特許第6466474号(P6466474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6466474エチレン重合体組成物及びポリオレフィン組成物におけるその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466474
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】エチレン重合体組成物及びポリオレフィン組成物におけるその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20190128BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20190128BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08L23/08
   C08L23/02
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-568637(P2016-568637)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公表番号】特表2017-515961(P2017-515961A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015059240
(87)【国際公開番号】WO2015180917
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】14170313.2
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・カヴァリエリ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・グラッヅィ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・パンタレオーニ
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−520011(JP,A)
【文献】 特開平10−204231(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02592112(EP,A1)
【文献】 特表2008−525548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08L 23/02
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)エチレンとHC=CHR(ここで、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルラジカルである)のオレフィンから選択される1種以上のコモノマーとの共重合体であって、A)の重量に対して10重量%以下の25℃におけるキシレン中の可溶性分画XSを含有する共重合体30〜60重量%;
B)エチレンと式HC=CHR(ここで、Rは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルラジカルである)の少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であって、B)の重量に対して65重量%〜90重量%のエチレンと、B)の重量に対して55〜15重量%の25℃におけるキシレン中の可溶性分画XSとを有し、XS分画の固有粘度[η]が、0.8〜3.2dl/gの範囲である、共重合体40〜70重量%;
を含み、A)及びB)の重量%は、A)+B)の総重量に対するものであり、
A)の前記オレフィンが、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、及びデセン−1から選択され、
B)の前記オレフィンが、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、及びデセン−1から選択されるエチレン重合体組成物。
【請求項2】
分当たり20℃の加熱速度で示差走査熱量計で測定時、120℃以上の温度で溶融ピークを有する、請求項1に記載のエチレン重合体組成物。
【請求項3】
2.16kgの荷重で230℃でISO 1133に応じて測定時、0.3〜15g/10分のMFR値を有する、請求項1に記載のエチレン重合体組成物。
【請求項4】
屈曲弾性率値が150〜350MPaである、請求項1に記載のエチレン重合体組成物。
【請求項5】
少なくとも2つの逐次ステップを含み、ここで、前記成分A)及びB)は、先行ステップで使用された触媒及び形成された重合体の存在下で、第1ステップを除いた各ステップで操作する別個の後続ステップで製造されるものである、請求項1のエチレン重合体組成物を製造する重合方法。
【請求項6】
ポリオレフィン組成物であって、請求項1に記載のエチレン重合体組成物、及び前記ポリオレフィン組成物の総重量に対して、少なくとも50重量%の一つ以上の追加ポリオレフィンを含む、ポリオレフィン組成物。
【請求項7】
前記追加ポリオレフィンまたはポリオレフィンがプロピレン単独重合体及び共重合体から選択される、請求項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
請求項またはに記載のポリオレフィン組成物を含む、成形品。
【請求項9】
射出成形品形態である、請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エチレン重合体組成物及びポリオレフィン組成物のための添加剤、特に耐衝撃性改質剤としてその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
主に非晶質のオレフィン共重合体から構成されるとか、これを含む耐衝撃性改質剤は、多くの場合に、耐衝撃性を向上させるために、ポリオレフィン組成物に添加されている。
【0003】
また、耐衝撃性を強化しながら、光学特性などを含むポリオレフィン組成物の他の有益な特性などを改質するのが好ましいだろう。
【0004】
このような要求に対する回答として、特定エチレン共重合体を選択することにより、優れたセットの特性などを有する最終ポリオレフィン組成物を製造するのに特に適するエチレン重合体組成物を得ることができるということが明かになった。
【0005】
特に、本発明のエチレン重合体組成物は、良好な耐衝撃性を維持しながら、破断伸度、光学特性(高光沢)及び冷却時に減少された収縮率の非常に良いバランスを有するポリオレフィン組成物を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、エチレン重合体組成物であって、
A)25℃におけるキシレン中の可溶性分画XSを、A)の重量に対して、10%以下、好ましくは、8%以下、より好ましくは、6%以下の量で含有するエチレン重合体30〜60%、好ましくは、30〜55%;
B)エチレンを、B)の重量に対して、65〜90%、好ましくは、70〜90%、及び25℃におけるキシレン中の可溶性分画XSを、B)の重量に対して、55〜15%、好ましくは、50%〜20%の量で含有するエチレンと、式HC=CHR(ここで、Rは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルラジカルである)の少なくとも一つのオレフィンの共単量体40〜70%、好ましくは、45〜70%を含み、
ここで、前記総パーセント量は、重量当たりであり;XS分画の固有粘度[η]は、0.8〜3.2dl/g、好ましくは、1.0〜3.0dl/g、より好ましくは、1.0〜2.0dl/gであり;A)とB)の量は、A)+B)の総重量に対するものであるエチレン重合体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、用語“共重合体”は、1種以上の共単量体、例えば、三元共重合体を含むことを意味する。
【0008】
前記エチレン重合体A)は、好ましくは、エチレン単独重合体(i)または式CH=CHR(式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルラジカルである)を有するオレフィンから選択された一つ以上の共単量体とエチレンの共重合体(ii)、または(i)と(ii)との混合物である。
【0009】
前記オレフィンの具体例は、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1及びデセン−1である。
【0010】
好ましくは、前記ポリエチレンA)は、23℃でISO 1183に応じて測定時、0.930〜0.960g/cm、より好ましくは、0.935〜0.955g/cmの密度を有する。
【0011】
本発明のエチレン重合体組成物中の成分B)は、キシレンの中でより可溶性であり、従って、成分A)よりも少ない結晶性を有するエチレン共重合体である。
【0012】
式HC=CHRオレフィンの具体例は、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1及びデセン−1である。
【0013】
ブテン−1が特に好ましい。
【0014】
本発明のエチレン重合体組成物は、好ましくは、分当たり20℃で加熱速度で示差走査熱量計で測定時、120℃以上、特に120℃〜130℃の温度で溶融ピークを有する。
【0015】
エチレン重合体組成物のメルトフローレート(MFR)は、2.16kgの荷重で230℃でISO 1133に応じて測定時、好ましくは、0.3〜15g/10分、より好ましくは、0.5〜10g/10分である。
【0016】
さらに、本発明のエチレン重合体組成物は、次のような追加要件中の少なくとも一つを有することができる:
−2.16kgの荷重で230℃でISO 1133に応じて測定されたエチレン重合体A)のMFR値1〜20g/10分;
−A)+B)の混合物に対して測定されたガラス転移温度(Tg)−45〜−60℃;
−成分B)のTg−45〜−60℃;
−A)+B)の総量に対して測定されたエチレン含量75〜93重量%、好ましくは、80〜93重量%;
−A)+B)の総量に対して行われた抽出によって測定された25℃でキシレン中に可溶性である総分画XSTOTの量10〜35重量%、好ましくは、10〜30重量%;
−XSTOT分画の固有粘度[η]0.8dl/g以上、特に0.9〜2.9dl/g、より好ましくは、0.9〜1.9;
−屈曲弾性率値150〜350MPa。
すべての前記[η]値は、135℃でテトラヒドロナフタリン中で測定される。
【0017】
本発明の組成物において、B)のTgは、実質的にA)+B)の混合物のTgを決定し、従って、A)+B)の混合物に対して測定されたTg値が−57℃以上である場合、B)のTgは、−60℃と等しいか、これよりも高くなければならない。
【0018】
原則的に使用される重合方法及び触媒の種類に必要な限定が存在するものとして知られていないが、本発明のエチレン重合体組成物は、少なくとも2つの逐次工程を含む逐次重合によって製造することができ、ここで、成分A)及びB)は、先行ステップで使用された触媒及び形成された重合体の存在下で、第1ステップを除いた各ステップで操作する別個の後続ステップで製造される。前記触媒は、第1ステップでのみ添加されるが、その活性は、すべての後続ステップでまだ活性になるようにする。
【0019】
連続式またはバッチ式であることができる重合は、公知の技術に従って、及び液状中で、不活性希釈剤の存在または不在下で、または気相中で、または混合液体−気体技術によって操作して行う。重合は、気相で行うのが好ましい。
【0020】
重合ステップに関する反応時間、圧力及び温度は、重要ではないが、温度が50〜100℃である場合に最も良い。圧力は大気圧以上であり得る。
【0021】
分子量の調節は、公知された調節剤、特に水素を用いて行う。
【0022】
前記重合は、好ましくは、ジーグラー−ナッタ触媒の存在下で行う。一般的に、ジーグラー−ナッタ触媒は、元素周期律表(新表記法)4〜10族の遷移金属化合物と元素周期律表1、2または13族の有機金属化合物の反応生成物を含む。特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr及びHfの化合物のうちから選択されることができ、好ましくは、MgCl上に担持される。
【0023】
特に好ましい触媒は、Ti化合物とMgCl上に担持される電子供与体化合物を含む固体触媒成分と、元素周期律表1、2または13族の有機金属化合物の反応生成物を含む。
【0024】
好ましい有機金属化合物は、アルミニウムアルキル化合物である。
【0025】
従って、好ましい実施形態において、本発明のエチレン重合体組成物は、ジーグラー−ナッタ重合触媒、より好ましくは、MgCl上に担持されたジーグラー−ナッタ触媒、さらにより好ましくは、下記1)〜3)の反応生成物を含むジーグラー−ナッタ触媒を使用して得ることができる:
1)Ti化合物及びMgCl上に担持された電子供与体(内部電子供与体)を含む固体触媒成分;
2)アルミニウムアルキル化合物(共触媒);及び、任意に、
3)電子供与体化合物(外部電子供与体)。
【0026】
固体触媒成分(1)は、電子供与体として一般的にエーテル、ケトン、ラクトン、N、P及び/またはS原子を含む化合物、及びモノ−及びジカルボン酸エステルの中から選択された化合物を含む。
【0027】
前記言及された特性などを有する触媒は、特許文献でよく知られており、米国特許第4,399,054号及びヨーロッパ特許第45977号に記載された触媒が特に有利である。
【0028】
特に、前記電子供与体化合物の中でフタル酸エステル、好ましくは、フタル酸ジイソブチル及びコハク酸エステルが特に好適である。
【0029】
好適なコハク酸エステルは、下記の式(I)で表される:
【0030】
【化1】
【0031】
前記式において、ラジカルR及びRは、互いに等しいか異なっており、任意にヘテロ原子を含む、C−C20直鎖状または分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり;ラジカルR〜Rは、互いに等しいか異なっており、水素または、任意にヘテロ原子を含む、C−C20直鎖状または分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、また同一の炭素原子とともに結合されるラジカルR〜Rは、共に連結されて環を形成することができる。
【0032】
及びRは、好ましくは、C−Cアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル及びアルキルアリール基である。R及びRが第1級アルキル及び特に分枝状第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR及びR基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
【0033】
式(I)によって記述される化合物の好ましい基中の一つは、R〜Rが水素であり、Rが炭素数3〜10個の炭素原子を有する分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル及びアルキルアリールラジカルである。式(I)のもののうちで、化合物の他の好ましい基は、R〜Rの少なくとも2つのラジカルが水素と異なっており、任意にヘテロ原子を含むC−C20直鎖状または分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリールから選択される。水素と異なる2つのラジカルが同一の炭素原子に連結される化合物が特に好ましい。さらに、水素と異なる少なくとも2つのラジカルが異なる炭素原子に結合される化合物、すなわち、R及びRまたはR及びRが特に好ましい。
【0034】
特に適した他の電子供与体は、公開されたヨーロッパ特許出願EP−A−361493及び728769に例示されたような1,3−ジエテルである。
【0035】
共触媒(2)として、トリアルキルアルミニウム化合物、例えば、Al−トリエチル、Al−トリイソブチル及びAl−トリ−n−ブチルが好ましい。
【0036】
外部電子供与体(Al−アルキル化合物に添加される)として使用され得る電子供与体化合物(3)は、芳香族酸エステル(例えば、安息香酸アルキル)、ヘテロ環化合物(例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び2,6−ジイソプロピルピペリジン)、及び特に少なくとも一つのSi−OR結合(ここで、Rは、炭化水素ラジカルである)を含むケイ素化合物を含む。
【0037】
前記ケイ素化合物の例は、式RSi(OR、(ここで、a及びbは、0〜2の整数であり、cは、1〜3の整数であり、合計(a+b+c)は、4であり;R、R及びRは、任意にヘテロ原子を含む1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。
【0038】
ケイ素化合物の有用な例は、(tert−ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH及び(シクロペンチル)Si(OCHである。
【0039】
先立って言及された1,3−ジエテルは、また外部供与体として使用するのに適している。内部供与体が前記1,3−ジエテルの1つである場合に、外部供与体は、省略され得る。
【0040】
前記触媒は、少量のオレフィンと予備接触させ(予備重合)、炭化水素溶媒中に懸濁状態で触媒を維持させ、室温乃至60℃で重合させて、このようにして触媒重量の0.5〜3倍量の重合体を生成することができる。
【0041】
操作は、さらに、液体単量体中で行うことができ、この場合に、重合体の量を触媒重量の1000倍以下で生成する。
【0042】
本発明のエチレン重合体組成物は、また、当業界で使用される添加剤、例えば、抗酸化剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤及び充填剤を含むことができる。
【0043】
先立って言及したように、本発明のエチレン重合体組成物は、有利には、追加のポリオレフィン、特にプロピレン重合体、例えば、プロピレン単独重合体、ランダム共重合体及び熱可塑性エラストマーポリオレフィン組成物と配合することができる。従って、本発明の第2の実施形態は、前記定義されたエチレン重合体組成物を含むポリオレフィン組成物に関する。好ましくは、前記オレフィン組成物は、少なくとも50重量%、典型的には、50〜85重量%の一つ以上の追加的ポリオレフィン、従って、50重量%以下、典型的には、15〜50重量%の本発明によるエチレン重合体組成物を含み、ここで、総パーセント量は、エチレン重合体組成物及び追加的ポリオレフィンまたはポリオレフィンなどの総量に対するものである。
【0044】
前記追加的ポリオレフィンの実施例は、次のような重合体である:
1)結晶性プロピレン単独重合体、特にイソタックチックまたは主としてイソタックチック単独重合体;
2)エチレン及び/またはC−C10α−オレフィンと結晶性プロピレン共重合体、ここで、総共単量体含有量は、共重合体の重量に対して0.05〜20重量%であり、好ましいC−C10α−オレフィンは、1−ブテン;1−ヘキセン;4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンである;
3)結晶性エチレン単独重合体及びプロピレン及び/またはC−C10α−オレフィン、例えば、HDPEと共重合体;
4)プロピレン単独重合体及び/またはプロピレン及び/または、任意に少量のジエン、例えば、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン及びエチリデン−1−ノルボルネンを含む、C−C10α−オレフィンとエチレンの一つ以上の共重合体を含むエラストマー部分と項目2)の共重合体の一つ以上を含む熱可塑性エラストマー組成物、ここで、前記ジエン含有量は、典型的に1〜10重量%であり、典型的に溶融状態で成分などを混合するとか、または逐次重合によって公知の方法に応じて製造され、一般的に前記エラストマー部分を5〜80重量%の量で含有する。
【0045】
ポリオレフィン組成物は、エチレン重合体組成物と追加的なポリオレフィン(など)を共に混合し、前記混合物を圧出し、得られた組成物を公知の技術及び装置を用いてペレット化することによって製造することができる。
【0046】
ポリオレフィン組成物は、また、鉱物充填剤、着色剤及び安定剤を含むことができる。組成物に含まれ得る鉱物充填剤は、タルク、CaCO、シリカ、例えば、珪灰石(CaSiO)、粘土、珪藻土、酸化チタン及びゼオライトを含むことができる。典型的に鉱物充填剤は、0.1〜5マイクロメータ範囲の平均直径を有する粒子形態である。
【0047】
本発明は、また、最終物品、特に射出成形品、例えば、前記ポリオレフィン組成物で作るとか、またはこれを含む自動車産業用部品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0048】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物及び方法の実施並びに利点は、次の実施例において記述される。これらの実施例は、単に例示的なものであり、如何な方法によっても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0049】
次の分析方法は、重合体組成物を特性化するために使用される。
【0050】
溶融温度(ISO 11357−3)
示差走査熱量計(DSC)で測定した。サンプル重さ6±1mgを20℃/分の速度で200±1℃に加熱し、窒素気流下で200±1℃で2分間維持させた後、20℃/分の速度で40±2℃に冷凍させ、この温度で2分間維持させてサンプルを結晶化させた。次に、サンプルは、再び20℃/分の昇温速度で最大200℃±1まで溶融させた。溶融スキャンを記録し、サーモグラムを得て、これよりピークに相応する温度を読み取る。第2の融解途中に記録された最も強い溶融ピークに対応する温度を溶融温度とした。明らかに、ただ一つのピークが検出される場合、溶融温度は、このようなピークによって提供される(すなわち、ピークに対して測定する)。
【0051】
キシレン可溶性分画
2.5gの重合体及び250cmのo−キシレンを冷凍機及び電磁スターラーが取り付けられたガラスフラスコ内に投入する。温度は、30分内に室温で溶媒(135℃)の沸点まで増加させる。このように得られた透明な溶液を還流下で30分さらに撹拌しながら維持させる。次に、閉じたフラスコを25℃の恒温水浴に保持してサンプルの不溶性(XI)部分の結晶化が起こる。このように形成された固体は、迅速にろ過紙でろ過する。100cmのろ過液を予め秤量されたアルミニウム容器に注ぎ、窒素気流下で熱板で加熱させて蒸発によって溶媒を除去した。次に、容器を真空下で80℃のオーブンに保持して乾燥させ、一定の重さを得た後に秤量する。
【0052】
このようにして、25℃においてキシレン中に可溶性及び不溶性である重合体の重量%を計算する。
【0053】
メルトフローレート
別の言及がない限り、2.16kgの荷重下で230℃でISO 1133に応じて測定する。
【0054】
[η]固有粘度
サンプルは、135℃でテトラヒドロナフタリン中に溶解した後、毛細管粘度計に注ぐ。粘度計管(ウベローデ型)は、円筒形ガラスジャケットに取り囲まれている。このような設定は、循環温度液体で温度制御を可能にする。メニスカスの下向き通路は、光電素子によって計時する。
【0055】
上部ランプの前にメニスカスの通路は、水晶オシレータを有するカウンタを開始する。メニスカスは、下部ランプを通過することによってカウンタを開始し、流出時間を記録する。これは、純粋溶媒の流動時間が同一の実験条件(同一の粘度計及び同一温度)で知られている限り、ハギンズ式を介して固有粘度値に転換する(Huggins,M.L.,J.Am.Chem.Soc.,1942,64,2716)。一つの単一重合体溶液を使用して[η]を測定する。
【0056】
I.R.分光法を通じて測定したエチレン、プロピレン、またはブテン−1含有量
重合体の加圧膜のNIR(6000〜5500cm−1)スペクトラムは、吸光度対波数(cm−1)に記録する。次の測定などは、エチレン含有量を計算するために使用する:
a)最大5669cm−1でCH基に対する吸収帯の高さ、6000〜5500cm−1の間に描かれるベースラインの下の領域を省略する。
b)CH基に対する5891cm−1でショルダーの高さ、6000〜5500cm−1の間に描かれるベースラインの下の領域を省略する。
【0057】
D5891/D5669の比は、NMR分光法で測定された公知組成物の共重合体を分析して校正される。
【0058】
次の測定などを利用してプロピレン含有量を計算する:
a)膜厚さの分光標準化に使用される4482〜3950cm−1間の組み合わせ吸収帯の領域(ANIR)。
b)986〜952cm−1範囲のプロピレン配列による吸収帯の領域(A971)、終点の間に描かれたベースラインの下の領域を省略する。
【0059】
A971/ANIRの比は、NMR分光法で測定された公知組成物の共重合体を分析して校正する。
【0060】
次の測定などを利用して1−ブテン含有量を計算する:
781〜750cm−1範囲の1−ブテン単位からエチル分岐による吸収帯の領域(Ac4)、終点の間に描かれたベースラインの下の領域を省略する。
【0061】
Ac4/ANIRの比は、NMR分光法で測定された公知組成物の共重合体を分析して校正する。
【0062】
DMTA(動的機械熱分析)によるTg測定
20mm×5mm×1mmの成形試験片を引張応力用DMTA機械に固定する。正弦波発振周波数は、1Hzで固定する。DMTAは、−100℃(ガラス状態)から開始して130℃(軟化点)まで試験片の弾性反応を翻訳する。このようにして、弾性反応対温度をプロットすることができる。粘弾性材料に対するDMTA弾性率は、応力と変形との間の比として定義され、これは、また、複素弾性率E=E’+iE”とも定義される。DMTAは、2つの成分E’及びE”をこれらの共鳴によって分割することができ、また、E’(弾性成分)、E”(損失弾性率)及びE”/E’=tanδ(減衰指数)対温度をプロットすることができる。ガラス転移温度Tgは、tan=(δ)E”/E’対温度曲線の最大における温度であることと仮定される。
【0063】
屈曲弾性率:ISO 178、成形後24時間測定する。
【0064】
引張降伏強度:ISO 527、成形後24時間測定する。
【0065】
引張破断強度:ISO 527、成形後24時間測定する。
【0066】
破断及び降伏伸度:ISO 527、成形後24時間測定する。
【0067】
ノッチアイゾッド衝撃試験:ISO 180/1A
【0068】
アイゾッド値は、成形後24時間、23℃、−20℃及び−30℃で測定する。
【0069】
注:*ISO 1873−2:1989による射出成形によって製造された試験片。
【0070】
60゜での光沢
1mmのISO D1プラークは、次のパラメータに応じて射出成形機“NB 60”(ここで、60は、締付力の60トンを意味する)で成形する。
・溶融温度=260℃、
・成形温度=40℃、
・射出速度=100mm/秒、
・保持時間=10秒、
・スクリュー回転=120rpm
【0071】
射出及び保持圧力は、金型の完全な充填を保障するために適切にセットアップして、フラッシュを回避する。
【0072】
代替的に、射出成型機“NB VE70”(ここで、70は、締付力の70トンを意味する)をまた使用することができる。
【0073】
光沢@60゜は、ASTM D 2457に応じてプラーク上で測定する。
【0074】
縦方向及び横方向熱収縮率
100×200×2.5mmのプラークは、射出成型機“SANDRETTO serie 7 190”(ここで、190は、締付力の190トンを意味する)で成形する。
【0075】
射出条件は、次の通りである:
・溶融温度=250℃;
・成形温度=40℃;
・射出時間=8秒;
・保持時間=22秒;
・スクリュー直径=55mm。
【0076】
プラークは、キャリパーを介して成形後24時間測定し、収縮率は、次の式で示す:
【0077】
【数1】
【0078】
【数2】
【0079】
ここで、200は、成形直後に測定された流れ方向に沿ったプラークの長さ(mm)であり;
【0080】
100は、成形直後に測定された流れ方向を横切ったプラークの長さ(mm)であり;
【0081】
read_valueは、関連方向のプラーク長さである。
【0082】
実施例1
エチレン重合体組成物の製造
重合に使用された固体触媒成分は、次のように製造された、内部供与体としてチタンとフタル酸ジイソブチルを含む塩化マグネシウム上に担持されたジーグラー−ナッタ触媒成分である。
【0083】
初期量の微小球状MgCl・2.8COHは、10,000代りに3,000rpmで操作することを除いては、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載された方法によって製造した。次に、このようにして得られた付加物は、Mgのモル当たりのモルアルコール含有量が1.16になるまで窒素気流で作動する30から130℃に上昇する温度で熱脱アルコールを行った。
【0084】
窒素でパージした1000mLの四口丸底フラスコへ500mLのTiClを0℃で注入した。撹拌しながら、30グラムの微小球状MgCl・1.16COH付加物(前記のように製造する)を添加した。温度は、120℃に上げて、この値に60分間維持させた。温度上昇時に、一定量のフタル酸ジイソブチルを18のMg/フタル酸ジイソブチルのモル比を有するように添加した。前記言及された60分後に、撹拌を止め、液体を吸引して27のMg/フタル酸ジイソブチルのモル比を有するように一定量のフタル酸ジイソブチルの存在下で100℃で1時間の間にTiCl処理を繰り返した。その後、撹拌を止め、液体を吸引してTiCl処理を100℃で30分間繰り返した。85℃で沈降及び吸引後、固体を60℃で無水ヘキサン(6×100ml)で6回洗浄した。
【0085】
触媒システム及び予備重合処理
重合反応器に投入する前に、予備接触ステップは、約15と同一のTEAL/DCPMS重量比で、また、TEAL/固体触媒成分重量比が5と同一の量でアルミニウムトリエチル(TEAL)及びジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)で30℃で9分間接触させて行う。
【0086】
次に、触媒システムは、第1重合反応器に投入する前に、50℃で約75分間液体プロピレン中に維持させて予備重合を行った。
【0087】
重合
重合は、生成物を第1反応器から第2反応器へ移動させるために、装置などが装着された直列の2つの気相反応器で連続的に行う。
【0088】
第1気相重合反応器内に、エチレン/プロピレン共重合体(成分A))は、連続及び一定流れ中に予備重合された触媒システム、水素(分子量調節剤として使用される)、エチレン及びプロピレンを気体状態で供給することによって製造される。
【0089】
第1反応器から出るエチレン重合体は、連続流れで排出し、未反応単量体にパージした後、連続流れ中に、第2気相反応器内に、定量的に一定流れの水素及びブテン−1を気体状態で投入する。
【0090】
第2反応器において、第2エチレン/ブテン−1共重合体(成分B))を製造する。重合条件、反応物のモル比及び得られた共重合体の組成は、表Iに示す。
【0091】
本発明による安定化されないエチレン重合体組成物を構成する第2反応器を出た重合体粒子などは、蒸気処理を行って反応性単量体及び揮発性物質を除去した後、乾燥させる。
【0092】
次に、重合体粒子などは、2軸圧出機Berstorff ZE 25(スクリューの長さ/直径比:33)の中で通常の安定化添加剤組成で混合した後、次の条件で窒素雰囲気下で押し出す:
回転速度:250rpm;
押出量:15kg/時間;
溶融温度:280〜290℃。
安定化添加剤組成物は、次の成分などで作る:
−0.1重量%のIrganox(登録商標)1010;
−0.1重量%のIrgafos(登録商標)168;
−0.04重量%のDHT−4A(ヒドロタルサイト)。
【0093】
前記Irganox(登録商標)1010は、2,2−ビス[3−[5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼン−プロパノエートである一方、Irgafos(登録商標)168は、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ポスファイトである。
【0094】
パーセント量は、重合体と安定化添加剤組成物との総重量と称する。
【0095】
表IIに報告された重合体組成物に関する特性は、このように押出された重合体に対して行われた測定から得られ、これは、本明細書に開示された例示的実施形態による安定化エチレン重合体を構成する。
【0096】
安定化エチレン重合体組成物とプロピレン重合体との混合物の製造
前述のような安定化エチレン重合体組成物(以下、SEPと称する)は、下記及び表IIIに報告された比率で、異相ポリプロピレン組成物(HPP)及び後述する次の添加剤を使用して前述された条件下で押出によって混合する。このようにして得られた最終組成物の比率は、表IIIに報告される。
【0097】
添加成分など
1.HPP:16.5g/10分のMFRを有する異相ポリプロピレン組成物、これは、98%のイソタクチック指数を有するプロピレン単独重合体70重量%、(前述のように測定された、25℃でキシレン中に不溶性分画)、及び49重量%のエチレンを含有する30重量%のエチレンプロピレン共重合体に製造される;
2.タルク HTP Ultra 5C:5μm未満の粒子大きさを有する粒子約98重量%を含む微細タルク粉末;
3.0.6g/10分の総MFR(230℃/5kg荷重でISO 1133に応じて測定する)を有するカーボンブラックマスターバッチ、約45g/10分のMFRを有するカーボンブラック40重量%と、エチレン8重量%と、プロピレンの共重合体60%に製造される;
4.Irganox(登録商標)B 215(約34重量%のIrganox(登録商標)1010及び66%のIrgafos(登録商標)168に製造される);
【0098】
成分1〜4の添加量は、次の通りである(総重量に対する重量%):
成分 量
1 51.5%
2 12%
3 1.3%
4 0.2%
【0099】
実施例2
ポリエチレン組成物は、予備接触ステップでTEAL/固体触媒成分重量比が4.6と同一であることを除いて、実施例1と同一の触媒及び重合工程で製造した後、実施例1と同一の安定化添加剤組成物及び押出条件で押出する。具体的な重合条件及び得られた重合体特性は、表I及び表IIに報告される。
【0100】
安定化組成物は、実施例1と同一の量で同一の添加成分などの混合物の製造で使用される。
【0101】
このようにして得られた最終組成物の特性は、表IIIに報告される。
【0102】
比較実施例1C
比較用ポリエチレン組成物は、予備接触ステップでTEAL/固体触媒成分重量比が4と同一であることを除いて、実施例1と同一の触媒及び重合工程で製造した後、実施例1と同一の安定化添加剤組成物及び押出条件で押出する。具体的な重合条件及び得られた重合体特性は、表I及び表IIに報告される。
【0103】
前記表に示したように、成分B)は、実施例1及び2のエチレン/ブテン−1共重合体の代わりに、エチレン/プロピレン共重合体である。
【0104】
従って、前述の実施例とは異なりに、第2反応器に供給された単量体は、エチレン及びブテン−1の代わりに、エチレン及びプロピレンである。
【0105】
安定化組成物は、実施例1と同一の量で同一の添加成分などの混合物の製造で使用される。
【0106】
このようにして得られた最終組成物の特性は、表IIIに報告される。
【0107】
【表I】
【0108】
注:C2−=エチレン、C3−=プロピレン;C4−=ブテン−1;スプリット=関連反応器で製造された重合体の量。
【表II】
【0109】
注:C2−=エチレン;C3−=プロピレン;C4−=ブテン−1;計算された値。
【0110】
【表III】