細孔径の平均値として技術的に有利な値は、約200nm〜約1500nmの範囲内であり、好適には、約350nm〜約1300nmの範囲内であり、さらに好適には、約400nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約600nm〜約1250nmの範囲内であり、その中でも特に好適な範囲は、約1000nm〜約1250nmの範囲である。従って、上述した2つの特性の両方の観点からは、細孔径の平均値として技術的に有利な値は、約150nm〜約1000nmの範囲内としても良く、より好適には、約200nm〜約600nmの範囲内としても良い。
【0097】
さらに別の好適な実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材が有する細孔径の中央値は、約100nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約150nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約190nm〜約1280nmの範囲内であり、細孔径の平均値は、約100nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約150nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約150nm〜約1250nmの範囲内である。
【0098】
溶血防止の観点からは、細孔径の中央値は、好適には、約100nm〜約400nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約150nm〜約300nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約190nm〜約250nmの範囲内とするのが好ましく、細孔径の平均値は、好適には、約100nm〜約500nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約100nm〜約300nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約100nm〜約200nmの範囲内とするのが好ましい。
【0099】
血漿または血清の浸透性を保証する観点からは、細孔径の中央値は、好適には、約200nm〜約1500nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約300nm〜約1500nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約600nm〜約1400nmの範囲内とするのが好ましく、最も好適には、約1100nm〜約1400nmの範囲内とするのが好ましく、細孔径の平均値は、好適には、約200nm〜約1500nmの範囲内とするのが好ましく、より好適には、約350nm〜約1300nmの範囲内とするのが好ましく、さらに好適には、約400nm〜約1300nmの範囲内とするのが好ましく、最も好適には、約600nm〜約1250nmの範囲内とするのが好ましく、その中でも特に好適な範囲は、約1000nm〜約1250nmの範囲内である。従って、上述した2つの特性の両方の観点からは、細孔径の中央値として技術的に有利な値は、約200nm〜約1300nmの範囲内であっても良く、より好適には、300nm〜600nmの範囲内とすべきであり、細孔径の平均値として技術的に有利な値は、約150nm〜約1000nmの範囲内としても良く、より好適には、約200nm〜約600nmの範囲内としても良い。
【0100】
好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、セラミック材料を備えており、当該セラミック材料は、好適には、炭化ケイ素を含む物質群から選択された非酸化物の材料を備えている。さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、セラミック材料を備えており、当該セラミック材料は、好適には、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸マグネシウムを備えており、さらに好適には、ゼオライトおよび/またはチタン化カルシウムを備え、さらに好適には、
ペロブスカイトを備えている。
【0101】
さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材を形成するセラミック材料は、金属酸化物を備えている。上記セラミック材料は、好適には、金属酸化物を備え、当該金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、
酸化ジルコニウム、酸化イットリウム
、およびこれらの物質を組み合わせた物質から成る物質群の中から選択される。より好適には、上記セラミック材料は、酸化アルミニウムを備え、上記セラミック材料の全重量中に酸化アルミニウムが占める比率が少なくとも約98重量パーセント、最も好適には、少なくとも約99重量パーセントである。より好適には、上記セラミック材料は、酸化アルミニウムを備え、上記セラミック材料の全重量中に酸化アルミニウムが占める比率が少なくとも約98重量パーセント、より好適には、少なくとも約99重量パーセント、さらに好適には、99.5重量パーセントから99.9重量パーセントであり、追加的に、当該セラミック材料中に別の金属酸化物として例えば二酸化チタンなどを上記セラミック材料の全重量中に約0〜約2重量パーセント、好適には、約0.1〜約1重量パーセント、さらに好適には、約0.1〜約0.5重量パーセントだけ含むようにするのが特に好ましい。酸化アルミニウムの変形実施例は、α酸化アルミニウム(α-Al
2O
3)とすることが特に好ましい。典型的には、α酸化アルミニウム(α-Al
2O
3)は、上記セラミック材料を1100℃よりも高い温度で焼結処理することによって形成される。従って、上記セラミック材料が焼結処理されたα酸化アルミニウム(α-Al
2O
3)を、全重量中において、好適には、少なくとも約98重量パーセント、より好適には、少なくとも約99重量パーセント、最も好適には、99.5重量パーセントから99.9重量パーセントだけ含有されるようにすることは特に好ましい。好適には、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材を形成するセラミック材料は、焼結処理されたα酸化アルミニウム(α-Al
2O
3)を、全重量中に99.5重量パーセントから99.9重量パーセントだけ備え、追加的に、当該セラミック材料中に別の金属酸化物として、少なくとも一つの追加的な金属酸化物を上記セラミック材料の全重量中に約0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントだけ含むようにすべきである。上述した複数の重量パーセント値は、焼結処理がされた後のセラミック材料の全重量を基準としている点を了解されたい。
【0102】
さらに別の好適な一実施形態では、上記セラミック材料を形成する酸化アルミニウム紛体の体積粒径の中央値(メディアン値)は、約0.1μm〜約2.0μmの範囲内であり、好適には、約0.1μm〜約1.5μmの範囲内である。上述した数値範囲内の粒径を有する酸化アルミニウム紛体およびその他のセラミック紛体は、例えば、Sasol社やAlmatis社から商業的に入手可能である。紛体の好ましい粒径を規定する上述した数値範囲は、上記セラミック材料の形成過程における開始材料として使用される酸化アルミニウムに関して好適であるのみならず、最終的に出来上がったセラミック材料中において依然として検出される粒径の範囲でもある。
【0103】
さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、約0.4mm〜約3.0mmの範囲内の外径を有しており、より好適には、約0.4mm〜約2.5mmの範囲内の外径を有しており、さらに好適には、約0.5mm〜約2.0mmの範囲内の外径を有している。さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、内径の方が外径よりも小さいという前提の下で、約0.2mm〜約2.0mmの範囲内の内径を有しており、より好適には、約0.3mm〜約1.5mmの範囲内の内径を有しており、さらに好適には、約0.3mm〜約1.3mmの範囲内の内径を有している。特に好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、約0.5mm〜約2.0mmの範囲内の外径を有しており、より好適には、約0.3mm〜約1.3mmの範囲内の外径を有している。
【0104】
好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材の内径D
iに対する外径D
oの相対比率、すなわちD
o/D
iの値は、約1.3〜約2.0の範囲内であり、より好適には、約1.4〜約2.0の範囲内であり、さらに好適には、約1.6〜約1.8の範囲内とすべきである。さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、約0.1mm〜約1.0mmの範囲内の肉厚を有し、好適には、約0.1mm〜約0.8mmの範囲内の肉厚を有し、さらに好適には、約0.1mm〜約0.5mmの範囲内の肉厚を有する。さらに別の好適な一実施形態では、本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材は、約0.5cm〜約8cmの範囲内の全長を有する。好適には、この全長を有する一本の全血処理用中空糸膜
濾材は、単一の中空糸膜について約3mm
2〜約500mm
2の面積の濾過膜領域を有しており、より好適には、約10mm
2〜約450mm
2の面積の濾過膜領域を有しており、さらに好適には、約100mm
2〜約300mm
2の面積の濾過膜領域を有している。
【0105】
濾過膜領域は、濾過処理過程において供給される液体の流れによって覆われる断面積に対応する。内向き方向の濾過処理モードにおける中空糸膜
濾材の場合には、それは、濾過処理モジュール内において、供給される液体(本発明の目的に従うなら、当該液体は全血サンプルである)の流れによって濡らされる全ての中空糸膜の微視的な円筒形状外表面である。外向き方向の濾過処理モードにおける中空糸膜
濾材の場合には、それは、濾過処理モジュール内において、供給される液体(本発明の目的に従うなら、当該液体は全血サンプルである)の流れによって濡らされる全ての中空糸膜の微視的な円筒形状内表面である。
【0106】
中空糸膜
濾材が多孔質構造を有する場合、中空糸膜
濾材の全体の内表面は、中空糸膜
濾材の全体積中に含まれる全ての細孔の内壁面をも含んでいるので、上述した濾過膜領域は、中空糸膜
濾材の全体の内表面とは異なる面積を有する。
【0107】
全血処理用の中空糸膜
濾材の構造を特徴付けるためのさらに追加の特性値としては孔隙率があり、当該中空糸膜
濾材の孔隙率は、好適には、約30%〜約70%の範囲内であり、より好適には、約40%〜約65%の範囲内であり、最も好適には、約43%〜約60%の範囲内である。この孔隙率は、上述した水銀圧入ポロシメータ測定法を使用して測定することが可能である。
【0108】
全血処理用の中空糸膜
濾材の特性を規定する細孔径と構造および中空糸の寸法と形状に関連した種々のパラメータについての上述した複数の好適な実施形態は、これら実施形態を互いに組み合わせる形で、全血処理用の中空糸膜
濾材の製造に適用することが可能である。例えば、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して、複数の好適な実施形態において下記の表のとおりに規定されたa、b、cおよびdの4通りの組み合わせが適用可能であり、これらは、上述したクロスフロー濾過処理方式の濾過処理モジュールの構成部材として使用可能である。下記の表に示す組み合わせは、狙いは少し異なるものの、溶血の防止および血漿または血清の浸透性の保証の観点から技術的に有利である。
【表2】
【0109】
上記組み合わせに係る複数の実施形態a、b、cおよびdを実施する場合、セラミック材料は、酸化アルミニウムを含むと共に、任意付加的にさらに別の金属酸化物として上述したとおり、少なくとも一つの別の金属酸化物を含む。
【0110】
さらに別の一実施形態では、本発明は、セラミック材料を備える全血処理用の中空糸膜
濾材を対象としており、当該セラミック材料は、
血漿に対しては浸透性を保証しながら血液細胞(血球)を濾過せずに残すような細孔径を有する多孔質であり、全血処理用の中空糸膜
濾材は、追加処理によって修正処理されることを特徴とする。上述した追加処理による修正処理は、中空糸膜
濾材に対する上塗りコーティング処理、事前処理として行われる事前濡らし処理(事前濡らし処理に続いて乾燥処理が行われる等)または事前濡らし処理が行われるのに続いて中空糸膜
濾材が濡らされた状態で濾過処理に使用されるなどの修正処理であっても良い。
【0111】
上記のような修正処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材を得るために、上述した複数の異なる実施形態に係る全血処理用の中空糸膜
濾材の中のいずれか一つが取り上げられ、修正処理を施される。上塗りコーティング処理や事前濡らし処理によって細孔径の中央値、細孔径についてのD10値、細孔径についてのD90値および細孔径の平均値が比較的大きい場合でさえ、溶血の発生を効果的に防止することができる。従って、溶血の発生が防止されると同時に、濾過処理の結果として、分析対象となる血漿や血清を構成する成分が濾過されずに多く残ってしまうことがないことが保証される。
【0112】
従って、一実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材は、事前濡らし処理が施され、さらに以下の特性値を有することが好ましい。(i)細孔径の中央値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約1000nmの範囲内であり、さらに好適には、約200nm〜約600nmの範囲内であり、最も好適には、約200nm〜約400nmの範囲内である。(ii)細孔径に関するD10の値が約200nm〜約5000nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約2000nmの範囲内であり、さらに好適には、約200nm〜約800nmの範囲内である。(iii)細孔径に関するD90の値が約150nm〜約1000nmの範囲内であり、より好適には、約150nm〜約600nmの範囲内であり、さらに好適には、約150nm〜約400nmの範囲内である。(iv)細孔径の平均値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約1000nmの範囲内であり、さらに好適には、約200nm〜約800nmの範囲内であり、最も好適には、約200nm〜約600nmの範囲内であり、その範囲内でも特に、約200nm〜約400nmの範囲内が好適である。
【0113】
さらに別の一実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材は、上塗りコーティング処理が施され、さらに以下の特性値を有することが好ましい。(i)細孔径の中央値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約300nm〜約1500nmの範囲内であり、さらに好適には、約600nm〜約1400nmの範囲内であり、最も好適には、約1100nm〜約1400nmの範囲内である。(ii)細孔径に関するD10の値が約200nm〜約5000nmの範囲内であり、より好適には、約1000nm〜約4500nmの範囲内であり、さらに好適には、約2000nm〜約4200nmの範囲内である。(iii)細孔径に関するD90の値が約150nm〜約1000nmの範囲内であり、より好適には、約200nm〜約800nmの範囲内であり、さらに好適には、約200nm〜約700nmの範囲内である。(iv)細孔径の平均値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約350nm〜約1300nmの範囲内であり、さらに好適には、約400nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約600nm〜約1250nmの範囲内であり、その範囲内でも特に、約1000nm〜約1250nmの範囲内が好適である。
【0114】
さらに好適な実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材は、上塗りコーティング処理が施され、さらに以下の特性値を有することが好ましい。(i)細孔径の中央値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約300nm〜約1500nmの範囲内であり、さらに好適には、約600nm〜約1400nmの範囲内であり、最も好適には、約1100nm〜約1400nmの範囲内である。(iv)細孔径の平均値が約200nm〜約1500nmの範囲内であり、より好適には、約350nm〜約1300nmの範囲内であり、さらに好適には、約400nm〜約1300nmの範囲内であり、最も好適には、約600nm〜約1250nmの範囲内であり、その範囲内でも特に、約1000nm〜約1250nmの範囲内が好適である。さらに一層好適な実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材は、上塗りコーティング処理が施され、さらに以下の特性値を有することが好ましい。(i)細孔径の中央値が約1100nm〜約1400nmの範囲内である。(iv)細孔径の平均値が約1000nm〜約1250nmの範囲内である。
【0115】
特に、上述した好適な実施形態の中で上記表に示す「c」の組み合わせに従って構成される全血処理用の中空糸膜
濾材に対して、上塗りコーティング処理または事前濡らし処理(好適には、上塗りコーティング処理の方が好ましい)が施された結果、修正処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材が得られ、それにより、血漿または血清の浸透性を効果的に確保しながら、同時に、溶血を防止することができる全血処理用の中空糸膜
濾材が得られる。しかし、何れにせよ、上塗りコーティング処理や事前濡らし処理は溶血の発生防止に有効であるので、上述した好適な実施形態のうち、上記表に示す「a、bおよびd」などの他の組み合わせに従って構成される全血処理用の中空糸膜
濾材もまた、本発明の実施形態に従って修正処理を施されても良い旨が理解できるはずである。
【0116】
好適な一実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材に対しては、食塩水またはヘパリン溶液のような血液安定化剤またはこれらの溶液を混合した混合溶液を使用して事前濡らし処理が施されてもよい。全血処理用の中空糸膜
濾材の全長が約0.5cm〜約8cmの範囲内であるならば、事前濡らし処理を施すために約0.1ml〜約3mlの対応する溶液を使用するのが最も好ましい。事前濡らし処理を行うと、細孔の中が液体で満たされるので、事前濡らし処理は技術的に有益である。さもなければ、セラミック材料の表面が有する親水性(加えて、セラミック材料の表面が有する孔隙率と細孔径のばらつき)によって、血漿/血清を吸収している間に生じる強い毛細管現象の作用力が働き、血球細胞が破裂してしまう。事前濡らし処理によって細孔の中が前もって適切な流体で満たされるようにしておけば、全血サンプルが濾過膜表面と接触した後も、毛細管現象による作用力は全く生じなくなる。
【0117】
全血処理用の中空糸膜
濾材に対して事前濡らし処理を施す際に、浸透圧変化に起因した溶血反応の発生を避けるために、血漿/血清と同じイオン強度を有する適切な溶液を選択することが重要である。細孔の中にさらに別の流体が存在することにより生じる血漿の希釈化および電解質濃度の変化(例えば、塩化ナトリウム溶液の場合には塩素イオンとナトリウム・イオンの濃度変化)は、引き続いて行われる分析処理において考慮に入れなくてはならない。
【0118】
好適には、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して行われる事前濡らし処理において使用される溶液は、塩化ナトリウム溶液であっても良く、より好適には、等浸透圧の塩化ナトリウム溶液とすべきであり、さらに好適には、濃度が0.9%(すなわち、重量体積比で9グラム/リットルの濃度)の塩化ナトリウム溶液とすべきであり、好適には、事後的な乾燥処理を行うべきではない。全血処理用の中空糸膜
濾材は、上述した事前処理が施された直後に直ちに濾過処理に使用されるべきであり、それは濾過膜表面上においてスケーリング(鱗化)と呼ばれる塩化ナトリウムの結晶化が生じるのを避けるためである。物理化学的な理論に拘らなければ、塩化ナトリウムが結晶化してできたこれらの結晶の鋭い先端が赤血球を損傷させることで溶血が引き起こされる可能性があるとの理由により、好適には、濾過膜表面での塩化ナトリウムの結晶形成は避けるようにするべきであるというのが発明者の現状認識である。好適な一実施形態では、事前濡らし処理とは、全血処理用の中空糸膜
濾材を適切な溶液に浸す、全血処理用の中空糸膜
濾材を適切な溶液で洗浄する、または全血処理用の中空糸膜
濾材を適切な溶液の液面と接触させる処理を意味する。
【0119】
全血処理用の中空糸膜
濾材は、ヘパリン溶液を使用して事前濡らし処理を施されるようにしても良い。例えば、ナドロパリン・カルシウムまたはヘパリン・ナトリウム−25000(RatioPharm社製)を備えるFraxiparinのように血栓症治療に適したヘパリン溶液が使用されても良い。好適には、0.8mlのヘパリン溶液を含む1回の注入量は、国際単位で7.600 I.U.anta−Xa(95〜130I.U. anti−Xa/mgに相当する)のナドロパリン・カルシウムを備えている。さらに別の成分として、水酸化カルシウムをpH値の調整のために濃度10%の塩酸に溶かした溶液および水を備えても良い。さらに、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して、クエン酸緩衝液を使用して事前濡らし処理を施しても良い。さらに、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)緩衝液を使用して事前濡らし処理を施しても良い。
【0120】
さらに別の好適な実施形態では、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して、上塗りコーティング処理が施される。好適には、上塗りコーティング処理は、濾過膜表面の親水性と浸潤性を低下させるのに適している。そのような上塗りコーティング処理により、全血サンプルが多孔質の濾過膜表面と最初に接触した際に、溶血を誘発する毛細管現象の作用力を低く抑えることができる。さらに、濾過膜
表面の親水性と浸潤性を低下させた結果として、濾過処理過程において、中空糸膜
濾材の反対側を流れる流束を低く抑えることができる。
【0121】
親水性と浸潤性を低く抑えた濾過膜表面を得るために、上塗りコーティング処理は、水滴と濾過膜上の平坦な固体表面との間における接触角を増大させなくてはならない。上塗りコーティング処理が充足すべき追加の要件としては、以下のものがある。
−細孔を目詰まりさせず、それにより、薄膜被覆構造を形成しない。
−均一かつ安定的なコーティング層を形成する。
−血液適合性がある(化学反応による溶血を起こさず、血漿/血清の検体に対して交差反応や粘着を起こさない)。
【0122】
これは、例えば、コーティング剤を含んだホタル石(例えば、Evonik工業から市販されているDynasylanシリーズの製品やClariant社から市販されているNuvaシリーズの製品など)を使用して実現することができ、これらは例えば、コーティング液に浸す処理を行うのに使用することを目的とするならば、二官能性シランに加水分解性の無機エトキシ・シリルおよびフルオロアルキル鎖を混合した物質(Evonik工業から「Dynasylan(登録商標) F8261」の製品名で入手可能)、またはフルオロアルキル機能性のオリゴ・シロキサン(Evonik工業から「Dynasylan(登録商標) F8815」の製品名で入手可能)などを含む。気相中で行う上塗りコーティング処理もまた、プラズマ助長コーティング技術やゾルゲル技術を使用して実施することが可能である。分子を含有するホタル石は、濾過膜表面における親水性を低下させた状態を作り出せるだけでなく、疎油性を持っている点でも技術的に優れている。これは、タンパク質や脂質などのような無極性物質が粘着する危険性を低く抑えることができる。濾過膜表面の親水性を低下させ疎油性を増大させる度合いは、コーティング物質に依存するのみならず、上塗りコーティング処理が施される際における当該コーティング物質のコーティング溶液中(またはコーティング・ガス中)での濃度にも依存するし、コーティング手順、コーティング処理温度、コーティング
接触時間などのようなコーティング処理パラメータにも依存する。
【0123】
上塗りコーティング処理を濾過膜表面に適用するために複数の異なる方法を実行することが可能である。多孔質であるセラミック材料の表面を、例えばフルオロ・シランなどで上塗りコーティング処理することによって表面の親水性を低下させるための処理手順は、例えば、ドイツ登録特許DE19937325号公報などにおいて開示されている。
【0124】
外向きのクロスフロー濾過方式においては、全血処理用の中空糸膜
濾材の中でも特に、血液が最初に接触することになる膜材である濾過膜の内側表面領域に対して上塗りコーティング処理を行うことが必要となる。好適には、上塗りコーティング処理は、コーティング処理液を用いた浸液コーティング処理を使用して適用され、当該コーティング処理液は、フッ素コーティング剤を例えば追加の溶媒に溶解させて得られる溶液である。当該追加の溶媒中に溶かされるコーティング剤を希釈化することにより、濾過膜表面の親水性をどの程度低下させるかを調節することが可能となる。そのような追加の溶媒として、エチル・アルコールや水を使用してもよい。
【0125】
希釈化されたコーティング剤を溶かしたコーティング処理液は、以下のような態様で適用される。
−浸液コーティング処理。
−密封端モード:全血処理用の中空糸膜
濾材における一方の端部が密封されることにより、液圧が作用させられた後には、コーティング処理液は、濾過膜上に開いた細孔を通過しなければならなくなるようにする方法。
−開口端モード:コーティング処理液は、液圧の影響を受けずに全血処理用の中空糸膜
濾材の内壁面上に沿って流れてゆくので、中空糸膜
濾材の内側表面を濡らすだけの処理である。
【0126】
加えて、上述した上塗りコーティング処理に続く後処理が実行されることによって、濾過膜表面に残留するか余計なコーティング処理液が除去される。この処理は、上塗りコーティング処理過程の後に、全血処理用の中空糸膜
濾材を直に洗浄することによって行われる。洗浄液の選択は、コーティング剤そのものに依存する。幾つかのコーティング剤は水溶液に含まれているものであり、別の幾つかのコーティング剤は水以外の溶液に含まれているものである。浸液コーティング処理とは別に、洗浄処理は、密封端モードまたは開口端モードのいずれかにより実行することが可能である。従って、全てのコーティング処理用溶液についてコーティング処理の4種類の異なる組み合わせが導かれる。
【0127】
例えば、全血処理用の中空糸膜
濾材における内壁側の濾過表面領域が19cmの長さを有するとすると、当該濾過表面領域は、2mlのコーティング処理液によって上塗りコーティング処理されてもよい。このコーティング処理液は、一本のカニューレを中空糸膜
濾材の一方の開口端から差し入れることによって、中空糸膜
濾材の内壁面上だけに流し込むようにするのが好適である。このようにコーティング処理液を流し込む処理は、一方の端に開口端を有する中空糸膜
濾材であって、反対側の開口端からコーティング処理液が排出されるように構成された中空糸膜
濾材を使用して実行することも可能であるし、あるいは、中空糸膜
濾材の一方の端が密封端となっていることにより、濾過膜表面に開いた細孔を通るようにコーティング処理液を、液圧をかけて圧送するようになっている中空糸膜
濾材を使用して実行することも可能である。コーティング処理液を構成する上澄み液部分を取り除くために、2mlの溶媒を使用してさらに洗浄を行う処理が実行される。さらにこの場合には、中空糸膜
濾材は、一方が密封端となっている状態か又は一方が開口端となっている状態のいずれかである。
【0128】
別の好適な実施形態においては、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して以下の修正処理が行われる。この修正処理は、濾過膜表面の血液適合性を改善し、濾過膜の固体表面上でのタンパク質吸収を低下させるために濾過膜表面を負の電荷で帯電させることによって実行される。全血処理用の中空糸膜
濾材が外向きのクロスフロー濾過方式で使用される場合には、当該中空糸膜
濾材における内壁側の濾過表面領域を負の電荷で帯電させるのが好適である。
【0129】
さらに別の好適な実施形態においては、全血処理用の中空糸膜
濾材に対して以下の上塗りコーティング処理が行われる。この上塗りコーティング処理では、全血処理用の中空糸膜
濾材の好ましくは内壁側の濾過表面領域において、カルボキシレート基、アミノ基、シラン基およびこれらの組み合わせから成る一群の官能基から選択された少なくとも一種類の官能基が運ばれることによって血液適合性が改善される。
【0130】
さらに別の実施形態では、本発明は、上述した全血処理用の中空糸膜
濾材のうち、相反転処理プロセスによって得られる中空糸膜
濾材を対象としている。この観点において、全血処理用の中空糸膜
濾材は、好適には、粘性を有し、
紡糸原液から製造され、当該
紡糸原液は、セラミック材質の紛体と、ポリマー材と、溶媒と、を含んでおり、当該セラミック材質の紛体は、好適には酸化アルミニウムを含み、当該ポリマー材は、好適には、ポリアクリル・ニトリルまたはポリエチル・スルホンを含んでおり、当該溶媒は、好適には、n−メチル・ピロリドンである。特に好ましい実施態様として、酸化アルミニウムを含有する上記紛体の体積粒径の中央値は、約0.1μm〜約2.0μmの範囲内とするのが好適であり、約0.1μm〜約1.5μmの範囲内とするのがさらに好適である。好適には、
紡糸原液は、複合部材で構成されたノズル部の横断面に環状に設けられた開口部を通って導かれるようにして射出され、その結果として、素材となる中空糸構造材が得られる。全血処理用の中空糸膜
濾材の細孔径と細孔
形状の観点から言うと、素材となる中空糸構造材は、摂氏約1350℃〜約1700℃の温度範囲内で約1.5時間〜約12時間にわたって焼結処理されるのが特に好ましい。
【0131】
別の実施態様では、本発明は、全血サンプルから血漿/血清を分離する処理のために、上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を使用する方法を対象とし、当該使用する方法は、上述した修正処理を中空糸膜
濾材に対して行うか行わないかのいずれかの方法、すなわち、事前処理を行うか否か、事前濡らし処理を行うか否か、または上塗りコーティング処理を行うか否か、に応じて異なるいずれかの方法である。血漿/血清は、溶血反応を全く起こさないか実質的に起さない形で取得されるべきである。
【0132】
好適な一実施形態では、本発明に関して上述した数多くの実施形態に従って構成される様々な全血処理用中空糸膜
濾材の中の任意の一つを使用して、クロスフロー濾過方式によって血漿/血清が全血サンプルから分離される。好適には、クロスフロー濾過方式による濾過処理は、全血処理用の中空糸膜
濾材の長手方向に沿って全血サンプルを流すことによって実行され、全血サンプルを流す方向は、任意付加的に又は代替的に、双方向であっても良く、大気圧を所定の圧力増加幅だけ上回る圧力(好適には、大気圧よりも約0.5バール〜約1.5バールだけ大きい圧力)をかけることにより実行される。最も好適な場合では、上記圧力増加幅は、約0.5バールである。代替的に、クロスフロー濾過方式による濾過処理は、全血処理用の中空糸膜
濾材の長手方向に沿って全血サンプルを流すことによって実行され、全血サンプルを流す方向は、任意付加的に又は代替的に、双方向であっても良く、大気圧を所定の圧力低下幅だけ下回る圧力(好適には、大気圧よりも約0.5バール〜約1.0バールだけ下回る圧力)をかけることにより実行される。最も好適な場合では、上記圧力低下幅は、約0.5バールである。本発明の少なくとも一実施形態によれば、クロスフロー濾過方式による濾過処理は、外向きのクロスフロー濾過処理または内向きのクロスフロー濾過処理のとして実行されても良く、好適には、外向きのクロスフロー濾過処理として実行されるのが好ましい。
【0133】
本発明は、全血サンプルから血漿/血清を分離する処理のために、上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を使用する方法を対象とし、当該使用する方法は、上述した修正処理を中空糸膜
濾材に対して行うか行わないかのいずれかの方法
である。全血サンプル
は、等浸透圧を有する塩化ナトリウム溶液によって希釈化
される。好適には、全血サンプルは、等浸透圧を有する塩化ナトリウム溶液によって、0.5:1〜1:5の比率で(より好適には、1:1〜1:4の比率で)希釈化される。
【0134】
さらに、本発明は、全血サンプルから
血漿を分離する処理のために、上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を使用する方法を対象とし、当該使用する方法は、上述した修正処理を中空糸膜
濾材に対して行うか行わないかのいずれかの方法
である。全血サンプル
は、抗凝固剤によって安定化させ
る。好適には、上記の抗凝固剤は、EDTA、クエン酸塩、ヘパリン及びこれらの組み合わせから成る一群の抗凝固剤から選択されたものである。
【0135】
さらに、本発明は、全血サンプルから血漿/血清を分離する処理のために、上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を使用する方法を対象とし、当該使用する方法は、上述した修正処理を中空糸膜
濾材に対して行うか行わないかのいずれかの方法
である。全血サンプル
は、レクチンなどの血球凝固剤によって事前処理するか事前処理
を行う。
【0136】
上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を
手動操作によりにより使用する場合には、全血サンプルから血漿/血清を分離する処理などのような分離処理を行うために、上記のように定義された全血処理用の中空糸膜
濾材を使用することには格別の技術的優位性がある。何故なら、遠心分離法を使用して上記のような分離処理を行う場合とは異なり、全血処理用の中空糸膜
濾材を使用することは、電気が無くても可能だからである。さらに、遠心分離法を使用して上記のような分離処理を行う場合と比べると、全血処理用の中空糸膜
濾材を使用することは、分離処理に時間を要しないという点で技術的に優れている。
【0137】
本発明に従って実施される全血処理用の中空糸膜
濾材は、獣医学、食品技術、環境科学、等のような他の応用分野および科学的な研究を行う一般的な研究現場などにおいて、液体から個体を分離したり、液体から液体を分離したりするための分離処理ツールとして使用することも可能である。特に、上記の全血処理用の中空糸膜
濾材は、高濃度の懸濁液、血球細胞システムおよび傷つきやすい特殊なシステムを、濾過残留物(血球など)を傷つけない方法で効率的に分離する分離方法を実施するために使用され得る。本発明に従って実施される全血処理用の中空糸膜
濾材を濾過処理プロセスにおいて使用することは、分離すべきサンプルの体積や濾過液の体積が小さい(例えば、20mlより小さく、より好適には、10mlより小さい)場合であって、製造工程において分析的な品質保証を行う場合において特に好適である。
【0138】
本発明は、以下において後述する幾つかの具体例を参照しながらさらに詳細に例示されるが、本発明の技術的範囲は、これらの具体例によって何ら限定されるものではない。
【0139】
<具体例>
以下の具体例において試験対象とされる全血処理用の中空糸膜
濾材は、酸化アルミニウムを含み、長さが約4cm〜約8cmであり、容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が150nm〜1300nmの範囲内であり、中空糸構造の内径と外径がそれぞれ異なることに加えて、濾過膜の肉厚、表面処理状態および濾過処理モジュール内に設けられた中空糸膜
濾材の本数もそれぞれ異なるものである。
【0140】
これらの具体例と試験においては、約1ml〜3mlの分量のヘパリン溶液によって安定化された全血サンプルが、外向きのクロスフロー濾過方式に従って、上述した全血処理用の中空糸膜
濾材を使用して濾過処理され、それにより、このような全血サンプルから血漿/血清が分離される。
【0141】
濾過処理を目的として、一本以上の全血処理用の中空糸膜
濾材が、チューブ形状の筐体内に固定され、中空糸膜
濾材の両端部がテフロン(登録商標)とシリコンで形成された管状部材を介して
注射器に接続されて中空糸膜
濾材は、チューブ状筐体の内部に長手方向に沿って配置されており、両端の開口部は、濾過液を排出し、液圧を補充するために設けられている。2つの
注射器の一方が全血サンプルによって満たされると、大気圧を約0.5バール〜約1.5バール上回る液圧を
注射器に
より加え、一方の
注射器から他方の
注射器に向けて、7サイクル〜80サイクルの濾過液圧送サイクルが実行され、それにより、全血処理用の中空糸膜
濾材の長手方向に沿って全血サンプルを通過させる、すなわち、全血サンプルのタンジェント方向(正接方向)に沿った流速成分が全血処理用の中空糸膜
濾材の内壁側の濾過表面領域を横切るように全血サンプルを通過させる。チューブ状筐体内において約1分間〜5分間の時間幅にわたって実施される濾過処理の結果として、約0.1ml〜約0.7mlの血漿/血清が得られる。全血サンプルの濾過処理が行われた後に、濾過液は溶血発生度合いの観点から光学的な分析手法により評価される。さらには、濾過残留物も同様に溶血発生度合いの観点から光学的な分析手法により評価される。
【0142】
加えて、セラミック製の全血処理用中空糸膜
濾材とヘパリン溶液により安定化された全血サンプルとの間における接触時の効果を試験する接触試験が行われ、それにより、濾過処理プロセス実行中に発生する流体力学的な作用力の影響が無い状態での濾過材表面との接触効果に起因した溶接反応の発生状況が分析される。
【0143】
セラミック製の全血処理用中空糸膜
濾材による血漿検体の残留分子量を試験するために、事前に遠心分離処理がされた血漿とヘパリン溶液によって安定化された血漿とが供給液として使用され、当該供給液の量は、約1.5ml〜約3mlであり、上述した中空糸膜濾過材によって濾過処理される。時として、冷蔵庫の中に一週間にわたって保管されていた血漿サンプルが使用される場合もある。血漿の分析を目的とするならば、上述した濾過処理モジュールを一切適用しないことにより、血漿サンプルが過度に多種類の異なる物質と接触するのを避けることがあり、その場合、
注射器が接続された中空糸膜
濾材の中空部にパラフィン製フィルムを固定した2本の標準的な医療用カニューレを使用して外向きのクロスフロー濾過処理が実行される。血漿の濾過液は、第3の
注射器により直に回収される。濾過処理された血漿および血漿を濾過した後の濾過残留物から得られる血漿分析結果は、基準サンプルから得られた血漿分析結果と比較され、当該基準サンプルは、濾過処理モジュールの構成物質との接触が全く無い場合の同じ血漿サンプルであり、当該血漿分析においては、以下の表8〜表12に規定するような15種類の異なる血漿成分構成を考慮している。
【0144】
さらに、上述した接触試験は、セラミック製の全血処理用中空糸膜
濾材と、事前に遠心分離処理がされ、さらにヘパリン溶液により安定化された血漿との間においても行われ、それにより、可能性として生じ得る血漿検体の吸収効果が測定される。その血漿分析結果は、基準サンプルから得られた血漿分析結果と比較され、当該基準サンプルは、濾過処理モジュールの構成物質との接触が全く無い場合の同じ血漿サンプルであり、当該血漿分析においては、以下の表6および表12に規定するような15種類の異なる血漿成分構成を考慮している。
【0145】
以下の表3には、濾過処理試験に使用され、複数の異なる種類のセラミック製全血処理用中空糸膜
濾材が列挙されている(文字a、b、c、dおよびeは、それぞれ異なる種類の中空糸膜
濾材と関係している)。以下に示す例において、同じ文字が付された中空糸膜
濾材は、同一種別の中空糸膜
濾材を表している。最も重要な相違点は細孔の大きさである。
【表3】
【0146】
<具体例1>
具体例1においては、異なる複数の種類のセラミック製の全血処理用中空糸膜
濾材が全血サンプルの濾過処理のために使用される。全血サンプルは、外向きクロスフロー濾過方式に従って濾過処理される。複数の異なる種類の中空糸膜構造は、主として単一の濾過処理モジュール内に設けるために準備され、濾過処理により得られた結果は、以下の表4に示される。
【表4】
【0147】
例1aにおいては、濾過液である血漿と濾過残留物の両者において中程度の溶血発生が観測された。圧送サイクルの増加と共に血漿生成量が増加するにつれて溶血発生の程度が低下してゆく様子は、溶血が乾燥した親水性の中空糸濾過膜表面と全血サンプルが最初に接触した際にだけ生じる反応効果であることを表している旨が観測される。例1bにおいては、濾過液である血漿では溶血が実質的に観測されず、濾過残留物では、溶血が全く観測されなかった。例1cと例1dでは、濾過液である血漿と濾過残留物の両者において、より低い程度の溶血発生が観測された。例1eにおける観測結果は、例1aにおける観測結果とほぼ同様であり、圧送サイクルの増加と共に血漿生成量が増加するにつれて溶血発生の程度が低下してゆく様子は、溶血が乾燥した親水性の中空糸濾過膜表面と全血サンプルが最初に接触した際にだけ生じる反応効果であることを表している。
【0148】
<具体例2>
全血処理用の中空糸膜
濾材が酸化アルミニウムを含み、容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が150nm〜1300nmの範囲内であり、乾燥した状態または事前濡らし処理がされた状態であるとし、濾過処理モジュールの構成物質による影響や濾過処理中に発生する別の作用力(例えば、流束による作用力)の影響が無いとした場合に、そのような全血処理用の中空糸膜
濾材が全血サンプルと接触したことのみに起因して溶血が引き起こされるか否かがさらに判定される。
【0149】
1cmの長さを有する5本の中空糸膜
濾材が2mlの全血サンプルに10分間にわたって浸された。続いて、これらの中空糸膜
濾材が全血サンプルの液中から除去され、続いて、その全血サンプルが遠心分離処理された。この遠心分離処理の後に、上澄み液として採取された血漿が、溶血発生状況を調べる観点から光学的手法で分析された。
【0150】
事前濡らし処理は、全血処理用の中空糸膜
濾材を約2ml〜約3mlの水性を有する事前濡らし処理溶液に浸すことにより実行される。事前濡らし処理溶液として、0.9%(重量体積比)の濃度の塩化ナトリウム溶液が適用される。このようにして事前濡らし処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材は、濡らされた状態ですぐに使用することができる。試験結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0151】
例2dおよび例2eを見れば明らかなとおり、多孔質の濾過膜部材に対して塩化ナトリウム溶液を使用した事前濡らし処理を適用することは、溶血を抑制する効果があることが分かる。
【0152】
<具体例3>
修正処理がされ、その上特に、事前濡らし処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材は、酸化アルミニウムを含み、長さが約4cm〜約8cmであり、容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が150nm〜1300nmの範囲内であり、このような全血処理用の中空糸膜
濾材が全血サンプルの濾過処理に使用される。試験対象となる全血処理用の中空糸膜
濾材は、事前濡らし処理がされ、中空糸構造の長さ、内径および外径がそれぞれ異なることに加えて、濾過膜の肉厚もそれぞれ異なるものである。
【0153】
事前濡らし処理は、全血処理用の中空糸膜
濾材を約2ml〜約3mlの水性を有する事前濡らし処理溶液で洗浄することにより実行される。事前濡らし処理は、血液サンプルの濾過処理手順と同様の方式、すなわち、2つの
注射器を使用する外向きのクロスフロー濾過処理方式で実行され、この処理は、事前濡らし処理溶液の全量が中空糸膜
濾材を通過し終えるまで続けられる。水性を有する事前濡らし処理溶液を使用するならば、この処理プロセスは、手動操作によりどの程度の膜透過圧が生成されるかに応じて、1回〜10回程度の圧送サイクルを実行した後に完了する。事前濡らし処理溶液として、重量体積比で0.9%の濃度の塩化ナトリウム溶液とヘパリン・ナトリウムを含有するヘパリン溶液が適用される。事前濡らし処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材は、濡らされた状態で直ちに使用される。
【0154】
上述したように、全血サンプルは、外向きのクロスフロー濾過処理方式で濾過処理されるが、その際には、これらの全血サンプルから血漿を分離するために、事前濡らし処理がされた一本の中空糸膜
濾材から成る全血処理用の中空糸膜
濾材を使用することによって濾過処理が実行される。溶血の発生度合の観点から行った試験の結果は、以下の表6に示されている。
【表6】
【0155】
塩化ナトリウム溶液を使用して事前濡らし処理を行い、続いて直ちに本発明に係る全血処理用の中空糸膜
濾材を使用することは、濾過液中の溶血発生を防止するのに効果的である(例3a−1を参照)。事前濡らし処理は、毛細管現象による作用力を低下されるとの仮定を置いている。容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が約1270nmである全血処理用の中空糸膜
濾材を使用した場合だけは、上述した事前濡らし処理は、溶血発生を効率的に防止することができていない(例3d−1)。上述したように、この場合における溶血は、大きな細孔径を有する細孔を通って流れる際に血球細胞を破裂させる大きな流束によって引き起こされるという仮定を置いている。
【0156】
ヘパリン溶液を使用して事前濡らし処理を行い、続いて直ちに本発明に係る全血処理用の中空糸膜濾材を使用することもまた、濾過液中の溶血発生量を低下させるのに好適である。さらに、その他の等浸透圧性の流体として、リン酸緩衝生理食塩水などを適用することも可能である。
【0157】
<具体例4>
試験対象として使用される全血処理用の中空糸膜
濾材は、酸化アルミニウムを含み、
4cm〜8cmの当該中空糸膜
濾材においては、容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が150nm〜1300nmの範囲内である。セラミック製である上記全血処理用の中空糸膜
濾材に対しては、事前処理は一切実行されない。分離処理される全血サンプルは、複数の異なる希釈化比率の下で濾過処理を行うのに先立って、重量体積比で0.9%の濃度の塩化ナトリウム溶液を使用して希釈化される。当該複数の異なる希釈化比率は、以下の表5において指定されている。具体例1において上述したように、希釈化された全血サンプルは、外向きのクロスフロー濾過処理方式に従って濾過処理される。溶血の発生度合の観点から行った試験の結果は、以下の表7に示されている。
【表7】
【0158】
例4a−2および例4a−3の両者は、全血サンプルの希釈化を行うことが、溶血発生量を低下させる効果を奏する点で技術的に優れていることを示している。その根拠は、特に、例4a−3において、濾過液から溶血が実質的に観測されなかったことを示していることである。塩化ナトリウム溶液を使用して全血サンプルを希釈化することは、当該サンプルの粘性を低下させ、当該サンプル中の相対的な血球細胞の個数を減らすので、血球細胞の密度も低下させることになる。結論として、溶血を引き起こす機械力学的な作用が低減され、高濃度の血球細胞を含む全血サンプルの原液と比べた場合、全血サンプルと濾過膜表面との最初の接触の際に生じる毛細管現象による作用力が血球細胞を破壊する効果も弱まる。加えて、全血サンプルを希釈化する比率が高まるほど、濾過液の体積量も増えてゆく。
【0159】
<具体例5>
さらに、具体例1で使用された全血サンプル処理用の中空糸膜
濾材によって血漿を構成する特定の成分が吸収される
のか、または中空糸膜
濾材の構成成分と血漿の構成成分とが化学反応を起こす
のかが試験により判定される。この様な判定試験を行う理由は、上述した成分吸収や化学反応の発生に起因して、クロスフロー濾過処理後の血漿サンプルにおいて血漿を構成する各成分の含有量として、誤った含有量を検出してしまうことになるからである。
【0160】
試験対象として使用される全血処理用の中空糸膜
濾材は、上述した例1dと1eで使用されたものと同様のものであり、酸化アルミニウムを含んでおり、当該中空糸膜
濾材においては、容積に関連した細孔径の中央値(D50の値)が150nm〜1300nmの範囲内である。このような全血処理用の中空糸膜
濾材として各々の長さが1cmに等しい5本の中空糸膜
濾材が、10分間にわたって1mlの血漿サンプルと接触させられる。続いて、上記接触処理に適用された血漿サンプルの中に含まれる血漿構成成分(すなわち、検体)の量が、濾過膜表面と接触させられていない同一の血漿サンプルを指して言う「基準サンプル」に含まれる血漿構成成分(すなわち、検体)の量と対比される。以下の表8に示すように、偏差はパーセンテージで表され、2種類の中空糸膜
濾材の材質に関する2つの測定結果が示されている。また、2種類の中空糸膜
濾材の材質は、乾燥状態における修正処理を行わずに使用される。
【表8】
【0161】
例4dは、例4eと比べて低い偏差を示していることが見出される。例4e−1と例4e−2においてリン酸塩に関して測定された乖離した値、および例4e−2において測定されてはいるが再現可能性があるとは考えられないピーク値を除いて、偏差(ばらつき)は小さい。リン酸塩の値が低下する現象を説明する仮説としては、酸化アルミニウムを含有する中空糸膜
濾材が異なれば、その表面におけるゼータ電位もまた異なることにより、濾過膜表面上で分子成分に対して作用する異なる吸収挙動を結果として生じるというものである。
【0162】
<具体例6>
上述した具体例1および3において実行されたように、クロスフロー濾過処理を行った際に、全血処理用の中空糸膜
濾材の表面に開いた細孔のサイズが小さいことで検体である闕所を構成する一部の分子が濾過残留物として残ることに起因して、血漿を構成する特定の成分が濾過されて取り除かれるか否かについても判定試験が行われる。
【0163】
上述した例1dと例1eにおいて使用された中空糸膜
濾材であって、表7に示す特性値を有する濾過処理モジュール内に設置した全血処理用の中空糸膜
濾材が上記のような観点から試験され、当該試験においては、すでに遠心分離処理がされた血漿サンプルと、修正処理がされていない1本の中空糸膜
濾材が使用される。
【0164】
細孔径の大きさに起因して、血球細胞を全く含まない血漿は、表中において文字「d」を付したタイプの中空糸膜
濾材によって素早く取得されることが可能であり、表中において文字「e」を付したタイプの中空糸膜
濾材を使用した場合には、細孔径がより小さいことにより、血漿サンプルが濾過膜を通過し終えるのにより多くの時間を要することが以下の表9に示されている。濾過液と濾過残留物の体積量は約0.5mlである。
【表9】
【0165】
上述した外向きのクロスフロー濾過方式によって事前に遠心分離処理がされた血漿から取得された濾過液と濾過残留物に含まれる血漿構成成分(検体)の量は、濾過処理がされない同一の全血サンプルである「基準サンプル」によって取得された血漿構成成分(検体)の量と対比される。濾過液中に含まれる検体は、濾過膜を通過した分子を表しており、濾過残留物に含まれる検体は、一部の分子が濾過膜によって濾過されずに残留するか否かを示している。偏差は、基準サンプルを基準としたパーセンテージ比率として判定され、以下の表10に示されており、乾燥状態における修正処理を行わずに使用された2種類の中空糸膜
濾材の材質に関する2つの測定結果が示されている。
【表10】
【0166】
例5eの数値を見ると、血漿構成成分の一部は濾過膜の一方の側に濾過されて無くなり、別の一部はセラミック材質の
濾材の表面電荷に起因する吸収作用により分離されるので、濾過後の血漿構成成分の残留量は、特に濾過液中において減っている(上述した具体例4を参照)。例5dにおいては、上記効果は、例5eと比べて強調されていない。何故なら、例5dでは、全血処理用の中空糸膜
濾材の細孔径の最大値はより大きく、その結果、血漿検体の浸潤性がより良好であり、さらには、この
濾材の表面電荷が例5eにおいて見られるような吸収作用と同程度の吸収作用を
もたらさないからである。
【0167】
<具体例7>
さらに、上述した具体例1において使用した複数の全血処理用の中空糸膜
濾材を同時並列的に適用することにより、濾過処理期間の長さが短縮され得るか否かについての判定試験が行われる。その試験結果は、以下の表11に示されている。
【表11】
【0168】
例6aの数値を見ると、中空糸膜
濾材が事前濡らし処理された状態で使用されているので、溶血が全く発生していないことが見て取れる。例6a−1のように1本だけの中空糸膜
濾材を使用する代わりに、例6a−2のように8本の中空糸膜
濾材を適用することにより、濾過処理プロセスの進行速度が早められている。濾過処理に要する時間が短くなるほど、得られる濾過液の量も増加する(ただし、事前濡らし処理に起因して濾過液は僅かに希釈化されているが)。
【0169】
<具体例8>
文字「d」を付した材質を有する中空糸膜
濾材について、上塗りコーティング処理を行うことが、技術的に有効であるか否かが試験される。中空糸膜
濾材の全体、または少なくとも内壁側の濾過膜表面領域のみを上塗りコーティング処理することによって濾過膜表面の親水性を低下させることにより、以下のような結果をもたらすと信じられている。すなわち、上塗りコーティング処理により、濾過膜表面の浸潤性が低下する。その結果、濾過膜表面の一方の側に血液サンプルが最初に接触した際に生じる毛細管現象による作用力を低下させる。同時に、濾過膜表面の他方の側において、中空糸膜
濾材の細孔を通り抜ける流束を低下させる。
【0170】
この例では、文字「d」を付した材質を有するセラミック製の全血処理用中空糸膜
濾材を上塗りコーティングするために、フッ素を含有した製造材料をエチル・アルコール中に溶解させた溶液(Evonik社製のDynasylan F8261)が選択される。この例では、上記製造材料を、エチル・アルコールを使用して1:60の希釈化比率で希釈化して得られるコーティング処理溶液が製造元の情報に基づいて準備される。
【0171】
浸潤性が低い方が全血サンプルの濾過処理には適していると仮定される。この例では、約19cmの長さを有する中空糸膜
濾材が、約2mlのコーティング処理溶液で上塗りコーティング処理されるこのコーティング処理溶液は、中空糸膜
濾材の一方の端部に開いた開口部からカニューレを差し入れることにより、中空糸膜
濾材の内壁面側の濾過膜表面に対してのみ適用される。コーティング処理溶液から上澄み液を除去するために、2mlの溶媒を使用した洗浄処理が続いて行われる。例8d−1では、上塗りコーティング処理されたセラミック製の中空糸膜
濾材が全血サンプルの濾過処理のために使用される。全血サンプルは、外向きのクロスフロー濾過方式に従って、濾過処理される。上塗りコーティング処理されることにより親水性を低減された中空糸膜
濾材を使用して血液の濾過処理を行った結果を以下の表12に示す。
【表12】
【0172】
浸潤性が低下したことにより、流束も低下し、多量の血漿を回収するためにより長い時間またはより多くの圧送サイクル数が必要とされることが見て取れる。また、溶血の発生が回避されていることが見て取れる。従って、文字「d」を付した材質を有する中空糸膜
濾材は、この上塗りコーティング処理によって品質を改善
される。
【0173】
さらに、例8d−1に示す上塗りコーティング処理がされた全血処理用の中空糸膜
濾材によって、血漿を構成する特定の成分が吸収され
るのか、または中空糸膜
濾材の構成成分と血漿の構成成分とが化学反応を起こす
のかが試験により判定される。この様な判定試験を行う理由は、上述した成分吸収や化学反応の発生に起因して、クロスフロー濾過処理後の血漿サンプルにおいて血漿を構成する各成分の含有量として、誤った含有量を検出してしまうことになるからである。
【0174】
具体例5の試験において行われたように、このような全血処理用の中空糸膜
濾材として、各々の長さが1cmに等しく、上塗りコーティング処理がされた5本の中空糸膜
濾材が、10分間にわたって1mlの血漿サンプルと接触させられる。血漿サンプルは、全血サンプルを従来式の遠心分離法により遠心分離処理することにより得られている。続いて、上記接触処理に適用された血漿サンプルの中に含まれる血漿構成成分(すなわち、検体)の量が、上塗りコーティング処理された濾過膜表面と接触させられていない同一の血漿サンプルを指して言う「基準サンプル」に含まれる血漿構成成分(すなわち、検体)の量と対比される。以下の表14に示すように、例8d−2について、偏差はパーセンテージで表されている。
【0175】
さらに、例えば、上塗りコーティング処理がされた中空糸膜
濾材の表面上においてコーティング剤により細孔径が小さくされることに起因して、上述した具体例6において実行されたクロスフロー濾過処理により、血漿を構成する特定の成分が除去されているか否かが
判定試験される。上述した観点から、具体例8d−1において使用され、上塗りコーティング処理がされ、以下の表13に規定する特性を有する濾過処理モジュール内に設置された全血処理用の中空糸膜
濾材が、すでに遠心分離処理された血漿サンプルを使用して、試験される。
【表13】
【0176】
上述した外向きのクロスフロー濾過方式によって事前に遠心分離処理がされた血漿から取得された濾過液と濾過残留物に含まれる血漿構成成分(検体)の量は、濾過処理がされない同一の全血サンプルである「基準サンプル」によって取得された血漿構成成分(検体)の量と対比される。濾過液中に含まれる検体は、濾過膜を通過した分子を表しており、濾過残留物に含まれる検体は、一部の分子が濾過膜によって濾過されずに残留するか否かを示している。偏差は、基準サンプルを基準としたパーセンテージ比率として判定され、以下の表14に示されている。
【表14】
【0177】
表14に示す試験結果は、8d−2に示す上塗りコーティング処理された中空糸膜
濾材に10分間にわたって接触させられた後に得られたGOTとIgGの検体について僅かな低レベルの偏差しか示していない。例8d−3に示す血漿濾過結果は、特に、偏差がほとんど生じていない血漿濾過液についてより良好な結果を示している。濾過膜を通過した後にビリルビン濃度だけが0.4mg/dL〜0.5mg/dLへと変化している。この測定値の出現は、小数点以降で一箇所だけであり、その結果、当該値の僅かな変化がパーセント比率表記における大幅な偏差をもたらし、この場合には、25%となっている。