(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一演算部は、前記活性判定部が前記ユーザの脳が活性していると判定する当日と当該当日に到る夜間との間に前記第一検出部によって検出された前記睡眠時の脈動間隔に基づいて前記睡眠時指標を演算し、
前記取得部は、前記第一演算部によって演算された前記睡眠時指標から前記睡眠時最大指標を取得する請求項1に記載の活性判定システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(活性判定の概要)
本発明の発明者は、被験者A〜Dの脈動間隔から演算できる指標であるLF/HFと被験者A〜Dの眠気との関係についての試験を重ねた。なお、LF/HFとは、被験者A〜Dの脈動間隔の周期変動の低周波数成分を示すLF値と、被験者A〜Dの脈動間隔の周期変動の高周波数成分を示すHF値との比である。そして、本発明の発明者は、
図1に示すように、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値と、被験者A〜Dの眠気が大きい時のLF/HFとの間に、極めて高い相関(相関係数0.95)があることを見出した。
図1において、A〜Dは被験者を表している。また、A〜Dに付されている数字は、各被験者A〜DについてのLF/HFが、日をおいて測定された順番を表している。
【0012】
被験者A〜Dの眠気は、NEDOの評価方法によって推定された。そして、以下に示すNEDOの評価方法に基づく眠気レベルが4又は5である場合に、被験者A〜Dの眠気が大きいと判定された。NEDOの評価方法とは、ビデオカメラで撮影された被験者A〜Dの顔面表情に基づき、眠気を推定する方法である。なお、NEDOは、New Energy and Industrial Technology Development Organizationの略である。
【0013】
以下に、NEDOの評価方法に基づく眠気レベルを示す。
眠気レベル1:全く眠くなさそう
眠気レベル2:やや眠そう
眠気レベル3:眠そう
眠気レベル4:かなり眠そう
眠気レベル5:非常に眠そう
【0014】
LF/HFが大きくなるに従って、被験者A〜Dの脳はより活性し、被験者A〜Dはより覚醒する。一方で、LF/HFが小さくなるに従って、被験者A〜Dの脳はより不活性となり、被験者A〜Dはより眠くなる、或いは、被験者A〜Dはよりリラックスする。そして、上述したように、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値と、被験者A〜Dの眠気が大きく、被験者A〜Dの脳が活性していない時のLF/HFとの間に、極めて高い相関がある。これにより、被験者A〜Dの現在のLF/HFが、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値よりも大きい場合には、被験者A〜Dの脳は活性していて、被験者A〜Dは覚醒している。
【0015】
図1に示すように、同一の被験者A〜Dであっても、LF/HFが測定される日が異なれば、LF/HFの値も異なる。しかし、同一の被験者A〜Dについて、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値と、被験者A〜Dの眠気が大きい時のLF/HFとの間には、極めて高い相関がある。このような知見に基づいて発明された本実施形態の活性判定システム100について、以下に説明する。
【0016】
(活性判定システムの構成)
以下に、
図2を用いて、活性判定システム100の構成について説明する。活性判定システム100は、睡眠時最大指標取得装置10、携帯端末装置20、及び活性判定装置30とから構成されている。
【0017】
睡眠時最大指標取得装置10は、第一検出部11と第一制御部15とから構成されている。第一検出部11は、ユーザMの睡眠時の脈動間隔に関する情報である脈動情報を検出するセンサである。本実施形態では、第一検出部11は、脈動情報として、ユーザMの脈動圧を検出する。ここで、脈動圧とは、ユーザMの脈動によって、ユーザMの体表面に発生する変動圧のことである。第一検出部11は、例えば、圧電素子や静電容量式等の圧力センサや、レーダドップラセンサ等の電波式センサ、加速度センサである。本実施形態では、第一検出部11は、ユーザMが睡眠時にその上面に横臥して睡眠するマット19の上面部に設けられている。ユーザMがマット19上に横臥すると、ユーザMの脈動により、マット19が繰り返し押圧される。このマット19が繰り返し押圧されることにより生じる圧力が第一検出部11に伝播し、第一検出部11が繰り返し押圧され、第一検出部11に圧力が繰り返し付与される。そして、第一検出部11は、繰り返し付与される圧力を、ユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)として検出し、この検出結果を第一制御部15に出力する。なお、第一検出部11は、ユーザMの手首に装着される腕時計やリストバンドに設けられていても差し支え無い。或いは、第一検出部11は、ユーザMの胸部に直接貼り付けられる複数の電極、或いは、ユーザMが着用する衣類に設けられ、ユーザMと接触する複数の電極であっても差し支え無い。この実施形態では、ユーザMと接触する複数の電極間の電位差により、ユーザMの心拍が検出される。或いは、第一検出部11は、ユーザMの指先や耳たぶの血管の容積変化を検出することにより、脈動情報としてユーザMの脈波を検出する光電式脈波センサであっても差し支え無い。
【0018】
第一制御部15は、第一検出部11と接続している。第一制御部15には、第一検出部11によって検出されたユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)が入力される。第一制御部15は、このユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)に基づいて、ユーザMの脈動圧を演算する。第一制御部15は、第一記憶部15a、第一演算部15b、取得部15c、及び睡眠時最大指標送信部15dを有している。
【0019】
第一記憶部15aには、第一制御部15によって演算されたユーザMの脈動圧が、この脈動圧に関する情報が検出された時間と対応付けされて記憶される。つまり、第一記憶部15aには、ユーザMの脈動圧の経時変化(
図5の上段参照)が記憶される。
図5の上段に示すように、ユーザMの脈動圧は、時間の経過ともに増減が繰り返される。この脈動圧の増減の一サイクルが脈動間隔である。この脈動間隔は、不均等間隔であり、変動する。ユーザMが眠い、若しくは、ユーザMがリラックスしている等、ユーザMの脳が活性していない場合には、脈動間隔が変動する。一方で、ユーザMの脳が活性するに従って、脈動間隔の変動量が減少する。
また、第一記憶部15aには、第一演算部15bによって演算されたLF/HF(睡眠時指標)が記憶される。
【0020】
第一演算部15bは、第一検出部11によって検出されたユーザMの脈動圧の経時変化に基づいて睡眠時の脈動間隔の時系列データ(
図5の下段示)を演算する。そして、第一演算部15bは、睡眠時の脈動間隔の時系列データ(
図5の下段示)を周波数解析して、睡眠時の脈動間隔の周期変動の低周波数成分を示すLF値(
図6示)と、睡眠時の脈動間隔の周期変動の高周波数成分を示すHF値(
図6示)を演算する。更に、第一演算部15bは、LF値とHF値との比LF/HF(睡眠時指標)を演算する。
【0021】
取得部15cは、第一演算部15bによって演算されたLF/HF(睡眠時指標)のうち、ユーザMの一睡眠中において値が最も大きいLF/HF(睡眠時指標)を最大LF/HF(睡眠時最大指標)として取得する。
睡眠時最大指標送信部15dは、後述する携帯端末装置20の無線通信部20aと通信し、取得部15cによって取得された最大LF/HF(睡眠時最大指標)を、無線通信部20aに送信する。
【0022】
携帯端末装置20は、ユーザMが携帯する装置である。携帯端末装置20には、所謂スマートフォンやタブレットPCが含まれる。携帯端末装置20は、無線通信部20a及び最大LF/HF記憶部20bを有している。無線通信部20aは、睡眠時最大指標送信部15d及び後述する睡眠時最大指標受信部35bと無線通信する。無線通信部20aと睡眠時最大指標送信部15d間の通信方式、及び無線通信部20aと睡眠時最大指標受信部35b間の通信方式には、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)、赤外線通信等が含まれる。最大LF/HF記憶部20bは、睡眠時最大指標送信部15dから送信され無線通信部20aが受信した最大LF/HF(睡眠時最大指標)を記憶する。
【0023】
活性判定装置30は、ユーザMが運転する車両200に搭載されている。活性判定装置30は、第二検出部31及び第二制御部35から構成されている。第二検出部31は、覚醒時のユーザMの脈動間隔に関する情報である脈動情報(ユーザMの脈動圧)を検出するセンサであり、第一検出部11と同様の構造のセンサである。本実施形態では、第二検出部31は、ユーザMが運転する車両200に設けられたシート40において、ユーザMの胸郭を支持する背もたれ部40aに設けられている。第二検出部31は、シート40に着座したユーザMの脈動圧を検出することにより、覚醒時の脈動間隔を検出する。ユーザMがシート40に着座すると、ユーザMの脈動により、背もたれ部40aが繰り返し押圧される。この背もたれ部40aが繰り返し押圧されることにより生じる圧力が第二検出部31に伝播して、第二検出部31が繰り返し押圧され、第二検出部31に圧力が繰り返し付与される。そして、第二検出部31は、繰り返し付与される圧力をユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)として検出し、この検出結果を第二制御部35に出力する。
【0024】
第二制御部35は、第二検出部31と接続している。第二制御部35には、第二検出部31によって検出されたユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)が入力される。第二制御部35は、このユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)に基づいて、ユーザMの脈動圧を演算する。第二制御部35は、第二記憶部35a、睡眠時最大指標受信部35b、第二演算部35c、及び活性判定部35dを有している。
【0025】
第二記憶部35aには、睡眠時最大指標受信部35bが受信した最大LF/HF(睡眠時最大指標)が記憶される。
また、第二記憶部35aには、第二制御部35によって演算されたユーザMの脈動圧が、この脈動圧に関する情報が検出された時間と対応付けされて記憶される。つまり、第二記憶部35aには、ユーザMの脈動圧の経時変化が記憶される(
図5の上段参照)。
睡眠時最大指標受信部35bは、携帯端末装置20の無線通信部20aと通信し、無線通信部20aが送信した最大LF/HF(睡眠時最大指標)を受信する。
【0026】
第二演算部35cは、第二検出部31によって検出されたユーザMの脈動圧の経時変化に基づいて、覚醒時の脈動間隔の時系列データ(
図5の下段示)を演算する。そして、第二演算部35cは、覚醒時の脈動間隔の時系列データ(
図5の下段示)を周波数解析して、覚醒時の脈動間隔の周期変動の低周波数成分を示すLF値(
図6示)と、覚醒時の脈動間隔の周期変動の高周波数成分を示すHF値(
図6示)を演算する。更に、第二演算部35cは、LF値とHF値との比LF/HF(覚醒時指標)を演算する。
【0027】
活性判定部35dは、第二記憶部35aに記憶されている最大LF/HF(睡眠時最大指標)と第二演算部35cによって演算されたLF/HF(覚醒時指標)の大きさを比較することにより、ユーザMの脳が活性しているか否かを判断する。
【0028】
車両200には、報知装置50及び居眠り防止装置60が設けられている。報知装置50は、ユーザMに情報を報知するものであり、スピーカーやインジケーター等の表示装置が含まれる。
【0029】
居眠り防止装置60は、ユーザMの眠気度が大きい場合に、ユーザMに刺激を与えることにより、ユーザMを覚醒させて、ユーザMの居眠りを防止する装置である。居眠り防止装置60は、眠気情報取得部61、第三制御部62、及び覚醒装置63を有している。眠気情報取得部61は、ユーザMの眠気情報を取得するものであり、例えば、眠気情報であるユーザMの顔を撮像するカメラや、車両200のハンドルに設けられ、眠気情報であるユーザMの心拍を検出する電極等が含まれる。第三制御部62は、第二制御部35と通信可能に接続されている。第三制御部62は、眠気情報取得部61によって取得されたユーザMの眠気情報に基づいて、ユーザMの眠気度を演算する。覚醒装置63は、ユーザMに刺激を与えて、眠気を催しているユーザMを覚醒させる装置であり、表示装置、スピーカー、振動発生装置、シートベルト巻取装置、空調装置等が含まれる。
【0030】
第三制御部62は、ユーザMの眠気度が規定以上であると判断した場合には、覚醒装置63を作動させて、ユーザMに刺激を与え、ユーザMの居眠りを防止する。この居眠り防止装置60については、特開2010−186276号公報等に開示されているので、これ以上の説明を省略する。
【0031】
(最大LF/HF取得処理)
図3に示すフローチャートを用いて、睡眠時最大指標取得装置10の第一制御部15が実行する「最大LF/HF取得処理」について説明する。睡眠時最大指標取得装置10に電源が投入されると、第一制御部15は、プログラムをステップS11に進める。
【0032】
ステップS11において、第一制御部15は、第一検出部11からの検出信号に基づいて、ユーザMがマット19上に就床していると判断した場合には(ステップS11:YES)、プログラムをステップS12に進める。一方で、第一制御部15は、ユーザMがマット19上に就床していないと判断した場合には(ステップS11:NO)、ステップS11の処理を繰り返す。ユーザMがマット19上に就床すると、上述したように、ユーザMの脈動により、第一検出部11が繰り返し押圧され、第一制御部15に第一検出部11によって検出されたユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)が入力される。このため、第一制御部15は、ユーザMがマット19上に就床していると判断することができる。
【0033】
ステップS12において、第一制御部15は、「LF/HF演算処理」を開始させる。この「LF/HF演算処理」については、
図4に示すフローチャートを用いて後で説明する。この「LF/HF演算処理」の実行により、ユーザMの脳が活性していると判定される当日と当該当日に到る夜間との間に第一検出部11によって検出された睡眠時の脈動間隔に基づいてLF/HF(睡眠時指標)が演算される。
【0034】
ステップS13において、第一制御部15は、第一検出部11からの検出信号に基づいて、ユーザMがマット19から起床したと判断した場合には(ステップS13:YES)、プログラムをステップS14に進める。一方で、第一制御部15は、ユーザMがマット19から起床していないと判断した場合には(ステップS13:NO)、ステップS13の処理を繰り返す。ユーザMがマット19から起床すると、ユーザMの脈動によって繰り返し押圧されていた第一検出部11が押圧されなくなるので、第一制御部15に第一検出部11によって検出されていたユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)が入力されなくなる。このため、第一制御部15はユーザMがマット19から起床したと判断することができる。
【0035】
ステップS14において、取得部15cは、第一記憶部15aに記憶されているLF/HF(睡眠時指標)のうち、ユーザMの一睡眠中において値が最も大きいLF/HF(睡眠時指標)を最大LF/HF(睡眠時最大指標)として取得する。
【0036】
ステップS15において、睡眠時最大指標送信部15dは、ステップS14において、取得された最大LF/HF(睡眠時最大指標)を、携帯端末装置20の無線通信部20aに送信する。携帯端末装置20の無線通信部20aが、睡眠時最大指標送信部15dから送信された最大LF/HF(睡眠時最大指標)を受信すると、この最大LF/HF(睡眠時最大指標)は、最大LF/HF記憶部20bに記憶される。ステップS15が終了すると、「最大LF/HF取得処理」が終了する。
【0037】
(LF/HF演算処理)
以下に
図4に示すフローチャート、
図5及び
図6に示すグラフを用いて、「LF/HF演算処理」について説明する。
「LF/HF演算処理」が開始すると、プログラムはステップS101に進む。
ステップS101において、第一制御部15は、規定時間(例えば10秒)が経過したと判断した場合には、プログラムをステップS102に進める。一方で、第一制御部15は、規定時間(例えば10秒)が経過していないと判断した場合には、ステップS101の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS102において、第一制御部15は、第一検出部11によって検出され、第一記憶部15aに記憶されているユーザMの脈動圧の経時変化(脈動情報の経時変化)を取得する(
図5の上段を参照)。
ステップS103において、第一演算部15bは、ステップS102において取得されたユーザMの脈動圧の経時変化(脈動情報の経時変化)に基づいて、脈動間隔を演算する。具体的には、第一演算部15bは、増減するユーザMの脈動圧の一サイクルの最高脈動圧を認識する。次に、第一演算部15bは、経時的に隣接する最大脈動圧の時間間隔を脈動間隔として演算する。
【0039】
ステップS104において、第一演算部15bは、ステップS103で演算した各脈動間隔と、この脈動間隔に対応する時間との関係を表した脈動間隔−時間関係(
図5の中段の黒丸示)、縦軸を脈動間隔、横軸を時間とした脈動間隔−時間座標系にプロットする。なお、脈動間隔に対応する時間は、一脈動間隔が終了する時間である。
【0040】
ステップS105において、
図5の下段に示すように、第一演算部15bは、3次スプライン補間によって、経時的に隣接する脈動間隔−時間関係(
図5の下段の黒丸示)の間を補間し(
図5の下段の白丸示)、脈動間隔の時系列データを生成する。こうして生成された脈動間隔の時系列データは、睡眠時の脈動間隔の周期変動を表している。なお、本実施形態では、3次スプライン補間におけるリサンプリング周波数は2Hzであり、リサンプリング間隔は0.5秒毎である。
【0041】
ステップS106において、第一演算部15bは、ステップS105において生成した脈動間隔の時系列データのうち、過去所定期間分(例えば過去2分間)の脈動間隔の時系列データを高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析を行い、脈動間隔の時系列データの周波数成分の分布を示すパワースペクトル(
図6参照)を演算する。なお、
図6において、横軸は脈動間隔の周期変動の周波数を表し、縦軸は脈動間隔の周期変動の各上記周波数におけるパワースペクトル密度(PSD:ms
2/Hz)を表している。
【0042】
ステップS107において、第一演算部15bは、ステップS106において演算されたパワースペクトルの低周波帯域の積分値であるLF値を演算する。このように演算されたLF値は、脈動間隔の周期変動の低周波成分におけるパワースペクトル密度の総計である。本実施形態では、低周波帯域は、0.04〜0.15Hzに設定されている。
【0043】
ステップS108において、第一演算部15bは、ステップS106において演算されたパワースペクトルの高周波帯域の積分値であるHF値を演算する。このように演算されたHF値は、脈動間隔の周期変動の高周波成分におけるパワースペクトル密度の総計である。本実施形態では、高周波帯域は、0.15〜0.45Hzに設定されている。
【0044】
ステップS109において、第一演算部15bは、ステップS107において演算されたLF値を、ステップS108において演算されたHF値で除算することにより、LF値とHF値との比LF/HF(睡眠時指標)を演算する。
【0045】
ステップS110において、第一制御部15は、ステップS109において演算されたLF/HF(睡眠時指標)を、第一記憶部15aに記憶する。
【0046】
(活性判定処理)
以下に、
図7に示すフローチャートを用いて、活性判定装置30の第二制御部35が実行する「活性判定処理」について説明する。車両200のイグニッションがONとされると、第二制御部35は、プログラムをステップS21に進める。
【0047】
ステップS21において、第二制御部35は、第二検出部31からの検出信号に基づいて、ユーザMがシート40に着座していると判断した場合には(ステップS21:YES)、プログラムをステップS22に進める。一方で、第二制御部35は、ユーザMがシート40に着座していないと判断した場合には(ステップS21:NO)、ステップS21の処理を繰り返す。ユーザMがシート40に着座すると、上述したように、ユーザMの脈動により、第二検出部31が繰り返し押圧され、第二制御部35に第二検出部31からユーザMの脈動圧に関する情報(脈動情報)が入力される。このため、第二制御部35は、ユーザMがシート40に着座していると判断することができる。
【0048】
ステップS22において、第二制御部35は、睡眠時最大指標受信部35bが携帯端末装置20の無線通信部20aから睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)を受信したと判断した場合には(ステップS22:YES)、プログラムをステップS23に進める。一方で、第二制御部35は、睡眠時最大指標受信部35bが携帯端末装置20の無線通信部20aから睡眠時の最大LF/HFを受信していないと判断した場合には(ステップS22:NO)、ステップS22の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS23において、第二制御部35は、睡眠時最大指標受信部35bが受信した睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)を第二記憶部35aに記憶させる。
【0050】
ステップS24において、第二演算部35cは、第二検出部31によって検出されたユーザMの脈動圧に関する情報に基づいて覚醒時の脈動間隔の時系列データを演算する。第二演算部35cは、覚醒時の脈動間隔の時系列データを周波数解析して、覚醒時の脈動間隔の周期変動の低周波数成分を示すLF値と、覚醒時の脈動間隔の周期変動の高周波数成分を示すHF値との比LF/HF(覚醒時指標)を演算する「LF/HF演算処理」を開始する。なお、第二演算部35cが実行する「LF/HF演算処理」は、
図4に示す第一演算部15bが実行する「LF/HF演算処理」と同様である。
【0051】
ステップS25において、活性判定部35dは、ステップS24で演算された現在のLF/HF(覚醒時指標)が、第二記憶部35aに記憶されている睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)よりも大きいと判断した場合には(ステップS25:YES)、プログラムをステップS26に進める。一方で、活性判定部35dは、ステップS24で演算された現在のLF/HF(覚醒時指標)が、第二記憶部35aに記憶されている睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)以下であると判断した場合には(ステップS25:NO)、プログラムをステップS27に進める。
【0052】
ステップS26において、活性判定部35dは、ユーザMの脳が活性していると判定する。なお、ユーザMの脳が活性していると判定された場合には、ユーザMは確実に覚醒していて、ユーザMは確実に眠く無い。
ステップS27において、活性判定部35dは、ユーザMの脳が活性していないと判定する。なお、ユーザMの脳が活性していないと判定された場合には、ユーザMは眠いか、或いはユーザMはリラックスしている。
【0053】
このように、ステップS26において、活性判定部35dがユーザMの脳が活性していると判定した場合には、ユーザMは確実に覚醒していて、ユーザMは確実に眠く無い。そこで本実施形態では、第三制御部62は、活性判定部35dによるユーザMの脳が活性しているか否かの判定結果を考慮して、ユーザMの眠気度を判定する。具体的には、第三制御部62は、眠気情報取得部61によって取得されたユーザMの眠気情報に基づいて、ユーザMの眠気度が大きいと判定した場合であっても、活性判定部35dがユーザMの脳が活性していると判定した場合には、ユーザMの眠気度が小さいと判定する。これにより、ユーザMが覚醒しているにも関わらず、ユーザMの眠気度が大きいと判定される誤判定の発生が防止される。このため、ユーザMが確実に覚醒している際における覚醒装置63の作動が防止される。この結果、ユーザMの覚醒時に覚醒装置が作動されて、ユーザMが不快に感じることが防止される。
【0054】
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、本発明の発明者は、
図1に示すように、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値と、被験者A〜Dの眠気が大きく、被験者A〜Dの脳が活性していない時のLF/HFとの間に、極めて高い相関があることを見出した。また、被験者A〜Dの現在のLF/HFの値が、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値よりも大きい場合には、被験者A〜Dの脳は活性していて、被験者A〜Dは覚醒しているといえる。このため、活性判定部35dは、現在のLF/HF(覚醒時指標)が睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)よりも大きいか否かを判定することにより、ユーザMの脳が活性しているか否かを正確に判定することができる。
【0055】
また、活性判定部35dは、予め取得されている睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)と、現在のLF/HF(覚醒時指標)とを比較することにより、ユーザMの脳が活性しているか否かを判定する。このため、活性判定部35dは、ユーザMの脳が活性しているか否かを早期に判定することができる。
【0056】
図1に示すように、同一の被験者A〜Dであっても、LF/HFが測定される日が異なれば、LF/HFの値も異なる。しかし、被験者A〜Dの前回の睡眠時におけるLF/HFの最大値と、被験者A〜Dの眠気が大きい時のLF/HFとの間には、極めて高い相関がある。そこで、第一演算部15bは、ユーザMの脳が活性していると判定する当日と当該当日に到る夜間との間に(前回の睡眠時に)第一検出部11によって検出された睡眠時の脈動間隔に基づいてLF/HF(睡眠時指標)を演算する。そして、取得部15cは、第一演算部15bによって演算されたLF/HF(睡眠時指標)から睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)を取得する。これにより、活性判定部35dは、ユーザMの前回の睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)に基づいて、ユーザMの脳が活性しているか否かを判定する。このため、ユーザMの脳が活性しているか否かを判定する日の数日前のユーザMの睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)に基づいて、ユーザMの脳が活性しているか否かを判定する場合と比較して、より正確にユーザMの脳が活性しているか否かが判定される。このようにして、日によってLF/HFの値が変動したとしても、ユーザMの個人内差が吸収されて、より正確にユーザMの脳が活性しているか否かが判定される。
【0057】
第二検出部31は、ユーザMが運転する車両200に搭載されている。これにより、車両200を運転中のユーザMの脳が活性しているか否かが判定され、この判定結果が、例えば、車両200に搭載された居眠り防止装置60に利用される。このため、居眠り防止装置60において、ユーザMが覚醒しているにも関わらず、ユーザMの眠気度が大きいと判定される誤判断の発生が防止される。このため、ユーザMが確実に覚醒している際における覚醒装置63の作動が防止される。この結果、ユーザMの覚醒時に覚醒装置63が作動されて、ユーザMが不快に感じることが防止される。
【0058】
(他の実施形態)
本実施形態の活性判定システム100によって判定されたユーザMの脳が活性しているか否かの情報が、運送会社やタクシー会社の運行管理システムに送信される実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、活性判定システム100によってユーザMの脳が活性していないと判定された情報が上記運行管理システムに送信されると、上記運行管理システムは、注意喚起情報を報知装置50において報知させる。或いは、上記運行管理システムは、ユーザMが休憩をとるべきである旨の情報を報知装置50において報知させる。
【0059】
上記の実施形態では、第一検出部11及び第二検出部31は、ユーザMの脈動間隔に関する情報である脈動情報として、ユーザMの脈動圧を検出している。しかし、第一検出部11及び第二検出部31が、上記脈動情報として、ユーザMの心拍を検出する複数の電極等である実施形態であっても差し支え無い。
【0060】
上記の実施形態では、第二検出部31は、シート40の背もたれ部40aに設けられている。しかし、第二検出部31が、シート40の座面40bに設けられている実施形態であっても差し支え無い。また、第二検出部31は、ユーザMの手首に装着される腕時計やリストバンドに設けられている実施形態であっても差し支え無い。
【0061】
また、第二検出部31が、車両200のハンドルに設けられている実施形態であっても差し支え無い。この実施形態において、第二検出部31は、ハンドルに設けられ、ユーザMの右手及び左手のそれぞれが接触する複数の電極から構成され、ユーザMの心拍を検出するセンサであっても差し支え無い。この実施形態では、ユーザMの右手及び左手が、それぞれの電極に接触すると、両電極間にユーザMの心電位に対応する電位差が発生する。そして、この両電極間に発生した電位差が連続的に検出されることにより、ユーザMの心拍が検出される。
【0062】
また、第二検出部31は、ユーザMの胸部に直接貼り付けられる複数の電極、或いは、ユーザMが着用する衣類に設けられ、ユーザMと接触する複数の電極であっても差し支え無い。この実施形態では、ユーザMと接触する複数の電極間の電位差により、ユーザMの心拍が検出される。
【0063】
また、第二検出部31は、ユーザMの血管の容積変化を検出することにより、脈動情報としてユーザMの脈波を検出する光電式脈波センサであっても差し支え無い。この実施形態では、第二検出部31は、例えば、車両200のハンドルに設けられ、ユーザMの両手の血管の容積変化を検出する。或いは、第二検出部31は、ユーザMの手首に装着される腕時計やリストバンドに設けられ、ユーザMの手首の血管の容積変化を検出する。或いは、第二検出部31は、ユーザの耳たぶや指先の血管の容積変化を検出する。
【0064】
本実施形態の活性判定システム100は、ユーザMが勉強する状況にも用いることができる。この実施形態では、
図8に示すように、第二検出部31は、ユーザMが座って使用する勉強用の椅子70に取り付けられている。そして、活性判定部35dが、ユーザMの脳が活性していると判定した場合には、第二制御部35は、ユーザMに勉強をするように促す旨の通知を、スピーカーや表示装置等の報知装置80において報知させる。
【0065】
或いは、本実施形態の活性判定システム100は、デスクワークや作業等の創造性の高い業務を実行している時のような状況にも用いることができる。この実施形態では、
図8に示すように、第二検出部31は、ユーザMが座って使用する事務用の椅子70や作業用の椅子70に取り付けられている。この実施形態では、活性判定部35dが、ユーザMの脳が活性していないと判定した場合には、第二制御部35は、ユーザMに休憩を促す旨の通知を、報知装置80において報知させる。
【0066】
このように、第二検出部31が、ユーザMが使用する椅子70に取り付けられていると、椅子70に座るユーザMの脳が活性しているか否かを把握することができる。
【0067】
上記の実施形態では、睡眠時最大指標取得装置10で取得された睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)は、ユーザMが携帯する携帯端末装置20を介して、活性判定装置30の第二制御部35に入力される。しかし、睡眠時最大指標取得装置10で取得された睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)が、メモリーカードやUSBメモリー等の記憶媒体を介して、活性判定装置30の第二制御部35に入力される実施形態であっても差し支え無い。或いは、睡眠時最大指標取得装置10で取得された睡眠時の最大LF/HF(睡眠時最大指標)が、モバイルデータ通信回線を介して、活性判定装置30の第二制御部35に入力される実施形態であっても差し支え無い。