【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の問題を考慮して、本発明の目的は、検査される信号伝送経路のセグメントの最適な品質検査、ならびに、そこに存在しうる不具合の確実な突き止めが可能であるという点で、不所望の干渉信号を低減させながら信号伝送経路で生成される受動的相互変調を測定する方法を改良することである。
【0012】
この課題は、請求項1に記載の測定方法によって解決される。有利な任意の方法の特徴は、従属請求項に記載される。この課題はさらに、請求項13に記載の測定装置によって解決される。
【0013】
本発明の信号伝送経路は、二つのセグメント、すなわち入力セグメントおよび測定セグメントで構成され、相互変調信号の成分、例えば所与の次数の相互変調積が入力セグメントと隣接の測定セグメントとの両方で生成されうる。入力セグメントは特に、合成器115からフィルタ116を介してその先まで延在する信号伝送経路の一部分を包含しうるものであり、一方で、測定セグメントは、品質および不具合の可能性について検査される信号伝送経路の隣接部分を形成するものである。
【0014】
本発明は特に、
図1に表される信号伝送経路のすべてのコンポーネントでのように、受動的相互変調が測定装置内でも生じうるという知識に基づいており、それは以下では固有干渉またはrPIM(残留PIM)と呼ばれる。これは、
図2では、特に信号伝送経路の入力セグメントに配置されるフィルタ116および/または合成器115での場合である。非常に高品質で高価なフィルタの使用は現在、最新技術に相当する。それでもなお、測定装置の測定精度および測定感度は、フィルタ115および入力セグメントにおける他のコンポーネントの固有干渉によって大きく影響を及ぼされる。
【0015】
本発明によれば、入力セグメントで生成される第1相互変調信号成分u
rPIM(t)に依存する補償信号u
c(t)が生成され、第1相互変調信号成分u
rPIM(t)を低減または相殺するために補償信号u
c(t)が信号伝送経路に結合されることで、測定装置自体によってまたは入力セグメントに配置されるコンポーネントによって生成されるこの固有干渉が低減され、ゆえに測定精度が上昇する。
【0016】
上記のタイプの方法において、本発明によれば、以下のステップの少なくともいくつか、好ましくはすべてが実行されうる。
1)少なくとも二つのHF信号の生成、増幅および足し合わせ。
2)相互変調の周波数の計算。
3)測定装置からの固有干渉(第1相互変調信号成分)の測定信号(第2相互変調信号成分)からの分離。
4)固有干渉の復調、パワー測定および/またはフィルタリング。
5)補償信号の計算および生成。
6)補償信号の信号伝送経路への供給。
【0017】
補償信号の供給に続いて、測定装置に反射されて戻る相互変調信号はそのとき、測定セグメントで生成される相互変調信号成分を事実上それのみでまたは排他的に包含する。そして、反射された相互変調信号成分u
rx1が測定され、これから信号伝送経路の高周波伝送特性について欠陥のある信号伝送経路の測定セグメントの一つ以上の箇所が突き止められうる。結果的に、反射された相互変調信号は、測定装置自体によって生成されて測定品質に影響を及ぼしうる干渉相互変調積成分をもうほとんど含有しない。
【0018】
好ましくは、生成に続いて、第1および/または第2HF信号が増幅されて足し合わされてから信号伝送経路に導入される。
【0019】
特に重要なのは、測定装置自体によって生成されて補償される必要がある相互変調積からの測定セグメントで生成される相互変調積の確実な分離であるが、それは、測定装置で生成される相互変調積に基づいて補償信号が生成されるからである。そのため、好ましくは第1相互変調信号成分u
rPIM(t)の少なくとも一部分が好ましくは方向性結合器を使用して第2相互変調信号成分u
PIM(t)から分離される。方向性結合器を使用して、入力セグメントからまたは測定装置から出るトータル信号u
totの成分が結合されうるが、それは、この出力成分が第2相互変調信号成分ではなく第1相互変調信号成分のみを含有するからである。それが結合された後、第1相互変調信号成分は、例えばフィルタによって、やはり出力されている第1および第2HF信号の成分から分離されうる。このために、確実な分離が可能であるように、相互変調信号が二つのHF信号u
1,u
2とは異なる周波数範囲に所在すると、好都合である。例えば、相互変調信号は、周波数2f
1−f
2または同等のものを持つ3次相互変調積を包含する。代替的に、相互変調信号は、2次、5次または7次相互変調積を包含する。
【0020】
分離に続いて、減結合された第1相互変調信号成分のパワー、振幅および/または位相のような一つ以上の変数が測定され、補償信号u
c(t)がこれらの測定された変数の少なくともいずれかに基づいて生成されうる。好ましくは、信号伝送経路における第1相互変調信号成分との重畳がこれを相殺または極小化するように、補償信号が生成される。このために、u
c(t)=−u
rPIM(t)でありうる。
【0021】
正弦波の相互変調信号の場合には、u
c(t)は例えば180°だけ位相シフトされた第1相互変調信号成分に実質的に対応しうる。変調されたHF信号の場合には、相互変調信号も変調されたものであり、HF信号から始めてこの予想される変調が求められうる。そして、補償信号は、予想される変調に対応する変調で生成され、生成された補償信号の供給によって第1相互変調信号が極小化されるようにパワーまたは振幅および位相について適応化されうる。
【0022】
補償信号の特に正確な生成の達成については、ならびに、外的影響または同等のものによって起こりうる信号変化への適応化については、信号伝送経路への導入が第1相互変調信号成分u
rPIM(t)の極小化をもたらすように、補償信号u
c(t)が反復法で制御されまたは繰り返し適応化されると好都合であることが実証されている。
【0023】
測定装置の固有干渉の確実な排除の達成については、分離された信号成分のパワーが特に簡単にかつ確実に測定されうるため、方向性結合器によって減結合される第1相互変調信号の部分のパワーが極小化されるように、補償信号が生成されて信号伝送経路に導入されると有利であることが実証されている。測定されたパワーに応じて、生成される補償信号の適応化が行われ、特に生成される補償信号の振幅および/または位相が適応化されうる。本発明による特に好適な方法によれば、生成される補償信号の位相および振幅は、制御パラメータとして交互に使用され、減結合された第1相互変調信号成分のパワーが極小化されるまでそれぞれ変化される。こうして、固有干渉の排除が特に迅速にわずかな反復ステップで達成される。
【0024】
しかし代替的に、一つのみのまたは二つより多くの制御パラメータが使用されうる。これらの場合には、反復法は必ずしも不可欠ではない。
【0025】
特に、補償信号u
c(t)が方向性結合器によって入力セグメントと測定セグメントとの間で信号伝送経路に導入されると、有利である。代替的に、他の箇所での導入が例えば第1および/または第2HF信号の生成中または生成後直ぐにすでに可能である。
【0026】
方向性結合器の使用は、分離および測定される相互変調信号の成分の減結合と補償信号の結合との両方にそれが使用されうるという利点を有する。
【0027】
代替的にまたは付加的に、第1相互変調信号成分u
rPIM(t)が時間窓法によって第2相互変調信号成分u
PIM(t)から分離されうる。「時間窓法」では、入力セグメントに対応しうる特定の時間窓内に所在するPIM成分が求められる。
【0028】
時間窓法が使用される際には、方向性結合器または同等のものによって固有干渉(または第1相互変調信号)の少なくとも一部分を減結合することは、必要ではなく、または、必要とは限らない。代わりに、二つのHF信号u
1およびu
2から生成される相互変調信号が中に含有される相互変調信号成分がどこで生成されるのかについての情報を含有するように、二つのHF信号がすでに生成されている。これは、第1および/または第2HF信号の所定の信号進行または所定の変調によって可能となり、合成信号u
1+u
2から生成される相互変調積の生成箇所に応じて、相互変調信号の所定の規定された経時進行(または所定の変調進行)が得られ、それは、分析に続いて、または、第1および/または第2HF信号またはそれらから生成される比較信号との比較に続いて、相互変調積の生成箇所に関する結論の導出を可能にする。
【0029】
例えば、第1HF信号u
1(t)の周波数f
1は、所定の初期周波数f
STARTから所定の終了周波数f
ENDまで所定の経時変化率df/dtで連続的に繰り返し経時変化(掃引)され、第2HF信号は、一定の所定の周波数f
2で生成される。この場合、信号経路から反射される相互変調積の生成箇所は、反射された相互変調積の周波数と既知の位置で生成される相互変調積の周波数との間の周波数差から求められうる。詳細は、すでに引用した独国特許出願公開第102010015102号明細書に記載されており、参照によって本開示に含まれる。そして、補償信号は、測定セグメントの始点より前の信号伝送経路で生成される第1相互変調信号成分に基づいて生成され、所定の供給箇所で信号伝送経路に供給されうる。
【0030】
時間窓法を可能にするHF信号の他の時間進行および/または変調が可能である。時間窓法の特に有利な態様によれば、HF信号の少なくともいずれかが搬送周波数で生成され、デジタル信号u
CODEがそれに変調される。そのような時間窓法の詳細は、今のところは未公開の独国特許出願第102014007151.0号明細書に開示されており、参照によって本開示に含まれる。デジタル信号u
CODEを生成するために、好ましくは周期的なフレームクロック信号が拡散コードで乗じられると、好都合であり、当該拡散コードは好ましくはチップのシーケンスを包含する。
【0031】
上述の態様のすべてにおいて、第1HF信号u
1(t)および第2HF信号u
2(t)は好ましくは所定の異なる搬送周波数f
1およびf
2で生成され、その結果相互変調信号の周波数は搬送周波数と異なる。少なくともいずれかの搬送周波数は、所定の変調タイプで搬送周波数に変調される好ましくはデジタルの信号を含みうる。
【0032】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明による方法を実行する測定装置を包含する。
【0033】
この測定装置は好ましくは、二つのHF信号u
1(t),u
2(t)を生成する二つの信号源と、二つのHF信号を合成し、それらを入力セグメントおよび隣接の測定セグメントを備える信号伝送経路に導入する合成器と、信号伝送経路で生成される相互変調信号成分を減結合する装置と、信号伝送経路の入力セグメントで生成される相互変調信号の成分に応じて補償信号u
c(t)を生成し、任意に補償信号u
c(t)を信号伝送経路に結合する補償ユニットとを包含する。
【0034】
合成器と、減結合に使用される装置、特にフィルタとは、フィルタ合成器のような単一のコンポーネントの形態で設けられうる。
【0035】
本発明による方法に関連して記載される特徴はまた、必要な変更を加えて、本発明による測定装置で個別にまたは何らかの組み合わせで提供されうるものであり、それにより、上記の見解が参照される。
【0036】
特に、測定装置は、好ましくは入力セグメントと測定セグメントとの間で信号伝送経路に配置される方向性結合器を含みうるものであり、方向性結合器は、補償信号u
c(t)を信号伝送経路に結合し、および/または、入力セグメントから発生して方向性結合器に入る信号成分u
rx2を減結合する。
【0037】
補償信号は、第1相互変調信号成分u
rPIM(t)の極小化がもたらされるように反復法で第3信号源および/または変調器によって生成されうる。
【0038】
好適な態様では、固有干渉の補償によって好ましくは受動的な相互変調を測定する本発明による測定装置は、測定システム、制御ユニットおよび補償ユニット(プリディストーションユニット)を包含する。固有干渉(または第1相互変調信号成分)が補償ユニットによって測定される第2相互変調信号成分から分離される。受信器では、固有干渉が、復調され、検出され、および/または、そのパワーを求められうる。補正信号のパラメータが制御ユニットで計算され、その後補償信号(補正信号)が信号源および変調器で生成されて信号伝送経路に結合されうる。代替的にまたは付加的に、固有干渉が極小化されるまで制御ループが補償信号のパラメータを反復的に変化させる。
【0039】
本発明のさらに有利な特徴が添付の図面を参照して以下の記載で説明され、記載部分では詳しく説明されない本発明にとって重要な詳細に関して図面が明示的に参照される。