特許第6466639号(P6466639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466639
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】連結機構
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/10 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   F16C1/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-17864(P2014-17864)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-145685(P2015-145685A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100184826
【弁理士】
【氏名又は名称】奥出 進也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智禎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 立
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許発明第865681(FR,A)
【文献】 実開昭61−59917(JP,U)
【文献】 実公平2−1530(JP,Y2)
【文献】 実公平6−12151(JP,Y2)
【文献】 実公昭56−13174(JP,Y2)
【文献】 実用新案登録第2583191(JP,Y2)
【文献】 特開2001−208036(JP,A)
【文献】 特開平11−51035(JP,A)
【文献】 実公昭62−20015(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、前記ケーブルのケーブルエンドが係止される係止部を有するジョイントピースと、前記ジョイントピースを摺動可能に収容する収容空間を有するケースとを備えた連結機構であって、
前記ケースは、底面を有する底面側部材を有し、
前記ジョイントピースは、前記底面と摺動する摺動面と、前記摺動面の反対側の面である上面とを有し、
前記ジョイントピースは、前記ケーブルエンドとの接続領域において、前記ジョイントピースの前記上面において開口する上開口と、前記ジョイントピースの摺動面において開口し、前記ジョイントピースの摺動方向に沿って形成され、前記ケーブルエンドが貫通できる下開口と、前記ケーブルエンドが係止する係止部とが設けられ、
前記ケースの前記底面は、前記ジョイントピースの前記上開口から前記ケーブルエンドを挿入したときに、前記ケーブルエンドが前記下開口から貫通して移動することを規制し、
前記上開口は、前記ケーブルエンドを前記ジョイントピースの内側に挿入したときに、前記ケーブルエンドが前記下開口から貫通して前記底面へ移動する位置に設けられ、
前記ケーブルの操作時に、前記ジョイントピースの摺動面と、前記ケースの前記底面とが、前記ケーブルの移動方向に摺動可能であり、
前記上開口が、前記上面において、摺動方向に延びて開口した係止溝として形成され、前記係止溝が、前記ジョイントピースの中央側に設けられ、前記ケーブルエンドが挿入される挿入部位と、前記挿入部位から前記ジョイントピースの端部に向かって、前記ケーブルエンドの大きさよりも小さい幅の狭い幅狭部位と、前記挿入部位から挿入され、前記幅狭部位を通ったケーブルエンドが係止され、前記ジョイントピースの端部に位置する係止部位とを有し、前記幅狭部位が、前記挿入部位から前記係止部位に向かって、前記摺動方向に対して略垂直な、前記ジョイントピースの幅方向にオフセットしたオフセット部を有し
前記ケーブルエンドは球状であることを特徴とする連結機構。
【請求項2】
前記ケースが開閉可能な蓋を備え、前記蓋が、前記ケーブルエンドがジョイントピースに挿入された状態で、前記上開口を覆って前記ジョイントピースからの前記ケーブルエンドの離脱を抑制可能に構成された請求項1記載の連結機構。
【請求項3】
前記ケースが、前記底面を有する底面側部材と、前記蓋を有する蓋側部材とを備え、前記底面側部材の、前記摺動方向における両端に、前記ケーブルが挿通されるアウターケーシングを固定するアウターケーシング固定部を備え、前記アウターケーシング固定部に、前記アウターケーシングが前記底面側部材から離脱することを防止する離脱防止部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の連結機構。
【請求項4】
前記ジョイントピースは、前記上開口と前記下開口とが垂直方向に連通されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケーブルを連結する連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作部材に接続されたケーブルと作動部材に接続されたケーブルとを連結し、それら複数のケーブルを介して操作部材による操作力を作動部材へ伝達する機構として、例えば、図5(a)〜(c)に示される連結機構100が用いられている。この連結機構100は、一方側に延びるインナーケーブル101aのケーブルエンド102aと他方側に延びるインナーケーブル101bのケーブルエンド102bとが、一方側に延びるインナーケーブル101a又は他方側に延びるインナーケーブル101bから、他方側に延びるインナーケーブル101b又は一方側に延びるインナーケーブル101aへと操作力が伝達されるようにジョイントピース103に取り付けられている。そして、そのジョイントピース103は、インナーケーブル101aとインナーケーブル101bとを連結した状態で、ジョイントピース103がスライド可能で、連結状態が解除されないようにケース104内に収容される。ジョイントピース103が収容されるケース104は、ケース104のうち、ジョイントピース103のスライド方向における一端側(図5(a)中、ケース104の右側の端部)が開口している。
【0003】
連結機構100でのインナーケーブル101a、101bの組み付け方法は、図5(a)に示されるように、まず、片方の端部にケーブルエンド102aが形成されたインナーケーブル101aについて、ジョイントピース103を挿入可能な開口を一端に有する角筒状のケース104の該開口から、ケーブルエンドが形成されていない方のインナーケーブル101aの端部が、ケーブルエンド102aが形成されている方の端部がケース104の開口側となるように、ケース104に挿通される。片方の端部にケーブルエンド102bが形成されたインナーケーブル101bについても、図5(a)に示されるように、インナーケーブル101aと同様の方法でケース104の一端側の開口を閉鎖するキャップ105に挿通される。つぎに、図5(b)に示されるように、ケース104の外部において、ジョイントピース103に複数のインナーケーブル101a、101bのケーブルエンド102a、102bを取り付ける。その後、ケース104の開口から、ジョイントピース103をケース104内に挿入して、図5(c)に示されるように、ケース104の開口をキャップ105により閉じて、ジョイントピース103をケース104内に収容している。なお、インナーケーブル101aのケーブルエンドが形成されていない側(図5(c)中、左側)の端部には、その後、ケーブルエンド106が鋳込みにより形成される(インナーケーブル101bの右側の端部も同様)。
【0004】
このようなジョイントピース103は、インナーケーブル101a、101bが操作されるとケース104内でスライドするため、操作力低減や部材間の摩耗を防止するために摺動抵抗を下げることが望ましい。接触面積を減らして摺動抵抗を下げるためや軽量化のために、ジョイントピース103の上面側から底面側に向かって(図5(b)中、紙面奥行方向に向かって)貫通させた貫通孔がジョイントピース103の長軸方向に亘って設けられ、ケーブルエンド102a、102bを係止するためのケーブルエンドの係止部103a(図5(b)参照)が前記貫通孔の内壁となるように、ジョイントピース103の端部に設けられた構造とされている場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような貫通構造を有するジョイントピース103は、上面及び底面に開口を有するために軽量であってケース104との接触面積も少なくされ、摺動抵抗が低くされている。しかし、その反面、上面から底面へ向けてケーブルエンド102a、102bを挿入すると、ケーブルエンド102a、102bが底面の開口を突き抜けてしまうことがある。そのため、ケーブルエンド102a、102bをジョイントピース103の係止位置まで案内した後に、他のケーブルエンド102a、102bを係止位置まで案内するときに、案内されたケーブルエンド102a、102bを係止位置で係止状態を維持することが難しく、インナーケーブル101a、101bが安定しない。その結果、ジョイントピース103の摺動抵抗は低くされてはいるが、ジョイントピース103へインナーケーブル101a、101bのケーブルエンド102a、102bの組み付けは難しくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて、ジョイントピースとケースとの摺動抵抗を抑制し、ジョイントピースへのケーブルの組み付けを容易にすることができる連結機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の連結機構は、ケーブルと、前記ケーブルのケーブルエンドが係止される係止部を有するジョイントピースと、前記ジョイントピースを摺動可能に収容する収容空間を有するケースとを備えた連結機構であって、前記ジョイントピースは、接続領域において、前記ジョイントピースの上側において開口する上開口と、前記上開口に貫通して前記ジョイントピースの摺動面に開口し、ジョイントピースの摺動方向に沿って形成された下開口と、前記ケーブルエンドが係止する係止部とが設けられ、前記ケースは、前記ジョイントピースの上開口から前記ケーブルエンドを挿入したときに、前記ケーブルエンドが前記下開口から貫通して移動することを規制する底面を有し、前記ケーブルの操作時に、前記ジョイントピースの摺動面と、前記ケースの底面とが、前記ケーブルの移動方向に摺動可能であることを特徴とする。
【0008】
また、前記ケースが開閉可能な蓋を備え、前記蓋が、前記ケーブルエンドがジョイントピースに挿入された状態で、前記上開口を覆って前記ジョイントピースからの前記ケーブルエンドの離脱を抑制可能に構成されることが好ましい。
【0009】
また、前記ケースが、前記底面を有する底面側部材と、前記蓋を有する蓋側部材とを備え、前記底面側部材の、前記摺動方向における両端に、前記ケーブルが挿通されるアウターケーシングを固定するアウターケーシング固定部を備え、前記アウターケーシング固定部に、前記アウターケーシングが前記底面側部材から離脱することを防止する離脱防止部が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記上開口が、前記ジョイントピースの摺動面と反対側の面である上面において、摺動方向に延びて開口した係止溝として形成され、前記係止溝が、前記ジョイントピースの中央側に設けられ、前記ケーブルエンドが挿入される挿入部位と、前記挿入部位から前記ジョイントピースの端部に向かって、前記ケーブルエンドの大きさよりも小さい幅の狭い幅狭部位と、前記挿入部位から挿入され、前記幅狭部位を通ったケーブルエンドが係止され、前記ジョイントピースの端部に位置する係止部位とを有し、前記幅狭部位が、前記挿入部位から前記係止部位に向かって、前記摺動方向に対して略垂直な方向にオフセットしたオフセット部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジョイントピースとケースとの間の摺動抵抗を抑制し、かつ、ジョイントピースへのケーブルの組み付けを容易にすることができ、さらにジョイントピースを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の連結機構の一実施形態において、ケースが開いた状態を示す斜視図である。
図2】(a)は図1の連結機構に用いられるジョイントピースの上面図であり、(b)は図2(a)のジョイントピースの下面図であり、(c)は、図2(a)のジョイントピースのA−A線断面図である。
図3】(a)は図1の連結機構に用いられるケースを開いた状態を示す上面図であり、(b)は図3(a)のケースが閉じた状態を示す図1の連結構造の斜視図であり、(c)は図3(a)のケースのB−B線断面図である。
図4】(a)〜(c)は、図1の連結機構において、インナーケーブルの組み付けを説明するための概略図である。
図5】(a)〜(c)は、従来の連結機構および連結機構の組み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の連結機構を詳細に説明する。本発明の連結機構は、操作部材による操作力を作動部材へ伝達するために、操作側部材又は作動側部材へ取り付けられる一方のケーブルと作動側部材又は操作側部材へ取り付けられる他方のケーブルとを連結するために用いられる。連結機構は、たとえば、ケーブルとしてのインナーケーブルと、インナーケーブルが挿通されるアウターケーシングを有するコントロールケーブルを用いてコントロールケーブルにより操作される車両のシートを操作するシート操作装置や、フューエルリッドの開閉操作をする開閉機構などに用いられるが、複数のケーブルを連結し、それら複数のケーブルを介して操作力を伝達するものであれば、特に用途は限定されるものではなく、車両以外の用途に用いてもよい。
【0014】
図1に示されるように、本発明の一実施形態における連結機構1は、インナーケーブル21a、21bと、インナーケーブル21a、21bが摺動可能に挿通されたアウターケーシング23a、23bと、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bが係止される係止部31(図2(a)および(c)参照)を有するジョイントピース3と、ジョイントピース3を摺動可能に収容する収容空間Sを有するケース4とを備えている。
【0015】
インナーケーブル21a、21bは、シートレバーなどの操作部(図示せず)からの操作力をシートのロック機構等の被操作部(図示せず)までに連結機構1を介して伝達するための部材である。インナーケーブル21a、21bは、図1に示されるように、アウターケーシング23a、23bに摺動可能に挿通され、アウターケーシング23a、23bの端部は、ケース4に固定されている。アウターケーシング23a、23bは、操作されるインナーケーブル21a、21bのそれぞれの両端部間を保護している。
【0016】
インナーケーブル21a、21bの一端部には、ケーブルエンド22a、22bが設けられ、ジョイントピース3に係止されている。なお、図示はしていないが、インナーケーブル21a、21bの他端にも、ケーブルエンドが設けられている。ケーブルエンド22a、22bは、インナーケーブル21a、21bをジョイントピース3に係止し、操作部の操作力を連結機構を介して作動部へ伝達することができる強度を有するものであれば特に限定されず、球状、円柱状、角柱等、任意の形状を用いることができる。
【0017】
インナーケーブル21a、21bの本数は、連結機構1が用いられる用途に応じて適宜変更が可能である。図1では、連結機構1から一方側に延びるインナーケーブル21a(以下、単に一方のインナーケーブル21aという)と、他方側に延びるインナーケーブル21b(以下、単に他方のインナーケーブル21bという)が、それぞれ2本ずつ示されている。しかしながら、インナーケーブル同士を、ジョイントピース3を介して連結するものであれば、1本ずつを連結してもよいし、1本と複数本、複数本と複数本を連結しても構わないが、ジョイントピースにインナーケーブルを係止させた状態の維持が容易であることから、少なくとも片側に複数本延びるように複数本のインナーケーブルを有することが好ましい。
【0018】
インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bは、ジョイントピース3の係止部31に係止されてジョイントピース3に接続される。ジョイントピース3は、一方のインナーケーブル21aと他方のインナーケーブル21bとを連結する部材である。また、ジョイントピース3は、一方のインナーケーブル21aと他方のインナーケーブル21bとを連結することにより、一方のインナーケーブル21aへ伝達された操作部の操作力を他方のインナーケーブル21bに伝達する。
【0019】
ジョイントピース3は、操作部の操作力がインナーケーブル21a、21bを介して作動部へ伝達されるように、ケース内4に摺動可能に収容されている。たとえば、インナーケーブル21aが操作部により図1中、左側に向かって引き操作されると、インナーケーブル21aのケーブルエンド22aが係止されたジョイントピース3がインナーケーブル21aに引っ張られてケース4内を左側に向かって摺動して、ジョイントピース3にケーブルエンド22bが係止されたインナーケーブル21bも左側に引っ張られる。このように、操作力は、インナーケーブル21a、21b及びジョイントピース3を介して作動部へ操作力が伝達される。
【0020】
図1では、全体形状が略直方体状のジョイントピース3が示されているが、ジョイントピース3は、インナーケーブル21a、21bを連結することができ、ケース4内を摺動可能な外側形状を有し、軽量化等のために底部にケーブルエンド102a、102bが貫通可能な開口を有している。ジョイントピース3の形状は、これらの要素を満たすものであれば使用状況に応じて適宜変形可能であり、例えば、回転可能な方向転換部材にインナーケーブル21a、21bを連結し、操作部による操作力の方向を異なる方向へ変換して作動部へ出力するものであっても良く、特に限定されない。なお、ジョイントピース3の詳細については後述する。
【0021】
ケース4は、ジョイントピース3を摺動可能に収容する収容部材である。ケース4は、ジョイントピース3が摺動する底面41と、底面41から立設された壁部44とにより形成される収容空間Sを有する底面側部材4aを備えている。収容空間Sは、インナーケーブル21a又はインナーケーブル21bが操作されたときに、インナーケーブル21b又はインナーケーブル21aへ操作力を伝達する方向へジョイントピース3が摺動することができるようにされている。本実施形態では、図1に示されるように、ジョイントピース3が直線的に案内されて摺動できるように、ジョイントピース3の幅と同程度の幅を有した、ジョイントピース3の摺動方向に細長い収容空間Sが形成されている。また、ケース4の長手方向両端部には、図1に示されるように、インナーケーブル21a、21bが挿通されたアウターケーシング23a、23bのケーブルエンド22a、22b側の端部が取り付けられている。ケース4の詳細については後述する。
【0022】
つぎに、本発明の連結機構1のジョイントピース3およびケース4の詳細について説明する。
【0023】
本発明の連結機構1に用いられるジョイントピース3には、図2(a)〜(c)に示されるように、接続領域Cにおいて、ジョイントピース3の上側において開口する上開口32と、上開口32に貫通してジョイントピース3の摺動面33(図2(b)参照)に開口し、ジョイントピース3の摺動方向に沿って形成された下開口34と、ケーブルエンド22a、22bが係止する係止部31とが設けられている。接続領域Cとは、ジョイントピース3内においてケーブルエンド22a、22bがジョイントピース3に挿入され、係止部31へケーブルエンド22a、22bが位置するように変位させることができる範囲である。接続領域Cの周縁部の一部において係止部31が形成され、接続領域Cは、少なくとも係止部31へケーブルエンド22a、22bが係止可能な領域を有していれば良い。
【0024】
上開口32は、ジョイントピース3の上面35に形成され、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bをジョイントピース3に接続する際に、ケーブルエンド22a、22bが挿入される開口である。なお、本明細書において、「上側」、「上面」、「上開口」における「上」とは、インナーケーブル21a、21bの操作によりケース4の底面41と摺動するジョイントピース3の摺動面33を基準として、摺動面33を下とした場合の相対的な位置をいうものであり、連結機構1が車体等の取り付け対象物に取り付けられたときの、上下をいうものではない。「下開口」における「下」についても、同様である。
【0025】
上開口32は、ケーブルエンド22a、22bを係止部31へ案内できるように、ケーブルエンド22a、22bをジョイントピース3内の接続領域Cにおける空間へ挿入することができれば、その形状、大きさは特に限定されるものではない。係止部31に係止されたケーブルエンド22a、22bからインナーケーブル21a、21bが導出部45へ導出される部位に対して、上開口32は、係止部31側に形成されることが好ましい。これにより、上開口32から挿入したケーブルエンド22a、22bをスムーズに係止部31へ係止させることができる。上開口32は、後述する図2(a)に示す形状以外に、ジョイントピース3の摺動方向に直線的に延びるスリット状の開口等であっても構わない。
【0026】
図2(b)においては、下開口34を見やすくするために、上開口32を2点鎖線で示している。下開口34は、図2(b)および(c)に示されるように、ジョイントピース3の摺動面33において開口しており、上開口32と貫通している。下開口34は、図2(b)に示されるように、摺動面33に、ジョイントピース3の摺動方向に沿って、形成されており、摺動方向と同じ方向に長さを有するようにされている。摺動面33については、ケース4内でジョイントピース3自体が摺動することができるように形成されていればよく、ジョイントピース3の下側の面において、ケーブルエンド22a、22bが貫通できる下開口34を有している。これにより、ジョイントピース3がケース4内を摺動するときの摺動抵抗が軽減されるとともに、ジョイントピース3が軽量化される。下開口34は、摺動面33の摺動抵抗を減らすことができる形状であれば、その形状は特に限定されないが、摺動面33の摺動方向に垂直な方向である摺動面33の幅方向(図2(b)中、上下方向)が摺動方向よりも短く形成されることが好ましい。したがって、図2(b)に示すように、摺動方向に沿って形成された2つの長孔状の下開口34により、ケース4との接触面積を、摺動方向および幅方向で減らしてもよいし、摺動方向に沿って形成されたより幅広の1つの下開口としてもよいし、より幅広の下開口を摺動方向に2つ設けたものであってもよい。
【0027】
係止部31は、ケーブルエンド22a、22bが上開口32から挿入された後に係止される部位である。係止部31は、インナーケーブル21a、21bが引き操作されたときに、ケーブルエンド22a、22bが係止部31に当接して係止され、ジョイントピース3をケース4内で摺動させることができるものであれば、特にその形状は限定されるものではないが、ケーブルエンドの形状に対応したケーブルエンドとの接触面を有していることが好ましい。
【0028】
ケース4が有する底面41は、図3(a)に示されるように、インナーケーブル21a、21bのジョイントピース3への組み付け時等にジョイントピース3が載置される。ケース4は、ジョイントピース3に取り付けられたインナーケーブル21a、21bを操作部および作動部へ導出するための導出部45を有している。底面41は、ジョイントピース3の摺動面33と接触する面であり、インナーケーブル21a、21bの操作時に、ジョイントピース3の摺動面33と、ケース4の底面41とが、インナーケーブル21a、21bの操作力を伝達する方向である移動方向に摺動可能に構成されている。底面41は、ジョイントピース3との摺動の際に摺動面33の一部と少なくとも接触する摺動領域を有しており、本実施形態においては、ケース4の長手方向に摺動可能に構成されている。また、底面41は、ケーブルエンド22a、22bの組み付け時にケーブルエンド22a、22bと接触する規制領域とを有しており、ジョイントピース3の上開口32から前記ケーブルエンド22a、22bを挿入したときに、ケーブルエンド22a、22bが下開口34から貫通して移動することを規制可能に構成されている。たとえば、底面41は、本実施形態においては平面として構成されているが、より摺動面33との接触面積を減らすために、摺動方向に沿って底面41に設けられたレール状の突出部を設けるなど、立体的な摺動面33への接触部を前記摺動領域に設けてもよい。また、底面41を平面とし、立体的な接触部を摺動面33に設けてもよい。なお、蓋42を閉じた状態における底面側部材4aと蓋側部材4bにより形成される、軸方向に垂直な断面での内周の形状と、ジョイントピース3の軸方向に垂直な断面での外周形状とが対応した形状となっている場合、ガタつきのない摺動が可能であるため好ましい。
【0029】
つぎに、本発明の連結機構1におけるインナーケーブル21a、21bのジョイントピース3への組み付けについて図4(a)〜(c)を用いて説明する。なお、以下に説明する組み付け方法はあくまで一例であり、組み付け方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0030】
図4(a)に示されるように、インナーケーブル21a、21bがジョイントピース3に組み付けられる前は、ケース4の底面41にジョイントピース3の摺動面33が接触する形で、ケース4にジョイントピース3が載置されている。このケース4の底面41上に載置されたジョイントピース3の上面35側から、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bを、ジョイントピース3の上開口32から底面41に向かって挿入する(図4(b)および図4(c)参照)。ジョイントピース3は、上開口32におけるケーブルエンド22a、22bが挿入される部位の下方には、下開口34が形成されているため、上開口32と下開口34は垂直方向に連通されている。上開口32から挿入されたケーブルエンド22a、22bは、ケーブルエンド22a、22bの一部が下開口34を貫通してケース4の底面41と接触するため、下開口34から突き抜けることが規制される。したがって、底面41は、ジョイントピース32の上開口32からケーブルエンド22a、22bを挿入したときに、ケーブルエンド22a、22bが下開口34から貫通して移動することを規制する。
【0031】
ケーブルエンド22aは図4(b)に示す状態で、ケース4の底面41と接触し、ケーブルエンド22aと底面41との接触箇所を支点として、インナーケーブル21aを図4(b)中に矢印で示す方向に回転させた後、図4(c)に示すように、ジョイントピース3の係止部31までケーブルエンド22aを移動させる。そして、インナーケーブル21aが導出部45へ向けてジョイントピース3の係合部31から導出され、インナーケーブル21aのジョイントピース3への接続が完了する。同様に、他方のインナーケーブル21bのケーブルエンド22bもジョイントピース3の係止部31まで移動させ、インナーケーブル21bのジョイントピース3への接続をすればよい。
【0032】
本発明は、図4(a)〜(c)に示したように、摺動抵抗の低減のためにケーブルエンド22a、22bが突き抜ける幅の下開口34を有する構造であっても、ジョイントピース3の上開口32からケーブルエンド22a、22bを挿入したときに、ケース4の底面41がケーブルエンド22a、22bの下開口34から貫通する移動を規制して、インナーケーブル21a、21bの組み付け時にケーブルエンド22a、22bの位置が安定して、従来よりも遥かに組み付けやすく構成されている。さらに、上開口32と下開口34とが貫通して設けられているので、ジョイントピース3が軽量化され、ジョイントピース3を軽量化することにより、ジョイントピース3の摺動時の摩擦抵抗が小さくなり、インナーケーブル21a、21bの操作がスムーズとなる。
【0033】
また、本実施形態では、図1および図3(a)〜(c)に示されるように、ケース4が開閉可能な蓋42を備え、蓋42が、ケーブルエンド22a、22bがジョイントピース3に挿入された状態で、上開口32を覆ってジョイントピース3からのケーブルエンド22a、22bの離脱を抑制可能に構成されている。したがって、蓋42を設けることにより、インナーケーブル21a、21bの組み付け時には組み付けやすく、組み付け後は、ケーブルエンド22a、22bの離脱が抑制される連結機構1を提供することができる。
【0034】
本実施形態のように、ケース4に開閉可能な蓋42を設けた場合には、インナーケーブル21a、21bの両端にケーブルエンド22a、22bを鋳込んだ後であっても、ジョイントピース3への組み付けが可能であり、ケース4の収容空間Sにジョイントピース3を収容した状態でインナーケーブル21a、21bの組み付けが可能となる。なお、開閉可能な蓋42は、上開口32を覆い、ジョイントピース3からのケーブルエンド22a、22bの上開口32からの離脱を抑制することができるものであればよく、図示した構成に限定されるものではない。
【0035】
なお、本実施形態では、ケース4は、底面41を有する底面側部材4aと、蓋42を有する蓋側部材4bとを備え、蓋側部材4bが底面側部材4aに対して開閉可能に構成されている。底面側部材4aは、摺動面33と摺動する底面41と、収容空間Sを構成する壁部44と、ジョイントピース3を収容空間S内へ挿入する挿入開口部46とを有する部材であり、インナーケーブル21a、21bの組み付け時にジョイントピース3を収容する部材である。蓋側部材4bは、ジョイントピース3を収容した底面側部材4aの挿入開口部46を覆う蓋42と、底面側部材4aと係合する係合部E1を有し、底面側部材4aと係合することで挿入開口部46を蓋をした状態が維持される。蓋側部材4bは、図3(a)および(c)に示されるように、底面側部材4aに対してヒンジHにより接続されて、底面側部材4aに対してヒンジHを中心とした開閉が可能となるように構成されている。蓋側部材4bには、図3(a)に示されるように、係合爪として示された係合部E1が形成され、底面側部材4aに形成された被係合部E2に係合部E1が係合して、底面側部材4aを蓋側部材4bにより覆って閉鎖され、閉鎖状態が維持される。なお、蓋側部材4bと底面側部材4aとを係合させる場合、係合部E1および被係合部E2は、図示した構造に限定されるものではなく、他の係合構造であっても構わない。
【0036】
また、本実施形態では、図3(a)および(c)に示されるように、アウターケーシング23a、23bを用いる場合は、底面側部材4aの、摺動方向における両端に、インナーケーブル21a、21bが挿通されるアウターケーシング23a、23bを固定するアウターケーシング固定部43を備え、アウターケーシング固定部43に、アウターケーシング23a、23bが底面側部材4aから離脱することを防止する離脱防止リブ43aが設けられていてもよい。
【0037】
アウターケーシング固定部43は、ジョイントピース3に取り付けられるケーブルエンド22a、22b側のアウターケーシング23a、23bの端部をケース4に固定する部位である。アウターケーシング固定部43は、図3(a)および(c)に示されるように、アウターケーシング23a、23bの端部が収容される凹部とアウターケーシング23a、23bの外周に係合する離脱防止部とを有している。本実施形態では凹部は、断面が半円状の凹部が形成され、離脱防止部は、凹部の縁からアウターケーシング23a、23bの外周に係合する離脱防止リブ43aとして突出して形成されている。離脱防止リブ43aは、アウターケーシング23a、23bが収容される凹部の縁から、アウターケーシング23a、23bの軸心方向に向かってわずかに張り出し、アウターケーシング23a、23bの外周側面と係合して、アウターケーシング23a、23bの離脱を防止する。つまり、凹部と離脱防止部とによって、アウターケーシング23a、23bの端部外周が径方向内側へ支持されているため、アウターケーシング23a、23bの径方向外側への移動が規制されることにより離脱を防止することができる。この離脱防止リブ43aが設けられていることにより、一度係止されたインナーケーブル21a、21bが係止状態で安定し、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bがジョイントピース3の係止部31から外れにくくなる。したがって、よりジョイントピース3へのインナーケーブル21a、21bの組み付けが容易となる。すなわち、ケーブルエンド22a、22bの係止部31への取り付けが完了した場合であっても、アウターケーシング23a、23bが固定されていないと、アウターケーシング23a、23bに挿通されたインナーケーブル21a、21bも安定しない。インナーケーブル21a、21bが安定していない場合、ケーブルエンド22a、22bが取り付けられても、インナーケーブル21a、21bが不安定な状態で動いてしまい、取り付けられたケーブルエンド22a、22bが係止部31から外れてしまう可能性がある。しかしながら、離脱防止リブ43aが設けられていることにより、ジョイントピース3への接続が完了した一方のインナーケーブルを安定させ、他方のインナーケーブルの組み付けが容易となる。たとえば、図4(c)に示されるように、アウターケーシング23aの離脱が防止されていることにより、ジョイントピース3への組み付けが完了した一方のインナーケーブル21aが組み付けられた状態で安定し、ケーブルエンド22aが外れにくい。そして、一方のインナーケーブル21aのケーブルエンド22aが外れにくいため、他方のインナーケーブル21bを組み付ける際に、一方のインナーケーブル21aのケーブルエンド22aを押さえながら作業したりする必要がなく、一方のインナーケーブル21aの外れを気にせずに作業することができる。したがって、他方のインナーケーブル21bの組み付けが容易となる。なお、離脱防止リブ43aは、アウターケーシング23a、23bの離脱を防止することができればよく、その形状は、図3(a)および(c)に示す形状に限定されるものではない。
【0038】
また、ジョイントピース3は、上述したように、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22bが挿入される上開口32を有しているが、本実施形態では、図1および図2(a)に示されるように、上開口32は、ジョイントピース3の摺動面33と反対側の面である上面35において、摺動方向に延びて開口した係止溝として形成されている。係止溝としての上開口32は、ジョイントピース3の上面35に、インナーケーブル21a、21bの摺動方向(図2(a)中、左右方向)に沿って延びている。係止溝としての上開口32は、ジョイントピース3の中央側(ジョイントピース3の摺動方向における中央部)に設けられ、ケーブルエンド22a、22bが挿入される挿入部位32aと、挿入部位32aからジョイントピース3の端部に向かって、ケーブルエンド22a、22bの大きさよりも小さい、幅の狭い幅狭部位32bと、挿入部位32aから挿入され、ケーブルエンド22a、22b近傍のインナーケーブル21a、21bが幅狭部位32bを通ってケーブルエンド22a、22bが係止され、ジョイントピース3の端部に位置する係止部位32cとを有している。なお、ジョイントピース3の中央側とは、ジョイントピース3の摺動方向における中央近傍の位置をいい、ジョイントピース3の端部とは、ジョイントピース3の両端近傍の位置をいう。挿入部位32aは、ケーブルエンド22a、22bが挿入される部位であり、ケーブルエンド22a、22bが挿入可能な大きさ、形状に形成される。幅狭部位32bは、ケーブルエンド22a、22bが挿入部位32aから挿入され、係止部31まで移動する際に、インナーケーブル21a、21bは通ることができるが、ケーブルエンド22a、22bは挿入された状態から幅狭部位32bから上方へ抜け出てジョイントピース3から外れないようにされている。係止部位32cは、ケーブルエンド22a、22bが係止部31に係止され、インナーケーブル21a、21bが導出部45へ配置されるようにケース4の底面41と略平行な状態まで倒されるときに(図4(c)の左側のインナーケーブル21aの状態)、インナーケーブル21a、21bのケーブルエンド22a、22b近傍が導出部45へ向かって延出する際に通過する部位である。そして、係止部位32cを通過したインナーケーブル21a、21bは、係止部31からケース4の導出部45へ向かって延出されるようにジョイントピース3の延出部36へ配置される。延出部36は、ジョイントピース3の係止部31とケース4の導出部45とを繋ぐ線上に設けられており、係止部31に係止されたケーブルエンド22a、22b近傍のインナーケーブル21a、21bが損傷しないようにジョイントピース3からインナーケーブル21a、21bを延出させる部位である。
【0039】
そして、本実施形態では、図1および図2(a)に示されるように、幅狭部位32bが、挿入部位32aから係止部位32cに向かって、摺動方向に対して略垂直な方向にオフセットしたオフセット部Osを有している。このオフセットしたオフセット部Osにより、一度組み付けたインナーケーブル21a、21bが、より抜けにくくなるため、インナーケーブル21a、21bの組み付けがより容易になる。すなわち、挿入部位32aから挿入されたインナーケーブル21aは、図4(b)に示す状態からケーブルエンド22aを支点として左側に倒される。このとき、オフセット部Osを通るインナーケーブル21aは、図2(a)に示されるように、組み付けられた状態のインナーケーブル21a(図2(a)中に、2点鎖線で示している)が係止される係止部位32cの軸Xに対して、軸Xに対して摺動方向に対して略垂直な方向(ジョイントピース3の幅方向)にずらされる。その後、図2(a)に2点鎖線で示されるように、インナーケーブル21aをオフセット部Osからジョイントピース3の幅方向に向けて再度ずらして、軸Xに沿うように係止部位32cに係止させる。したがって、インナーケーブル21aが外れるためには、この動きと反対の動きをする必要があり、インナーケーブル21aに、軸Xに対してジョイントピース3の幅方向にインナーケーブル21aをずらす力が加わる必要がある。したがって、インナーケーブル21a、21bが係止部位32cまで移動した後は、インナーケーブル21a、21bがジョイントピース3から抜けにくくなり、インナーケーブル21a、21bの組み付けがより容易となる。なお、上述したインナーケーブル21aの組み付け方はあくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
【0040】
また、オフセット部Osは、インナーケーブル21a、21bの抜けを抑制することができるように、挿入部位32aと係止部位32cとの間で、摺動方向に対して略垂直な方向にオフセットしたものであれば、その形状は図2(a)に示す形状に限定されるものではなく、幅狭部位32bを蛇行させたもの等、他の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1 連結機構
21a、21b インナーケーブル
22a、22b ケーブルエンド
23a、23b アウターケーシング
3 ジョイントピース
31 係止部
32 上開口
32a 挿入部位
32b 幅狭部位
32c 係止部位
33 摺動面
34 下開口
35 上面
36 延出部
4 ケース
4a 底面側部材
4b 蓋側部材
41 底面
42 蓋
43 アウターケーシング固定部
43a 離脱防止リブ
44 壁部
45 導出部
46 挿入開口部
C 接続領域
E1 係合部
E2 被係合部
H ヒンジ
Os オフセット部
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5