【実施例】
【0028】
例1
方法は、クエン酸塩抗凝固剤を含まない密閉された封印チューブに保存された、患者から抽出された9mlの血液サンプルにより開始される。血液は、580gのスピードで8分間及び周囲温度で遠心分離される。遠心分離の結果として、チューブに含まれた血液は、様々な分画に分けられる。白血球を含む、一番上の分画、又は血小板強化血漿(PRP)の分画は、5ml注射器に抜き取られる。初期のチューブはクエン酸塩の添加がされていなかったので、PRPは凝固し始める。注射器の内容物は、70℃で10分間加熱される。容器は次に4℃で2分間冷却される。この熱的加熱−冷却連続の結果として、注射器の中でゲルのコンシステンシーを持つ半固体物質が形成される。このようにして活性化製剤が得られ、該活性化製剤は(凝固により発生したフィブリン及び熱処理により生成されたタンパク質のゲル化の両者の結果として)ゲル様コンシステンシーを示し、クエン酸塩及びカルシウムを有さない。フィブリンの存在は、製剤により大きいコンシステンシーと耐性を提供する一方、ゲル化タンパク質は、一定の安定性と容積を提供する。その性質及び機械的耐性により、このタイプの物質は、例えば、顔組織の垂直的欠陥を修正することにおいて有益でありうる。
【0029】
例2
方法は、0.1mlの3.8%クエン酸塩抗凝固剤を含む堅く封印された抽出チューブに保存された、患者から抽出された9mlの血液サンプルにより開始される。血液は、580gのスピードで8分間及び周囲温度で遠心分離される。遠心分離の結果として、チューブに含まれている血液は、様々な分画に分けられる。一番上の分画、又は血小板強化血漿(PRP)の分画は、白血球を含まないで5ml注射器に抜き取られる。注射器は80℃で3分間加熱される。注射器は次に20℃で10分間冷却される。この熱的加熱−冷却連続の結果として、第2の容器中で半固体物質が形成される。物質は、ゲル様コンシステンシーを有し、その血小板はまだ活性化される必要がある。事前に凝固していなかったので、物質はフィブリンを含んでいない。このタイプの物質は、しわの存在を除去するか減少させることによってより若々しい外見を達成するために美容手術の充填剤として使用されてもよい;物質は(25Gより小さいか同等の針を使用して)注入可能な能力及びそのコンシステンシーのおかげで、皮膚をリフティングすることができる。このバイオ−ゲルは、長期間安定であり、またヒアルロン酸などの従来の物質と比較して非常に有利とする、細胞成長及び増殖を刺激する成長因子も放出する。現時点において充填物質として最も広く使用されているヒアルロン酸は、生物活性を欠き、従って、組織の形成を促進せず又は長期持続する改善を達成できない。このことは、一般的に3、4か月毎である定期的投与の必要性を意味する。
【0030】
例3
方法は、9mlの血液サンプルを患者から抽出すること、及び0.1mlの3.8%クエン酸塩抗凝固剤を含む堅く封印された抽出チューブに保存することから開始される。血液は、580gのスピードで8分間及び周囲温度で遠心分離される。遠心分離の結果として、チューブに含まれている血液は、様々な分画に分けられる。一番上の分画、又は血小板強化血漿(PRP)の分画は、白血球を含まないで、5ml注射器に抜き取られる。次に、10%塩化カルシウムを、各血漿1mlに対して50μlの比で添加し、血小板の活性化、すなわち、成長因子の放出、及び血漿の凝固を引き起こす。注射器は75℃で5分間加熱される。次に、注射器は周囲温度で10分間冷却される。この熱的加熱−冷却連続の結果として、注射器の内部に半固体物質が形成する。物質は、凝固のために発生したフィブリン及び熱処理によって生成されたタンパク質のゲル化の両者の結果として、ゲル様コンシステンシーを有する。物質は、クエン酸塩、カルシウム及び放出された成長因子を含む。このタイプの物質は、歯槽の再生を促進するために、(歯断片の抽出に続く残された歯槽などの)骨欠損を埋めるのに使用することができる。細胞成長のサポートとして作動する、成長因子の放出及びゲルの能力のため、ゲルは骨組織を伴う歯槽を満たすことを促進し、これにより、例えば、抜歯された歯の置換における歯槽の歯科インプラントなどの、更なる調整のための待機時間を短縮する。
【0031】
例4
方法は、9mlの血液サンプルを患者から抽出すること、及び0.1mlの抗凝固剤として作動する3.8%(重量/容積)クエン酸塩溶液を含む堅く封印された抽出チューブに保存することから開始される。血液は、580gのスピードで8分間及び周囲温度で遠心分離される。遠心分離の結果として、チューブに含まれている血液は、様々な分画に分けられる。一番上の分画、又は血小板強化血漿(PRP)の分画は、白血球を含まないで、9ml分留チューブに抜き取られる。塩化カルシウム溶液(10%重量/容積濃度)は、各血漿1mlに対して50μlの比で添加する。次に、チューブは、37℃のオーブンに入れられる。塩化カルシウムは、血小板の活性化(成長因子放出)、血漿の凝固、フィブリンの形成を引き起こし、前記形成は、オーブン温度条件にチューブが置かれるという事実により加速される。塊退縮の結果として、次に2つの相が得られる:三次元フィブリン構造である固相、並びにタンパク質、血小板成長因子及び血漿成長因子を含む液上清相である。液相又は上清は、3ml注射器に分けられる。注射器は、次に80℃で10分間加熱される。注射器は次に、22℃で5分間冷却される。この熱的加熱−冷却連続の結果として、注射器の中で半固体物質が形成される。この半固体物質は、本発明による製剤と比べてより少ない固体コンシステンシーを有し、フィブリンを含有する。このより少ない固体コンシステンシーのために、このタイプの物質は、例えば、歯牙周囲組織の再生を促進するために、歯牙周囲の骨内欠陥を充填するために有益でありうる。これはまた、物質の骨膜下又は滑膜上浸潤の実施による骨再生に有益でありうる。
【0032】
例5
その他の例では、方法は、フィブリン塊(物質は、血小板強化血漿を得るために580gのスピード及び20℃の温度で血液を遠心分離した後に、各1ml血漿に対して50μlの比で塩化カルシウムを添加し、フィブリンが重合するまで10〜20分間待つことによって製造された)で開始された。塊は、70℃で10分間加熱され、次に20℃で10分間冷却され、このようにしてタンパク質ゲルが得られた。
図1は、前述のタンパク質ゲルの2つの電子顕微鏡イメージを示す。左のイメージは、変性されたアルブミンを表す丸い構造及びフィブリンのファイバーである直鎖構造の存在を示す。右のイメージはゲルの密集した(外)表面を示す。
【0033】
例6
その他の例では、方法は、成長因子強化血漿(血液は、様々な分画を得るために、580gのスピード及び20℃の温度で遠心分離した後に、血小板強化血漿(PRP)の分画を分離し、成長因子を放出させ血漿の凝固を開始させるために、各1ml血漿に対して50μlの比で塩化カルシウムを添加して製造された)で開始された。塊の退縮は、上清の取得を可能にする。次に、前記上清は70℃で10分間加熱され、次に20℃で10分間冷却され、タンパク質ゲルが得られた。
図2は、前述のタンパク質ゲルの2つの電子顕微鏡的イメージを示す。左のイメージは、ゲルの内部及び変性されたアルブミンを表す丸い構造の存在を示す。右のイメージはゲルの密集した(外)表面を示す。
【0034】
例7
その他の例では、(例5で記載されたとおりに製造された)フィブリン塊を異なる温度及び時間にさらすことによって様々なタンパク質ゲルを製造した。製造条件は、下記のとおりである:塊を70℃で15分間(四角)加熱し、塊を70℃で30分間(丸)加熱し、塊を80℃で15分間(三角)加熱する;これらすべてを4℃で10分間冷却する。これらのゲルは、蒸留水中においてインキュベートする前に、37℃で24時間乾燥された。ゲルは(膨張重量/初期重量として定義される)膨張の程度を計算するために、24時間ごとに重量を計測された。
図3は、異なる温度及び時間で製造されたタンパク質ゲルの膨張の程度を示す。ご覧のとおり、ゲルは、水の吸収及び構造中でのその保持によって、初期重量の2及び3倍に増加している。70℃15分間(四角)で製造されたゲルは、24時間で膨張し、その膨張因子はより長いインキュベーション時間によって顕著に変化しないこともわかる。しかしながら、70℃30分間(丸)で製造されたゲルは、24時間後に初期重量の約3倍に膨張しているが、インキュベーション時間が長くなると幾分膨張因子が落ちることが観察される。一方、80℃15分間(三角)で製造されたゲルは、先の2つより最高膨張に達するまでより長い時間がかかり、具体的には48時間である。いずれにしても、ゲルの膨張性は、例えば、生物活性物質(タンパク質又は主要活性化物質)の局所放出のためのマトリックスとして使用されうることを意味する。この使用は、脱水ゲル上の前記生物活性物質を含む溶液を適用することによって通常実施され、これによって、ゲルの水和が起こり、よって生物活性物質の取り込みが起こる。
【0035】
例8
その他の例では、(例6のとおりに製造された)上清を異なる温度及び時間にさらすことによって様々なタンパク質ゲルを製造した。製造条件は、下記のとおりである:上清を70℃で15分間(四角)加熱し、上清を70℃で30分間(丸)加熱し、上清を80℃で15分間(三角)加熱する;これらすべてを4℃で10分間冷却する。これらのゲルは、蒸留水中においてインキュベートする前に、37℃で24時間乾燥された。ゲルは(膨張重量/初期重量として定義される)膨張の程度を計算するために、24時間ごとに重量を計測された。初期重量は水中でのインキュベーション前の乾燥ゲルの重量である。
図4は、異なる温度及び時間で製造されたタンパク質ゲルの膨張の程度を示す。ご覧のとおり、ゲルは、水の吸収及び構造中でのその保持によって、初期重量の約3倍に増加した。70℃15分間(四角)で製造されたゲルは、24時間で膨張し、その膨張因子はより長いインキュベーション時間によって顕著に変化しないこともわかる。対照的に、70℃30分間(丸)で製造されたゲルは、48時間後に初期重量の3倍に膨張しているが、インキュベーション時間が長くなると幾分膨張因子が落ちることが観察される。一方、80℃15分間(三角)で製造されたゲルは、24時間インキュベーション後に、前記膨張因子がおおよそ3と等しくなる。いずれにしても、ゲルの膨張性は、例えば、生物活性物質(タンパク質又は主要活性化物質)の局所放出のためのマトリックスとして使用されうることを意味する。この使用は、脱水ゲル上の前記生物活性物質を含む溶液を適用することによって通常実施され、これによって、ゲルの水和が起こり、よってその内部への生物活性物質の取り込みが起こる。
【0036】
例9
その他の例では、上清(この例の最後におけるグラフで「SN」と示される)、フィブリン塊(「フィブリン」)、非−活性化血小板強化血漿(「非−活性化」)及び凝固せずに10%CaCl2により活性化された血小板強化血漿(「活性化−凝固なし」)から、本発明に従って4つのタンパク質ゲル又は製剤が製造され、及び前述の初期物質を、70℃15分間での物質の加熱処理及び21℃10分間での物質の冷却からなる熱処理を実施した。これらの初期物質の製造方法は、例2、3及び6において説明されている。熱処理後に得られたこれらの4つの各製剤は、ウシ胎児血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において48時間インキュベートされた。加えて、該方法は、ウシ胎児血清を含まないDMEMからなる、第5の物質又は対照物質を分けた。この5つの培地は、MG63細胞を培養するために使用され、2(四角)、4(丸)及び7(三角)日毎に新しくされた。これらの各期間後、細胞増殖は、比色試薬WST−1及びプレートリーダーを使用して評価された。増殖のパーセントは、下記の関数を用いて計算された:増殖%=(WST−1のゲル吸収/WST−1の対照物質吸収)×100。
図5は、MG63骨芽細胞様細胞株によって試験されたタンパク質ゲルの細胞適合性結果を示す。ご覧のとおり、対照試料に関する細胞増殖の増加によって示されるように、ゲルは非毒性である。増殖の2日後(四角)、非活性化血小板強化血漿から製造されたゲルはより多くの細胞増殖という結果を得た。しかしながら、これらの相違は、より長い増殖時間を生じるものではない(丸、三角)。従って、この例は、本発明による製剤が細胞成長への刺激に対する適切な挙動及び生物適合性を示し、製剤を臨床使用の為に開発することができることを証明した。
【0037】
例10
先行する例に記載されているとおり、4つのタンパク質ゲル又は製剤は:上清(四角)、フィブリン塊(丸)、非活性化血小板強化血漿(中央頂点が上部を指している三角)及び凝固せずに10%CaCl2によって活性化された血小板強化血漿(中央頂点が下部を指している三角)から、本発明に従って製造された。すべての物質は、70℃15分間での物質の加熱及び21℃10分間での物質の冷却からなる熱処理を実施した。これらの初期物質の製造方法は、例2、3及び6において説明されている。得られた4つの製剤は、培地中で2、4、7及び9日間インキュベートされた。各期間の終わりに、培地は集められ、ゲルに新しい培地が添加された。集められた培地はMG63細胞を培養するための用途のために保存された。細胞は、この培地中において48時間成長させることが可能である。次に細胞増殖は、比色試薬WST−1及びプレートリーダーを使用して評価された。増殖のパーセントは、下記の関数を用いて計算された:増殖%=(WST−1のゲル吸収/WST−1の対照物質吸収)×100、ここで血清を含まないDMEMは対照物質として使用された。
図6は、培地中の及び各インキュベーション時間間隔における細胞増殖を示す。ご覧のとおり、インキュベーションの2日後により多くの細胞増殖が達成された。より長いインキュベーション時間では、培地はより少ない細胞増殖を促進し、このことは、成長因子の放出はインキュベーション2日後に大きくなり、成長因子のこの内容はより長いインキュベーション時間(4、7及び9日)で培地中でより少なくなったことを示唆しているようである。従って、これらの結果は、ゲル中の細胞増殖刺激物質の放出が、時間の経過に伴って減少し、インキュベーションの最初の数時間で生物活性物質の多くの量を放出し(「バースト」効果)、時間経過に伴って放出量は顕著に減少するという特徴を有する、他のタイプのゲルに類似する放出プロフィールに従うということを示す。
【0038】
例11
その他の例では、2つの初期物質により方法が開始した。第1の物質は、(例6のように)各1ml血漿に対して50μlの比の塩化カルシウムによる血小板強化血漿の活性化後に得られたフィブリンゲルであった。第2の物質は、(例6のように)フィブリン塊の退縮後に得られた上清であった。両物質は、70℃15分間での加熱、70℃30分間での加熱及び80℃15分間での加熱という3つの異なる加熱処理を受けさせた。すべての場合で、加熱には4℃又は20℃の温度で10分間での冷却が続いた。12のタンパク質ゲルが得られた。次に12のゲルは14,800rpmで20分間遠心分離された。次に、血小板由来成長因子(PDGF−AB)及びβ−形質転換成長因子(TGF−β)が測定された。これらの測定の結果は
図7及び8に示され、12のゲルは2つの6グループに示され、これらのグループは、「1」(70℃、15分間のフィブリンゲル)、「2」(70℃、30分間のフィブリンゲル)、「3」(80℃、15分間のフィブリンゲル)、「4」(70℃、15分間の上清ゲル)、「5」(70℃、30分間の上清ゲル)及び「6」(80℃、15分間の上清のゲル、並びに各グループにおいて、4℃で冷却されたゲルは黒棒で、20℃で冷却されたゲルは白棒で示されている。
図7は、観察されたPDGF−AB成長因子の内容物を示している。この成長因子の内容物は一般的に、4℃で冷却されたゲル(黒棒)より20℃で冷却されたゲル(白棒)において多かったが、但し、冷却温度に依存したPDGF−ABの内容物に差異がほとんど観察されなかった、70℃30分間で製造された上清ゲル(「5」)及び80℃で製造された上清ゲル(「6」)は例外である。
図8は、観察されたTGF−β成長因子の内容物を示している。フィブリン(グループ「1」、「2」、「3」)から製造されたゲルに関して、20℃での冷却を実施した場合(白棒)、この3つのグループにおいてTGF−βの内容物は類似していると結論付けることができる。すなわち、ゲルを製造する異なる熱処理に関して、4℃で冷却を実施するところ(黒棒)、TGF−β因子の内容物は、70℃15分間(グループ「1」)で製造したゲルにおいて多い。対照的に、上清から製造したゲル(グループ「4」、「5」、「6」)に関して、70℃15分間での上清から製造したタンパク質ゲル(グループ「1」)のみがTGF−βを放出したことが把握でき、上清から製造された他のゲルにおいては前記因子は検出されなかった。従って、70℃を超える温度において、フィブリンゲルは、上清より、より高い成長因子内容物を維持し、よって加熱温度及び冷却温度はこの成長因子内容物に影響を与え、内容物はより低い加熱温度及び21℃での冷却温度でより多くなると結論付けることができる。また、高い温度においては、TGF−βよりPDGF−ABの方がより安定であり、フィブリンに基づくタンパク質ゲルは上清に基づくタンパク質ゲルより多量のTGF−βを含むと結論付けることができる。
【0039】
例12
その他の例では、下記の初期物質を70℃15分間での加熱及び21℃10分間での冷却からなる熱処理を適用することによって、本発明による4つのタンパク質ゲル又は製剤が製造された:上清(SN)、フィブリン塊(「フィブリン」)、非−活性化血小板強化血漿(「非−活性化」)及び凝固せずに10%CaCl2により活性化された血小板強化血漿(「活性化−凝固なし」)。これらの初期物質の製造は、例2、3及び6において説明されている。4つのタンパク質ゲルは、DMEM中で異なる期間(2、4及び7日間)インキュベートされた。各インキュベーション時間において、4つのタンパク質ゲルのこれらの成長因子の放出動態を決定する目的でPDGF−AB及びTGF−β内容物を測定するために培地時間を抽出した。
図9は、黒、白、及びストライプ棒によって示された2、4及び7日間のインキュベーション時間に対応する測定として、DMEM培地中のPDGF−ABの放出動態を示す。PDGF−ABの放出は、上清から製造されたタンパク質ゲルの2及び4日間のインキュベーションにおいてより多いことがわかる。他のゲルは、この3つのインキュベーション時間の間に顕著な差異は示さない。次に、
図10は、インキュベーションの2日後のDMEM培地中のTGF−βの放出動態を示す。この因子は上清及びフィブリンから製造されたタンパク質ゲルのみにおいて存在し、上清から製造されたタンパク質ゲルからのTGF−βの放出がより多いことがわかる。従って、上清に基づくタンパク質ゲルからより迅速に成長因子が放出されると結論付けることができる。
【0040】
例13
その他の例では、本発明によるタンパク質ゲル又は製剤の充填効果が実験ラットによって試験された。この目的のために4つの発明に係る製剤が製造された。4つの製剤の製造は下記の工程により開始された。まず、抗凝固剤を含まない9mlチューブに患者からの血液を抽出した。次にチューブを850gで8分間遠心分離して赤血球細胞から血漿を分離した。血漿の全体カラムは、白血球を含まずに、赤血球細胞の上部に置かれ、次に新しい9mlチューブに抽出された。この血漿は下記を製造するために使用された:血漿液自身(B);血漿の活性化を起こして塊を形成させる目的のために、各1ml血漿に対して50μlの比で10%塩化カルシウムを添加した、フィブリン塊(C);前記と同じ特徴を有するフィブリン塊を製造し、37℃で60分間経過させフィブリンを退縮させて上清を得る目的のための、上清(A)。血液はまた、抗凝固剤としての0.1mlの3.8%クエン酸ナトリウムを含む9ml抽出チューブに患者から抽出された。該血液を850gで8分間遠心分離し、白血球血小板層のすぐ上部に2mlの血漿が得られ、フィブリン塊(D)を得るために各1ml血漿に対して50μlの比の10%塩化カルシウムによって活性化された。これらの4つの初期物質(A、B、C、D)は、ゲルを得るために70℃で10分間加熱し、20℃で10分間冷却した。各ゲル製剤0.6ml用量を各ラットに投与した。
図11に示される写真は、その機械的性質の改善を示唆する、タンパク質ゲルによる容積増加の維持の形成を示す。
【0041】
加えて、(「PRGF−Endoret」と称呼される)成長因子強化血漿は、0.1mlの3.8%クエン酸ナトリウムを含む9mlチューブに血液を抽出し、該血液を850gで8分間遠心分離し、血小板強化血漿の分画(白血球を含まない、赤血球細胞分画のすぐ上の2ml血漿カラム)を分離することによって製造された。そして、ラットに注射する直前に、各1mlに対して50μlの塩化カルシウムを添加することによって(血小板の成長因子の放出を起こし)血漿を活性化させた。
【0042】
図12は、対照としてヒアルロン酸と上記のPRGF−Endoret成長因子強化血漿を使用した、ラットにおけるタンパク質ゲル注入2週間後の容積の変化を示す。タンパク質ゲルは、ヒアルロン酸としての半楕円の容積を維持するのに効果的である一方、PRGF−Endoret成長因子強化血漿は、半楕円の容積を維持するのに有用でないと結論付けることができる。
【0043】
試験において、本発明によるタンパク質ゲルの安定性とフィブリンゲルの安定性を比較する目的で、従来のフィブリンゲル(塊)を注入させる試みも行われたことを追記するべきである。結果は、(上清からフィブリンが分離し)相分離が起きたことにより、フィブリンゲルをそのように投与することができず、前記フィブリンゲルを注入することが不可能であった。
【0044】
例14
例2に記載されているとおり血小板強化血漿を製造する。次に、タイプ−Iコラーゲンが添加される。次に、混合物は75℃で10分間加熱され、続いて20℃で3分間冷却される。この製造の結果は、より高いコンシステンシーのタンパク質ゲルである。このタイプのゲルは、より高い安定性を示し、コラーゲンなしの場合より、より遅い崩壊速度を示すために、しわを治療するための充填剤として使用しうる。従って、この改変は、製剤の崩壊を更に遅延させる。臨床的には、この安定性の改善は、ゲルの第1及び第2の適用の期間を延長させる。このことは、3〜4か月毎の繰り返し投与、言い換えれば、短期間である、ヒアルロン酸によるしわの治療の欠点の解決を示す。
【0045】
例15
例2に記載されているとおり血小板強化血漿を製造する。次に、例えば、顆粒形態のリン酸カルシウムを添加する。次に、混合物は80℃で10分間加熱され、続いて20℃で3分間冷却される。この製造の結果により得られたハイブリッド物質は、リン酸カルシウムによって改変されていないゲルより、より良い機械的性質を示す。リン酸カルシウムによるゲルの改変は、圧縮及び引張力に対するゲルの耐性を増加する。このタイプの物質は、欠損中の1以上の壁の欠如により、より良い機械的安定性を有する充填物質を要する骨欠損の再生のために使用することができる。
【0046】
例16
本発明によるタンパク質ゲルが前述のいずれかの例に記載された製造方法を使用して製造される。次に、ゲルはハイブリッド物質を生成するためにヒアルロン酸と混合される。この物質は、適用領域においてその安定性を促進する、より良い粘弾性性質を示し、これにより、その移動を防ぐ。このハイブリッド物質は、水平骨成長を起こし、これにより歯槽突起の厚さを増加し、十分な骨被覆を伴った歯科インプラントの挿入を可能にする、狭歯槽突起の前庭壁などの表面に適用するのに有益である。
【0047】
例17
例8(プロテインゲルが記載されているあらゆる例は有効である)に記載されているとおりにゲルを製造及び乾燥した後、乾燥物質は、24時間、暗所において、ドキシサイクリンヒクラート抗生物質を15mg/mlの濃度で含む液体中でインキュベートする。結果は、適用領域において続いて起こる放出のための該抗生物質を含むゲル構造である、ゲルの膨張である。よって、より低い血液供給である、すなわち、骨領域の感染治療のための該抗生物質の調節された放出のためにこのゲルを使用することができ、かつ該抗生物質の全身投与を防ぐ。この手順は、その局所放出を保証するために、他の抗生物質、他の薬剤で繰り返すことができる。