特許第6466872号(P6466872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6466872
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】通信回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/00 20060101AFI20190128BHJP
   H04B 1/44 20060101ALI20190128BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   H04B1/00 250
   H04B1/44
   H03H7/46 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-39233(P2016-39233)
(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公開番号】特開2017-158025(P2017-158025A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】國司 侑吾
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−532378(JP,A)
【文献】 特表2014−535193(JP,A)
【文献】 特表2014−526847(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/104011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/00
H03H 7/46
H04B 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数に設定された第1の信号と、第2の周波数に設定された第2の信号とが個別に入力され、前記第1の信号の経路を前記第1の周波数に対応する経路に切り替え、前記第2の信号の経路を前記第2の周波数に対応する経路に切り替える第1のスイッチ回路と、
前記第1のスイッチ回路から出力された前記第1の信号の経路を、第1のアンテナと第2のアンテナのいずれか一方のアンテナに接続可能な経路に切り替えるとともに、前記第1のスイッチ回路から出力された前記第2の信号の経路を、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナの他方のアンテナに接続可能な経路に切り替える第2のスイッチ回路と、
前記第1のスイッチ回路と前記第2のスイッチ回路との間に設けられ、前記第1の信号および前記第2の信号の経路と、前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナでそれぞれ受信された受信信号の経路と、を切り替える複数のデュプレクサと、
を備える通信回路。
【請求項2】
前記第1のスイッチ回路は、
前記第1の信号が入力される第1の端子と、
前記第2の信号が入力される第2の端子と、
前記第1の信号と前記第2の信号が個別に出力される複数の第3の端子と、
前記第1の端子と前記複数の第3の端子との間における前記第1の信号の経路に直列接続されるとともに、前記第2の端子と前記複数の第3の端子との間における前記第2の信号の経路に直列接続された複数の第1のスイッチング素子と、を有し、
前記第2のスイッチ回路は、
前記デュプレクサを介して前記複数の第3の端子に個別に接続されている複数の第4の端子と、
前記第1のアンテナと接続される第5の端子と、
前記第2のアンテナと接続される第6の端子と、
前記複数の第4の端子と前記第5の端子の間と、前記複数の第4の端子と前記第6の端子の間における、前記第1の信号の経路と前記第2の信号の経路にそれぞれ直列に接続された複数の第2のスイッチング端子と、を有する、請求項1に記載の通信回路。
【請求項3】
複数の第4の端子が前記複数の第3の端子のいずれにも接続されていない端子も含み、当該端子には、第3の周波数に設定された第3の信号が前記第1のスイッチ回路を介することなく入力される、請求項2に記載の通信回路。
【請求項4】
前記複数の第3の端子のうちの一部の端子が、前記第1の端子と前記第2の端子の両方に接続され、前記複数の第3の端子のうちの残りの端子が、前記第1の端子または前記第2の端子の一方に接続され、
前記複数の第4の端子のうちの一部の端子が、前記第5の端子と前記第6の端子の両方に接続され、前記複数の第4の端子のうちの残りの端子が、前記第5の端子または前記第6の端子の一方の端子に接続されている、請求項2に記載の通信回路。
【請求項5】
前記第1のスイッチ回路と前記第2のスイッチ回路が、同じ基板上に設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の通信回路。
【請求項6】
前記基板が、SOI基板である、請求項5に記載の通信回路。
【請求項7】
前記複数の第3の端子は、前記複数の第4の端子のいずれにも接続されていない端子を含み、当該端子から出力された前記第1の信号または前記第2の信号は、第3のアンテナへ伝送される、請求項2に記載の通信回路。
【請求項8】
前記第1のスイッチ回路と前記第2のスイッチ回路とを制御する制御回路をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載の通信回路。
【請求項9】
第1の周波数の第1の信号が入力される第1の端子と、第2の周波数の第2の信号が入力される第2の端子と、前記第1の信号と前記第2の信号が個別に出力される複数の第3の端子と、を有し、前記第1の端子及び前記第2の端子と、前記複数の第3の端子との接続を切り替える第1のスイッチ回路と、
前記複数の第3の端子に各々接続される複数の第4の端子と、第1のアンテナに接続可能な第5の端子と、第2のアンテナに接続可能な第6の端子と、を有し、前記複数の第4の端子と、前記第5の端子及び前記第6の端子との接続を切り替える第2のスイッチ回路と、
前記複数の第3の端子と前記複数の第4の端子との間に設けられ、前記第1の信号および前記第2の信号の経路と、前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナでそれぞれ受信された受信信号の経路と、を切り替える複数のデュプレクサと、
を有する通信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信機器では、近年、データトラフィックの増大に対処するため、キャリアアグリゲーションが利用されている。キャリアアグリゲーションは、異なるバンドで同時に無線通信を行う技術の一つである。キャリアアグリゲーションに対応した無線通信機器には、種々の通信回路が設けられ、その一つとして、例えば、アンテナ側の送受信端回路であるフロントエンド回路がある。
【0003】
キャリアアグリゲーションは、一般的に、互いに離れたバンドを利用しているが、将来的には、近接したバンドの利用が想定されている。しかし、キャリアアグリゲーションに利用される近接バンドは、各国や通信事業者の様々な事情に細分化されているので、近接バンドの組み合わせは非常に多くなる。例えば、フロントエンド回路が、近接バンドの組み合わせ毎に設けられると、回路が大型化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5043690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、近接バンドの通信の多くの組み合わせに対応する小型な通信回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る通信回路は、第1のスイッチ回路と、第2のスイッチ回路と、を備える。第1のスイッチ回路には、第1の周波数に設定された第1の信号と、第2の周波数に設定された第2の信号とが個別に入力され、第1のスイッチ回路は、第1の信号の経路を第1の周波数に対応する経路に切り替え、第2の信号の経路を第2の周波数に対応する経路に切り替える。第2のスイッチ回路は、第1のスイッチ回路から出力された第1の信号の経路を、第1のアンテナと第2のアンテナのいずれか一方のアンテナに接続可能な経路に切り替えるとともに、第1のスイッチ回路から出力された第2の信号の経路を、第1のアンテナと第2のアンテナの他方のアンテナに接続可能な経路に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る通信回路の構成を示すブロック図である。
図2】第1のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。
図3】第1のスイッチ回路が設けられた基板の構造を示す断面図である。
図4】第2のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。
図5】第2の実施形態に係る通信回路の構成を示すブロック図である。
図6】第2の実施形態の変形例に係る通信回路の構成を示すブロック図である。
図7】第3の実施形態に係る通信回路に設けられた第1のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。
図8】第3の実施形態に係る通信回路に設けられた第2のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る通信回路のブロック図である。図1に示す通信回路1は、フロントエンド回路に適用されている。このフロントエンド回路は、第1のアンテナANT1と、第2のアンテナANT2とを用いてキャリアアグリゲーションを行う無線通信機器に設けられている。
【0010】
通信回路1は、電力増幅器11、12と、整合回路21、22と、第1のスイッチ回路31と、第2のスイッチ回路32と、複数のデュプレクサ40と、制御回路50と、を備える。
【0011】
電力増幅器11は、端子TX1から入力された送信信号を増幅する。電力増幅器12は、端子TX2から入力された送信信号を増幅する。端子TX1と端子TX2は、上記送信信号を生成する送信回路(不図示)に接続されている。電力増幅器11の増幅可能な周波数と、電力増幅器12の増幅可能な周波数は近接している。
【0012】
整合回路21は、電力増幅器11と第1のスイッチ回路31との間に設けられ、電力増幅器11の出力インピーダンスと、第1のスイッチ回路31の入力インピーダンスを整合する。整合回路22は、電力増幅器12と第1のスイッチ回路31との間に設けられ、電力増幅器12の出力インピーダンスと、第1のスイッチ回路31の入力インピーダンスを整合する。
【0013】
図2は、第1のスイッチ回路31の概略的な構成を示す回路図である。図2に示すように、第1のスイッチ回路31は、2つの入力に対してn個の出力を可能とするDPnT(Double−Pole n−Throw)回路で構成されている。具体的には、第1のスイッチ回路31は、第1の端子COM11と、第2の端子COM12と、複数の第3の端子RF11〜RF1nと、複数の単位スルースイッチSW1と、を有する。
【0014】
第1の端子COM11は、整合回路21を介して電力増幅器11に接続されている(図1参照)。第1の端子COM11には、第1の周波数に設定された第1の信号が入力される。第1の信号は、端子TX1から入力された送信信号を電力増幅器11で増幅処理し、その後、整合回路21でインピーダンス整合処理した信号に相当する。
【0015】
第2の端子COM12は、整合回路22を介して電力増幅器12に接続されている(図1参照)。第2の端子COM12には、第2の周波数に設定された第2の信号が入力される。第2の信号は、端子TX2から入力された送信信号を電力増幅器12で増幅処理し、その後、整合回路22でインピーダンス整合処理した信号に相当する。また、第2の周波数は、第1の周波数と近接している。
【0016】
複数の第3の端子RF11〜RF1nは、上記第1の周波数と上記第2の周波数を含む複数の信号周波数にそれぞれ対応している。例えば、第3の端子RF11が第1の周波数に対応し、第3の端子RF12が第2の周波数に対応している場合、第1の信号は第3の端子RF11から出力され、第2の信号は第3の端子RF12から出力される。
【0017】
単位スルースイッチSW1は、DPnT回路の最小構成単位回路であり、複数の第1のスイッチング素子Q11と、ダイオードD11と、抵抗R11、R12と、を有する。複数の第1のスイッチング素子Q11は、第1の端子COM11と複数の第3の端子RF11〜RF1nとの間における第1の信号の経路に直列に接続されている。また、複数の第1のスイッチング素子Q11は、第2の端子COM12と複数の第3の端子RF11〜RF1nとの間における第2の信号の経路にも直列に接続されている。
【0018】
各第1のスイッチング素子Q11は、N型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されている。ダイオードD11は、各第1のスイッチング素子Q11のボディ・ゲート間に設けられている。抵抗R11は、各第1のスイッチング素子Q11のゲートに接続されている。抵抗R12は、各第1のスイッチング素子Q11のドレイン・ソース間に接続されている。
【0019】
図3は、第1のスイッチ回路31が設けられた基板の構造を示す断面図である。図3に基板60は、SOI(Silicon On Insulator)基板である。具体的には、基板60は、シリコン基板61と、シリコン基板61の上に設けられた絶縁層62と、絶縁層62の上に設けられたシリコン層63と、を有する。第1のスイッチ回路31は、このシリコン層63に設けられる。本実施形態では、第2のスイッチ回路32も、このシリコン層63に設けられる。すなわち、第1のスイッチ回路31と第2のスイッチ回路32は、同じ基板60に設けられる。
【0020】
図4は、第2のスイッチ回路32の概略的な構成を示す回路図である。図4に示す第2のスイッチ回路32は、複数の第4の端子RF21〜RF2nと、第5の端子COM21と、第6の端子COM22と、複数の単位スルースイッチSW2と、を有する。
【0021】
複数の第4の端子RF21〜RF2nは、デュプレクサ40を介して複数の第3の端子RF11〜RF1nに個別に接続されている(図1参照)。第5の端子COM21は、第1のアンテナANT1に接続されている。第6の端子COM22は、第2のアンテナANT2に接続されている。
【0022】
単位スルースイッチSW2は、複数の第2のスイッチング素子Q21と、ダイオードD21と、抵抗R21、R22と、を有する。複数の第2のスイッチング素子Q21は、複数の第4の端子RF21〜RF2nと第5の端子COM21の間と、複数の第4の端子RF21〜RF2nと第6の端子COM22との間における、第1の信号の経路と第2の信号の経路にそれぞれ直列に接続されている。
【0023】
各第2のスイッチング素子Q21は、第1のスイッチング素子Q11と同様に、N型MOSFETで構成されている。ダイオードD21は、各第2のスイッチング素子Q21のボディ・ゲート間に設けられている。抵抗R21は、各第2のスイッチング素子Q21のゲートに接続されている。抵抗R22は、各第2のスイッチング素子Q21のドレイン・ソース間に接続されている。
【0024】
図1に戻って、複数のデュプレクサ40は、第1のスイッチ回路31と、第2のスイッチ回路32との間に設けられている。各デュプレクサ40は、複数の第3の端子RF11〜RF1nのいずれかから出力された送信信号(第1の信号および第2の信号)を、出力元の第3の端子に対応する複数の第4の端子RF21〜RF2nに入力する。同時に、デュプレクサ40は、複数の第4の端子RF21〜RF2nのいずれかから出力された受信信号を、出力元の第4の端子に対応する端子RX〜RXnに入力する。すなわち、デュプレクサ40は、送信信号(第1の信号および第2の信号)の経路と、第1のアンテナANT1および第2のアンテナANT2でそれぞれ受信された受信信号の経路と、を切り替える。端子RX〜RXnは、上記受信信号を処理する受信回路(不図示)に接続されている。
【0025】
制御回路50は、第1のスイッチ回路31と第2のスイッチ回路32を制御する。具体的には、制御回路50は、制御信号Conで第1のスイッチング素子Q11のゲート電位と第2のスイッチング素子Q21のゲート電位をそれぞれ制御する。
【0026】
例えば、制御回路50が、ゲート電位を約3Vに制御する制御信号Conを出力すると、第1のスイッチング素子Q11と第2のスイッチング素子Q21は導通状態、換言するとオン状態となる。また、例えば、制御回路50が、ゲート電位を約−3Vに制御する制御信号Conを出力すると、第1のスイッチング素子Q11と第2のスイッチング素子Q21は非導通状態、換言するとオフ状態となる。
【0027】
上記のように構成された通信回路1において、例えば、電力増幅器11の増幅可能な周波数が700MHz〜800MHzであり、電力増幅器12の増幅可能な周波数が800MHz〜900MHzであるとする。この場合、キャリアアグリゲーションの組み合わせとして、例えば、700MHzと800MHzの第1の組み合わせと、800MHzと900MHzの第2の組み合わせと、700MHzと900MHzの第3の組み合わせが、考えられる。このとき、組み合わせ数と同じ数のフロントエンド回路を設けると、回路の大型化を招く。
【0028】
しかし、本実施形態では、制御回路50が、第1の組み合わせ〜第3の組み合わせに応じて、第1のスイッチ回路31と第2のスイッチ回路32を制御する。例えば、700MHzに設定された第1の信号が第1の端子COM11に入力され、800MHzに設定された第2の信号が第2の端子COM12に入力されたとき、制御回路50は、第1の端子COM11と第3の端子RF11とを接続する第1の信号の経路上に設けられた第1のスイッチング素子Q11を導通状態にし、第1の信号のその他の経路に設けられた残りの第1のスイッチング素子Q11を非導通状態にする。
【0029】
同時に、制御回路50は、第2の端子COM12と第3の端子RF12とを接続する第2の信号の経路上に設けられた第1のスイッチング素子Q11を導通状態にし、第2の信号のその他の経路に設けられた残りの第1のスイッチング素子Q11を非導通状態にする。
【0030】
また、上記第1の信号が、第3の端子RF11に対応する第4の端子RF21に入力され、上記第2の信号が、第3の端子RF12に対応する第4の端子RF22に入力されたとき、制御回路50は、第4の端子RF21と第5の端子COM21とを接続する第1の信号の経路上に設けられた第2のスイッチング素子Q21を導通状態にし、第1の信号のその他の経路に設けられた残りの第2のスイッチング素子Q21を非導通状態にする。
【0031】
同時に、制御回路50は、第4の端子RF22と第6の端子COM22とを接続する第2の信号の経路上に設けられた第2のスイッチング素子Q21を導通状態にし、第2の信号のその他の経路に設けられた残りの第2のスイッチング素子Q21を非導通状態にする。
【0032】
第2の組み合わせ、第3の組み合わせも、上述した第1の組み合わせと同様に、制御回路50が第1のスイッチ回路31と第2のスイッチ回路32を制御する。その結果、周波数が相互に近接した2つの信号は、一つのフロントエンド回路(通信回路1)内で伝送される。
【0033】
なお、通信回路1で処理可能な周波数帯域は、上記の範囲に限定されず、1.7GHz〜1.9GHz等の他の周波数帯域であってもよい。
【0034】
以上説明した本実施形態によれば、一つの通信回路内に2つのスイッチ回路が設けられ、これらのスイッチ回路は、周波数が相互に近接した2つの信号の経路を、各信号の周波数に対応した経路に切り替えている。そのため、近接バンドの通信の多くの組み合わせに対応する小型な通信回路を提供することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、上記2つのスイッチ回路は、同一の基板に形成されている。そのため、これらのスイッチ回路を制御する制御回路を共通化できるので、回路をさらに小型化できる。
【0036】
さらに、上記基板がSOI基板である場合、2つのスイッチ回路と、これらを制御する制御回路と、を同一基板上に集積化できるので、回路の面積を小さくすることができる。加えて、SOI基板を用いることにより、寄生容量や高周波信号の基板への漏洩が低減されるので、各スイッチ回路の通過損失が減少し、電力増幅器の出力電力を小さくできるようになる。その結果、電力増幅器を小型化でき、これによって、無線通信機器の消費電力が小さくなる。無線通信機器がバッテリー駆動の場合、このバッテリーの小型化も可能になる。
【0037】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る通信回路の構成を示すブロック図である。上述した第1の実施形態に係る通信回路1と同様の構成要素には、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
図5に示すように、本実施形態に係る通信回路2は、第1の実施形態の通信回路1の構成要素に加えて、電力増幅器13と、整合回路23と、をさらに備える。また、通信回路2では、第2のスイッチ回路32の第4の端子RF21〜RF2(n+1)の数が、第1のスイッチ回路31の第3の端子RF11〜RF1nの数よりも多い。
【0039】
電力増幅器13は、端子TX3から入力された送信信号を増幅する。端子TX2は、この送信信号を生成する送信回路(不図示)に接続されている。整合回路23は、電力増幅器13と第2のスイッチ回路32との間に設けられ、電力増幅器13の出力インピーダンスと、第2のスイッチ回路32の入力インピーダンスを整合する。
【0040】
上記のように構成された通信回路2では、電力増幅器13で増幅された送信信号は、整合回路23でインピーダンス整合された後、第2のスイッチ回路32の第4の端子RF2(n+1)に入力される。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、電力増幅器13が、電力増幅器11と電力増幅器12では増幅できない周波数の信号を増幅することによって、相互に近接した周波数帯域のキャリアアグリゲーションだけでなく、相互に離れた周波数帯域のキャリアアグリゲーションも行うことができる。また、電力増幅器13が、電力増幅器11と電力増幅器12では対処できない旧世代の通信規格に対応した信号を増幅する場合には、無線通信回路2は、新旧の両世代の無線通信に適用することができる。
【0042】
また、電力増幅器13で増幅された信号は、第1のスイッチ回路31を介することなく第2のスイッチ回路32に直接入力される。そのため、この信号の電力が、第1のスイッチ回路31に入力される信号(第1の信号および第2の信号)の電力よりも大きくても、第1のスイッチ回路31には、この信号の電力に対応した耐電力は求められない。よって、第1のスイッチ回路31の面積を小さくできる。
【0043】
なお、本実施形態では、第2のスイッチ回路32の第4の端子RF21〜RF2(n+1)の数が、第1のスイッチ回路31の第3の端子RF11〜RF1nの数よりも多い。しかし、この端子数の関係は、反対であってもよい。
【0044】
図6は、第2の実施形態の変形例に係る通信回路の構成を示すブロック図である。図6に示す通信回路2aでは、第1のスイッチ回路31の第3の端子RF11〜RF1(n+1)の数が、第2のスイッチ回路32の第4の端子RF21〜RF2nの数よりも多い。
【0045】
通信回路2aでは、第3の端子RF1(n+1)から出力された信号は、第2のスイッチ回路32を介することなく第3のアンテナANT3へ伝送される。この信号の電力が高くても、換言すると、第3のアンテナANT3で送受信される信号の電力が第1のアンテナANT1と第2のアンテナANT2でそれぞれ送受信される信号の電力よりも高くても、第2のスイッチ回路32には、この信号の電力に対する耐電力は求められない。そのため、第2のスイッチ回路32の面積を小さくできる。
【0046】
したがって、第3の端子の数と第4の端子の数を異なくすることによって、第1のスイッチ回路31の面積または第2のスイッチ回路32の面積が小さくなるので、通信回路を小型化することが可能となる。
【0047】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態では、第1のスイッチ回路31の構成と第2のスイッチ回路32の構成が、第1の実施形態と異なる。
【0048】
図7は、第3の実施形態に係る通信回路に設けられた第1のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。また、図8は、第3の実施形態に係る通信回路に設けられた第2のスイッチ回路の概略的な構成を示す回路図である。
【0049】
図7に示す第1のスイッチ回路31では、複数の第3の端子RF11〜RF1nのうち、一部の端子RF1xが、単位スルースイッチSW1を介して第1の端子COM11と第2の端子COM12の両方に接続され、残りの端子が、単位スルースイッチSW1を介して第1の端子COM11または第2の端子COM12の一方に接続されている。
【0050】
図8に示す第2のスイッチ回路32でも、同様に、複数の第4の端子RF21〜RF2nのうち、一部の端子RF2xが、単位スルースイッチSW2を介して第5の端子COM21と第6の端子COM22の両方に接続され、残りの端子が、単位スルースイッチSW2を介して第5の端子COM21または第6の端子COM22の一方に接続されている。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、第1のスイッチ回路31は、第1の端子COM11と第2の端子COM12に共通して接続できる第3の端子の数を制限している。同様に、第2のスイッチ回路32は、第5の端子COM21と第6の端子COM22に共通して接続できる第4の端子の数を制限している。そのため、本実施形態では、第1の実施形態に比べて、単位スルースイッチSW1、SW2の数が減少している。これにより、第1のスイッチ回路31の面積と第2のスイッチ回路32の面積がともに小さくなるので、通信回路全体を小型化することが可能となる。
【0052】
さらに、非導通状態となる単位スルースイッチの数が減るため、第1のスイッチ回路31のオフ容量と第2のスイッチ回路32のオフ容量が減少して、これらのスイッチ回路の通過損失が小さくなる。これにより、電力増幅器11、12の小型化が可能になる。また、無線通信機器がバッテリー駆動の場合には、このバッテリーの小型化も可能になる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
31 第1のスイッチ回路、32 第2のスイッチ回路、40 デュプレクサ、50 制御回路、COM11 第1の端子、COM12 第2の端子、RF11〜RF1n 第3の端子、RF21〜RF2n 第4の端子、COM21 第5の端子、COM22 第6の端子、Q11 第1のスイッチング素子、Q21 第2のスイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8