(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.走行区画線認識装置1の構成
走行区画線認識装置1の構成を
図1に基づき説明する。走行区画線認識装置1は、車両に搭載される車載装置である。以下では、走行区画線認識装置1を搭載する車両を自車両とする。走行区画線認識装置1は、CPU、RAM、ROM等を備える公知のコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムにより後述する処理を実行する。
【0010】
走行区画線認識装置1は、機能的に、画像取得ユニット3、認識ユニット5、地図情報取得ユニット7、位置情報取得ユニット9、地図上位置取得ユニット11、区間設定ユニット13、判断ユニット15、精度算出ユニット17、及び角度取得ユニット19を備える。各ユニットの機能は後述する。
【0011】
自車両は、走行区画線認識装置1に加えて、カメラ21、GPS23、地図情報記憶部25、車速センサ27、ヨーレートセンサ29、車両制御装置31、及び警報装置33を備える。カメラ21は、自車両の前方を撮影し、画像を作成する。カメラ21の画角には、自車両前方の路面が含まれる。
【0012】
GPS23は、自車両の位置情報を取得する。この位置情報は、地球を基準とする絶対座標で規定される位置情報である。GPS23は、衛星測位システムの一例である。地図情報記憶部25は地図情報を記憶している。その地図情報は、道路の分岐位置の情報を含んでいる。車速センサ27は自車両の車速を検出する。ヨーレートセンサ29は自車両のヨーレートを検出する。
【0013】
車両制御装置31は、走行区画線認識装置1が認識した走行区画線を用いて運転支援処理を行う。運転支援処理としては、公知のレーンキープアシスト(LKA)、衝突回避支援(PCS)等が挙げられる。
【0014】
警報装置33は、走行区画線認識装置1が認識した走行区画線を自車両が逸脱すると判断した場合、音声、画像等により、自車両のドライバに対し警報を行う。
2.走行区画線認識装置1が実行する処理
走行区画線認識装置1が実行する処理を
図2〜
図8に基づき説明する。
図2のステップ1では、画像取得ユニット3が、カメラ21を用いて画像を取得する。
【0015】
ステップ2では、自車両の地図上での位置を取得する。この処理を、
図3に基づき説明する。
図3のステップ11では、衛星測位を行うタイミングに到達したか否かを位置情報取得ユニット9が判断する。衛星測位を行うタイミングとは、前回の衛星測位から、予め設定された時間が経過したタイミングである。衛星測位タイミングに到達した場合はステップ12に進み、未だ到達していない場合はステップ18に進む。
【0016】
ステップ12では、位置情報取得ユニット9がGPSユニット23を用いて衛星測位を行い、自車両の位置情報を取得する。
ステップ13では、地図情報取得ユニット7が、地図情報記憶部25から地図情報を取得する。
【0017】
ステップ14では、地図上位置取得ユニット11が、前記ステップ12で取得した自車両の位置情報と、前記ステップ13で取得した地図情報とを照合して、自車両の地図上での位置を算出する。
【0018】
一方、前記ステップ11で否定判断した場合はステップ18に進み、地図上位置取得ユニット11が、過去に算出した自車両の地図上での位置を、車速センサ27及びヨーレートセンサ29の検出値を用いて、現時点での予測位置に更新する。
【0019】
ステップ15では、マップマッチングのタイミングに到達したか否かを地図上位置取得ユニット11が判断する。マップマッチングのタイミングとは、前回のマップマッチングから、予め設定された時間が経過したタイミングである。マップマッチングのタイミングに到達している場合はステップ16に進み、未だ到達していない場合はステップ17に進む。
【0020】
ステップ16では、地図上位置取得ユニット11がマップマッチングを行う。マップマッチングは、前記ステップ14又は前記ステップ18で算出した自車両の地図上での位置の履歴(自車両の地図上の走行軌跡)が道路上に重なるように、自車両の地図上での位置を補正する処理である。
【0021】
ステップ17では、自車両の地図上での位置を決定する。すなわち、前記ステップ16のマップマッチングを実行した場合は、マップマッチング後の位置を、自車両の地図上での位置とする。一方、前記ステップ16の処理を実行しなかった場合は、前記ステップ14又は前記ステップ18で算出した位置を、自車両の地図上での位置とする。
【0022】
図2に戻り、ステップ3では、まず、地図情報取得ユニット7が、地図情報記憶部25から地図情報を取得する。次に、地図上に、以下の条件J1及びJ2を満たす分岐位置があるか否かを区間設定ユニット13が判断する。
【0023】
J1:前記ステップ2で取得した、自車両の地図上での位置の前方に分岐位置がある。
J2:自車両から分岐位置までの距離が予め設定された範囲内にある。
なお、分岐位置とは、
図6A、
図6Bに示す分岐位置45のように、地図情報において分岐の位置を表す位置情報である。
【0024】
条件J1及びJ2を満たす分岐位置がある場合はステップ4に進み、そのような分岐位置がない場合はステップ8に進む。
ステップ4では、前記ステップ2で取得した、自車両の地図上での位置についての前後方向の精度(以下では前後方向精度とする)を精度算出ユニット17が算出する。この前後方向精度とは、前記ステップ2取得した、自車両の地図上での位置が、自車両の前後方向について、どの程度正確であるかを表す指標である。前後方向精度を算出する処理を
図4に基づき説明する。
【0025】
図4のステップ21では、最新のGPS測位(前記ステップ12)において使用した可視衛星の数を取得する。
ステップ22では、前記ステップ21で取得した可視衛星の数に応じて精度パラメータP
1を算出する。精度算出ユニット17は、予め、可視衛星の数を入力すると、精度パラメータP
1を出力するマップを備えており、そのマップを用いて精度パラメータP
1を取得する。上記のマップは、可視衛星の数が少ないほど、精度パラメータP
1の値を小さくする。P
1は正の数である。
【0026】
ステップ23では、まず、
図5に示す、自車両35が最後に通過したカーブ37からの走行距離Lを算出する。この走行距離Lは、自車両35の地図上での位置の履歴39を求め、その履歴39において自車両35が最後に通過したカーブ37を認識し、そのカーブ37から自車両35の現在位置までの距離を走行距離Lとする方法で算出できる。
【0027】
ステップ24では、前記ステップ23で取得した走行距離Lの長さに応じて精度パラメータP
2を算出する。精度算出ユニット17は、予め、走行距離Lを入力すると、精度パラメータP
2を出力するマップを備えており、そのマップを用いて精度パラメータP
2を取得する。上記のマップは、走行距離Lが長いほど、精度パラメータP
2の値を小さくする。P
2は正の数である。
【0028】
ステップ25では、前記ステップ22で算出した精度パラメータP
1と、前記ステップ24で算出した精度パラメータP
2とを乗算して、最終的な前後方向精度パラメータPを算出する。前後方向精度パラメータPは、前後方向精度の高さを表す指標である。前後方向精度パラメータPが大きいほど、前後方向精度は高い。前後方向精度パラメータPは、最新のGPS測位(前記ステップ12)において使用した可視衛星の数が少ないほど、小さい。また、前後方向精度パラメータPは、走行距離Lが長いほど、小さい。
【0029】
図2に戻り、ステップ5では、角度取得ユニット19が、地図情報記憶部25に記憶された地図情報から、角度θを取得する。この角度θとは、
図6A、
図6Bに示すように、自車両35が走行中の道路41における中心線42と分岐路43の中心線44とが分岐位置45において成す角度である。なお、分岐路43とは、分岐位置45において、自車両35が走行中の道路41から分岐する道路である。
【0030】
ステップ6では、区間設定ユニット13が区間を設定する。この処理を、
図7に基づき説明する。
図7のステップ31では、オフセット距離Aを決定する。オフセット距離Aとは、後述する区間46が自車両35の側で始まる位置から、分岐位置45までの距離を意味する。区間設定ユニット13は、予め、前記ステップ4で算出した前後方向精度パラメータPと、前記ステップ5で取得した角度θとを入力すると、オフセット距離Aを出力するマップを備えており、そのマップを用いてオフセット距離Aを決定する。上記のマップは、前後方向精度パラメータPが小さいほど、オフセット距離Aを長くする。また、上記のマップは、角度θが小さいほど、オフセット距離Aを長くする。
【0031】
ステップ32では、区間長Bを決定する。区間設定ユニット13は、予め、前記ステップ4で算出した前後方向精度パラメータPと、前記ステップ5で取得した角度θとを入力すると、区間長Bを出力するマップを備えており、そのマップを用いて区間長Bを決定する。上記のマップは、前後方向精度パラメータPが小さいほど、区間長Bを長くする。また、上記のマップは、角度θが小さいほど、区間長Bを長くする。
【0032】
ステップ33では、前記ステップ31で決定したオフセット距離A、及び前記ステップ32で決定した区間長Bを用いて、区間を設定する。
図6A、
図6Bに示すように、この区間46とは、分岐位置45よりもオフセット距離Aだけ自車両35側にある線47点を始点とし、自車両の進行方向(
図6A、
図6Bでの上方向)に、区間長Bにわたって継続する区間である。
【0033】
図2に戻り、ステップ7では、前記ステップ2で取得した自車両の地図上での位置が、前記ステップ6で設定した区間内であるか否かを判断ユニット15が判断する。区間外である場合はステップ8に進み、区間内である場合はステップ9に進む。
【0034】
ステップ8では、認識ユニット5が、通常の走行区画線認識処理を以下の手順で行う。
(エッジ点の抽出)
認識ユニット5は、前記ステップ1で取得した画像からエッジ点を抽出する。具体的には、まず、画像において水平ライン(縦方向の座標値が全て等しい全ての画素)ごとに、微分フィルタを使用して微分値を算出する。つまり、水平ラインを構成する複数の画素において、隣接する画素間における輝度値の変化率を算出する。
【0035】
次に、算出した微分値が、所定の上限値以上であるか否かを判定し、微分値が上限値以上であれば隣接する画素間で輝度値が大きく変化したものとして、その画素の座標値をエッジ点として抽出し、登録する。画像中の全ての画素について上記の処理を実行する。
(走行区画線候補の抽出)
認識ユニット5は、上記のように抽出したエッジ点に基づき、走行区画線候補を抽出する。走行区画線候補の抽出は、周知の直線抽出ハフ(Hough)変換処理等により行うことができる。なお、走行区画線候補は、1フレームの画像において複数検出される場合もある。
(走行区画線らしさ(尤度)の算出)
認識ユニット5は、上記のように抽出した走行区画線候補の走行区画線らしさ(尤度)を算出する。走行区画線らしさは、周知の方法で算出することができる。例えば、走行区画線候補を構成するエッジ点の数、走行区画線候補の形状、走行区画線候補の他の物体に対する相対的な位置等の各項目について、それぞれ、走行区画線候補らしさの値を算出し、それらを全て乗算した値を、最終的な走行区画線らしさとすることができる。
(走行区画線の認識)
認識ユニット5は、上記のように算出した走行区画線らしさと、予め設定された閾値とを比較する。走行区画線候補が複数ある場合は、それぞれの走行区画線候補について、走行区画線らしさと、閾値とを比較する。そして、走行区画線候補のうち、走行区画線らしさが閾値を超えるものを、走行区画線として認識する。
【0036】
上記の通常の走行区画線認識処理では、分岐路43の側(
図6A、
図6Bにおける左方向)でも、その反対側に比べて、走行区画線の認識が制限されない。そのため、
図8Aに示すように、道路41の両側において、走行区画線49、51を認識することが可能である。
【0037】
ステップ9では、認識ユニット5が、分岐用の走行区画線認識処理を行う。その処理は基本的には前記ステップ8と同様であるが、分岐路の側における走行区画線の認識を制限する。具体的には、
図8Bに示すように、自車両35が走行中の道路41において、区間46内では、分岐路43の側にある走行区画線49を認識しない。
【0038】
区間46内で走行区画線49を認識しないようにする方法は適宜設定できる。例えば、区間46内ではエッジ点を抽出しないようにしてもよいし、区間46内では走行区画線候補を抽出しないようにしてもよいし、区間46内では走行区画線らしさを小さくしてもよいし、区間46内では走行区画線らしさに関する閾値を高くしてもよい。
【0039】
なお、分岐用の走行区画線認識処理においても、分岐路43とは反対側においては、
図8Bに示すように、前記ステップ8と同様に走行区画線51を認識することができる。
図2に戻り、ステップ10では、認識ユニット5が、前記ステップ8又は前記ステップ9で認識した走行区画線を、車両制御装置31及び警報装置33に出力する。
【0040】
3.走行区画線認識装置1が奏する効果
(1A)
図6A、
図6Bに示すように、自車両35の前方に分岐路43があるとき、従来技術では、分岐路43の走行区画線53を、自車両35が走行中の道路41の走行区画線49であると誤認識してしまうおそれがある。
【0041】
走行区画線認識装置1は、分岐位置45よりもオフセット距離Aだけ自車両側にある線47を起点とし、自車両の進行方向に区間長Bにわたって継続する区間46を設定する。
そして、走行区画線認識装置1は、区間46内では、分岐路43の側において走行区画線49の認識を制限する。そのことにより、走行区画線53を、走行区画線49であると誤認識してしまうことを抑制できる。
【0042】
また、区間46は、分岐位置45よりもオフセット距離Aだけ自車両35側にある位置から始まる区間である。そのため、地図情報において分岐位置45が不正確であったり、地図上での自車両35の位置が不正確であったりする場合でも、走行区画線53を、走行区画線49であると誤認識してしまうことを抑制できる。
【0043】
(1B)走行区画線認識装置1は、分岐路43の側にある走行区画線49を、区間46内では認識しない。そのことにより、走行区画線53を走行区画線49であると誤認識してしまうことを一層抑制できる。
【0044】
(1C)走行区画線認識装置1は、前後方向精度が低いほど、オフセット距離Aを長くし、区間長Bを長くする。そのことにより、前後方向精度が低くても、区間46により、走行区画線53をカバーすることができる。その結果、走行区画線53を走行区画線49であると誤認識してしまうことを一層抑制できる。
【0045】
(1D)走行区画線認識装置1は、可視衛星の数が少ないほど、前後方向精度を低く算出する。そのことにより、前後方向精度を正確且つ簡便に算出することができる。
(1E)自車両が直線を走行中であるとき、マッチマッピングにより、自車両の地図上での位置を前後方向について補正することは困難である。よって、走行距離Lが長いほど、前後方向精度は低くなり易い。走行区画線認識装置1は、走行距離Lが長いほど、前後方向精度を低く算出する。そのことにより、前後方向精度を正確且つ簡便に算出することができる。
【0046】
(1F)角度θが小さいほど、地図情報における分岐位置45は不正確になり易い。また、
図6Aに示すように、角度θが小さい場合、平行導入分岐の形式が採用され、走行区画線53が通常よりも一層手前側で道路41に接続する場合がある。
【0047】
走行区画線認識装置1は、角度θが小さいほど、オフセット距離A及び区間長Bを長くする。そのことにより、地図情報における分岐位置45が不正確であったり、走行区画線53が通常よりも一層手前側にあったりしても、区間46により、道路41の近傍にある走行区画線53をカバーすることができる。その結果、走行区画線53を走行区画線49であると誤認識してしまうことを一層抑制できる。
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
【0048】
(1)分岐路の側における走行区画線の認識を制限する方法は他のものであってもよい。例えば、
図9に示すように、区間46よりも手前側で認識した、分岐路43側にある走行区画線49の外挿線55を想定し、外挿線55に対する角度がΦ以下である走行区画線に限り、走行区画線49を認識するようにしてもよい。
【0049】
また、
図10に示すように、区間46内の分岐路43側で複数の走行区画線候補57、59を抽出した場合は、最も、分岐路43とは反対側(
図10における右側)にある走行区画線候補57以外の走行区画線候補を、走行区画線として認識しないようにしてもよい。
【0050】
また、走行区画線の認識アルゴリズム、又は走行区画線の認識における設定を変更することで、分岐路の側における走行区画線の認識を制限してもよい。例えば、分岐路の側では、その反対側に比べて、エッジ点として抽出する基準を厳しくしたり、走行区画線候補として抽出する基準を厳しくしたり、走行区画線らしさ(尤度)の値を低く抑えたり、走行区画線らしさに関する閾値を高くしたりすることで、分岐路の側における走行区画線の認識を制限してもよい。
【0051】
分岐路の側における走行区画線の認識を制限するとは、分岐路の側にある走行区画線を全く認識しないことであってもよいし、自車両が区間46外にあるときに比べて、分岐路の側にある走行区画線を相対的に認識しにくいということであってもよい。
【0052】
(2)距離A、及び区間長Bの一方又は両方は、固定値であってもよい。この場合、走行区画線認識装置1の処理負担を低減できる。
(3)前後方向精度は、可視衛星の数とは無関係に、走行距離Lに基づき算出してもよい。また、前後方向精度は、走行距離Lとは無関係に、可視衛星の数に基づき算出してもよい。
【0053】
(4)オフセット距離Aは、前後方向精度とは無関係に、角度θに基づき算出してもよい。また、オフセット距離Aは、角度θとは無関係に、前後方向精度に基づき算出してもよい。
【0054】
区間長Bは、前後方向精度とは無関係に、角度θに基づき算出してもよい。また、区間長Bは、角度θとは無関係に、前後方向精度に基づき算出してもよい。
(5)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0055】
(6)上述した走行区画線認識装置の他、当該走行区画線認識装置を構成要素とするシステム、当該走行区画線認識装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、走行区画線認識方法等、種々の形態で本発明を実現することもできる。