【文献】
Science in china(Series C) (1999) vol.42, no.2, p.191-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に引用される特許及び特許出願を含む(ただしそれらに限定されない)全ての刊行物は、参照により恰もそれらの全体が記載されているものと同様にして、本明細書に援用するものである。
【0015】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らないかぎり、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用できるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求するうえで以下の用語が用いられる。
【0017】
用語「特異的結合」又は「特異的結合する」又は「結合する」とは、本明細書で使用されるとき、抗体が所定の抗原と、他の抗原とよりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、1×10
-7M未満、例えば1×10
-8M未満、1×10
-9M未満、1×10
-10M未満、1×10
-11M未満、又は1×10
-12M未満の解離定数(K
D)で既定の抗原に結合し、非特異的抗原又はエピトープ(例えばBSAカゼイン)への結合に関しては、典型的には、そのK
Dより少なくとも10倍小さいK
Dで結合する。解離定数は標準的手法を用いて測定することができる。しかし、所定の抗原と特異的結合する抗体は、他の関連抗原、例えばヒト又はサル、例えばカニクイザル(cynomolgus)又はPan troglodytes(チンパンジー)などの他の種から得た同様の所定の抗原(ホモログ)と交差反応性を示す可能性もある。既定の抗原と特異的結合する抗体は、更に、例えばインターフェロンアルファ(IFNα)及びインターフェロンオメガ(IFNω)のような2つ以上の異なる抗原間で共有されるエピトープに結合することができる、すなわち、抗体はIFNα及びIFNωと交差反応する。
【0018】
本明細書で使用する用語「中和」又は「中和する」又は「中和抗体」又は「抗体アンタゴニスト」とは、任意の機構によって、インターフェロンアルファ(IFNα)及び/又はインターフェロンオメガ(IFNω)の生物活性を部分的に又は完全に阻害する抗体又は抗体フラグメントを指す。中和抗体は、以下のようにIFNα及び/又はIFNωの生物活性のアッセイを用いて同定することができる。IFNα及び/又はIFNω中和抗体は、測定されるIFNα及び/又はIFNωの生物活性を20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害することが可能である。
【0019】
本明細書で使用する用語「インターフェロンα」(IFNα)は、ヒトアルファインターフェロンの全てのネイティブのサブタイプを指す。ネイティブのIFNαは、構造的相同性の高い別個の遺伝子によってコードされた23以上の密接に関連するタンパク質のサブタイプで構成されている(Weissmann及びWeber、Prog.Nucl.Acid.Res.Mol.Biol.、33:251、1986;Robertsら、J.Interferon Cytokine Res.18:805〜816、1998)。ヒトIFNαサブタイプは、少なくとも、IFNαA(IFNα2)(配列番号5)、IFNαB2(IFNα8)(配列番号6)、IFNαC(IFNα10)(配列番号7)、IFNαD(IFNα1)(配列番号8)、IFNαF(IFNα21)(配列番号9)、IFNαG(IFNα5)(配列番号10)、及びIFNαH(IFNα14)(配列番号11)、P34H置換基を伴うIFNαI(IFNα17)(配列番号12)、IFNαJ1(IFNα7)(配列番号13)、IFNαK(IFNα6)(配列番号14)、IFNα4b(IFNα4)(配列番号15)、及びIFNαWA(IFNα6)(配列番号16)である。ヒトインターフェロンの命名法は、http://www_genenames_org/genefamilies/_IFNに見出される。
【0020】
本明細書で使用する用語IFNωは、ヒトIFNωであって、配列番号1に示されるアミノ酸配列及びUniProtアクセッション番号P05000を有するものを指す。
【0021】
用語「I型インターフェロン」は、ヒトインターフェロンαの全てのサブタイプ及びインターフェロンβ、インターフェロンε、インターフェロンω、及びインターフェロンκの1つのサブタイプを指し、共通インターフェロン受容体IFNARに結合する。
【0022】
本明細書で使用する用語「INFAR」は、ヘテロダイマーまたはIFNAR1及びIFNAR2である周知のインターフェロン受容体を指す。IFNAR1及びIFNAR2のタンパク質配列は、配列番号31及び32にそれぞれ示される。INFAR1の成熟細胞外ドメインは、配列番号31の残基28〜436の範囲であり、INFAR2の成熟細胞外ドメインは、配列番号32の残基27〜243の範囲である。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、広義で意図され、ポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト適合性、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体フラグメント、少なくとも2つの無傷の抗体若しくは抗体フラグメント又は二量体の、四量体の若しくは多量体の抗体から形成される二重特異性抗体又は多重特異性抗体、並びに一本鎖抗体を含む、免疫グロブリン分子を含む。
【0024】
免疫グロブリンは、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じてIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの大きなクラスに分類することができる。IgA及びIgGは、更に、アイソタイプIgA
1、IgA
2、IgG
1、IgG
2、IgG
3及びIgG
4に下位分類される。あらゆる脊椎動物種の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの1つに分類することができる。
【0025】
用語「抗体フラグメント」とは、重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)を保有する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗体フラグメントとしては、周知のFab、F(ab’)2、Fd及びFvのフラグメント、並びに1つのVHドメインからなるドメイン抗体(dAb)が挙げられる。VHドメイン及びVLドメインは、互いに合成リンカーを介して結合することで様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成する可能性があり、VHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物で発現される場合は、VH/VLドメインが分子内又は分子間で対を成して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する(これらは、例えば国際特許出願公開第WO1998/44001号、国際特許出願公開第WO1988/01649号、国際特許出願公開第WO1994/13804号、国際特許出願公開第WO1992/01047号に記載されている)。
【0026】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で遮られた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、様々な用語を使用して定義される:(i)配列可変性に基づく相補性決定領域(CDR)が、VH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)存在する(Wu and Kabat,J.Exp.Med.132:211〜50,1970;Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)。(ii)「高頻度可変領域」すなわち「HVR」又は「HV」が、VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)存在する。この領域は、抗体可変ドメインであり、Chothia and Lesk(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901〜17,1987)により定義される構造中で、高頻度可変性を示す。他の用語には、「IMGT−CDR」(Lefrancら著、Dev.Comparat.Immunol.第27巻、55〜77頁、2003年)及び「特異性決定残基使用」(SDRU)(Almagro著、Mol.Recognit.、第17巻、132〜143頁、2004年)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化ナンバリング及び定義を規定する。各CDR、HV及びIMGTの表記の間の対応についてはLefrancら著、Dev.Comparat.Immunol.第27巻、55〜77頁、2003年に述べられている。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「Chothia残基」は、Al−Lazikani(Al−Lazikaniら著、J.Mol.Biol.、第273巻、927〜948頁、1997年)に従ってナンバリングされた抗体VL残基及びVH残基である。
【0028】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたものを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記に述べたような様々な用語によって定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0029】
「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域の配列と定常領域の配列とを含む抗体を指す。本発明のヒト抗体は置換を包含する可能性があるので、当該ヒト抗体は、発現した免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の正確な複製物でない場合がある。ただし、抗原結合部位がヒト以外の種から得られる抗体は、「ヒト抗体」の定義には包含されない。
【0030】
「ヒト適応」抗体又は「ヒトフレームワーク適応(HFA)」抗体は、米国特許公開第US2009/0118127号に記載されている方法に従って適応された抗体を指し、また、ヒト以外の種に由来する抗原結合部位配列がヒトフレームワークにグラフトされた抗体も指す。
【0031】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来しかつ可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内に置換を含む可能性があることから、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープの単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0033】
「実質的に同一の」という表現は、本明細書で使用されるとき、比較される2つの抗体可変領域のアミノ酸配列が同一であるか又は「ごく僅かな差異」があるということを意味する。ごく僅かな差異とは、抗体特性に悪影響を及ぼさない、抗体又は抗体可変領域の配列における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のアミノ酸の置換である。本明細書に開示される可変領域の配列と実質上同一のアミノ酸配列は、本出願の範囲に属する。一部の実施形態では、配列の同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも高い可能性がある。同一性(%)は、例えば、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のAlignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定することができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として使用することで、例えば、近縁配列を確認するために公開データベース又は特許データベースでの検索を実行することができる。かかる検索を実行するために使用されるプログラム例は、初期設定を使用する、XBLAST若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westborough、MA)スイートである。
【0034】
用語「エピトープ」とは、本明細書で使用されるとき、抗体が特異的結合する抗原の一部を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖のような部位の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面基からなり、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有しうる。エピトープは、立体配座空間単位を形成する連続した及び/又は連続していないアミノ酸から成り得る。連続していないエピトープについて、抗原の直鎖配列の異なる部分からのアミノ酸は、タンパク質分子の折り畳みを通じて、3次元空間において近接する。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「パラトープ」という用語は、抗原が特異的結合する抗体の一部分を意味する。パラトープは元来線状であっても又は不連続であってもよく、一つながりの線状のアミノ酸よりも、抗体の隣接していないアミノ酸同士の空間関係によって形成されてよい。「軽鎖パラトープ」及び「重鎖パラトープ」又は「軽鎖パラトープのアミノ酸残基」及び「重鎖パラトープのアミノ酸残基」はそれぞれ、抗原と接触する抗体の軽鎖残基及び重鎖残基を指す。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「二重特異性」とは、2種の異なる抗原と結合する抗体、又は抗原内の2種の異なるエピトープと結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、二重特異性抗体がIFNα及びIFNωと交差反応する場合に、2つ以上の異なる抗原に結合することができる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「単一特異性」とは、1つの抗原又は1つのエピトープと結合する抗体を指す。単一特異性抗体は、単一特異性抗体がIFNα及びIFNωと交差反応する場合に、2つ以上の異なる抗原に結合することができる。
【0038】
用語「〜と組み合わせて」は、本明細書で使用されるとき、記述の対象である薬剤が、混合物として一緒に、又はそれぞれ単独薬剤として同時に、又はそれぞれ単独薬剤として順次に任意の順序で、動物に投与され得ることを意味する。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「IFNαの生物活性及び「IFNωの生物活性」は、IFNα及びIFNωが、それぞれに対応する受容体IFNARと結合した結果として生じる任意の活性を指す。1つのIFNα及びIFNωの生物活性は、標準的な方法を用いて、IFNα及びIFNωが、HEK293細胞においてISG54などのインターフェロン誘導性プロモーター下で分泌胚アルカリホスファターゼ(SEAP)の発現を誘導して、安定的に、転写因子2(STAT2)のシグナル伝達因子及び活性化因子、インターフェロン調節因子9(IRF9)、並びにSEAPを発現する能力である。別のIFNα及びIFNωの生物活性は、本明細書に記載のような、末梢血単核細胞(PBMC)又は全血からのケモカインIP−10(CXCL10)の産生の誘導である。
【0041】
「ベクター」なる用語は、生物系内で複製されうる、又はこうした系間を移動しうるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは一般的に、生物系内でこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどの要素を含んでいる。このような生物系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することができる生物学的成分を利用して再構成された生物系を挙げることができる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0042】
用語「発現ベクター」は、生体系又は再構成された生体系において、その発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの翻訳を指示するために使用することができるベクターを意味する。
【0043】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、糖−リン酸骨格又は他の同等の共有結合化学により共有結合を介して連結されたヌクレオチド鎖からなる分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0044】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により連結されてポリペプチドを生成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。50個未満のアミノ酸からなる小さいポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合もある。
【0045】
本明細書では表1に示すような従来の1文字及び3文字のアミノ酸コードを用いる。
【0046】
発明の構成
本発明は、ヒトインターフェロンオメガ(IFNω)及び複数のヒトインターフェロンα(IFNα)のサブタイプ(IFNα/ω抗体)と結合し、その活性を中和するモノクローナル抗体を提供する。本発明は、少なくとも部分的に、本発明のIFNα/ω抗体が結合する、IFNωと、IFNαサブタイプと、が共有する最小限の中和性のエピトープの同定に基づく。本発明のIFNα/ω抗体は、IFNαサブタイプを中和するがIFNωを中和しない抗体よりも、I型IFN及びIFNシグネチャのSLE関連の調製物の中和においてより強力であり、したがって、IFNα及びIFNωの産生の増加に関連する例えば免疫媒介炎症性疾患のような任意の疾患の治療において、より効能が優れている可能性がある。本発明のIFNα/ω抗体はIFNβを中和しないので、全てのI型IFNを遮断することが予測される抗IFNAR療法と比較して、より好ましい安全性及びPK特性を有する可能性がある。本明細書で使用するとき、「IFNα/ω抗体は、本明細書に例示するINFω及び複数のIFNαサブタイプと結合し、中和する抗体を指す。
【0047】
本発明の一実施形態は、ヒトインターフェロンω(IFNω)及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンα(IFNα)サブタイプと結合し、それらの活性を中和する、モノクローナル抗体である。
【0048】
本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及びIFNαJ1を中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG及びIFNαJ1を中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1及びIFNαAを中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA及びIFNαH2を中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA、IFNαH2及びIFNαKを中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA、IFNαH2、IFNαK及びIFNαWAを中和し得る。本発明の抗体は、IFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA、IFNαH2、IFNαK、IFNαWA及びIFNα4aを中和し得る。
【0049】
本発明の抗体がIFNα及びIFNωを中和する能力は、インターフェロン応答性プロモーター下でレポーター遺伝子を発現する細胞株を使用して種々のIFNαサブタイプ及び/又はIFNωで細胞を刺激するレポーター遺伝子アッセイにおいて、試験することができる。例えば、完全に活性なI型IFNシグナル伝達経路を発現する(STAT2及びIRF9を安定に発現する)ように設計され、IFNα/β誘導性ISG54プロモーターの制御下でSEAPレポーター遺伝子でトランスフェクトされたHEK−Blue(商標)IFN−α/β細胞(InvivoGen(カリフォルニア州San Diego)を、本明細書に記載したように使用することができる。周知の試薬を用いてアルカリホスファターゼからのシグナルを検出することが可能であり、そのシグナルを分光光度計で読み取ることが可能であり、標準的な方法を用いて阻害に関するIC
50を計算することが可能である。
【0050】
一実施形態において、本発明の抗体は、それらのヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプの活性が、転写因子2(STAT2)、インターフェロン調節因子9(IRF9)、及びSEAPのシグナル伝達因子及び活性化因子を安定に発現するHEK293細胞におけるインターフェロン誘導性ISG54プロモーター下で分泌された胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)の発現の阻害であるときに、約5×10
-8M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満、又は約1×10
-12M未満のIC
50値でIFNωの活性を阻害し、且つ、約5×10
-8M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満、又は約1×10
-12M未満のIC
50値でIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1を阻害する。本発明の抗体は、本明細書で実施例3に記載したような「ISREレポーター遺伝子アッセイ」においてIC
50値が約5×10
-8未満、例えば1×10
-8M未満、約1x10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満又は約1×10
-12M未満であるときに、IFNω及び/又は任意のIFNαサブタイプを「中和する」。
【0051】
本発明の抗体はまた、IFNで誘導性末梢血単核細胞(PBMC)又は全血からのIP−10の放出のようなIFN誘導性のサイトカインの放出を阻害するそれらの能力を評価することによって、それらのIFNα及びIFNω中和能力について試験することができる。例えば、PBMCは、試験されるIFN及び抗体の予め形成された複合体で処置した標準的なプロトコルを使用して健康なボランティアからのヘパリン化全血から単離され、IP−10の放出は、Milliplexサイトカイン/ケモカインキット(Millipore、Premixed 39 plex)のような標準的な方法を使用して測定される。IFNα及びIFNωを中和する抗体は、抗体の非存在下でのIFN誘導性のIP−10の放出と比較したとき、IP−10の放出を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、又は100%阻害することができる。
【0052】
本発明の抗体は、IFNωを中和することに加えて、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のIFNαサブタイプと結合し、中和することができる。これらのIFNαサブタイプ及びIFNωは、標準的な方法を使用して組換え発現によって産生することができる。分泌を指示するために使用できる例示的なシグナル配列は、配列番号17〜21に示される。
【0053】
本発明の抗体は、約5×10
-9M未満、約1×10
-9M未満、約5×10
-10M未満、約1×10
-10M未満、約5×10
-11M未満、約1×10
-11M未満、約5×10
-12M未満、又は約1×10
-12M未満の解離定数(K
D)のヒトIFNωと結合し、約5×10
-9M未満、約1×10
-9M未満、約5×10
-10M未満、約1×10
-10M未満、約5×10
-11M未満、約1×10
-11M未満、約5×10
-12M未満、又は約1×10
-12M未満のK
DのヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1と結合する。
【0054】
IFNω又はIFNαに対する抗体の親和性は、任意の好適な方法を使用して実験により測定することができる。こうした方法では、ProteOn XPR36、Biacore 3000又はKinExA装置、ELISA、若しくは当業者には周知である競合的結合アッセイを使用することができる。特定の抗原/IFNω又はIFNαサブタイプの相互作用の測定された親和力は、異なる条件(例えば、容量オスモル濃度、pH)下で測定したときに様々であり得る。したがって、親和性及びその他の結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、K
off)の測定は、好ましくは標準的な条件及び例えば本明細書に記載の緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。例えばBiacore 3000又はProteOnを用いた親和性測定での内部エラー(標準偏差(SD)として測定されるもの)は典型的に、典型的な検出範囲内で測定した場合、5〜33%の範囲内であり得ることが当業者には分かるであろう。したがって、用語「約」は、アッセイにおける典型的な標準偏差を表す。例えば、K
Dが1×10
-9Mの場合の典型的なSDは、+0.33×10
-9M以下である。
【0055】
ヒトIFNω及びIFNαと所望の親和性及び中和特性で結合する抗体は、ヒトIFNω及びIFNαサブタイプでパニングすることによって、及び所望により更なる抗体親和性成熟によって、変異体又はフラグメントのライブラリから選択され得る。例示のパニングキャンペーンにおいて、ファージライブラリを順にパニングしてもよく、あるいは、チンパンジーIFNωと、ヒトIFNαサブタイプIFNα2、IFNα1、IFNαH2、IFNαG及びIFNαFとの混合物を用いてパニングしてもよい。あるいは、本発明の抗体は、チンパンジー及びカニクイザル(cynomolgus)IFNω、ヒトIFNαサブタイプIFNαD、IFNαJ1、IFNαC、IFNαB2、IFNαH2、IFNαA、IFNα4a、IFNαG、IFNαF、IFNαWA及びIFNαIでマウスを免疫し、標準的な方法を用いてそのハイブリオーマをスクリーニングすることによって作ることができる。
【0056】
抗体は、任意の適当な方法及び本発明に記載の方法を用い、IFNω及びIFNαの生物活性の阻害に基づいて同定することができる。
【0057】
本発明の一実施形態は、ヒトインターフェロンオメガ(IFNω)及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプと結合しそれらの活性を中和する単離されたモノクローナル抗体であり、その抗体は、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1との結合のために、単離された抗体と競合するものであって、以下を含む。
【0058】
重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列(配列番号23)、及び軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列(配列番号24)、又は、
VHアミノ酸配列(配列番号27)、及びVLアミノ酸配列(配列番号28)。
【0059】
ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1への特異的結合と、特定のVH及びVLを含む本発明の抗体との間の競合は、周知の方法を用いてインビトロでアッセイすることができる。例えば、非標識抗体の存在下におけるMSD Sulfo−Tag(商標)NHSエステル標識抗体とヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1との結合を、ELISA又はBioacore解析によって評価してもよく、あるいは、フローサイトメトリーを用いて、本発明の抗体との競合を実証してもよい。あるいは、Octet(カリフォルニア州Menlo Park)を用いてリアルタイム無標識競合結合アッセイを、本明細書に記載したように使用してもよい。配列番号23のVH及び配列番号24のVL、又は配列番号27のVH及び配列番号28のVLを含む抗体が、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合するのを阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がこれらの抗体と競合してヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合することを実証している。
【0060】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号1の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合する。
【0061】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号19の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合する。
【0062】
IFNω及びIFNα4aの両方の残基F27、L30、及びR33は、本発明のIFNα/ω抗体の広域中和活性に必要とされる最小のエピトープを画定する。いくつかの抗体/IFNα複合体又は抗体/IFNω複合体の結晶構造は、それら3つの残基が抗体結合に主に寄与することを明らかに示している。ヒトIFNα4aは、他のヒトIFNαと少なくとも83%アイデンティティを共有し、ヒトIFNωと59%アイデンティティを共有している。F27残基はIFNαD(α1)を除く全てのヒトIFNαに保存される。F27は、ヒトIFNωにも保存される。L30及びR33はどちらも全てのヒトIFNα及びヒトIFNωに保存される。
【0063】
本発明の別の実施形態において、ヒトインターフェロンω(IFNω)及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプと結合し、それらの活性を中和する本発明のモノクローナル抗体は、IFNαDと結合せず、中和しない。
【0064】
特異的にIFNω及びIFNα残基と結合する本発明の抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を発現するマウスを免疫することによって(Lonbergら、Nature 368:856〜9、1994;Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845〜51、1996;Mendezら、Nature Genetics 15:146〜56、1997、米国特許第5,770,429号、同第7,041,870号、及び同第5,939,598号)、又はエピトープ接触残基を含むペプチド、例えばIFNωのABループ(配列番号1のFNωのアミノ酸残基22〜34)又はIFNα4aのABループ(配列番号19のIFNα4aのアミノ酸残基22〜34)のアミノ酸配列を有するペプチド、若しくは本明細書に記載のようなIFNωとIFNαサブタイプの混合物でBalb/cマウスを免疫し、Balb/cマウスを免疫し、Kohlerら(Nature 256:495〜97、1975)のハイブリドーマ法を用いることによって、作ることができる。得られた抗体が、配列番号23のVH及び配列番号24のVLを有する抗体のような本発明の抗体と競合する能力を試験し、標準の方法を使用して、そのエピトープへのそれらの結合を試験する。例えば、両方の個別の構成成分の構造が知られている場合、インシリコでタンパク質−タンパク質ドッキングを行って、適合性のある相互作用部位を特定することができる。抗原抗体複合体を用いて水素−重水素(H/D)交換を行うことによって、抗体が結合し得る抗原の領域をマッピングすることができる。抗原のセグメント及び点変異誘導を用いることにより、抗体の結合に重要なアミノ酸の位置を特定することができる。抗体−抗原複合体の共結晶構造を使用して、エピトープ及びパラトープに寄与する残基を同定することができる。特定されたmAbは更に、Queenら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、第86巻、10029〜32頁、1989年及びHodgsonら著、Bio/Technology,9:421、1991で開示されている技術等の技術によって、変化したフレームワーク支持残基を組み込むことによって結合親和性を保存するように修飾することができる。
【0065】
別の実施形態において、本発明の抗体は、残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合し、更に、配列番号1の残基P26、K31、及びR34からなる群から選択される少なくとも1つのIFNω残基と結合する。
【0066】
別の実施形態において、本発明の抗体は、残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合し、更に、配列番号1の残基R22、R23、I24、S25、P26、K31、D32、R34、D35、Q40、K134、M146、E147、M149、K150、F153及びL154からなる群から選択される少なくとも1つのIFNω残基と結合する。
【0067】
別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の残基R22、P26、F27、L30、K31、D32、R33、R34、D35、Q40、K134、M146,E147、M149、K150、F153及びL154で配列番号1のIFNωと結合する。
【0068】
別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の残基R23、I24、S25、P26、F27、L30、K31、R33、R34、M146、E147、M149及びK150で配列番号1のIFNωと結合する。
【0069】
別の実施形態において、本発明の抗体は、残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合し、更に、配列番号19の残基P26、K31、及びR34からなる群から選択される少なくとも1つのIFNα4a残基と結合する。
【0070】
別の実施形態において、本発明の抗体は、残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合し、更に、配列番号19の残基A19、H26、F27、L30、K31、D32、R33、H34、D35、V143、A146、E147、M149、R150及びS153からなる群から選択される少なくとも1つのIFNα4aの残基と結合する。
【0071】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号19の1つ以上の残基A19、H26、F27、L30、K31、D32、R33、H34、D35、V143、A146、E147、M149、R150及びS153でIFNα4aと結合する。
【0072】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号19の1つ以上の残基G22、R23、I24、S25、H26、F27、C29、L30、K31、R33、H34 V143、A146、E147及びR150及びS153でIFNα4aと結合する。
【0073】
別の実施形態において、本発明の抗体は、ウイルス誘導性白血球インターフェロンの活性を阻害する。
【0074】
いくつかの実施形態では、ウイルス誘導性白血球インターフェロンの活性は、100U/mLのインターフェロンによって誘導された全血中のIP−10の放出である。
【0075】
本発明の抗体は、本明細書に記載したように、100U/mLのインターフェロンによって誘導された全血中のIP−10の放出を阻害するそれらの能力によって評価されるように、活性化された白血球によって生成されたインターフェロンを中和することが可能である。本発明の抗体は、活性化された白血球により生成されたインターフェロンの作用を、50μg/mLの抗体の存在下において、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%中和することが可能である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、50μg/mLの抗体の存在において、全血中のIP−10の放出を50%超阻害する。
【0077】
別の実施形態において、本発明の抗体は、SLE免疫複合体誘導性のIFN産生を阻害する。SLE免疫複合体は、SLEに存在するI型IFN環境を代表する。IFN産生は、本明細書に記載のようにレポーター遺伝子アッセイを用いて測定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、SLE免疫複合体誘導性のインターフェロンの産生を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害することができる。
【0079】
本発明の抗体は、ヒト、ヒト化、又はヒト適応型であり得る。
【0080】
本発明の抗体は、IgA型、IgD型、IgE型、IgG型又はIgM型であってもよい。本発明の抗体は、IgG1型、IgG2型、IgG3型、IgG4型であってもよい。
【0081】
本発明の別の実施形態は、
重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列(配列番号23)、及び軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列(配列番号24)、
VHアミノ酸配列(配列番号25)、及びVLアミノ酸配列(配列番号26)、又は、
VHアミノ酸配列(配列番号27)、及びVLアミノ酸配列(配列番号28)を含む単離された抗体である。
【0082】
いかなる非ヒト配列も欠くヒトmAbは、例えば、Knappikら、J.Mol.Biol.296:57〜86,2000、及びKrebsら、J.Immunol.Meth.254:67〜84 2001に参照される技術によって、ファージディスプレイライブラリから調製及び最適化することができる。例示の方法では、本発明の抗体は、バクテリオファージpIXコートタンパク質を有する融合タンパク質として、抗体重鎖及び軽鎖可変領域を発現するライブラリから単離される。抗体ライブラリをヒトIFNω及びIFNαの結合についてスクリーニングして、得られた陽性クローンの特性評価を更に行い、Fabはクローンライセートから単離して、全長IgGとして発現する。例示の抗体ライブラリ及びスクリーニング法は、Shiら、J Mol Biol 397:385〜96、2010;国際特許公開第WO2009/085462号、及び米国特許第12/546850号、米国特許第5,223,409号、同第5,969,108号、及び同第5,885,793号に記載されている。
【0083】
結果として得られたmAbは、それらのフレームワーク領域において、特定のフレームワーク残基をマッチングするヒト生殖細胞系列に存在する残基へと変更するように更に改変することができる。
【0084】
本発明の抗体の免疫エフェクター特性は、当業者には周知の技術により、Fc改変によって強化又はサイレンシングすることも可能である。例えば、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、貧食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーション等のFcエフェクター機能は、これら活性に関与するFcの残基を改変することによって提供及び/又は制御することができる。また、薬物動態特性は、抗体の半減期を延長するFcドメインの残基を変異させることによって強化することができる(Strohl Curr Opin Biotechnol、第20巻、685〜91頁、2009年)。
【0085】
更に、本発明の抗体は、グリコシル化、異性化、又は脱グリコシル化等の反応によって、あるいはポリエチレングリコール部分の付加(ペグ化)及び脂質化等の自然界では生じない共有結合修飾等の反応によって翻訳後修飾してもよい。こうした修飾はインビボあるいはインビトロで行われ得る。例えば、本発明の抗体はポリエチレングリコールと接合する(ペギレート)することによって薬物動態的なプロファイルを向上させることができる。結合は、当業者に既知の方法によって行うことができる。治療用抗体とPEGとの結合は、機能に干渉することなく薬力学を強化することが示されている(Knightら著、Platelets、第15巻、409〜18頁、2004年、Leongら著、Cytokine、第16巻、106〜19頁、2001年、Yangら著、Protein Eng、第16巻、761〜70頁、2003年)。
【0086】
安定性、選択性、交差反応性、親和性、免疫原性、又は他の望ましい生物学的若しくは生物物理学的特性を改善するように修飾される、本発明の抗体又はそのフラグメントは発明の範囲内である。抗体の安定性は、分子内力及び分子間力の中でも特に(1)固有の安定性に影響を及ぼす個々のドメインのコアパッキング、(2)HCとLCとのペアリングに影響するタンパク質/タンパク質の界面相互作用、(3)極性及び荷電残基の埋め込み、(4)極性及び荷電残基の水素(H)結合ネットワーク、及び(5)表面電荷及び極性残基の分布、などの多くの因子によって影響される(Wornら著、J Mol Biol、第305巻、989〜1010頁、2001年)。構造を不安定化させる可能性のある残基は、抗体の結晶構造に基づいて、あるいは場合によっては分子モデリングによって特定することが可能であり、また、抗体の安定性に対するこれらの残基の影響は、特定された残基に変異を含む変異体を生成及び評価することにより試験することができる。抗体の安定性を高める方法の1つは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定する場合、熱転移中点温度(Tm)を高くすることである。一般に、タンパク質のTmは、その安定性と相関性を示すが、溶液中でのそのアンフォールディングし易さ及び変性し易さ、並びにそのタンパク質のアンフォールディングし易さに応じた分解プロセスとは負の相関性を示す(Remmeleら、Biopharm.,13:36〜46,2000)。幾つかの研究からは、DSCにより熱安定性として測定される製剤の物理的安定性の順位と他の方法によって測定される物理的安定性との間に相関性が見つかった(Guptaら著、AAPS PharmSci.5E8、2003年、Zhangら著、J.Pharm.Sci.、第93巻、3076〜3089頁、2004年、Maaら著、Int.J.Pharm.、第140巻、155〜168頁、1996年、Bedu−Addoら著、Pharm.Res.、第21巻、1353〜1361頁、2004年、Remmeleら著、Pharm Res.、第15巻、200〜208頁、1997年)。これらの配合物の研究は、FabのTmが対応するmAbの長期の物理的安定性と密接な関係があることを示唆している。フレームワーク又はCDR内のアミノ酸の差異は、Fabドメインの熱安定性に有意な影響を及ぼし得る(Yasuiら著、FEBS Lett.、第353巻、143〜146頁、1994年)。
【0087】
本発明のIFNα/ω抗体は、二重特異性抗体へと操作することが可能であり、これらもまた本発明の範囲に包含される。本発明の抗体のVL及び/又はVH領域は、公開されている方法を用いて、TandAb(登録商標)設計のような構造として一本鎖二重特異性抗体(国際特許公開第WO1999/57150号、米国特許公開第2011/0206672号)へと、あるいは、二重特異性scFV(例えば、米国特許第5,869,620号、国際特許公開第WO1995/15388A号、国際特許公開第WO1997/14719号、又は国際特許公開第WO2011/036460号に記載されているような構造として)へと操作することができる。
【0088】
本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域は、二重特異性全長抗体へと改変することも可能であり、当該抗体の結合手はそれぞれ特徴的な抗原又はエピトープに結合する。そのような二重特異性抗体は、典型的には、2つの抗体重鎖間のCH3相互作用を調節して、次に列挙する特許に記載されているような技術を用いて二重特異性抗体を形成することによって作られる(米国特許第7,695,936号、国際特許公開第WO04/111233号、米国特許公開第US2010/0015133号、米国特許公開第US2007/0287170号、国際特許公開第WO2008/119353号、米国特許公開第US2009/0182127号、米国特許公開第US2010/0286374号、米国特許公開第US2011/0123532号、国際特許公開第WO2011/131746号、国際特許公開第WO2011/143545号、又は米国特許公開第US2012/0149876号)。本発明の抗体のVL及び/又はVH領域が組み込まれる追加の二重特異性構造は、例えば、デュアル可変ドメイン免疫グロブリン(国際特許公開第WO2009/134776号)、又は2つの結合手を異なる特異性と接続する、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量体化ドメインのような様々な二量体化ドメインを含む構造(国際特許公開第WO2012/022811号、米国特許第5,932,448号、米国特許第6,833,441号)である。
【0089】
本発明の別の態様は、本発明の抗体重鎖可変領域若しくは抗体軽鎖可変領域又はそれらのフラグメントあるいはそれらの相補体のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドである。遺伝コードの縮重又は所与の発現系におけるコドンの選好性を考慮すると、本発明の抗体アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドもまた本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。かかるベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって特定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターであってよい。
【0091】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。かかるホスト細胞は、真核細胞、細菌細胞、植物細胞又は古細菌細胞であってよい。例示的な真核細胞は、哺乳動物、昆虫、鳥類又は他の動物由来のものでよい。哺乳動物の真核細胞としては、ハイブリドーマ細胞株又は骨髄腫細胞株などの不死化細胞株、例えばSP2/0(ATCC(American Type Culture Collection)、Manassa、VA、CRL−1581)、NS0(ECACC(European Collection of Cell Cultures)、Salisbury、Wiltshire、UK、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL−1646)及びAg653(ATCC CRL−1580)マウス細胞株が挙げられる。ヒト骨髄腫細胞株の一例は、U266(ATTC CRL−TIB−196)である。他の有用な細胞株としては、CHO−K1SV(Lonza Biologics、Walkersville、MD)、CHO−K1(ATCCCRL−61)、又はDG44などの、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0092】
本発明の別の実施形態は、本発明のホスト細胞を培養することと、前記ホスト細胞によって産生された抗体を回収することとを含む、本発明の抗体の製造方法である。抗体を製造して精製する方法は当該技術分野では周知のものである。
【0093】
本発明の別の実施形態は、IFNω及びIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と、IFNARとの相互作用を、それを必要とする患者において阻害する方法であり、この方法は、ヒトIFNωとヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合するために、配列番号23の重鎖可変領域(VH)並びに配列番号24の軽鎖可変領域(VL)、又は配列番号27のVH並びに配列番号28のVLを含む単離された抗体と競合する単離された抗体を、IFNω及びIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1とIFNARとの相互作用を防ぐために十分な時間にかけて、患者に投与することを含む。抗体とIFNARとの競合は、標準的な方法及び例えば、IFNAR1(配列番号31)及びIFNAR2(配列番号32)又はそれらのFc融合タンパク質の細胞外部分を用いる本明細書に記載の方法を用いてアッセイすることが可能である。
【0094】
治療方法
本発明のα/ω抗体を使用して、IFNα及びIFNωの産生の増加に関連する任意の疾病を治療又は予防することが可能である。本発明の方法において、本発明の任意のIFNα/ω抗体を使用することが可能である。あるいは、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合するために、配列番号23の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列並びに配列番号24の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は配列番号27のVHアミノ酸配列並びに配列番号28のアミノ酸配列を含む単離された抗体と競合する任意の抗体を使用してもよい。更に、配列番号1の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFN IFNωと結合し、配列番号19の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合する任意の抗体を使用してもよい。
【0095】
本発明の方法を用いて任意の分類に属する動物患者を治療することができる。このような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。例えば、本発明の抗体は、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD:クローン病、潰瘍性大腸炎、及びセリアック病を含む)、免疫媒介炎症性甲状腺炎、及び糸球体腎炎などの免疫媒介炎症性疾患の予防及び治療に有用である。更に、本発明の抗体組成物は、移植拒絶を阻害又は予防するため、又は移植片対宿主病(GVHD)の治療のために使用することができる。
【0096】
本発明の抗体はまた、かかる治療のための薬剤の調製においても有用であり、薬剤は、本明細書に定められる投薬量で投与するために調製される。
【0097】
いかなる特定の理論による束縛も意図しないが、免疫複合体SLEトリガが、IFNα及びIFNωを含むがIFNβを含まないI型IFNを引き起こすことが示唆されている。したがって、本発明のIFNα/ωβ抗体は、抗ウイルス防御においてより重要な役割を果たし得るIFNの機能を温存する一方でこれらの病原性のI型IFNを広域に阻害する、より有効なSLE治療を提供し得る。本発明において、広域中和性IFNα/ω抗体が生成され、IFNα及びIFNωが抗原的に特異であるという示唆からの課題(Adolf、J Gen Virol 68:1669〜1676、1987)にもかかわらず、IFNα及びIFNωに存在する特異な中和性エピトープが同定された。
【0098】
IFNαとSLEとの関係は、このサイトカインがSLE患者の血清中で上昇することが実証された1979年に最初に説明された(Hooksら、N Engl J Med 301:5〜8、1979;Prebleら、Science 216:429〜431、1982)。より最近では、I型IFN遺伝子シグネチャがSLE患者のサブセットにおいて広範に説明されており、IFNシグネチャの発現範囲が疾患の臨床的及び血清学的特徴の両方と正相関することが報告されている(Karageorgasら、J Biomed Biotechnol 273907、2011;Baechlerら、Proc Natl Acad Sci USA 100:2610〜2615、2003;Bennettら、J Exp Med 197:711〜723、2003;Dall’eraら、Ann Rheum Dis 64:1692〜1697,2005;Niewoldら,Genes Immun 8:492〜502,2007)。いくつかの遺伝学関連の研究は、一部のルーパス患者の疾患を媒介するI型IFNの潜在的な役割を示している(Delgado−Vegaら、(Delgado−Vegaら、Arthritis Res Ther 12 Suppl 1 S2;Elkon and Stone;J Interferon Cytokine Res 11:803〜812、2011)。更なる研究は、SLEの病原性機序に関わる一連の遺伝子産物の発現をIFNαが調節することを明らかにしている。例えば、IFNαは、BLySの重要なB細胞の生存因子の発現だけでなくBenlysta(登録商標)(ベリムマブ)の標的もまた誘導することができる。SLE患者におけるI型IFNの活性と可溶性BLysのレベルには正相関が存在し(Ritterhouseら、Arthritis Rheum 63:3931〜3941、2011)、SLE患者におけるIFNαの遮断は、組織を採取したSLE患者の少数の皮膚病変の生検でBLySの遺伝子発現の減少をもたらした(Yaoら、Arthritis Rheum 60:1785〜1796、2009)。IL−6と同様に、IFNαもまた、Ig分泌形質細胞の生成のために重要であることが示された(Jegoら、Curr Dir autoimmune 8:124−139、2005)。B細胞コンパートメントへの直接の影響のほかに、IFNαはループス病因の他の重要なメディエータへの影響を呈する。Blancoらは、IFNαが抗原提示DCへの単球の分化を誘導し得ることを実証した(Blancoら、Science 294:1540〜1543、2001)。SLE血清検体中のIFNαの中和は、DCへの単球の分化を誘導するSLE血清の能力を大幅に減少させ、一部のSLE患者における自己抗原に対する寛容性を減少させるこのサイトカインの重要な役割を実証した。感染性又は腫瘍学的適応症のためのIFNα療法は、一部の患者において、治療中止後に治まるSLE様疾患を誘導することを示した(Burdickら、Expert Opin Drug Saf 8:459〜472、2009;Biggioggeroら、Autoimmunity 43:248〜254、2010)。
【0099】
IFNは、感染の制御を助けるために、ウイルスなどの感染性因子に応答して急速に生成される。核酸リガンドに結合した自己抗体は、SLEにおけるI型IFNの主な誘導物質であると考えられている。自己抗原のクリアランス障害と関連した自己抗体の圧倒的多数は、IFNの生産のフィードバックサイクルに至り、形質細胞様樹状細胞(pDC)への免疫複合体のFc受容体依存性の内在が、IFNの増量、及びしたがってIFNシグネチャの確立につながる。トール様受容体(TLR)7及びTLR9などの核酸受容体は、pDCのエンドソームコンパートメントにおいて濃縮され、I型IFN放出につながるカスケードを開始するこれらの核酸含有免疫複合体の主要なセンチネルであると考えられる。これに関して、TLR7及び9の複数の阻害剤が、SLEのために臨床開発中である。
【0100】
IFNα及びIFNωのどちらもSLEにおいて上昇し、同様の免疫調節作用を誘導し得る。合成リガンドを使用したTLR7及びTLR9のアゴニズム(Gibsonら、Cell Immunol 218:74〜86、2002)又はSLE患者由来の免疫複合体(本明細書に記載した)はIFNα及びIFNωタンパク質のIFNω転写物の両方を誘導し(Hanら、Genes Immun 4:177〜186、2003)、タンパク質(データは表示せず)はSLE患者において上方調節される。
【0101】
I型IFNに対する自己抗体はまた、SLE患者にも見出され、これはおそらく、過度の体液性免疫応答と組み合わされてこれらのSLE患者におけるIFNの上昇の結果である。IFNωに対する自己抗体は、検査したSLEコホートにおいて、IFNαに対する自己抗体よりも高頻度で見出されたが、一方、IFNβに対する自己抗体はごくわずかな量で検出された(Slavikovaら、J Interferon Cytokine Res 23:143〜147、2003)。IFNωによって付与される一般的な活性はIFNαの作用に似ており、SLE患者におけるIFNωの上昇が疾患の病因に寄与し得ることを示唆している(Adolfら,J Biol Chem 265:9290〜9295、1990;Adolf、Mult Scler 1 Suppl 1:S44〜47、1995;Kubesら、J Interferon Res 14:57〜59、1994;Tiefenthalerら、J Interferon Cytokine Res 17:327〜329、1997)。SLEにおけるIFNβの存在及び役割の確実性はより低い。SLE患者の血清を刺激として用いたIFNαの特異的中和はI型IFNの活性を実質的に低下させたが、一方、試験した患者の血清検体を用いたIFNβの中和はごくわずかな作用しかもたらさず、疾患の病因へのIFNβの関与がごくわずかであることを示唆している(Huaら、Arthritis Rheum 54:1906〜1916、2006)。
【0102】
臨床開発におけるI型IFNアンタゴニストの現在のアプローチは、インターフェロン受容体のIFNAR1鎖の中和に関して、IFNαサブタイプのスペクトルの中和には注目しているが、他のI型IFN(β、ε、κ、ω)、したがって、全てのI型IFNのシグナル伝達の遮断には注目していないか、又は、IFNαに特異のワクチン接種アプローチの利用に注目している(Merrillら、Ann Rheum Dis 70:1905〜1913、2011;Zaguryら、Proc Natl Acad Sci USA 106:5294〜5299、2009)。臨床試験において、SLE患者における抗IFNα抗体は、IFNシグネチャを呈する患者におけるI型IFNの部分的低下、及び探索的分析でのわずかな作用を示した(Merrillら、Ann Rheum Dis 70:1905〜1913、2011)。第2相試験において、免疫抑制剤の欠如下での抗INFα治療に伴い、インターフェロンシグネチャメトリック(ISM)で低中程度から重度の活性なルーパス被験者の予め特定されたバイオマーカー定義群において、24週に、SLEの兆候及び症状、フレア率、及びステロイド負担が改善した。興味深いことに、高ISMとして予め定義された患者には効能は認められなかった(Kalunianら、2012 ACR/ARHP Annual Meeting;Abstract # 2622、2012)。
【0103】
IFNβを含む全てのI型IFNによって誘導されるIFNシグナル伝達を中止するために、IFNAR1に対するモノクローナル抗体が予測される。SLEの病因におけるIFNβの重要な役割を支持するデータの欠如にもかかわらず、IFNβは抗ウイルス防御においてより重要な役割を果たす可能性がある。IFNβをコードする遺伝子の特異的欠失は、機能性IFNβを有する同じように曝露されたマウスと比較して、ウイルスの宿主への実質的な感受性を被る(Lazearら、J Virol 85:7186〜94;Deonarainら、J Virol 74:3403〜09、2000;Deonarainら、Circulation 110:3540〜3543、2004;Gerlachら、J Virol 80:3438〜3444、2006;Koernerら、J Virol 81:2025〜2030、2007)。
【0104】
本発明の一実施形態は、IFNα及びIFNωの産生の増加に関連する疾患の治療又は予防の方法であり、この方法は、治療的有効量の、ヒトインターフェロンオメガ(IFNω)及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプと結合しその活性を中和する単離された抗体、若しくは、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1と結合するために、配列番号23の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列及び配列番号24の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は配列番号27のVHアミノ酸配列、及び配列番号28のVLアミノ酸配列を含む単離された抗体と競合する抗体を、その疾患の治療又は予防のために十分な時間にかけて、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0105】
本発明の別の実施形態は、IFNω及びIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1とIFNARとの相互作用を、この方法を必要とする患者において防ぐ方法であって、ヒトインターフェロンオメガ(IFNω及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプと結合しその活性を中和する単離された抗体、若しくは、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合するために、配列番号23の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列及び配列番号24の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、又は配列番号27のVHアミノ酸配列及び配列番号28のVLアミノ酸配列を含む単離された抗体と競合する抗体を、IFNω及びIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1とIFNARとの相互作用を防ぐために十分な時間にかけて患者に投与することを含む。
【0106】
他の実施形態において、本発明の方法に使用可能な抗体としては、配列番号1の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合し、配列番号19の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合する抗体が挙げられる。
【0107】
本発明の抗体は、ルーパス傾向マウス及び、種々の薬剤を用いてルーパス様の表現型を誘導又は加速したマウスの系統を含む、ルーパスの動物モデルにおけるその有効性について試験することができる(Perryら、J Biomed Biotechnol、2011:271694、2011)。例えば、NZB/NZW F1マウスは、糸球体腎炎を含むヒトルーパスのいくつかの特徴を有する時間依存型且つ雌バイアスの疾患を示す。ヒトと比較すると、複数の別個のIFNαサブタイプがマウスで生産されており(van Peschら、J Virol、78:8219〜28、2004)、マウスにおけるIFNω発現が欠如しているため、疾患関連細胞におけるインビトロ試験を疾患関連IFN製剤を用いて行い、本発明の抗体の有効性及び疾患改善能を評価することができる。そのようなインビトロアッセイは、例えば、全血中のSLE免疫複合体によって誘導されるIFN産生の阻害の評価、又は、本明細書に記載のような、IFNシグネチャを低下する抗体の能力の評価である。
【0108】
本発明のIFNα/ω抗体のVH及びVLドメインは、本明細書に記載した二重特異性抗体及び分子に組み込むことができ、その二重特異性抗体は、IFNω及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプ、例えば、IFNαB2、IFNαF、IFNαG及びIFNαJ1、並びに、BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2(CLEC4C、C型レクチンドメインファミリー4、メンバーC)、又はIL−12及びIL−23のp40サブユニットと、特異的に結合し、中和する。あるいは、ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1と結合するために、配列番号23の重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号24の軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列、若しくは配列番号27のVHアミノ酸配列及び配列番号28のVLアミノ酸配列を含む単離された抗体と競合する抗体を使用してもよい。更に、配列番号1の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合し、配列番号19の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合する任意の抗体のVH及びVLドメインを使用してもよい。
【0109】
BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2(CLEC4C、C型レクチンドメインファミリー4、メンバーC)、又はIL−12及びIL−23のp40サブユニットは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を発現するマウス(Lonbergら、Nature 368:856〜9、1994;Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845〜51、1996;Mendezら、Nature Genetics 15:146〜56、1997、米国特許第5,770,429号、同第7,041,870号、及び同第5,939,598号)、又は対応するタンパク質若しくはタンパク質の細胞外ドメイン、あるいは本明細書に記載されるファージディスプレイライブラリを用いて、Balb/cマウスを免疫することによってなど、本明細書に記載した方法を用いて生成することができる。あるいは、BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2(CLEC4C、C型レクチンドメインファミリー4、メンバーC)、又はIL−12及びIL−23のp40サブユニットを用いて、二重特異性分子を生成してもよい。
【0110】
投与/製薬学的組成物
IFNα及びIFNωの産生の増加に関連する状態の処置に有効な本発明のIFNα/ω抗体の「治療的有効量」は、標準的な研究手法によって決定することができる。例えば、SLEのような免疫媒介炎症性疾患の処置において有効であろう本発明のIFNα/ω抗体は、当該技術分野で周知の関連する動物モデルにIFNα/ω抗体を投与することによって決定することができる。
【0111】
所望によりインビトロアッセイを用いて最適な用量範囲を特定することができる。特定の有効用量の選択は、当業者であれば幾つかの因子の考慮に基づいて(例えば臨床試験によって)決定することができる。こうした要因には、治療又は予防しようとする疾患、疾患症状、患者の体重、患者の免疫状態、及び当業者には既知の他の要因が含まれる。製剤に用いられる正確な用量は、投与経路、及び疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から推定することができる。本発明の抗体の有効性及び有効量について、本明細書に記載したモデルのいずれかを用いて試験することができる。
【0112】
本発明の抗体の治療上の使用のための投与方法は、薬剤を宿主に送達する任意の好適な経路であってよい。これらの抗体の医薬組成物は、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、又は鼻腔内等の非経口投与に特に有用である。
【0113】
本発明の抗体は、有効量の薬剤を製薬上許容される担体中の有効成分として含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」という用語は、活性化合物と共に投与する希釈剤、補助剤、賦形剤又は溶媒のことを指す。こうした医薬用溶媒は、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成物由来の水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まないものである。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる製薬上許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤等を含むことができる。かかる医薬製剤中の本発明の抗体の濃度は幅広く変化してよく、すなわち約0.5重量%未満、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%か、最大で15又は20重量%までであってよく、また、選択される特定の投与方法に従って、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度等に基づいて選択される。
【0114】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌済み緩衝水、及び約1ng〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明の抗体を含むように調製することができる。同様に、静脈内注射用の本発明の医薬組成物は、250mLの滅菌リンゲル溶液、及び約1mg〜約30mg、好ましくは5mg〜約25mgの本発明の拮抗物質を含むように調製することができる。非経口投与可能な組成物を調製するための実際の方法は周知のものであり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PAにより詳細に述べられている。
【0115】
本発明の抗体は、保存のために凍結乾燥させ、使用前に好適な担体に溶解させることができる。この手法は、これまでに、従来の免疫グロブリン及びタンパク製剤に有効であることが分かっており、当該技術分野において既知の凍結乾燥法及び再構成法を用いることができる。
【0116】
(詳細な説明)
以下に、本明細書の他の箇所に記載した開示にしたがった本発明の番号付けした更なる特定の実施形態を列挙する。上記の本発明の実施形態の特徴は、これらの番号付けされた更なる実施形態の各々及び全てにもまた関係する。
1)(a)ヒトインターフェロンオメガ(IFNω)及び少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10のヒトインターフェロンアルファ(IFNα)サブタイプと結合し、それらの活性を中和する、単離されたモノクローナル抗体。
2)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及びIFNαJ1と結合し、活性を中和する、実施形態1に記載の抗体。
3)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG及びIFNαJ1と結合し、活性を中和する、実施形態1又は2のいずれかに記載の抗体。
4)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1及びIFNαAと結合し、活性を中和する、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の抗体。
5)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA及びIFNαH2と結合し、活性を中和する、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の抗体。
6)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA、IFNαH2及びIFNαKと結合し、活性を中和する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の抗体。
7)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA、IFNαH2、IFNαK及びIFNαWAと結合し、活性を中和する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の抗体。
8)抗体が、ヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαJ1、IFNαA IFNαH2、IFNαK、IFNαWA及びIFNα4aと結合し、活性を中和する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の抗体。
9)前記ヒトIFNω及びヒトIFNαサブタイプの活性が、転写因子2(STAT2)、インターフェロン調節因子9(IRF9)、並びに分泌胚アルカリホスファターゼ(SEAP)のシグナル伝達因子及び活性化因子を安定に発現するHEK293細胞におけるインターフェロン誘導性ISG54プロモーター下でのSEAPの阻害である、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の抗体。
10)前記抗体が、実施例3における「親和性の測定」の項で定義した条件下で、約5×10
-8M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満、又は約1×10
-12M未満のIC
50値でヒトIFNωの活性を阻害し、且つ、5×10
-8M未満、約1×10
-8M未満、約1×10
-9M未満、約1×10
-10M未満、約1×10
-11M未満、又は約1×10
-12M未満のIC
50値でIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1の活性を阻害する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の抗体。
11)前記抗体が、約5×10
-9M未満、約1×10
-9M未満、約5×10
-10M未満、約1×10
-10M未満、約5×10
-11M未満、約1×10
-11M未満、約5×10
-12M未満又は約5×10
-12M未満の解離定数(K
D)のヒトIFNωと結合し、約5×10
-9M未満、約1×10
-9M未満、約5×10
-10M未満、約1×10
-10M未満、約5×10
-11M未満、約1×10
-11M未満、約5×10
-12M未満、又は約5×10
-12M未満のK
DのヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG又はIFNαJ1と結合する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の抗体。
12)前記抗体が、ヒトIFNω、並びにヒトIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1との結合のために、以下を含む単離抗体と競合する、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の抗体。
a)重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列(配列番号23)、及び軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列(配列番号24)、又は、
b)VHアミノ酸配列(配列番号27)、及びVLアミノ酸配列(配列番号28)を含む単離された抗体である。
13)前記抗体が、配列番号1の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNωと結合する、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の抗体。
14)前記抗体が、配列番号1の残基F27、L30、及びR33でIFNωと結合する、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の抗体。
15)前記抗体が、配列番号1の残基P26、K31、及びR34からなる群から選択される少なくとも1つのIFNω残基と更に結合する、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の抗体。
16)前記抗体が、配列番号1の残基R22、R23、I24、S25、P26、K31、D32、R34、D35、Q40、K134、M146、E147、M149、K150、F153及びL154からなる群から選択される少なくとも1つのIFNω残基と更に結合する、実施形態14又は15のいずれか1つに記載の抗体。
17)前記抗体が、配列番号19の残基F27、L30、及びR33の1つ以上でIFNα4aと結合する、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の抗体。
18)前記抗体が、配列番号19の残基F27、L30、及びR33でIFNα4aと結合する、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の抗体。
19)前記抗体が、配列番号19の残基H26、K31及びR34からなる群から選択される少なくとも1つのIFNα4a残基と更に結合する、実施形態17又は18のいずれか1つに記載の抗体。
20)前記抗体が、配列番号19の残基A19、G22、R23、I24、S25、H26、C29、K31、D32、H34、D35、V143、A146、E147、M149、R150及びS153からなる群から選択される少なくとも1つのIFNα4a残基と更に結合する、実施形態17〜19のいずれか1つに記載の抗体。
21)前記抗体がウイルス誘導性白血球インターフェロンの活性を阻害する、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の抗体。
22)前記ウイルス誘導性白血球インターフェロンの活性が、100U/mLのインターフェロンによって誘導された全血中におけるIP−10の放出である、請求項21に記載の抗体。
23)前記活性が、50μg/mLの抗体の存在下で50%超阻害される、請求項22に記載の抗体。
24)前記抗体が、全身性エリテマトーデス(SLE)免疫複合体によって誘導されるIFNの活性を阻害する、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の抗体。
25)前記活性が、約50%超阻害される、請求項24に記載の抗体。
26)抗体であって、
a)重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列(配列番号23)、及び軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列(配列番号24)、又は、
b)重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列(配列番号27)、及び軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列(配列番号28)を含む、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の抗体。
27)前記抗体がヒトインターフェロンβ(IFNβ)と結合せず、中和しない、実施形態1〜26のいずれか1つに記載の抗体。
28)前記抗体がIFNαDと結合せず、中和しない、実施形態1〜27のいずれか1つに記載の抗体。
29)前記抗体が、ヒト、ヒト化、又はヒト適応型である、実施形態1〜28のいずれか1つに記載の抗体。
30)前記抗体が、IgG1型、IgG2型、IgG3型、又はIgG4型アイソタイプである、実施形態1〜29のいずれか1つに記載の抗体。
31)前記抗体がヒ二重特異性である、実施形態1〜30のいずれか1つに記載の抗体。
32)前記抗体が、BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2、又はIL−12若しくはIL−23のp40サブユニットと結合する、実施形態31に記載の抗体。
33)実施形態1〜32のいずれか1つに記載の抗体と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
34)IFNα及び/又はIFNωの産生の増加に関連する疾患の治療又は予防に使用するための、実施形態1〜32のいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態33に記載の医薬組成物。
35)IFNα及び/又はIFNωの産生の増加に関連する疾患が、免疫媒介炎症性疾患であり、所望により、前記免疫媒介炎症性疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、又は関節リウマチである、実施形態34にしたがった使用のための、実施形態1〜32のいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態33に記載の医薬組成物。
36)患者がI型インターフェロンシグネチャを呈する、実施形態34又は35にしたがった使用のための、実施形態34又は35のいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態33に記載の医薬組成物。
37)前記抗体が二重特異性抗体であり、前記二重特異性抗体が、BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2、又はIL−12及びIL−23のp40サブユニットと結合する、実施形態34〜36にしたがった使用のための、実施形態1〜32のいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態33に記載の医薬組成物。
38)患者におけるIFNω及びIFNαサブタイプIFNαB2、IFNαC、IFNαF、IFNαG及び/又はIFNαJ1とIFNARとの相互作用の阻害における使用のための、実施形態1〜32又は37のいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態33に記載の医薬組成物。
39)前記患者が免疫媒介炎症性疾患を有し、所望により、前記免疫媒介炎症性疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、乾癬、原発性シェーグレン病、全身性硬化症、又は関節リウマチである、実施形態38にしたがった使用のための抗体又は医薬組成物。
40)患者がI型インターフェロンシグネチャを呈する、実施形態38又は39にしたがった使用のための抗体又は医薬組成物。
41)前記抗体が二重特異性抗体であり、前記二重特異性抗体が、BLys、CD40L、IL−6、CD27、BDCA2、IL−12及びIL−23のp40サブユニット、又はBDCA2と結合する、実施形態38〜40のいずれか1つにしたがった使用のための抗体又は医薬組成物。
【0117】
次に本発明を以下の具体的かつ非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0118】
実施例1.免疫付与、ファージパニング、抗体の特徴付け、及び結晶学研究に使用されるヒトI型IFN抗原の生成:
以下を含む、12の個別の組換えヒトI型IFNα(αA(α2a)(配列番号5)、αB2(α8)(配列番号6)、αC(α10)(配列番号7)、αD(α1)(配列番号8)、αF(α21)(配列番号9)、αG(α5)(配列番号10)、αH2(α14)(配列番号11)、αI(α17)(配列番号12)、αJ1(α7)(配列番号13)、αK(α6)(配列番号14)、α4b(α4)(配列番号15)、αWA(α16)(配列番号16))、及びチンパンジーIFNω(chimp IFNω)(配列番号3)を、配列番号17〜21のようなシグナル配列を用い、標準的な方法を用いて、HEK 293細胞において発現した。発現レベル及び可溶性を改善するために、ヒトIFNωの80位のIFN−ω(T80E)で単一のアミノ酸変異体を生成し、HEK 293細胞において発現した。T80E IFNω変異体(配列番号2)は、野生型タンパク質と同等の活性を有していた。
【0119】
実施例2.IFNα及びIFNωと結合し中和する抗体の生成
マウスの接種
C2595の生成
ヒトIFN−α、チンパンジーIFN−ω、及びカニクイザルIFN−ωの混合物をBALB/cマウスに複数回腹腔内接種した。0日目にマウスにチンパンジーIFN−ωを接種した。14日目に、同じマウスにチンパンジー及びカニクイザルのIFNω、IFNαD、IFNαJ1、IFNαC、IFNαB2、IFNαH2、IFNαA、IFNα4a、IFNαG、IFNαF、IFNαWA及びIFNαIの混合物を接種した。208日目に、同じマウスにカニクイザルIFN−ω、ヒトIFNα4b、IFNαA、IFNαD、及びIFNαKの混合物を接種した。221日目に、同じマウスにカニクイザルIFN−ω、ヒトIFNαJ、IFNαI、IFNα4a、IFNαA及びIFNαF.の混合物を接種した。接種後、特異的IgG力価を評価した。十分な力価が得られた直後に、膵細胞を単離してFO細胞と融合した。得られたハイブリドーマを96ウェルプレートに播種して10日間培養した。まず、チンパンジーIFN−ωの結合及びヒトIFNαA、IFNαH2、IFNαD、及びIFNα4aの混合物の結合に関して、ELISAを用いて一次スクリーンによって抗原特異性クローンを同定した。IFN−α及び/又はIFN−ωへのハイブリドーマの結合は、Luminex多重アッセイによって更にスクリーニングした。更なる研究のために、IFNα及びヒト並びにカニクイザルのIFNωのほとんどに広域結合するクローンを選定した。
【0120】
ファージディスプレイライブラリ
ヒトI型IFN結合性Fabは、de novo pIXファージディスプレイライブラリから選択した(Biol.397:385〜396、2010;国際特許出願公開第WO2009/085462号、米国特許公開第US2010/0021477号、米国特許公開第US2012/0108795号)。
【0121】
IFWM43の選定
pIXファージディスプレイライブラリは、ヒト野生型IFN−α配列C末端ポリヒスチジンタグの発現から生成され、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した、精製されたI型IFNαA(IFNα2)に対してパニングした。3ラウンドのパニングを用いた。第1、第2、及び第3ラウンドのパニングに、それぞれ、100nM、10nM及び1nMのビオチン化抗原を使用した。3ラウンドのパニング後に採取したファージミドクローン由来のモノクローナルFabについて、標準のELISAを用いて、それらが結合するチンパンジーIFNω、ヒトIFNα2、IFNα1、IFNαH2、IFNαG、IFNα F及びアビジンに関して一次スクリーニングした。ELISAにおいて、IFNα及びIFN−ωに特異的に結合したFabフラグメント(Fab)を配列決定し、それらが異なるV領域配列を有している場合には、一意のIFNバインダーとして同定した。それらのFabを、ヒトIgG1 mAbに変換し、抗炎症活性の同定と関係する細胞ベースの一連のアッセイにおいてそれらの中和活性を更に試験した後、IFNバインダーとして同定した。
【0122】
IFWM88の同定
pIXファージディスプレイライブラリは、ヒト野生型IFN−α配列C末端ポリヒスチジンタグの発現から生成され、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した、精製されたI型IFNαG(a5)に対してパニングした。3ラウンドのパニングを用いた。第1、第2、及び第3ラウンドのパニングに、それぞれ、100nM、10nM及び1nMのビオチン化抗原を使用した。3ラウンドのパニング後に採取したファージミドクローン由来のモノクローナルFabについて、標準のELISAを用いて、それらが結合するチンパンジーIFNω、ヒトIFNα2、IFNα1、IFNαH2、IFNαG、IFNα F及びアビジンに関して一次スクリーニングした。ELISAにおいて、IFNα及びIFN−ωに特異的に結合したFabフラグメント(Fab)を配列決定し、それらが異なるV領域配列を有している場合には、一意のIFNバインダーとして同定した。それらのFabを、ヒトIgG1 mAbに変換し、抗炎症活性の同定と関係する細胞ベースの一連のアッセイにおいてそれらの中和活性を更に試験した後、IFNバインダーとして同定した。
【0123】
生成した抗体の可変領域のアミノ酸配列は以下の通り:IFWM43 VH:配列番号23;IFWM43 VL:配列番号24;IFWM88 VH:配列番号25;IFWM88 VL:配列番号26;C2595 VH:配列番号
27;C259
5 VL:配列番号28。C2595可変領域はヒトIgG1定常領域に移され、得られた抗体はM3239と命名した。IFWM43はM43とも呼ばれ、IFWM88はM88と呼ばれる。
【0124】
実施例3.IFNα及びIFNωと結合し中和する抗体の特徴付け
方法
親和性の測定
抗体の結合親和性は、ProteOn(Bio−Rad Hercules、カリフォルニア州)でSPR技術を用いて行われた。製造業者の推奨した標準NHS/EDC化学を用いて、ヤギの抗ヒトFc抗体(製造)をGLCチップ(Bio−Rad Hercules、カリフォルニア州)にアミンカップリングした。次に、抗IFN mAbを、抗体とカップリングしたチップに30μL/分の流量で2分間負荷した。50μL/mLの流量で2分間、ランニング緩衝液(緩衝液の組成)で洗浄した後、1:3希釈で100nM〜1.23nMまでの範囲の5つの異なる濃度で、組換えIFN抗原を3分間会合させ、10分間解離させた(どちらも50μL/mLの流量で)。チップは、異なる抗原の実行の間に各方向において100mMのリン酸を用いて生成した。ProteOnマネージャ(Bio−Rad Hercules、カリフォルニア州)を用いて、データ解析を行った。センサーグラムは、mAbによって分類した。(インタースポット又はブランクチャネル基準のいずれかを使用して)整列及び基準補正を適用した後、SPRデータを運動速度定数のラングミュアモデルにグローバルに適合させた(K
D=k
off/k
on、式中、K
D=平衡解離定数、k
on=会合速度定数、k
off=解離速度定数)。
【0125】
ISREレポーター遺伝子アッセイ(「ISREレポーター遺伝子アッセイ」)
完全に活性なI型IFNシグナル伝達経路を発現する(STAT2及びIRF9を安定に発現する)ように操作され、IFNα/β誘導性ISG54プロモーターの制御下でSEAPレポーター遺伝子でトランスフェクトされた、HEK−Blue(商標)IFN−α/β細胞(InvivoGen(カリフォルニア州San Diego)を使用した。細胞は、10%ウシ胎児血清、100ug/mLのブラストサイジン、及び30ug/mLのゼオシンでDulbeccoの改変イーグル培地中のコラーゲンI型コーティングされたT150フラスコにて、37℃、5%CO
2で増殖した。細胞を採取し、384ウェルプレートに、1mLにつき50,000個の細胞で、各ウェルに50μLを播種した。播種した細胞を37℃、5%CO
2で24時間インキュベートした。試験したインターフェロン試料は、調製し、使用済みのHEK ISRE無血清培地中で希釈し、IFN試料50μLを各ウェルに加えた。播種した細胞を37℃、5%CO
2で20時間インキュベートした。室温で20分間インキュベートした後、60μL/ウェルのQUANTI−Blue(商標)を濾過水中に再縣濁した20μLの播種した細胞上清から、アルカリホスファターゼが検出された。Biotek Synergyプレートリーダーで650nmで光密度を読み取った。
【0126】
いくつかのISREレポーター遺伝子アッセイは、以下のように96ウェルプレートで行った。HEK−Blue(商標)IFN−α/β細胞(InvivoGen、カリフォルニア州San Diego)を、無選別培地(DMEM+Glutamax/10% FBS、Gibco)100μLに各ウェルに50,000個の細胞で播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、I型IFN刺激因子を、別の96ウェルU底トランスファープレート(BD Falcon)において、I型IFN阻害剤あり又はなしで調製し(すなわち、組換えインターフェロン、白血球IFN、IC誘導したIFNプレップ、血清等)、10分間37℃で予め温めた。インキュベータから細胞プレートを取り出し、培地を取り除き、96ウェルU底トランスファープレートにおいて調製した100μLの適切処置物と交換した。細胞を再び37℃に24時間置いた。翌日、40μLの上清を、160μLのQUANTI−Blue(商標)SEAP基材(Invivogen)を含む96ウェル平底プレート(BD Falcon)に移した。プレートを約15分間発色させ、650nmの吸光度で分光計を使用して読み取った。
【0127】
IP−10放出アッセイ
健康なボランティアからのヘパリン化全血を、アイソタイプ対照と共に、いくつかの異なるI型IFN阻害剤を含有する96ウェルU底プレートに播種した。阻害剤及び適切なアイソタイプ対照を、10% FBSを用いたRPMI培地にて希釈した。IFN及び阻害剤又はアイソタイプ対照を、10% FBSを含有する体積30μLのRPMI培地中に希釈した。それらの試料を15〜20分間予めインキュベートした後、その希釈液を含有するプレートにヘパリン化した全血240μLを加えて、270μLの最終体積を得た。試料を混合し、37℃で20〜22時間インキュベートさせた。インキュベーション後、試料を400Xgで5分間遠心分離し、血漿を回収し、後の分析のために凍結した。IP−10プロファイリングは、Milliplexサイトカイン/ケモカインキット(Millipore、Premixed 39プレックスで行った。試料の調製及びアッセイは、BioRadモデル(Bioplex(商標)200)システム及びBioplexマネージャ(商標)ソフトウェア4.1を用いてデータを収集し、製造業者の推奨に従って行った。統計解析はGraphパッドPrism V.5ソフトウェアにより行った。場合によっては、IP−10の定量化を、Qiagenの単一検体ELISAキットを用いて行った。
【0128】
SLE全血遺伝子シグネチャアッセイ
SLEドナーの全血をAsterandから市販により入手した。全血遺伝子発現解析は、IFN刺激遺伝子(ISG)が濃縮されたプライマー及びプローブを含有するカスタムTaqMan低密度アレイカードを用いて行った。アレイに含まれていた遺伝子は以下の通り。ACTB、IL6、IL10、IL13、FAS、IL15、IL21、IL17A、EIF2AK2、OASL、18S、STAT1、LY6E、PLSCR1、MX1、IFIT1、IFI44、IFI44L、IFI27、ISG15、RSAD2、CXCL10、LAG3、及びTNFSF10。製造業者の使用説明書に従って、ABI Prism 7900 HT Sequence Detectionシステム(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州)でRT−PCR増幅を行った。相対的発現値を、比較閾値サイクル(C
t)法を用いて算出した。端的に述べると、この手法は、2
-ΔΔ
Ctを用いて、較正群(健常な未処置の全血)に対して正規化した標的遺伝子の発現を算出する。ベータアクチン(ACTB)を内在性対照として選択した。閾値サイクル(C
t)は、その量の増幅した標的が一定の閾に達するサイクル数を示す。全てのインターフェロン誘導標的遺伝子及びACTBのCtデータを用いて、ΔC
t値[ΔC
t=C
t(標的遺伝子)−C
t(ACTB)]を得た。ΔΔC
t値は、対照群(5人の健常な未処置の全血ドナー)の平均を各標的のΔC
t値から減算して算出した。相対発現値は、等式2
-ΔΔ
Cを用いて算出した。本実験の3人のSLEドナーは、低密度アレイの9つのISGに関して少なくとも対照群の2倍の高さの遺伝子発現を有していた。3人の全てのドナーに対するI型IFN阻害剤の作用を比較するために、最初に、あらゆる治療/阻害剤について以下の式を用いて阻害率(%)を決定した。
(2
-ΔΔ
Ct SLE未処置血液−2
-ΔΔ
Ct阻害剤
/-ΔΔ
Ct SLE未処置血液)×100=阻害率(%)。次に、3人の全てのドナーに対する各処置についてのベースライン(%)を以下の等式によって算出した。100−阻害率(%)=ベースライン(%)。
【0129】
次に、処置群による3人の全てのドナーの平均ベースライン(%)を、9つの遺伝子のそれぞれについて決定した。この群がベースラインから100%であることを示すために、未処置SLE群(「SLE血液のみ」)を100に設定した。ベースラインは、IFN誘導遺伝子発現が0%であることを示す。最後に、9つの全ての遺伝子に対する各治療群の平均及び標準偏差を決定し、プロットした。スチューデントのt検定を行うことによって、統計的有意性を決定した。
【0130】
SLE免疫複合体の調製
SLE患者の血漿をSCIPAC(Kent、イギリス)から入手した。ISREに基づくレポーター遺伝子アッセイによって、I型IFN活性を有する血漿試料を更にIgG精製に使用した。IgGは、製造業者(Thermo SCIENTIFIC)の推奨するNAB(商標)タンパク質A/Gスピンカラムを用いて精製し、濃度を決定するためにタンパク質アッセイ(Pierce BCA)を実行した。1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に5×10
7細胞/mLで懸濁したHEK293T細胞を用いて、自己抗原溶解物を調製した。Hek293−T細胞を破壊するために、−80℃で少なくとも10分間(ただし最初の凍結は少なくとも30分間)凍結させてから37℃で融解する凍結融解サイクルを4回行い、この凍結融解後、細胞の破片を遠心分離により除去し(5分間400g)、可溶性抗原の量をタンパク質アッセイによって定量した。1:1の比率で、精製したIgGと壊死細胞の溶解物とをいっしょに30分間RTでインキュベートして、免疫複合体を形成した。次いで、各ウェルにつき合計4mLのPBMC培地において、400μg/mLの最終濃度の免疫複合体を6ウェルプレートの3つのウェルに加えた。上述のように健康ドナーのIgGを精製及び「複合化」し、対照として使うためにPBMCを刺激するために用いた。これらの研究からの馴化培地をアリコートし、阻害実験のための内因性IFNのためのソースとして使用した。健康ボランティアから単離されたIgGから調製した製剤では、IFN活性は認められなかった。
【0131】
結果
組換えI型IFNの親和性及び中和
表2は、個々の組換えヒトI型インターフェロン(IFN)に対する抗体M43、M88、及びM3239の解離定数(K
D)を示す。M43、M88、及びC2595は、少なくとも4つのIFNα分子(アルファB2、アルファF、アルファG及びアルファJ1)を中和した。アルファDについては、結合は認められなかった。
【0132】
表3は、レポーター遺伝子アッセイで測定された個々の組換えヒトI型IFNに対する抗体M43、M88、及びM3239(C2595)のIC
50値を示す。M43は、少なくとも10のIFNα分子を阻害しており、広域中和性であった。M3239はサブpM IC
50でIFNωを中和し、M43はnM範囲内のIC
50でIFNωを中和した。M88は、その非常に弱い結合のために、この特定のアッセイではIFNωに対する中和活性を示さなかった。しかしながら、親和性成熟後、M88由来の抗体は強いIFNω中和活性を示す一方で、それらの広域のIFNα中和活性を維持した(データは示されていない)。これらの抗体はいずれもIFNβと結合せず、中和しなかった。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
内因性I型IFNの中和
内因性I型IFNを中和する抗体の能力は、内因性白血球IFN(ウイルス誘導した)又は組換えIFNωで刺激したヒト全血からのケモカインIP−10(CXCL10)の放出を評価するアッセイで評価した。白血球IFN(
図1A)及び組換えIFNω(
図1B)の両方の用量依存性阻害が、M43及びC2595に認められ、ウイルス誘導された白血球によって精製されるような広範なスペクトルのI型の活性を中和する抗体の能力が示された。内因性白血球IFNはSigma(カタログ番号I4784−1MU)から購入した。
【0136】
疾患関連IFNミリューの中和
SLEに存在するI型IFNミリューをより正しく代表するために、刺激としてのSLE免疫複合体誘導したIFNを減少する抗体の能力について、抗体を試験した。SLE免疫複合体誘導したIFNは、SLE患者由来の免疫複合体でヒトPBMCを刺激することによって調製し、阻害剤mAb及び対照mAbの存在下でI型IFN誘導性のレポーター遺伝子のアッセイ(上記のISREレポーター遺伝子アッセイ)に、この条件付けした培地を使用した。選択的IFNω中和性のmAbを3つの異なるIFNαアンタゴニストとの組み合わせにおいて添加したところ、等量のアイソタイプ対照mAbの存在下での抗IFNα mAbと比べて、免疫複合体誘導したIFNの総活性は更に低下した(
図2)。更に、抗IFNα/ω mAb M43は、IFNα阻害剤mAbと比べて、更なる活性の抑制を示し、IFNα及びIFNωの両方の遮断が、IFNαの中和のみの場合よりも総IFN活性を低下し得ることを示した(
図2)。
【0137】
SLE関連IFNミリューへのIFNωの寄与
上述のように、9つのIFN誘導した遺伝子の組み合わせを用いて、SLE遺伝子シグネチャのアッセイを開発した。遺伝子シグネチャを阻害する多様な抗体の能力を試験した。IFNω特異性アンタゴニストmAb(抗−ω)は同等の濃度のアイソタイプ対照mAbと比べてIFNシグネチャを下方調節し、IFN−ωがSLEにおいてIFNシグネチャを誘導する活性のI型IFNミリューの一部であることを示した。IFNω抗体とIFNα抗体との組み合わせは、IFNα又はIFNω阻害剤単独よりも、これらの患者の血液中で永続するIFNシグネチャのより顕著な抑制をもたらした(
図3)。
【0138】
実施例4競合的エピトープマッピング
エピトープ結合実験は、Octed(ForteBio、カリフォルニア州Menlo Park)を用いてリアルタイム無標識競合結合アッセイを使用して行った。イン・タンデムアッセイ形式及び古典的サンドイッチアッセイ形式の2つのアッセイ形式を使用した。
【0139】
イン・タンデムアッセイ形式では、リアルタイム運動シグナルを測定しながら、ストレプトアビジンバイオセンサーチップ(forteBio、カリフォルニア州Menlo Park)を5分間0.5μg/mLのビオチン化した組換えインターフェロンに浸漬した。次いで、それらのチップをmAbの第1セット(10μg/mL)に15分間浸漬した。その後、それらのチップをmAbの第2セット(10μg/mL)に更に10分又は15分間浸漬した。第2セットのmAbに浸漬したチップからの正の結合シグナルは、第1のmAbセットと異なるエピトープへのそれらの結合を示し、負のシグナルは、同じエピトープへのそれらの結合を示す。それらの2つのmAbセットの親和性の差による誤った結果を排除するために、その実験を逆順で、すなわち第2のmAbセットを最初に浸漬してから第1のmAbセットに浸漬して、反復した。全ての抗体及び抗原は、1mg/mLのBSA及び0.02%のTween 20を用いてPBS中に希釈した。
【0140】
古典的サンドイッチアッセイ形式では、製造業者(forteBio、カリフォルニア州Menlo Park)のプロトコルに従って、第1のmAbセットを、標準的なNHS/EDC媒介化学を用いたアミン反応性バイオセンサーチップに結合した。エタノールアミンにて5分間急冷した後、チップを組換えインターフェロン(2μg/mL)に10分間浸漬し、次いで、第2のmAbセット(15μg/mL)に10又は15分間浸漬した。カップリングmAbはMES緩衝液6.0中に希釈し、一方、ビニングmAb及び抗原は1mg/mLのBSA及び0.02%のTween 20を用いてPBS中に希釈した。
【0141】
3つのエピトープビニング実験を、以下の抗体を用いて両方のアッセイ形式を使用して行った。M43、M88、及びC2595(複数のIFNαサブタイプ及びIFNωの結合)、C2601及びM42(IFNωと結合するが、IFNαサブタイプとは弱く結合する)、並びにC2605(複数のIFNαサブタイプと結合するがIFNωとは結合せず)。様々なIFN−α分子を競合アッセイ(ヒトIFNαサブタイプIFNαA、IFNαB、IFNαC、IFNαF、IFNαG、IFNαH、IFNαJ、IFNα2、IFNα4a、及びチンパンジーIFNω並びにヒトIFNAR2−Fc分子)で試験した。
【0142】
表4は、M43の存在下での競合の結果を示し、表5はIFNAR2−Rcの存在下での競合を示す。M43とM88は試験した全てのIFNα分子及びチンパンジーIFNωへの結合に関して互いに競合した。IFNωに結合しないM42は、試験したM43を有するIFN−分子との結合に関して競合しなかった。M43は、IFNω及び多様なIFNα分子との結合に関してC2595及びIFNAR−Fcと競合した。C2605は、ほとんどのIFNαに対して、M43と結合を競合せず、これら2つの抗体が異なるエピトープに結合することを示した。強いIFNωバインダーだが弱いIFNαバインダーであるC2601はM43を有するIFNωとの結合に関してM43と結合せず、これら2つの抗体が別個のエピトープと結合することを示した。C2601又はC2605ではなく、C2595は、チンパンジーIFNω及び/又はIFNαとの結合に関してIFNAR2−Fcと競合しなかった。IFNω及び複数のIFNαサブタイプと結合する抗体、したがって別個のエピトープビンを画定する抗体は、以下の通り。BinA:mab M43、M88、C2595。IFNα又はIFNωのみと結合する抗体は別個のエピトープビンを形成する。
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
実施例5.IFNω T80E変異体との複合体における抗IFNα/ω抗体M43の結晶構造由来のM43のエピトープ
IFWM43(以下、mAbについてはM43、FabについてはFabM43)は、ヒトIFNα分子及びIFNωを広域に中和し、多くのIFNαサブタイプ及びヒトIFNωとの結合を示す。IFNαサブタイプ及びIFNωに対するその特異性に関する構造的ベースを明らかにするために、FabM43との複合体におけるIFN−ωの結晶構造を決定した。
【0146】
材料と方法
タンパク質
Hisタグ付けしたFabM43(IgG1/κアイソタイプ)及びT80E変異(本例においてIFNω及びIFNωT80Eは同義)をHEK293F細胞にて発現し、アフィニティ及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。タンパク質は、20mMのトリス、pH 7.4、50mMのNaClにおける量である。
【0147】
IFNω/FabM43複合体の結晶化
この複合体は、1.05:1.0(過剰のIFNω)のモル比でIFNωをFabM43と混合することによって調製し、20mMの酢酸Na(pH 5.5)、0.1M NaCL、及び10%グリコールで平衡したSuperdex 200カラムで精製した。精製した複合体を、Amicon−Ultra 10kDaカットオフを用いて10.24mg/mLに濃縮した。X回折に適した結晶は、記載されているように(Obmolovaら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66:927〜33、2010)、MMS播種した26%のPEG 3350、1MのLiCL、0.7%の1−ブタノールからのシッティングドロップにて得た。
【0148】
X線データ収集及び構造決定
X線データ収集については、結晶を、20%グリセロールを補充した合成母液(0.1MES(pH 6.5)、20% PEG 3350、1M LiCL)に数秒間浸し、液体窒素中でフラッシュ凍結させた。X線回折データはSwiss Light Sourceで収集した。X線データはプログラムXDS(Kabsch、Acta Crystallographica 66:125〜132、2010)で処理した。X線データ統計を表6に示す。
【0149】
構造は、Phaser(Read、Acta Crystallogr D Bio Crystallogr 57:1373〜82、2001)を用いて分子置換(MR)で解析した。MRの検索モデルはFab15(PDB ID 3NCJ;Luoら、J Mol Biol 402:708〜719、2010)及びIFN−α2(PDB ID 1RH2;Radhakrishnanら、Structure 4:1453〜1463、1996))の結晶構造であり、CαモデルはPDBにおいて入手可能である。MRに使用するために、Cα座標及びPDBでの反射データを用いてPhaserを使用してMRによってIFN−α2の完全な分子モデルを取得し、PHENIXで精密化した(Adamsら、J Syncrhrotron Radiat 11:53〜55、2004)。IFN−ω/FabM43構造はPHENIXを用いて精密化し、モデルの調製はCOOTを用いて実行した(EmSLEy and Cowtan、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60:2126〜2132、2004)。他の全ての結晶学的計算は、CCP4のプログラムスイートを用いて行った(Collaborative Computational project、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 53:240〜255、1994)。可変ドメインと定常ドメインとの間のエルボー角度は、RBOWプログラムを用いて計算した(Stanfieldら、J Mol Biol 357:1566〜1574、2006)。分子グラフィックはPyMolを用いて生成した(DeLano、Palo Alto、CA、USA、Delano−Scientific)。構造精密化統計を表6に提供する。
【0150】
【表6】
aR
merge=Σ|I−<I>|/ΣI、式中、Iは測定された反射の強度であり、<I>はこの反射の全ての測定値の平均強度である。
bR
cryst=Σ||F
obs|−|F
calc||/Σ|F
obs|、式中、F
obs及びF
calcは、観察され、算出された構造因子、R
freeは精密化の前にランダムに選択された反射の5%のセットについて算出される。
cラマチャンドランプロットはMolProbityを用いて算出した。
da
*、b
*及びc
*における異方性の解像限界は、回折異方性スケールサーバによれば、3.0、2.5、及び2.5Åである(http://_services_mbi_ucla.edu/_anisoscale/)。回折データ統計は、これらの限界を用いた、異方性の切り捨て及びスケーリング後のデータセットに関する。
【0151】
結果
全体構造
非対称単位に6つのIFNω/FabM43複合体が存在する。これらの複合体の全てが非常に類似している。IFNω/FabM43複合体の全体的な分子構造を
図4に示す。図面の説明Hの標識はVH、Lの標識はVL、左上はIFNωである。
【0152】
IFNω分子は本質的に同一の立体配座を有し、平均Cα rmsdは0.35Å未満である。IFNωの分子構造は、平均Cα rmsdが0.53ÅであるIFN−α2と非常に類似したへリックス束であり、Cα rmsdが0.47Åである公開されているIFN−ω(pdbid 3se4)及びIFNβ(94の残基に関してCα rmsd 0.85Å)とほぼ同一である。しかしながら、IFN−βのABループは残基1つ分短いので、IFNα/ωとIFN−βとの間にはいくつかの有意な違いが存在する。Fab分子はまた、CDR−H1(G
26GTF
29)(配列番号33)における短い部分を除いて同一の構造を有し、わずかに異なるバックボーン立体配座を採用する。
【0153】
エピトープ、パラトープ、及びAb/Agの相互作用
M43は、ABループ(R22とQ40の間)の残基及び残基K134、M146、M149、K150、F153並びにへリックスEのL154で構成された立体配座エピトープを認識する(表7)。パラトープは6つのCDRのうち5つからの残基で構成されている。パラトープ残基は主に疎水性であり、一連のポケットを形成し、そこに、短いABへリックスの残基F27、L30、K31及びR33の側鎖がドッキングする。抗体と抗原の相互作用は、ほとんどがvdw及び疎水性パッキングのように思われる。抗体と抗原の間には少数のH結合しかなく、それらのほとんどにバックボーン−バックボーン又は側鎖−バックボーンの相互作用が関与している。Ab/Ag相互作用の大部分は、ABへリックスのいくつかの残基F27、L30、K31及びR33によるものである。したがって、IFNωのこの領域がエピトープの主な部分を構成しているように見える。
【0154】
【表7】
【0155】
結合パートナーの3.9Å以内の全ての残基は接触残基とみなす。抗体VL及びVHの残基は順に番号付けされる。
【0156】
抗体の中和形態
IFNAR1及び/又はIFNAR2との複合体中のIFNα/ωの結晶構造は最近報告されている(Thomasら、Cell 146:621〜632、2011)。M43/IFNα4の構造とIFNω/IFNAR1/IFNAR2複合体との比較は、M43重鎖とIFNAR2の明らかなオーバーラップを示している。したがって、M43はIFNAR2/IFN相互作用を遮断することによって中和する。
【0157】
実施例6.IFNωT80E又はIFNα4Aとの複合体中のFab357(C2595のFab)の結晶構造からのC2595のエピトープ
C2595(以下、mAbに関してはC2595、Fabに関してはFab357)は、複数のヒトIFN−α分子及びマウスハイブリドーマから得たIFNωを中和する抗体である。V領域をクローンし、ヒト重鎖及び軽鎖(IgG1κアイソタイプ)にキメラ化して、組換えFab357を生成した。IFN−ω/Fab357及びIFN−α4A/Fab357の結晶構造を決定した。
【0158】
材料及び方法
タンパク質
Hisタグ付けしたFab357(IgG1/κアイソタイプ)及びT80E変異ヒトIFNω(以下、IFNωT80E。IFNωと、T80Eを有するIFNωとは、本実施例では同義)をHEK293F細胞において発現させ、アフィニティ及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。タンパク質は、20mMトリス(pH 7.4)、50mM NaClにおける量である。)。IFNα4Aは、20mMトリス(pH 7.4)、50mM NaClにおいて、Crown Bioscience Inc.から入手した。
【0159】
IFN−α4A/Fab357複合体及びIFN−ω/Fab357複合体の結晶化
IFNα4A/Fab357複合体は、1.05:1.0のモル比でIFNα4AとFab357とを混合することによって調製し、0.1M NaCLを用いて、20mMのMES(pH 6.5)にて、SuperDex 200カラムで精製した。精製した複合体を5.5mg/mLに濃縮した。回折に適した結晶は、タンパク質溶液及び20% PEG 3350及び播種した0.2Mのクエン酸アンモニウムの等量の混合物を含むシッティングドロップ中で増殖した。
【0160】
IFNω/Fab357複合体は、1.17:1.0(過剰のIFNω)のモル比で、4℃で2時間インキュベートしたIFNωとFab357とを混合することによって調製し、このIFNω/Fab357複合体を、20mM HEPES(pH 7.5)、0.1M NaCLで平衡したSuperdex 200カラム(GE Healthcare)で精製し、6.8mg/mLに濃縮した。X回折に適した結晶は、タンパク質複合体と、播種した100mMのMES(pH 6.5)、18% PEG 3K、0.2M LiClとの混合物を含むシッティングドロップから得た。
【0161】
X線データ収集及び構造決定
X線データ収集については、IFN−α4A/Fab357及びIFNω/Fab357の結晶を、20%グリセロールを補充した合成母液(それぞれに対応して、20% PEG 3350、0.2Mクエン酸アンモニウム、プレート10/20/11−MMS−A10;及び0.1MES(pH 6.5)、18% PEG 3350、0.2M LiCL、プレート12/21/2011−B11(R))中に数秒間浸漬し、液体窒素でフラッシュ凍結した。X線回折データは、それぞれ、Advance Photon Source of Argonne National Lab及びSwiss Light Sourceで収集した。X線データはXDSプログラムにより処理した。X線データ統計を表8に示す。
【0162】
構造は、Phaserを用いた分子置換(MR)で解析した。MRの検索モデルは、Fab15(PDB ID 3NCJ)、及びM43との複合体としてのIFNωの結晶構造であった。PHENIX
5を用いてそれらの構造を精密化し、COOTを用いてモデルの調整を実行した。他の全ての結晶学的計算は、CCP4の一連のプログラムを用いて行った。分子グラフィックはPyMolを用いて生成した。構造精密化統計を表8に提供する。
【0163】
【表8】
a R
merge=Σ|I−<I>|/ΣI、式中、Iは測定された反射の強度であり、<I>はこの反射の全ての測定値の平均強度である。
b R
cryst=Σ||F
obs|−|F
calc||/Σ|F
obs|、式中、F
obs及びF
calcは、観察され、算出された構造因子、R
freeは精密化の前にランダムに選択された反射の5%のセットについて算出される。
【0164】
ラマチャンドランプロットはMolProbityを用いて算出した。
【0165】
結果
全体構造
両方の結晶構造中に、非対称単位に1つの抗原/抗体複合体が存在している。代表的な分子構造の全体を
図5に示す。Fab分子は両方の結晶において非常に類似している。IFNα4Aの立体配座はIFNα4A/FabM88のそれと非常に類似している。IFNω/Fab357の構造については、IFNωのモデルは残基R22〜P39及びL118〜L154のみを含む。IFNωの不足している残基は、結晶パッキングがそれらの存在を排除するため、結晶の無秩序の結果ではない。明らかに、IFNωのタンパク質分解切断は、結晶化中に発生した。コールドボックス内でシッティングしている同じ複合体のその部分がいくらかのプロテアーゼ分解を受けていた証拠があるが、そのパターンは、結晶中で確認されたものと同一ではなかった(データは示されていない)。にもかかわらず、IFNωの結合領域はよく秩序だっている。
【0166】
エピトープ、パラトープ、及びAb/Agの相互作用
C2595は、IFNα4AとIFNωの両方で、(R/G22とR/H34の間の)ABループの残基及び残基V143、M/A146、E147並びにヘリックスEのR/K150を含んで成るほぼ同一の立体配座エピトープを認識する(表9)。パラトープは、6つのCDRのうちの4つ(CDR−L1、L3、H2、及びH3)からの残基を含んで成る。パラトープ残基は主に疎水性であり、一連のポケットを形成し、そこに、短いABへリックスの残基F27、L30、K31及びR33の側鎖がドッキングする。抗体と抗原の相互作用は、ほとんどがvdw及び疎水性パッキングのように思われる。抗体と抗原の間には少数のH結合しかなく、それらのほとんどにバックボーン−バックボーン又は側鎖−バックボーンの相互作用が関与している。Ab/Ag相互作用の大部分は、ABへリックスのいくつかの残基F27、L30、K31及びR33によるものである。したがって、IFNωのこの領域がエピトープの主な部分を構成しているように見える。
【0167】
【表9】
【0168】
結合パートナーの3.9Å以内の全ての残基は接触残基とみなす。抗体VL及びVHの残基は順に番号付けされる。
【0169】
抗体の中和形態
C2595はIFNAR2/IFN相互作用を遮断することによって中和する。
【0170】
実施例7.IFNα4Aとの複合体における抗−IFNα抗体M88の結晶構造由来のM88のエピトープ
IFNα4Aとの複合体における抗−IFN抗体M88の結晶構造は2.5Åに対して決定した。主エピトープはIFNのABループのヘリカル要素A19〜D35である。M88の結合はIFNAR2の相互作用を防ぐであろう。したがって、M88はIFNAR2ブロッカーである。その構造はM88の結合の交差反応性を明らかにする。
【0171】
IFWM88(以下、mAb及びFabに関してそれぞれM88及びFabM88)は、ヒトIFNαを中和する抗体である。M88 mAbは、IFNαの多くのサブタイプとの結合を示すが、ヒトIFNωとの結合はほとんど示さない。
【0172】
材料及び方法
タンパク質
Hisタグ付けしたFabM88(IgG1/カッパアイソタイプ)をクローンし、HEK293F細胞において発現し、アフィニティ及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。Fabは、20mMのトリス(pH 7.4)、50mMのNaClに受け取られた。IFNα4aは、(20mMのトリス(pH 7.4)、50mMのNaClにおいて)Crown Bioscience Inc.から入手した。
【0173】
IFNα4A/FabM88複合体の結晶化
この複合体は、IFNα4AとFabM88とを、1.05:1.0(過剰のIFNα4A)のモル比で混合し、4℃で1時間インキュベートし、20mMのトリス(pH 8.0)、10%グリセロール、0.1MのNaClで20倍希釈してから、Amicon−Ultra 10kDaカットオフを用いて9.25mg/mLに濃縮することによって調製した。最初の結晶化は、IH1、IH2及びPEGスイート(Qiagen)で設定した。複合体の結晶化は、Oryx4ロボット(Douglas Instruments)を使用して、20℃で蒸気拡散法により行った。IH2#E12〜25% PEG 3K、0.2Mのクエン酸アンモニウムから結晶が現れた。これらの最初の結晶を用いて、結晶化シードを調製した。結晶の質を改善するために、IFNα4A/FabM88複合体を、20mmのMES(pH 6.5)、0.1MのNaCl、10%グリセロールで平衡したSuperdex 200カラム(GE Healthcare)で精製し、8.16mg/mLに濃縮した。X回折に適した結晶は、記載されているように(Obmolovaら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66:927〜935、2010)MMS播種した28%のPEG 3K、0.2Mのクエン酸アンモニウムから得た。
【0174】
X線データ収集及び構造決定
X線データ収集のために、1つの結晶を数秒間、20%グリコールを補充した母液に浸し、95Kで窒素のストリームにおいてフラッシュ凍結した。X線回折データは、Osmic(商標)VariMax(商標)共焦点光学系、Saturn 944 CCD検出器、及びX−stream(商標)2000極低温冷却システム(Rigaku、テキサス州)を備えたRIgAku MicroMax(商標)−007HFマイクロフォーカスX線ジェネレータを用いて収集した。回折強度は半分度画像で235度の結晶回転にわたって検出された。X線データをXDSプログラムにより処理した。X線データ統計を表10に示す。
【0175】
構造は、Phaserを用いた分子置換(MR)で解析した。MRの検索モデルは、Fab15(PDB ID 3NCJ)及びIFNα2(PDB ID 1RH2(このCαモデルはPDBにおいて入手可能であった)の結晶構造であった。MRに使用するために、Cα座標及びPDBでの反射データを用いてPhaserを使用してMRによってIFNα2の完全な分子モデルを取得し、PHENIXで精密化した。PHENIXを用いてIFNα4A/FabM88の構造を精密化し、COOTを用いてモデルの調整を実行した。他の全ての結晶学的計算は、CCP4のプログラムスイートを用いて行った。可変ドメインと定常ドメインとの間のエルボー角度は、RBOWプログラムを用いて計算した。全ての分子グラフィックはPyMolを用いて生成した。構造精密化統計を表10に提供する。
【0176】
【表10】
a 高分解能シェル値はカッコ内に示す。
b 完成度が低いのは、高分解能シェルは検出器の角にのみ反射を包含するため。
【0177】
結果
全体構造
IFNα4A/FabM88複合体の全体的な分子構造を
図6に示す。非対称単位にこれらの複合体は2つ存在する。2つの独立したIFNα4A分子の分子モデルは、一方に残基7〜102及び113〜160を、もう一方に12〜102及び113〜160を含む。両方の分子中の残基103と112との間の接続ループは無秩序である。2つのFab分子は軽鎖に関しては1〜212の残基、重鎖に関しては1〜221の残基を含む。C末端6xHisタグ及び鎖間ジスルフィド結合は無秩序である。
【0178】
2つのIFNα4A分子は、122のCα原子に対して0.132Åの平均RMSDを有する本質的に同一の立体配座を有する。それら2つのFab分子は、Fab全体に対して0.5Å未満の平均RMSDを有する同一の構造もまた有する。興味深いことに、それら2つのFabはRBOWに従ってほぼ同一のエルボー角度(172度及び174度)を有する。
【0179】
IFNαの構造
IFNα4A(
図7A)の分子構造は、0.5〜0.7Åの平均Cα rmsdを有するIFNα2と非常に類似している。それはまた、IFNω(
図7B、112の残基に関して0.61ÅのCα rmsd)及びIFNβ(
図7C、94の残基に関して0.85ÅのCα rmsd)とも非常に類似している。IFNβのABループにより短い残基が1つあるために、IFNα/ωとIFNβの間にはいくつかの有意な違いがある。
【0180】
エピトープ、パラトープ、及びAb/Agの相互作用
M88は、ABループ(A19とD35の間)の残基及びへリックスEの残基V143、A146、E147及びR150で構成された立体配座エピトープを認識する(表11)。パラトープは6つの全てのCDRからの残基で構成されている。パラトープ残基は主に疎水性であり、一連のポケットを形成し、そこに、短いABへリックスの残基F27、L30、K31及びR33の側鎖がドッキングする。抗体と抗原の相互作用は、ほとんどがvdw及び疎水性パッキングのように思われる。抗体と抗原の間には少数のH結合しかなく、それらのほとんどにバックボーン−バックボーン又は側鎖−バックボーンの相互作用が関与している。Ab/Ag相互作用の大部分は、ABへリックスのいくつかの残基F27、L30、K31及びR33によるものである。したがって、IFNα4Aのこの領域がエピトープの主な部分を構成している。VLのF50は、構造の抗原と直接接していない。しかしながら、その側鎖は、結合に関与するY32(VL)及びP105(VH)の近くにある。この残基はおそらく、結合を有利にするために、CDR−H3の局所構造をそれが支持することから選択された。
【0181】
【表11】
【0182】
結合パートナーの3.9Å以内の全ての残基は接触残基とみなす。抗体VL及びVHの残基は順に番号付けされる。LHI及びABJは2つの複合体を代表する。
【0183】
交差反応性及び親和性の改善のための、構造に基づくライブラリの設計
M88はIFNαサブタイプの多くと強く結合するが、IFNωとの結合は弱い。現在の複合体の構造及びIFNωの構造を用いた分子モデリングに基づく、2つの戦略が可能である。1つの戦略は、IFNα4A/M88構造内の現在の接触の全てを維持する一方で追加のAb/Ag相互作用を生成することによりCDR−L1(extL1ライブラリ)を延長することである。構造及び配列の比較は、全てのIFNαサブタイプで5つの残基表面パッチ(D32、H34、D35、Y130及びK134)が100%保存されたことを示している(表12)。
【0184】
【表12】
【0185】
これらの5つの残基のうちIFNωにおけるH34の代わりにR34を除く4つの残基もまた保存された。CDR−L1は、この良好に保存された表面パッチから離れている。したがって、より長いCDR−L1、例えば3−1−1正準構造に追加の6つの残基を有する生殖細胞系列IGKV4−1(B3)のものなどは、このパッチと接触するために十分に長くなるであろうと仮定される。より長いCDR−L1は全てのIFNαサブタイプ及びIFNωに追加の相互作用をもたらし、それにより、親和性及び特異性広域化の両方を改善するであろう。延長されたCDR−L1の配列は、ライブラリからのファージディスプレイによって最適化することができる。ファージディスプレイライブラリの設計は表13に示されている。その抗原と反対側を向いているextL1の位置はランダム化されていない。VLのF50位のみが、非ヒト生殖細胞系列の残基である。構造上、それはCDR−L3に支持を提供するように見える。したがって、それによる延長CDR−L1の支持を最適化するために、この位置もまたランダム化される。
【0186】
【表13】
Xは任意のアミノ酸
【0187】
抗体の中和形態
IFNAR1及び/又はIFNAR2との複合体中のIFNα/ωの結晶構造は最近報告されている(Thomasら、Cell 146:621〜632、2011)。
図8は、IFNω/IFNAR1/IFNΑ2複合体の上にM88/IFNα4を重ねたものである。HCとIFNAR2が重なり合うことは明らかである。したがって、M88はIFNAR2/IFN相互作用を遮断することによって中和する。
【0188】
実施例8.IFNα及びIFNωの最小限のエピトープは広域のIFNα/IFNω中和活性を提供する
IFNωT80E/FabM43、IFNα4A/FabM88、IFNα4A/Fab357(C2595)及びIFNω/Fab357の結晶構造は、IFNω及び複数のIFNαサブタイプの広域中和に必要とされる最小限の共通エピトープを画定する(表14)。4つの結晶構造の抗体/抗原相互作用の解析は、IFNα4a(配列番号19)及びIFNω(配列番号1)のABループの3つの残基、F27、L30、及びR33がそれらの抗体と広範な接触を形成することを示している。これらの残基が抗体の結合に主に寄与する可能性が高い。したがって、F27、L30、及びR33は、IFNω/IFNαの交差中和エピトープの主要な要素である。
【0189】
立体配座エピトープは、ABループ(配列番号1のIFNω及び配列番号19のIFNα4aの残基22〜34)からの、短いヘリカル部分(27〜29)を有する残基と、ヘリカルEの残基(134〜154はIFNω及びIFNα2を除く全てのIFNαサブタイプ(すなわち133〜153)のヘリカルEの同じ残基である)とで構成されている。具体的には、配列番号1のIFNωの位置P26、F27、L30、K31、R33及びH34、並びに配列番号19のIFNα4aの残基H26、F27、L30、K31、R33及びH34が、中和抗体によって認識される。これらの残基は、多様なIFNαサブタイプ及びIFNω間で主に保存され、したがって、これらの抗体の交差反応性及び示差特異性を担うものであるが、異なるソースに由来する。追加的なエピトープ残基は、IFNωのR22、R23、I24、S25、D32、D35、M149、K150、又はL154及びIFNα4aの残基A19、G22、R23、I24、S25、H26、F27、C29、L30、K31、D32、R33、H34、D35、V143、A146、E147、M149、R150、又はS153である。
【0190】
【表14】