特許第6467124号(P6467124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6467124-走行台車の車輪支持構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467124
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】走行台車の車輪支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20190128BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20190128BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B62B3/00 B
   B61B13/00 A
   B62B5/00 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-99272(P2013-99272)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218183(P2014-218183A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月29日
【審判番号】不服2017-13597(P2017-13597/J1)
【審判請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 雅靖
(72)【発明者】
【氏名】西羅 友佑
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−308095(JP,A)
【文献】 特開2003−312480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00-5/08
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に設けられている左右一対の前輪と、前記左右一対の前輪の各々の後側に設けられている左右一対の駆動輪と、前記駆動輪よりも後ろの車両後方に設けられている1つの後輪と、を備えた走行台車の車輪支持構造において、
前記車両の左側にある前輪及び駆動輪と、前記車両の右側にある前輪及び駆動輪とは、前記車両の進行方向に沿って並列に配設された2つの支持プレートにそれぞれ取り付けられており、
前記2つの支持プレートは、進行方向に直交する方向の支持ピンにより車体フレームに対して回動自在に支持され、
前記支持プレートにおける支持ピンの位置は、前記前輪及び前記駆動輪間の中間点よりも駆動輪寄りにあり、車体フレームに対する前記支持ピンの位置は、車体フレームの前後方向において前記支持ピンと後輪との間に台車の重心が位置するように配置され、
前記支持ピンは、走行台車が平坦な路と予め定めた坂道を登り降りする際に、前記支持プレートが前記支持ピン回りに回動することによって前記前輪及び駆動輪が地面に追随することができる位置に配置され、
前記車体フレームは、平らなプレート状の本体フレームと、前記本体フレームから下方に突出した形状の後輪用連結部分と、前記本体フレームから下方に突出した形状の支持プレート用連結部分と、を有していることを特徴とする走行台車の車輪支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空港内で貨物を搬送する走行台車、又は、ゴルフカート等、予め定められているコースを、例えば路面に付されている磁気マーカーをたどりながら走行する走行台車に関し、特に坂道のあるコースを走行する走行台車の車輪支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、この種の従来の走行台車の車輪支持構造を示す。図4(a)(b)に示す走行台車80は、車両前方に設けられている左右一対の前輪81、82と、前輪81、82の後ろ側に設けられている左右一対の駆動輪83、84と、駆動輪83、84の後ろ側に設けられている左右一対の後輪85、86と、を備えている。前輪81、82、及び後輪85、86は、何れもキャスター式の車輪である。
【0003】
走行台車80の車輪支持構造において、前輪81、82はばね81a、82aにより上下動可能に支持されており、後輪85、86はばね85a、86aにより上下動可能に支持されており、駆動輪83、84は車両の前後方向ほぼ中心位置に固定されている。この車輪支持構造では、走行台車80の走行時に車両が前後に揺れるという問題がある。また、この車輪支持構造では、重心が中心位置に無い場合、静止状態で車両が傾くという問題がある。
【0004】
図4(c)(d)には、上記とは異なるタイプの走行台車87を示す。上述の走行台車80と同じ構成要素には同じ参照番号を付して重複した説明を省く。走行台車87の車輪支持構造において、駆動輪83、84はばね83a、84aにより上下動可能に支持されており、前輪81、82と後輪85、86とは車両に固定されている。この車輪支持構造では、最大重量の荷物を運ぶ際に駆動輪からの駆動力が地面に確実に伝わるように、ばね83a、84aのばね定数をある程度大きくする必要がある。しかし、ばね定数を大きくすると、今度は、軽い荷物を運ぶ際、ばねの縮む量が少なく、駆動輪83、84が前輪81、82又は後輪85、86を地面から浮かしてしまうといった問題がある。
【0005】
上述した問題の改善を試みた車輪支持構造として、図4(a)(b)に示した走行車両80において、駆動輪83、84の代わりに1つの駆動輪を備え、この駆動輪及び後輪85、86をT字型プレートに取り付けたものがある。該プレートの駆動輪と後輪とをつなぐ部分は、後輪寄りの個所で、進行方向に直交する方向の支持ピンによって車両本体に回動可能に取り付けられている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−33027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の走行台車の車輪支持構造では、走行時の前後方向の揺れや静止時の傾き、軽い荷物を載せた時の不具合等は発生しない。しかし、この車輪支持構造では、平坦な路又は坂道にある凸凹を吸収することができず、駆動輪が浮いてしまい、地面に駆動力が伝わらないことがある。
【0008】
本発明は、上記従来の走行台車の車輪支持構造の問題を改善するためになされたものであり、積荷の重量によらず、凸凹のある路又は坂道で前輪、駆動輪、後輪の全ての車輪を常時地面に接地させて、走行台車を安定して走行させる車輪支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、車両前方に設けられている左右一対の前輪と、前記左右一対の前輪の各々の後側に設けられている左右一対の駆動輪と、前記駆動輪よりも後ろの車両後方に設けられている1つの後輪と、を備えた走行台車の車輪支持構造において、前記車両の左側にある前輪及び駆動輪と、前記車両の右側にある前輪及び駆動輪とは、前記車両の進行方向に沿って並列に配設された2つの支持プレートにそれぞれ取り付けられており、前記2つの支持プレートは、進行方向に直交する方向の支持ピンにより車体フレームに対して回動自在に支持されており、前記支持プレートにおける支持ピンの位置は、前記前輪及び前記駆動輪間の中間点よりも駆動輪寄りにあり、車体フレームに対する前記支持ピンの位置は、車体フレームの前後方向において前記支持ピンと後輪との間に台車の重心が位置するように配置され、前記支持ピンは、走行台車が平坦な路と予め定めた坂道を登り降りする際に、前記支持プレートが前記支持ピン回りに回動することによって前記前輪及び駆動輪が地面に追随することができる位置に配置され、前記車体フレームは、平らなプレート状の本体フレームと、前記本体フレームから下方に突出した形状の後輪用連結部分と、前記本体フレームから下方に突出した形状の支持プレート用連結部分と、を有していることを特徴とする。


【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車輪支持構造を構成する2つの支持プレートは、支持ピン周りに独立して回動することによって地面の凸凹を吸収し、また、坂道の登り降りの際にも駆動輪を地面にしっかりと追随させることができ、駆動力を地面に確実に伝えることができる。また、車輪支持構造は、車輪をばねによって支持しないため、走行時に前後方向に揺れたり、静止時に傾いたり、軽い荷物を載せた時に前後輪が浮いてしまうといった不具合が発生し難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る走行台車の平面図、(b)は(a)のA−A’線矢視図、(c)は(a)のB−B’線矢視図、(d)は同走行台車の右側面図。
図2】(a)は同走行台車の車輪支持構造を示す平面図、(b)は(a)のC−C’線断面図、(c)は同走行台車が備えている車体フレームの斜視図。
図3】(a)乃至(e)は同走行台車が坂道を降りる時の支持フレームの状態変化を示す側面図。
図4】(a)は従来の走行台車の車輪支持構造を示す平面図、(b)は同側面図、(c)は(a)とは異なる従来の走行台車の車輪支持構造を示す平面図、(d)は同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の走行台車の車輪支持構造では、左右一対の前輪及び駆動輪と、1つの後輪と、を備えた走行台車において、車両の進行方向左側の前輪及び駆動輪と、右側の前輪及び駆動輪とが、並列に配設された2つの矩形の支持プレートにそれぞれ取り付けられている。この2つの支持プレートは、進行方向に直交する方向の支持ピンにより車体フレームに対して回動自在に支持されている。支持プレート上の支持ピンは、前輪及び駆動輪の間の中間点よりも駆動輪寄りの位置に配置される。車体フレームに対する支持ピンの位置は、車体フレームの前後方向において支持ピンと後輪との間に台車の重心が位置するように設定される。当該構成の車輪支持構造では、車輪をばねによって支持しないため、走行時に前後方向に揺れたり、静止時に傾いたり、軽い荷物を載せた時に前後輪が浮いてしまうといった不具合は発生しない。また、2つの支持プレートが支持ピン周りに回動することにより、坂道の登り降りの際にも駆動輪を地面にしっかりと追随させることができ、駆動力を地面に確実に伝えることができる。更には、2つの支持プレートが支持ピン周りに独立して回動することと、前輪側の車両の傾きを許容する1の後輪の働きと、によって地面の凸凹を吸収することができる。
【0014】
図1(a)乃至(d)は、本実施形態に係る車輪支持構造を備えた走行台車1を示す。走行台車1は、車両本体2の上部にゴムシートが貼り付けられている荷台3と、荷台3を囲む柵4と、コントロールパネル5と、積層回転灯6と、を備えている。柵4の一部の柵4aは、荷台3への荷物の積み込み又は積み下ろしのため水平方向に開くようになっている。コントロールパネル5は、走行台車1の始動、走行及び停止、進路等を操作するのに必要なボタンまたはレバー等を備えている。積層回転灯6は、走行台車1の走行状態等を示す。
【0015】
車両本体2内部には、前輪、駆動輪及び後輪が取り付けられている車輪支持構造7と、交換可能に取り付けられている駆動用バッテリ8と、が備えられている。走行台車1の車輪指示構造7以外の構成は、周知の走行台車と同様のものであり、ここでの詳しい説明は省く。
【0016】
図2(a)乃至(c)は、車輪支持構造7の詳細な構成を示す。本図では、説明の便宜のため、左から右向きを進行方向とする。
【0017】
車両本体2は、車両前方に設けられている左右一対の前輪9、10と、前輪9、10の各々の後側に設けられている左右一対の駆動輪11、12と、駆動輪11、12よりも後ろの車両後方に設けられている後輪13と、を備えている。前輪9、10は、キャスター式の車輪である。後輪13は、キャスター式の車輪、又は、コントロールパネル5の操作に応じて進行方向を操作可能な操舵輪である。各車輪は、例えばウレタン又はゴム製の車輪である。
【0018】
走行台車1の進行方向から見て左側(図面上側)にある前輪9及び駆動輪11と、進行方向から見て右側(図面下側)にある前輪10及び駆動輪12とは、進行方向に沿って並列に配設された2つの支持プレート14、15にそれぞれ取り付けられている。2つの支持プレート14、15は、進行方向に直交する方向の支持ピン16、17により車体フレーム18に対して回動自在に支持されている。
【0019】
車体フレーム18は、略平らなプレート状の本体フレーム18aと、本体フレーム18aから下方に突出した形状の後輪13用連結部分18bと、本体フレーム18aから下方に突出した形状の支持プレート14、15用連結部分18c、18dと、を有している。
【0020】
支持プレート14、15における支持ピン16、17の位置は、前輪9、10及び駆動輪11、12の間の中間点よりも駆動輪11、12寄りにする。これにより、駆動輪11、12の良好な接地性を確保して地面に駆動力が伝わるようにする。
【0021】
また、車体フレーム18に対する支持ピン16、17の位置は、車体フレーム18の後方向において支持ピン16,17と後輪13との間に走行台車1の重心が位置するように配置する。これにより、前輪9、10、駆動輪11、12及び後輪13の安定した接地を可能にする。
【0022】
2つの支持プレート14、15は、支持ピン16、17周りに回動することにより、坂道の登り降りの際にも駆動輪11、12を地面にしっかりと追随させることができ、駆動力を地面に確実に伝えることができる。更には、2つの支持プレート14、15が支持ピン16、17周りに独立して回動することと、前輪側の車両の傾きを許容する1の後輪13の働きと、によって地面の凸凹を吸収して前輪9、10、駆動輪11及び後輪13の安定した接地を可能にする。
【0023】
図3(a)乃至(e)は、走行台車1が予め定めたコース内の平坦な路20から該コース内にある最も急な坂道21を降り、再び平坦な路22を走行するまでの支持プレート14、15の様子を示す図である。
【0024】
図3(a)は、走行台車1の前輪9、10が坂道21の下り始めの位置21aにある時の支持プレート14、15の様子を示す。この場合、支持プレート14、15は、平坦な路20と平行、即ち水平状態に保たれている。
【0025】
図3(b)は、走行台車1の駆動輪11、12が坂道21の下り始めの位置21aにある時の支持プレート14、15の様子を示す。この場合、支持プレート14、15は、時計回りに最も大きな角度で回動している。駆動輪11、12の支持プレート14、15への取り付け位置から支持ピン16、17までの距離Lおよび回動角度αに基づいて求まる、駆動輪11、12が車両本体2内部へ隠れる引込量(L×sinα)を考慮する。駆動輪11、12の直径は、支持プレート14、15が水平状態にある時の駆動輪11、12の走行台車1の底面からの突出量が、引込量より多く、この結果、本図の場合において駆動輪11、12が走行台車1の底面から地面側に突出する値に設定する。
【0026】
図3(c)は、走行台車1の前輪9、10が坂路21の終わりの位置21bにある時の支持プレート14、15の様子を示す。この場合、支持プレート14、15は、坂路21の地面に平行な状態に保たれている。
【0027】
図3(d)は、走行台車1の駆動輪11、12が坂路21の終わりの位置21bにあり、前輪9、10が平坦な路22の上にある時の支持プレート14、15の様子を示す。この場合、位置21bで走行台車1の底面と地面とが最も離れた状態にあり、支持プレート14、15は反時計回りに最も大きな角度で回動している状態にある。駆動輪11、12の支持プレート14、15への取り付け位置から支持ピン16、17までの距離Lと回動角度βに基づいて求まる、駆動輪11、12が車両本体2から更に突出する追加突出量(L×sinβ)を考慮する。距離Lの値は、支持プレート14、15が水平状態にある時の駆動輪11、12の走行台車1の底面からの突出量に追加突出量を加算した総突出量が、位置21bでの走行台車1の底面から地面までの距離と等しくなる値に設定する。
【0028】
図3(e)は、走行台車1の後輪13が坂道21の終わりの位置21bにあり、前輪9、10及び駆動輪11、12が平坦な路22の上にある時の支持プレート14、15の様子を示す。支持プレート14、15は、平坦な路22と平行、即ち水平状態に保たれている。
【0029】
以上に説明した条件を満たすように、駆動輪11、12の直径と、駆動輪11、12の支持プレート14、15への取り付け位置から支持ピン16、17までの距離と、を設定する。これにより、走行台車1は、安定した姿勢で、予め定めたコース内の全ての坂道を登り降りすることができる。2つの支持プレート14、15が地面の凸凹に応じて独立して回動するとともに、1つの後輪13がこの支持プレート14、15の回動に伴う前輪側での車両の傾きを許容することにより、前輪9、10及び駆動輪11、12の高い接地性を保つことができる。また、車輪支持構造7は、ばねを使用しないため、走行台車1が走行時に前後方向に揺れたり、静止時に傾いたり、軽い荷物を載せた時に前後輪が浮いてしまうといった不具合が発生し難いものとなる。
【0030】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば車体フレーム18と支持プレート14、15とをユニバーサルジョイントを介して連結してもよい。この場合、坂道が左右いずれかに傾いている時でも地面への良好な接地性を保つことができる。前輪9、10は、キャスター輪の他、トレール輪、ステアリング輪でもよい。また、各車輪は、ウレタン又はゴム製の車輪の他、鉄道用の鉄製の車輪を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、予め定めたコースを走行する車両全般に用いることができ、種々の産業で利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 走行台車
2 車両本体
3 荷台
7 車輪支持構造
9、10 前輪
11、12 駆動輪
13 後輪
14、15 支持プレート
16、17 支持ピン
18 車体フレーム
図1
図2
図3
図4