特許第6467070号(P6467070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467070変異DKK2タンパク質、それをコードする核酸、その製造方法、及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467070
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】変異DKK2タンパク質、それをコードする核酸、その製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20190128BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20190128BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20190128BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20190128BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20190128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   C12N15/12ZNA
   C07K14/47
   C12P21/02 C
   A61K38/17
   A61K31/7088
   A61P9/00
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-556506(P2017-556506)
(86)(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公表番号】特表2018-503397(P2018-503397A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】KR2016001175
(87)【国際公開番号】WO2016126098
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017479
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517260847
【氏名又は名称】メドパクト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ハ、 イル ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 ソク ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヘ ナム
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ユン チュル
(72)【発明者】
【氏名】イム、 ジュ リ
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−538295(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/095448(WO,A1)
【文献】 MAZOLA Y. et al.,PLOS Computational Biology,2011年12月,Vol.7, No.12,e1002285
【文献】 KATOH Y. et al.,Int. J. Mol. Med.,16(3)(2005),p.477-481
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
A61K 31/7088
A61K 38/17
A61P 9/00
C07K 14/435−14/47
C12P 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型DKK(Dickkopf)2ポリペプチドのアミノ酸配列に比べ、1個以上のさらなる糖化部位を含み、配列番号3のアミノ酸配列のN末端から110番目のアミノ酸であるアスパラギン酸(Asp、D)がアスパラギン(Asn、N)に置換されているアミノ酸配列、及び
前記アミノ酸配列の一端に存在する、Fc(fragment crystallizable)領域で構成されたタグ
を含む、変異DKK2ポリペプチド。
【請求項2】
前記野生型DKK2ポリペプチドは配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチドである請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項3】
前記糖化はN糖化である請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項4】
前記糖化部位はAsn−Xaa−Ser/Thrであり、Xaaはプロリンを除いたアミノ酸を意味する請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項5】
列番号のアミノ酸配列を含むポリペプチドである請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項6】
前記Fc領域で構成されたタグをN末端に含請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項7】
末端にシグナルペプチドをさらに含む請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項8】
前記野生型DKK2ポリペプチドに比べ、グリコシル基追加されているか、LRP6(low-density lipoprotein receptor-related protein)結合親和度上昇しているか、またはグリコシル基が追加されており且つLRP6結合親和度が上昇している、請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項10】
列番号46の核酸配列及び前記核酸配列の5’末端または3’末端に配置されたFc領域で構成されたタグをコードする核酸配列を含む請求項に記載の核酸。
【請求項11】
前記Fc領域で構成されたタグをコードする核酸配列を5’末端に含む請求項に記載の核酸。
【請求項12】
’末端に、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む請求項に記載の核酸。
【請求項13】
請求項に記載の核酸を含むベクターが導入された細胞を培養培地の存在下で培養して培養物を得る段階と、
前記培養物から、請求項に記載の変異DKK2ポリペプチドを得る段階と、
を含む、変異DKK2ポリペプチドを製造する方法。
【請求項14】
前記細胞は、胎児腎臓細胞、卵巣細胞、骨髄腫細胞または網膜由来細胞である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド、または請求項に記載の核酸及び
薬学的に許容可能な担体
を含む血管新生促進用薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド、または請求項に記載の核酸及び
薬学的に許容可能な担体
を含む血管透過性関連疾患の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド、または請求項に記載の核酸を個体に投与する段階を含む、ヒト以外の哺乳動物である個体の血管新生を促進する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の変異DKK2ポリペプチド、または請求項に記載の核酸を個体に投与する段階を含む、ヒト以外の哺乳動物である個体の血管透過性関連疾患を予防または治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコシル基の追加されたり向上されたりする結合親和度を有する変形されたDKK2タンパク質、それをコーディングする核酸、その製造方法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質に糖が付いていることを糖化(glycosylation)といい、大きく見て、N糖化とO糖化とに分けられる。糖化は、糖転移酵素(glycosyltransferase)によって触媒され、約200種の糖転移酵素が報告された。糖の種類及び構造によって、タンパク質の折り畳み(folding)、安定性(stability)、溶解度(solubility)、及びプロテアーゼに対する敏感性、血中半減期(serum half-life)、抗原性(antigenicity)、活性上昇などに影響を及ぼす。
【0003】
DKK2は、Wntの抑制タンパク質であるDickkopf類の一種であり、Wnt信号伝達経路の阻害因子あるいは活性因子と作用すると報告されている(Wu W et al., Curr. Biol., 10(24), pp. 1611-1614, 2000)。DKK2は、2つの特徴的なシステインが多い部位(CRD:cysteine-rich domain)を有しており、多様な長さの連結部位に区分されている。システイン−2部分は、それらDickkopf類間に高度で保存されており、10個の保存されたシステインアミノ酸を含んでいる(Krupnik VE et al., Gene, 238(2), pp. 301-313, 1999)。DKK2は、動物細胞において、発現効率が低い難発現性タンパク質であるので、DKK2を利用した治療剤の開発が遅れているという実情である。
【0004】
従って、基質に対する結合親和度を維持したり向上させたりしながら、発現効率が上昇したDKK2を提供することが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一様相は、野生型DKK2ポリペプチドのアミノ酸配列に比べ、1個以上の追加的な糖化部位を含む、変形されたDKK2ポリペプチドを提供する。
【0006】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を提供する。
【0007】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0008】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸、及び薬学的に許容可能な担体を含む血管新生促進用薬学的組成物を提供する。
【0009】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸、及び薬学的に許容可能な担体を含む血管透過性関連疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0010】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を個体に投与する段階を含む、個体の血管新生を促進する方法を提供する。
【0011】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を個体に投与する段階を含む、個体の血管透過性関連疾患を予防または治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
一様相による変形されたDKK2ポリペプチド、それをコーディングする核酸、その製造方法、及びその用途によれば、グリコシル基の追加、または基質であるLRP6に対する向上した結合親和度を有する変形されたDKK2タンパク質を効率的に製造し、それによって、血管新生の促進、あるいは血管透過性関連疾患の予防または治療のために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】多くのタグを含んだ野生型DKK2タンパク質及び突然変異DKK2タンパク質の免疫ブロッティング結果を示すイメージである。
図1B】多くのタグを含んだ野生型DKK2タンパク質及び突然変異DKK2タンパク質の免疫ブロッティング結果を示すイメージである。
図1C】Fcタグを含むDKK2 N−Gly4タンパク質とDKK2 N−Gly5タンパク質との免疫ブロッティング結果を示すイメージである。
図1D】精製されたタンパク質を電気泳動した結果を示すイメージである。
図2A】200ngのmLRP6に対して突然変異されたDKK2タンパク質について、490nmの波長で測定された吸光度を示すグラフである。
図2B】200ngのhLRP6に対して突然変異されたDKK2タンパク質について、490nmの波長で測定された吸光度を示すグラフである。
図2C】100ngのmLRP6に対するDKK2タンパク質について、490nmの波長で測定された吸光度を示すグラフである。
図2D】100ngのhLRP6に対するDKK2タンパク質について、490nmの波長で測定された吸光度を示すグラフである。
図3A】被検物質投与後、14日目に突然変異DKK2タンパク質投与による網膜蛍光強度(%)を示すグラフである。
図3B】被検物質投与後、21日目に突然変異DKK2タンパク質投与による網膜蛍光強度(%)を示すグラフである。
図4】DKK2タンパク質投与によるEvans blue血管透過性(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一様相は、野生型DKK(Dickkopf)2ポリペプチドのアミノ酸配列に比べ、1個以上の追加的な糖化(glycosylation)部位を含む、変形されたDKK2ポリペプチドを提供する。
【0015】
前記DKK2は、ディックコップ(Dickkopf)タンパク質2を意味し、ディックコップ関連タンパク質(Dickkopf−related protein)2、システインリッチ分泌されたタンパク質(cyteine-rich secreted protein)2、CRSP2タンパク質、CRISPY2タンパク質またはCRSPタンパク質2ともいう。DKK2は、ヒトの場合、DKK2遺伝子によってコーディングされるタンパク質である。該遺伝子は、ディックコップファミリの構成員であるタンパク質をコーディングする。DKK2は、分泌されたタンパク質であり、2個のシステインリッチ領域を含み、Wnt信号伝達経路との相互作用を介して、胚芽発生に関与すると知られている。また、DKK2は、補助因子kremen 2及び細胞状態(context)によって、Wnt/beta−catenin信号伝逹の促進剤または拮抗剤として作用する。前記DKK2は、LRP6(low-density lipoprotein receptor-related protein6)と結合することができる。
【0016】
前記野生型DKK2ポリペプチドは、野生型DKK2前駆体ポリペプチドでもある。前記野生型DKK2前駆体ポリペプチドは、ヒトにおいて、Genbank accession no.NP_055236.1のアミノ酸配列(配列番号1)を有するポリペプチド、またはマウスでGenbank accession no.NP_064661.2のアミノ酸配列を有するポリペプチドでもある。前記野生型DKK2前駆体ポリペプチドは、信号ペプチド(signal peptide)を含み、該信号ペプチドは、翻訳中変形(co-translational modification)または翻訳後変形(post-translational modification)によって切断される。前記野生型DKK2ポリペプチドは、成熟した(mature)DKK2でもある。前記成熟したDKK2は、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から最初ないし33番目アミノ酸配列(信号ペプチドまたはリーダーペプチド)が除去されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであるか、あるいは配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチドでもある。前記野生型DKK2前駆体ポリペプチドは、ヒトにおいて、Genbank accession no.NM_014421の核酸配列(配列番号4)を有する核酸、またはマウスにおいて、Genbank accession no.NM_020265の核酸配列を有する核酸によって暗号化される。
【0017】
前記糖化は、グリコシル基をタンパク質に伝達する反応をいう。該糖化は、糖転移酵素(glycosyltransferase)によって触媒される。前記糖化は、N糖化、O糖化、ホスホ−セリン糖化、C−マンノシル化(mannosylation)、グリピエーション(glypiation)、またはそれらの組み合わせでもある。N糖化は、アスパラギンのアミド基に糖分子が付着することをいう。
【0018】
前記糖化部位(glycosylation site)は、糖分子またはグリコシル基が付着することができる部位をいう。例えば、前記糖化部位は、N糖化部位である、Asn−Xaa−Ser/Thrの共通配列(consensus sequence)において、アスパラギンでもある。Asnは、アスパラギンを意味し、Xaaは、プロリンを除いたアミノ酸を意味し、Serは、セリンを意味し、Thrは、スレオニンを意味し、Ser/Thrは、セリンまたはスレオニンを意味する。前記Asn−Xaa−Ser/Thrは、N末端からアスパラギン−アミノ酸(プロリン除外)−セリンまたはアミノ酸からなるポリペプチドをいい、Asn−Xaa−Ser/Thrのアスパラギンに糖分子が付着する。前記野生型DKK2前駆体ポリペプチドは、N末端から36番目アミノ酸に1個の糖化部位を含んでもよい。
【0019】
前記変形されたDKK2ポリペプチドの糖化部位は、配列番号3のアミノ酸配列において、5I、31G、96P、110D、44P、2L、45C、57C、62Q、63G、85P、6K、98T、101I、11G、121H、135P、138K、151L、152R、166F、187K、203G、211D、213T及び214Yからなる群から選択された1以上のアミノ酸を、アスパラギン(Asn,N)で置換することによって導入されたことでもある。前記数字は、配列番号3のアミノ酸配列のN末端からのアミノ酸の番号を意味し、英文字は、アミノ酸の1文字(letter)コードを示す。例えば、「5I」は、配列番号3のアミノ酸配列において、N末端から5番目アミノ酸であるイソロイシンを意味する。
【0020】
前記変形は、1以上のアミノ酸の置換でもある。
【0021】
前記変形されたDKK2ポリペプチドは、糖化部位に導入され、グリコシル基が追加して導入されたDKK2ポリペプチドでもある。糖の結合方式、糖の構成、糖の構造(glycosyl structure)、またはそれらの組み合わせが異なってもよいが、前記DKK2ポリペプチドのアミノ酸配列において、同一糖化部位に糖化される。その結果、細胞内発現効率が上昇する。例えば、前記変形されたDKK2ポリペプチドが発現された宿主細胞の種類によって、糖の結合方式(例えば、N糖化及びO糖化)、糖の構成(例えば、シアリル化(sialylation)レベル差)、及び糖の構造が異なってもよいが、前記DKK2ポリペプチドの同一糖化部位に糖化される。
【0022】
前記変形されたDKK2ポリペプチドは、配列番号5ないし30からなる群から選択された1以上のアミノ酸配列を含むポリペプチドでもある。
【0023】
前記変形されたDKK2ポリペプチドのN末端またはC末端に、タグ(tag)をさらに含んでもよい。前記タグは、発現、精製、検出などに一助となるべく、DKK2ポリペプチドに付着させたポリペプチドでもある。前記タグは、例えば、Fc(fragment crystallizable)領域、ポリヒスチジンペプチド、またはそれらの組み合わせでもある。前記Fc領域は、ヒトFc領域、マウスFc領域などでもある。前記Fc領域は、配列番号48のヌクレオチド配列によって暗号化されたポリペプチドでもある。前記Fc領域は、配列番号49のアミノ酸配列からなるポリペプチドでもある。前記タグは、当業者に知られたものでもある。
【0024】
前記変形されたDKK2ポリペプチドは、N末端に、信号ペプチド(signal peptide)をさらに含んでもよい。該信号ペプチドは、分泌経路として運命づけられた新たに合成される多数のタンパク質のN末端に存在する約5ないし30個のアミノ酸からなるペプチドをいう。前記信号ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から最初ないし33番目アミノ酸配列でもあり、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドでもある。
【0025】
前記変形されたDKK2ポリペプチドは、野生型DKK2ポリペプチドに比べ、グリコシル基の追加、LRP6結合親和度の上昇、またはそれらの組み合わせを有するポリペプチドでもある。前記変形されたDKK2ポリペプチドのグリコシル基の追加は、対照群としての野生型DKK2ポリペプチドのグリコシル基の量より増加する。グリコシル基の追加によって、前記変形されたDKK2ポリペプチドの量は、細胞において、野生型DKK2ポリペプチドの量より増加する。細胞において変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする転写体の量が、野生型DKK2ポリペプチドをコーディングする転写体の量より増加する。ポリペプチドの量または転写体の量が増加したということは、ポリペプチドの細胞内発現効率が上昇したということを意味する。LRP6に対する前記変形されたDKK2ポリペプチドの結合親和度(binding affinity)は、野生型DKK2ポリペプチドの結合親和度より上昇する。結合親和度が高いほど、解離定数(K)は、低くなる。LRP6に対する前記変形されたDKK2ポリペプチドの解離定数は、例えば、約0.1nMないし約100nM、約1nMないし約50nM、約2nMないし約40nM、約3nMないし約30nM、約4nMないし約20nM、約5nMないし約10nM、または約5.5nMでもある。
【0026】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を提供する。
【0027】
前記変形されたDKK2ポリペプチドは、前述の通りである。
【0028】
前記核酸は、配列番号43ないし47からなる群から選択されたいずれか1つの核酸配列を含んでもよい。前記核酸は、変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸の5’末端または3’末端にタグをコーディングする核酸配列をさらに含んでもよい。前記核酸は、変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸の5’末端に、信号ペプチドをコーディングする核酸配列をさらに含んでもよい。前記核酸は、プローモーター、オペレーター、エンハンサー及び/または転写終結因子のような遺伝子発現調節因子と作動可能に連結されたものでもある。
【0029】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を含むベクターが導入された細胞を、培養培地の存在下で培養して培養物を得る段階、及び前記培養物から前記変形されたDKK2ポリペプチドを得る段階を含む、変形されたDKK2ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0030】
前記変形されたDKK2ポリペプチド、及び変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸は、前述の通りである。
【0031】
前記細胞は、真核細胞(eukaryotic cell)でもある。例えば、前記細胞は、動物細胞でもある。前記細胞は、例えば、胎児腎臓細胞、卵巣細胞、骨髄腫細胞または網膜由来細胞でもある。前記胎児腎臓細胞は、ヒト胎児腎臓(HEK:human embryonic kidney)293細胞またはベビーハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞でもある。前記卵巣細胞は、中国ハムスター卵巣細胞(CHO:Chinese hamster ovary cell)細胞でもある。前記骨髄腫細胞は、NS0細胞またはSP2/0細胞でもある。前記網膜由来細胞は、PerC6細胞でもある。前記細胞の種類によって、糖の結合方式(例えば、N糖化及びO糖化)、糖の構成(例えば、シアリル化レベル差)、及び糖の構造が異なるDKK2ポリペプチドが発現される。
【0032】
前記方法は、前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を含むベクターを細胞に導入させる段階をさらに含んでもよい。
【0033】
前記ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド(cosmid)、人工染色体(artificial chromosome)でもある。前記ベクターは、プローモーター配列を含む発現ベクターでもある。前記ベクターは、真核細胞において、標的遺伝子を発現させることができるベクターでもある。
【0034】
前記導入は、核酸を細胞内に導入させることをいう。前記導入は、例えば、形質転換(transformation)、形質注入(transjection)、形質導入(transduction)、接合(conjugation)、電気穿孔法(elctrophoration)による導入でもある。
【0035】
前記方法は、導入された細胞を培養培地の存在下で培養して培養物を得る段階を含む。
【0036】
前記培養培地は、細胞の生存または増殖に必要であったり、それらを促進させたりする機能をする成分を含む培地をいう。該培養培地は、細胞種類によって、当業者が選択することができる。
【0037】
前記培養は、当業者に周知の方法によってインキュベーションすることによって行われる。例えば、約37℃の温度において、5% COの条件下で培養することができる。
【0038】
前記方法は、培養物から変形されたDKK2ポリペプチドを得る段階を含む。前記培養物は、前記培養された細胞、または前記培養された細胞を除いた培養液でもある。
【0039】
前記変形されたDKK2ポリペプチドを得る段階は、細胞を得ること及びその分解、ポリペプチドの精製または濾過を含んでもよい。ポリペプチドを得る方法は、当業者に知られたものでもある。
【0040】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸、及び薬学的に許容可能な担体を含む血管新生促進用薬学的組成物を提供する。
【0041】
前記変形されたDKK2ポリペプチド、及び変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸は、前述の通りである。
【0042】
前記血管新生(angiogenesis)は、新たな血管が形成される過程をいう。該血管新生は、既存血管(pre-existing vessels)から新たな血管が成長する過程を含む。該血管新生は、成長及び発生においてだけではなく、傷治癒及び肉芽組織(granulation tissue)においても、正常であって重要な過程である。また、血管新生は、潜伏状態から悪性状態への腫瘍の転移において基本的な段階である。
【0043】
前記促進は、インビトロまたはインビボで行われる。前記促進は、虚血性血管疾患を有する個体において、新たな血管の発生または再生を誘導することでもある。
【0044】
前記薬学的組成物は、虚血性血管疾患の予防用または治療用の薬学的組成物でもある。前記虚血性血管疾患は、例えば、火傷、乾癬、潰瘍、虚血、虚血性心臓疾患、虚血性脳血管疾患、勃起不全でもある。
【0045】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸、及び薬学的に許容可能な担体を含む血管透過性関連疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0046】
前記変形されたDKK2ポリペプチド、及び変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸は、前述の通りである。
【0047】
前記血管透過性関連疾患は、血管の透過性が上昇し、血管周辺組織において、体液の漏れが増加する症状を有する疾患をいう。前記血管透過性関連疾患は、例えば、糖尿性網膜病症(diabetic retinopathy)、糖尿性黄斑浮腫(diabetic macular edema)、網膜静脈閉鎖性黄斑浮腫(macular edema following retinal vein occlusion)、黄斑変性(例えば、新生血管性(湿性)年齢関連黄斑変性(neovascular (wet) age-related macular degeneration)、脈絡膜血管新生、緑内障性網膜色素変性(glaucoma retinitis pigmentosa)、未熟児網膜症(ROP:retinopathy of prematurity)、緑内障、角膜ジストロフィー(corneal dystrophy)、網膜層間分離(retinoschises)、シュタルガルト病(Stargardt’s disease)、常染色体優性ドルーゼン(autosomal dominant druzen)、ベストの黄斑ジストロフィー(Best’s macular dystrophy)、嚢胞黄斑浮腫(cystoid macular edema)、虚血性網膜病症(ischemic retinopathy)、炎症誘導網膜退行性疾患(inflammation-induced retinal degenerative disease)、X染色体関連幼児期網膜層間分離(X−linked juvenile retinoschisis)、ML(Malattia Leventinese)またはDoyneハネカム網膜ジストロフィー(Doyne honeycomb retinal dystrophy)である。
【0048】
本明細書において、用語「予防」は、前記薬学的組成物の投与によって、疾患を抑制したり、疾患の発病を遅延させたりする全ての行為をいう。用語「治療」は、前記薬学的組成物の投与によって、疾患の症状が好転したり、好ましく変更したりする全ての行為をいう。
【0049】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。前記担体は、賦形剤、希釈剤または補助剤を含む意味で使用される。前記担体は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マニトールキシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、生理食塩水、PBSのようなバッファ、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及びミネラルオイルからなる群から選択されたものでもある。前記組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、風味剤、乳化剤、保存剤などを含んでもよい。
【0050】
前記薬学的組成物は、任意の剤形で準備される。前記組成物は、例えば、経口投与剤形(例えば、粉末、錠剤(tablet)、カプセル、シロップ、錠剤(pill)、顆粒)または非経口剤形(例えば、注射剤)に剤形化される。また、前記組成物は、全身剤形または局所剤形に製造される。
【0051】
前記薬学的組成物は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を有効な量で含んでもよい。前記有効な量は、当業者が、選択される細胞または個体によって適切に選択することができる。疾患の重症度、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、使用された組成物と配合されたり同時使用されたりする薬物を含んだ要素、並びにその他医学分野に周知の要素によって決定される。前記有効な量は、前記薬学的組成物当たり、約0.5μgないし約2g、約1μgないし約1g、約10μgないし約500mg、約100μgないし約100mg、約1mgないし約50mgでもある。
【0052】
前記薬学的組成物の投与量は、例えば、成人基準で、約0.001mg/kgないし約100mg/kg、約0.001mg/kgないし約10mg/kg、約0.001mg/kgないし約1mg/kg、約0.005mg/kgないし約1mg/kg、約0.01mg/kgないし約1mg/kg、または約0.1mg/kgないし約1mg/kgの範囲内で、1日1回、1日多回、1週2回あるいは3回、1ヵ月に1回ないし4回、1年に1回ないし12回投与される。
【0053】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を個体に投与する段階を含む、個体の血管新生を促進する方法を提供する。
【0054】
他の様相は、前記変形されたDKK2ポリペプチド、または前記変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸を個体に投与する段階を含む、個体の血管透過性関連疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0055】
前記変形されたDKK2ポリペプチド、変形されたDKK2ポリペプチドをコーディングする核酸、血管新生、促進、血管透過性関連疾患、予防及び治療は、前述の通りである。
【0056】
前記個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、牛、馬、豚、犬、羊、山羊または猫でもある。前記個体は、虚血性疾患を病んだり、病む可能性が高かったりする個体でもある。前記個体は、個体の血管透過性関連疾患を病んだり、病む可能性が高かったりする個体でもある。
【0057】
前記投与は、例えば、経口、静脈内、筋肉内、経皮(transdermal)、粘膜、鼻内(intranasal)、器官内(intratracheal)または皮下投与のような、任意の手段によって個体に直接に投与される。前記投与は、全身的または局所的に投与される。
【0058】
ここで、例示的な実施例を詳細に参照し、その例は、添付の図面に示されており、同様の参照番号は、同様の要素を参照する。それについて、本実施形態は、異なる形態を有してもよく、本明細書に記載された説明に限定されると解釈されるものではない。従って、例示的な実施形態は、図面を参照し、側面についての説明するために、以下で単に説明されるのみである。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の一つまたは複数の任意の全ての組み合わせを含む。
【0059】
以下、本発明を実施例を介して、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例1.N糖化された突然変異DKK2タンパク質の製造及び確認
1.DKK2タンパク質N糖化位置の予測
野生型DKK2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号3)は、N末端から3番目アミノ酸にN糖化位置を有する。野生型DKK2タンパク質からN糖化を人為的に生成させるため、NetNGlyc1.0 server(www.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/)を利用して、野生型DKK2タンパク質のN糖化位置を予測した。
【0061】
NetNGlyc1.0 serverから、総26種のDKK2タンパク質のN糖化位置を予測し、その結果を表1に記載した。表1においてアミノ酸は、野生型DKK2タンパク質(配列番号3)のアミノ酸と、そこから突然変異されたアスパラギン(Asn,N)とを示し、数字は、野生型DKK2タンパク質のN末端から突然変異されたアミノ酸の位置を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
26種のDKK2タンパク質のN糖化位置候補者のうち、NetNGlyc1.0 serverにおいて、N糖化可能性(potential)数値が高い5種のDKK2突然変異タンパク質を選別し、タンパク質の生産効率を確認した。
【0064】
選別された5種のDKK2突然変異タンパク質のN糖化可能性数値を下記表2に記載した。
【0065】
【表2】
【0066】
2.選別されたN糖化DKK2タンパク質の生産効率の確認
実施例1.1で選別された5種のDKK2タンパク質発現のために、高効率発現ベクターに挿入し、臨時発現システム(transient expression system)でタンパク質生産効率を確認した。
【0067】
(1)重合酵素連鎖反応の遂行
野生型DKK2自然型(Genbank accession no.NP_055236.1、配列番号3)(大韓民国、(株)medpacto提供)をテンプレートとして利用した。
【0068】
DKK2 N糖化のためにデザインしたプライマーの核酸配列を表3に示した。
【0069】
【表3】
【0070】
重合酵素連鎖反応のために、下記組成の混合物を準備した。
100ngテンプレート
2.5ユニットpfu DNA polymerase(SPX16−RS500、(株)Solgent)
10pmolフォワードプライマー
10pmolリバースプライマー
1μl 10mMd NTP
5μl 10x pfu polymerase buffer
50μl総体積
【0071】
準備された混合物を、95℃で2分間インキュベーションした後、95℃で20秒、64℃で40秒、及び72℃で1分を1サイクルにし、30サイクルを反復し、72℃で10分間インキュベーションし、増幅された突然変異DKK2核酸を得た。
【0072】
(2)増幅産物のクローニング、及び宿主細胞での一時的なタンパク質発現の確認
増幅された突然変異DKK2核酸または野生型DKK2核酸を、10ユニットの制限酵素SfiI(Cat.No.R033S、Enzynomics、韓国)及び1x反応緩衝液の存在下で、50℃で6時間インキュベーションした。反応物をアガロースゲルに電気泳動し、ベクターに挿入される核酸を、Gel Purification kit(Cat.No.1014876、QIAGEN、米国)を使用して精製した。哺乳類発現ベクターであるN293F−FCベクター(ATP−100、(株)ANRT)と、精製された核酸とを、質量比1:3の比率で混合し、10ユニットのT4 DNA連結酵素(Cat.No.M001S、Enzynomics、韓国)及び1x反応バッファの存在下で、22℃で4時間以上インキュベーションした。
【0073】
反応物を大腸菌に形質転換させ、核酸配列分析を介して、DKK2 N−Gly1、DKK2 N−Gly2、DKK2 N−Gly3、DKK2 N−Gly4及びDKK2 N−Gly5をコーディングする核酸の核酸配列(それぞれ、配列番号43ないし47)を確認した。突然変異DKK2核酸が導入されたN293F−FCベクターを含むクローンを選別した。
【0074】
選別されたクローンから、突然変異DKK2核酸(mDKK2)が導入されたN293F−FC−mDKK2ベクターを得た。Fc核酸は、ヒト免疫グロブリンG1のFc断片を暗号化する核酸(配列番号48)を利用した。
【0075】
哺乳類細胞であるHEK293F浮遊細胞を、5X10細胞/mlで、Free style media(Cat.No.1508027、Invitrogen、米国)に接種し、37℃及び5% COの条件下で培養した。細胞数が約1X10細胞/mlに逹するまで(約24時間)培養した。
【0076】
25μgの突然変異DKK2核酸が導入されたN293F−FCベクター、50μgのポリエチレンイミン(PEI:polyethylenimine)(Cat.No.23966、Polysciences、米国)、及び600μlのPMI培地(Cat.No.sh30027.01、Hiclone、米国)を混合し、室温で20分間インキュベーションした。反応物を、培養されたHEK293F細胞に添加し、37℃及び5% COの条件下で約5日間培養した。その後、細胞から分泌された水溶性タンパク質を得るために、細胞を取り除き、培養溶液だけ回収した。
【0077】
200μlの培養溶液を10% SDS−PAGEし、免疫ブロッティングを行った。得られた突然変異DKK2タンパク質及び野生型DKK2タンパク質は、そのN末端にFC−TAG、HIS−TAGまたはmFc−tagを含むために、1:4,000に希釈された抗Fc−HRP(Cat.No.31414、PIERCE、米国)、1:2,000に希釈された抗HIS−HRP(Cat.No.A7058、SIGMA、米国)、または1:2,000に希釈された抗mFc(Cat.No.31430、PIERCE、米国)を使用した。発色試薬として、ECL KIT(Cat.No.0034077 GE、米国)を使用してイメージを得た。
【0078】
図1Aは、さまざまなタグを含んだ野生型DKK2タンパク質の免疫ブロッティング結果を示す(露出時間:1分、M:マーカー(KDa)、1:N−Fc−DKK2、2:N−Fc(IgG4)−DKK2、3:N−His−DKK2、4:N−mFc−DKK2)。図1Aに示されているように、露出を1分ほど行っても、野生型DKK2タンパク質が検出されていない。従って、野生型DKK2タンパク質は、ほぼ発現されないということを確認した。
【0079】
図1Bは、さまざまなタグを含んだ突然変異DKK2タンパク質の免疫ブロッティング結果を示す(露出時間:1分(左)または1秒(右)、M:マーカー(KDa)、1:N−mFc−DKK2−gly1、2:N−mFc−DKK2−gly2、3:N−mFc−DKK2−gly3、4:N−Fc4−DKK2−gly1、5:N−His−DKK2−gly1、6:N−Fc−DKK2−gly1、7:N−His−DKK2−gly2、8:N−Fc4−DKK2−gly2、9:N−Fc−DKK2−gly2、10:N−Fc−DKK2−gly3、11:N−His−DKK2−gly3、12:N−Fc4−DKK2−gly3)。図1Bに示されているように、Fcタグを含んだ突然変異DKK2タンパク質は検出されたが、一方、Fc以外のタグを含んだ突然変異DKK2タンパク質は、ほぼ検出されていない。従って、Fcタグを含んだ突然変異DKK2タンパク質の発現効率が優秀であるということを確認した。発現されたタンパク質を、ディスポーザブルオープンカラムを利用して精製し、濃度を測定した。
【0080】
Fcタグを含むタンパク質の発現効率にすぐれるので、Fcタグを含むDKK2 N−Gly4タンパク質と、DKK2 N−Gly5タンパク質とを得た。得られたタンパク質を免疫ブロッティングし、その結果を図1Cに示した(露出時間:1秒(左)または30秒(右)、M:マーカー(KDa)、1:N−Fc−DKK2−gly4、2:N−Fc−DKK2−gly5)。図1Cに示されているように、N−Fc−DKK2−N−Gly4がN−Fc−DKK2−N−Gly5より発現効率にさらにすぐれるということを確認した。
【0081】
(3)タンパク質の大量生産及び精製
実施例1(2)に記載されているように、Fcタグと突然変異DKK2核酸とを含むベクターが形質導入された細胞を選別した。選別された細胞に対し、37℃及び5% COの条件下で約5日間培養した。細胞を除いた培養液を、室温で4,800rpmの速度で20分間遠心分離し、上澄み液を得た。0.22μmフィルタ(Cat.No.PR02890、Millipore、米国)を使用して濾過した。5mlカラムに充填されたタンパク質Aビード(Cat.No.17−1279−03、GE healthcare、スウェーデン)を準備し、濾過液を4℃で一晩0.9ml/分の速度でビードに加えた。100ml以上のPBS(phosphate buffered saline)(Cat.No.70011、Gibco、米国)でビードを洗浄した。その後、ビードに、0.1Mグリシン−HCl(Cat.No.G7126、Sigma、米国)を加え、6個分画に分けて溶出させた。1M Tris(Cat.No.T−1503−5KG、Sigma、米国)(pH9.0)を添加して分画物を中和させた。分画物中でタンパク質を定量し、タンパク質を含む分画を集めた。分画物をamicon ultra(Cat.No.UFC805024、Millipore、米国)に加え、製造社の指示に従って遠心分離した。濃縮物に1X PBSを添加して遠心分離する過程を3回反復して保管緩衝液をPBSで交換した。
【0082】
精製されたタンパク質の量を測定した。N−Fc−DKK2−gly1の量は、130μg/40ml培養液であり、N−Fc−DKK2−gly2の量は、860μg/40ml培養液であり、N−Fc−DKK2−gly3の量は、150μg/40ml培養液でであり、N−Fc−DKK2−gly4の量は、462μg/40ml培養液でであり、N−Fc−DKK2−gly5の濃度は、27μg/40mlであった。N糖化位置を導入した突然変異DKK2タンパク質のうち、最も発現効率が高いのは、N−Fc−DKK2−Gly2であり、その次は、N−Fc−DKK2−Gly4であるということを確認した。従って、N糖化位置を導入した突然変異DKK2タンパク質が、野生型DKK2タンパク質に比べて高発現され、N−Fc−DKK2−Gly2及びN−Fc−DKK2−Gly4の発現効率が、野生型DKK2の発現効率に比べ、それぞれ約80倍及び約50倍優秀であるということを確認した。
【0083】
精製されたタンパク質の純度を確認するために、3μgのタンパク質を10%SDS−PAGE方法で電気泳動し、その結果を図1Dに示した(M:マーカー(KDa)、1:N−Fc−DKK2−gly1、2:N−Fc−DKK2−gly2、3:N−Fc−DKK2−gly3、4:N−Fc−DKK2−gly4、5:N−Fc−DKK2−gly5)。図1Dに示されているように、N−Fc−DKK2−gly2とN−Fc−DKK2−gly4との純度が類似していると確認された。
【0084】
3.突然変異DKK2タンパク質の結合親和度確認
DKK2タンパク質が、マウスLRP6(mLRP6)と、ヒトLRP6(hLRP6)とに結合するということが知られているので、LRP6に対する、野生型DKK2タンパク質と突然変異DKK2タンパク質との結合親和度を確認した。
【0085】
具体的には、ELISAプレート(Cat.No.439454、Nunc、デンマーク)にウェル(well)当たり200ngのhLRP6タンパク質(Cat.No.1505−LR−025、R&D、米国)またはmLRP6タンパク質(Cat.No.2960−LR−025、R&D、米国)を加え、4℃で一晩インキュベーションし、タンパク質をコーティングした。200μlの4%(w/v)脱脂粉乳(Cat.No.232100、Difco、フランス)/1xPBSをELISAプレートのウェルに加え、常温で約1時間インキュベーションしてブロッキング(blocking)させた。その後、ブロッキング溶液をELISAプレートから除去した。
【0086】
それぞれの精製されたDKK2タンパク質と、100μlの1%(w/v)脱脂粉乳/1xPBSとを混合し、100nMのDKK2タンパク質を準備し、100nMのDKK2タンパク質を1/4の希釈濃度で順次希釈した。希釈されたタンパク質を、準備されたELISAプレートに加え、常温で約2時間インキュベーションした。その後、200μlのPBSTでプレートを5回洗浄した。
【0087】
2μlの抗Human Fc−HRP(Cat.No.31413、Thermo、米国)抗体を、1%(w/v)脱脂粉乳が含有された4mlのPBSと混合し、該混合物を、ELISAプレートのウェル当たり200μlずつ添加し、常温で1時間インキュベーションした。その後、ELISAプレートの二次抗体を除去し、200μlのPBSで5回洗浄した。10μlのH溶液(Cat.No.H1009−100ML、Sigma、米国)、10mlのPC緩衝液(5.1gクエン酸一水和物、7.3gリン酸ナトリウム/L(pH5.0))、1個のOPD錠剤(Cat.No.P8787−100TAB、Sigma、米国)を混合した混合物を準備し、各ウェルに総100μlの混合物を加えた。常温の暗い状態で10分間インキュベーションした後、発色を確認した。その後、ウェル当たり50μlの停止緩衝液を加え、発色反応を終了させた。ELISAリーダ機(reader)を利用して、490nmの波長で吸光度を測定し、測定された吸光度から解離定数K値(M)を算出した。
【0088】
図2Aは、200ngのmLRP6に対する、突然変異DKK2タンパク質の490nmの波長で測定された吸光度を示し、図2Bは、200ngのhLRP6に対する、突然変異DKK2タンパク質の490nmの波長で測定された吸光度を示す(■:N−Fc−DKK2−Gly1、▲:N−Fc−DKK2−Gly2、▼:N−Fc−DKK2−Gly3、◆:N−Fc−DKK2−Gly4、●:N−Fc−DKK2−Gly5)。図2A及び図2Bに示されているように、N−Fc−DKK2−Gly4が、mLRP6とhLRP6とに対する結合親和度が最も優秀であった。N−Fc−DKK2−Gly2は、発現効率が最も高かったが、mLRP6とhLRP6とに対する結合親和度は、高くないということを確認した。従って、N−Fc−DKK2−Gly4が発現効率にすぐれ、mLRP6とhLRP6とに対する結合親和度が高い突然変異DKK2タンパク質であるということを確認した。
【0089】
N−Fc−DKK2−Gly4と野生型DKK2(Cat.No.6628−DK−010、R&D、米国)との、hLRP6とmLRP6とに対する結合親和度を比較するために、前述のようにELISAを行った。ただし、100ngのLRP6を使用した。
【0090】
図2Cは、100ngのmLRP6に対する、DKK2タンパク質の490nmの波長で測定された吸光度を示し、図2Dは、100ngのhLRP6に対する、DKK2タンパク質の490nmの波長で測定された吸光度を示す(■:N−Fc−DKK2−Gly4、▲:野生型DKK2)。測定された吸光度から算出された解離定数(K)と、R2値とを表4に示した。
【0091】
【表4】
【0092】
hLRP6とmLRP6とに対して、N−Fc−DKK2−Gly4の結合親和度が、野生型DKK2の結合親和度より約5ないし約10倍優秀であるといういことを確認した。
【0093】
4.突然変異DKK2タンパク質の新生血管形成の確認
突然変異DKK2タンパク質が、新生血管を誘導することができるか否かということを確認するために、角膜ポケット分析法(CPA:corneal pocket assay)を行った。
【0094】
C57BL/6マウス(雄、9週齢、体重21.81g−23.81g)を(株)オリエントバイオ(韓国)から入手し、入手後7日間、実験を実施する飼育室内で順化させた。
【0095】
角膜内薬物を投与するために、薬物ペレットを製造した。具体的には、10gのスクロースオクタスルフェート−アルミニウム複合体(S0652、Sigma−Aldrich)を100mlのPBSに溶解させ、10%(w/v)スクラルファート(sucralfate)溶液を準備した。12gのポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(P3932、Sigma−Aldrich)を、100mlの無水エタノール(absolute ethanol)に溶解させ、12%(w/v)ポリHEMA溶液を準備した。ペトリ皿にパラフィルムを置き、UV中で15分間放置した。5μlの12%(w/v)ポリHEMA溶液、1μlの10%(w/v)スクラルファート溶液、及び4μlの薬物を混合した。該混合物を0.2μlずつパラフィルムに分注し、分注したペレットは、約1ないし2時間室温で乾燥させた。乾燥されたペレットは、使用前まで冷蔵保管した。
【0096】
順化されたマウス(雄、10週齢、体重23.43g−26.11g)を2個の群(それぞれn=5)に分けた。4:1(v/v)のケタミンとキシラジン(xylazine(RompunTM)、Bayer AG、ドイツ)との混合物をマウスに腹腔投与し、マウスに麻酔を施した。約10分後0.5%プロパラカイン(proparacaine)を角膜に点眼した。顕微鏡下で、von Graefe cataract knifeを使用して、角膜内にマイクロポケット(micro pocket)を作った。準備したペレットを角膜マイクロポケットに挿入し(1日目)、感染を防ぐために、テラマイシン眼軟膏を目に投与した。被検物質として、N−Fc−DKK2−Gly4を使用し、マウス当たり475ngのN−Fc−DKK2−Gly4が投与された。陰性対照群としてPBSを使用した。その後、顕微鏡で角膜を観察し、血管生成及び構造的特徴をイメージアナライザで観察した。陰性対照群は、新生血管が検出されない半面、N−Fc−DKK2−Gly4投与群は、5日目から新生血管が検出された。N−Fc−DKK2−Gly4投与群において新生血管面積(mm)を算出し、その結果を表5に示した。
【0097】
【表5】
【0098】
表5に示されているように、陰性対照群に比べ、N−Fc−DKK2−Gly4投与群において、新生血管生成が確認された。
【0099】
5.突然変異DKK2タンパク質の糖尿性網膜病症改善の効果
突然変異DKK2タンパク質が、糖尿性網膜病症(diabetic retinopathy)の症状を改善することができる否かということを確認した。
【0100】
チンチラ(Chinchilla)兎(雄、10−11週齢、体重2.0kg−2.5kg)を(株)ドリームバイオ(韓国)から入手し、入手後7日間、実験を実施する飼育室内で順化させた。順化された兎に、糖尿誘発物質としてアロキサン一水和物(alloxan monohydrate)(Sigma−Aldrich Co.)を耳静脈に投与し、投与後7日目(0日目)血糖を測定し、血糖300mg/dLである動物を選別した。選別された兎を各群の平均血糖が均一に分布するようにランダムに分配した。
【0101】
糖尿が誘発された兎に対して、ゾレチル(Zoletil)50(VIRBAC、フランス)及びキシラジン(xylazine(RompunTM)、Bayer AG、ドイツ)を静脈注射して麻酔を施した。被検物質として、N−Fc−DKK2−Gly4(PBS中)を、0日目(アロキサン投与後7日目及び7日目に1回/日、総2回、10μl/目の量をガラス体内注射(intravitreal injection)で投与した。正常対照群として、アロキサンの代わりにPBSを投与し、糖尿対照群として、アロキサンを投与し、陽性対照群として、EYLEA(登録商標)(バイエルコリア(株))を、0日目に単回50μl/目の量をガラス体内注射で投与した。投与された薬物を下記表6に示した。
【0102】
【表6】
【0103】
0日目(被検物質投与開始日)、14日目及び21日目に、兎の眼球に散瞳剤(未スリーアシル1%点眼液)を点眼した後、ゾレチル50(VIRBAC、フランス)及びキシラジン(xylazine(RompunTM)、Bayer AG、ドイツ)を使用して麻酔を施した。その後、2%(w/v)フルオレセインナトリウム塩溶液(Sigma Aldrich)を、耳静脈を介して注入し、兎の目を、眼底カメラ(TRC−50IX、TOPCON、日本)を使用して、2分以内撮影した。網膜確認及び薬効は、網膜蛍光眼底写真で評価した。イメージ分析は、ImageJ software(NIH、Bethesda、MD)を利用して、網膜血管周辺部の蛍光強度(fluorescein intensity in non-vascular regions of retina)を測定し、第1群(正常対照群)の平均値を基準(100%)に、各個体別測定値の相対レベル(%)を算出した。算出された蛍光強度を図3A及び図3Bに示した(図3A:14日目、図3B:21日目;*及び***:第1群と比べ、それぞれp<0.05及びp<0.001;#、##及び###:第2群と比べ、それぞれp<0.05、p<0.01及びp<0.001;$:第3群と比べ、p<0.05)。図3A及び図3Bに示されているように、N−Fc−DKK2−Gly4投与群は、投与量によって、網膜の血管周辺部において、蛍光強度が有意に低くなった。従って、N−Fc−DKK2−Gly4は、網膜血管周囲の血管漏れ(leakage)を阻害する効果があるということを確認した。
【0104】
また、21日目に、ゾレチル50及びキシラジンを使用して兎に麻酔を施した後、1%(v/v)Evans blue溶液(abcam)を耳静脈に注射した。約10分後、兎の眼球を摘出し、10%(v/v)中性緩衝ホルマリン溶液に浸して固定した。約24時間後、眼球から網膜を分離し、分離された網膜に、1mlの蒸溜水を加えた後、約10分間ボルテキシングした。該混合物を、10,000xgで常温で約10分間遠心分離した。0.3mlの上澄み液を、96ウェルマイクロプレートに移し、マイクロプレートリーダ(Versa Max Microplate reader、Molecular device、米国)を使用して、波長620nmで吸光度を測定した。第1群(正常対照群)の平均値を基準(100%)に、各個体別Evans blue血管透過性を算出した。算出された透過性を図4に示した(*及び***:第1群と比べ、それぞれp<0.05及びp<0.001;##及び###:第2群と比べ、それぞれp<0.01及びp<0.001;$$:第3群と比べ、p<0.01)。図4に示されているように、N−Fc−DKK2−Gly4投与群は、投与量によって、血管透過性が有意に低下した。従って、N−Fc−DKK2−Gly4は、網膜血管の透過性を阻害する効果があるということを確認した。
【0105】
糖尿性網膜病症は網膜に、新生血管生成(angiogenesisまたはneovascularization)、ガラス体出血などが示されることを特徴とする。N−Fc−DKK2−Gly4は、新生血管生成を抑制し、ガラス体出血を阻害し、網膜血管の透過性を阻害するので、変形されたDKK2ポリペプチド、例えば、N−Fc−DKK2−Gly4は、糖尿性網膜病症を予防または治療するのに効果があるということを確認した。
【0106】
本明細書に記載された例示的な実施形態は、説明的な意味でのみ考慮され、限定の目的で考慮されるものではないということが理解されねばならない。各例示的な実施形態における特徴、または態様の説明は、典型的には、他の例示的な実施形態における、他の同様の特徴または態様に利用可能であるとみなされる。
【0107】
1以上の例示的な実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明の概念の精神および範囲から外れることなしに、形態および詳細におけるさなざまな変更は、特許請求の範囲によって定義されるようになされるということは、当業者に理解されるであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]