特許第6467106号(P6467106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6467106
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】安全ネット用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20190128BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20190128BHJP
   E04G 5/06 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   E04G5/00 301D
   E04G21/32 A
   E04G5/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-188717(P2018-188717)
(22)【出願日】2018年10月3日
【審査請求日】2018年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518303192
【氏名又は名称】株式会社倉川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】倉川 尚志
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−326329(JP,A)
【文献】 特開平08−333889(JP,A)
【文献】 実公平07−006373(JP,Y2)
【文献】 実開平03−115764(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00、5/06
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面板、前記背面板に立設する左側面板及び右側面板よりなる水平断面コの字型で、前記左側面板及び前記右側面板の同位置に縦長の孔である左縦長孔及び右縦長孔を穿設したベース部材と、
前記ベース部材の前記左縦長孔及び前記右縦長孔に挿通する軸ボルトに回動可能に取り付けられ、安全ネットを係止するアーム部材と、
前記ベース部材に固定ボルト及びナットで固定され、建造物の外壁に沿うように組み立てられた足場に着脱自在に取り付けられるクランプ機構と、
からなり、
前記アーム部材は、水平方向に係止されるととともに、係止解除により下方に向け鉛直方向まで回動するものであって、
前記係止が、前記アーム部材の末端部と内ナットとの接触と、前記左縦長孔及び前記右縦長孔の幅による軸ボルトの位置決めで行われ、
前記係止解除が、前記アーム部材の水平保持したまま持ち上げ、先端を下方に回動させることで行われることを特徴とする安全ネット用ブラケット。
【請求項2】
前記アーム部材には、安全ネットを引っかけ、略同高さ位置で係止する、先端側の先ツメと根元側の元ツメを備えることを特徴とする請求項1に記載の安全ネット用ブラケット。
【請求項3】
前記アーム部材は、スリットを備えるアウターパイプと前記アウターパイプ内に挿抜されるインナーパイプとからなり、
前記インナーパイプに棒を備え、前記棒が前記スリットを移動することで、前記インナーパイプが延長方向を回転軸とする回転をしないことを特徴とする請求項1に記載の安全ネット用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設・建築工事、建造物の修繕、その他各種高所作業のための現場(「以下、高所作業現場」という)での建造物、或いは建造物の外壁に近接設置される足場において、落下防止用の安全ネットを係止する、足場着脱式の安全ネット用ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
足場を組み上げる高所作業現場では、作業者の安全対策として、建造物と足場との間の隙間から、物品の落下事故や人の墜落事故などを防止するため、足場に安全ネットやコンパネを利用する。したがって、それらを固定、支える支持金具が必須となっている。安全ネットを係止する支持金具は、安全ネット用ブラケットなどと呼ばれる。
【0003】
安全ネット用ブラケットは、一般には、図1に示す、特許文献1(第3図「安全ネット用持送り枠」)のように、アーム部材3を上から下に倒して水平にし、そのアーム部材3の上に安全ネット20を係止する構造になっており、収納時には、アーム部材3を上方に折る方式の跳上式ブラケットである。
【0004】
この場合、建造物とアーム部材3の先端とにアーム部材3を跳ね上げる旋回可能領域(スペース)を確保しなくてはならない。結果的に、落下物防止の安全ネットと、建造物との間に隙間が生じ、物品の落下事故を十分に防ぐことができない。また、アーム部材3を使用する際も撤去する際も、両手作業になるため煩雑で、作業性、安全性がよくない。
【0005】
他方、図2に示す、特許文献2(図1「安全ネット取付用ブラケット」)のように、アーム部材14を下方に折り畳み収納する方式の安全ネット用ブラケットもある。
【0006】
特許文献2の安全ネット取付用ブラケット11は、安全ネットを支持するアーム部材を軒天のすぐ近くに接近させることができると共に、格納作業等を簡単に行うことができ、且つ、簡単な構造にであって、
建造物51の外壁52に沿うように組み付けられた足場30にクランプ機構12を介して着脱自在に取り付けられるベース部材13を設け、該ベース部材13にボルト15(回動軸)を介して、安全ネットが取り付けられるアーム部材14が、水平状態から下方に略鉛直方向に沿う状態まで回動するように取り付けられ、更に、該アーム部材14の略水平状態の維持及び解除が可能な水平状態維持手段を設けてなる。
【0007】
前記水平状態維持手段は、前記アーム部材14を回動自在に支持する前記回動軸15が、前記ベース部材13に水平方向にスライド自在に設けられる一方、前記アーム部材の水平状態で前記ベース部材に係止し、前記アーム部材をスライドさせた時に、係止解除されて前記アーム部材の回動を可能とする係止手段を有することを特徴とする。
【0008】
しかしながら、特許文献1では、アーム部材14の水平保持手段が、ベース部材13の後面部13の挿通孔13bにアーム部材14の基端部13aを嵌める方式、又は、係止ピン29に掛ける方式である。したがって、まだ複雑な構造、操作を要し、アーム部材14の脱落も危惧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平03−115764号公報
【特許文献2】特開平08−326329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、従来よりも一層簡易な構造で、より作業性がよく、安全性の高い下方に折り畳む収納方式の足場着脱式の安全ネット用ブラケットを提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、
(1)
背面板、前記背面板に立設する左側面板及び右側面板よりなる水平断面コの字型で、前記左側面板及び前記右側面板の同位置に縦長の孔である左縦長孔及び右縦長孔を穿設したベース部材と、
前記ベース部材の前記左縦長孔及び前記右縦長孔に挿通する軸ボルトに回動可能に取り付けられ、安全ネットを係止するアーム部材と、
前記ベース部材に固定ボルト及びナットで固定され、建造物の外壁に沿うように組み立てられた足場に着脱自在に取り付けられるクランプ機構と、
からなり、
前記アーム部材は、水平方向に係止されるととともに、係止解除により下方に向け鉛直方向まで回動するものであって、
前記係止が、前記アーム部材の末端部と内ナットとの接触と、前記左縦長孔及び前記右縦長孔の幅による軸ボルトの位置決めで行われ、
前記係止解除が、前記アーム部材の水平保持したまま持ち上げ、先端を下方に回動させることで行われることを特徴とする安全ネット用ブラケット。
(2)
前記アーム部材には、安全ネットを引っかけ、略同高さ位置で係止する、先端側の先ツメと根元側の元ツメを備えることを特徴とする(1)に記載の安全ネット用ブラケット。
(3)
前記アーム部材は、スリットを備えるアウターパイプと前記アウターパイプ内に挿抜されるインナーパイプとからなり、
前記インナーパイプに棒を備え、前記棒が前記スリットを移動することで、前記インナーパイプが延長方向を回転軸とする回転をしないことを特徴とする(1)に記載の安全ネット用ブラケット。
の構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、アーム部材の当接部をクランプ機構のベース部材の内部の内ナット/又はボルトに係止し、収納時、下方に折り畳む方式の足場着脱式の安全ネット用ブラケットであるので、アーム部材の上方の回動スペースを気にすることなく、建造物に近接してアーム部材、及び安全ネットを設置することができる。
【0013】
そして、本発明は、部品点数が少なく、構造が簡易で、脱落がなく、安全な安全ネット用ブラケットである。
【0014】
また、アーム部材を水平に設置するときは、収納時のアーム部材の先端部を片手で上方に回動して上げることで、アーム部材の水平を確保することができる。他方、収納時には、片手でアーム部材を一端持ち上げて降ろせば、アーム部材を下に折曲げ収納することができる。すなわち、アーム部材の設置、収納いずれも片手で簡易に操作できる。
【0015】
他方、引用文献2では、アーム部材を水平に設置するとき、ベース部材13の後面部13の挿通孔13bにアーム部材14の基端部13aを嵌めるため煩雑な作業を伴い、とても片手作業では困難である。すなわち、一方の手でアーム部材の先端を把持し、他方の手で基端部13aの位置決めする、両手作業にならざるを得ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の安全ネット用ブラケットの説明図(特許文献1の第3図「安全ネット用持送り枠」)である。
図2】従来の安全ネット用ブラケットの説明図(特許文献2の図1「安全ネット取付用ブラケット」)である。
図3】本発明である安全ネット用ブラケットのアーム部材の設置、収納動作斜視図で、(A)は左背面側斜視図、(B)は左正面側斜視図、(C)右正面側斜視図であり、いずれも二点破線は残像である。
図4】本発明である安全ネット用ブラケットのアーム部材の収納時の左側面透視図である。
図5】本発明である安全ネット用ブラケットのアーム部材の(A)左側面視、回動動作縦断面図(二点破線は軌跡である)、(B)水平保持時の左側面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
本発明である安全ネット用ブラケット1は、図3−5に示すように、ベース部材2と、アーム部材3と、クランプ機構4と、必要に応じて備えられる位置固定金具5とからなる。
【0019】
ベース部材2は、背面板2c、背面板2cに水平方向に立設する左側面板2a及び右側面板2bよりなる水平断面コの字型の金具と、左側面板2a及び右側面板2bに挿通する軸ボルト2f及び軸ボルト2fに螺合して留めるナット2gと、必要に応じて安全ネットを係止する元ツメ2hからなる。
【0020】
左側面板2a及び右側面板2bの同位置に縦長の孔である左縦長孔2d及び右縦長孔2eが穿設され、左縦長孔2d及び右縦長孔2eに軸ボルト2fが上下移動可能に挿通し、脱落しないよう係止される。
【0021】
アーム部材3は、軸ボルト2fを挿通し、回動可能に取り付けられ、長手方向にスリット3bを備えるアウターパイプ3aと、アウターパイプ3a内に挿抜可能に収納されスリット3bを移動する棒3eを備えるインナーパイプ3cとからなり、安全ネットを係止する。
【0022】
アウターパイプ3aの末端部は、後述の内ナット4bに当接するが、アウターパイプ3aの配置、形状に応じて、必要に応じて、アウターパイプ3aの末端部には、平坦するL字状の当接部3gを備える。
【0023】
スリット3bと棒3eは、インナーパイプ3cが延長方向を回転軸とする回転せずに挿抜されるガイドとなる。
【0024】
インナーパイプ3c先端側には、必要に応じて、ベース部材2の上部に固定された鈎型(下に凸)の元ツメ2hとともに、安全ネットを引っかけ、略同高さ位置で係止する鈎型(上下反転「し」型)の先ツメ3dを備える。さらに、必要に応じてアウターパイプ3aにネジ留3fを固定し、ネジの押圧でインナーパイプ3cの挿抜位置を固定する。インナーパイプ3cをアウターパイプ3aに挿抜することで、安全ネットを係止する長さを調節することができる。
【0025】
クランプ機構4は、例えば図示されるように、ベース部材2に固定ボルト4a及び内ナット4bで固定される受金具4cと、受金具4cに回動可能に設けられ、閉じると受金具4cとともに環状に足場の管を挟持し切欠4eを備えた掴金具4dと、受金具4cに回動可能に設けられ切欠4eに嵌る回動ボルト4fと、回動ボルト4fに螺合して掴金具4dに回動ボルト4fを固定するナット4gとからなる、所謂、足場に用いられるクランプであり、建造物の外壁に沿うように組み立てられた足場の縦単管等に着脱自在に取り付けられる。
【0026】
クランプ機構としては、或いは、クランプそのものでなく、足場の単管に穴、溝があれば、それらに嵌る突起、クサビなどであってもよい。その場合には、内ナット4bに対応する位置に突起(ボルト、ナット)を設ければよい。
【0027】
位置固定金具5は、例えば図示されるようにコの字型の挟持型で、足場の縦単管を間に挟むことで、安全ネット用ブラケット1を、左右の揺れを防ぎ、位置を固定する。位置固定金具は、クランプ機構4と同様のクランプ機構であってもよい。或いは、足場の単管に穴、溝があれば、それらに嵌る突起、クサビなどであってもよい。
【0028】
以上のようにして構成される安全ネット用ブラケット1は、先ず鉛直方向下方に向け折りたたまれている状態(図4)で保管等され、使用時には、クランプ機構4で足場に固定された後、図5(A)に示すように、アーム部材3の先端を持ち、軸ボルト2fを回転軸として回動させる(図5(A)破線上向き矢印)。
【0029】
その際、軸ボルト2fが左右縦長孔2d、2eの上部に位置して、アーム部材3を回動することで、アーム部材3の末端部は内ナット4bにぶつかることなく回動させる。一端、アーム部材3が水平位置に位置したら、水平を保持したままアーム部材3を下げる(図5(A)down破線矢印)。
【0030】
それにより、アーム部材3の末端部(当接部3g)が内ナット4bに当接するとともに、軸ボルト2fが左右縦長孔2d、2eの下部に位置し、アーム部材3の末端部と内ナットとの接触及び左右縦長孔2d、2eの幅による軸ボルト2fの位置決めで、アーム部材3が回動できず、係止され、水平が保持される(図5(B))。
【0031】
アーム部材3の水平係止解除(下方への折り畳み)は、アーム部材3の水平を保持したままま持ち上げ、軸ボルト2fを左右縦長孔2d、2eの上位置に置き、アーム部材3の末端部と内ナットとの当接を解除することで、アーム部材3の末端部が回動できるようになり、先端を下方に回動させることで行われる。
【0032】
軸ボルト2fのアーム部材3挿通位置、すなわち軸ボルト2f挿通位置中心から末端部までのアーム部材3の長さ(当接部3gがあればそれを含めた長さ)と、内ナット4bの端部と左右縦長孔2d、2eの中心までの距離を等しくすることで、アーム部材3は、内ナット4bに係止され、水平が保持される。
【0033】
なお、内ナット4bと固定ボルト4aの配置は、入れ替えても可能で、その場合には、固定ボルト4aの端部が内ナット4bの端部に位置すれば、内ナット4bを固定ボルト4aと読み替えることで同じ作用を有する。
【符号の説明】
【0034】
1 安全ネット用ブラケット
2 ベース部材
2a 左側面板
2b 右側面板
2c 背面板
2d 左縦長孔
2e 右縦長孔
2f 軸ボルト
2g ナット
2h 元ツメ
3 アーム部材
3a アウターパイプ
3b スリット
3c インナーパイプ
3d 先ツメ
3e 棒
3f ネジ留
3g 当接部
4 クランプ機構
4a 固定ボルト
4b 内ナット
4c 受金具
4d 掴金具
4e 切欠
4f 回動ボルト
4g ナット
5 位置固定金具
【要約】
【課題】従来よりも一層簡易な構造で、より作業性がよく、安全性の高い下方に折り畳む収納方式の足場着脱式の安全ネット用ブラケットを提供する。
【解決手段】背面板、前記背面板に立設する左側面板及び右側面板よりなる水平断面コの字型で、前記左側面板及び前記右側面板の同位置に縦長の孔である左縦長孔及び右縦長孔を穿設したベース部材と、前記ベース部材の前記左縦長孔及び前記右縦長孔に挿通する軸ボルトに回動可能に取り付けられ、安全ネットを係止するアーム部材と、前記ベース部材に固定ボルト及びナットで固定され、建造物の外壁に沿うように組み立てられた足場に着脱自在に取り付けられるクランプ機構とからなることを特徴とする安全ネット用ブラケットの構成とした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5