【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、本発明はこれらの実施例に制限されることはない。
【0047】
[試験例1]
サンプルA〜Eというコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表1に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表1に示す条件で通電させた。
図4はサンプルEのセンサ素子の全体の電子顕微鏡写真、
図5はサンプルEのセンサ素子の一部の電子顕微鏡写真であり、これによると、触媒層は樹枝状の電着物であることが確認できる。各サンプルについての、触媒層の比表面積を測定した結果も、あわせて下記表に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0050】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0051】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0052】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0053】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0054】
この試験の結果を、
図6に示す。
図6において、横軸は触媒層の比表面積を示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。
図6に示す結果によれば、触媒層の比表面積が10m
2/g以上であれば、感度の維持率は高く、ケイ素化合物に対する高い耐久性が得られた。触媒層の比表面積が20m
2/g以上であれば、特に高い耐久性が得られた。
【0055】
[試験例2]
サンプルA〜Eというコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表2に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表2に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表2に併せて示す。
【0056】
また、サンプルA〜Gの各々のセンサ素子における抵抗体の温度の理論値が600℃となるように抵抗体に電圧を印加した場合の、抵抗体内に生じる温度差の最大値も、下記表2に示す。尚、この温度差の最大値は、熱流体解析によるシミュレーションにより導出した。
【0057】
【表2】
【0058】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0059】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0060】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0061】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0062】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0063】
この結果を
図7に示す。
図7において、横軸は抵抗体の温度の理論値600℃における抵抗体内に生じる温度差の最大値であり、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。
【0064】
図7に示される結果によると、抵抗体内の温度差が250℃以下であると、試験後の感度の劣化が特に抑制されることが確認できる。
【0065】
[試験例3]
サンプルA〜Cというコイル状の3種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層の比表面積及び厚みを表3に併せて示す。
【0066】
【表3】
【0067】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0068】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより3種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0069】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が所定の値になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。この出力値から、抵抗体の温度を算出した。その結果を
図8に示す。この
図8において、横軸は抵抗体の温度の理論値を示し、縦軸は水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での出力値に基づいて算出された抵抗体の温度を示す。
【0070】
この結果によると、抵抗体の線径が大きくなるほど、水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での抵抗体の温度上昇が小さくなることが確認された。特に、線径が30μm及び40μmの場合には、抵抗体の温度の理論値が250℃以上であっても水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での抵抗体の温度が600℃以下であることを達成できた。
【0071】
[試験例4]
サンプルA1、A2、B1、B2、C1、C2というコイル状の6種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表4に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表4に併せて示す。尚、サンプルA1とA2は同じ構造を有し、サンプルB1とB2は同じ構造を有し、サンプルC1とC2は同じ構造を有する。
【0072】
【表4】
【0073】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0074】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより6種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0075】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0076】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0077】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0078】
その結果を
図9に示す。
図9において、横軸は抵抗体の外径を示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。
図9によれば、外径が0.2mmの場合に比べ、外径が0.4mm及び0.6mmの場合は耐久試験後の感度の低下が抑制されたことが確認できた。
【0079】
[試験例5]
サンプルA及びサンプルBという、抵抗体の線間ピッチが異なるコイル状の2種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表5に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表5に併せて示す。
【0080】
【表5】
【0081】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0082】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより2種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0083】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0084】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0085】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0086】
この結果を
図10に示す。
図10において、横軸は抵抗体の線間ピッチを示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。この結果によれば、抵抗体の線間ピッチが大きいほど耐久試験後の感度の低下が抑制されることが確認できる。
【0087】
[試験例6]
サンプルA〜Eという、触媒層の厚みが異なるコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表7に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表6に併せて示す。
【0088】
【表6】
【0089】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0090】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0091】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度10000ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0092】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0093】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度10000ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0094】
その結果を
図11に示す。
図11において、横軸は触媒層の厚みを示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。
図11によれば、触媒層の厚みが3μm以上であると、耐久試験後の感度の低下が特に抑制されたことが確認できた。