(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6467075
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 9/06 20060101AFI20190128BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20190128BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20190128BHJP
【FI】
H02M9/06 Z
C23C14/34 T
!H05H1/46 R
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-7823(P2018-7823)
(22)【出願日】2018年1月22日
【審査請求日】2018年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342157
【氏名又は名称】東京電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡野 忠之
(72)【発明者】
【氏名】津布久 卓美
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 雅英
(72)【発明者】
【氏名】中谷 達行
【審査官】
高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−272948(JP,A)
【文献】
特開2014−192264(JP,A)
【文献】
特開2014−067943(JP,A)
【文献】
特開2016−138323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 9/00 − 11/00
C23C 14/00 − 14/58
H05H 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源部と、
該直流電源に接続され、所定電圧のパルスを発生するスイッチ回路部と、
該スイッチ回路部に接続され、前記パルスのパルス幅を設定するパルス設定部と、
を備えたパルス電源装置であって、
前記パルス設定部は、前記パルスの立ち上がりから第1パルス幅T1で前記パルスを生成し、続いて第2オフ幅T2で前記パルスをオフし、続いて第3パルス幅T3で前記パルスを生成するパルス群を設定し、
かつT2<T1≦T3に設定すると共に、T3に続いて、連続パルスを生成するよう設定するパルス電源装置。
【請求項2】
前記パルス設定部は、T3に続いて、さらに前記連続パルスとして、第5オフ幅T5で前記パルスをオフした後に第6パルス幅T6で前記パルスを生成する1組の波形を2組以上繰り返す連続パルスを生成するよう設定し、
かつT5とT6がいずれもT3の1/10以下、
前記連続パルスの合計幅をT4とし、前記パルス群のパルス周期をTcとしたとき、T1+T2+T3+T4<Tcに設定する請求項1に記載のパルス電源装置。
【請求項3】
前記パルス設定部は、前記連続パルスにおけるT5+T6で表される周期を一定とし、T6の比率を変えて前記連続パルスにおける電流を制御する請求項2に記載のパルス電源装置。
【請求項4】
T1=5〜20μs、T2=1〜30μs、T3=5〜100μsである請求項1記載のパルス電源装置。
【請求項5】
T1=5〜20μs、T2=1〜30μs、T3=5〜100μs、T4=10〜100μs、T5=0.1〜5μs、T6=0.1〜5μsである請求項2又は3記載のパルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスパッタリング等の成膜装置に好適に使用できるパルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の被膜を対象物に成膜する方法としてスパッタリングが知られているが、近年、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)が開発されている(特許文献1参照)。
図9に示すように、このHiPIMSは、従来のパルス(
図9の破線)に比べて短いパルス幅Wで高い電圧(電力)Vのパルス波を瞬間的にカソードに投入することで、高密度のプラズマを形成する成膜方法であり、高密度のプラズマにより被膜の硬度、平滑性、密着性が向上するとして注目されている(特許文献1)。
又、HiPIMSは、デューティ比が低いので、カソードが過熱せず、低温成膜が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5647337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、HIPIMSは、パルス電源の適用例の一つであり、大きな電力を瞬間的に加えることによってプラズマ密度を高め、スパッタ粒子の反応性を向上させ、緻密で表面平滑性の高く硬い膜を形成することを目指した技術である。HIPIMSの定義としては、パルスの付加時間であるON時間を極端に小さくし、OFF時間を長く採ることにより、電力を貯めて瞬間的に放電することが出来るものとされ、OFF時間が長いことでターゲットが冷却され、繰り返し放電を可能としている。HIPIMSのターゲットに与えられるピークパワーはおよそ500〜2000W/cm2程度、平均電力は、通常のパルスと同等、デューティー比(1周期でのON時間比)は0.5〜5%程度である。そして、HIPIMSのピーク時でのプラズマ密度は、通常のスパッタリングに比べて3桁程度向上する。
すなわち、OFF時間を長く、ON時間が極端に短いのがHIPIMS技術の特徴であり、これによりイオン化を促進し、コーティング膜として密着性の向上や、基板バイアスや基板加熱が無くても高い緻密性、複雑な形状基材へのカバレッジ性、溝への良好な成膜などが可能となっている。
【0005】
しかしながら、HIPIMSはOFF時間を長く採るため、コーティングの成膜時間が制限され、成膜レートが小さくなるので、生産コストの増加につながる問題がある。
又、
図10に示すように、HIPIMSでは、パルスの電流の立ち上がりに時間を要し、この点でも電圧と電流の積で表される電力、ひいては成膜レートが小さくなる。なお、電力は
図10のハッチング部分の面積である。
【0006】
さらに、HIPIMSは瞬間的に大きな電圧を加えるため、アーキング現象が生じ、正常なスパッタが困難になりやすいという問題がある。ここで、放電開始電圧をイグニッション電圧と称するが、イグニッション電圧は、安定な放電状態であるスパッタ電圧よりかなり高い電圧となるため、アーキングを生じやすい傾向にある。そして、HIPIMSでは、このイグニッション電圧も従来のパルス電圧に比べ、さらに高くなるため、アーキング発生の頻度が増大する。
【0007】
一方、単純にデューティ比を高くするためのパルスを生成すると、カソードに投入される電力が高くなり過ぎてカソードが過熱するおそれがあると共に、電圧パルスを供給するパルス電源が高価になる。
そこで、本発明は、高電力のパルスを供給しつつ、電流の立ち上げを早くすることができるパルス電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、高電力のパルスの電流の立ち上げを早くすれば、上述の成膜レートの向上を図ることができる。そこで、本発明者らは、パルスの構成を、最初に立ち上がるイグニッション部分(第1パルス幅T1)と、その後の高電力のメインパルス(第3パルス幅T3)とで構成することで電流の立ち上げを早くすることが可能となることを見出した。
すなわち、電流の立ち上りを早くするために、高電力のメインパルスの前段にパルスを形成することにより、高電力メインパルスの電力(電圧と電流の積)が大きくなり、例えばスパッタでは成膜レートが向上する。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のパルス電源装置は、直流電源部と、該直流電源に接続され、所定電圧のパルスを発生するスイッチ回路部と、該スイッチ回路部に接続され、前記パルスのパルス幅を設定するパルス設定部と、を備えたパルス電源装置であって、前記パルス設定部は、前記パルスの立ち上がりから第1パルス幅T1で前記パルスを生成し、続いて第2オフ幅T2で前記パルスをオフし、続いて第3パルス幅T3で前記パルスを生成するパルス群を設定し、かつT2<T1≦T3に設定する
と共に、T3に続いて、連続パルスを生成するよう設定する。
【0010】
このパルス電源装置によれば、第1のオンパルスの後段で電流が少し流れ始めるが、続いてパルスオフをすることで、流れ始めた電流が下がる。そして、電流が下がりきらないようにT2を設定し、続いて第2のオンパルスを印加すると、メインの放電が始まって電流が一気に流れ始める。従って、従来の単一のオンパルスに比べ、メインの放電である第2のオンパルスの電流の立ち上がりが早くなる。
又、T1≦T3とすることで、メインの放電である第2のオンパルスの放電時間(T3)が長くなり、パルスの電力×電流の積である電力もより大きくなる。又、T2<T1とすることで、電流が下がりきらないうちに第2のオンパルスを印加できる。なお、T2≧T1の場合、電流が大幅に減少(例えば0)になってしまい、単一のオンパルスと変わらなくなってしまう。
【0011】
本発明のパルス電源装置において、前記パルス設定部は、T3に続いて、さらに
前記連続パルスとして、第5オフ幅T5で前記パルスをオフした後に第6パルス幅T6で前記パルスを生成する1組の波形を2組以上繰り返す連続パルスを生成するよう設定し、かつT5とT6がいずれもT3の1/10以下、前記連続パルスの合計幅をT4とし、前記パルス群のパルス周期をTcとしたとき、T1+T2+T3+T4<Tcに設定するとよい。
このパルス電源装置によれば、第2のオンパルスの後にT3の1/10以下の幅のパルスが断続的に生成されるので、第2のオンパルスのT3を長くした場合に比べ、パルス電流の上昇を抑制しつつ、連続パルス部分でオンパルスの時間を稼いで、電力ひいては成膜レートも向上できる。又、T1+T2+T3+T4<Tcに設定することで、連続パルスが終了した後、十分なパルスオフ時間(周期Tc)を置いてから、次のパルスを生成することができる。
【0012】
本発明のパルス電源装置において、前記パルス設定部は、前記連続パルスにおけるT5+T6で表される周期を一定とし、T6の比率を変えて前記連続パルスにおける電流を制御するとよい。
このパルス電源装置によれば、T6の比率(ディーティ比)を変えることで、いわゆるPWM制御を行うことで、パルス電流を制御し、例えばスパッタにおけるアーキングを抑制できる。
【0013】
本発明のパルス電源装置において、T1=5〜20μs、T2=1〜30μs、T3=5〜100μsであるとよい。
【0014】
本発明のパルス電源装置において、T1=5〜20μs、T2=1〜30μs、T3=5〜100μs、T4=10〜100μs、T5=0.1〜5μs、T6=0.1〜5μsであるとよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、高電力のパルスを供給しつつ、パルスの電流の立ち上げを早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るパルス電源装置の全体構成を示す回路図である。
【
図2】パルス電源装置から出力されるパルスの波形を示す波形図である。
【
図3】パルス電源装置から出力されるパルスの電圧及び電流を示す図である。
【
図4】第2のオンパルスの放電時間(第3パルス幅T3)を長くしたときのパルス電流を示す図である。
【
図5】第2のオンパルスに続き、連続パルスを生成したときのパルス電流を示す図である。
【
図6】連続パルスにおけるT5の比率を変えたときのパルス電流を示す図である。
【
図7】連続パルスにおけるT5の比率を変えたときのパルス電流を示す別の図である。
【
図8】連続パルスにおけるT5の比率を変えたときのパルス電流を示すさらに別の図である。
【
図9】従来のHiPIMSに適用される電圧パルスの波形を示す波形図である。
【
図10】従来のHIPIMSにおけるパルス電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるパルス電源装置の全体構成を示すブロック図である。
図2は、パルス電源装置から出力される電圧パルスの波形を示す波形図である。なお、本実施形態では、パルス電源装置はHIPIMによるスパッタ用の電源としているが、これに限られない。
【0018】
図1において、パルス電源装置100は、直流電源部10と、直流電源部10に接続されて高周波のパルス電圧を発生するスイッチ回路部20と、アーキング発生時に出力電流を制限し直流電源部10及び高周波のスイッチ部20を保護する抵抗器部30と、直流電源部10を制御するコントロール部40と、スイッチ回路部20に接続され、スイッチ回路部20のオンオフを制御するパルス設定部(ファンクションジェネレータ)50と、を備えている。
【0019】
直流電源部10は、昇圧型スイッチングレギュレータ(DC−DCコンバータ)であり、マイコン等からなる全体を制御する電源制御部と、交流電圧が入力される入力部と、入力された交流電圧を直流電圧に変換する直流電圧供給回路と、入力側と出力側を絶縁するための高周波トランスと、絶縁、昇圧された交流電圧を直流電圧に変換する直流電圧供給回路と、を備えている。
【0020】
スイッチ回路部20は直流電源部10に接続され、高周波の所定電圧のパルスを出力するため、高周波50kHz〜500kHzで動作するようシリコンカーバイトで構成されたスイッチである電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタを駆動するためのドライバー回路部と、を備えている。
【0021】
抵抗器部30は、アーキング発生時、出力に過大な電流が流れることを制限して直流電源部10及びスイッチ回路部20の破損を防止するための抵抗器部と、抵抗器部を冷却するためのファンモーターと、を備えている。
【0022】
コントロール部40は、直流電源部10と接続され、直流電源部10のオン、オフ、リセットを制御する回路部と、出力電圧を可変させるための可変抵抗器部と、異常が発生した際、異常信号を受け、異常表示及び異常信号を出力する回路部と、を備えている。
【0023】
ファンクションジェネレータ50は、スイッチ回路部20と接続され、任意のパルス波形を出力する。具体的には、ファンクションジェネレータ50は、所定の設定信号に基づいて周波数(パルス幅)を設定し、その設定に応じてスイッチ回路部20が実際の出力パルス電圧を発生(生成)する。
【0024】
図2は、パルス電源装置100から出力されるパルス電圧の波形を示す。
まず、ファンクションジェネレータ50の設定により、スイッチ回路部20は所定の周波数f(
図2の周期Tcの逆数)及び所定電圧で、オン時間TnonのパルスTxを生成する。
さらに、
図2の拡大部に示すように、パルスTxは、第1パルス幅T1の第1のオンパルスと、第2オフ幅T2のパルスオフと、第3パルス幅T3の第2のオンパルスと、その後に形成される連続パルスT4からなり、T1,T2,T3,T4の順に連続して生成される一連のパルス群から構成される。従って、パルスTxが特許請求の範囲の「パルス群」に相当する。
周波数fは、パルス電圧によっても異なるが、例えば50〜500Hz(2ms〜20ms)である。
【0025】
第1のオンパルスは、上述のイグニッション電圧の役割を持つパルス電圧であり、詳しくは
図3に説明するが、第1のオンパルスの後半部分でパルス電流が立ち上がる(放電電流が流れ出す)ようにT1を設定することが好ましい。パルス電圧によっても異なるが、T1は例えば5〜20μsである。
【0026】
パルスオフは、
図3に示すように、第1のオンパルスの後半部分でパルス電流が立ち上がる(放電電流が流れ出す)範囲からスタート(パルスがオフ)するように、T1が設定されることが好ましい。パルス電圧によっても異なるが、T2は例えば1〜30μsである。
【0027】
第2のオンパルスは、パルスTxの放電電圧及び電力の大部分を占め、上記第1のオンパルス、パルスオフと組み合わせることにより、電流の立ち上りを早めてパルスの電力(電圧と電流の積)が大きくすることが可能となる。これにより、例えばスパッタでは成膜の硬さ及び成膜レートの向上に繋がる。パルス電圧によっても異なるが、T3は例えば5〜100μsである。
【0028】
図3に示すように、第1のオンパルスの第1パルス幅T1と、パルスオフの第2オフ幅T2と、第2のオンパルスの第3パルス幅T3とが、T2<T1≦T3となるよう、ファンクションジェネレータ50が設定されている。
これにより、第1のオンパルスの後段で電流I1が少し流れ始めるが、続いてパルスオフをすることで、流れ始めた電流I1が下がる。そして、電流I1が下がりきらないようにT2を設定し、続いて第2のオンパルスを印加すると、メインの放電が始まって電流I3が一気に流れ始める。従って、
図10の従来の単一のオンパルスに比べ、メインの放電である第2のオンパルスの電流の立ち上がりが早くなる。これに対し、
図10の単一のオンパルスでは、第1のオンパルスT1が無いため、電流が流れ出すタイミングが遅くなる。それに伴い、オンパルスのパルス幅が一定(T3)であれば、電流が流れ出すタイミングが遅い
図10の方が、パルス電圧の最高到達電圧も低くなり、電圧×電流で表される電力も低くなる。
【0029】
なお、T1≦T3とすることで、メインの放電である第2のオンパルスの放電時間(T3)が長くなり、パルスの電力×電流の積である電力もより大きくなる。又、T2<T1とすることで、電流I1が下がりきらないうちに第2のオンパルスを印加できる。T2≧T1の場合、電流I1が大幅に減少(例えば0)になってしまい、
図10の単一のオンパルスと変わらなくなってしまう。
【0030】
ところで、第2のオンパルスの放電時間(T3)を長くするほど、パルスの電力も大きくなるが、
図4に示すように、T3が長くなるにつれて電流が過大となり、例えばスパッタではアーキング現象が発生し、さらにアーク放電が発生することで、成膜自体に悪影響(ドロップレット等)を及ぼすことがある。そのため、実際にはT3をあまり長くすることが出来ず、アーキング現象が発生する手前のT3で成膜するので、成膜レート向上には限界がある。
そこで、アーキング現象が出始める直前から、連続パルスを生成して電流を制御できれば、アーキング現象を抑制しつつ、連続パルス部分でオンパルスの時間を稼ぐことができるため、電力ひいては成膜レートも向上できると考えられる。
【0031】
このようなことから、
図5に示すように、第2のオンパルスに続き、連続パルスを生成することが好ましい。
連続パルスは、第5オフ幅T5のパルスオフ、第6パルス幅T6のオンパルスを交互に生成して構成され、パルスオフとパルスオンからなる1組の波形を2組以上繰り返すものとする。例えば、それぞれ
図2、
図5の場合、連続パルスを構成するパルスオフとパルスオンの波形がそれぞれ5組、4組からなっている。
パルス電圧によっても異なるが、連続パルスの合計幅(T5とT6の合計)をT4としたとき、T4は例えば10〜100μsである。T5は例えば0.1〜5μsである。T6は例えば0.1〜5μsである。
【0032】
T5とT6がいずれもT3の1/10以下、パルスTxのパルス周期をTcとしたとき、T1+T2+T3+T4<Tcとなるよう、ファンクションジェネレータ50が設定されている。
これにより、第2のオンパルスの後にT3の1/10以下の幅のパルスが断続的に生成されるので、
図5に示すように、第2のオンパルスのT3を長くした場合に比べ、パルス電流の上昇を抑制しつつ、連続パルス部分でオンパルスの時間を稼いで、電力ひいては成膜レートも向上できる。
なお、T1+T2+T3+T4<Tcに設定することで、連続パルスが終了した後、十分なパルスオフ時間(周期Tc)を置いてから、次のパルスTxを生成することができる。
【0033】
さらに、
図6〜
図8に示すように、連続パルスにおけるT5+T6で表される周期を一定とし、T5の比率を変えて連続パルスにおける電流を制御するよう、ファンクションジェネレータ50が設定されていてもよい。
T5+T6で表される周期を一定とし、T6の比率(ディーティ比)を変える、いわゆるPWM制御を行うことで、パルス電流を制御し、例えばスパッタにおけるアーキングを抑制できる。
【0034】
図6は、第2のオンパルスの終了時点でパルス電流が目標値より高過ぎた場合を示す。この場合は、ディーティ比を低く(T5を長く)することで電流を低下させる制御を行い、例えばスパッタにおけるアーキングを抑制できる。
図7は、第2のオンパルスの終了時点でパルス電流が目標値付近の場合を示す。この場合は、ディーティ比を変えないことで、電流をこのままに保つことができ、電流が過大になることを抑制できる。
図8は、第2のオンパルスの終了時点でパルス電流が目標値より低過ぎた場合を示す。この場合は、ディーティ比を高く(T5を短く)することで電流を上昇させる制御を行い、パルス電流が目標値になるよう制御でき、連続パルス部分でオンパルスの時間を稼いで、電力ひいては成膜レートを向上できる。
【符号の説明】
【0035】
10 直流電源部
20 スイッチ回路部
50 ファンクションジェネレータ(パルス設定部)
100 パルス電源装置
T1 第1パルス幅
T2 第2オフ幅
T3 第3パルス幅
T4 連続パルスの合計幅
T5 第5オフ幅
T6 第6パルス幅
【要約】 (修正有)
【課題】高電力のパルスを供給しつつ、電流の立ち上げを早くすることができるパルス電源装置パルス電源装置を提供する。
【解決手段】直流電源部10と、該直流電源に接続され、所定電圧のパルスを発生するスイッチ回路部20と、該スイッチ回路部に接続され、パルスのパルス幅を設定するパルス設定部50と、を備えたパルス電源装置であって、パルス設定部50は、パルスの立ち上がりから第1パルス幅T1でパルスを生成し、続いて第2オフ幅T2でパルスをオフし、続いて第3パルス幅T3でパルスを生成するパルス群を設定し、かつ、T2<T1≦T3に設定する。
【選択図】
図1