特許第6467037号(P6467037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467037受動的相互変調を測定する方法および測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467037
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】受動的相互変調を測定する方法および測定装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/29 20150101AFI20190128BHJP
【FI】
   H04B17/29 100
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-515118(P2017-515118)
(86)(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-535994(P2017-535994A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015001826
(87)【国際公開番号】WO2016041627
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】102014013968.9
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506333314
【氏名又は名称】ローゼンベルガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン エンツフェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン カインドル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シュヴァープ
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0096466(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0164504(US,A1)
【文献】 特開2005−094627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送経路(302)の測定セグメント(301)で発生される受動的相互変調を測定する方法であって、
(a)所定の周波数進行を持つ第1HF信号(u(t))および所定の周波数進行を持つ第2HF信号(u(t))を生成するステップと、
(b)前記第1HF信号(u(t))および前記第2HF信号(u(t))を前記信号伝送経路(302)に供給するステップであって、前記信号伝送経路の入力セグメント(300)で生成される第1相互変調信号成分(urPIM(t))および前記信号伝送経路の前記測定セグメント(301)で生成される第2相互変調信号成分(uPIM(t))を含有する相互変調信号が前記信号伝送経路(302)で前記第1HF信号(u(t))および前記第2HF信号(u(t))から生成されるステップと、
を包含する方法において、
(c)前記入力セグメント(300)で生成される前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))に応じて補償信号(u(t))を生成するステップと、
(d)前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))を低減または相殺するために前記補償信号(u(t))を前記信号伝送経路(302)に導入するステップと、
をさらに包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
(e)反射された相互変調信号成分urx1が測定され(206)、これから前記信号伝送経路(302)の高周波伝送特性について欠陥のある前記信号伝送経路の前記測定セグメント(301)の一つ以上の箇所が突き止められる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および/または前記第2HF信号が増幅されて(203)足し合わされて(204)から前記信号伝送経路(302)に導入されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))の少なくとも一部分が好ましくは方向性結合器(213)および/またはフィルタ(215)を使用して前記第2相互変調信号成分(uPIM(t))から分離されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記分離された部分のパワー、振幅または位相を含む一つ以上の変数が測定され(214)、前記補償信号(u(t))が前記測定された変数の少なくともいずれかに基づいて生成される(211,212)ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
導入時に前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))の極大補償が達成されるように前記補償信号(u(t))が反復法で制御されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))の前記分離された部分のパワーが極小化されるように、前記補償信号(u(t))がその振幅arPIMおよび位相φrPIMの交互調節による制御ループによって生成されることを特徴とする、請求項5および6に記載の方法。
【請求項8】
前記補償信号(u(t))が好ましくは方向性結合器(213)によって前記入力セグメント(300)と前記測定セグメント(301)との間で前記信号伝送経路(302)に導入されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))の振幅、位相および/または時間遅延のような変数が時間窓法によって求められることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1HF信号(u(t))および前記第2HF信号(u(t))が所定の異なる搬送周波数fおよびfで生成され、好ましくはデジタルの信号が前記搬送周波数の少なくともいずれかに変調されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
二つのHF信号から生成される相互変調信号が中に含有される相互変調信号成分が生成される箇所についての情報を含有するように、第1搬送周波数fおよび/または第2搬送周波数fが変調されることを特徴とする、請求項9および10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1HF信号(u(t))の周波数fが所定の初期周波数fSTARTから所定の終了周波数fENDまで所定の経時変化率df/dtで連続的に繰り返し経時変化(掃引)され、および、前記第2HF信号(u(t))が好ましくは一定の所定の周波数fで生成されることを特徴とする、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の方法を実行する測定装置。
【請求項14】
二つのHF信号を生成する二つの信号源(201,202)と、
前記二つのHF信号を合成し、それらを入力セグメント(300)および隣接の測定セグメント(301)を備える信号伝送経路(302)に導入する合成器(204)と、
前記信号伝送経路(302)で生成される相互変調信号成分を減結合するフィルタ(205)と、
前記信号伝送経路(302)の前記入力セグメント(300)で生成される前記相互変調信号の成分に応じて補償信号(u(t))を生成し、および、前記補償信号(u(t))を前記信号伝送経路(302)に結合する補償ユニット(210)と、
を備える、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記補償信号(u(t))を前記信号伝送経路に結合し、および/または、前記入力セグメント(300)から入る信号成分urx2を減結合する、好ましくは前記入力セグメント(300)と前記測定セグメント(301)との間で前記信号伝送経路に配置される方向性結合器(213)を備えることを特徴とする、請求項14に記載の測定装置。
【請求項16】
前記第1相互変調信号成分(urPIM(t))の極小化が達成されるように前記補償信号を反復法で生成する第3信号源(211)および変調器(212)を備えることを特徴とする、請求項13から15のいずれかに記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には高周波通信システム用の測定システムに関し、具体的には受動的相互変調を測定する測定装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、信号伝送経路で生成される相互変調を測定する方法であって、所定の周波数進行を持つ第1HF信号u(t)および所定の周波数進行を持つ第2HF信号u(t)が生成され、第1HF信号u(t)および第2HF信号u(t)が信号伝送経路に導入されて、相互変調積を含有する相互変調信号が信号伝送経路で第1HF信号u(t)および第2HF信号u(t)から発生される方法に関する。そのような相互変調信号は、例えば信号伝送経路における欠陥箇所の突き止めの指標を含有し、そのため不具合を突き止めるのに使用されうる。本発明はさらに、そのような方法を実行する測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[受動的相互変調(PIM)の説明]
常設の送受信設備(BTS、基地局)と端末装置(UE、ユーザ機器)との間の接続の品質は、最新のモバイルネットワークにおいて主要な役割を果たす。一方のBTSで生成される高パワーと他方のBTSおよびUEの受信器の必要な感度とによって、伝送経路における不具合は、受信器の感度、ゆえに接続の品質に大きく影響しうる。
【0004】
伝送経路で不具合を生じさせる主要な作用の一つは、相互変調である。例えば、相互変調によって、BTSにおいて高パワーで生成される二つの異なる搬送周波数を持つ二つの伝送信号は、非線形伝送挙動(しばしば単純に「非線形性」と呼ばれる)を持つ箇所で干渉信号を生成し、それらの周波数は伝送信号の周波数の整数倍の和および差である。これらの干渉信号のいくつかは、BTSの受信帯域に内含され、ゆえに通信の品質に悪影響を及ぼしうる。これらの干渉信号が受動的要素で生成される場合に、これは受動的相互変調(PIM)と呼ばれる。
【0005】
図1は、BTSからアンテナまでの信号伝送経路を示す概略図である。BTS10は、第1フィルタ11および第2フィルタ12を介してアンテナ13と接続される。BTS10、フィルタ11,12およびアンテナ13は高周波ケーブル14,15,16を介して互いに接続され、高周波ケーブルは高周波コネクタ17〜22を介してそれぞれの要素に接続される。PIMは、伝送経路のすべてのコンポーネント11〜22で生じうる。例えば、プラグコネクタの腐食、接点および金属間移行部の酸化被膜、材料の不純物、および、固締が不十分なプラグ接続が、PIMを引き起こしうる。
【0006】
伝送装置の品質を保証および点検するために、および/または、そのような不具合を突き止めるために、PIMの測定が実行される。PIMは特に高パワーで生じるため、概してこれは高伝送パワー、例えば220Wの使用によって測定される。
【0007】
[従来のPIM測定装置の構造]
PIMの測定には、特別な測定装置が利用可能である。従来のPIM分析器が図2に例として表されている。それは制御ユニット151および信号ユニット161で構成される。信号ユニット161において、適当な異なる周波数f1およびf2を持つ高周波信号が信号源113で生成されて二つのパワー増幅器114で増幅される。合成器/加算器115では、二つの伝送信号が合成されて検査される装置(検査対象装置、DUT)130に送信される。DUT130で生じるPIMがフィルタ116で選択されて測定受信器117で検出および測定される。制御、測定結果の分析および表示が制御ユニット151において行われる。
【0008】
そのような装置は例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010015102号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ノイズや他の干渉信号または相互変調信号の不所望の信号成分によって、上述の方法および測定装置では大抵信号伝送経路の十分な品質検査が可能ではないことが分かっている。特に、不具合の突き止めで達成される空間分解能は大抵不適切である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の問題を考慮して、本発明の目的は、検査される信号伝送経路のセグメントの最適な品質検査、ならびに、そこに存在しうる不具合の確実な突き止めが可能であるという点で、不所望の干渉信号を低減させながら信号伝送経路で生成される受動的相互変調を測定する方法を改良することである。
【0012】
この課題は、請求項1に記載の測定方法によって解決される。有利な任意の方法の特徴は、従属請求項に記載される。この課題はさらに、請求項13に記載の測定装置によって解決される。
【0013】
本発明の信号伝送経路は、二つのセグメント、すなわち入力セグメントおよび測定セグメントで構成され、相互変調信号の成分、例えば所与の次数の相互変調積が入力セグメントと隣接の測定セグメントとの両方で生成されうる。入力セグメントは特に、合成器115からフィルタ116を介してその先まで延在する信号伝送経路の一部分を包含しうるものであり、一方で、測定セグメントは、品質および不具合の可能性について検査される信号伝送経路の隣接部分を形成するものである。
【0014】
本発明は特に、図1に表される信号伝送経路のすべてのコンポーネントでのように、受動的相互変調が測定装置内でも生じうるという知識に基づいており、それは以下では固有干渉またはrPIM(残留PIM)と呼ばれる。これは、図2では、特に信号伝送経路の入力セグメントに配置されるフィルタ116および/または合成器115での場合である。非常に高品質で高価なフィルタの使用は現在、最新技術に相当する。それでもなお、測定装置の測定精度および測定感度は、フィルタ115および入力セグメントにおける他のコンポーネントの固有干渉によって大きく影響を及ぼされる。
【0015】
本発明によれば、入力セグメントで生成される第1相互変調信号成分urPIM(t)に依存する補償信号u(t)が生成され、第1相互変調信号成分urPIM(t)を低減または相殺するために補償信号u(t)が信号伝送経路に結合されることで、測定装置自体によってまたは入力セグメントに配置されるコンポーネントによって生成されるこの固有干渉が低減され、ゆえに測定精度が上昇する。
【0016】
上記のタイプの方法において、本発明によれば、以下のステップの少なくともいくつか、好ましくはすべてが実行されうる。
1)少なくとも二つのHF信号の生成、増幅および足し合わせ。
2)相互変調の周波数の計算。
3)測定装置からの固有干渉(第1相互変調信号成分)の測定信号(第2相互変調信号成分)からの分離。
4)固有干渉の復調、パワー測定および/またはフィルタリング。
5)補償信号の計算および生成。
6)補償信号の信号伝送経路への供給。
【0017】
補償信号の供給に続いて、測定装置に反射されて戻る相互変調信号はそのとき、測定セグメントで生成される相互変調信号成分を事実上それのみでまたは排他的に包含する。そして、反射された相互変調信号成分urx1が測定され、これから信号伝送経路の高周波伝送特性について欠陥のある信号伝送経路の測定セグメントの一つ以上の箇所が突き止められうる。結果的に、反射された相互変調信号は、測定装置自体によって生成されて測定品質に影響を及ぼしうる干渉相互変調積成分をもうほとんど含有しない。
【0018】
好ましくは、生成に続いて、第1および/または第2HF信号が増幅されて足し合わされてから信号伝送経路に導入される。
【0019】
特に重要なのは、測定装置自体によって生成されて補償される必要がある相互変調積からの測定セグメントで生成される相互変調積の確実な分離であるが、それは、測定装置で生成される相互変調積に基づいて補償信号が生成されるからである。そのため、好ましくは第1相互変調信号成分urPIM(t)の少なくとも一部分が好ましくは方向性結合器を使用して第2相互変調信号成分uPIM(t)から分離される。方向性結合器を使用して、入力セグメントからまたは測定装置から出るトータル信号utotの成分が結合されうるが、それは、この出力成分が第2相互変調信号成分ではなく第1相互変調信号成分のみを含有するからである。それが結合された後、第1相互変調信号成分は、例えばフィルタによって、やはり出力されている第1および第2HF信号の成分から分離されうる。このために、確実な分離が可能であるように、相互変調信号が二つのHF信号u,uとは異なる周波数範囲に所在すると、好都合である。例えば、相互変調信号は、周波数2f−fまたは同等のものを持つ3次相互変調積を包含する。代替的に、相互変調信号は、2次、5次または7次相互変調積を包含する。
【0020】
分離に続いて、減結合された第1相互変調信号成分のパワー、振幅および/または位相のような一つ以上の変数が測定され、補償信号u(t)がこれらの測定された変数の少なくともいずれかに基づいて生成されうる。好ましくは、信号伝送経路における第1相互変調信号成分との重畳がこれを相殺または極小化するように、補償信号が生成される。このために、u(t)=−urPIM(t)でありうる。
【0021】
正弦波の相互変調信号の場合には、u(t)は例えば180°だけ位相シフトされた第1相互変調信号成分に実質的に対応しうる。変調されたHF信号の場合には、相互変調信号も変調されたものであり、HF信号から始めてこの予想される変調が求められうる。そして、補償信号は、予想される変調に対応する変調で生成され、生成された補償信号の供給によって第1相互変調信号が極小化されるようにパワーまたは振幅および位相について適応化されうる。
【0022】
補償信号の特に正確な生成の達成については、ならびに、外的影響または同等のものによって起こりうる信号変化への適応化については、信号伝送経路への導入が第1相互変調信号成分urPIM(t)の極小化をもたらすように、補償信号u(t)が反復法で制御されまたは繰り返し適応化されると好都合であることが実証されている。
【0023】
測定装置の固有干渉の確実な排除の達成については、分離された信号成分のパワーが特に簡単にかつ確実に測定されうるため、方向性結合器によって減結合される第1相互変調信号の部分のパワーが極小化されるように、補償信号が生成されて信号伝送経路に導入されると有利であることが実証されている。測定されたパワーに応じて、生成される補償信号の適応化が行われ、特に生成される補償信号の振幅および/または位相が適応化されうる。本発明による特に好適な方法によれば、生成される補償信号の位相および振幅は、制御パラメータとして交互に使用され、減結合された第1相互変調信号成分のパワーが極小化されるまでそれぞれ変化される。こうして、固有干渉の排除が特に迅速にわずかな反復ステップで達成される。
【0024】
しかし代替的に、一つのみのまたは二つより多くの制御パラメータが使用されうる。これらの場合には、反復法は必ずしも不可欠ではない。
【0025】
特に、補償信号u(t)が方向性結合器によって入力セグメントと測定セグメントとの間で信号伝送経路に導入されると、有利である。代替的に、他の箇所での導入が例えば第1および/または第2HF信号の生成中または生成後直ぐにすでに可能である。
【0026】
方向性結合器の使用は、分離および測定される相互変調信号の成分の減結合と補償信号の結合との両方にそれが使用されうるという利点を有する。
【0027】
代替的にまたは付加的に、第1相互変調信号成分urPIM(t)が時間窓法によって第2相互変調信号成分uPIM(t)から分離されうる。「時間窓法」では、入力セグメントに対応しうる特定の時間窓内に所在するPIM成分が求められる。
【0028】
時間窓法が使用される際には、方向性結合器または同等のものによって固有干渉(または第1相互変調信号)の少なくとも一部分を減結合することは、必要ではなく、または、必要とは限らない。代わりに、二つのHF信号uおよびuから生成される相互変調信号が中に含有される相互変調信号成分がどこで生成されるのかについての情報を含有するように、二つのHF信号がすでに生成されている。これは、第1および/または第2HF信号の所定の信号進行または所定の変調によって可能となり、合成信号u+uから生成される相互変調積の生成箇所に応じて、相互変調信号の所定の規定された経時進行(または所定の変調進行)が得られ、それは、分析に続いて、または、第1および/または第2HF信号またはそれらから生成される比較信号との比較に続いて、相互変調積の生成箇所に関する結論の導出を可能にする。
【0029】
例えば、第1HF信号u(t)の周波数fは、所定の初期周波数fSTARTから所定の終了周波数fENDまで所定の経時変化率df/dtで連続的に繰り返し経時変化(掃引)され、第2HF信号は、一定の所定の周波数fで生成される。この場合、信号経路から反射される相互変調積の生成箇所は、反射された相互変調積の周波数と既知の位置で生成される相互変調積の周波数との間の周波数差から求められうる。詳細は、すでに引用した独国特許出願公開第102010015102号明細書に記載されており、参照によって本開示に含まれる。そして、補償信号は、測定セグメントの始点より前の信号伝送経路で生成される第1相互変調信号成分に基づいて生成され、所定の供給箇所で信号伝送経路に供給されうる。
【0030】
時間窓法を可能にするHF信号の他の時間進行および/または変調が可能である。時間窓法の特に有利な態様によれば、HF信号の少なくともいずれかが搬送周波数で生成され、デジタル信号uCODEがそれに変調される。そのような時間窓法の詳細は、今のところは未公開の独国特許出願第102014007151.0号明細書に開示されており、参照によって本開示に含まれる。デジタル信号uCODEを生成するために、好ましくは周期的なフレームクロック信号が拡散コードで乗じられると、好都合であり、当該拡散コードは好ましくはチップのシーケンスを包含する。
【0031】
上述の態様のすべてにおいて、第1HF信号u(t)および第2HF信号u(t)は好ましくは所定の異なる搬送周波数fおよびfで生成され、その結果相互変調信号の周波数は搬送周波数と異なる。少なくともいずれかの搬送周波数は、所定の変調タイプで搬送周波数に変調される好ましくはデジタルの信号を含みうる。
【0032】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明による方法を実行する測定装置を包含する。
【0033】
この測定装置は好ましくは、二つのHF信号u(t),u(t)を生成する二つの信号源と、二つのHF信号を合成し、それらを入力セグメントおよび隣接の測定セグメントを備える信号伝送経路に導入する合成器と、信号伝送経路で生成される相互変調信号成分を減結合する装置と、信号伝送経路の入力セグメントで生成される相互変調信号の成分に応じて補償信号u(t)を生成し、任意に補償信号u(t)を信号伝送経路に結合する補償ユニットとを包含する。
【0034】
合成器と、減結合に使用される装置、特にフィルタとは、フィルタ合成器のような単一のコンポーネントの形態で設けられうる。
【0035】
本発明による方法に関連して記載される特徴はまた、必要な変更を加えて、本発明による測定装置で個別にまたは何らかの組み合わせで提供されうるものであり、それにより、上記の見解が参照される。
【0036】
特に、測定装置は、好ましくは入力セグメントと測定セグメントとの間で信号伝送経路に配置される方向性結合器を含みうるものであり、方向性結合器は、補償信号u(t)を信号伝送経路に結合し、および/または、入力セグメントから発生して方向性結合器に入る信号成分urx2を減結合する。
【0037】
補償信号は、第1相互変調信号成分urPIM(t)の極小化がもたらされるように反復法で第3信号源および/または変調器によって生成されうる。
【0038】
好適な態様では、固有干渉の補償によって好ましくは受動的な相互変調を測定する本発明による測定装置は、測定システム、制御ユニットおよび補償ユニット(プリディストーションユニット)を包含する。固有干渉(または第1相互変調信号成分)が補償ユニットによって測定される第2相互変調信号成分から分離される。受信器では、固有干渉が、復調され、検出され、および/または、そのパワーを求められうる。補正信号のパラメータが制御ユニットで計算され、その後補償信号(補正信号)が信号源および変調器で生成されて信号伝送経路に結合されうる。代替的にまたは付加的に、固有干渉が極小化されるまで制御ループが補償信号のパラメータを反復的に変化させる。
【0039】
本発明のさらに有利な特徴が添付の図面を参照して以下の記載で説明され、記載部分では詳しく説明されない本発明にとって重要な詳細に関して図面が明示的に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】BTSからアンテナまでの伝送経路を示す概略図である。
図2】従来のPIM検査装置の構成を例示するブロック図である。
図3】本発明による方法を実行するように設計される本発明の第1実施形態による測定装置を示す概略図である。
図4】3次相互変調信号の生成後の信号伝送経路における信号の概略図である。
図5】第1相互変調信号成分urPIM、補償信号ucPIMおよび第2相互変調信号成分uPIMの例図である。
図6】方向性結合器の概略図である。
図7】制御パラメータの振幅および位相を使用して補償信号を生成および最適化する反復法の概略図である。
図8】本発明による方法を実行するように設計される本発明の第2実施形態による測定装置を示す概略図である。
図9】距離測定によるDUTにおける固有干渉と相互変調との分離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図3は、プリディストーションによるPIMの測定のための本発明による方法を実行する本発明による測定装置の第1実施形態の概略図である。この実施形態は、測定ユニット200、プリディストーションユニット210、制御ユニット220および検査対象装置(DUT)225で構成される。
【0042】
測定ユニット:測定ユニット200は、少なくとも二つの信号源201,202、少なくとも二つの増幅器203、合成器204、フィルタ205および受信器206で構成される。
【0043】
信号源:二つの信号源201および202は、制御ユニット220と接続される。それらは、実施形態に応じて正弦波のものまたは変調されたものでありうる信号u(t)およびu(t)を生成する。好ましくは、二つの信号は、異なる搬送周波数fおよびfを有する。
【0044】
増幅器:二つの信号源は、二つの増幅器203と接続される。
【0045】
合成器:合成器204は、一方で二つの増幅器203と接続され、他方でフィルタ205のTX経路と接続される。
【0046】
フィルタ:フィルタ205は、一方で、合成器204と接続されるとともに受信器206と接続される。他方で、フィルタ205は、(方向性)結合器213と接続される。
【0047】
受信器:受信器206は、一方でフィルタ205と接続され、他方で制御ユニット220と接続される。
【0048】
プリディストーションユニット:プリディストーションユニット210は、信号源211、変調器212、結合器213、受信器214およびフィルタ215を包含する。
【0049】
信号源:プリディストーションユニットは、一方で制御ユニット220と接続され、他方で変調器212と接続され、補償信号の少なくとも一つの搬送周波数(例えば2f−f)を生成する信号源211を含む。
【0050】
変調器:変調器212は、信号源211、制御ユニット220および結合器213と接続され、補償信号を生成するために信号源211によって生成される信号を変調する働きをする。
【0051】
第2受信器:第2受信器214は、結合器213および制御ユニット220と接続される。この受信器214は、極小化される固有信号の減結合された成分(または第1相互変調信号成分)を受信して場合により測定する働きをする。
【0052】
結合器:結合器213は、測定ユニット200をDUT225ならびに第2受信器214および変調器212と接続する。
【0053】
以下において、相互変調中に生じる信号の呼称が規定される。
【0054】
図4は、二つの信号およびPIMの生成を例として示している。二つの信号uおよびuは、搬送周波数fおよびfを有する。それにより、o次の相互変調積uPIM,oが次に従って非線形性で発生される。
【数1】
【0055】
二つの信号uおよびuならびに相互変調積(図示の例では、周波数2f−fおよび2f−fを持つ3次のものuPIM,3)が図4に表されている。図1による設備の場合、uおよびuは、図4にてTXと記される伝送帯域内に所在する。伝送設備の機能は、図4に例示されるようにuPIM,3図4にてRXと記される受信帯域に内含される場合に特に干渉を受ける。変数m,n,oは、整数である。
【0056】
測定ユニット200は、DUTにおける受動的相互変調を測定するのに使用される。このために、先ず二つの信号uおよびuが二つの信号生成器201および202で生成される。これらの信号は、振幅変調および位相変調されたものでありうる。前述の実施形態では、次のように、uは位相変調されたものであり、uは正弦波のものである。
【数2】
【0057】
合成器204では、uおよびuが足し合わされてutxが発生される。フィルタの出力での信号utotは、(以下で説明される固有干渉および補正信号を考慮しなければ)次で構成される。
【数3】
【0058】
フィルタ205では、TX帯域とRX帯域とが分離され、その結果受信器206の入力に信号uPIM,oが存在する。周波数fPIMの計算に続いて、信号uPIM,oが受信され、信号のパワーが測定されてデジタル化される。BUSを介して、パワーが制御ユニット220に伝送され、そこでパワーが表示される。信号振幅は、回線品質の測定基準として使用されうる。信号は、不具合を突き止めるのにも使用されうる。これに関連して、独国特許出願公開第102010015102号明細書および独国特許出願公開第102012023448号明細書を参照し、その内容は、信号伝送経路における欠陥箇所の突き止めに関する限り、参照によって本開示に全体が取り入れられる。
【0059】
以下において、本発明による方法を特徴づける方法のステップがより詳しく説明される。
【0060】
以下では残留受動的相互変調(rPIM)と呼ばれる固有干渉(または第1相互変調信号成分)は、PIMの場合と同じ仕組みによって非線形性で、特に合成器204、フィルタ205および/または信号伝送経路の移行部で生成される。固有干渉は、その生成において同じ仕組みを経るが、伝送経路に沿った異なる箇所で生成され、異なる振幅を有するため、o次のrPIMは、次のように表されうるものであり、
【数4】
ここでarPIMは振幅を表す。位相シフトはφrPIMで示される。urxの測定結果のディストーションが図5aに表されている。信号uPIMおよびurPIMの二つのポインタは、足し合わせると信号urxになる。パワー測定のディストーションは、urxおよびuPIMのポインタ長の差からもたらされる。
【0061】
プリディストーションの作用:本発明による方法の基本的な考えは、固有干渉を補償し、結果的に測定の精度を向上させることを伴う。このために、次のように信号urPIM,oを相殺する補償信号u(ucPIMとも呼ばれる)が生成される。
【数5】
【0062】
図5bは、信号uPIM,urPIMおよびuをポインタ図で示している。
【0063】
補償信号uは、変調器212で生成される。信号uPIM(t)は、次の時間進行を有する。
【数6】
【0064】
このために、係数mおよびnが制御ユニットで計算される。信号u(t)は、次のように式(1)および(8)から求められる。
【数7】
【0065】
周波数fpimおよび信号形式のパラメータがBUSを介して信号生成器に伝送され、そこで信号u(t)が生成される。
【0066】
このために、信号生成器212の信号uが変調器で乗じられ、その結果次の形態で信号が発生される。
【数8】
【0067】
補正信号uの計算について極めて重要なのは、信号uPIMおよびurPIMの分離である。第1実施形態では、方向性結合器の使用によってこれが達成される。振幅arPIMおよび位相φrPIMを計算できるようにするために、結合器213で信号urx2が信号utotから減結合される。結合器213の機能が図6に例示されている。それにより、伝送信号utotが入力に供給される。信号urx2が減結合されて結合減衰量kで減衰される。準最適な方向性rの結果として、DUTからのuPIMによる信号の一部分も信号urx2に結合され、その結果信号urx2は次から導き出される。
【数9】
【0068】
信号urx2は受信器214によって受信され、パワーPrPIMが測定される。受信器214の測定帯域幅は、受信器206の測定帯域幅と異なりうる。測定されたパワーは、BUSを介して制御ユニットに送られる。
【0069】
(t)の信号形態は、周波数および信号形式について既知であり、測定手順の前に一度計算され、BUSを介して信号生成器に設定される。干渉rPIMは、環境の影響、例えば温度に依存しうるため、測定装置の動作の過程で後に調節される必要がある。パラメータarPIMおよびφrPIMが調整に使用される。このために、次の式が解かれる。
【数10】
二つのパラメータの調節には一つの測定値PrPIMのみが利用可能であるため、これは反復法に続いて行われる。そのような反復法が図7に例として表されている。反復プロセスは値のペア0:a,φで始まる。PIMの測定された振幅は例えばaの推定値として使用されうるものであり、例としてφにはφ=0°が使用される。結果1:a,φを持つ第1反復ステップについては、PrPIMの測定されたパワーが極小となるまでφが一定のaで変化される。図示の例では、それによりPrPIM1が達成される。第2反復ステップでは、再び極小値PrPIM2に達するまで振幅が一定のφで変化され、ここでPrPIM2<PrPIM1である。この方法は、測定されたパワーPrPIMの改善がもたらされなくなる、すなわちPrPIM,n+1≒PrPIM,nとなるまで繰り返される。
【0070】
[代替的実施形態]
代替的実施形態では、受信された信号urxの減結合ならびにrPIMおよびPIM干渉の分離の異なる方法が使用される。
【0071】
受動的相互変調を測定する測定装置において、不具合から測定装置までの距離を測定する方法を可能にする方法が使用される。そのような測定を可能にする方法は、独国特許出願公開第102012023448号明細書に記載されている。
【0072】
従って、独国特許出願公開第102012023448号明細書に記載の方法による信号形態がもたらされるように、信号uが周波数変調される。従って、周波数fが開始周波数f1startから終了周波数f1stopまで連続的に繰り返し経時変化(掃引)され、その結果次のようになる。
【数11】
【0073】
独国特許出願公開第102012023448号明細書の開示によれば、差周波数fが受信器で生成され、それによって不具合までの距離lが次に従って計算されうる。
【数12】
【0074】
図9は、測定装置およびDUTの空間的配置と差周波数fとの間の関係を例示している。図9aは、長さlDUTを持つケーブルによってDUTと接続される測定装置を例示している。図9bには、測定信号umessの対応の周波数が表されている。(14)によれば、DUTにおける相互変調は、周波数fdDUTを持つ測定信号を生成する。
【0075】
第2実施形態では、測定信号がフィルタリングされ、fdminより低い周波数を持つ電圧のみがrPIMのパワーを求めるのに使用される。こうして、PIMとrPIMとの分離が達成される。fdDUTより高い周波数を持つ信号のみがPIMの測定に使用されるため、次のように規定されるlminの分解能リミットが達成される。
【数13】
【0076】
すると、補償信号は、rPIMについて求められるパワーに基づいて生成され、信号伝送経路に導入されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9