【実施例】
【0028】
以下の実施例は、例示するために提供されるが、請求の範囲に記載されている発明を制限するものではない。
実施例1
ブプレノルフィン二量体HCl塩
【0029】
ブプレノルフィン二量体を
図1に示したように合成した。
中間体2の合成:
【0030】
ブプレノルフィンHCl塩(5.0g、10.68mmol、1当量)及び炭酸カリウム(42.73mmol、4当量)を三つ首丸底フラスコに入れ、続いて無水DMSO(50ml、10倍量)を入れた。混合物を60℃まで加熱し、そして、1,2−ジブロモエタン(3.7mL、42.72mmol、4当量)をゆっくり加えた。反応混合物を、60℃にて16時間撹拌し、次に、室温に冷まし、水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、そして減圧下で濃縮して粘性液体を得た。未精製の生成物を0〜5%のMeOH/DCMを使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して黄色がかった白色の泡沫状固形物として4.2g(69%)の中間体2を得た。
中間体3の合成:
【0031】
ブプレノルフィンHCl塩(1.74g、3.72mmol)及び炭酸カリウム(2.0g、14.87mmol、4当量)を三つ首丸底フラスコに入れ、続いて無水DMSO(10mL)を入れた。混合物を60℃まで加熱し、そして7mLの無水DMSO中に溶解した中間体2(3g、5.22mmol、1.4当量)を2時間にわたって滴下して加えた。反応混合物を、60℃にて16時間撹拌し、次に、室温に冷まし、水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ(無水Na
2SO
4)、濾過し、そして減圧下で濃縮して粘性液体を得た。未精製の生成物を0〜5%のMeOH/DCMを使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して泡沫状固形物として二量体3を得た(2.8g、77%)。
二量体HCl塩の合成:
【0032】
5.5g(5.7mmol)のビ−コンジュゲート3を窒素下、室温にて50mLの酢酸エチル中で溶解した。エーテル中の2N HCl、3.43mL(6.9mmol、1.2当量)を室温にて滴下して加えた。反応混合物を室温にて更に1時間撹拌し、濾過して固形物を得た。固形物を、100mLの酢酸エチルによって更に洗浄し、減圧下で乾燥させて白色の固形物(5.8g、98%)を得た。
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6):δ9.75(br,2H)、6.88(d,J=9.2Hz,2H)、6.67(d,J=9.2Hz,2H)、4.66(s,2H)、4.23−4.42(m,4H)、3.84−3.92(m,2H)、3.40(s,6H)、3.21−3.35(m,5H)、2.98−3.20(m,7H)、2.64−2.85(m,4H)、2.12−2.26(m,4H)、1.72−1.94(m,4H)、1.38−1.52(m,4H)、1.26(s,6H)、0.99(s,20H)、0.48−0.76(m,10H)、0.32−0.42(m,4H);MS:m/z962(M+1)
+。
実施例2
インビトロアッセイ:ブプレノルフィン二量体の代謝安定性
【0033】
ヒト肝ミクロソーム(例えば、1mgタンパク質/mL)と二量体(例えば、1μΜ)のインキュベーションを、96ウェルプレート形式で示された終濃度にて、補因子であるNADPH産生系を伴って又はそれなしに、リン酸カリウム緩衝液(50mM、pH7.4)、MgCl
2(3mM)及びEDTA(1mM、pH7.4)を含む0.2mLのインキュベーション混合物(終量)中、37±1℃にて、Tecan Liquid Handling System(Tecan)又は同等物を使用して実施した。NADPH産生系は、NADP(1mM、pH7.4)、グルコース−6−ホスファート(5mM、pH7.4)及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(1ユニット/mL)から成った。ブプレノルフィン二量体をメタノール水溶液(メタノール 0.5%のv/v、又はそれ以下)中に溶解した。反応を補因子の添加によって典型的に開始し、4つの指定した時点(例えば、最長120分)において等容積の停止剤(例えば、アセトニトリル、内部標準を含めて0.2mL)の添加によって停止した。ゼロ時間インキュベーションは、基質の損失パーセントを決定するための100%値としての役目を果たした。ゼロ時間サンプル(4連にてインキュベートした)を例外として、インキュベーションを三連で実施した。無補因子(NADPHなし)インキュベーションをゼロ時間及び最長の時点において実施した。サンプルを遠心分離(例えば、10℃にて920×g、10分間)にかけ、上清画分をLC−MS/MSによって分析した。ミクロソーム及び正の対照としてのマーカー基質(例えば、基質損失を観察するためのデキストロメトルファン)と一緒に追加のインキュベーションを実施して、試験系が代謝的に適格であるか否かを判断した。
【0034】
上記サンプルをLC−MS/MS法によって分析した。それぞれのインキュベーション溶液でのサンプルに関して分析を実施した。結果を実験のタイムコースにわたるピーク率の比較によって決定した(「親維持率(%)」として主に報告する)。
【0035】
データを、LIMS(Galileo、Thermo Fisher Scientific Inc.及び報告ツール、Crystal Reports, SAPを含む)、スプレッドシートコンピュータプログラムMicrosoft Excel(Microsoft Corp.)又は同等物で計算した。変化しない親化合物の量を、LIMS、Analyst Instrument Control and Data Processing Software(AB SCIEX)又は同等物を使用して(各インキュベーションにおける大体の基質残存パーセントを決定するために)検体/内部標準(IS)ピーク面積比に基づいて推定した。
【0036】
結果:結果を
図7に示し、そしてそれは、ブプレノルフィン二量体がアッセイの継続期間中、ミクロソーム酵素の存在下で比較的安定していたことを示す。ミクロソーム酵素はブプレノルフィンなどの薬剤の代謝に主に関与する。
【0037】
該二量体は、補因子の有無に関わらずミクロソームの存在下で安定していた。通常、酵素は37℃のインキュベーション温度にて2時間以上安定していないので、アッセイを2時間で終了した。
実施例3
ブプレノルフィン二量体のストレス安定性アッセイ
【0038】
この試験は、潜在的悪用者がふくらし粉、酸又は水中での簡単な加熱などの家庭用化学製品を使用して二量体を容易に切断できることを理解する助けとなった。ブプレノルフィン二量体の安定性を、未処理の水道水中、及び酸(1N HCl)又は塩基(5%の重炭酸ナトリウム水溶液)の存在下で室温にて評価した。該二量体はそれらの条件下で比較的安定しており、これらの条件ではブプレノルフィンに分解しなかった。
図8を参照のこと。
【0039】
結果:
図8に示したように、ブプレノルフィン二量体は安定した状態を維持し、30分間もの間、極端なpH条件下にて室温であっても高い温度であっても分解してブプレノルフィンを放出することはなかった。
【0040】
これらの試験はまた、IBS−Dに罹患している患者及び健常被験者の両者でその全長に沿ってpH勾配を呈する消化管内での二量体の安定性を理解する助けともなった。pHは、胃の壁細胞からの塩酸の分泌によるpH1から結腸のpH8までの範囲に及んだ。消化管の近位部が最も酸性であり、遠位端が最も酸性が弱い。
実施例4
ブプレノルフィン二量体のレセプター結合活性
【0041】
この実施例では、以下の受容体:μ−オピオイド受容体;κ−オピオイド受容体;及びδ−オピオイド受容体、に対する本明細書中に提供したブプレノルフィン二量体の結合を例証する。
ヒトμオピオイド受容体結合アッセイ
【0042】
ヒトμオピオイド受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(Perkin Elmer #RBHOMM 400UA)からの膜を、ガラス製の組織グラインダー、テフロン(登録商標)乳棒、及びSteadfast Stirrer(Fisher Scientific)を使用して、アッセイバッファー(5mMのMgCl
2を含む50mMのTris、pH7.5)中で均質化した。膜の濃度を、アッセイプレートである96ウェル丸底ポリプロピレンプレート内で300μg/mLに調整した。試験すべき化合物を、DMSO(Pierce)、10mM中で可溶化し、次に、アッセイバッファーにより3.6nMに希釈した。プレミックスプレートとして知られている第二の96ウェル丸底ポリプロピレンプレートにおいて、60μLの6×化合物を60μLの3.6nM
3H−ナロキソンと組み合わせた。プレミックスプレートから、二連で、50μLを膜の入ったアッセイプレートに移した。アッセイプレートを室温にて2時間インキュベートした。GF/C 96ウェルフィルタープレート(Perkin Elmer #6005174)を0.3%のポリエチレンイミンによって30分間前処理した。アッセイプレートの内容物を、Packard Filtermate Harvesterを使用してフィルタープレートを通して濾過し、4℃にて0.9%の生理的食塩水で3回洗浄した。フィルタープレートを乾燥させ、下側を閉じ、そしてそれぞれのウェルに30μLのMicroscint20(Packard #6013621)を加えた。Topcount-NXT Microplate Scintillation Counter(Packard)を使用して、2.9〜35KeVの範囲で放出されたエネルギーを計測した。結果を、最大結合量である阻害を受けていないウェルと比較した。非特異的結合を、50μΜの非標識ナロキソンの存在下で測定した。ブプレノルフィン二量体の生物学的活性を
図9に示す。
【0043】
結果:
図9のグラフは、該二量体がオピオイドμ受容体に対して有意な親和性を有することを示す。オピオイド、10
−8M(〜10ng)におけるブプレノルフィン二量体のμ受容体親和性は、ブプレノルフィンのものと同様であった。
ヒトκオピオイド受容体結合アッセイ
【0044】
ヒトκオピオイド受容体を発現するクローン化HEK−293細胞(Amersham Biosciences UK Ltd. 6110558 200U)からの膜を、ガラス製の組織グラインダー、テフロン(登録商標)乳棒、及びSteadfast Stirrer(Fisher Scientific)を使用して、アッセイバッファー(5mMのMgCl
2を含む50mMのTris、pH7.5)中で均質化した。膜の濃度を、アッセイプレートである96ウェル丸底ポリプロピレンプレート内で300μg/mLに調整した。試験すべき化合物を、DMSO(Pierce)、10mM中で可溶化し、次に、アッセイバッファーにより3.6nMに希釈した。プレミックスプレートとして知られている第二の96ウェル丸底ポリプロピレンプレートにおいて、60μLの6×化合物を60μLの3.6nM
3H−ジプレノルフィン(DPN)と組み合わせた。プレミックスプレートから、二連で、50μLを膜の入ったアッセイプレートに移した。アッセイプレートを室温にて18時間インキュベートした。GF/C 96ウェルフィルタープレート(Perkin Elmer #6005174)を0.3%のポリエチレンイミンによって30分間前処理した。アッセイプレートの内容物を、Packard Filtermate Harvesterを使用してフィルタープレートを通して濾過し、4℃にて0.9%の生理的食塩水で3回洗浄した。フィルタープレートを乾燥させ、下側を閉じ、そしてそれぞれのウェルに30μLのMicroscint20(Packard #6013621)を加えた。Topcount-NXT Microplate Scintillation Counter(Packard)を使用して、2.9〜35KeVの範囲で放出されたエネルギーを計測した。結果を、最大結合量である阻害を受けていないウェルと比較した。非特異的結合を、50μΜの非標識ナロキソンの存在下で測定した。ブプレノルフィン二量体の生物学的活性を
図10に示す。
【0045】
結果:
図10には、ブプレノルフィン二量体のオピオイドκ受容体アゴニスト特性を記載する。ブプレノルフィンの単量体も二量体もκ受容体に対する親和性を失わなかった。質的には、ブプレノルフィンと同様に、オピオイドκ受容体へのブプレノルフィン二量体の結合は、濃度に従って増強される。約1μgでは、該二量体のオピオイドκ受容体親和性はブプレノルフィンのものと同様であったと評価される。
ヒトδオピオイド受容体結合アッセイ
【0046】
ヒトδサブタイプ2オピオイド受容体への三重水素化ナルトリンドールの結合を妨げる化合物の能力を試験するために該アッセイを設計した。ヒトδサブタイプ2オピオイド受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(Perkin Elmer#RBHODM 400UA)からの膜を、ガラス製の組織グラインダー、テフロン(登録商標)乳棒、及びSteadfast Stirrer(Fisher Scientific)を使用して、アッセイバッファー(5mMのMgCl
2を含む50mMのTris、pH7.5)中で均質化した。膜の濃度を、アッセイプレートである96ウェル丸底ポリプロピレンプレート内で100μg/mLに調整した。試験すべき化合物を、DMSO、10mM中で可溶化し、次に、アッセイバッファーにより6×所望の終濃度に希釈した。リガンドである
3H−ナルトリンドール(natrindole)(Perkin Elmer#NET-1065)もまた、アッセイバッファーで6nMに希釈した。
3H−ナルトリンドール(natrindole)のアリコート(50μL)を、二連で、50μLを膜の入ったアッセイプレートに移した。アッセイプレートを室温にて30分間インキュベートした。GF/C 96ウェルフィルタープレート(Perkin Elmer #6005174)を0.3%のポリエチレンイミンによって30分間前処理した。アッセイプレートの内容物を、Packard Filtermate Harvesterを使用してフィルタープレートを通して濾過し、4℃にて0.9%の生理的食塩水で3回洗浄した。フィルタープレートを乾燥させ、下側を閉じ、そしてそれぞれのウェルに30μLのMictoS=scint20(Packard #6013621)を加えた。Topcount-NXT Microplate Scintillation Counter(Packard)を使用して、2.9〜35KeVの範囲で放出されたエネルギーを計測した。結果を、最大結合量である阻害剤を含んでいないウェルと比較する。非特異的結合を、1μΜの非標識ナルトリンドール(Natrindole)の存在下で測定した。ブプレノルフィン二量体の生物学的活性は7.6nM(IC50)及び2.87(Ki)である。μ及びκオピオイド受容体と比較した場合、該二量体はδ受容体に対して親和性が低かった。
実施例5−受容体刺激活性
μオピオイド受容体アゴニスト及びアンタゴニスト機能アッセイ:ヒトμ受容体発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO−hMOR)細胞膜における[
35S]GTPγS結合アッセイ
【0047】
この実施例は、μ−オピオイド受容体媒介性シグナル伝達を刺激する本明細書中に提供したブプレノルフィン二量体の能力を例証する。簡単に言えば、Receptor Biology Inc.(Baltimore Md)からCHO−hMOR細胞膜を購入した。約10mg/mlの膜タンパク質を10mMのTRIS−HCl pH7.2、2mMのEDTA、10%のスクロース中に懸濁し、そして懸濁液を氷上に保持した。1mLの膜を、50mMのHEPES、pH7.6、5mMのMgCl
2、100mMのNaCl、1mMのDTT及び1mMのEDTAを含んでいる15mLの冷たい結合アッセイバッファーに加えた。膜懸濁液をポリトロンで均質化し、そして3000rpmにて10分間遠心分離した。次に、上清を18,000rpmにて20分間遠心分離した。ペレットを、ポリトロンを用いて10mLのアッセイバッファー中に再懸濁した。
【0048】
膜を、アッセイバッファー中でコムギ胚芽凝集素を用いてコートしたSPAビーズ(Amersham)と共に25℃にて45分間プレインキュベートした。次に、膜(10μg/ml)と結合させたSPAビーズ(5mg/ml)をアッセイバッファー中で0.5nMの[
35S]GTPγSと共にインキュベートした。基礎結合は添加した試験化合物の不存在下で起こる結合であり;この非調節結合を100%とみなし、アゴニストで刺激すれば、結合はこの値を有意に超えるレベルまで上昇する。さまざまな濃度の受容体アゴニストSNC80を使用して[
35S]GTPγS結合を刺激した。基礎結合及び非特異的結合の両方をアゴニストの不存在下で試験した;非特異的結合の決定では10μΜの非標識GTPγSを伴った。
【0049】
標準としてD−Phe−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−Thr−NH
2(CTOP)を使用したアゴニスト刺激GTPγS結合を阻害する能力を評価することによってアンタゴニストとしての機能に関してブプレノルフィン二量体を試験した。放射能をPackard Top Countで定量化した。以下のパラメーターを計算する:
%刺激=[(試験化合物のcpm−非特異的cpm)/(基礎cpm−非特異的cpm)]
*100
%阻害=(1μΜのSNC80による%刺激−試験化合物の存在下での1μΜのSNC80による%刺激)
*100/(1μΜのSNC80による%刺激−100)
【0050】
GraphPad Prismを使用してEC
50を計算した。試験した化合物に関するグラフを
図11及び12に示す。
【0051】
結果:
図11に示したデータは、ブプレノルフィン二量体が強力なμアゴニストであることを示す。該結果はまた、オピオイド、10
−6M(〜1μg)における二量体のμ受容体活性がブプレノルフィンのものと同様であることも示す。
図12のデータは、ブプレノルフィン二量体がμ−アンタゴニストとして機能しないことを示す。
実施例6
インビボ薬物動態試験
【0052】
これらの動物薬物動態試験に使用した動物はCD−1マウス(約35グラム、1時点あたりn=3)であった。試験した薬剤は、ブプレノルフィン及びブプレノルフィン二量体であった。10mg/kgをIV及び経口強制飼養により投与した。血液を、0、30分、並びに1、2、6及び24時間の時点にて採取した。血漿を収集した後に、薬剤に関して血液サンプルを以下のようにLC/MS/MSによって分析した:
【0053】
検量線を、いずれかの被験薬(10〜25000nM)で添加したマウス血漿で作成した。血漿サンプル(50μL)を、内部標準としてロサルタン又はブプレノルフィン−d
4を含んでいる300μLのアセトニトリルで抽出した。抽出物を16000×gで4℃にて5分間遠心分離した。上清(250μL)を新しいチューブに移し、N
2下、45℃にて1時間乾燥させた。サンプルを、100μLの30%のアセトニトリルで再構成し、ボルテックス処理し、そして遠心分離した。上清(90μL)をLCバイアルに移し、そして10μLをLC/MSに注入する。
【0054】
結果:
図13は、10mgの経口及びIV投与後の該二量体の血漿濃度プロライルを示す。グラフは、経口及びIV投与後の血中濃度曲線下面積の比として計測される絶対生物学的利用能が該二量体に関して1%以下であったのに対して、単量体のものが約30%であることを示す。
実施例7
インビボアッセイ:ストレス誘発性糞便排出量
【0055】
試験に使用した動物は雄CD−1マウス、平均体重約30〜35gであり、1投与群当たり平均5匹のマウスであった。通例、マウスは、飼料及び水を自由に摂取できるポリカーボネートケージに1ケージあたり3匹を収容するコロニーハウスに収容した。
【0056】
実験日に、試験化合物の胃内投与後にワイヤーメッシュ製の底を備えた幅20cm×奥行20cm×高さ15cmのケージ内に個別にマウスを収容する処置室に、マウスを移した。試験中、動物には水だけを自由摂取させた。ワイヤーメッシュ製の底を備えた背の高いケージが、マウスにストレスを誘発する新しい環境を作り出す。排出されたペレット数を1時間単位で測定した。結果を
図14に示す。
【0057】
結果:
図14は、該二量体の経口投与がプラセボ(溶媒)に対してマウスの糞便排出量を有意に低減したことを示す。調査した用量は、マウス1kgあたり25〜50mgであった。結果は、異常な感受性が示唆される糞便排出量ゼロの動物を除外した場合でさえ変化しない。
図15は、用量に従ってマウスの糞便排出量が減少することを示し、そしてそれは本当の薬理効果を示す。
インビボアッセイ:炎症後に変化したGI通過時間に対する効果
【0058】
この試験を、炎症後の胃腸の過敏症に対する試験物質の効果を評価するために設計した。炎症後に変化したGI通過を、新たに開封したマスタードのオイル(0.5%のエタノール中、95%の純粋なイソチオシアン酸アリル)を注射することによって雄CD−1マウスで誘発した。炎症後のGI管に対するストレスの効果を投薬の3〜4週間後に試験した。この時点で、GI管は過敏な状態にあった、すなわち、刺激に対して有意に大きい応答をした(痛覚過敏)。試験物質の効果を、経口投与(胃内強制飼養)及びワイヤーメッシュ製の底を備えたケージ(幅20cm×奥行20cm×高さ15cm)内にそれらを収容することによって環境的ストレスに動物を晒した後に評価した。試験中、動物には水を自由摂取させた。ワイヤーメッシュ製の底を備えた背の高いケージが、マウスにストレスを誘発する新しい環境を作り出す。排出されたペレットの数を1時間〜2時間単位で測定した。
図16を参照のこと。
【0059】
結果:
図16に示したように、1kgあたり25mgのブプレノルフィン二量体は糞便排出量によって評価されるこのモデルにおいて消化管運動を有意に減少させる。グラフはまた、マスタードオイルで処理しなかったマウスの糞便ペレット排出量は一過性であり、1時間を超えて持続しないことも示す。マスタードオイル処理動物におけるペレット排泄物の増加は2時間の時点でさえ持続する。該二量体は、2時間の時点でさえ統計的に有意な結果を伴って消化管運動を阻害し続ける。
実施例8
ナロキソン及びナルトレキソン二量体HCl塩
【0060】
ナロキソン二量体HCl塩を
図2に示すように合成した。
中間体3の合成:
【0061】
ナロキソン(5.0g、15.27mmol、1当量)及び炭酸カリウム(6.32g、45.8mmol、3当量)を500mL容の三つ首丸底フラスコに入れ、続いて無水DMF(50ml、10倍量)を入れた。混合物を60℃まで加熱し、そして1,2−ジブロモエタン(6.57mL、76.35mmol、5当量)をシリンジを介して反応混合物に加えた。反応混合物を110℃にて16時間撹拌した。TLC分析は大部分が中間体3であることを示す。反応完了後に、混合物を水(150mL、30倍量)で希釈し、酢酸エチル(100mL、20倍量)で抽出した。水層を酢酸エチル(100mL)で抽出した。組み合わせた有機部分を、塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。未精製の生成物を0〜5%のMeOH/DCMを使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して粘性オイルとして中間体3を得た(1.25g)。
中間体4の合成:
【0062】
中間体3(1.25g、2.87mmol)及び炭酸カリウム(1.59g、11.52mmol、4当量)を、化合物1(15mLのDMF中、0.57g)の入った三つ首丸底フラスコ中に加えた。混合物を60℃にて加熱し、そして、反応進行をTLCによって観察した。混合物を室温に冷まし、水で希釈し、そして酢酸エチルで抽出した(50mL×2)。組み合わせた有機部分を、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮して、黄色のシロップを得た。未精製の生成物を、0−4%のMeOH/DCMを使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、乳白色の固体としてナロキソン二量体4を得た(0.55g)。
ナロキソン二量体HCl塩5の合成:
【0063】
0.55g(0.8mmol)のビ−コンジュゲート4を窒素下、室温にて10mLの酢酸エチル中に溶解した。0.8ml(3.2mmol、4.0当量)の4M HCl中のジオキサンを室温にて滴下して加えた。反応混合物を、室温にて更に1時間撹拌し、濾過して、固形物を得た。固形物を、20mLのMTBEで更に洗浄し、減圧下で乾燥させて、白色の固体を得た(0.5g)。HPLC分析法は、235Nmにて98.2%の純度(AUC)を示す。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6):1.41−1.63(m,4H,CH
2)、1.98(d,2H,CH
2)、2.14(d,2H,CH
2)、2.63(dt,2H,CH
2)、2.88−3.19(m,6H,CH
2)、3.26−3.44(m,6H,CH
2)、3.62(d,2H,CH)、3.72−3.84(m,2H,CH
2)、3.85−3.98(m,2H,CH)、4.41(dd,4H,CH
2)、5.09(s,2H,OH)、5.58(dd,4H,CH
2)、5.82−6.02(m,2H,CH)、6.78(d,2H,Ar)、6.90(d,2H,Ar)、9.42(s,2H,NHCl)。
【0064】
ナルトレキソン二量体HCl塩を、
図3に示すように、ナロキソンをモル等量のナルトレキソンに置換して同様に合成する。
実施例9
ナロキソン二量体の代謝安定性
【0065】
ナロキソン二量体の代謝安定性を、実施例3で考察したブプレノルフィン二量体実験に類似したプロトコールを使用して調査した。約1μΜの二量体を、ヒト肝ミクロソーム(1mgタンパク質/ml)と共に最長1時間インキュベートした。インキュベーション媒質を、経時的ナロキソン形成に関してLC/MS/MSによってアッセイした。
図17に示すとおり、経時的なナロキソンの形成に関する証拠はなかった。
実施例10
ナロキソン二量体のストレス安定性
【0066】
ナロキソン二量体安定性を、未処理の水道水中、酸(1N HCl)又は塩基(5%の重炭酸ナトリウム水溶液)の存在下で室温にて評価した。プロトコールは、実施例3に記載のブプレノルフィン二量体ストレス安定性実験と同様であった。
図18に示すように、二量体は、それらの条件下及び記載した条件下で比較的安定していて、感知できるほどナロキソンに分解されることはなかった。
実施例11
ナロキソン二量体HCl塩のμ受容体結合アッセイ
【0067】
実験は、ラットオピエートμ受容体に対するトレーサーDAMGO([チロシル−3,5−
3H(N)]−[D−Ala
2、N−Me−Phe、Gly
5−ol]−エンケファリンアセタート)のナロキソン(10
−10、10
−9、10
−8、10
−7、10
−6、及び10
−5mol/L)及びナロキソン二量体(10
−10、10
−9、10
−8、10
−7、10
−6、及び10
−5mol/L)による阻害を判断するために設計した。試験物質を25℃にて60分間インキュベートした。実験を、前もって[
3H]N−DAMGOに結合させたヒトμオピオイド受容体を用いて実施した。DAMGOはヒトμオピオイド受容体に対して高い親和性を有するペプチドである。ナロキソン又はナロキソン二量体の濃度が上昇するに従って、それは、DAMGO結合を受容体へと徐々に置換するので、それにより
図19に示すように曲線が下方に下がる。ナロキソン、ナロキソン二量体、及び他の同様のアンタゴニストの結合親和性を表1に提供する。
【表1】
実施例12
ナロキソン二量体HCl塩に関する便秘アッセイ
【0068】
ナロキソン二量体は、
図20に示すように、オピオイドμアゴニストであるロペラミドの便秘効果を覆した。該試験では、1群のマウスを軽度のストレスに晒し、そしてそれは、通常、1時間当たりの糞便ペレット排出数によって計測される下痢及び消化管運動を誘発する。ロペラミドで処理した群によって排出されるペレットの数は、対照(溶媒)動物によって1時間あたりに排出されるペレットより有意に少ない。この観察ではロペラミドの便秘効果を確認する。ロペラミドの効果がナロキソン二量体によって覆された群では、1時間あたりに排出されるペレットの数は、ロペラミド処理動物によって排出されるペレットより多く、且つ、3時間以降の対照動物のものに匹敵している。結果は、ナロキソン二量体がヒトμオピオイドアゴニストであるロペラミドの便秘効果を効果的に覆したことを実証する。
【0069】
ナロキソン二量体は、概してオピオイド腸管疾患、特にオピオイド誘発便秘を処置するために吸収されることなく消化管受容体に作用すると予想されるので、ナロキソン、ナルトレキソン、ペグ化ナロキソン、及びメチルナルトレキソンを超える顕著な利益を提供する。ナロキソン二量体はまた、腹部膨満、胃運動性の低下、腹筋痙攣、及びGERD(gastroesophagaelの反射的な疾患)の処置などの他の治療用途も見つけることができた。
実施例13
デスベンラファキシン二量体HCl塩
【0070】
該化合物を
図4に示すように合成した。
【0071】
化合物2の合成:DMF中の化合物1(1当量)を、無水炭酸カリウム(3当量)の存在下、60℃にて15時間、1,2−ジブロムエタン(2当量)と反応させた。TLC分析は出発化合物の完全な消費を示す。混合物を、MTBEで希釈し、水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物2を得た。収率:61%。
【0072】
化合物3の合成:化合物2(1当量)を5℃にてメタノール(5当量)中のナトリウムメトキシドに加え、0〜5℃にて2時間撹拌した。シクロヘキサノン(2.5当量)を加え、そして混合物を0〜5℃にて4時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液によってクエンチし、そして濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル及び水で溶解した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物3を得た。収率:74%。
【0073】
化合物4の合成:レーニーニッケル(30wt%)を、酢酸(6倍量)中の化合物3(1当量)の混合物に加えた。混合物を水素(30psi)でフラッシュし、次に、140〜150psiの水素下、55℃にて3時間撹拌し、次に、室温に冷ました。混合物をセライトのパッドを通して濾過し、そして濾液を濃縮した。残渣を水中に溶解し、MTBEで洗浄し、すべての未反応材料を取り除いた。生成物を重炭酸塩溶液で中和した後に、酢酸エチル中に抽出した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物4を得た。収率:85%。
【0074】
化合物5の合成:水中の4(1当量)の撹拌溶液に、37〜40%のホルムアルデヒド(12当量)及びギ酸(6当量)を加えた。反応混合物を100℃にて22時間加熱し、次に、室温に冷ました。混合物をMTBEで洗浄し、次に、20%のNaOH溶液を使用してpH8〜9に塩基性化した。有機層を、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物5を得た。生成物を酢酸エチル中で溶解し、そして酢酸エチル中の2N HClを加えた。スラリーを30分間撹拌し、濾過し、乾燥させて、生成物5を得た。収率:79%。
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6):0.96−1.58(m,20H,CH
2)、2.62(s,12H,CH
3)、2.94(dd,2H,CH)、3.45(dd,2H,CH)、3.63(dd,2H,CH)、4.22(s,2H,OH)、4.36(t,4H,CH
2)、6.76(d,4H,Ar)、7.06(d,4H,Ar)。
実施例14
アセトアミノフェン二量体
【0075】
該化合物を
図5に示すように合成した。
中間体3の合成:
【0076】
三つ首丸底フラスコ内でアセトアミノフェン(1当量)及び炭酸カリウム(4当量)を無水DMF(10倍量)中に溶解した。混合物を60℃に加熱し、1,2−ジブロモエタン(4当量)を加えた。反応混合物を60℃にて16時間撹拌し、そしてTLC分析はアセトアミノフェンの消費を示した。混合物をMTBEで希釈し、10℃に冷まし、そして水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物3を得た。収率:65%。
化合物4の合成:
【0077】
化合物3(1当量)、アセトアミノフェン(1.2当量)及び炭酸カリウム(3当量)を無水DMF(10倍量)中に溶解し、そして混合物を60℃にて加熱し、14時間撹拌した。TLC分析は中間体3の消費を示した。混合物をMTBEで希釈し、15〜20℃にて水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物4を得た。収率:78%。
1H NMR(300MHz、DMSO−d
6):2.14(s,6H,CH
3)、4.38(t,4H,CH
2)、6.80(d,4H,Ar)、7.44(d,4H,Ar)、9.15(s,2H,NH)。
実施例15
アルブテロール二量体
【0078】
該化合物を
図6に示すように合成した。
【0079】
化合物2の合成:化合物1(1当量)を、DCM中、10mol%のPPTSの存在下で1.2当量のジヒドロピランと室温にて反応させた。反応をTLC分析で観察した。反応混合物を重炭酸塩溶液で洗浄し、有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物2を、更なる精製なしで次の工程に用いた。収率:95%。
【0080】
化合物3の合成:DCM中の化合物2(1当量)を、1.2当量の塩化アルミニウムで処理し、続いて、室温にてクロロアセチルクロリド(1.5当量)を滴下して加えた。反応混合物を室温にて16時間撹拌し、そしてTLC分析は出発物質の完全な消費を示した。反応混合物を重炭酸塩溶液でクエンチした。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物3をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物3を得た。収率:72%。
【0081】
化合物4の合成:化合物3(1当量)を、室温にてTHF中の2当量のブチルアミンと反応させた。15時間後のTLC分析では出発物質の完全な消費を示した。反応混合物を濃縮して、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物4を得た。収率:96%。
【0082】
化合物5の合成:化合物4(1当量)をTHF中に溶解し、0℃に冷ました。THF(1当量)中の水素化アルミニウムリチウム(LAH)を滴下して加え、そして混合物を室温にて3時間撹拌した。TLC分析は出発物質の消費を示す。白色の沈殿物を形成するまで飽和硫酸ナトリウム水溶液を加えた。固形物を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮して、生成物5を得た。収率(78%)。
【0083】
化合物6の合成:DCM中の化合物5(1当量)を、室温にて1.2当量のBOC無水物で処理し、続いて、飽和重炭酸ナトリウム液(2当量)で処理した。反応混合物を15時間撹拌し、そしてTLC分析は出発化合物の完全な消費を示した。有機相を分離し、濃縮して、生成物6を得た。収率(94%)。
【0084】
化合物7の合成:DCM中の化合物6(1当量)をイミダゾール(1.5当量)で処理し、続いて、TBDMSCl(1.2当量)で処理した。反応混合物を室温にて12時間撹拌し、そしてTLC分析は出発化合物の完全な消費を示した。水を反応混合物に加え、有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物7を得た。収率:85%。
【0085】
化合物8の合成:7:3の酢酸/水中の化合物7(1当量)を60℃にて10時間加熱した。TLC分析は出発化合物の完全な消費を示した。混合物を濃縮し、MTBE中に溶解し、そして重炭酸塩溶液で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物8を得た。収率:68%。
【0086】
化合物9の合成:DMSO中の化合物8(1当量)を、無水炭酸カリウム(3当量)の存在下、60℃にて15時間、1,2−ジブロムエタン(5当量)と反応させた。TLC分析は出発化合物の完全な消費を示した。混合物をMTBEで希釈し、水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物9を得た。収率:62%。
【0087】
化合物10の合成:DMSO中の化合物9(1当量)を、無水炭酸カリウム(2当量)の存在下、50℃にて15時間、化合物8(1.2当量)と反応させる。TLC分析は出発化合物9の完全な消費を示した。混合物を、MTBEで希釈し、水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。未精製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、純粋な生成物10を得た。収率:74%。
【0088】
化合物11の合成:MTBE中の化合物10(1当量)を、室温にて12時間、酢酸エチル(10当量)中の2N HClと反応させる。TLC分析は固形物の沈殿を伴った出発化合物の完全な消費を示した。固形物を濾過し、酢酸エチルと共に粉砕し、生成物11を得た。収率:88%。
1H NMR(300MHz,DMSO−d
6):1.04(s,18H,CH
3)、2.57(d,4H,CH
2)、4.42(t,2H,CH)、4.45(t,4H,CH
2)、4.49(s,4H,CH
2)、4.63(s,6H,OH及びNH)、6.71(d,2H,Ar)、7.01(d,2H,Ar)、7.29(s,2H,Ar)。
実施例16
実例となる医薬組成物
【0089】
表2中の医薬組成物を本発明の二量体の経口錠剤のために使用できる。
【表2】
実施例17
実例となる用量
【0090】
患者に投与されるべき本明細書中に提供した二量体の用量は、かなり幅広く変更できるので、医療関係者の判断対象となり得る。投薬量は、対象の年齢、体重及び医学的状態、並びに投与タイプによって適切に変更され得る。一実施形態において、1日ごとに1つの用量が投与される。どんな場合でも、投与される本明細書中に提供した二量体の量は、活性成分の溶解性、使用される処方及び投与経路といった要因に依存する。「治療的有効量」とは、我々は、統計的に有意の数の患者において容易に判断でき、且つ、有益な効果をもたらす用量を意味する。特定の実施形態において、患者は哺乳動物である。より具体的な実施形態において、患者はヒトである。特定の具体的な実施形態において、患者はイヌ、ネコ、又はウマなどの家畜哺乳類であり得る。
【0091】
例えば、IBS−D患者に好ましい投薬量は、経口投与のための単位容量中に約0.15mg/IBS−D患者の体重kg〜約7.2mg/IBS−D患者の体重kg、より好ましくは約0.7mg/患者の体重kg〜約3.0mg/患者の体重kg、更により好ましくは約1.5mg/患者の体重kgである。あるいは、約10〜約500mg、好ましくは約50〜約200mg、より好ましくは約100mgがIBS−D患者に投与される。
表3において、我々は、それら自体の適応症に関する単量体の投薬量と比較して、好ましい適応症に関する本発明による二量体の推定投薬量を提供する。これらの活性物質の範囲を拡大する際の二量体化の変形効果は表から明らかになる。
【表3】
【0092】
本明細書中に記載した実施例及び実施形態が説明の目的のみのものであり、その範囲内での様々な修飾又は変更が当業者に対して示唆され、そしてそれは本出願の要旨及び範囲内、並びに添付の請求項の範囲内に含まれるべきであることは、理解される。先の出願と本願との間に争いがある限り、あらゆる矛盾事項が本願に有利に解決されるべきである。本明細書中に引用したすべての刊行物及び特許は、あらゆる目的のためにその全体を参照によって本明細書中に援用する。