特許第6467069号(P6467069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467069
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   G07D9/00 456B
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-553672(P2017-553672)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2016078549
(87)【国際公開番号】WO2017094338
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2017年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-232600(P2015-232600)
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河本 範昭
(72)【発明者】
【氏名】谷山 裕貴江
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 政則
(72)【発明者】
【氏名】松島 公
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−128732(JP,A)
【文献】 特開2011−7302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00−3/16,9/00−13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置筺体内に第一のユニットと第二のユニットとが横方向に並んで配置され、前記第一のユニットと前記第二のユニットとを前記装置筺体から手前に引き出すことが可能な自動取引装置であって、
前記第一のユニットが搭載され、レールによって前後方向に移動可能な第一のベースと、
前記第二のユニットが搭載され、前記第一のベースに接続された第二のベースと、
を有し、
前記第一のユニットと前記第二のユニットとが一体として引き出せることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動取引装置であって、
前記第一のユニットは、その内部の状態を検知する状態検知部と、前記装置筺体からの引き出しを阻止するロック機構と、
前記状態検知部からの状態検知信号に基づいて、前記ロック機構の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動取引装置であって、
前記装置筺体は上部筺体と下部筺体に分離されており、
前記第一のユニットと前記第二のユニットとは、前記上部筺体に搭載されることを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動取引装置であって、
前記第一のユニットは、紙幣の入出金を行う紙幣入出金口と、紙幣を鑑別する紙幣鑑別部と、紙幣を一時的に収納する一時収納部と、紙幣を搬送する紙幣搬送路と、を含む上部紙幣処理ユニットであり、
前記下部筺体は、紙幣を保管する紙幣収納庫と、紙幣を搬送する第二の紙幣搬送路と、を含む下部紙幣処理ユニットが搭載されることを特徴とする自動取引装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動取引装置であって、
前記第二のユニットは、取引等の内容を印字した明細票を発行する明細票プリンタであることを特徴とする自動取引装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の自動取引装置であって、
前記状態検知部は、前記上部紙幣処理ユニット内の残留紙幣を検知し、
前記制御部は、前記状態検知部が残留紙幣を検知したときに、前記ロック機構がロック状態を維持するように制御することを特徴とする自動取引装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の自動取引装置であって、
前記装置筺体は開閉可能な扉を有し、
前記ロック機構は、通電された状態で前記制御部からの制御信号によってロック状態とその解除状態を切り替えるように動作し、
前記ロック機構は、前記扉が開いた状態で通電され、前記扉が閉じた状態では通電されないことを特徴とする自動取引装置。
【請求項8】
請求項7に記載の自動取引装置であって、
前記ロック機構は、通電されない状態でロック状態を維持することを特徴とする自動取引装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項に記載の自動取引装置であって、
前記ロック機構のロック状態を解除する物理鍵を挿入する鍵挿入部を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の自動取引装置であって、
前記上部紙幣処理ユニットは、再使用できない紙幣を収納する上部リジェクト庫を有し、
前記制御部は、前記上部リジェクト庫にリジェクト紙幣が収納されているときに、前記ロック機構がロック状態を維持するように制御することを特徴とする自動取引装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動取引装置であって、
前記自動取引装置の前面に設けた表示操作部と、
前記表示操作部の直下の左側に配置した紙幣入出金口と、
前記紙幣入出金口の直下であって、前記自動取引装置の横方向のほぼ中央部に配置したPINパッド部と、
前記PINパッド部の左側に配置した非接触IC部/バーコードリーダ部と、
前記PINパッド部の左側に配置した明細票発行口と、
前記明細票発行口の直下に配置したカード挿入口と、
を有することを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀行等の金融機関や街中の一般店舗等に設置され、利用者が入金や出金、振込等の金融取引を行う自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動取引装置(Automated Teller Machine;以下ATM)は、複数の処理ユニットにて構成されており、その装置筺体には、利用者に対して取引のための情報を表示したり利用者が取引操作するタッチパネルである表示操作部、利用者が暗証番号等を入力するキーパッド部、カードや明細票の挿入取出口等が配置される。
【0003】
また、ATMの装置筺体の内部には、紙幣の入出金を行う紙幣処理部、取引の明細票を発行する明細票プリンタ、利用者が挿入するカードのデータを読み取ったり、そのカードにデータを書き込むカードリーダ、上位装置と通信しATM全体の制御を行う制御部等が配置される。紙幣が搬送途中で詰まったり(紙幣ジャム)、明細票プリンタの用紙がなくなったとき等は、係員が装置筺体を開け、内部の紙幣処理部等を引き出してジャム紙幣の取り出しを行ったり、用紙の補充を行ったりする。
【0004】
従来、この種の装置としては、特開2013−242628号公報(特許文献1)、あるいは、特開2002−260057号公報(特許文献2)に記載のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−242628号公報
【特許文献2】特開2002−260057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ATMは利用者の利便性向上のため、コンビニエンスストアをはじめとする各種店舗等、様々な場所に設置されるようになってきている。設置場所によっては、従来サイズのATMを設置するのに充分なスペースを確保できない場合もあり、銀行に設置するATMに比べて機能や紙幣収納容量を削減した小型のATMも開発されている。
【0007】
しかしながら、設置地域によっては、取引の大部分が出金取引で占められる場合もあり、そのような場合、紙幣収納容量を削減した従来の小型タイプのATMでは、紙幣補充の頻度を高くする必要があり、保守コストの増大を招くこととなっていた。このため、ATMに対しては、紙幣収納容量を確保した上で装置全体サイズを小型化するというニーズが従来よりもさらに高まっている。
【0008】
特開2013−242628号公報(特許文献1)に記載の構成では、紙幣取扱装置100の上部空間に通帳取扱機構204やカード取扱機構205、明細票発行機構206を配置しているため、紙幣取扱装置100の高さを低く構成しても、現金自動取引装置200としての高さを低くするのには適していない。
【0009】
また、特開2002−260057号公報(特許文献2)に記載の構成では、紙幣入出金機1の横側に顧客操作部105やカード・明細票処理機構102を配置しているため、現金自動取引装置101としての高さを低減するのには有利であるが、横方向の寸法を小さくするのに適している構成とはいえない。
【0010】
さらに、ATMへの現金補充等の重要な保守作業は、セキュリティ等の関係上、従来、警備会社や専門の保守会社・係員等が実施していたが、取引明細票の用紙補充等の比較的簡単な保守作業に関しては、その場にいる別の係員等が実施した方が効率的な場合もある。しかし、そのような別の係員が自由にATMの内部にアクセスすることを許容すると、ATMの動作状況によっては内部に存在している現金にもアクセスすることができてしまい、セキュリティ上、好ましくない。
【0011】
本願発明は、紙幣収納容量およびセキュリティを確保しつつ、小型化に適したATMの構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
装置筺体内に第一のユニットと第二のユニットとが横方向に並んで配置され、第一のユニットと第二のユニットとを装置筺体から手前に引き出すことが可能な自動取引装置であって、第一のユニットが搭載され、レールによって前後方向に移動可能な第一のベースと、第二のユニットが搭載され、第一のベースに接続された第二のベースと、を有し、第一のユニットと第二のユニットとが一体として引き出せるように構成した。ここで、第一のユニットは、その内部の状態を検知する状態検知部と、装置筺体からの引き出しを阻止するロック機構と、状態検知部からの状態検知信号に基づいて、ロック機構の動作を制御する制御部と、を有するようにした。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成により、紙幣収納容量およびセキュリティを確保しつつ、小型化に適したATMを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1(A)】ATMの外観構成図である。
図1(B)】ATMの外観構成図である。
図2】ATMの側面透視図である。
図3】ATMの上面部を開いた状態の図である。
図4】ATMの下部扉を開いた状態の図である。
図5】ATMの上部のユニットの内部配置図である。
図6】ATMの内部ユニットを引き出した状態の図である。
図7(A)】引き出しロック機構を説明する図である。
図7(B)】引き出しロック機構を説明する図である。
図8】紙幣処理部の前面部の図である。
図9】電磁ロック機構の制御を説明する図である。
図10】電磁ロック機構の制御フロー図である。
図11】ATMの電磁ロックに係る部分の制御ブロック図である。
図12】ATMの表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明のATMの構成を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明のATM100の外観構成図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。101は利用者が取引操作を行ったり、係員が保守操作を行うための情報を表示したり、操作入力を行うタッチパネル等で構成されう表示操作部である。
【0017】
102は紙幣の投入や取り出しを行う紙幣入出金口、103は非接触ICカードとの通信を行う非接触IC処理部や、バーコードデータの読取を行うバーコードリーダ等からなる非接触IC部/バーコードリーダ部、104は利用者が取引時に暗証番号を入力するための複数の数字キーからなるPINパッド(PIN:Personal Identification Number)、105は取引内容等が印字された明細票(レシート)を出力する明細票発行口、106はキャッシュカード等を挿入するためのカード挿入口である。
【0018】
図1から明らかなように、ATM100の上部に配置した表示操作部101の直下の左側に紙幣入出金口102を配置し、紙幣入出金口102の直下のATM100の横方向ほぼ中央部にPINパッド104を配置している。また、表示操作部101の直下の左側に非接触IC部/バーコードリーダ部103を配置し、表示操作部101の直下の右側に明細票発行口105を配置し、明細票発行口105の直下にカード挿入口106を配置した。
【0019】
すなわち、表示操作部101の直下に紙幣入出金口102と明細票発行口105とをほぼ同一の高さとなるように横方向に並べて配置し、さらにその直下の横方向のほぼ中央部にPINパッド104を配置し、その両側のほぼ同一の高さの位置に非接触IC部/バーコードリーダ部103とカード挿入口106を配置した。このように各処理部をATM100の上部の中央に寄せるように配置して、小型化を実現している。
【0020】
ATM100は、紙幣の入出金処理を行う紙幣処理部を有しており、図2のATM左側面透過図に示すように、紙幣処理部200は上部ユニット200Aと下部ユニット200Bとから構成されている。上部ユニット200Aは、主に、利用者が紙幣を投入したり取り出すための入出金口や、紙幣の金種や真偽を判定する紙幣鑑別部、紙幣を一時的に保持する一時保管部、紙幣処理部の動作を制御する制御部などを有している(以上、図示省略)。
【0021】
また、下部ユニット200Bは、紙幣を金種別に保管する入出金両方の機能を有する複数の紙幣カセット202を格納するための頑丈な金庫部201を有しており、この金庫部201は、さらに別途の鍵によってそれを開閉するようにしており、セキュリティを高めている。
【0022】
ここで、紙幣カセット202は、紙幣を立てた状態で保持する横型カセットを採用しており、紙幣を鉛直方向に重ねた状態で保持する縦型カセットと比較して、同一の紙幣収納容量の装置で比較した場合、装置の奥行き方向の寸法を小さくするのに有利である。なお、紙幣カセット202は、上述のリサイクル紙幣用の金種別カセットの他、汚れや破れ等によって利用者に再度払い出すのに適していないと鑑別されたリジェクト紙幣を収納するリジェクト庫、入金専用庫、出金専用庫、あるいは金種別カセットに紙幣を装填したり回収を行う装填回収庫が含まれていてもよい。
【0023】
ATM100は装置筺体の上部と下部とが別々に開閉することができ、係員は保守等の際に、上部と下部とを別々に開閉して内部の各ユニット等へアクセスすることができる。図3に示すように、筺体上部は図示しない上部用ロック機構等を解除した後、上面部301を下から上へ跳ね上げるように持ち上げて上方に開くことができる。
【0024】
筺体下部は図4に示すように、ドアキー107を解除することによって、前扉401を横方向に開くことができる。筺体下部ユニットは筺体内にさらに前述の金庫部201を内蔵し、紙幣カセットをその金庫内に配置しており、金庫部201内にアクセスするには、さらに金庫扉キー108を解除し、金庫扉402を開くことを必要とすることによってセキュリティを高めている。なお、上部用ロック機構等を設けずに、閉じた状態の上面部301の下端を前扉401を閉じることで押さえるようにしてもよい。この場合、下部扉401を開いた状態でないと、上面部301を上方に持ち上げて開くことができないが、上部専用のロック機構や開閉センサ等が不要となるため、より簡易で安価な構成とすることができる。
【0025】
図5は筺体上部のドアを開いた状態での正面図である。紙幣処理部上部ユニット200Aはベース部材511に搭載されており、ベース部材511はその側面部が前後方向に移動可能な移動用レール510に接続されており、紙幣処理部上部ユニット200Aはベース部材511に搭載された状態で前後に移動して手前側に引き出すことができる。
【0026】
また、紙幣処理部上部ユニット200Aの向かって右側には、ベース部材512に搭載された明細票(レシート)プリンタ501が配置されており、ベース部材512はベース部材511および移動用レール510と一体となるように、ボルト/ネジ等520で接続固定されている。すなわち、ベース部材512は、その紙幣処理部上部ユニット200A側の一部分がベース部材511及び移動用レール510と接続固定されている。
【0027】
したがって、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とは、図6に示すように、両者は一体となって手前側に引き出すことができる。
【0028】
このとき、紙幣処理部上部ユニット200Aは移動用レール510に載って手前側に引き出されるが、レシートプリンタ501は紙幣処理部上部ユニットのベース部511と一体となるよう固定されたレシートプリンタベース512上に実装されているのみであって、別のレール等に載っている訳ではない。すなわち、レシートプリンタ501を独立して引き出そうとすると、レシートプリンタ501を筺体内で搭載して移動するための別のレール等が更に必要となり、装置全体の横幅が増えることとなり、好ましくない。
【0029】
このように、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とが近づくように固定し、筺体内に設置した移動用レールに紙幣処理部上部ユニット200A部のみを搭載し、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とを一体として引き出すように構成した。これによって、両者を鉛直方向に配置した場合と比較して高さ方向の寸法を抑えることが可能となり、また、両者を個別に引き出すようにした場合と比較して横方向の寸法も抑えることが可能となり、装置全体の小型化を実現することができた。
【0030】
なお、上記構成において、カード挿入口106から挿入されたキャッシュカードのデータを読み取るカードリーダ装置は、筺体上面部301に装着されているため、図5には図示されていないが、レシートプリンタ501と同様に、別途のベース部等に搭載して紙幣処理部上部ユニット200Aと一体として引き出せるようにしてもよい。
【0031】
また、上記構成ではベース部材511とベース部材512とが別体であって両者をボルト/ネジ等520で移動用レール510に接続固定しているが、ベース部材511とベース部材512とが一体成型されたものでもよいし、ベース部材511とベース部材512と移動用レール510とが一体成型されたものでもよい。
【実施例1】
【0032】
紙幣処理部は現金を直接扱うユニットであるため、それ自体にもセキュリティを維持するための機構が必要である。例えば、紙幣を収納する紙幣カセット202は、前述のように鍵付きの強固な金庫部201に収納することにより、外部からは容易にアクセスすることはできないようになっている。しかも、この金庫の鍵は、全ての係員によって解除できる訳ではなく、係員の中でも一部の特定の権限を与えられた者だけが金庫鍵またはパスワード入力等により、解除して内部の紙幣カセットや現金にアクセスすることが許される。
【0033】
ところが、本発明のATMは、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とを一体として引き出すように構成したため、例えば、以下に説明するようなセキュリティ上の問題が発生することがある。
【0034】
レシートプリンタは装填されたロール紙に取引明細等を印字して発行するが、ロール紙が用紙切れとなった場合は、新しいロール紙を係員が補充することとなる。ここで、ロール紙の補充は比較的簡単な作業であり、必ずしもATM内部の現金にアクセスすることが許容された係員が行うとは限らない。
【0035】
一方、紙幣処理部上部ユニット200Aは、通常、取引動作時以外は、紙幣が内部に滞留することはないが、内部のどこかで紙幣詰まり(ジャム)等が発生すると、取引動作時以外も上部ユニット200A内に残留紙幣(ジャム紙幣)が存在することとなる。また、紙幣処理部上部ユニット200Aは、そのような残留紙幣を取り除くために所定の部位を開いて内部へアクセスすることができる構造となっている。
【0036】
本ATMは紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とが一体化しており両者が同時に引き出される構造のため、紙幣処理部上部ユニット200Aにジャム紙幣等の残留紙幣が存在する場合、レシートプリンタ501のロール紙を補充しようとする係員が、そのジャム紙幣にもアクセスすることが可能となり、その係員がATM内部の現金にアクセスすることが許容された係員でない場合、セキュリティ上、好ましくない。
【0037】
そこで本ATMでは、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501の引き出しを、その状況に応じて制限する機構を設けることとした。
【0038】
紙幣処理部上部ユニット200AはATM筺体上部に収納されており、係員が保守作業等をする際には、筺体上部パネルを上方に開いた後、紙幣処理部上部ユニット200Aを手前側に引き出すことによって、各種保守作業が可能となる。ここで、図7に示すように、上部ユニット200Aには、筺体からの引き出しを阻止する電磁ロック機構701が設置されている。
【0039】
図7(A)に示すように、電磁ロック機構701は、ロック状態ではロックバー701Aが下りた状態となっており、筺体のロックバー当接部702にロックバー701Aが当接しているため、上部ユニット200Aは図面の右側(装置前面)に引き出すことができず、ロックが働いている状態となっている。
【0040】
ロックが解除されている状態では、図7(B)に示すようにロックバー701Aが上方に持ち上がり、ロックバー701Aは当接部702に当たることなく上部ユニット200Aの引き出しが可能となる。なお、この電磁ロック機構701は、停電等によって電力が供給されない状況では、図7(A)のようなロック状態を維持する。
【0041】
電磁ロック機構701は、ATM装置に通電されている状態では、ATM装置の制御部からの指令に基づいてロック状態とロック解除状態とを切り替える。図8は上部紙幣ユニット200Aの前面図であり、電磁ロック機構701のロック状態を解除するための、物理的な鍵を挿入できるロック解除鍵部801と引出レバー802を有している。
【0042】
電磁ロック機構701がロック解除状態のときは、係員等によって引出レバー802を押しこむとロックバー701Aが持ち上がり上部紙幣ユニット200Aを引き出すことができるが、電磁ロック機構701によってロック状態となっている場合は、引出レバー802を押し込むことができず、上部紙幣ユニット200Aを引き出すことはできない。この場合は、ロック解除鍵部801へ専用の鍵を挿入して操作(回す等)することによってロック状態を解除させ、引出レバー802が押し込めるようになり、上部紙幣ユニット200Aを引き出すことができる。
【0043】
なお、停電等によってATM装置に通電されていない状態では、前述のように電磁ロック機構701はロック状態を維持しており、引出レバー802を押し込めない状態となっているが、この場合も、ロック解除鍵をロック解除鍵部801へ挿入して操作することによってロック状態を解除することができる。
【0044】
次に、電磁ロック機構701によるロック状態とロック解除状態とを切り替える基準を説明する。電磁ロック機構701は、上部紙幣ユニット200A内に紙幣残留が存在するか否かによって、ロック状態とするか、あるいは、ロック解除状態とするかを切り替える。すなわち、上部紙幣ユニット200A内には、紙幣搬送路や各処理部の所定の箇所に図示しない残留紙幣検知センサを有しており、それらの残留紙幣検知センサのいずれかが「紙幣有り」を検知した場合、残留紙幣有と判定する。
【0045】
そして、残留紙幣有と判定された場合は電磁ロック機構701はロック状態となり、残留紙幣無しと判定された場合は電磁ロック機構701はロック解除状態となるように制御される。なお、これらの制御は、図示しないセンサ等によってATMの上面前扉が開かれたことを検知した場合にのみ、電磁ロック機構701に通電して制御するようにしており、これによって、常時通電する場合に比べて、周辺の温度上昇や電力消費を抑えることが可能である。
【0046】
以上説明した、電磁ロック機構701のロック制御をまとめると図9のような表となる。これによって、レシートプリンタ501のロール紙の補充のみが許された係員は、上部紙幣ユニット200A内に残留紙幣が存在しない場合に限って、上部紙幣ユニット200A内とレシートプリンタ501とを一体として引き出してロール紙の補充作業を実施することができる。また、上部ユニット200Aの図示しないセンサ等によってジャム紙幣等の残留紙幣が検知されている場合は、電磁ロック機構701はロック状態を維持し、上部紙幣ユニット200A内とレシートプリンタ501とを引き出すことはできない。
【0047】
このとき、ATM内部の現金にアクセスすることが許容された係員は、図8のロック解除鍵部801へ専用の鍵を挿入して電磁ロック機構701のロック状態を解除し、引出レバー802を押し込むことによって上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とを一体として引き出すことが可能となり、ジャム紙幣の除去等の保守作業を行うことも可能である。
【0048】
また、停電時もロック状態が維持されているがは、ロック解除鍵部801へ専用の鍵を挿入して電磁ロック機構701のロック状態を解除し、引出レバー802を押し込むことによって紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501とを一体として引き出すことが可能である。
【0049】
図10は、上述した電磁ロック機構701の動作を説明するフロー図である。図10のフローの説明の前に、図11を用いてATM装置側と紙幣処理部の制御機構の接続状態を説明する。図11に示すように、ATM装置側の本体制御部1120と紙幣処理部1110はバス制御線1100によって接続され、各種制御信号等の送受信を行う。紙幣処理部1100は入出金口1111、識別部1112、一時保留部1113、搬送路部1114、紙幣収納部1115、電磁ロック部1116等が紙幣処理部内の制御部1117と接続されており、制御部からの指令によって各部を制御したり、各部からの信号が制御部1117へ送信されたりする。また、バス制御線1100には、さらに本体下部の前扉401の開閉を検知する前扉開閉検知部1130が接続されており、本体制御部1120に前扉401の開閉状態を通知する。なお、図11における紙幣処理部1110は図2等の紙幣処理部200と同一であるが、説明の都合上、異なる符号を付している。
【0050】
図10は係員によってレシートプリンタ501のロール紙の補充を行う場合を想定した、電磁ロック機構701のロック制御を説明するフロー図である。レシートプリンタのロール紙を補充に来た係員は、紙幣処理部上部ユニットと一体となったレシートプリンタを引き出すために上面部301を開ける。前述のように、前扉401によって上面部301の開閉を固定する構造の場合は前扉401を開いてから上面部301を開けるが、上面部301のみを単独で開閉できる構造で上面部301の開閉を検知する機構があれば、前扉401を開く必要はない。前述のように、電磁ロック機構701は前扉401が閉じた状態では通電されておらず、その状態ではロック状態を維持している。
【0051】
前扉401の扉開閉状態はセンサ情報により、本体制御部1120内に格納されたATMソフトに通知される(ステップS901)。ここで、前扉開閉検知部1130から前扉401の開状態が通知された場合は、係員等によって保守操作がなされる可能性があることから、本体制御部1120は、紙幣処理部1110内に実装される制御部1117に対し、電磁ロック開コマンドを発行すると共に、電磁ロック機構701に通電が開始される。そして、この時点ではまだロック状態が維持されている(ステップS902)。
【0052】
電磁ロック開コマンドを受けた制御部1117は、紙幣処理部1110の中で紙幣残留の可能性がある入出金口1111、識別部1112、一時保留部1113、搬送路部1114(紙幣処理部上部ユニット200A内の搬送路)からの信号に基づき、これらの各部位のいずれにも残留紙幣がないことを確認する(ステップS903〜S905)。
【0053】
ここで、各部位に紙幣残留が無かった場合は、制御部1117より電磁ロック部1116のロックを解除する(ステップS906)。ここまでのフローで、電磁ロックが解除されたことにより、係員は引出レバー802を押し込むことによって、紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501を引き出すことができ(ステップS907)、ロール紙の補充が可能になる(ステップS908)。
【0054】
これらの保守操作が終了すると、引き出した紙幣処理部上部ユニット200Aとレシートプリンタ501を筺体内の元の位置に戻し(ステップS909)、上面部301および前扉401を閉じる(ステップS910)。前扉閉情報を受け取った本体制御部1120は、紙幣処理部内の制御部1117に対し、電磁ロック閉コマンドを発行する(ステップS911)。このコマンドを受け取った制御部1117は電磁ロック部をロック状態に切り替える。この後、電磁ロック機構701への通電は停止されるが、ロック状態は維持され、電磁ロック禁止(ロック状態)となる(ステップS912)。
【0055】
上述のステップS903〜S905において、入出金口1111、識別部1112、一時保留部1113、上部の搬送路部1114のいずれかの部位において残留紙幣を検知した場合は、本体制御部1120からの電磁ロック開コマンド(ステップS902)を無視してロック状態を維持する。このとき、表示操作部101や図示しない保守操作専用の表示部等に、図12に示すような異常発生により紙幣処理部上部ユニット200Aが引き出せないことを通知するメッセージを表示してもよい。その後、ロック状態が維持された後、前扉401が閉じられたことを検知すると、ロック状態を維持したまま電磁ロック機構701への通電が停止され、終了する。
【0056】
なお、前扉401が閉じられる前に、入出金口1111、識別部1112、一時保留部1113、上部の搬送路部1114の全てにおいて残留紙幣が無くなったことを検知した場合は、ステップS906へ移行して電磁ロックを解除するように制御してもよい。
【0057】
また、上部紙幣ユニット200Aには、リジェクト紙幣を収納する上部リジェクト庫が配置されることがある。したがって、上述した、上部紙幣ユニット200Aにジャム紙幣が存在する場合と同様に、上部リジェクト庫内にリジェクト紙幣が収納されている場合も、電磁ロック機構701によって上部ユニット200Aとレシートプリンタ501との引き出しを制限することによって、セキュリティを確保することができる。あるいは、上部リジェクト庫には、それを開閉する専用の鍵等を設けるようにしてもよい。
【0058】
以上説明した動作によって、レシートプリンタのロール紙を補充することとのみ許容された係員が、上部ユニット200A内部のジャム紙幣へアクセスしてしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0059】
100:自動取引装置(ATM)
200:紙幣処理部
301:上面部
401:前扉
501:レシートプリンタ
701:電磁ロック機構
図1(A)】
図1(B)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7(A)】
図7(B)】
図8
図9
図10
図11
図12