特許第6467168号(P6467168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンの特許一覧

<>
  • 特許6467168-燃料集合体 図000002
  • 特許6467168-燃料集合体 図000003
  • 特許6467168-燃料集合体 図000004
  • 特許6467168-燃料集合体 図000005
  • 特許6467168-燃料集合体 図000006
  • 特許6467168-燃料集合体 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467168
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】燃料集合体
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/33 20060101AFI20190128BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20190128BHJP
   G21C 3/34 20060101ALI20190128BHJP
   G21C 3/324 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   G21C3/33 600
   G21C3/33GDB
   G21C3/33 610
   G21C3/06 200
   G21C3/34 400
   G21C3/33 616
   G21C3/324
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-169998(P2014-169998)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-45095(P2016-45095A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229461
【氏名又は名称】株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】青見 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 優二
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−092619(JP,A)
【文献】 特開平07−248390(JP,A)
【文献】 特開2004−131816(JP,A)
【文献】 特開2014−071017(JP,A)
【文献】 実開平02−120099(JP,U)
【文献】 特表平08−500187(JP,A)
【文献】 特開昭60−117179(JP,A)
【文献】 特開平06−230160(JP,A)
【文献】 特開2011−033493(JP,A)
【文献】 米国特許第05274686(US,A)
【文献】 湯浅三郎,二酸化炭素雰囲気中における金属の着火と燃焼に関する研究の現状,東京都立工科短期大学研究報告,日本,1986年 3月,第14号,60,61
【文献】 中村武彦 他,過酷炉心損傷時における核分裂生成物び燃料棒からの放出速度およびその化学形,JEARI−M 89−077,日本,日本原子力研究所,1989年 6月,p.4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G21C 3/00− 3/64、
G21C21/00−21/18、
G21C 9/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒と、
燃料棒の上端で燃料棒を支持する上部支持板と、
燃料棒の下端で燃料棒を支持する下部支持板と、
燃料棒の上端と下端との間の位置で燃料棒を支持する支持格子と、
を備え、
上部支持板、下部支持板および支持格子のうち少なくとも1つは、燃料棒と異なる金属材料で構成され、
燃料棒は、前記上部支持板、下部支持板および支持格子のうち少なくとも1つとの接触する位置に、燃料棒の構成材料よりも融点が高く且つ共晶反応性が小さな材料で構成された表面層を有する、燃料集合体であって、
燃料集合体の外周部に位置する前記表面層が、燃料集合体の内周部に位置する表面層よりも厚い層厚を有する、
燃料集合体。
【請求項2】
前記表面層が、燃料棒を構成する材料の酸化を抑制する、請求項1に記載の燃料集合体。
【請求項3】
燃料棒と、
燃料棒の上端で燃料棒を支持する上部支持板と、
燃料棒の下端で燃料棒を支持する下部支持板と、
燃料棒の上端と下端との間の位置で燃料棒を支持する支持格子と、
を備え、
上部支持板、下部支持板および支持格子のうち少なくとも1つは、燃料棒と異なる金属材料で構成され、
前記上部支持板、下部支持板および支持格子のうち少なくとも1つは、燃料棒との接触位置に、燃料棒の構成材料よりも融点が高く且つ共晶反応性が小さな材料で構成された表面層を有する、燃料集合体であって、
燃料集合体の外周部に位置する前記表面層が、燃料集合体の内周部に位置する表面層よりも厚い層厚を有する、
燃料集合体。
【請求項4】
前記表面層が、前記上部支持板および前記下部支持板のうちの少なくとも1つの端栓挿入孔の少なくとも一部に形成された、請求項3に記載の燃料集合体。
【請求項5】
前記表面層が、前記支持格子の内壁およびバネの少なくとも一部に形成された、請求項3または4に記載の燃料集合体。
【請求項6】
前記表面層が、SiC/SiC複合材料、ジルコニア、タングステンからなる一群から選択された材料である、請求項1からのいずれかに記載の燃料集合体。
【請求項7】
燃料棒の被覆管が、ジルコニウム合金よりも酸化の際の反応熱による発熱が小さな材料により構成された、請求項1からのいずれかに記載の燃料集合体。
【請求項8】
燃料棒が、鉄基合金で構成される、請求項に記載の燃料集合体。
【請求項9】
前記鉄基合金が、酸化物分散強化型鋼である、請求項に記載の燃料集合体。
【請求項10】
前記下部支持板の表面が、ウラン酸化物よりも融点の高い材料で構成された、請求項1からのいずれかに記載の燃料集合体。
【請求項11】
ウラン酸化物よりも融点の高い材料で構成され、且つ前記下部支持板と結合されたチャンネルボックスをさらに備える、請求項10に記載の燃料集合体。
【請求項12】
前記ウラン酸化物よりも融点の高い材料が、タングステンである、請求項10または11に記載の燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子力発電プラントで使用される燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子燃料集合体は、燃料棒を支持格子と上部及び下部支持板により束ねられている。また、沸騰水型原子炉に用いられる燃料集合体は、チャンネルボックスにより燃料集合体毎に囲まれた構造となっている。燃料棒、チャンネルボックスなどの燃焼集合体の構成部材は、主にジルコニウム合金が使用されている。支持格子は、ニッケル基合金で全体を構成するか、またはジルコニウム合金で構成したうえでバネ部材などの燃料棒と接触する部位に耐食耐熱性のニッケル基超合金が使用されている。上部支持板及び下部支持板はステンレス鋼で製作されることが多い。すなわち、これらの構成部品は、比較的融点が低い材料で構成されている。
【0003】
このため、原子炉が何らかの原因によりあらかじめ想定していた設計基準事象を大きく超えるシビアアクシデント事象が生じると、炉心の温度が非常に高温になって炉心溶融状態に至る。かかる事象下では、推定最高温度は2000℃以上というジルコニウム合金やステンレス鋼などの融点よりも高い状態となるため、燃料棒の被覆管とともに、支持格子、チャンネルボックス、上部および下部支持板などの構成部材が溶融して、ウランとジルコニウムの酸化物と溶融した金属との混合物となる。
【0004】
この溶融混合物の発生過程において、燃料棒の被覆管と、上部支持板、下部支持板、支持格子などの燃料棒と接触する構成部材とが異なる金属で構成されていることにより、両者が接触する部分において共晶溶融による融点低下が生じ、燃料棒が、本来のジルコニウム合金の融点よりも低い1000℃程度で溶融が開始してしまうという問題があった。
【0005】
さらに、燃料棒の被覆管に用いられているジルコニウム合金は、シビアアクシデント事象時のような高温条件下で水蒸気に曝されると、酸化して反応熱により被覆管自体が発熱するが、酸化速度が大きくなるに伴って増大する反応熱による発熱により、被覆管の温度上昇速度が加速することも溶融進行の一因である。
【0006】
このため、かかる融点低下を抑制し、また酸化の際の反応熱による発熱に起因する温度上昇を抑えて、溶融開始までの時間的余裕を高めることが求められていた。さらに、溶融開始後には、燃料集合体の外部への溶融デブリに拡散を防止し、炉心外の部材の損傷を限定的なものとすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−90489号公報
【発明の概要】
【0008】
燃料棒と、上部支持板や下部支持板、支持格子との接触位置において、燃料棒の被覆管に、燃料棒の構成材料よりも融点が高く且つ接触する部材との共晶反応性が小さな材料で構成された表面層を設けることにより、接触部分における共晶溶融による融点低下を防止または抑制することが可能となる。
【0009】
表面層は、共晶溶融による融点低下の抑制とともに、燃料棒の被覆管の酸化速度を抑制する効果の高い材料であることが望ましい。ジルコニウム合金などの被覆管材料は酸化反応による反応熱により材料自体が発熱し、且つ発熱によりさらに酸化反応が促進されて、燃料棒の被覆管自体の温度が加速的に上昇する。このため、表面層形成によって融点低下の抑制とともに、被覆管自体の酸化速度をも抑制することが望ましい。
【0010】
表面層は、燃料棒の被覆管の代わりに、または被覆管に加えて、上部支持板や下部支持板、支持格子に設けてもよい。より具体的には、上部支持板や下部支持板では端栓挿入孔の少なくとも一部に、支持格子では内壁やバネの少なくとも一部に、表面層を形成してもよい。表面層は、上部支持板、下部支持板、支持格子、端栓挿入孔、バネ、支持格子の内壁の全体に形成してもよい。
【0011】
ここで、燃料集合体内で外側に位置する燃料棒の接触部に形成された表面層(燃料棒、上部支持板、下部支持板、支持格子のいずれに形成された表面層であってもよい)の厚さは、燃料集合体内で内側に位置する表面層の厚さよりも厚いことが望ましい。外周部に位置する燃料棒は、チャンネルボックスなどの燃料集合体の構成部材からの溶融体が直接接触するため、内周部よりも共晶溶融による融点低下の防止・抑制への要請が高いためである。
【0012】
表面層の具体的な材料としては、SiC/SiC複合材料やジルコニアなどのセラミックスやタングステンなどの高融点金属が一例として挙げられるが、これらに限られるものではなく、燃料棒の被覆管材料よりも、共晶反応性が低く、酸化速度抑制効果が高い材料であれば表面層の材料として利用することが可能である。
【0013】
また、燃料棒の被覆管を、ジルコニウム合金よりも酸化の際の反応熱による発熱が小さな材料により構成することにより、被覆管自体の発熱を抑え、溶融開始までの時間的余裕を高めることができる。具体的な材料としては、酸化物分散強化型鋼(ODS鋼)などの鉄基合金が一例として挙げられるが、これに限られるものではない。
【0014】
さらに、下部支持板の表面をウラン酸化物よりも融点の高い材料(例えば、SiC/SiC複合材料、ジルコニア、タングステンなど)で構成することによって、シビアアクシデント事象下においてウラン酸化物やジルコニウム酸化物の溶融体が燃料集合体の外部へ拡散することを防止し、炉心外の部材の損傷を限定的なものとすることが可能となる。この際、さらにチャンネルボックスもウラン酸化物よりも融点の高い材料で構成し、かつ下部支持板とチャンネルボックスとを結合して一体化することによって、下部支持板とチャンネルボックスとで画成される容量内に溶融体を保持し、溶融体が燃料集合体の外部へ拡散することを防止することが可能となる。これにより、シビアアクシデント後の処理における取り扱いの困難性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施例である燃料集合体の概略構成図である。
図2】本発明に係る実施例の燃料棒の概略構成図である。
図3】本発明に係る実施例の下部支持板および支持格子近傍の概略構成図である。
図4】本発明に係る実施例の支持格子の概略上面図である。
図5】本発明に係る実施例の支持格子の概略上面図である。
図6】本発明に係る実施例の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明を行う。
【0017】
図1は沸騰水型原子炉に用いる燃料集合体1の全体を示す概略構成図である。原子燃料集合体1は、燃料棒2と、ウォータロッド4と、上部タイプレート5と、下部タイプレート8と、支持格子7と、チャンネルボックス3とを備える。上部タイプレート5と下部タイプレート8はそれぞれ、上部支持板6と下部支持板9を有する。上部支持板6、下部支持板9および支持格子7のそれぞれは、燃料棒2およびウォータロッド4を上端、下端およびその中間位置で支持して、燃料棒2およびウォータロッド4を格子状に配列するための格子面を有する。格子状に配列された燃料棒2およびウォータロッド4の外周を覆うように、角筒状のチャンネルボックス3が被せられている。燃料棒2およびチャンネルボックス3はジルコニウム合金及び一部に耐食耐熱超合金で構成されている。支持格子7はニッケル基合金で構成されている。上部支持板6および下部支持板9はステンレス鋼で構成されている。
【0018】
図2は、燃料棒2の構成を示す概略構成図である。燃料棒2は、燃料体となる高濃度ウランのペレット12を覆う被覆管13と、被覆管13の上部を塞ぎ且つ上部支持板6と結合する上部端栓10と、被覆管13の下部を塞ぎ且つ下部支持板9と結合する下部端栓15とを備える。被覆管13には、支持格子7と接触する位置に表面層14が形成されている。また、上部端栓10および下部端栓15には、それぞれ上部支持板6および下部支持板9と接触する位置に、表面層11、16が形成されている。表面層11、14、16には、燃料棒2の構成材料であるジルコニウム合金よりも融点が高く、且つ上部支持板6および下部支持板9を構成する材料であるステンレス鋼や支持格子7を構成するニッケル基合金との間の異種金属接触により生ずる共晶反応の反応性が、ジルコニウム合金よりも小さな材料が用いられる。これにより、燃料棒2と、上部支持板6、下部支持板9および支持格子7との接触部分で生じる共晶溶融による融点低下を防止または抑制することが可能となる。図2の燃料棒では表面層11、14、16の材料としてジルコニアを用いているが、SiC/SiC複合材料のような他のセラミックスやタングステンなどの高融点金属により構成してもよい。
【0019】
表面層11、14、16は、共晶反応の反応性がより小さいことに加え、燃料棒2の酸化速度を抑制する効果が高い材料であることが望ましい。すなわち、燃料棒2の酸化を抑制することにより反応熱による発熱を抑え、溶融開始を遅らせることが可能となる。本実施例の表面層材料として用いたジルコニアやSiC/SiC複合材料などのセラミックスやタングステンなどの高融点金属は、かかる酸化速度抑制効果の観点からも高い効果を有する。図6は、表面層を形成していない燃料棒(破線)と、厚さ20μmのジルコニアの表面層(コーティング)を形成した燃料棒(実線)を、1100℃の高温下で水蒸気による酸化に曝したときの時間的な重量増加量の変化を示した図である。酸化により燃料棒の重量は増加することから、重量増加量が低いほど酸化の度合いが小さい。図6から明らかなように、酸化初期で数分の1、さらに600秒経過時でも約3/4程度の酸化量に抑えることができていることがわかる。
【0020】
図3は燃料集合体1の支持格子7と下部支持板9の近傍を拡大した概略構成図であり、図4図3のA−A’部分で切断したときの燃料棒2と支持格子7の上面図である。支持格子7は、縦横方向に配列した複数のセル18で構成されている。図4の記載した本実施例ではセル18の形状は円形であるが、矩形(格子形状)であってもよい。セル18のそれぞれには燃料棒2が挿入されている。燃料棒2の被覆管は、セル間に配置されたバネ20により、各セルの内側方向に付勢されている。被覆管と接触するバネ20やセル18の内壁部分には表面層19が形成されている。
【0021】
下部支持板9にも、縦横方向に配列した下部端栓挿入孔17が形成されている。下部端栓挿入孔17のそれぞれには燃料棒2の下部端栓15が挿入されている。下部支持板9のうち下部端栓15と接触する下部端栓挿入孔17の内壁には表面層が形成されている。図示していないが、同様に、上部支持板6にも、縦横方向に配列された上部端栓挿入孔が形成されており、上部端栓挿入孔のそれぞれには燃料棒2の上部端栓10が挿入されている。上部支持板6のうち上部端栓10と接触する上部端栓挿入孔の内壁部分には表面層が形成されている。
【0022】
バネ20やセル18の内壁部分、下部端栓挿入孔17、上部端栓挿入孔などに形成された表面層には、燃料棒2の構成材料であるジルコニウム合金よりも融点が高く、共晶反応の反応性がより小さな材料が用いられる。本実施例の燃料棒では表面層19の材料としてジルコニアを用いているが、SiC/SiC複合材料にようなセラミックスやタングステンなどの高融点金属により形成してもよい。
【0023】
ところで、表面層11、14、16、19の厚さは、融点低下抑制や酸化速度抑制の観点からは、厚い方が望ましい。しかしながら、全ての燃料棒に厚いコーティングを施すことは、経済的負荷が大きいとともに、燃料ペレット12から被覆管13の外側を流れる冷却水への伝熱効率が悪くなるため好ましくない。そこで、図5に示すように、シビアアクシデント事象時にチャンネルボックス3などの燃料集合体1の構成部品の溶融体が直接接触する場合の影響が物量的に大きい、燃料集合体1内の最外周部の燃料棒21の近傍の表面層に限って、他の内側の燃料棒22の近傍の表面層よりも厚くしている。具体的には、燃料集合体2の内周部に位置する燃料棒22の被覆管と、該燃料棒22に接触する上部支持板、下部支持板および支持格子とに形成された表面層の層厚は20μmであるのに対して、最外周部の燃料棒21の被覆管と、該燃料棒21と接触する上部支持板、下部支持板および支持格子とに形成された表面層の層厚を40μmとした。これにより、融点低下抑制や酸化速度抑制などのバリア性能の向上とともに、経済的負荷を抑制し、被覆管13から冷却水への伝熱効率を高めることができる。
【0024】
また、燃料棒2の被覆管13や上部端栓10、下部端栓15をジルコニウム合金に代えて、ジルコニウム合金よりも酸化の際の反応熱による発熱が小さな材料により構成してもよい。例えば、酸化物分散強化型鋼(ODS鋼)のような鉄基を含む合金(鉄基合金)で構成してよい。これにより、燃料棒2自体が発生する反応熱による発熱を抑制することが可能となる。この場合には、燃料棒2や上部支持板6、下部支持板9、支持格子7に形成する表面層11、14、16、19は、燃料棒2の構成材料である鉄基合金よりも融点が高く、且つ鉄基合金と上部支持板6、下部支持板9および支持格子7を構成する材料との異種金属間で生じる共晶反応の反応性がより小さな材料を選択する必要がある。例えば、ジルコニアやSiC/SiC複合材料などのセラミックスやタングステンなどの高融点金属が挙げられる。また、上述した図5による説明と同様に、燃料集合体1内の最外周部の燃料棒21の近傍の表面層を、内側に位置する他の燃料棒22の近傍の表面層よりも厚くすることによって、融点低下抑制効果や酸化速度抑制効果とともに、経済的負荷を抑制し、被覆管13から冷却水への伝熱効率を高めることができる。
【0025】
また、下部支持板9をステンレス鋼に代えて、ジルコニアやSiC/SiC複合材料、タングステンなどのウラン酸化物よりも融点の高いセラミックスや高融点材料で構成することにより、燃料棒2から落下する酸化ウランの溶融物や、ジルコニウムの酸化物、溶融した構成部材などの溶融デブリを保持することができ、燃料集合体1から下部への溶け落ちを抑制できる。この場合、下部支持板9自体が、ジルコニアやSiC/SiC複合材料などのセラミックやタングステンなどの高融点金属で構成されているので、燃料棒2の下部端栓15には表面層16を形成する必要がない。
【0026】
さらに、下部支持板9に加えてチャンネルボックス3もジルコニアやSiC/SiC複合材料などのセラミックやタングステンなどの高融点材料で形成し、かつ下部支持板9とチャンネルボックス3を結合して一体化することにより、チャンネルボックス3を側面、下部支持板9を底面とするバケツ構造の容器中に溶融デブリを保持することができる。これにより、シビアアクシデント事象が生じた際にも、溶融デブリのチャンネルボックス3外への拡散を防止することができる。
【0027】
以上、燃料集合体1の構成について説明を行ったが、当業者であれば、燃料集合体1の構成や使用態様に応じて、適宜設計変更が可能であることは容易に想到できよう。例えば、上記実施例の燃料棒2は、図2に示すように、支持格子7、上部端栓10および下部端栓15と接触するすべての位置に表面層11、14、16が形成されているが、これらのうちの一部の位置のみに表面層を設けてもよい。さらには、複数の支持格子7のうちの一部の支持格子7と接触する位置のみに表面層を設けてもよい。また、燃料棒2上に部分的に表面層11、14、16を形成する代わりに、燃料棒2や被覆管13の全表面に表面層を形成してもよい。
【0028】
また、上記実施例では、上部支持板6、下部支持板9および支持格子7と、燃料棒2との双方に表面層11、14、16、19を形成しているが、いずれかの一方であってもよい。さらには、上部支持板6、下部支持板9および支持格子7のうちの一部のみに表面層を設けてもよい。
【0029】
また、上記実施例では、燃料集合体1内の最外周部の燃料棒21の近傍のみ表面層を、内周部の燃料棒22の近傍の表面層よりも厚くしたが、外側から数周分の燃料棒近傍の表面層をその内側に位置する燃料棒近傍の表面層よりも厚くしてもよいし、内側から外側に向って段階的に厚くするようにしてもよい。さらに、上記実施例においては、外周部と内周部の厚さの比は2倍(それぞれ40μmと20μm)としてが、さらに大きな比率としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 燃料集合体
2 燃料棒
3 チャンネルボックス
4 ウォータロッド
5 上部タイプレート
6 上部支持板
7 支持格子
8 下部タイプレート
9 下部支持板
10 上部端栓
11、14、16,19 表面層形成部
12 ペレット
13 被覆管
15 下部端栓
17 下部端栓挿入孔
18 セル
20 バネ
21 最外周部の燃料棒(被覆管)
22 内周部の燃料棒(被覆管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6