(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467179
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】液体充填ノズル
(51)【国際特許分類】
B67C 3/02 20060101AFI20190128BHJP
B65B 3/12 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
B67C3/02 A
B65B3/12
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-202990(P2014-202990)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-69062(P2016-69062A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昌平
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】森口 忠和
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−154102(JP,U)
【文献】
実開昭52−062242(JP,U)
【文献】
特開平06−312701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/02
B65B 3/12
B65B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筒状部材から構成され、下端をノズル吐出口として側方に液体導入口を有する縦筒型の充填ノズル本体と;該充填ノズル本体のノズル吐出口と液導入口との間の内周部に設けられた逆止弁と;該逆止弁の弁開閉手段と;を備え、
前記逆止弁は、弁体と、弁体の上面中央部から上方に延びる弁棒と、弁体の上部外周に配置された弁座により構成され、弁座は筒状部とその上端部から内方に突出する鍔状部よりなり、鍔状部の下面が弁体の上面と密接するように構成され、かつ前記弁座は、筒状部材同士に挟持された筒状の外周リング内に、あるいは筒状部材のいずれか一方の下方又は上方に筒状部材と一体となって設けられている筒状の外周リング内に、上下に摺動自在に設けられ、弁体と弁座が上下動する構造の逆止弁であって、
前記逆止弁の弁開閉手段が弁体及び弁座の下降手段と上昇手段からなり、液体導入口から充填ノズル本体内への液体導入時は、弁体と弁座が所定距離下降し、その後は弁体のみが下降して逆止弁を開放し、充填終了時は弁体が上昇し、その後弁体と弁座が一緒に上昇して逆止弁を閉鎖する構造を有し、
裏充填時に引き上げられた弁体により弁座が固定されることを特徴とする液体充填ノズル。
【請求項2】
弁体の下降手段が、充填ノズル本体の上部に設けられたピストンロッドを備えた流体圧シリンダからなり、かかる流体圧シリンダに設けられたピストンロッドの進出動作により、弁体が下降することを特徴とする請求項1記載の液体充填ノズル。
【請求項3】
弁体の上昇手段が、逆止弁を常に閉じる方向に付勢する圧縮バネであることを特徴とする請求項1又は2記載の液体充填ノズル。
【請求項4】
筒状部材の内周上端部が、弁座の下端部と当接して、その下限位置を位置決めする下ストッパとなっており、外周リング上部に設けられている内方に突出した鍔状部の下面が、弁座の外側上端部と当接して、その上限位置を位置決めする上ストッパとなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の液体充填ノズル。
【請求項5】
筒状部材同士が、外周リングを介してナットによって接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の液体充填ノズル。
【請求項6】
弁座が上限位置から下降すると、弁座上面と上ストッパの間、弁座外周面と外周リングの流路形成溝の間、及び弁座の流路形成凹部と下ストッパの間に充填液の通路が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の液体充填ノズル。
【請求項7】
充填ノズル本体が、上方から下方にかけて3つの第1〜第3筒状部材によって形成されており、第1筒状部材の上端には流体圧シリンダが設けられ、第2筒状部材の上部には液体導入口が設けられ、第3筒状部材下端にはノズル吐出口が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の液体充填ノズル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の液体充填ノズルと、逆止弁を有する定量シリンダを備えたことを特徴とする液体充填装置。
【請求項9】
定量シリンダの上方に設けられた逆止弁を閉じた状態で定量シリンダ内のピストンを進出させ、定量シリンダから所定量の充填液を充填ノズル本体内に導入すると同時に、流体圧シリンダが作動し、ピストンロッドが進出することで、弁棒を介して弁体を待機位置から充填位置まで下降させ、弁棒の下降動作と、定量シリンダから送られてきた充填液の液圧により、弁座も上限位置から下限位置まで下降するように構成されていることを特徴とする請求項8記載の液体充填装置。
【請求項10】
弁座が上限位置から下降すると、弁座上面と上ストッパの間、弁座外周面と外周リングの流路形成溝の間、及び弁座の流路形成凹部と下ストッパの間に充填液の通路が形成され、容器への液体の充填の際、弁体と弁座の間を液体が通過するのに加え、前記通路も液体が通過するように構成されていることを特徴とする請求項9記載の液体充填装置。
【請求項11】
ピストンの進出が停止すると同時に流体圧シリンダのピストンロッドが退入動作し、弁棒及び弁体は圧縮バネの付勢力により充填位置から待機位置まで上昇し、その際、弁体は弁座に当接して逆止弁を閉鎖する位置まで上昇した後、さらに連続的に弁座を下限位置から上限位置まで引き上げるように上昇するように構成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の液体充填装置。
【請求項12】
定量シリンダの上方に設けられた逆止弁が、請求項1〜5のいずれか記載の液体充填ノズルにおける逆止弁と同じ構造を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか記載の液体充填装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか記載の液体充填装置を用いて、容器に液体を充填することを特徴とする充填包装容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要の容器に流動性食品等の各種液体を充填する自動液体充填装置や、該自動液体充填装置に設けられる液体充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズル本体と、該ノズル本体の内部に装着された弁とを具備する液体充填ノズルにおいて、該弁がノズル本体に固着された筒状の弁座と、該弁座の内周面に沿って摺動自在に設けられた弁体と、該弁体を付勢する弁バネとを有する液体充填ノズルが知られている(特許文献1参照)。しかし、この液体充填ノズルを用いた場合、充填開始時に弁体と弁座の隙間から吐出した液が弁体に沿って回り込んで出てくるため、ノズル内に流速の早い部分ができ、特にラバーノズルを用いたとき、つらら状になって液のまとまりの悪い出方となり、容器底での巻き上がりが大きくなり、ノズルに液が付着することがある。弁体を強制的に下降させ逆止弁を開放する強制開の場合でも、弁体のみしか動かないためノズル中央部のみの液が押し出され、流速の高い部分ができ、巻き上がりの原因となる。また、充填終了時にノズル先端からの液だれを防止するため、充填吐出弁は液を若干量吸い上げ、充填ノズル内を負圧にする必要があり、従来は弁体が弁座の中に入り込み液の流れを遮りながら弁体を引き上げ、液を吸い上げる構造で、弁体の外径がノズル内径に対して小さいため、長い吸い上げストロークが必要であった。ストロークが長くなると吸い上げ時間も長くかかり、弁体と弁座の間からの液漏れ量が増える結果、吸い上げ量が不安定となり、液切れのばらつき、液だれが起こる。さらに、漏れ出た液量分だけ吸い上げ量が減るため、これを補うさらに長い弁体の吸い上げストロークが必要となる。また、弁体部分のみ吸い上げられる為、ノズル内の流速が一様でなく液切れが不安定になる。さらに、自然開閉では、充填開始時は長い吸い上げストローク分だけ余計に弁体を引き上げているスプリングを液圧で押し縮めなければ弁体が開き始めないため、ピストン内圧が上昇し、逆止弁が開いた瞬間爆発的に液が流れ出し、容器底での跳ね上がり、泡立ちが起こるという問題があった。
【0003】
また、液体充填ノズルの吐出弁構造として、弁体と弁座が上下動する弁構造は知られていた(特許文献2参照)が、弁座がスプリングによって引き上げられておらずフリーなため、裏充填時に圧が変動した時に弁体と弁座が一体となって上下動し、液だれが問題となっていた。また、ピストン内に大きな負圧が必要なため、キャビテーション対策で上チャッキ弁を早めに開くこともできない。また、摺動面のわずかな隙間に液が滞留し、洗浄性が悪く、牛乳充填ではチャーニングによるメッシュの目詰まりが問題であった。
【0004】
その他、下端を吐出口として側方に液導入口を有する縦筒型のノズル本体と、該ノズル本体内に同心状に配置した弁杆と、この弁杆を昇降動作させる昇降駆動手段とを備え、
前記ノズル本体の吐出口と液導入口との間の内周部に、環状弁座が形成され、前記弁杆の下部に、前記環状弁座に対して上方から密嵌し得る弁部と、この弁部よりも下方へ同心状に突出し、閉弁時にノズル本体の前記環状弁座よりも下位の吐出管部に小間隙を保って嵌入する絞り筒部とが設けられ、前記絞り筒部は、内側を絞り流路として下端が前記吐出口に臨んで同心状に開口し、外周面の複数箇所に該絞り流路と連通する通液孔を有すると共に、これら通液孔よりも下位の外周面に、ノズル本体の吐出管部の内周面と摺接するシールリングが嵌装され、該絞り筒部がノズル本体の吐出管部から離脱したノズル開放状態と、前記弁部が前記環状弁座に密嵌するノズル閉止状態との間で、絞り筒部がノズル本体の吐出管部に嵌入し、前記弁部と環状弁座との間から流出する液が当該絞り筒部の通液孔及び絞り筒部を通して吐出されるノズル絞り状態を現出するように構成されてなる液充填ノズルが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−28402号公報
【特許文献2】実公平6−3762号公報
【特許文献3】特開2007−69928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、充填ノズル本体内の液が均一に押し出され、充填開始時の容器底での跳ね上がりや、泡立ちを減少することができるとともに、液だれを起こさない液切れが安定した液体充填ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、液体充填ノズルにおける充填吐出用の弁体及び弁座が動く構造とし、充填ピストンが液を押し出したときに、弁体と弁座は一定量下降し、その後は弁体のみが下降し、充填終了時は弁体が上昇し、その後弁体と弁座が一緒に上昇する構造とすることにより、上記課題を解決しうる液体充填ノズルとなることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す発明特定事項により特定されるものに関する。
(1)複数の筒状部材から構成され、下端をノズル吐出口8として側方に液体導入口(ノズル入口ポート)13を有する縦筒型の充填ノズル本体2と;該充填ノズル本体2のノズル吐出口8と液導入口13との間の内周部に設けられた逆止弁5と;該逆止弁5の弁開閉手段と;を備え、前記逆止弁5は、弁体35と、弁体35の上面中央部から上方に延びる弁棒30と、弁体35の上部外周に配置された弁座34により構成され、弁座34は筒状部とその上端部から内方に突出する鍔状部よりなり、鍔状部の下面が弁体35の上面と密接するように構成され、かつ前記弁座34は、筒状部材(22,23)同士に挟持された筒状の外周リング36内に、あるいは筒状部材(22,23)のいずれか一方の下方又は上方に筒状部材(22,23)と一体となって設けられている筒状の外周リング(22
36、23
36)内に、上下に摺動自在に設けられ、弁体35と弁座34が上下動する構造の逆止弁5であって、前記逆止弁5の弁開閉手段が弁体35及び弁座34の下降手段と上昇手段からなり、液体導入口13から充填ノズル本体2内への液体導入時は、弁体35と弁座34が所定距離下降し、その後は弁体35のみが下降して逆止弁5を開放し、充填終了時は弁体35が上昇し、その後弁体35と弁座34が一緒に上昇して逆止弁5を閉鎖する構造を有することを特徴とする液体充填ノズル2。
(2)弁体35の下降手段が、充填ノズル本体2の上部に設けられたピストンロッド18を備えた流体圧シリンダ7からなり、かかる流体圧シリンダ7に設けられたピストンロッド18の進出動作により、弁体35が下降することを特徴とする上記(1)記載の液体充填ノズル2。
(3)弁体35の上昇手段が、逆止弁5を常に閉じる方向に付勢する圧縮バネ20であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の液体充填ノズル2。
(4)筒状部材23の内周上端部が、弁座34の下端部と当接して、その下限位置を位置決めする下ストッパ38となっており、外周リング(36、22
36、23
36)上部に設けられている内方に突出した鍔状部の下面が、弁座34の外側上端部と当接して、その上限位置を位置決めする上ストッパ37となっていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の液体充填ノズル2。
(5)筒状部材(22,23)同士が、外周リング(36、22
36、23
36)を介してナット25によって接続されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の液体充填ノズル2。
(6)弁座34と外周リング(36、22
36、23
36)の間の隙間に液の流れる流路形成溝が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の液体充填ノズル2。
(7)充填ノズル本体2が、上方から下方にかけて3つの第1〜第3筒状部材21、22、23によって形成されており、第1筒状部材21の上端には流体圧シリンダ7が設けられ、第2筒状部材22の上部には液体導入口13が設けられ、第3筒状部材23下端にはノズル吐出口8が設けられていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の液体充填ノズル2。
【0009】
(8)上記(1)〜(7)のいずれか記載の液体充填ノズル2と、逆止弁4を有する定量シリンダ3を備えたことを特徴とする液体充填装置1。
(9)定量シリンダ3の上方に設けられた逆止弁4を閉じた状態で定量シリンダ3内のピストン9を進出させ、定量シリンダ3から所定量の充填液を充填ノズル本体2内に導入すると同時に、流体圧シリンダ7が作動し、ピストンロッド18が進出することで、弁棒30を介して弁体35を待機位置から充填位置まで下降させ、弁棒30の下降動作と、定量シリンダ3から送られてきた充填液の液圧により、弁座34も上限位置から下限位置まで下降するように構成されていることを特徴とする上記(8)記載の液体充填装置1。
(10)弁座34が上限位置から下降すると、弁座34上面と上ストッパ37の間、弁座34外周面と外周リング(36、22
36、23
36)の流路形成溝39の間、及び弁座34の流路形成凹部42と下ストッパ38の間に充填液の通路が形成され、容器への液体の充填の際、弁体35と弁座34の間を液体が通過するのに加え、前記通路も液体が通過するように構成されていることを特徴とする上記(9)記載の液体充填装置1。
(11)ピストン9の進出が停止すると同時に流体圧シリンダ7のピストンロッド18が退入動作し、弁棒30及び弁体35は圧縮バネ20の付勢力により充填位置から待機位置まで上昇し、その際、弁体35は弁座34に当接して逆止弁5を閉鎖する位置まで上昇した後、さらに連続的に弁座34を下限位置から上限位置まで引き上げるように上昇するように構成されていることを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれか記載の液体充填装置1。
(12)定量シリンダ3の上方に設けられた逆止弁4が、上記(1)〜(5)のいずれか記載の液体充填ノズル2における逆止弁5と同じ構造を有することを特徴とする上記(8)〜(10)のいずれか記載の液体充填装置1。
(13)上記(8)〜(12)のいずれか記載の液体充填装置1を用いて、容器に液体を充填することを特徴とする充填包装容器の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体充填ノズルや液体充填装置を用いることにより、以下の効果が奏される。
(1)充填開始時、弁体と弁座が一体となって下降することでノズル内の液が均一に押し出され、容器底での巻き上げを起こさない。
(2)その後の充填中、液流速が上がっても最初に容器底に溜まった液がクッションとなり、巻き上げを軽減する。
(3)液の吸い上げ時、弁座の径が大きいため、吸い上げストロークを小さくできる。これによりピストン内圧が下がり、充填開始時の容器底での跳ね上がり、泡立ちが減少する。
(4)吸い上げストロークが小さい分、弁体下降距離が同じでも流路が広くなり、液流速が抑えられ、容器底での巻き上げ、泡立ちが少ない。
(5)吸い上げストロークが小さい分、吸い上げ時間が短縮され、吸い上げ時の弁体と弁座の隙間、弁座と外周リングの隙間からノズルへの液漏れが減少し、液切れが安定した。
(6)弁座が動いてノズル全体の液を吸い上げるため、吸い上げが安定し、液切れが安定した。
(7)裏充填時、スプリングで引き上げられた弁体により弁座が固定されるため、ピストン内圧が変動しても液だれを起こさない。
【0011】
また、洗浄性向上及びチャーニング対策のため、弁座と外周リングの間の隙間に液の流れる溝があることにより、以下の効果が奏される。
(8)弁座と外周リングの間の液量が増え、摺動面が洗い流される。
(9)弁座と外周リングの間に充填物が滞留しない為、チャーニングが起こらない。
なお、筒状の外周リングが筒状部材同士に挟持されている場合は、筒状の外周リングが筒状部材のいずれか一方の下方又は上方に一体となって設けられている場合に比べて、上ストッパ部に弁座外側上端部が当接する部分の弾性素材の焼付処理がしやすくなる上に、筒状部材と外周リングが互いに独立しているために、加工がしやすく精度がだしやすい等の利点がある。
【0012】
そしてまた、弁体と弁座の動きはエアシリンダ等により制御される構造とすることにより、以下の効果が奏される。
(10)強制的に弁体の開くタイミングを早くすることで、充填開始時の液圧、流速が下げられ、容器底での跳ね上がり、泡立ちが減少する。
(11)強制開することで逆止弁開度を大きく取れるため、充填中の液流速が抑えられ、容器底での巻き上げ、泡立ちが少ない。
(12)充填終了時、ノズル内の液圧変化に合わせて逆止弁閉タイミングを調整することで液切れが安定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の液体充填装置の一実施形態の縦断面図である。
【
図2】筒状の外周リングが筒状部材同士に挟持されている本発明の液体充填ノズルの一実施形態の縦断面図である。
【
図3】
図2の逆止弁(閉鎖時)付近の要部拡大図である。
【
図4】
図2の逆止弁(開放時)付近の要部拡大図である。
【
図5】
図3におけるA−A線における横断面図である。
【
図6】筒状の外周リングが筒状部材の下方に一体となって設けられている本発明の液体充填ノズルの逆止弁(閉鎖時)付近の要部拡大図である。
【
図7】筒状の外周リングが筒状部材の上方に一体となって設けられている本発明の液体充填ノズルの逆止弁(閉鎖時)付近の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の液体充填ノズルとしては、複数の筒状部材から構成され、下端をノズル吐出口として側方に液体導入口(ノズル入口ポート)を有する縦筒型の充填ノズル本体と;該充填ノズル本体のノズル吐出口と液導入口との間の内周部に設けられた逆止弁と;該逆止弁の弁開閉手段と;を備え、前記逆止弁は、弁体と、弁体の上面中央部から上方に延びる弁棒と、弁体の上部外周に配置された弁座により構成され、弁座は筒状部とその上端部から内方に突出する鍔状部よりなり、鍔状部の下面が弁体の上面と密接するように構成され、かつ前記弁座は、筒状部材同士に挟持された筒状の外周リング内に、あるいは筒状部材のいずれか一方の下方又は上方に筒状部材と一体となって設けられている筒状の外周リング内に、上下に摺動自在に設けられ、弁体と弁座が上下動する構造の逆止弁であって、前記逆止弁の弁開閉手段が弁体及び弁座の下降手段と上昇手段からなり、液体導入口から充填ノズル本体内への液体導入時は、弁体と弁座が所定距離下降し、その後は弁体のみが下降して逆止弁を開放し、充填終了時は弁体が上昇し、その後弁体と弁座が一緒に上昇して逆止弁を閉鎖する構造を有するノズルであれば特に制限されず、本発明の液体充填装置としては本発明の液体充填ノズルと逆止弁とを有する定量シリンダを備えた装置であれば特に制限されず、本発明の充填包装容器の製造方法としては、本発明の液体充填装置を用いて容器に液体を充填する方法であれば特に制限されない。
【0015】
上記弁体を下降させる手段としては、充填ノズル本体の上部に設けられたピストンロッドを備えた流体圧シリンダを挙げることができ、かかる流体圧シリンダに設けられたピストンロッドの進退動作により、弁体を下降又は上昇することができる。このタイプの下降手段はノズル吐出口の形状が十字状のスリットを有するラバーノズル仕様の場合に適している。ノズル吐出口の形状がメッシュノズル仕様の場合においては、弁体下降手段として、液体導入口(ノズル入口ポート)から流入する液体の流圧を利用することができる。また、弁座の下降手段としては、液体導入口(ノズル入口ポート)から流入する液体の流圧を利用することができる。
【0016】
上記弁体を上昇させる手段としては、通常逆止弁の上方に配置され、逆止弁を常に閉じる方向に付勢する圧縮バネの他、充填ノズル本体の上部に設けられたピストンロッドを備えた流体圧シリンダを挙げることができ、かかる流体圧シリンダに設けられたピストンロッドの退出動作により、強制的に弁体を引き上げることができる。また、弁座の上昇手段としては、上記弁体の上昇手段を挙げることができ、弁座は弁体の上昇によって引き上げられる。
【0017】
また、上記筒状部材の内周上端部が、弁座の下端部と当接して、その下限位置を位置決めする下ストッパとなっており、外周リング上部に設けられている内方に突出した鍔状部の下面が、弁座の外側上端部と当接して、その上限位置を位置決めする上ストッパとなっている液体充填ノズルや、2つの筒状部材同士が、外周リングを介してナットによって接続されている液体充填ノズルや、弁座と外周リングの間の隙間に液の流れる流路形成溝が形成されている液体充填ノズルや、充填ノズル本体が、上方から下方にかけて3つの第1〜第3筒状部材によって形成されており、第1筒状部材の上端には流体圧シリンダが設けられ、第2筒状部材の上部には液体導入口が設けられ、第3筒状部材下端にはノズル吐出口が設けられている液体充填ノズルを好適に例示することができる。
【0018】
本発明の液体充填装置として、定量シリンダの上方に設けられた逆止弁を閉じた状態で定量シリンダ内のピストンを進出させ、定量シリンダから所定量の充填液を充填ノズル本体内に導入すると同時に、流体圧シリンダが作動し、ピストンロッドが進出することで、弁棒を介して弁体を待機位置から充填位置まで下降させ、弁棒の下降動作と、定量シリンダから送られてきた充填液の液圧により、弁座を上限位置から下限位置まで下降するように構成されている液体充填装置や、弁座が上限位置から下降すると、弁座上面と上ストッパの間、弁座外周面と外周リングの流路形成溝の間、及び弁座の流路形成凹部と下ストッパの間に充填液の通路が形成され、容器への液体の充填の際、弁体と弁座の間を液体が通過するのに加え、前記通路も液体が通過するように構成されている液体充填装置を好適に例示することができる。
【0019】
さらに、ピストンの進出が停止すると同時に流体圧シリンダのピストンロッドが退入動作し、弁棒及び弁体は圧縮バネの付勢力により充填位置から待機位置まで上昇し、その際、弁体は弁座に当接して逆止弁を閉鎖する位置まで上昇した後、さらに連続的に弁座を下限位置から上限位置まで引き上げるように上昇するように構成されている液体充填装置や、定量シリンダの上方に設けられた逆止弁が、液体充填ノズルにおける逆止弁と同じ構造を有する液体充填装置も好適に例示できる。
【0020】
以下、本発明の液体充填ノズルや液体充填装置の筒状の外周リングが筒状部材同士に挟持されている態様を
図1〜5に沿って説明する。
液体充填装置1は、容器(図示省略)に液体を充填する充填ノズル本体2と、液体を充填ノズル本体2に送出す定量シリンダ3を備えている。
【0021】
充填ノズル本体2の下部には、エラストマー製のノズル吐出口8が設けられている。ノズル吐出口8にはその下端部に十字状のスリットが設けられており、スリットは充填ノズル本体2内部の液圧により開閉するようになっている。充填ノズル本体2の高さの中ほどには液体導入口(ノズル入口ポート)13が設けられている。充填ノズル本体2のノズル入口ポート13とノズル吐出口8の間には下逆止弁5が設けられている。充填ノズル本体2の上部には下ピストンロッド18を備えた下流体圧シリンダ7が設けられている。充填ノズル本体2のノズル入口ポート13より上方には下圧縮バネ20が設けられており、下圧縮バネ20により下逆止弁5は常に閉じる方向(上方向)に付勢されている。下流体圧シリンダ7に設けられた下ピストンロッド18の進退動作により、下圧縮バネ20の付勢力に抗して下逆止弁5を開閉できるようになっている。
【0022】
定量シリンダ3内部にはピストン9が設けられている。ピストン9は図示しない駆動手段によって左右往復動作する。駆動手段として例えばサーボモータを用いることにより、ピストン9の動作速度、動作量を任意に設定することが可能にとなる。定量シリンダ3は、その上部にシリンダ入口ポート14が、下部にシリンダ出口ポート15が設けられている。シリンダ出口ポート15は下接続管11によりノズル入口ポート13に接続されている。
【0023】
シリンダ入口ポート14上方には上接続管10が接続されている。上接続管10の高さの中ほどには上接続管入口ポート16が設けられている。上接続管10のシリンダ入口ポート14付近には上逆止弁4が設けられている。上接続管10の上部には上ピストンロッド17を備えた上流体圧シリンダ6が設けられている。上接続管10の上接続管入口ポート16より上方には上圧縮バネ19が設けられており、上圧縮バネ19により上逆止弁4は常に閉じる方向に付勢されている。上流体圧シリンダ6に設けられた上ピストンロッド17の進退動作により、上圧縮バネ19の付勢力に抗して上逆止弁4を開閉できるようになっている。上接続管入口ポート16は供給管12によって図示しない充填液タンクに接続されている。
【0024】
ピストン9を左向きに移動させるとともに上逆止弁4を開き下逆止弁5を閉じることで、充填液タンクの液体が定量シリンダ3内に送り込まれ、続いて、ピストン9を右向きに移動させるとともに上逆止弁4を閉じ下逆止弁5を開くことで、定量シリンダ3内の液体が充填ノズル本体2に送り込まれ、容器に液体が充填されることになる。
【0025】
充填ノズル本体2は、上方から下方にかけて3つの第1〜第3筒状部材21、22、23によって形成されている。第1筒状部材21の上端には下流体圧シリンダ7が設けられて、第2筒状部材22の上部にはノズル入口ポート13が設けられ、第3筒状部材23下端にはノズル吐出口8が設けられている。
【0026】
第2筒状部材22と第3筒状部材23の接続部には下逆止弁5が設けられている。下逆止弁5は、略下向き円錐状の弁体35と、弁体35の上面中央部から上方に延びる弁棒30と、弁体35の上部外周に配置された弁座34により構成されている。弁座34は筒状部とその上端部から内方に突出する鍔状部よりなり、鍔状部の下面が弁体35の上面と密接するようになっている。弁座34には、その鍔状部上面複数個所から上方内向きにのびたアーム32が設けられ、アーム中央部には、弁棒30を案内する筒状の弁棒ガイド31が設けられている。第2筒状部材22と第3筒状部材23は筒状の外周リング36を介して第2ナット25によって接続されている。下逆止弁5の弁座34は、外周リング36内に上下に摺動自在に設けられている。
【0027】
第1筒状部材21と第2筒状部材22は、有底筒状のバネ受け27を介して第1ナット24により接続されている。弁棒30上端は接続棒29下端と接続解除自在に接続されている。接続棒29は、第2筒状部材22の高さの中ほどから第1筒状部材21の上部まで延び、その上端面は下流体圧シリンダ7の下ピストンロッド18下端面と所定距離をおいて相対させられている。バネ受け27の底部中央部には上方に向かって延びる筒状の接続棒ガイド33が設けられている。接続棒29の上部には鍔状のバネ押さえ26が固定されている。バネ押さえ26とバネ受け27の間に下圧縮バネ20が設けられ、これにより接続棒29は常に上方に付勢されるようになっている。バネ受け27の下面と接続棒29下部の間にはベローズ28が設けられ、第1筒状部材21と第2筒状部材22は互いに液体の通過が遮断されている。
【0028】
第3筒状部材23の内周上端部は、弁座34の下端部と当接して、その下限位置を位置決めする下ストッパ38となっている。外周リング36上部には、内方に突出した鍔状部が設けられている。外周リング36の鍔状部はその外面に弾性素材が焼付処理されている。弾性素材が焼付処理された外周リング36の鍔状部の下面は、弁座34の外側上端部と当接して、その上限位置を位置決めする上ストッパ37となっている。弁座34は上ストッパ37と下ストッパ38間で距離Cだけ上下動可能に配置されている。第2筒状部材22内側下端と外周リング36上端部は、焼付処理された弾性素材によって液密に当接されている。第3筒状部材23の上端部と外周リング36下端部の間には弾性シール部材が設けられ、第3筒状部材23の上端部と外周リング36下端部の間が液密に保持されている。
【0029】
外周リング36の内周面には、その高さの中ほどから下端にかけて6箇所に流路形成溝39とガイド突状40が形成されている。ガイド突状40内周面は弁座34外周面と接し、その上下動を案内しうるようになっている。弁座34下端には、下ストッパ38に当接することで弁座34を下限位置に位置決めする位置決め凸部41が6箇所設けられている。弁座34下端の隣り合う位置決め凸部41の間には流路形成凹部42が設けられている。位置決め凸部41はガイド突状40に相対する位置に設けられている。
【0030】
上逆止弁4が閉じた状態で定量シリンダ3内のピストン9を右向きに移動させると、定量シリンダ3から所定量の充填液が充填ノズル本体2内に送られてくる。これと同時に下流体圧シリンダ7が作動し、下ピストンロッド18が進出することで、接続棒29、弁棒30を介して弁体35が待機位置(
図3)から充填位置(
図4)まで下降する。この際、弁棒30の下降動作と、定量シリンダ3から送られてきた充填液の液圧により、弁座34も上限位置(
図3)から下限位置(
図4)まで下降する。弁座34が上限位置から下降すると、弁座34上面と上ストッパ37の間、弁座34外周面と外周リング36の流路形成溝39の間、及び弁座34の流路形成凹部42と下ストッパ38の間に充填液の通路が形成される。容器への液体の充填の際、弁体35と弁座34の間を液体が通過するのに加え、前記通路も液体が通過するようになる。
【0031】
ピストン9の進出動作(右動)が停止すると、定量シリンダ3から充填液が充填ノズル本体2内に送られなくなる。これと同時に下流体圧シリンダ7の下ピストンロッド18が退入動作し、接続棒29、弁棒30、及び弁体35は下圧縮バネ20の付勢力により充填位置(
図4)から待機位置(
図3)まで上昇する。この際、弁体35は弁座34に当接して下逆止弁5を閉鎖する位置まで上昇した後、さらに連続的に弁座34を下限位置から上限位置まで引き上げるように上昇する。
【0032】
上逆止弁4を開閉させる上流体圧シリンダ6他の構造、動作は、下逆止弁5を開閉させる下流体圧シリンダ7他の構造、動作と同じものとすることができる。
【0033】
次に、
図6には、筒状部材22の下方に一体となって設けられている筒状の外周リング22
36を備えた態様の、また
図7には、筒状部材23の上方に一体となって設けられている筒状の外周リング23
36を備えた態様の、本発明の液体充填ノズルの逆止弁5(閉鎖時)が示されている。これら態様の逆止弁5においては、上ストッパ37は筒状部材22に、下ストッパ38は筒状部材23に設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の液体充填ノズルや液体充填装置は、充填包装の分野で利用される。
【符号の説明】
【0035】
1 液体充填装置
2 充填ノズル本体
3 定量シリンダ
4 上逆止弁
5 下逆止弁
6 上流体圧シリンダ
7 下流体圧シリンダ
8 充填ノズル
9 ピストン
10 上接続管
11 下接続管
12 供給管
13 ノズル入口ポート
14 シリンダ入口ポート
15 シリンダ出口ポート
16 上接続管入口ポート
17 上ピストンロッド
18 下ピストンロッド
19 上圧縮バネ
20 下圧縮バネ
21 第1筒状部材
22 第2筒状部材
22
36 第2筒状部材の下方に一体となって設けられている外周リング
23 第3筒状部材
23
36 第3筒状部材の上方に一体となって設けられている外周リング
24 第1ナット
25 第2ナット
26 バネ押さえ
27 バネ受け
28 ベローズ
29 接続棒
30 弁棒
31 弁棒ガイド
32 アーム
33 接続棒ガイド
34 弁座
35 弁体
36 筒状部材同士に挟持されている外周リング
37 上ストッパ
38 下ストッパ
39 流路形成溝
40 ガイド突状
41 位置決め凸部
42 流路形成凹部
43 弾性シール部材