特許第6466444号(P6466444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6466444フィリゲニン硫酸エステル、その誘導体類、その調製法及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466444
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】フィリゲニン硫酸エステル、その誘導体類、その調製法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20190128BHJP
   A61K 31/34 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C07D493/04 101C
   A61K31/34
   A61P31/12
   A61P31/16
   A61P31/22
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-530837(P2016-530837)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公表番号】特表2016-537359(P2016-537359A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】CN2014090465
(87)【国際公開番号】WO2015070724
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】201310580801.5
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508344523
【氏名又は名称】富力
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】富力
(72)【発明者】
【氏名】樊宏宇
(72)【発明者】
【氏名】王▲碩▼
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 Hwang Eui Cho, et al.,Natural Product Sciences,2011年,17(2),147-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造式で表されるフィリゲニン硫酸エステル及び以下の化学構造式で表されるフィリゲニン硫酸エステル誘導体類。
【化2】
前記フィリゲニン硫酸エステルにおいて、上記式中、RはHであり、前記フィリゲニン硫酸エステル誘導体類において、上記式中、Rは、Na+、K+、NH4+、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミノ、ジメチルアミノ、トリメチルアミノ、トリエチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルアミノ、エタノールアミノ、ジエタノールアミノ、ピペリジル、ピペラジニル、又はピラジニルである。
【請求項2】
順次行なわれる以下のステップ、すなわち、
1)フィリゲニンを有機溶剤中に溶解させて、フィリゲニン溶液を得るステップと、
2)まず硫化剤を前記フィリゲニン溶液に添加してよく混合し、次にエステル化反応を起こして生成混合物液体を得るステップと、
3)塩基を添加して、前記混合物液体のpH値を8〜10に調節するステップと、
4)前記混合物液体を分離させ、精製して最終生成物を得るステップと、
を含む、請求項1に記載のフィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類の調製法。
【請求項3】
ステップ2)における前記硫化剤は、クロロスルホン酸、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体、又は三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体から選択される、請求項2に記載の調製法。
【請求項4】
ステップ3)における前記塩基は、有機塩基又は無機塩基から選択される、請求項2又は3に記載の調製法。
【請求項5】
ステップ1)における前記有機溶媒は、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はジクロロメタンのうち1つから選択される、請求項2又は3に記載の調製法。
【請求項6】
前記硫化剤は、ステップ2)において0〜5℃の温度で前記フィリゲニン溶液に添加される、請求項2又は3に記載の調製法。
【請求項7】
ステップ2)における前記フィリゲニン溶液中の前記フィリゲニン対前記硫化剤のモル比は、1:1〜10である、請求項2又は3に記載の調製法。
【請求項8】
抗ウイルス剤の調製における請求項1に記載のフィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類の使用
【請求項9】
前記抗ウイルス剤は、抗インフルエンザ剤、抗パラインフルエンザ剤、抗呼吸器系合胞体ウイルス剤、抗単純ヘルペスウイルスI型剤、及び抗コクサッキーウイルスA16型剤から選択される、請求項8に記載の使用
【請求項10】
請求項1に記載のフィリゲニン硫酸エステル又はフィリゲニン硫酸エステル誘導体類を含有することを特徴とする抗ウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学の分野に関し、特に、フィリゲニン硫酸エステル(phillygenin sulfate)誘導体類、その調製法、及びウイルス抵抗性に関するかかる誘導体類の薬理学的効果に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルシチン(forsythin)のアグリコン部分であるホルシゲノール(Forsythigenol)は、フィリゲニン(phillygenin)としても知られ、モクセイ科レンギョウ属のレンギョウの主な活性成分であり、以下に表すような構造を有する。現代における薬理学的研究によって、フィリゲニンは、抗ウイルス性、酸化防止性、血中脂質低下、フリーラジカル捕捉、抗菌性、抗腫瘍性、抗炎症性効果等を有することが分かっている。
【0003】
【化1】
【0004】
フィリゲニンは、酸化し易く、酸性環境において構成が変化し易い不安定分子を有する。ラットの腸内細菌によってホルシチン代謝を模した研究によると、ホルシチンは腸内細菌叢により容易に新しい代謝産物へと代謝されることが分かっている。
【0005】
フェノール構造の薬物の代謝に関する研究によると、フェノール性水酸基の構造を持つ薬物は、生体内でスルファターゼによりフェノール硫酸エステル誘導体類へと容易に代謝され、良好な活性を有することが分かっている。例えば、ダイゼイン硫酸エステル誘導体類、エダラボン硫酸エステル誘導体類、ゲニステイン硫酸エステル誘導体類、レスベラトロール硫酸エステル誘導体類等である。したがって、我々は、フィリゲニンの硫酸エステル誘導体類を設計し、化学合成及び薬理学的研究を実施した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、化学合成方法によってフィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類を調製することである。また、本発明は、フィリゲニン硫酸エステル誘導体類を提供する。さらに、本発明は、フィリゲニン硫酸エステル誘導体類を調製する方法を提供し、工業的生産の規模拡大に適している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1に、本発明は、次式で表されるフィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類を提供する。
【0008】
【化2】
【0009】
第2に、本発明は、医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、本発明のフィリゲニン硫酸エステル誘導体類及び薬剤として許容される賦形剤を含む。
【0010】
本明細書において、薬剤として許容される賦形剤とは、非毒性の固体充填剤、半固体充填剤、若しくは液体充填剤、希釈剤、キャリア、pH調節剤、イオン強度調節剤、緩効性剤若しくは徐放性剤、包装材料、又はその他の薬剤用賦形剤を意味する。使用されるキャリアは、対応する薬物投与の方法に応じて、注射剤、凍結乾燥粉末(注射用)、噴霧剤、経口液剤、経口懸濁剤、錠剤、カプセル、腸溶錠、丸薬、粉末、顆粒、徐放性製剤又は遅延放出性製剤等に配合される、当業者に周知の賦形剤が使用できる。本発明の第1の態様であるフィリゲニン硫酸エステル誘導体類が好ましく、注射により又は消化管を通して投与されるため、本発明の医薬組成物は、注射剤又は消化管を通して投与される製剤であることが好ましく、すなわち、注射剤又は消化管を通して投与される製剤に配合されるのに好適な補助物質であることが特に好ましく、ここで、本明細書における「消化管を通しての投与」とは、経口投与、胃内投与、注腸投与等を含み、好ましくは経口投与である、患者の消化管を通して薬物製剤を投与する手法を意味し、例えば、当業者に周知の賦形剤は、経口液剤、経口懸濁剤、錠剤、カプセル、腸溶錠、丸薬、粉末、顆粒、徐放性製剤又は遅延放出性製剤等に配合するために使用することができ、注射製剤は主として注射剤又は粉末注射剤である。
【0011】
第3に、本発明は、順次行なわれる以下のステップ、すなわち、
1)フィリゲニンを有機溶剤中に溶解させて、フィリゲニン溶液を得るステップと、
2)まず硫化剤をフィリゲニン溶液に添加してよく混合し、次にエステル化反応を起こして生成混合物液体を得るステップと、
3)塩基を添加して、混合物液体のpH値を8〜10に調節するステップと、
4)混合物液体を分離させ、精製して最終生成物を得るステップと、
を含む、フィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類を調製する方法を提供する。
【0012】
ここで、ステップ1)における有機溶媒は、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はジクロロメタンのうち1つから選択される。
【0013】
ここで、ステップ2)において、硫化剤はフィリゲニン溶液に0〜5℃で添加される。
より詳細には、硫化剤はフィリゲニン溶液に0℃で添加され、均一に攪拌される。
より詳細には、硫化剤は、クロロスルホン酸、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体、又は三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体から選択され、好ましくはクロロスルホン酸である。
より詳細には、フィリゲニン溶液中のフィリゲニン対硫化剤のモル比は1:1〜10であり、1:2であることが好ましい。
【0014】
ここで、ステップ2)におけるエステル化反応の温度は0〜110℃である。
より詳細には、フィリゲニンとクロロスルホン酸とで行われるエステル化反応の反応温度は0〜10℃であり、10℃であることが好ましく、フィリゲニンと、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体、又は三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体とで行なわれるエステル化反応の反応温度は100〜110℃である。
より詳細には、フィリゲニンと、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体、又は三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体とで行なわれるエステル化反応の後、本方法は、エステル化反応の混合物を冷却し、その後塩基を添加して、混合物のpH値を8〜10に調節するステップをさらに含む。
詳細には、エステル化反応の混合物は室温(10〜30℃)まで冷却される。
【0015】
ここで、ステップ3)におけるpH値は10であることが好ましく、塩基は有機塩基又は無機塩基から選択される。
より詳細には、無機塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はアンモニア水のうち1つから選択され、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム溶液、又はアンモニア水であることが好ましく、有機塩基は、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、又はピラジンから選択される。
【0016】
ここで、生成混合物液体は、ステップ4)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して分離される。
より詳細には、シリカゲルはGF254シリカゲルを選択する。
【0017】
別の態様では、本発明は、抗ウイルス剤の調製におけるフィリゲニン硫酸エステル及びその誘導体類の用途を提供する。
【0018】
ここで、抗ウイルス剤は、抗インフルエンザ剤、抗パラインフルエンザ剤、抗呼吸器系合胞体ウイルス剤、抗単純ヘルペスウイルスI型剤、及び抗コクサッキーウイルスA16型剤から選択される。
さらに別の態様では、本発明は、フィリゲニン硫酸エステル又はフィリゲニン硫酸エステル誘導体類を含有する抗ウイルス剤を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の利点を以下に示す。本発明のフィリゲニン硫酸エステル誘導体類の調製法は制御が簡単であり、生成物の包括的収率が高く、工業的大量生産に好適である。本発明のフィリゲニン硫酸エステル誘導体類は、有意な抗ウイルス効果を有し、ウイルス阻害有効性は80%超に達する。生体内の抗ウイルス試験の結果によって、フィリゲニン硫酸エステル誘導体類は、インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルス、並びにこれらにより引き起こされるマウスのウイルス性肺炎に対して比較的有意な阻害効果を有し、肺指標及び赤血球凝集価を顕著に下げることができ、肺組織病理において顕著な改善をもたらすことが分かっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】インフルエンザウイルス性肺炎モデルマウスの肺組織の病理学的切片の顕微鏡検査画像である。
図2】パラインフルエンザウイルス性肺炎モデルマウスの肺組織の病理学的切片の顕微鏡検査画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を以下の実施形態によりさらに説明する。しかし、これらの実施形態は単に例示のためのものであり、本発明の範囲へのいかなる限定としても解釈されるべきではない。加えて、実施形態における試薬及び原材料はすべて市販のものでよく、述べられていないとしても、有機合成ガイド、薬物監督行政上のガイドライン、並びに機器及び試薬についての対応する製造業者の指示等を参照すればよい。
【実施例】
【0022】
実施例1
1.フィリゲニン(4g、10.75mmol)を乾燥した無水ピリジン180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、クロロスルホン酸のジクロロメタン溶液(1.4ml、約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対クロロスルホン酸のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、10℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を10℃で維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(5ml)を添加してpH値を10に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸ナトリウム(化合物1)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0023】
フィリゲニン硫酸ナトリウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液を使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-Na]-は451であり、分子量は474である。
【0024】
化合物1の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.11(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.85(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0025】
化合物1の13C-NMR(150MHz、d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.33(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.94(C-2'),110.00(C-2"),87.22(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.23(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.54(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0026】
ESI-MS、1H-NMR、及び13C-NMRの試験データによると、化合物1の分子式はC21H23O9SNaであり、構造式は以下の通りであると決定される。
【0027】
【化3】
【0028】
実施例2
1.フィリゲニン(4g,10.75mmol)を乾燥した無水ピリジン180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、クロロスルホン酸のジクロロメタン溶液(1.4ml,約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対クロロスルホン酸のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、10℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を10℃で維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、水酸化カリウムのメタノール溶液(5ml)を添加してpH値を10に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸カリウム(化合物2)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0029】
フィリゲニン硫酸カリウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-K]-は451であり、分子量は490である。
【0030】
化合物2の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.10(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.84(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0031】
化合物2の13C-NMR(125MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.33(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.95(C-2'),110.00(C-2"),87.23(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.21(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.52(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0032】
ESI-MS、1H-NMR、及び13C-NMRの試験データによると、化合物2の分子式はC21H23O9SKであり、構造式は以下の通りであると決定される。
【0033】
【化4】
【0034】
実施例3
1.フィリゲニン(4g,10.75mmol)を乾燥した無水ピリジン180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、クロロスルホン酸のジクロロメタン溶液(1.4ml,約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対クロロスルホン酸のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、10℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を10℃で維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、アンモニア水(5ml)を添加してpH値を8に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸アンモニウム(化合物3)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0035】
フィリゲニン硫酸アンモニウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液を使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-NH4]-は451であり、分子量は469である。
【0036】
化合物3の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.12(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.86(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0037】
化合物3の13C-NMR(125MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.32(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.94(C-2'),110.00(C-2"),87.22(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.21(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.52(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0038】
ESI-MS、1H-NMR、及び13C-NMRの試験データによると、化合物3の分子式はC21H27NO9Sであり、構造式は以下の通りであると決定される。
【0039】
【化5】
【0040】
実施例4
1.フィリゲニン(4g,10.75mmol)を乾燥した無水N,N-ジメチルホルムアミド180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、三酸化硫黄−トリエチルアミン化合物を含有するジクロロメタン溶液(3.89g,約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対三酸化硫黄−トリエチルアミン化合物のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、110℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を110℃に維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、温度を室温まで下げ、アンモニア水(5ml)を添加してpH値を8に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸アンモニウム(化合物3)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0041】
フィリゲニン硫酸アンモニウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液を使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-NH4]-は451であり、分子量は469である。
【0042】
化合物3の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.12(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.86(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0043】
化合物3の13C-NMR(125MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.32(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.94(C-2'),110.00(C-2"),87.22(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.21(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.52(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0044】
ESI-MS、1H-NMR、及び13C-NMRの試験データによると、化合物3の分子式はC21H27NO9Sであり、構造式は以下の通りであると決定される。
【0045】
【化6】
【0046】
実施例5
1.フィリゲニン(4g、10.75mmol)を乾燥した無水N,N-ジメチルホルムアミド180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、三酸化硫黄−ピリジン化合物を含有するジクロロメタン溶液(3.68g、約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対三酸化硫黄−ピリジン化合物のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、110℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を110℃に維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、温度を室温まで下げ、水酸化カリウムのメタノール溶液(5ml)を添加してpH値を8に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸カリウム(化合物2)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0047】
フィリゲニン硫酸カリウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液を使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-K]-は451であり、分子量は490である。
【0048】
化合物2の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.10(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.84(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0049】
化合物2の13C-NMR(125MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.33(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.95(C-2'),110.00(C-2"),87.23(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.21(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.52(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0050】
ESI-MS、1H-NMR、及び13C-NMRの試験データによると、化合物2の分子式はC21H23O9SKであり、構造式は以下の通りであると決定される。
【0051】
【化7】
【0052】
実施例6
1.フィリゲニン(4g,10.75mmol)を乾燥した無水N,N-ジメチルホルムアミド180mlに添加し、溶解させるために撹拌し、フィリゲニン溶液を得る。
2.氷浴の条件下で、三酸化硫黄−トリメチルアミン化合物を含有するジクロロメタン溶液(2.99g,約21.5mmol)をフィリゲニン溶液に滴下して添加し、同時に撹拌し、滴下添加速度は1滴(約50μl/滴)/2秒であり、すなわち、本実施例におけるフィリゲニン対三酸化硫黄−トリメチルアミン化合物のモル比は1:2である。
3.滴下添加の完了後、撹拌条件下で温度を上げ、100℃で維持し、エステル化反応を行わせる。
4.温度を100℃で維持する条件下で、エステル化反応を完了させ、1時間反応させた上で、温度を室温まで下げ、水酸化カリウムのメタノール溶液(5ml)を添加してpH値を8に調節し、反応混合物をその後、減圧で蒸留して溶媒を除去し、その後、試料をGF254シリカゲルカラムクロマトグラフィーに載せ、溶離液はクロロホルムとメタノールとの混合物液体であり、クロロホルム対メタノールの体積比は9:1である。フィリゲニン硫酸カリウム(化合物2)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られる。
【0053】
フィリゲニン硫酸カリウム(3g)は、白色固体であり、水及びエタノールに可溶である。TLCプレート(10:1のクロロホルム/メタノールであるクロマトグラフ溶液を使用した場合、Rfは0.4である)に展開した後、10%のH2SO4エタノール試薬を噴霧すると赤紫色を示す。ESI-MSスペクトルでは、m/z[M-K]-は451であり、分子量は490である。
【0054】
化合物2の1H-NMR(600MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):7.4(1H,d,J=8.4Hz,H-),6.9(5H,m,Ar-H),4.8(1H,d,J=4.8Hz,H-6),4.38(H,d,J=6.6Hz,H-8),4.10(1H,d,J=9.0Hz,H-2),3.75(12H,d,J=8.4Hz,H-8,4,O-CH3),3.10(1H,t,J=8.1Hz,H-5),2.84(1H,d,J=7.2Hz,H-1)。
【0055】
化合物2の13C-NMR(125MHz,d6-DMSO)は以下の通りである。
δ(ppm):150.99(C-3"),148.97(C-3'),148.10(C-4"),142.51(C-4'),137.20(C-1"),131.73(C-1'),121.33(C-5'),118.09(C-6'),118.06(C-6"),112.09(C-5"),110.95(C-2'),110.00(C-2"),87.23(C-2),81.76(C-6),70.87(C-8),69.44(C-4),56.21(C-OCH3),55.99(C-OCH3),54.52(C-OCH3),53.37(C-1),49.78(C-5)ppm。
【0056】
ESI-MS,1H-NMR,及び13C-NMRの試験データによると、化合物2の分子式はC21H23O9SKであり,構造式は以下の通りであると決定される。
【0057】
【化8】
【0058】
試験実施例1
フィリゲニン硫酸エステル誘導体類の抗ウイルス活性の試験
1 試験管内抗ウイルス試験
1.1 試験材料
【0059】
(1)薬物
1)フィリゲニン硫酸エステル誘導体類:すべて白色粉末であり、Dalian Fusheng Natural Medicinal Development Co.Ltd.により製造され、2つの高速液体クロマトグラフィー検出器、すなわち、紫外線検出器及び蒸発光散乱検出器で面積正規化法によりそれぞれが測定され、それぞれの純度が99.9%、99.5%、及び99.2%である、フィリゲニン硫酸ナトリウム、フィリゲニン硫酸カリウム、及びフィリゲニン硫酸アンモニウム。
【0060】
2)Henan Runhong Pharmaceutical Co.,ltd.により製造された無色透明の液体である、リバビリン注射剤。製品ロット番号は1206261であり、中国医薬品許可番号はH19993553であり、その濃度は100mg/mlであり、本試験では陽性対照薬とされる。
【0061】
3)中国薬品生物製品検定所(National Institute for the Control of Pharmaceutical and Biological Products)により製造されたリン酸オセルタミビル。製品ロット番号は101096-200901であり、リン酸オセルタミビルは本試験において陽性対照薬とされ、各注入量は100mgである。
【0062】
上述の薬物はすべて精製水に溶解させ、ろ過し、殺菌し、サブパッケージし、待機状態用途のために4℃で保管する。これらはすべて本試験で試験される薬物である。
【0063】
(2)細胞株
ベロ細胞(アフリカミドリザル腎細胞)の細胞株は、吉林大学(Jilin University)の基礎医学院(College of Basic Medical Sciences)に保管されている。
【0064】
(3)ウイルス株
1)中国予防医学科学院(Chinese Academy of Preventive Medicine)のウイルス研究所(Virology Institute)から購入したインフルエンザウイルス。
2)中国予防医学科学院のウイルス研究所から購入したパラインフルエンザウイルス。
3)中国予防医学科学院のウイルス研究所から購入した呼吸器合胞体ウイルス(RSV)。
4)教育及び研究オフィス(teaching and research office)に保管されているアメリカ由来のコクサッキーウイルスB3型(CVB3)株。
5)日本の国立仙台病院により贈与され、教育及び研究オフィスで保管されているコクサッキーウイルスA16型(CoxA16)株。
6)日本の国立仙台病院により贈与され、教育及び研究オフィスで保管されているエンテロウイルスEV71株。
7)吉林大学のノーマン・ベチューン健康科学センター第一病院(The First Hospital of Norman Bethune Health Science Center)の小児科研究所由来のアデノウイルス(AdV)。
8)中国薬品生物製品検定所から購入した単純ヘルペスウイルスI型(HSV-I)。
【0065】
(4)主な機器及び試薬:
生物学的安全キャビネット BHC−1300IIA/B3,AIRTECH
炭酸ガスインキュベーター MCO−18AIC,三洋電機
倒立顕微鏡 CKX41,オリンパス
電子化学てんびん AR1140/C,DHAUS
培地 DMEM,HyClone
ウシ胎仔血清 HyClone
トリプシン Gibco
MTT Sigma
DMSO Tianjin Beilian Fine Chemicals Development Co., Ltd.
【0066】
1.2 試験方法
(1)細胞の調製
ベロ細胞を1〜2日間継代培養し、切片にすると、境界線は明瞭である。立体感及び視度が強い場合、トリプシンで処理すると、細胞表面に針状のウェルがある場合、消化液は完全に吸収され、数ミリリットルの培養液を取って細胞を分散させ、細胞を計数し、培養液(10%のウシ胎仔血清を含有するDMEM)で約5×107/Lまで希釈し、96ウェル培養プレートに播種して、単層になるまで細胞を成長させる。
【0067】
(2)薬物毒性の測定
細胞毒性試験:薬物は、細胞毒性を測定するために表1に示す濃度に従って希釈される。
【0068】
【表1】
【0069】
維持液(2%のウシ胎仔血清を含有するDMEM)で異なる濃度に希釈された前述の薬物を、ベロ単層細胞に滴下して添加し、各ウェルは0.2mlであり、各濃度に対して6つずつ重複ウェルがあり、さらに、正常対照(薬物が添加されていない正常対照群)の6つのウェル及びブランク対照(培地)の6つのウェルを設け、これらは、培養するために37℃で5%炭酸ガスインキュベーター内に置かれ、倒立顕微鏡で毎日CPEを観察し、記録する。72時間後、20μL(5mg・mL-1)のMTT溶液を各ウェルに添加し、4時間インキュベートし続け、各ウェル内の培養液を吸引して廃棄し、100μLのDMSOを各ウェルに添加して、5分間振盪し、492nmでのOD値を測定して、細胞生存率を算出する。SPSS18.0統計ソフトウェアでは、細胞生存率はプロビット回帰分析され、ベロ細胞に対する薬物の最大非毒性濃度(TC0)及び50%細胞毒性濃度(TC50)を算出する。
【0070】
(3)種々のウイルスのTCID50の測定
種々のウイルスを10-1、10-2、10-3、10-4、10-5、及び10-6の異なる希釈度を有するように10倍段階で減少するように希釈し、順次、単層ベロ細胞の96ウェル培養プレートに播種したが、各ウェルは100μLで、各希釈度について6ウェルずつであり、その一方で、正常細胞対照群を用意する。ウイルスは5%炭酸ガスインキュベーター内で37℃で2時間インキュベートし、ウイルス液を廃棄し、次に、100μLの細胞維持液を各ウェルに添加し、5%炭酸ガスインキュベーター内で37℃で培養した。細胞変性結果を3日目から顕微鏡で観察し、結果を7日目から8日目に測定し、細胞ウェルの50%に陽性病変が起こるところを終点として最高希釈度をとるように適切に記録し、ウイルス力価をKarber法を使用することにより算出する。
【0071】
【数1】
TCID50:50%組織細胞感染量
XM:ウイルスの最高濃度希釈度の対数
d:希釈係数(倍数)の対数
Σpi:各希釈病変割合の総和
【0072】
(4)薬物のウイルス誘発細胞変性への影響
単層細胞で覆われた培養プレートを選び、培養液を吸引して廃棄し、細胞はウイルス攻撃の量が100TCID50にとなるように播種され、5%炭酸ガスインキュベーター内で37℃で2時間吸収され、特定の濃度(およそ最大非毒性濃度)の種々の液体を添加し、6つの重複ウェルを各濃度での培養のために用意するが、ここで200μL/ウェルである。リバビリン注射剤及びリン酸オセルタミビルを陽性薬物対照群として用意し、正常対照群(ウイルス及び薬物が添加されていない)及びウイルス対照群(ウイルスが添加されているが薬物は添加されていない)を用意し、薬物のウイルス誘発CPEへの影響を観察する。72時間後、OD値を492nm波長下でMTT比色法を使用して測定し、薬物の抗ウイルス有効率(ER%)を算出する。SPSS18.0統計ソフトウェアでは、種々の薬物の抗ウイルス有効性の有意差をANOVA法を使用して比較する。
【0073】
【数2】
【0074】
1.3 試験結果
(1)種々のウイルスのTCID50
【0075】
【数3】
【0076】
(2)薬物毒性の測定
1)薬物の細胞毒性の測定
ベロ細胞に対する薬物の最大非毒性濃度(TC0)、50%細胞毒性濃度(TC50)及び薬物の抗ウイルス試験に使用される濃度を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
2)薬物のウイルス誘発細胞変性への保護効果の結果
種々のウイルスに抵抗する薬物の有効率及びANOVA法の一元配置分散分析の結果について、詳細については表3を参照されたい。
【0079】
【表3】
【0080】
表3の結果に示すように、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス(CoxA16)を阻害するフィリゲニン硫酸エステル、具体的には、フィリゲニン硫酸ナトリウム、フィリゲニン硫酸カリウム、及びフィリゲニン硫酸アンモニウムの有効率はすべて90%超であり、ウイルス対照群と比較すると、差は統計学的に有意であり、呼吸器合胞体ウイルスRSV及び単純ヘルペスウイルスI型(HSV-I)の阻害率は両方共80%超であり、有効率は両方共80%よりも高く、ウイルス対照群と比較すると、差は統計学的に有意であり、前述のウイルスに対する3種のフィリゲニン硫酸エステル誘導体類の治療効果は、リバビリン及びリン酸オセルタミビルの動向よりも優れている。
【0081】
2.生体内の抗ウイルス試験
2.1 実験材料
(1)実験動物
医薬用動物No.10-5219である昆明マウスは吉林大学の吉林大学のノーマン・ベチューン健康科学センター(Norman Bethune Health Science Center)により提供される。
【0082】
(2)試験試薬
主な実験機器
機器名 モデル 製造業者
定量PCR装置 7300 ABI
PCR装置 ES-60J Shenyang Longteng Electronic
Weighing Instrument Co.,Ltd.
電子化学てんびん FA1004 Shenyang Longteng Co.,Ltd.
炭酸ガスインキュベーター HG303-5 Nanjing Experimental Instrument Factory
スーパークリーンベンチ SW-CJ-IF Suzhou Antai Air Tech Co.,Ltd.
倒立顕微鏡 CKX41 オリンパス
-80℃超低温フリーザー TECON-5082 オーストラリア
水浴振盪器 HZS-H Harbin Donglian Co.,Ltd.
マイクロプレートリーダ TECAN A-5082 オーストラリア
分光光度計 7550モデル 日本
【0083】
2.2 実験方法
(1)インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスによるマウスの半数致死量の測定
インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルス(細胞可溶化物)を10倍段階で減少するように希釈して、10-1、10-2、10-3、10-4、及び10-5の濃度を有するウイルス液にする。120匹の昆明マウスを得て、そのうち60匹はインフルエンザウイルス群のために用意し、また残りの60匹はパラインフルエンザウイルス群のために用意し、各群をランダムに6つの群に分ける。マウスはエーテルで軽く麻酔をかけ、異なる希釈度を有するウイルス液を0.03mL/マウスとなるように経鼻的に感染させる。一方で、ブランク対照を用意し、ウイルス液を生理食塩水で置き換える。死亡及び生存は観察指標とみなされ、観察は感染後の14日間毎日行う。感染してから24時間以内に死亡したマウスは非特異的死亡であるため数には入れず、ウイルス液のLD50をKarber法を使用することにより算出する。計算式は、
【0084】
【数4】
式中、LD50は半数致死量であり、XMはウイルスの最高濃度希釈度の対数であり、dは希釈係数(倍数)の対数であり、Σpiは各希釈病変割合の総和である。
【0085】
(2)インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスの感染により引き起こされる肺炎への抵抗力についてのフィリゲニン硫酸エステルの研究
1)実験動物及び群
2つの試験を行うために360匹の4週齢マウスを選ぶ。180匹のマウスを選び、インフルエンザウイルスに感染したマウスに対するフィリゲニン硫酸エステルの肺標識及び肺標識阻害率を測定する試験のために18群にランダムに分ける(各群10匹)。残りの180匹を選び、フィリゲニン硫酸エステル塩の肺懸濁液のウイルス赤血球凝集価を測定する試験のために18群にランダムに分ける(各群10匹)。
【0086】
2)感染方法
脱脂綿を200〜300mLビーカーに入れ、その中に適切な量のエーテル(単に綿を湿らせるため)を添加し、脱脂綿が入ったビーカーを上下逆さまにし、その中で麻酔をかけるときマウスは極度に興奮しており、明らかに弱ったらマウスの背を下にして横たわらせ、15LD50インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスを0.03ml/鼻孔でマウスに鼻から吸わせて感染させるが、正常対照群においては、ウイルス懸濁液は生理食塩液によって置き換えられている。
【0087】
3)投与方法及び投与量
従来からある胃内投与を、フィリゲニン硫酸ナトリウム薬物群、フィリゲニン硫酸カリウム薬物群及びリバビリン対照群に対して、感染1日前にそれぞれ行う。フィリゲニン硫酸ナトリウム及びフィリゲニン硫酸カリウムの高濃度投与量、中濃度投与量、及び低濃度投与量はそれぞれ、13.0mg/kg、6.5mg/kg、及び3.25mg/kgであり、リバビリン陽性薬物の投与量は58.5mg/kgである。連続した5日間、1日1回投与を行う。ウイルス対照群には同量の生理食塩液を飲ませる。
【0088】
4)観察指標
(i)肺指標測定
薬物がマウスに投与されてから5日後、マウスにはまず、8時間水を飲ませず、次に、マウスを秤量してから、マウスの目を動かし、該動物を出血させて殺す。マウスの胸腔を開いて肺全体を取り出し、肺を生理食塩液で2度洗浄し、ろ紙を使用することにより肺の表面の水分を吸収する。その後、電子てんびんを使用して肺を秤量し、肺指標及び肺指標阻害率を以下の式に従って算出する。
【0089】
【数5】
【0090】
(ii)肺懸濁液のウイルス赤血球凝集価の測定
種々の群のマウスの肺をそれぞれ、処理後5日目に取り出し、ホモジナイザーにより低温でホモジネートにする。ホモジネートを生理食塩液によって10%の肺組織懸濁液に希釈する。遠心分離を実施して上清を得、上清を2倍希釈して、0.2ml/ウェルで滴定プレートに滴下する。0.2mlの1%ニワトリ赤血球懸濁液を各穴に添加してよく混合する。滴定プレートを室温環境に30分間置き、赤血球凝集価を観察し記録する。赤血球が(++)まで凝集した時点で終点となり、その赤血球凝集価は懸濁液の希釈倍数により表される。
【0091】
(iii)肺組織形態の観察
種々のマウスの肺を処理後5日目に取り出す。それら内臓の全体的な病理学的変化を肉眼で観察し記録する。肺は生理食塩液による洗浄によって清浄にされ、肺に付いた水分はろ紙を使用することにより吸収する。肺の一部を10%ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンで包埋し、スライスして、HE染色した。観察及び撮影は顕微鏡下で行う。
【0092】
2.3 実験結果及び分析
(1)インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスによるマウスの半数致死量の測定結果
実験群の昆明マウスはそれぞれ、30μLの異なる濃度のインフルエンザウイルス液及びパラインフルエンザウイルス液を経鼻的に感染させ、感染してから3日目に最初の3つの群のマウス(ウイルス濃度に基づき10-1群、10-2群、及び10-3群)はすべて、異なる程度の病徴、すなわち、立毛、震え、食欲減退等を示した。5日目にマウスはよろけ、6日目に最高ウイルス濃度の群のマウスは死に始め、感染してから7日目に残りの群では次々と死んだ。14日間の観察が完了すると、各群のマウスの死亡数を計数し、その結果を表4及び表5に示す。計算により、インフルエンザウイルスのLD50は希釈度10-2.9であり、パラインフルエンザウイルスのLD50は希釈度10-2.5である。
【0093】
【表4】
【0094】
ウイルスのLD50をKarber法を使用することにより算出する。インフルエンザウイルスのLogLD50は、次の通りである。
【0095】
【数6】
【0096】
【表5】
【0097】
ウイルスのLD50をKarber法を使用することにより算出する。パラインフルエンザウイルスのLogLD50は、次の通りである。
【0098】
【数7】
【0099】
(2)インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスの感染により引き起こされる肺炎への抵抗力についてのフィリゲニン硫酸エステル塩の効果の結果
【0100】
1)肺指標測定
マウスをインフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスに感染させた後、平均肺指標の結果は以下のことを示す。感染モデル群と比較すると、正常対照群、種々の濃度の薬物群、及びリバビリン群の肺指標は顕著に低下しており(P<0.05)、フィリゲニン硫酸エステル塩の濃度が3.25〜13.0mg/kg/dの範囲内であれば、ある程度の保護効果が得られ、肺指標はすべて顕著に低下する。フィリゲニン硫酸エステル塩の高用量群における低下は、他の2群と比較するとさらに顕著であるが、比較したときに各種群間に顕著な差はない(P>0.05)。フィリゲニン硫酸エステル塩の中用量群及び高用量群はリバビリン群よりも優れている(P>0.05)。結果については、表6及び表7を参照されたい。
【0101】
【表6】
インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺指標及び肺指標阻害率へのフィリゲニン硫酸エステル塩の影響
【0102】
【表7】
【0103】
2)肺懸濁液のウイルス赤血球凝集価の測定
マウスをインフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスに感染させた後、感染モデル群の肺組織赤血球凝集価(InX)はそれぞれ、32.33及び33.86であり、異なる濃度のフィリゲニン硫酸エステル塩による処理を5日行った後、肺組織のウイルス赤血球凝集価は両方共ある程度低下し、感染モデル群と比較すると、差は顕著である(P<0.05)。リバビリン群と比較すると、フィリゲニン硫酸エステル塩の高用量群、中用量群、及び低用量群のウイルス赤血球凝集価はすべてリバビリン群のウイルス赤血球凝集価よりも高く、差は顕著である(P<0.05)。比較すると、表9に示すように、フィリゲニン硫酸エステル塩の高用量群の赤血球凝集価は他の2つの群とは顕著に異なる(P<0.05)。比較すると、パラインフルエンザウイルスに感染したマウスのフィリゲニン硫酸エステル塩の高用量群とリバビリン群との間に有意差はなく(P>0.05)、フィリゲニン硫酸エステル塩の中用量群及び低用量群は両方共リバビリン群よりも優れており、差は顕著である(P<0.05)。比較すると、表8及び表9に示すように、フィリゲニン硫酸エステル塩の高用量群の赤血球凝集価は、フィリゲニン硫酸エステル塩の低用量群の赤血球凝集価とは顕著に異なる(P>0.05)。
【0104】
【表8】
【0105】
【表9】
【0106】
3)肺組織の検出結果
インフルエンザウイルス性肺炎モデル群及びパラインフルエンザウイルス性肺炎モデル群のマウスの肺はほとんど鬱血し、浮腫による病変を呈しており、肺の一部は外観が暗褐色の硬化領域になっており、深刻な影響を受けたものは茶褐色の出血巣を示している。顕微鏡的に、肺間質、例えば、気管支、細気管支、及び肺胞壁は、鬱血、浮腫及びリンパ球、単核細胞浸潤、肺胞壁肥厚、並びに肺胞の炎症反応を起こしていることが分かる。インフルエンザウイルス性肺炎マウスモデル及びパラインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルはフィリゲニン硫酸エステル塩で処理された後、各群のマウスの肺の全体的な病理学的変化は顕著に少なくなり、肺組織の一部は形状及び構造が正常である。感染モデル群と比較すると、肺胞中隔が薄く、肺胞壁及び細気管支壁の単核細胞の浸潤数が少なく、腔には漏れがなく、病変部は著しく少ない。感染モデル群と比較すると、パラインフルエンザウイルス性肺炎を治療するフィリゲニン硫酸エステル塩の中用量群及び高用量群は、著しく薄い肺胞中隔を有し、単核細胞の湿潤数がより少なく、腔に漏れがなく、著しく少ない病変部を有する。
【0107】
インフルエンザウイルス性肺炎モデルのマウス肺組織の病理学的切片の顕微鏡検査結果を図1に示す。図1Aは、正常マウスの肺組織を示す。図1Bは、インフルエンザウイルス性肺炎マウスの肺組織を示す。図1Cは、陽性薬物リバビリンで処理した後のインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図1Dは、高用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図1Eは、中用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図1Fは、低用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。
【0108】
パラインフルエンザウイルス性肺炎モデルのマウス肺組織の病理学的切片の顕微鏡検査結果を図2に示す。図2Aは、正常マウスの肺組織を示す。図2Bは、パラインフルエンザウイルス性肺炎マウスの肺組織を示す。図2Cは、陽性薬物リバビリンで処理した後のパラインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図2Dは、高用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のパラインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図2Eは、中用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のパラインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。図2Fは、低用量フィリゲニン硫酸エステル塩で処理した後のパラインフルエンザウイルス性肺炎マウスモデルのマウスの肺組織を示す。
【0109】
2.4 結論
生体内の抗ウイルス試験は、フィリゲニン硫酸エステル塩(フィリゲニン硫酸ナトリウム及びフィリゲニン硫酸カリウム)は、インフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルス、並びにインフルエンザウイルス及びパラインフルエンザウイルスによって引き起こされるマウスのウイルス性肺炎に対して、3.25mg/kg/d〜13mg/kg/dの用量範囲で比較的顕著な阻害効果を有し、肺指標及び赤血球凝集価を著しく低減することができ、さらに著しく肺組織病理を改善し、モデル対照群と比較して有意差を有することを示す。
図1
図2