特許第6466843号(P6466843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6466843ホスフィノコハク酸付加物を含む洗浄剤組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466843
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】ホスフィノコハク酸付加物を含む洗浄剤組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/36 20060101AFI20190128BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 1/00 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20190128BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20190128BHJP
   C23G 1/14 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C11D7/36
   B08B3/08 Z
   C11D1/00
   C11D1/66
   C11D1/72
   C11D1/722
   C11D3/04
   C11D3/08
   C11D3/10
   C11D3/36
   C11D3/37
   C11D7/06
   C11D7/12
   C11D7/14
   C11D7/22
   C23G1/14
【請求項の数】14
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-531955(P2015-531955)
(86)(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公表番号】特表2015-535863(P2015-535863A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】US2013058022
(87)【国際公開番号】WO2014042932
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年6月10日
【審判番号】不服2017-14054(P2017-14054/J1)
【審判請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】13/614,020
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/965,339
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】カーター マーティン シルバーネイル
(72)【発明者】
【氏名】エリック シー.オルソン
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−19688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜20質量%のホスホン酸系組成物;および、
アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属炭酸塩を含む、10〜90質量%のアルカリ性源、
を含んでなる洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物の使用溶液が、9〜12.5の範囲のpHを有し、
ホスホン酸系組成物が、ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物の組み合わせであり、
該ホスホノコハク酸(I)ならびに、モノ−(II)およびビス−(III)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(I)〜(III)を有し、そしてオリゴマー(IV)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(IV)で表される構造を含む
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式中、Mは、H、Na、K、NH、およびそれらの混合物からなる群から選択され、mとnの和は、2よりも大きい
浄剤組成物であって、
該洗浄剤組成物は、ホスホン酸系組成物よりも大きな質量%で該アルカリ性源を含む、洗浄剤組成物
【請求項2】
水溶性ポリマーを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、ポリカルボン酸および疎水性に変性されたポリカルボン酸からなる群から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ノニオン性界面活性剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの組み合わせを含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記使用溶液が、100〜1500ppmのアルカリ性源、5〜500ppmのホスホン酸系組成物を含み、かつ9〜12.5の範囲のpHを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物を含む、0.01〜20質量%のホスホン酸系組成物
アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属炭酸塩を含む、10〜90質量%のアルカリ性源;ならびに、
界面活性剤、
を含んでなる洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物の使用溶液が、9〜12.5の範囲のpHを有し、
該ホスホノコハク酸(I)ならびに、モノ−(II)およびビス−(III)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(I)〜(III)を有し、そしてオリゴマー(IV)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(IV)で表される構造を含む
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
式中、Mは、H、Na、K、NH、およびそれらの混合物からなる群から選択され、mとnの和は、2よりも大きい
浄剤組成物であって、
該洗浄剤組成物は、ホスホン酸系組成物よりも大きな質量%で該アルカリ性源を含む、洗浄剤組成物
【請求項8】
前記界面活性剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの組み合わせを含むノニオン性界面活性剤である、請求項記載の組成物。
【請求項9】
前記洗浄剤組成物使用溶液が、100〜1500ppmのアルカリ性源、1〜500ppmのホスホン酸系組成物、1〜50ppmのノニオン性界面活性剤を含み、かつ9〜12.5のpHを有する、請求項記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、10〜70質量%のアルカリ性源、1〜20質量%のホスホン酸系組成物、および1〜10質量%の界面活性剤を含む、請求項記載の組成物。
【請求項11】
材表面へ、洗浄剤組成物を適用することを含んでなる、処理される表面上への硬水スケールの堆積を防止する一方で洗浄する方法であって、該洗浄剤組成物は、
0.01〜20質量%のホスホン酸系組成物ならびに、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属炭酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、10〜90質量%のアルカリ性源を含み、
ホスホン酸系組成物が、ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物の組み合わせであり、
該ホスホノコハク酸(I)ならびに、モノ−(II)およびビス−(III)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(I)〜(III)を有し、そしてオリゴマー(IV)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式(IV)で表される構造を含む
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
式中、Mは、H、Na、K、NH、およびそれらの混合物からなる群から選択され、mとnの和は、2よりも大き
該洗浄剤組成物は、ホスホン酸系組成物よりも大きな質量%で該アルカリ性源を含む、
方法。
【請求項12】
前記表面が、プラスチック、金属および/またはガラス表面である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記使用溶液が、器物洗浄機の内部で生成される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄剤組成物の使用溶液を生成させる工程を更に含み、該洗浄剤使用溶液が、9〜12.5の範囲のpHを有する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬水スケール堆積を制御するのに有効な洗浄剤組成物に関する。特には、モノ−、ビス−、およびオリゴマーホスフィノコハク酸(PSO)誘導体を用い、そしてアルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物と組み合わされた、洗浄剤組成物が提供される。この洗浄剤組成物を用い、そしてスケールの堆積を防止する方法が、約9〜12.5の範囲のアルカリ性条件での使用のために、提供される。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物洗浄剤は、しばしばそれぞれアッシュ洗浄剤および苛性洗浄剤と称される。アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物を用いた洗浄剤配合物は、有効な洗浄性を与えることが知られている。配合物は、それらの腐蝕性の程度、消費者に優しいおよび/または環境に優しい製品としての容認、ならびに他の洗浄剤の特徴が非常に大きく変わる可能性がある。一般には、それらの洗浄剤組成物のアルカリ性が増加すると、硬水スケールの堆積を防ぐ困難性もまた増大する。従って、それらの洗浄剤を用いる系内の硬水スケールの堆積を最小化する、および/または排除する洗浄剤組成物への必要性が存在している。
【0003】
更に、洗浄剤におけるリンを含む原材料の使用は、より厳しく規制されて来ており、産業界は、高度にアルカリ性の洗浄剤に伴う硬水スケールの形成を制御する他の方法を模索している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、硬水スケールの堆積を制御し、一方で有効な洗浄性を維持するアルカリ性洗浄剤組成物を開発することが、特許請求した発明の目的である。
【0005】
有意な硬水スケールの堆積なしに、約9〜約12.5のpHの範囲で、アルカリ性洗浄剤を使用する方法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0006】
モノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸(PSO)誘導体を用い、そして有効な洗浄性を提供することが、なお更なる本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の利点は、本発明の洗浄剤組成物の適用による、処理された基材表面上への中硬水〜硬水スケールの堆積の防止である。結果として、処理された基材表面の審美的な外観が向上する。
【0008】
1つの態様では、本発明は、ホスフィノコハク酸誘導体;ならびにアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩および/またはアルカリ金属ケイ酸塩を含むアルカリ性源を含む洗浄剤組成物を提供し、ここで、この洗浄剤の使用溶液は、約9〜12.5の範囲のpHを有している。
【0009】
他の態様では、本発明は、ホスホノコハク酸とモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物とを含むホスフィノコハク酸誘導体;アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩および/またはアルカリ金属ケイ酸塩を含むアルカリ性源;ならびに界面活性剤を含む洗浄剤組成物を提供し、ここで、この洗浄剤の使用溶液は、約9〜12.5の範囲のpHを有している。
【0010】
更なる態様では、本発明は、処理された表面上への硬水スケールの堆積を防止しながら、基材表面へ、洗浄剤組成物を適用することを含む、洗浄方法を提供し、ここでこの洗浄剤組成物は、ホスフィノコハク酸ならびに、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩および/またはそれらの組み合わせを含むアルカリ性源を含み、この洗浄剤組成物は、表面上への硬水スケールの形成、沈殿および/または堆積を防止するのに有効である。
【0011】
多様な態様が開示されているが、本発明の更に他の態様が、本発明の例示の態様を示し、そして説明する以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。従って、図面および詳細な説明は、元来説明のためのものであり、そして限定するためのものではないことが理解されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸誘導体を、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩および/またはアルカリ金属ケイ酸塩とともに用いた洗浄剤組成物に関する。この洗浄剤組成物は、慣用のアルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物洗浄剤に対して、多くの利点を有している。例えば、この洗浄剤組成物は、約9〜約12.5のアルカリ性条件で、硬水スケールの堆積の有効な防止を提供する。
【0013】
本発明のこれらの態様は、特定のアルカリ性洗浄剤組成物に限定されるものではなく、それらは変更することができ、そして当業者には理解される。本明細書において用いられる全ての用語は、特定の態様を説明するためだけの目的で用いられており、そしていずれかの方法または範囲に限定することを意図するものではないことが更に理解されなければならない。例えば、本明細書および添付の特許請求の範囲の中で用いられた単数形「a」、「an」および「the」は、特に断りのない限り、複数をも含むことができる。更に、全ての単位、接頭辞、および記号は、そのSIで容認される形式を意味することができる。本明細書内に記載された数値範囲は、その範囲を規定する数値を含むものであり、そしてその規定された範囲内のそれぞれの整数を含んでいる。
【0014】
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語が先ず規定される。特に断りのない限り、ここで用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明の態様が関連する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。ここに記載されたのと同様の、変性された、または等価の多くの方法および材料を、過度の実験なしに、本発明の態様の実施において用いることができ、好ましい材料および方法が、本明細書に記載されている。本発明の態様の記載および特許請求に当たって、以下の用語が、以下に説明した規定に従って用いられる。
【0015】
ここで用いられる用語「約」は、例えば、現実の世界で濃縮物または使用溶液を作るのに用いられる典型的な測定および液体取扱い手順によって;それらの手順における偶発的な誤差によって;その組成物を作る、もしくはその方法を実施するのに用いられる原料の製造者、供給源、または純度によってなど、数量において発生する可能性がある変動を表している。また、用語「約」は、特定の初期の混合物からもたらされる組成物の、異なる平衡条件に因って異なる量をも包含している。用語「約」によって修飾されているか否かに関わらず、特許請求の範囲はそれらの量の等価物を含んでいる。
【0016】
「再付着防止剤」は、洗浄されている対象物上に再付着する代わりに、水中に懸濁されたままであることを援ける化合物を表す。再付着防止剤は、本発明において、除去された汚れが、洗浄されている表面上へ再付着するのを低減するのを援ける。
【0017】
ここで用いられる用語「洗浄」は、いずれかの汚れ除去、漂白、微生物個体群の減少、またはそれらの組み合わせを実行する、または援けることを表す。
【0018】
ここで用いられる用語「消泡剤(defoamer)」または「消泡剤(defoaming agent)」は、泡の安定性を低減させることができる組成物を表す。消泡剤の例としては、エチレンオキシド/プロピレンブロック共重合体、例えば、Pluronic N-3の名称の下に入手可能なもの;シリコーン化合物、例えばポリジメチルシロキサン中に分散されたシリカ、ポリジメチルシロキサン、および官能化ポリジメチルシロキサン、例えばAbil B9952の名称の下で入手可能なもの;脂肪族アミド、炭化水素ワックス、脂肪酸、脂肪族エスエル、脂肪族アルコール、脂肪酸石ケン、エトキシレート、鉱油、ポリエチレングリコールエステル、およびアルキルリン酸エステル、例えばモノステアリルリン酸エステル、が挙げられるが、それらには限定されない。消泡剤の議論は、例えば、米国特許第3,048,548号明細書、第3,334,147号明細書、および第3,442,242号明細書中に見ることができ、これらを参照することによって本明細書の内容とする。
【0019】
ここで用いられる用語「供給水」、「希釈水」、および「水」は、本発明の方法および組成物に用いることができる水の、いずれかの供給源を表す。本発明での使用に好適な水源は、広範囲な品質およびpHの両方を含んでおり、そして市水、井戸水、公共水道システムによって供給される水、私設水道システムによって供給される水、および/またはシステムもしくは井戸から直接の水が挙げられるが、それらには限定されない。また、水は、使用された水の貯槽、例えば再生水の貯蔵のために用いられる再循環貯槽、貯蔵タンク、またはそれらの組み合わせを含むからの水を含むことができる。また、水は、食品プロセス水または輸送水(transport waters)を含む。本発明のシステムおよび方法に入ってくる水の供給源に関わらず、水源は、製造プラント内で更に処理することができる。例えば、石灰を、無機物の沈殿のために加えることができ、炭素ろ過で芳香のある汚染物を除去することができ、付加的な塩素もしくは二酸化塩素を、滅菌のために用いることができ、あるいは、水は逆浸透によって精製することができて、蒸留水と同様の性質を有することができる。
【0020】
ここで用いられる用語「微生物(microorganism)」は、いずれかの非細胞性の、もしくは単細胞の(群体を含む)有機体を表す。微生物は、全ての原核生物を含む。微生物としては、細菌(シアノバクテリアを含む)、胞子、地衣類、真菌類、原生動物、ビリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、および幾つかの藻類が挙げられる。ここで用いられる用語「微生物(microbe)」は微生物(microorganism)と同義語である。
【0021】
ここで用いられる用語「リンを含まない」または「実質的にリンを含まない」は、リンもしくはリン含有化合物を含まない、あるいはリンもしくはリン含有化合物を添加されていない組成物、混合物または原料を表している。リンまたはリン含有化合物が、リンを含まない組成物、混合物もしくは原料の汚染を通して存在するとしても、リンの量は、0.5質量%未満でなければならない。より好ましくは、リンの量は、0.1質量%未満、そして最も好ましくは、リンの量は、0.01質量%未満である。
【0022】
本願の目的では、微生物個体群が、少なくとも約50%減少した、あるいは水での洗浄によって得られるよりも有意に減少した場合には、微生物の減少が成功裏に達成される。微生物個体群のより大きな低減は、より大きな水準の保護を提供する。
【0023】
用語「実質的に同様の洗浄性能」は、代替の洗浄製品または代替の洗浄システムによって、包括的に同じ程度の(もしくは、少なくとも有意に劣る程度ではない)清浄度が、または、包括的に同じ労力(もしくは少なくとも有意に劣る労力ではない)で、あるいはその両方が、達成されることを包括的に表す。
【0024】
ここで用いられる用語「器物」は、食事用および料理用用具、皿類、および他の硬質表面、例えばシャワー、流し、トイレ、浴槽、カウンタートップ、窓、鏡、運搬用車両、床などの品目を表す。ここで用いられる用語「器物洗浄」は、器物の洗浄(washing)、洗浄(cleaning)、またはすすぎを表す。また、器物は、プラスチックで作られた品目を表す。本発明による組成物で洗浄することができるプラスチックの種類としては、ポリカーボネートポリマー(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS)、およびポリスルホンポリマー(PS)を含むプラスチックが挙げられるが、それらには限定されない。本発明の化合物および組成物を用いて洗浄することができる他の例示的なプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0025】
ここで用いられる用語「質量パーセント(weight percent)」、「wt%」、「質量パーセント(percent by weight)」、「質量%」およびそれらの変形は、その組成物の全質量によって割り算された物質の質量に100を掛け算した、物質の濃度を表している。ここで用いられる「パーセント」、「%」などは、「質量パーセント」、「wt%」などと同義語であることが意図されていることが理解されなければならない。
【0026】
本発明の方法および組成物は、本発明の成分および原料ならびにここに記載された他の原料を含む、から本質的になる、または、からなることができる。ここで用いられる「本質的になる」は、本方法および組成物が、付加的な工程、成分または原料を含むことができるが、しかしながら、その付加的な工程、成分または原料が、特許請求した方法および組成物の基本的な、そして新規な特徴を、実質的に変えない限りにおいてであることを意味している。
【0027】
<組成物>
本発明の態様によれば、アルカリ性洗浄剤は、ホスフィノコハク酸(PSO)誘導体を含んでいる。1つの態様では、アルカリ性洗浄剤は、ホスフィノコハク酸(PSO)誘導体および有機アルカリ性源の供給源を含む、からなる、および/または、から本質的になる。また、本組成物は、水、界面活性剤および/または他のポリマー、およびそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0028】
本発明による使用のための好適な洗浄剤組成物の例は、約1〜90質量%のアルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物、約10〜80質量%のアルカリ性源、および好ましくは約10〜70質量%のアルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物;約0.01〜40質量%のPSO誘導体、好ましくは約1〜20質量%のPSO誘導体;ならびに随意選択的に他のキレート化剤、ポリマーおよび/または界面活性剤、例えば、好ましくは約0.1〜40質量%の界面活性剤、好ましくは約1〜10質量%のノニオン性界面活性剤を含む、からなる、および/または、から本質的になることができる。
【0029】
本発明による使用のための好適な洗浄剤使用溶液組成物の例は、約100〜1500ppmのアルカリ性源、約1〜500ppmのホスフィノコハク酸誘導体、約1〜50ppmのノニオン性界面活性剤を含む、からなる、および/または、から本質的になることができ、そして約9〜12.5のpHを有している。
【0030】
好適な配合の更なる説明が、以下に示されている。
【0031】
【表1】
【0032】
洗浄剤組成物の使用溶液は、約9超のpHを有している。更なる態様では、洗浄剤組成物使用溶液のpHは、約9〜12.5の範囲である。好ましい態様では、洗浄剤使用溶液のpHは、約10.5〜12.5の範囲である。有利には、本発明の洗浄剤組成物は、そのようなアルカリ性のpH条件において、処理された表面上への硬度スケールの堆積の有効な防止を提供する。本発明が特定の理論によって限定されることはないが、アルカリ性源(例えば、炭酸ナトリウムおよび/または水酸化ナトリウム)が用いられていて、約9超のpHのアルカリ性条件で、硬度スケールの堆積なしに、有効な洗浄を有することは、予想されなかったことである。
【0033】
<ホスフィノコハク酸(PSO)誘導体>
洗浄剤組成物には、ホスフィノコハク酸(PSO)誘導体を用いる。また、PSO誘導体は、ホスホン酸系組成物とも表すことができる。本発明の1つの態様では、PSO誘導体は、モノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物およびホスホノコハク酸(PSA)付加物の組み合わせである。
【0034】
ホスホノコハク酸(PSA)付加物は、下記の式(I)を有している。
【0035】
【化1】
【0036】
モノ−ホスフィノコハク酸付加物は、下記の式(II)を有している。
【0037】
【化2】
【0038】
ビス−ホスフィノコハク酸付加物は、下記の式(III)を有している。
【0039】
【化3】
【0040】
オリゴマーホスフィノコハク酸付加物の例示的な構造が、下記の式(IV)に示されている。
【0041】
【化4】
【0042】
式中、Mは、H、Na、K,NH、またはそれらの混合物であり、そしてmとnの合計は、2超である。
【0043】
更なるオリゴマーホスフィノコハク酸付加物の構造が、例えば、米国出願第5,085,794号、第5,023,000号、および第5,018,577号明細書中に説明されており、それらの全体を参照することによって本明細書の内容とする。また、オリゴマー種は、ホスホノコハク酸のエステルを含んでいてもよく、この場合、ホスホネート基は、コハク酸エステルから誘導されたアルキル基でエステル化されている。更には、オリゴマーホスフィノコハク酸付加物は、1〜20質量%の選択された、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−アシルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、およびアクリルアミドが挙げられるが、それらには限定されない、付加的なモノマーを含むことができる。
【0044】
式I、II、IIIおよびIVの付加物は、酸または塩の形態で用いることができる。更に、ホスフィノコハク酸およびオリゴマー種に加えて、混合物もまた、付加物IIの酸化からの幾つかのホスホノコハク酸誘導体(I)、ならびに不純物、例えば、式HPO、HPO2−、およびPO3−の、種々の無機のリンの副生成物もまた含むことができる。
【0045】
1つの態様では、モノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物およびホスホノコハク酸(PSA)は、以下のモルおよび質量比で提供することができる。
【0046】
【表2】
【0047】
洗浄剤組成物および使用方法は、ホスフィノコハク酸誘導体を用いることができ、そしてモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸から選ばれた1種もしくは2種以上のPSO誘導体ならびにホスホノコハク酸を含むことができ、ここで少なくとも約10モル%の誘導体は、約1:1〜約20:1のコハク酸:リン比を有している。より好ましくは、ホスフィノコハク酸誘導体は、モノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸から選ばれた1種もしくは2種以上のPSO誘導体ならびに随意選択的なホスホノコハク酸を含むことができ、ここで少なくとも約10モル%の誘導体は、約1:1〜約15:1のコハク酸:リン比を有している。最も好ましくは、ホスフィノコハク酸誘導体は、モノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸から選ばれた1種もしくは2種以上の誘導体ならびに随意選択的なホスホノコハク酸を含むことができ、ここで少なくとも約10モル%の誘導体は、約1:1〜約10:1のコハク酸:リン比を有している。
【0048】
本発明のPSO誘導体としての使用に好適なモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物の更なる説明が、米国特許第6,572,789号明細書中に与えられており、その全体を参照することによって本明細書の内容とする。
【0049】
本発明の態様では、洗浄剤組成物は、特定の規制に適合するように、ニトリロ三酢酸(NTA)を含まない。本発明の更なる態様では、洗浄剤組成物は、特定の規制に適合するように、実質的にリンを含まない。特許請求した発明のPSO誘導体は、約0.5質量%未満のリンを有する、実質的にリンを含まない洗浄剤組成物を提供することができる。より好ましくは、洗浄剤組成物中のリンの量は、約0.1質量%未満であることができる。従って、硬度スケールおよび/または堆積を防止するために洗浄剤中に通常用いられているリン酸塩、例えばトリポリリン酸塩の使用なしに、基材表面上への硬度スケールの堆積を制御する(すなわち、防止する)ことのできる洗浄剤組成物を提供することが、本発明の洗浄剤組成物の利点である。
【0050】
<アルカリ性源>
本発明の態様によれば、洗浄剤組成物は、アルカリ性源を含んでいる。例示的なアルカリ性源としては、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0051】
洗浄剤の配合に用いられるアルカリ金属炭酸塩は、しばしば灰系洗浄剤と表され、そして最も通常には炭酸ナトリウムを用いる。更なるアルカリ金属炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが挙げられる。本発明の態様では、アルカリ金属炭酸塩は、メタケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸水素塩、およびセスキ炭酸塩を含むことが更に理解される。本発明によれば、いずれかの「灰系」または「アルカリ金属炭酸塩」はまた、全てのアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、および/またはアルカリ金属セスキ炭酸塩を含むことが理解されるであろう。
【0052】
洗浄剤の配合において用いられるアルカリ金属水酸化物は、しばしば苛性洗浄剤と表される。好適なアルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムが挙げられる。例示的なアルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、当技術分野において知られているいずれかの形態、例えば、固体ビーズ、水溶液中に溶解されて、またはそれらの組み合わせで、本組成物に加えることができる。アルカリ金属水酸化物は、固体として、約12〜100U.S.メッシュの範囲の粒子径の混合物を有する、小球状にされた固体またはビーズの形態で、あるいは水溶液として、例えば、45質量%および50質量%の溶液として、商業的に入手可能である。
【0053】
第1のアルカリ性源に加えて、洗浄剤組成物は、第2のアルカリ性源を含むことができる。有用な第2のアルカリ性源の例としては、金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸カリウムまたはメタケイ酸ナトリウムもしくはメタケイ酸カリウム;金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウムもしくはセスキ炭酸カリウム;金属ホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムもしくはホウ酸カリウム;ならびにエタノールアミンおよびアミンが挙げられるが、それらには限定されない。そのようなアルカリ性源は、水性または粉末化された形態のいずれかで商業的に入手可能であり、それらのいずれも、本発明の洗浄剤組成物の配合に有用である。
【0054】
1種もしくは2種以上のアルカリ性源の有効な量が、本洗浄剤組成物中に与えられる。有効な量は、ここでは、少なくとも約9、好ましくは少なくとも約10のpHを有する使用組成物を提供する量を表す。使用組成物が、約9〜約10の範囲のpHを有する場合には、それは中度のアルカリ性であると考えることができ、そしてpHが約12超である場合には、その使用組成物は、苛性であると考えることができる。幾つかの環境では、洗浄剤組成物は、例えば洗浄剤組成物の更なる希釈によって、約9未満のpHの水準で有用な使用組成物を提供することができる。
【0055】
<付加的な機能性原料>
洗浄剤組成物の成分は、種々の付加的な機能性原料と組み合わせることができる。幾つかの態様では、PSO誘導体およびアルカリ性源を含む洗浄剤組成物は、例えば、付加的な機能性材料がその中に少ししか、または全く配分されない態様では、洗浄剤組成物の全質量の内で、大きな量を、または更には実質的に全てを構成することができる。それらの態様では、洗浄剤組成物の上記で与えられた成分濃度範囲は、洗浄剤組成物中のそれらの同じ成分の範囲を表している。
【0056】
機能性原料は、洗浄剤組成物に所望の性質および機能性を与える。本願の目的では、用語「機能性原料」は、使用および/または濃縮物、例えば水溶液中に分散もしくは溶解された場合に、特定の用途において有益な性質を与える原料を含んでいる。機能性原料の幾つかの具体的な例が、以下により詳細に議論されているが、議論される具体的な材料は、例示のためだけに与えられており、そして広範囲な他の機能性原料を用いることができる。例えば、以下に議論された機能性原料の多くは、洗浄用途に用いられる材料に関している。しかしながら、他の態様では、他の用途での使用のための機能性原料を含むことができる。
【0057】
例示的な付加的な機能性原料としては、例えば、ビルダーまたは水質調節剤、例えば洗浄剤ビルダー;硬化剤(hardening agents);漂白剤;充填剤;消泡剤;再付着防止剤;安定剤;分散剤;酵素;ガラスおよび金属腐食防止剤;芳香剤および染料;増粘剤などが挙げられる。好適な付加的な機能性原料の更なる説明が、米国特許出願第12/977,340号明細書中に説明されており、その全体を参照することによって本明細書の内容とする。
【0058】
<界面活性剤>
幾つかの例では、本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいる。本発明の組成物での使用にために好適な界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤および/または両性イオン性界面活性剤が挙げられるが、それらには限定されない。
【0059】
幾つかの態様では、本発明の組成物は、約0〜40質量%の界面活性剤を含んでいる。他の態様では、本発明の組成物は、約0〜25質量%の界面活性剤を含んでいる。
【0060】
本発明の特定の態様では、洗浄剤組成物は、PSO誘導体に加えて、界面活性剤および/または他のポリマーを必要としない。他の態様では、洗浄剤組成物は、組成物に消泡性を与えるためにノニオン性界面活性剤を用いる。1つの態様では、洗浄剤組成物は、アルコキシル化界面活性剤(例えば、EO/PO共重合体)を用いる。
【0061】
<ノニオン性界面活性剤>
本発明の組成物での使用に好適な、好適なノニオン性界面活性剤としては、アルコキシル化界面活性剤が挙げられる。好適なアルコキシル化界面活性剤としては、EO/PO共重合体、キャップされたEO/PO共重合体、アルコールアルコキシレート、キャップされたアルコールアルコキシレート、それらの混合物などが挙げられる。溶媒としての使用に好適なアルコキシル化界面活性剤としては、EO/POブロック共重合体、例えば、Pluronic(商標)、およびリバース型Pluronic(商標)界面活性剤;アルコールアルコキシレート;キャップされたアルコールアルコキシレート;それらの混合物などが挙げられる。
【0062】
有用なノニオン性界面活性剤は、一般に有機疎水基および有機親水基の存在によって特徴付けられ、そして典型的には、親水性のアルカリ酸化物部分を備えた、有機脂肪族、アルキル芳香族または、ポリオキシアルキレン疎水性化合物の、親水性のアルキレンオキシド部分との縮合によって生成され、親水性のアルキレンオキシド部分は一般的な方法では、エチレンオキシドまたはその多水和生成物、ポリエチレングリコールである。実際に、反応性の水素原子とともに、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、またはアミド基を有するいずれかの疎水性化合物は、エチレンオキシド、またはその多水和付加物、またはそのアルコキシレン、例えばプロピレンオキシドとの混合物と縮合することができて、ノニオン性界面活性剤を形成する。いずれかの特定の疎水性化合物と縮合される親水性のポリオキシアルキレン部分の長さは、容易に調整することができて、親水性と疎水性の間の平衡の所望の度合いを有する、水分散性または水溶性の化合物を生成する。
【0063】
プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、および開始剤の反応性水素化合物としてエチレンジアミンを基にした、ブロックポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリマー化合物は、好適なノニオン性界面活性剤である。開始剤の逐次的なプロポキシル化およびエトキシル化で作られるポリマー化合物の例が、BASF社によって製造され、商品名Pluronic(商標)およびTetronic(商標)として、商業的に入手可能である。
【0064】
Pluronic(商標)化合物は、エチレンオキシドを、プロピレンンオキシドの、プロピレングリコールの2つのヒドロキシル基への付加によって形成された、疎水性の基体(base)と縮合することによって形成された2官能性(2つの反応性水素)化合物である。この分子のこの疎水性部分は、約1000〜約4000の分子量である。エチレンオキシドが、次いでこの疎水性物質を親水性基の間に挟むように加えられ、最終的な分子の約10質量%〜約80質量%を構成するように長さを制御される。
【0065】
Tetronic(商標)化合物は、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次的な付加から誘導される、4官能のブロック共重合体である。プロピレンオキシドの疎水性物質の範囲の分子量は約500〜約7000であり、親水性物質、エチレンオキシドは、その分子の約10質量%〜約80質量%を構成するように加えられる。
【0066】
<半極性のノニオン性界面活性剤>
半極性の種類のノニオン性界面活性剤は、本発明の組成物に有用なノニオン性界面活性剤の他の種類である。半極性のノニオン性界面活性剤としては、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。
【0067】
アミンオキシドは、下記の一般式に相当する第三級アミンオキシドである。
【0068】
【化5】
【0069】
式中、矢印は、半極性の結合の慣用の表現であり;R、RおよびRは、脂肪族、芳香族、ヘテロ環式、脂環式、またはそれらの組み合わせであることができる。通常は、洗浄剤に関係するアミンオキシドでは、Rは、約8〜約24個の炭素原子のアルキル基であり;RおよびRは、1〜3個の炭素原子のアルキルもしくはヒドロキシアルキル、またはそれらの混合物であり;RおよびRは、互いに結合していてもよく、例えば、酸素もしくは窒素原子を介して、環構造を形成する;Rは、2〜3個の炭素原子を含むアルキレンまたはヒドロキシアルキレン基であり;そしてnは、0〜約20の範囲である。アミンオキシドは、対応するアミンおよび酸化剤、例えば過酸化水素、から生成することができる。
【0070】
また、有用な半極性のノニオン性界面活性剤としては、下記の構造を有する水溶性のホスフィンオキシドが挙げられる。
【0071】
【化6】
【0072】
式中、矢印は、半極性の結合の慣用の表現であり;そしてRは、鎖長が10〜約24個の炭素原子の範囲の、アルキル、アルケニルまたはヒドロキシアルキル部分であり;そして、RおよびRは、それぞれ1〜3個の炭素原子を含むアルキルもしくはヒドロキシアルキル基から別々に選択されるアルキル部分である。
【0073】
有用なホスフィンオキシドの例としては、ジメチルデシルホスフィンオキシド、ジメチルテトラデシルホスフィンオキシド、メチルエチルテトラデシルホスフィンオキシド、ジメチルヘキサデシルホスフィンオキシド、ジエチル−2−ヒドロキシオクチルデシルホスフィンオキシド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルホスフィンオキシド、およびビス(ヒドロキシメチル)テトラデシルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0074】
有用な水溶性のアミンオキシド界面活性剤は、オクチル、デシル、ドデシル、イソドデシル、ココナツ、または獣脂(tallow)アルキルジ(低級アルキル)アミンオキシド、から選択され、その具体的な例としては、オクチルジメチルアミンオキシド、ノニルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、イソドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド、ペンタデシルジメチルアミンオキシド、ヘキサデシルジメチルアミンオキシド、ヘプタデシルジメチルアミンオキシド、オクタデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジプロピルアミンオキシド、ヘキサデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジブチルアミンオキシド、オクタデシルジブチルアミンオキシド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−ドデコキシ−1−ヒドロキシプロピルアミンオキシド、ジメチル−(2−ヒドロキシドデシル)アミンオキシド、3,6,9−トリオクタデシルジメチルアミンオキシドおよび3−ドデコキシ−2−ヒドロキシプロピルジ−(2−ヒドロキシエチル)アミンオキシドがある。
【0075】
また、ここで有用な半極性のノニオン性界面活性剤としては、下記の構造を有する水溶性のスルホキシド化合物が挙げられる。
【0076】
【化7】
【0077】
式中、矢印は、半極性の結合の慣用の表現であり;そしてRは、約8〜約28個の炭素原子のアルキルもしくはヒドロキシアルキル部分、0〜約5個のエーテル結合および0〜約2個のヒドロキシル置換基であり;そしてRは、1〜3個の炭素原子を有するアルキルもしくはヒドロキシアルキル基からなるアルキル部分である。それらのスルホキシドの有用な例としては、ドデシルメチルスルホキシド;3−ヒドロキシトリデシルメチルスルホキシド;3−メトキシトリデシルメチルスルホキシド;および3−ヒドロキシ−4−ドデコキシブチルメチルスルホキシドが挙げられる。
【0078】
本発明の組成物のための好ましい半極性のノニオン性界面活性剤としては、ジメチルアミンオキシド、例えばラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0079】
また、アルコキシル化アミンまたは、最も具体的には、アルコールアルコキシル化/アミノ化/アルコキシル化界面活性剤も、本発明による使用に好適である。それらのノニオン性界面活性剤は、少なくとも部分的には、一般式:R20−(PO)N−(EO)H、R20−(PO)N−(EO)H(EO)H、およびR20−N(EO)Hで表され、ここでR20は、アルキル、アルケニルもしくは他の脂肪族基、または8〜20、好ましくは12〜14個の炭素原子のアルキル−アリール基;EOはオキシエチレン、POはオキシプロピレン、sは、1〜20、好ましくは2〜5、tは1〜10、好ましくは2〜5、そしてuは1〜10、好ましくは2〜5である。それらの化合物の範囲の他の変形も、代替の式:R20−(PO)−N[(EO)H][(EO)H]、ここでR20は、上記で規定したとおりであり、vは1〜20(例えば、1、2、3もしくは4(好ましくは、2))、そしてwとzは、独立して1〜10、好ましくは2〜5である。それらの化合物は、Huntsman Chemicalsによって、ノニオン性界面活性剤として販売されている一連の製品で、商業的に提供されている。
【0080】
<アニオン性界面活性剤>
本発明の組成物での使用に好適なアニオン性のスルフェート界面活性剤としては、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、直鎖および分岐の第1級と第2級アルキルスルフェート、アルキルエトキシスルフェート、脂肪族オレイルグリセロールスルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルスルフェート、C−C17アシル−N−(C−Cアルキル)および−N−(C−Cヒドロキシアルキル)グルカミンスルフェート、ならびにアルキルポリサッカリドのスルフェート、例えば、アルキルポリグルコシドのスルフェートなどが挙げられる。また、アルキルスルフェート、アルキルポリ(エチレンオキシ)エーテルスルフェートおよび芳香族ポリ(エチレンオキシ)スルフェート、例えば、エチレンオキシドおよびノニルフェノールのスルフェートもしくは縮合生成物(通常は、分子当たりに1〜6個のオキシエチレン基を有している)も挙げられる。
【0081】
また、本発明の組成物での使用に好適なアニオン性スルホネート界面活性剤としては、アルキルスルホネート、直鎖および分岐の第1級と第2級のアルキルスルホネート、ならびに置換基を有するか、もしくは有しない芳香族スルホネートが挙げられる。
【0082】
本発明の組成物での使用に好適なアニオン性カルボキシレート界面活性剤としては、カルボン酸(および塩)、例えば、アルカン酸(および、アルカノエート)、エステルカルボン酸(例えば、アルキルスクシネート)、エーテルカルボン酸などが挙げられる。そのようなカルボキシレートとしては、アルキルエトキシカルボキシレート、アルキルアリールエトキシカルボキシレート、アルキルポリエトキシポリカルボキシレート界面活性剤および石鹸(例えば、アルキルカルボキシル)が挙げられる。本発明の組成物での使用に有用な第2級カルボキシレートとしては、第2級炭素に結合したカルボキシル単位を含むものが挙げられる。第2級炭素は、例えば、p−オクチル安息香酸中のように、またはアルキル置換シクロヘキシルカルボキシレート中のように、環構造中にあることができる。第2級カルボキシレート界面活性剤は、典型的にはエーテル結合を含まず、エステル結合を含まず、そしてヒドロキシル基を含まない。更には、それらは、典型的には、ヘッド基(両親媒性部分)中に窒素原子を含まない。好適な第2級の石鹸界面活性剤は、典型的には11〜13個の総炭素原子を含んでいるが、しかしながら、より多くの炭素原子(例えば、16個以下)が存在することが可能である。また、好適なカルボキシレートとしては、アシルアミノ酸(および塩)、例えば、アシルグルタメート、アシルペプチド、サルコシネート(例えば、N−アシルサルコシネート)、タウレート(例えば、N−アシルタウレートおよびメチルタウリドの脂肪酸アミド)などが挙げられる。
【0083】
好適なアニオン性界面活性剤としては、下記の式のアルキルもしくはアルキルアリールエトキシカルボキシレートが挙げられる。
【0084】
【化8】
【0085】
式中、RはC〜C22アルキル基、または、
【化9】
であり、式中、Rは、C−C16アルキル基;nは1〜20の整数;mは1〜3の整数;そしてXは、対イオン、例えば、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムまたはアミン塩、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンである。幾つかの態様では、nは4〜10の整数であり、そしてmは1である。幾つかの態様では、Rは、C〜C16アルキル基である。幾つかの態様では、Rは、C12〜C14アルキル基、nは4、そしてmは1である。
【0086】
他の態様では、Rは、
【化10】
であり、そしてRは、C〜C12アルキル基である。なお更に他の態様では、Rは、Cアルキル基、nは10、そしてmは1である。
【0087】
そのようなアルキルおよびアルキルアリールエトキシカルボキシレートは、商業的に入手可能である。それらのエトキシカルボキシレートは、典型的には酸の形態で入手可能であり、それは、容易にアニオン性もしくは塩の形態に変換することができる。商業的に入手可能なカルボキシレートとしては、Neodox 23-4、C12−13アルキルポリエトキシ(4)カルボン酸(Shell Chemical)、およびEmcol CNP-110、Cアルキルアリールポリエトキシ(10)カルボン酸(Witco Chemical)が挙げられる。また、カルボキシレートは、Clariantから入手可能であり、例えば、Sandopan(商標)DTCの製品、C13アルキルポリエトキシ(7)カルボン酸がある。
【0088】
<両性界面活性剤>
両性(amphoteric)または両性(ampholytic)界面活性剤は、塩基性および酸性の親水性基ならびに有機疎水性基の両方を含んでいる。それらのイオン性の構成要素は、他の種類の界面活性剤についてここで説明したアニオン性またはカチオン性基のいずれかであることができる。塩基性窒素(basic nitrogen)および酸性カルボキシレート基は、塩基性および酸性の親水性基として用いられる典型的な官能基である。少数の界面活性剤において、スルホネート、スルフェート、ホスホネートまたはホスフェートは、負の電荷を与える。
【0089】
両性の界面活性剤は、脂肪族第2級および第3級アミンの誘導体として広範囲に記載することができ、そこでは脂肪族基は、直鎖または分岐していることができ、そして脂肪族置換基の一方は、約8〜18個の炭素原子を含み、そして一方はアニオン性の水溶性化基、例えば、カルボキシ、スルホ、スルファト、ホスファトまたはホスホノ、を含んでいる。両性の界面活性剤は、当業者に知られており、そしてSurfactant Encyclopedia、Cosmetics & Toiletries、第104 巻、第2号、p. 69-71(1989)(その全体を引用することによって本明細書の内容とする)に記載されている2つの主要な分類に、更に再分割することができる。第1の分類は、アシル/ジアルキルエチレンジアミン誘導体(例えば、2−アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン誘導体)およびそれらの塩を含んでいる。第2の分類は、N−アルキルアミノ酸およびそれらの塩を含んでいる。幾つかの両性の界面活性剤は、両方の分類中に合致すると考えることができる。
【0090】
両性の界面活性剤は、当業者に知られている方法によって合成することができる。例えば、2−アルキルヒドロキシエチルイミダゾリンは、長鎖カルボン酸(または誘導体)のジアルキルエチレンジアミンとの縮合および閉環によって合成することができる。市販の両性界面活性剤は、次いで、アルキル化、例えば、クロロ酢酸または酢酸エチルでの、アルキル化によるイミダゾリン環の加水分解および開環によって、誘導体化される。アルキル化の間に、1つもしくは2つのカルボキシ−アルキル基が反応して、第3級アミンを形成し、そして別のアルキル化剤とのエーテル結合が、別の第3級アミンを生じる。
【0091】
本発明において用途を有する長鎖のイミダゾール誘導体は、通常は下記の一般式を有している。
【0092】
【化11】
【0093】
式中、Rは、約8〜18個の炭素原子を含む、非環式の疎水基であり、そしてMは、陽イオンで、陰イオンの電荷を中性化する、通常はナトリウムである。本発明の組成物中で用いることができる、市販の著名なイミダゾリンから誘導された両性イオンとしては、例えば、ココアンホプロピオネート、ココアンホカルボキシ−プロピロネート、ココアンホグリシネート、ココアンホカルボキシ−グリシネート、ココアンホプロピル−スルホネート、およびココアンホカルボキシプロピオン酸が挙げられる。アンホカルボン酸は、脂肪族イミダゾリンから生成することができ、そこでアンホジカルボン酸のジカルボン酸官能基は、二酢酸および/またはジプロピオン酸である。
【0094】
上記に記載したカルボキシメチル化化合物(グリシネート)は、しばしばベタインと称されている。ベタインは、本明細書で、下記に両性イオン(Zwitterion)界面活性剤の表題の章で議論される、両性イオンの特定の分類である。
【0095】
長鎖N−アルキルアミノ酸は、RNH(ここでR=C−C18直鎖もしくは分岐鎖アルキル、脂肪族アミン)と、ハロゲン化カルボン酸との反応によって容易に調製することができる。アミノ酸の第1級アミノ基のアルキル化は、第2級および第3級アミンをもたらす。アルキル置換基は、更なるアミノ基を有することができ、それは2つ以上の反応性窒素中心を提供する。最も市販されているN−アルキルアミノ酸は、ベータ−アラリンまたはベータ−N(2−カルボキシエチル)アラニンのアルキル誘導体である。本発明において用途を有する市販のN−アルキルアミノ酸両性体の例としては、アルキルベータ−アミノジプロピオンネート、RN(CCOOM)およびRNHCCOOMが挙げられる。1つの態様では、Rは、約8〜約18個の炭素原子を含む、非環式の疎水性基であることができ、そしてMは陽イオンであり、陰イオンの電荷を中性化する。
【0096】
好適な両性界面活性剤としては、ココナツ製品、例えばココナツオイルまたはココナツ脂肪酸から誘導されたものが挙げられる。更なる好適なココナツ由来の界面活性剤は、それらの構造の一部としてエチレンジアミン部分、アルカノールアミド部分、アミノ酸部分、例えば、グリシンまたはそれらの組み合わせ;ならびに約8〜18個(例えば、12個)の炭素原子の脂肪族置換基を含む。そのような界面活性剤もまた、アルキルアンホジカルボン酸と考えることができる。それらの両性界面活性剤は、C12−アルキル−C(O)−NH−CH−CH−N(CH−CH−CONa)−CH−CH−OHまたはC12−アルキル−C(O)−N(H)−CH−CH−N(CH−CONa)−CH−CH−OH、で表される化学構造を含むことができる。二ナトリウムココアンホジプロピオネートは、1つの好適な両性界面活性剤であり、そしてRhodia Inc.(Cranbury、ニュージャージー州)からMiranol(商標)FBSの商品名で、商業的に入手可能である。二ナトリウムココアンホ二酢酸の化学名の、他の好適なココナツ由来の両性界面活性剤が、Rhodia Inc.(Cranbury、ニュージャージー州)からMirataine(商標)JCHAの商品名で販売されている。両性の分類およびそれらの界面活性剤の種の典型的な一覧表が、1975年12月30日発行の、LaughlinおよびHeuringの米国特許第3,929,678号明細書中に与えられている。更なる例が、Schwartz、PerryおよびBerch、「Surface Active Agents and Detergents」、第I巻および第II巻(その全体を参照することによって本明細書の内容とする)に与えられている。
【0097】
<カチオン性界面活性剤>
界面活性物質は、その分子のヒドロトロープ部分の電荷が正である場合には、カチオン性であると分類される。ヒドロトロープが、pHが中性近傍もしくはそれより低くされない限り、電荷を有しないが、しかしながらそれが次いでカチオン性になる界面活性剤(例えば、アルキルアミン)もまた、この群に含まれる。理論上は、カチオン性界面活性剤は、「オニウム」構造、RnXを含む元素のいずれかの組み合わせから合成することができ、そして窒素(アンモニウム)以外、例えば、リン(ホスホニウム)およびイオウ(スルホニウム)の化合物を含むことができる。実際には、カチオン性界面活性剤の分野は、窒素含有化合物が支配的であり、それはおそらくは、窒素を含む陽イオンは合成経路が単純かつ直接的であり、そして製品の高い収率を与え、それがそれらを高価でないものにするためである。
【0098】
カチオン性界面活性剤は、少なくとも1つの長炭素鎖の疎水性基および、少なくとも1つの正に荷電した窒素を含む化合物を、好ましくは含んでおり、より好ましくは表している。長炭素鎖基は、窒素原子に、単純な置換によって直接に、またはより好ましくは、アルキルアミンおよびアミド中の、いわゆる中断する橋渡しする官能基もしくは複数の官能基によって間接的に、結合されていることができる。そのような官能基は、その分子をより親水性に、および/またはより水分散性に、共界面活性剤混合物によってより容易に水に可溶化、および/または水溶性にすることができる。向上した水溶性のためには、更なる第1級、第2級または第3級アミノ基を導入することができ、またはアミノ窒素は、低分子量のアルキル基で第四級化することができる。更には、窒素は、種々の程度の不飽和の分岐もしくは直鎖の部分の、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環式の環の一部であることができる。更に、カチオン性界面活性剤は、2つ以上のカチオン性窒素原子を有する複雑な結合を含むことができる。
【0099】
アミンオキシド、両性体(amphoterics)および両性イオンとして分類される界面活性剤化合物は、それ自体が、中性近傍から酸性のpHの溶液中で典型的にカチオン性であり、そして界面活性剤の分類が重なり合う可能性がある。ポリオキシエチル化されたカチオン性界面活性剤は、通常はアルカリ性溶液中ではノニオン性界面活性剤のように、そして酸性溶液中ではカチオン性界面活性剤のように挙動する。最も単純なカチオン性アミン、アミン塩および第四級アンモニウム化合物は、下記のように概略的に描くことができる。
【0100】
【化12】
【0101】
式中、Rは、長いアルキル鎖を表し、R’、R’’、およびR’’’は、長いアルキル鎖またはより小さいアルキルもしくはアリール基または水素のいずれかであることができ、そしてXはアニオンを表す。アミン塩および第四級アンモニウム化合物は、それらの高度の水溶性のために、本発明の実際の使用に好ましい。大量の市販のカチオン性界面活性剤の大部分は、当業者に知られており、そして「Surfactant Encyclopedia」、Cosmetics & Toiletries、第104巻、第2号、p.86-96(1989)(その全体を参照することによって本明細書の内容とする)中に記載されている、4つの主要な分類および付加的な小群に更に分割できる。第1の分類はアルキルアミンおよびそれらの塩を含んでいる。第2の分類は、アルキルイミダゾリンを含む。第3の分類は、エトキシル化アミンを含んでいる。第4の分類は、第四級化物(quaternaries)、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンゼン塩、ヘテロ環式アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩など、を含んでいる。カチオン性界面活性剤は、本発明の組成物に有益である可能性がある種々の性質を有することが知られている。それらの望ましい性質としては、中性の、もしくは中性未満のpHの組成物の洗浄性、抗微生物効能、他の試薬との協同での増粘またはゲル化などを挙げることができる。本発明の組成物に有用なカチオン性界面活性剤としては、式RlmR2xYLZを有するものが挙げられ、ここでそれぞれのR1は、直鎖もしくは分岐のアルキルまたはアルケニル基を含む有機基であり、随意選択的に3つ以下のフェニルもしくはヒドロキシル基で置換されており、そして随意選択的に4つ以下の下記の構造でまたは、それらの構造の異性体もしくは混合物で中断されており、そして約8〜22個の炭素原子を含んでいる。
【化13】
R1基は、更に、12以下のエトキシ基を含むことができ、mは1〜3の数である。好ましくは、mが2である場合には、16個以上の炭素原子を有している分子中のR1基は1個を超えず、あるいはmが3である場合には、12個以上の炭素原子を有している分子中のR1基は1個を超えない。それぞれのR2は、1〜4個の炭素原子を含むアルキルもしくはヒドロキシアルキル基またはベンジル基であり、ベンジルである分子中のR2は1個を超えず、そしてxは0〜11、好ましくは0〜6の数である。Y基上の残りのいずれかの炭素原子の位置は、水素によって満たされている。Yは、以下の基、またはそれらの混合物であることができるが、それらには限定されない。
【0102】
【化14】
【0103】
好ましくは、Lは、1または2であり、Y基は、1〜約22この炭素原子を有する、R1およびR2類似体(好ましくはアルキレンまたはアルケニレン)から選択された部分、およびLが2である場合には、2つの遊離炭素単結合によって、分離されている。Zは、水溶性のアニオン、例えば、ハライド、スルフェート、メチルスルフェート、ヒドロキシド、またはナイトレートであり、特に好ましくはクロリド、ブロミド、ヨージド、スルフェートまたはメチルスルフェートアニオンであり、そのカチオン性成分の電気的な中性を与える数である。
【0104】
<両性イオン性(Zwitterionic)界面活性剤>
両性イオン性界面活性剤は、両性イオン(amphoteric)界面活性剤の小分類であると考えることができ、そしてアニオン性の電荷を含むことができる。両性イオン性界面活性剤は、第2級および第3級アミンの誘導体、ヘテロ環式第2級および第3級アミンの誘導体、または第4級アンモニウム、第4級ホスニウムもしくは第3級スルホニウム化合物の誘導体として大まかに記載することができる。典型的には、両性イオン性界面活性剤は、正に荷電した第4級アンモニウム、または場合によっては、スルホニウムもしくはホスホニウムイオン;負に荷電したカルボキシル基;ならびにアルキル基を含んでいる。両性イオンは、通常はカチオン性およびアニオン性基を含み、それらはその分子の等電領域ではほぼ同等程度にイオン化し、そしてそれが、正−負電荷中心の間に、「分子内塩」引力を生じさせることができる。そのような両性イオン性の合成界面活性剤の例としては、脂肪族第4級アンモニウム、ホスホニウム、およびスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、そこでは脂肪族基は、直鎖または分岐していてよく、そして脂肪族置換基の1つは、8〜13個の炭素原子を含み、そして1つは、アニオン性の水溶性化基、例えばカルボキシ、スルホネート、ホスフェート、もしくはホスホネートを含む。
【0105】
ベタインおよびスルタイン界面活性剤は、ここでの使用のための例示的な両性イオン性界面活性剤である。それらの化合物の一般式は、以下のとおりである。
【0106】
【化15】
【0107】
式中、Rは、0〜10のエチレンオキシド部分および0〜1のグリセリル部分を含む、8〜18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、またはヒドロキシアルキル基を含み;Yは、窒素、リンおよびイオウ原子からなる群から選ばれ;Rは、1〜3個の炭素原子を含むアルキルまたはモノヒドロキシアルキル基であり;xは、Yがイオウ原子である場合には1であり、そしてYが窒素もしくはリン原子である場合には2であり、Rは、1〜4個の炭素原子のアルキレンまたはヒドロキシアルキレンまたはヒドロキシアルキレンであり、そしてZは、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスホネート、およびホスフェート基からなる群から選ばれる基である。
【0108】
上記に列挙した構造を有する両性イオン性界面活性剤の例としては、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−N−オクタデシルアンモニオ]−ブタン−1−カルボキシレート;5−[S−3−ヒドロキシプロピル−S−ヘキサデシルスルホニオ]−3−ヒドロキシペンタン−1−スルフェート;3−[P,P−ジエチル−P−3,6,9−トリオキサテトラコサンホスホニオ]−2−ヒドロキシプロパン−1−ホスフェート;3−[N,N−ジプロピル−N−3−ドデコキシ−2−ヒドロキシプロピル−アンモニオ]−プロパン−1−ホスホネート;3−(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオ)−プロパン−1−スルホネート;3−(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオ)−2−ヒドロキシ−プロパン−1−スルホネート;4−[N,N−ジ(2(2−ヒドロキシエチル)−N(2−ヒドロキシドデシル)アンモニオ)−ブタン−1−カルボキシレート;3−[S−エチル−S−(3−ドデコキシ−2−ヒドロキシプロピル)スルホニオ]−プロパン−1−ホスフェート;3−[P,P−ジメチル−P−ドデシルホスホニオ]−プロパン−1−ホスホネート;およびS[N,N−ジ(3−ヒドロキシプロピル)−N−ヘキサデシルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−ペンタン−1−スルフェートが挙げられる。前記の洗浄剤界面活性剤中に含まれるアルキル基は、直鎖もしくは分岐そして飽和もしくは不飽和であることができる。
【0109】
本発明の組成物における使用のために好適な両性イオン性界面活性剤としては、下記の一般的な構造のベタインが挙げられる。
【0110】
【化16】
【0111】
それらの界面活性剤ベタインは、典型的には極端なpHで(at pH extremes)強いカチオン性もしくはアニオン性を示さず、それらは、それらの等電の範囲では低減された水溶性を示さない。「外的」第4級アンモニウム塩とは異なり、ベタインは、陰イオンと相溶性である。好適なベタインの例としては、ココナツアシルアミドプロピルジメチルベタイン;ヘキサデシルジメチルベタイン;C12−14アシルアミドプロピルベタイン;C8−14アシルアミドヘキシルジエチルベタイン;4−C14−16アシルメチルアミドジエチルアンモニオ−1−カルボキシブタン;C16−18アシルアミドジメチルベタイン;C12−16アシルアミドペンタンジエチルベタイン;およびC12−16アシルメチルアミドジメチルベタインが挙げられる。
【0112】
本発明に有用なスルタインとしては、式(R(RSO3−を有する化合物が挙げられ、ここでRは、C〜C18ヒドロカルビル基であり、それぞれのRは、典型的には独立してC−Cアルキル、例えば、メチル、そしてRはC−Cヒドロカルビル基、例えばC−Cアルキレンまたはヒドロキシアルキレン基である。
【0113】
両性イオン性の分類の典型的な一覧表およびそれらの界面活性剤の種類が、米国特許第3,929,678号明細書中に与えられており、その全てを参照することによって本明細書の内容とする。更なる例が、Schwartz、PerryおよびBerch、「Surface Active Agents and Detergents」、第I巻および第II巻に与えられており、その全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0114】
<洗浄剤ビルダー>
本組成物は、1種もしくは2種以上のビルダー剤を含むことができ、これはキレート化剤または金属イオン封鎖剤(例えば、ビルダー)とも称され、縮合リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、ホスホン酸塩、アミノカルボン酸および/またはポリアクリレートが挙げられるが、それらには限定されない。一般に、キレート化剤は、天然水中に通常見られる金属イオンを、その金属イオンが、洗浄組成物の他の洗浄成分の作用を妨害することを防止するように、配位することができる(すなわち、ビルディング)分子である。キレート化剤もしくは金属イオン封鎖剤でもあることができるビルダーの添加の好ましい水準は、約0.1質量%〜約70質量%、約1質量%〜約60質量%、または約1.5質量%〜約50質量%の範囲である。固体組成物が濃縮物として提供される場合には、その濃縮物は、約1質量%〜約60質量%の範囲、約3質量%〜約50質量%の範囲、および約6質量%〜約45質量%のビルダーを含むことができる。ビルダーの更なる範囲としては、約3質量%〜約20質量%の範囲、約6質量%〜約15質量%の範囲、約25質量%〜約50質量%の範囲、約35質量%〜約45%質量%の範囲が挙げられる。
【0115】
縮合リン酸塩の例としては、ナトリウムとカリウムのオルトリン酸塩、ナトリウムとカリウムのピロリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウム、およびヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられるが、それらには限定されない。また、縮合リン酸塩は、限定された範囲で、本組成物中に存在する遊離水を水和水として固定することによって、本組成物の固形化を援けることができる。
【0116】
ホスホン酸塩の例としては、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、CHC(OH)[PO(OH);アミノトリ(メチレンホスホン酸)、N[CHPO(OH);アミノトリ(メチレンホスホン酸塩)ナトリウム塩(ATMP)、N[CHPO(ONa);2−ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)、HOCHCHN[CHPO(OH);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、(HO)POCHN[CHCHN[CHPO(OH);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸塩)、ナトリウム塩(DTPMP)、C(28−x)Na15(x=7);ヘキサメチレンジアミン(テトラメチレンホスホン酸塩)、カリウム塩、C10(28−x)12(x=6);ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(ペンタメチレンホスホン酸)、(HO)POCHN[(CHN[CHPO(OH);およびリン酸、HPO、が挙げられるが、それらには限定されない。好ましいホスホン酸塩としては、PBTC、HEDP、ATMPおよびDTPMPがある。ホスホン酸塩が加えられた時に中和に因る熱もしくはガスが少ししか、または全く発生しないように、中和された、またはアルカリ性ホスホン酸塩、あるいは、混合物中に加えられる前のホスホン酸塩のアルカリ源との組み合わせ、が好ましい。しかしながら、1つの態様では、本組成物は、リンを含まない。
【0117】
NTAを少ししか含まない、または全く含まない有用なアミノカルボン酸材料としては、N−ヒドロキシエチルアミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、グルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、イミノジコハク酸(IDS)、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸(HIDS)およびカルボン酸置換基を備えたアミノ基を有する、他の同様の酸もしくはそれらの塩、が挙げられるが、それらには限定されない。しかしながら、1つの態様では、本組成物は、アミノカルボキシレートを含まない。
【0118】
<配合物>
本発明による洗浄剤組成物は、固体、液体、粉末、ペースト、ゲルなどに配合することができる。
【0119】
固体洗浄剤組成物は、本発明による使用のためにある種の商業的な利益を提供する。例えば、濃縮された固体洗浄剤組成物の使用は、より嵩高い液体製品と比較して、緻密な固体の形態の結果として、輸送コストを低減する。本発明の特定の態様では、固体製品は、多数回使用の固体、例えばブロックまたは多数のペレットの形態で提供することができ、そして多数回のサイクルもしくは所定の数の分配サイクルに対して、洗浄剤組成物の水性使用溶液を発生するように、繰り返し用いることができる。特定の態様では、固体の洗浄剤組成物は、約5グラム超、例えば約5グラム〜10キログラムの質量を有することができる。特定の態様では、多数回使用の形態の固体の洗浄剤組成物は、約1キログラム〜約10キログラム超の質量を有している。
【0120】
<使用方法>
本発明の組成物は、種々の用途および方法での使用、例えばアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属炭酸塩洗浄剤が好適であるいずれかの用途に好適である。本発明の方法は、硬水スケールの表面上への堆積を防止することが必要である、アルカリ性洗浄剤を用いる方法に、特に好適である。更に、本発明の方法は、多くの表面上への硬水の堆積を制御するために、極めて好適である。本発明の方法は、処理された基材表面上への中度ないしは重度の堆積を防止して、その表面の審美的な外観を有利に向上させる。特定の態様では、硬水スケールの堆積の防止が必要な表面としては、例えば、ブラスチック、金属および/またはガラス表面が挙げられる。
【0121】
本発明の方法は、硬水スケール、例えば、炭酸カルシウムの、洗浄剤組成物と接触する硬質表面上への形成、沈殿および/または堆積を有利に低減する。1つの態様では、洗浄剤組成物は、硬水スケールの、物品、例えば、グラス、皿、銀器などへの形成、沈殿および/または堆積の防止のために用いられる。本発明による洗浄剤組成物は、硬水の存在下で、洗浄剤組成物使用溶液の高度のアルカリ性にもかかわらず、硬水スケールの形成、沈殿および/または堆積のそのような防止を有利に提供する。
【0122】
本発明による洗浄剤組成物を用いる使用方法は、施設用の器物洗浄に特に好適である。器物洗浄用途の例示的な開示が、米国特許出願第13/474,771号、第13/474,780号、および第13/112,412号明細書中に説明されており、本明細書中に引用された全ての参照文献を含めて、その全体を参照することによって、本明細書の内容とする。本方法は、いずれかの消費者用食器洗い機または施設用食器洗い機で行うことができ、例えば、米国特許第8,092,613号明細書中に記載されたものがあり、全ての図および図面を含めて、その全てを参照することによって本明細書の内容とする。食器洗い機の限定するものではない幾つかの例としては、ドア式機(door machines)もしくはフード式機(hood machines)、コンベヤ式機(conveyer machines)、カウンター下機(undercounter machines)、グラス洗浄機、フライト機(flight machines)、ポットおよびパン機(pot and pan machines)、器具洗浄機、および消費者用食器洗い機が挙げられる。食器洗い機は、単一タンクまたは複数タンク機のいずれかであることができる。
【0123】
ドア式食器洗い機(door dish machine)はまた、フード式食器洗い機(hood dish machine)とも称され、汚れた食器類は、ラック上に置かれ、そしてそのラックは次いで、食器洗い機中に動かされる、市販の食器洗い機を表している。ドア式食器洗い機は、一度に1つまたは2つのラックを洗浄することができる。そのような機械では、ラックは静止しており、そして洗浄およびすすぎアームが動く。ドア式機は、2組のアーム、一式の洗浄アームとすすぎアーム、または一式のすすぎアーム(複数)を含んでいる。
【0124】
ドア式機は、高温および低温機であることができる。高温機では、食器類は熱水によって除菌される。低温機では、食器類は、化学的殺菌剤によって除菌される。ドア機は、再循環機あるいは廃棄および充填機(dump and fill machine)であることができる。再循環機では、洗浄サイクルの間で、洗浄剤溶液は再使用または「再循環」される。洗浄剤溶液の濃度は、洗浄サイクルの間で、適切な濃度が維持されるように調整される。廃棄および充填機では、洗浄溶液は、洗浄サイクルの間で再使用されない。新たな洗浄剤溶液が、次の洗浄サイクルの前に加えられる。ドア式機の限定するものではない幾つかの例としては、Ecolab Omega HT、the Hobart AM- 14、the Ecolab ES-2000、the Hobart LT-1、the CMA EVA-200、American Dish Service L-3DWおよびHT-25、the Autochlor A5、the Champion D-HB、ならびにthe Jackson Tempstarが挙げられる。
【0125】
本洗浄剤組成物は、硬水を含めた種々の水源を用いる器物洗浄用途において、硬水スケールの堆積を防止するのに有効である。更に、本洗浄剤組成物は、産業用器物洗浄用途で典型的に用いられる温度範囲、例えば、洗浄工程の間で約150°F〜約165°F、そしてすすぎ工程の間で、約170°F〜約185°F、における使用に好適である。
【0126】
更に、本洗浄剤組成物の使用方法はまた、処理される表面上へ硬水残渣を残す塊の洗浄剤の使用を置き換えるCIPおよび/またはCOPプロセスに好適である。この使用方法は、工業規格が、処理された表面の品質に焦点を合わせるので、従って本発明の洗浄剤組成物によって与えられる硬水スケールの防止が望ましい、更なる用途に望ましい可能性がある。そのような用途としては、車両の手入れ、産業上の、病院の、および繊維製品のケアが挙げられるが、それらには限定されない。
【0127】
本洗浄剤組成物の使用の用途の更なる例としては、例えば、グリルおよびオーブン洗浄剤として有効なアルカリ性洗浄剤、器物洗浄用洗浄剤、洗濯用洗浄剤、洗濯用予浸剤、排水管洗浄剤、硬質表面洗浄剤、外科用器械洗浄剤、運搬用車両洗浄、車両洗浄剤、食器洗浄用予浸剤、食器洗浄用洗浄剤、飲料用機械洗浄機、コンクリート洗浄剤、建築物外装洗浄剤、金属洗浄剤、床仕上げ材剥離剤、脱脂剤ならびに焼付き汚れ除去剤が挙げられる。種々のそれらの用途においては、非常に高度のアルカリ性を有する洗浄用組成物は、最も望ましくそして効果的であるが、しかしながら、硬水スケールの蓄積によって引き起こされる損害は望ましくない。
【0128】
本発明による種々の使用方法は、ここに開示した質量%で、PSO誘導体、アルカリ性源および他の所望の成分(例えば、随意選択的なポリマーおよび/または界面活性剤)を組み合わせることによって、使用の前に、または使用の時点で形成することができる、本洗浄剤組成物の使用を必要とする。本洗浄剤組成物は、種々の配合で提供することができる。本発明の方法は、いずれかの開示された配合、例えば、液体、半固体および/または他の固体配合のいずれかを用いることができる。また、本発明の方法は、濃縮物ならびに/あるいは濃縮物の水溶液または分散体を構成する使用溶液を用いることができる。そのような使用溶液は、洗浄プロセスの間に、例えば器物洗浄プロセスの間に形成することができる。
【0129】
包装された固体洗浄剤組成物を用いる本発明の態様では、製品は、先ず、いずれかの適用可能な包装(例えば、フィルム)からの取り外しを必要とされる可能性がある。その後に、特定の使用方法によれば、本組成物は、分配装置中に直接に挿入されるか、および/または本発明による洗浄のための水源に与えることができる。そのような分配システムの例としては、例えば、米国特許第4,826,661号、第4,690,305号、第4,687,121号、第4,426,362号明細書、および米国再発行特許第32,763号、および第32,818号明細書が挙げられ、その全体を参照することによって本明細書の内容とする。理想的には、固体洗浄剤組成物は、本発明の装置中への固体製品の不正確な導入および分配を防ぐために、分配システムの特定の形状に密接に適合するように構成または生成される。
【0130】
特定の態様では、本洗浄剤組成物は、使用の前もしくは使用の時点で、水源と混合することができる。他の態様では、本洗浄剤組成物は、使用溶液の形成、および/または更なる希釈を必要とせず、そして更なる希釈なしで用いることができる。
【0131】
固体洗浄剤組成物を用いる本発明の態様では、水源は、洗浄剤組成物と接触して、固体洗浄剤、特には粉末を使用溶液に変換する。また、代替の固体洗浄剤組成物を使用溶液へと変換するのにより好適である、更なる分配システムを用いることができる。本発明の方法は、種々の固体洗浄剤組成物、例えば、押出成形されたブロック、または「カプセル」型の包装の使用を含んでいる。
【0132】
1つの態様では、分配器を、水を噴霧して(例えば、ノズルからのスプレイ・パータンで)、洗浄剤使用溶液を形成するように用いることができる。例えば、水を、本洗浄剤組成物を備えた装置または他の保持貯槽に向けて噴霧することができ、ここで水は、固体洗浄剤組成物と作用し合って、使用溶液を形成る。本発明の方法の特定の態様では、使用溶液は、本洗浄剤組成物の溶解された溶液が、本発明による使用のために分配されるまで、重力によって下方に滴下するように構成することができる。1つの態様では、使用溶液は、器物洗浄機の洗浄溶液中に分配することができる。
【0133】
本明細書中の全ての文献および特許出願は、本発明が関連する当業者の水準を表している。全ての文献および特許出願は、それぞれの個々の文献および特許出願を、具体的にそして個々に参照することによって本明細書の内容としたのと同様に、参照することによって本明細書の内容とする。
【実施例】
【0134】
本発明の態様を、以下の限定するものではない例の中で更に規定する。それらの例は、本発明の特定の態様を示しているけれども、例示のためだけに与えられていることが理解されなければならない。上記の議論およびそれらの例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確かめることができ、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の用法および条件に適合するように、本発明の態様の種々の変更および修正を行うことができる。従って、本発明の態様の種々の変更は、本明細書中に示され、そして記載されたものに加えて、前述の説明から当業者には明らかであろう。また、そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【0135】
例1
硬水膜の堆積試験を、100サイクルのグラスの、ライトボックス評価を用いて行った。100サイクルの実験を、6個の10オンスのLibbyグラスを用い、Hobart AM-15器物洗浄機で、17グレインの水(硬水源)を用いて行った。最初に、全ての膜および異物をグラス表面から完全に取り除くように、洗浄サイクルを用いて、グラスを準備した。
【0136】
テーブル1に示された例の組成物を評価した。用いた対照は、商業的に入手可能な腐蝕防止のアルカリ金属洗浄剤組成物(Ecolab, Inc.から入手可能なSolid Power XL)(対照1)、および75%の苛性アルカリ(水酸化ナトリウム)/25%の水、のアルカリ性洗浄剤(対照2)であった。
【0137】
【表3】
【0138】
器物洗浄機制御器を、表示された量の洗浄剤を洗浄タンク中に自動的に分配するように設定した。6個の清澄なグラス(G=ガラス製タンブラー)を、Raburnラック中に置き(配置は、下記の図を参照)、そしてこのラックを食器洗い機内部に置いた。
【0139】
【表4】
【0140】
器物洗浄機は、器物洗浄機中に、洗浄剤組成物を、所望の濃度を得て、そして初期の濃度を維持するように、自動的に分配した。グラスは一晩乾燥されて、そして次いで強力な光源を用いて、膜の堆積を評価した。
【0141】
ライトボックス試験は、100サイクルの試験で行ったグラスの評価を標準化する。ライトボックス試験は、写真用カメラ、ライトボックス、光源および輝度計(light meter)を含む光学系の使用に基づいている。この系は、コンピュータプログラム(Spot Advance and Image Pro Plus)によって制御されている。100サイクル試験後のグラスを評価するために、それぞれのグラスを、グラスの側面を下にしてライトボックスに置き、そして光源の強度を、輝度計を用いて所定の値に調整した。100サイクル試験の条件は、コンピュータの中に保存した。グラスの写真をカメラで撮り、そしてプログラムによる解析のために、コンピュータに保存した。その写真を、グラスの形状に基づいて、グラスの頂部からグラスの底部への膜上の暗さの勾配を避けるために、グラスの上半分を用いて解析した。
【0142】
一般に、より低いライトボックスの等級は、より多くの光がそのグラスを通過することができることを示している。従って、ライトボックスの等級がより低ければ低いほど、その組成物は、グラスの表面上のスケールの生成を防止するのにより効果的であった。清澄な、未使用のグラスのライトボックス評価は、約12000のライトボックス得点を有しており、これは、6個のグラスの合計の72000の得点に相当する。テーブル2に、ライトボックス試験の結果を示している。
【0143】
【表5】
【0144】
これらの結果は、PSO誘導体およびアルカリ性のアルカリ金属源を組み合わせた、本発明による例1〜5は、対照2の配合よりも有意に良好なライトボックス得点を有していることを示している。更には、本発明によれば、例6に示されているように、洗浄剤組成物の配合は、いずれかの付加的な界面活性剤および/またはポリマーの含有を必要としない。
【0145】
例2
本発明による洗浄剤組成物の洗浄有効性を、7サイクルの汚れ除去および再付着防止実験を用いて評価した。テーブル3に示した例の組成物を、商業的に入手可能な対照(Ecolab, Inc.から入手可能なSolid Power XL)と比較して評価した。
【0146】
【表6】
【0147】
組成物の、ガラスおよびプラスチックを洗浄する能力を試験するために、12個のLibby耐熱ガラス製タンブラーおよび4個のプラスチック製タンブラーを用いた。ガラス製タンブラーは、使用の前に洗浄した。新しいプラスチック製タンブラーを、それぞれの実験に用いた。
【0148】
ビーフシチューおよびホットポイント汚れの50/50の組合わせを用いて、食品汚れ溶液を調製した。この汚染物質は、2缶のDinty Mooreビーフシチュー(1360グラム)、1缶の大型缶のトマトソース(822グラム)、15.5本のBlue Bonnetマーガリン(1746グラム)および粉末化された牛乳(436.4グラム)を含んでいた。
【0149】
食器洗い機を17グレインの水で満たした後に、ヒーターを作動させた。最終的なすすぎ温度を約180°Fに調整した。ガラス製およびプラスチック製タンブラーを、これらのグラスを、1:1(体積比)のCampbellのチキンスープのクリーム:Kempの全乳の混合物中で、3回転がすことによって汚した。これらのグラスを、次いで、約160°Fのオーブン中に約8分間置いた。これらのグラスが乾燥されている間に、食器洗い機に、約120グラムの食品汚れ溶液を注入したが、これは液溜め中に約2000ppmの食品汚れに相当する。
【0150】
汚れたガラス製およびプラスチック製タンブラーを、Raburnラックに置き(下記の図の配置を参照;P=プラスチック製タンブラー;G=ガラス製タンブラー)、そしてこのラックを食器洗い機の内部に置いた。タンブラーの最初の2つの縦欄は、汚れの除去を試験し、そしてタンブラーの次の2つの縦欄は、再堆積を試験した。
【0151】
【表7】
【0152】
次いで、食器洗い機を始動し、そして自動サイクルを作動させた。サイクルが終了した時に、ガラス製およびプラスチック製タンブラーの上部を乾燥したタオルで拭いた。汚れ除去を試験されているガラス製およびプラスチック製タンブラーは、取り出され、そしてスープ/牛乳の汚染手順を繰り返した。再堆積のガラス製およびプラスチック製タンブラーは、取り出さなかった。それぞれのサイクルの初めに、適切な量の洗浄剤および食品汚れを洗浄タンクに加えて、すすぎ希釈液とした。汚染および洗浄工程は、7サイクル繰り返した。
【0153】
ガラス製およびプラスチック製タンブラーは、次いでCommassie Brilliant Blue R染色、それに続く水性の酢酸/メタノール溶液での脱染を用いて、タンパク質堆積を等級付けした。Commassie Brilliant Blue R染色は、1.25gのCommassie Brilliant Blue R染料を、45mLの酢酸および455mLの、蒸留水中の50%メタノールと混合することによって調製した。脱染溶液は、蒸留水中の、45%メタノールおよび10%酢酸からなっていた。脱染の後に、ガラス製およびプラスチック製タンブラー上に残るタンパク質の量を、目視で、1〜5に等級付けした。等級1は、脱染の後にタンパク質が残っていなかったことを表す。等級2は、脱染の後に、不規則な面積(かろうじて知覚できる)がタンパク質で被覆されていたことを表す。等級3は、脱染の後に、表面の約四分の一から半分がタンパク質で被覆されていたことを表す。等級4は、脱染の後に、ガラス/プラスチックの表面の半分から四分の三がタンパク質で被覆されていたことを表す。等級5は、脱染の後に、全体の表面がタンパク質に被覆されていたことを表す。
【0154】
汚れの除去を試験したガラス製タンブラーの等級付けを平均して、ガラス表面からの平均の汚れ除去等級を定め、そして汚れ除去を試験したプラスチック製タンブラーの等級付けを平均して、プラスチック表面からの平均の汚れ除去等級を定めた。同様に、再堆積を試験したガラス製タンブラーの等級付けを平均して、ガラス表面の平均再堆積の等級を定め、そして再堆積を試験したプラスチック製タンブラーの等級付けを平均して、プラスチック表面の平均の再堆積の等級を定めた。
【0155】
結果を、テーブル4Aおよび4Bに示し、本発明による洗浄剤組成物が、市販の製品に対して、少なくとも実質的に同等の洗浄有効性を与え、そして種々の態様では、優れた有効性を与えることを示している。
【0156】
【表8】
【0157】
【表9】
【0158】
上記に述べた本発明から、本発明は多くの方法で変更することができることが明らかである。そのような変更は、本発明の精神および範囲のからの逸脱とは考えられず、そして全てのそのような変更は、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)ホスフィノコハク酸湯導体;および、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩、および/またはアルカリ金属ケイ酸塩を含むアルカリ性源、
を含んでなる洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物の使用溶液が、約9〜12.5の範囲のpHを有する、洗浄剤組成物。
(2)水溶性ポリマーを更に含む、(1)記載の組成物。
(3)前記水溶性ポリマーが、ポリカルボン酸および疎水性に変性されたポリカルボン酸からなる群から選択される、(2)記載の組成物。
(4)ノニオン性界面活性剤を更に含む、(1)記載の組成物。
(5)前記ノニオン性界面活性剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの組み合わせを含む、(4)記載の組成物。
(6)前記ホスフィノコハク酸誘導体が、約1:1〜20:1のコハク酸のリンに対する比率を有する、少なくとも10モル%の付加物を含む、(1の組成物。
(7)前記ホスフィノコハク酸誘導体が、ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物の組み合わせである、(1)記載の組成物。
(8)前記ホスホノコハク酸(I)ならびに、モノ−(II)、ビス−(III)およびオリゴマー(IV)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式、
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
式中、Mは、H、Na、K、NH、およびそれらの混合物からなる群から選択され、mとnの和は、2よりも大きい、
を有する、(7)記載の組成物。
(9)前記使用溶液が、約100〜1500ppmのアルカリ性源、約5〜500ppmのホスフィノコハク酸誘導体を含み、かつ約9〜12.5の範囲のpHを有する、(1)記載の組成物。
(10)ホスホノコハク酸ならびにモノ−、ビス−およびオリゴマーホスフィノコハク酸付加物を含むホスフィノコハク酸誘導体;
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩、および/またはアルカリ金属ケイ酸塩を含むアルカリ性源;ならびに、
界面活性剤、
を含んでなる洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物の使用溶液が、約9〜12.5の範囲のpHを有する、洗浄剤組成物。
(11)前記界面活性剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの組み合わせを含むノニオン性界面活性剤である、(10)記載の組成物。
(12)前記ホスホノコハク酸(I)ならびに、モノ−(II)、ビス−(III)およびオリゴマー(IV)ホスフィノコハク酸付加物が下記の式、
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
式中、Mは、H、Na、K、NH、およびそれらの混合物からなる群から選択され、mとnの和は、2よりも大きい、
を有する、(11)記載の組成物。
(13)前記組成物が、約1〜90質量%のアルカリ性源、約0.01〜40質量%のホスフィノコハク酸誘導体、および約0.1〜40質量%のノニオン性界面活性剤を含む、(10)記載の組成物。
(14)前記洗浄剤組成物使用溶液が、約100〜1500ppmのアルカリ性源、約1〜500ppmのホスフィノコハク酸誘導体、約1〜50ppmのノニオン性界面活性剤を含み、かつ約9〜12.5のpHを有する、(13)記載の組成物。
(15)前記組成物が、約10〜80質量%のアルカリ性源、約1〜20質量%のホスフィノコハク酸誘導体、および約1〜10質量%のノニオン性界面活性剤を含む、(10)記載の組成物。
(16)前記ホスフィノコハク酸誘導体が、約1:1〜20:1のコハク酸のリンに対する比率を有する、少なくとも10モル%の付加物を含む、(10の組成物。
(17)処理される表面上への硬水スケールの堆積を防止しながら、基材表面へ、洗浄剤組成物を適用することを含んでなる、洗浄方法であって、該洗浄剤組成物は、
ホスフィノコハク酸ならびに、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属メタケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれたアルカリ性源を含み、かつ、該洗浄剤組成物は、該表面上での硬水スケールの形成、沈殿および/または堆積を防止するのに有効である、方法。
(18)前記表面が、プラスチック、金属および/またはガラス表面である、(17)記載の方法。
(19)前記使用溶液が、器物洗浄機の内部で生成される、(17)記載の方法。
(20)前記洗浄剤組成物の使用溶液を生成させる工程を更に含み、該洗浄剤使用溶液が、約9〜12.5の範囲のpHを有する、(17)記載の方法。