(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被覆体について、JIS R 1756の試験方法を基礎として照度300lxの可視光を8時間照射した際のファージ相対濃度(log(N/N0))が−2.0以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の笠木。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る笠木を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る笠木の第1例を示す横断面図である。
第1例の笠木1は、廊下・階段等に設置される連続手すりや、玄関・トイレ・浴室等に設置される補助手すり等の笠木として用いられるものである。笠木1は、硬質の芯材2と、該芯材2の外側に設けられた被覆体3とを備えている。
【0015】
芯材2は、アルミニウム等の金属製のレール状部材であり、下方に向けて開口したコ字状の断面形状となっている。芯材2には、その外側を覆うように被覆体3が装着されている。
【0016】
被覆体3は、熱可塑性樹脂を主成分とし、被覆体3における少なくとも表面側の部分は、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料に光触媒材料を混合した光触媒含有樹脂組成物により形成されている。なお、光触媒材料とは、酸化チタンに2価銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタンを含むものであり、これについては後述する。
被覆体3は、長尺な略円筒状の部材であり、下方に向けて開口したC字状の断面形状となっている。また、被覆体3は、芯材2を覆う基部4と、該基部4を覆うと共に被覆体3の表面を成す外層部5とで構成されており、外層部5が基部4と一体形成されている。外層部5の厚さは0.05mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。外層部5の厚さが0.05mm以上であると、抗ウイルス性能を発揮することができると共に、摩耗による抗ウイルス性能の低下を防止することができ、また、被覆体3を曲げ加工した際に外層部5が透けて基部4が見える問題も防止することができる。
【0017】
〔基部〕
基部4は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料により形成されている。第1例の基部4の樹脂材料には、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂を主成分とし、銅化合物担持酸化チタンを混合していないものが用いられている。
<樹脂材料>
本発明の樹脂材料は、熱可塑性樹脂を主成分とするものであり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エラストマー樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、EVA樹脂、ASA樹脂等が用いられ、なかでも、比較的安価であり、かつ、難燃性、耐久性、耐薬品性などの観点からポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0018】
樹脂材料は、所望の柔軟性に応じて可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、エポキシ系可塑剤、およびポリアルキレングリコール系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の添加量としては、所望の柔軟性にもよるが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して概ね20〜70重量部が添加される。
また、樹脂材料は、必要に応じて可塑剤以外の添加剤、例えば、安定剤、発泡剤、外滑剤、内滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0019】
〔外層部〕
外層部5は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料に光触媒材料を混合した光触媒含有樹脂組成物により基部4と一体形成されている。
【0020】
<光触媒含有樹脂組成物>
本発明の光触媒含有樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料と、酸化チタンに2価銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタンを含む光触媒材料とを必須成分とする。樹脂材料については、上述した内容と同様なので、詳細な説明を省略する。なお、外層部5に用いる樹脂材料は、基部4に用いる樹脂材料と実質的に同じものであってよいし、熱可塑性樹脂や添加剤の種類や配合が異なるものであってもよい。
〔光触媒材料〕
本発明の光触媒材料は、酸化チタンに2価銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタンを主成分とするものであり、また、酸化チタンは、結晶性ルチル型酸化チタンを含有するものである。
結晶性ルチル型酸化チタンと2価銅化合物とを組み合せた銅化合物担持酸化チタンを樹脂材料に混合することにより、明所及び暗所における抗ウイルス性に優れる光触媒含有樹脂組成物を得ることができる。また、2価銅化合物は1価銅化合物のように酸化による変色のおそれが少ないため、経時的な変色も抑制することができる。
【0021】
本発明に使用される光触媒材料は、酸化チタンに2価銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタンを必須成分とするが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、他の任意成分を含有していてもよい。ただし、光触媒としての機能及び抗ウイルス性能の向上の観点から、光触媒材料中における当該必須成分の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0022】
本発明において、結晶性ルチル型酸化チタンとは、Cu−Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンのことを意味する。
酸化チタン中における結晶性ルチル型酸化チタンの含有量は、好ましくは50モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上である。結晶性ルチル型酸化チタンの含有量は、XRDによって測定できる。
酸化チタン中におけるアナターゼ型酸化チタンの含有量は50モル%未満が好ましく、更に好ましくは20モル%未満であり、より更に好ましくは10モル%未満である。このアナターゼ型酸化チタンの含有量もXRDによって測定できる。
酸化チタンは気相法で製造されたものが好ましい。これにより、非常に細かく、かつ、結晶性が高い酸化チタン粒子を得ることができる。たとえば、チタンの塩化物やオキシ塩化物の蒸気を500℃以上に、好ましくは800℃以上に加熱して酸素または水蒸気中で酸化させることにより酸化チタンを合成することができる。このような気相法で得られた酸化チタンは、瞬時に高温雰囲気で合成するため、微細ながらも、結晶性が高く、格子欠陥が少ない。このため、気相法で得られた酸化チタンは、本発明の光触媒材料に用いる材料として好適であるといえる。
【0023】
本発明の銅化合物担持酸化チタンに含まれる2価銅化合物は、それ単独では明所及び暗所における抗ウイルス性を有しないが、前述した結晶性ルチル型酸化チタンと組み合わせることにより、明所及び暗所における抗ウイルス性能が十分に発現する。また、この2価銅化合物は、1価銅化合物と比べて酸化等による変色が少ないため、銅化合物担持酸化チタンを用いた光触媒含有樹脂組成物は、変色が抑制される。
2価銅化合物には、特に限定はなく、2価銅無機化合物及び2価銅有機化合物の1種又は2種が挙げられる。
2価銅無機化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、沃素酸銅、過塩素酸銅、四ホウ酸銅、硫酸アンモニウム銅、アミド硫酸銅、塩化アンモニウム銅、リン酸銅、ピロリン酸銅、炭酸銅等の2価銅の無機酸塩;塩化銅、フッ化銅、臭化銅等の2価銅のハロゲン化物;酸化銅、硫化銅、アズライト、マラカイト、アジ化銅等の1種又は2種以上が挙げられる。
2価銅有機化合物としては、2価銅のカルボン酸塩が挙げられる。この2価銅のカルボン酸塩としては、蟻酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ミスチン酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、乳酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅、イソフタル酸銅、テレフタル酸銅、サリチル酸銅、メリト酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、グルタル酸銅、アジピン酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、グリセリン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、イソ吉草酸銅、β−レゾルシル酸銅、ジアセト酢酸銅、ホルミルコハク酸銅、サリチルアミン酸銅、ビス(2−エチルヘキサン酸)銅、セバシン酸銅、ナフテン酸銅等の1種又は2種以上が挙げられる。その他の2価銅有機化合物としては、オキシン銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、フタロシアニン銅、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅メトキシド、ジメチルジチオカルバミン酸銅等の1種又は2種以上が挙げられる。
上記2価銅化合物のうち、好ましくは酸化銅、2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩であり、特に2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩が好ましい。
また、2価銅化合物としては、下記一般式(1)で表される2価銅化合物が挙げられる。
Cu
2(OH)
3X (1)
一般式(1)において、Xは陰イオンであり、好ましくはCl、Br、I等のハロゲン、CH
3COO等のカルボン酸の共役塩基、NO
3、(SO
4)
1/
2等の無機酸の共役塩基、又はOHである。
これらの2価銅化合物のうち、より不純物が少なく、経済的な観点から、2価銅無機化合物がより好ましく、酸化銅が更に好ましい。
2価銅化合物は、無水物であっても水和物であってもよい。
【0024】
銅化合物担持酸化チタンは、平均一次粒子径が50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは75〜300nmであり、更に好ましくは100〜150nmである。この平均一次粒子径は、動的光散乱法によって確認することができる。BET一点法により、酸化チタンの比表面積を測定し、下式(1)より求めることができる。
D
BET=6000/(S×ρ) (1)
ここで使用している記号は、以下で定義される。
D
BET:平均一次粒子径(nm)
S:BET一点法により測定したBET比表面積(m
2/g)
ρ:酸化チタンの密度(g/cm
3)
また、銅化合物担持酸化チタンの平均二次粒子径(D50)は、200nm以上が好ましく、より好ましくは230nm以上であり、更に好ましくは250nm以上である。銅化合物担持酸化チタンの平均二次粒子径が200nm未満であると、低照度環境において光触媒含有樹脂組成物が銅化合物担持酸化チタンによる抗ウイルス性能を十分に発揮できなくなる。また、銅化合物担持酸化チタンの平均二次粒子径は、1000nm以下が好ましく、より好ましくは700nm以下であり、更に好ましくは500nm以下である。1000nmを超える場合には、粒子の分散性が悪くなるため、製品への適用時に障害となる。なお、本発明における平均二次粒子径(D50)は、動的光散乱法によって測定した個数分布より求めた累積50%粒子径を意味する。
【0025】
銅化合物担持酸化チタンの2価銅化合物の担持量は、酸化チタン100質量部に対して、銅元素換算で0.6質量部を超えて20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8〜18質量部であり、更に好ましくは1.0〜15質量部である。2価銅化合物の担持量が0.6質量部を超えると、低い照度の可視光下において銅化合物担持酸化チタンによる光触媒含有樹脂組成物の抗ウイルス性能が良好なものとなる。2価銅化合物の担持量が20質量部以下であると、酸化チタン表面が被覆されてしまうことが防止されて光触媒としての機能が良好に発現すると共に、少量で光触媒としての機能を向上することができて経済的である。
ここで、酸化チタン100質量部に対する2価銅化合物の銅元素換算担持量は、2価銅化合物の原料と酸化チタンの原料との仕込み量から算出することができる。なお、この銅元素換算担持量は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析により測定することができる。
【0026】
2価銅化合物の数平均粒子径は、好ましくは0.5〜100nmであり、より好ましくは1〜80nmである。数平均粒子径が0.5nm以上であると、結晶性がよくなり抗ウイルス性能が向上する。数平均粒子径が100nm以下であると、比表面積が大きくなり抗ウイルス性能に優れたものとなり、また、酸化チタンの表面に良好に担持することができる。なお、2価銅化合物の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による測長によって確認することができる。例えば、透過型電子顕微鏡を使用して2価銅化合物粒子を100個観察し、それぞれの2価銅化合物粒子の粒子径を測定し、これらの数平均値を数平均粒子径とする。
【0027】
光触媒含有樹脂組成物中における光触媒材料の含有量は、0.8質量%を超えることが好ましく、更に好ましくは1.0質量%以上であり、より更に好ましくは1.2質量%以上である。光触媒材料の含有量が0.8質量%を超えると、低照度の可視光下でも抗ウイルス性能を発揮することができる。また、光触媒材料の含有率の上限は、30質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは25質量%以下であり、より更に好ましくは20質量%以下である。光触媒材料の含有率が30質量%を超える場合には、光触媒含有樹脂組成物の成形性が悪化する。したがって、光触媒含有樹脂組成物中における光触媒材料の含有量は、0.8質量%を超えて30質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1.0〜25質量%であり、より更に好ましくは1.2〜20質量%である。このような含有量とすることで、光触媒含有樹脂組成物の成形性の悪化を防止すると共に、優れた抗ウイルス性能を得ることができる。
【0028】
上述の光触媒含有樹脂組成物により形成された笠木の被覆体は、照度300lxの環境下でも抗ウイルス性能を発揮できる。具体的には、光触媒含有樹脂組成物により形成された笠木の被覆体について、JIS R 1756の試験方法を基礎として照度300lxの可視光を8時間照射した際のファージ相対濃度(log(N/N
0))が−2.0以下となることが好ましい。ファージ相対濃度の測定方法については、実施例で詳細に説明する。
【0029】
次に、第1例における被覆体3の製造方法について、
図2を参照して説明する。
まず、基部4用原料(樹脂材料)であるペレット状のコンパウンドをホッパ100に用意し、外層部5用原料(光触媒含有樹脂組成物)であるペレット状のコンパウンドをホッパ103に用意する。そして、基部4用のペレット状のコンパウンドをホッパ100から主押出成形機101に供給し加熱し、溶融したコンパウンドを合流部102に送出する。
他方、外層部5用のペレット状のコンパウンドをホッパ103から副押出成形機104に供給し加熱し、溶融したコンパウンドを合流部102に送出する。
合流部102では、金型によって基部4の外周全域を外層部5で被覆した略円筒状の被覆体3が一体的に成形される。合流部102で成形された被覆体3は、冷却水槽105で冷却された後に製品として引出し機106により引出される。
【0030】
次に、本発明に係る笠木の第2例について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明に係る笠木の第2例を示す横断面図である。
第2例の笠木6は、第1例と同様、連続手すりや補助手すり等の笠木として用いられるものである。笠木6は、硬質の芯材7と、該芯材7の外側に設けられた被覆体8とを備えている。
【0031】
芯材7は、ステンレス等の金属や硬質PVC等の熱可塑性樹脂により形成されたパイプ状(あるいは中実棒状)部材である。芯材7の外周には被覆体8が一体形成されている。
また、被覆体8は、芯材7の外周面を覆う基部9と、該基部9を覆うと共に被覆体8の表面を成す外層部10とで構成されており、外層部10が基部9と一体形成されている。
そして、被覆体8は、第1例と同様、基部9が上述の樹脂材料により形成され、外層部10を上述の光触媒含有樹脂組成物により形成されている。
【0032】
次に、本発明に係る笠木の第3例について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明に係る笠木の第3例を示す横断面図である。
第3例の笠木11は、廊下、搬入通路、エレベーターなど壁面に設置されるストレッチャーガード(壁保護材)の笠木として用いられるものである。笠木11は、硬質の芯材12と、該芯材12の外側に設けられた被覆体13とを備えている。
【0033】
芯材12は、アルミニウム等の金属や硬質PVC等の熱可塑性樹脂により形成される帯状レール部材である。芯材12には、その表側を覆うように被覆体13が装着されている。
また、被覆体13は、芯材12を覆う基部14と、該基部14の表面を覆うと共に被覆体13の表面を成す外層部15とで構成されており、外層部15が基部14と一体形成されている。
そして、被覆体13は、第1例と同様、基部14が上述の樹脂材料により形成され、外層部15を上述の光触媒含有樹脂組成物により形成されている。
【0034】
なお、第1例〜第3例の被覆体3,8,13では、上述の樹脂材料により形成した基部4,9,14と、上述の光触媒含有樹脂組成物により形成した外層部5,10,15とを一体形成したが、例えば、
図5〜
図7に示すように、被覆体16,17,18の全体を光触媒含有樹脂組成物により形成することもできる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例で説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
〔光触媒材料〕
実施例および比較例で用いる酸化チタンは、BET値が12m
2/g、ルチル化率が93モル%、アナターゼ化率が7モル%、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が21度、平均一次粒子径が150nmであった。
蒸留水1000gに1000g(100質量部)のルチル型酸化チタン(昭和電工セラミックス株式会社製)を懸濁させ、40.12g(銅元素換算で1.0質量部)のCuCl
2・2H
2O(関東化学株式会社製)を添加して、10分攪拌した。pHが10になるように、1mol/Lの水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)水溶液を添加し、30分間攪拌混合を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過し、得られた粉体を純水で洗浄し、80℃で乾燥し、ミキサーで解砕した。そして、解砕した固形分を空気雰囲気で400℃の焼成温度で3時間焼成し、銅化合物担持酸化チタンの平均二次粒子径(D50)が270nmの光触媒材料を得た。
得られた光触媒材料をフッ酸溶液中で加熱して全溶解し、抽出液をICP発光分光分析により定量した。その結果、酸化チタン100質量部に対して、銅イオン(Cu)が1.0質量部であった。すなわち、仕込みの銅イオン(CuCl
2・2H
2O由来)の全量がCuOとして酸化チタン表面に担持されていた。
〔光触媒含有樹脂組成物〕
熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂、株式会社カネカ製「塩ビジレン」)60.2質量%、添加剤(可塑剤・充填剤・加工助剤・安定剤等)38.0質量%(熱可塑性樹脂100重量部に対して63重量部)、光触媒材料1.8質量%(熱可塑性樹脂100重量部に対して3.0重量部)を混錬用ロール機に投入し、ロール機の加熱温度を150℃に設定して、150秒混錬し、評価用の光触媒含有樹脂組成物を得た。
〔試験片の作製〕
得られた光触媒含有樹脂組成物を、170℃に設定した加圧プレス機で180秒間予熱、180秒間加圧(22.5トン/300mm×300mm)した後、35℃に設定した冷却プレス機で90秒間加圧(15トン/300mm×300mm)し、厚さが1.5mmの評価用のシートを作成した。得られたシートを縦50mm、横50mmにカットして試験片を作製した。
【0036】
<実施例2>
銅化合物担持酸化チタンの2価銅化合物の担持量を、酸化チタン100質量部に対して銅元素換算で3.0質量部(Cu担持量3.0質量部)とした以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0037】
<実施例3>
熱可塑性樹脂の含有量を60.4質量%とし、光触媒含有樹脂組成物中における光触媒材料の含有量を1.6質量%(熱可塑性樹脂100重量部に対する光触媒材料の配合量が2.7重量部)とした以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0038】
<実施例4>
銅化合物担持酸化チタンの平均二次粒子径(D50)を430nmとした以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0039】
<比較例1>
銅化合物担持酸化チタンの2価銅化合物の担持量を、酸化チタン100質量部に対して銅元素換算で0.6質量部(Cu担持量0.6質量部)とした以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0040】
<比較例2>
熱可塑性樹脂の含有量を60.9質量%とし、添加剤の含有量を38.3質量%とし、光触媒含有樹脂組成物中における光触媒材料の含有量を0.8質量%(熱可塑性樹脂100重量部に対する光触媒材料の配合量が1.3重量部)とした以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0041】
<比較例3>
熱可塑性樹脂の含有量を60.5質量%とし、添加剤の含有量を39.5質量%とし、樹脂材料に光触媒材料を混合しない以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
【0042】
<評価試験>
〔抗ウイルス性能の評価:log(N/N
0)の測定〕
実施例及び比較例の試験片の抗ウイルス性能は、JIS R 1756(2013)を参照し、バクテリオファージを用いたモデル実験により以下の方法で確認した。
実施例及び比較例の試験片の上にQBファージ懸濁液を滴下した後、PET製のOHPフィルムを被せ、20W白色蛍光灯(パナソニック株式会社、フルホワイト蛍光灯、FHF32EX−N−H)を使用し、照度300lx(照度計:TOPCON IM−5にて測定)で8時間照射した。
ファージ濃度の測定は以下の方法で行った。ファージ回収液(リン酸緩衝生理食塩水)を適宣希釈し、別に培養しておいた大腸菌の培養液と混合して撹拌した後、37℃の恒温庫内に10分間静置して大腸菌にファージを感染させた。この液を寒天培地にまき、37℃で15時間培養した後にファージのプラーク数を目視で計測した。得られたプラーク数にファージ回収液の希釈倍率を乗じることによってファージ濃度Nを求めた。
初期ファージ濃度N
0と、所定時間後のファージ濃度Nとから、ファージ相対濃度(log(N/N
0))を求めた。その結果を表1に示す。
ファージ相対濃度(log(N/N
0))の値が低いほど、抗ウイルス性に優れる。
【0043】
結果は、表1に示すとおりであった。実施例1〜4は、300lxの可視光下で優れた抗ウイルス性能を示した。なお、表1において、実施例1、2のファージ相対濃度が同一の値となっているが、これは、試験片に接種した液中のバクテリオファージが、全て感染力を失ってしまった状態を意味しており、本試験での検出限界を示す値となっている。
【0044】
【表1】