特許第6467212号(P6467212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467212接触燃焼式水素ガスセンサ素子及び接触燃焼式水素ガスセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467212
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】接触燃焼式水素ガスセンサ素子及び接触燃焼式水素ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20190128BHJP
【FI】
   G01N27/16 B
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-252517(P2014-252517)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-114434(P2016-114434A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸明
(72)【発明者】
【氏名】小野 靖典
(72)【発明者】
【氏名】吉良 満治
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037413(JP,A)
【文献】 特開昭51−104392(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090433(WO,A1)
【文献】 実開昭54−047498(JP,U)
【文献】 特開2005−321215(JP,A)
【文献】 特開2007−198816(JP,A)
【文献】 特開平02−167457(JP,A)
【文献】 特開昭63−030751(JP,A)
【文献】 特開2014−194353(JP,A)
【文献】 特開2009−133636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−10
14−24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスの燃焼反応を促進する触媒活性を有する触媒層と、
前記触媒層上で水素ガスが燃焼することにより生じた熱により加熱されることで電気抵抗値の変化を生じる抵抗体とを備え、
前記抵抗体がコイル状であり、
前記触媒層が、10m2/g以上の比表面積を有する樹枝状又はひげ状の電着物であり、前記抵抗体を覆っている
接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項2】
前記触媒層の厚みが3μm以上である請求項1に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項3】
前記触媒層の空隙率が30〜80体積%の範囲内である請求項1又は2に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項4】
前記抵抗体が白金製であり、前記触媒層がパラジウム製、パラジウム合金製、又はパラジウム化合物製である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項5】
前記抵抗体と前記触媒層との間に白金−パラジウム合金製の合金層が介在している請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項6】
前記抵抗体は、次の特性;
常温常圧の大気中に配置された状態で前記抵抗体の温度の理論値が600℃となるように前記抵抗体に電圧が印加されると、前記抵抗体内に生じる温度差が250℃以内になる特性
を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項7】
前記抵抗体の線径は10〜40μmの範囲内である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項8】
前記抵抗体の外径は0.2〜0.6mmの範囲内である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項9】
前記抵抗体内での線間ピッチは20〜100μmの範囲内である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ素子と、前記接触燃焼式水素ガスセンサ素子の前記抵抗体へ電圧を印加するように構成された回路とを備える接触燃焼式水素ガスセンサ。
【請求項11】
前記回路は、次の電圧;
前記接触燃焼式水素ガスセンサ素子が常温常圧の大気中に配置された状態で前記抵抗体に印加されると、前記抵抗体の温度の理論値が200〜600℃の範囲内となる電圧
を、前記抵抗体に印加するように構成されている請求項10に記載の接触燃焼式水素ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式水素ガスセンサ素子、及びこの接触燃焼式水素ガスセンサ素子を備える接触燃焼式水素ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼式水素ガスセンサは、車載用センサとして注目されており、特に燃料電池自動車における燃料電池の制御のための有用性が注目されている。燃料電池の制御のためには、安定した制御、安全性の確保等のために、接触燃焼式ガスセンサが長期間に亘って安定して動作する必要がある。
【0003】
しかし、自動車はパッキンなどのケイ素化合物を含む部品を多く備えている。このような部品からケイ素化合物が揮発し、これが接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子を被毒することで、接触燃焼式水素ガスセンサの感度が低下してしまう。このケイ素化合物による被毒は、ケイ素化合物がセンサ素子に付着してこのセンサ素子を覆うことで、検知対象ガスと触媒層との接触が妨げられるためであると考えられる。
【0004】
ケイ素化合物による被毒は、ケイ素化合物が検知対象ガス中に極微量混入するだけでも生じるため、長期に亘って検知対象ガスを感度良く検知するためには、ケイ素化合物に対する耐久性の向上は非常に重要となる。
【0005】
しかし、センサ素子にケイ素化合物を除去するためのシリコントラップ層などを設けると、ケイ素化合物に対する耐久性は向上しても、感度及び応答性の低下を招いてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、接触燃焼式水素ガスセンサ素子における触媒層を、樹枝状又はひげ状の電着物から形成することが提案されている(特許文献1参照)。この場合、高い感度及び速い応答性を有しながら、ケイ素化合物で被毒されにくく、被毒されても容易に感度が回復可能なセンサ素子を得ることができる。
【0007】
しかし、可燃性の高い水素ガスを燃料とする燃料電池には高度の信頼性が求められるため、燃料電池の制御のためのセンサ素子にも益々高い信頼性が求められている。特に車載用途に適用される場合、接触燃焼式水素ガスセンサ素子には長期間に亘って安定して動作できるような高い耐久性と速い応答性とが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−37413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、ケイ素化合物に対する非常に高い耐久性と速い応答性とを両立する接触燃焼式水素ガスセンサ素子及びこの接触燃焼式水素ガスセンサ素子を備える接触燃焼式水素ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る接触燃焼式水素ガスセンサ素子は、水素ガスの燃焼反応を促進する触媒活性を有する触媒層と、前記触媒層上で水素ガスが燃焼することにより生じた熱により加熱されることで電気抵抗値の変化を生じる抵抗体とを備え、前記抵抗体がコイル状であり、前記触媒層が、10m2/g以上の比表面積を有する樹枝状又はひげ状の電着物であり、前記抵抗体を覆っている。
【0011】
本発明に係る接触燃焼式水素ガスセンサは、前記接触燃焼式水素ガスセンサ素子と、前記接触燃焼式水素ガスセンサ素子の前記抵抗体へ電圧を印加するように構成された回路とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケイ素化合物に対して非常に高い耐久性を有する接触燃焼式水素ガスセンサ素子及びこの接触燃焼式水素ガスセンサ素子を備える接触燃焼式水素ガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態におけるセンサ素子を示す断面図である。
図2図1に示すセンサ素子の一部を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態における回路図である。
図4】試験例1におけるサンプルEのセンサ素子の全体を示す顕微鏡写真である。
図5】試験例1におけるサンプルEのセンサ素子の一部を示す顕微鏡写真である。
図6】試験例1の結果を示すグラフである。
図7】試験例2の結果を示すグラフである。
図8】試験例3の結果を示すグラフである。
図9】試験例4の結果を示すグラフである。
図10】試験例5の結果を示すグラフである。
図11】試験例6の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の接触燃焼式水素ガスセンサ素子1(以下、センサ素子1という)は、水素ガスの燃焼反応を促進する触媒活性を有する触媒層2と、触媒層2上で水素ガスが燃焼することにより生じた熱により加熱されることで電気抵抗値の変化を生じる抵抗体3とを備える。触媒層2は、10m2/g以上の比表面積を有する樹枝状又はひげ状の電着物であり、抵抗体3を覆っている。
【0015】
センサ素子1の一実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0016】
抵抗体3の電気抵抗値は、抵抗体3の温度変化に従って変化する。この電気抵抗値の変化に基づいて、水素ガスの検知及び水素ガスの濃度測定が可能である。抵抗体3は触媒層2を加熱するヒータを兼ねている。
【0017】
抵抗体3は、例えば白金製、パラジウム製、ニッケル製、鉄−パラジウム合金製、或いはこれらの金属のうち二種以上の金属の合金製である。本実施形態における抵抗体3はコイル状である。
【0018】
触媒層2は、抵抗体3上に電着により形成した樹枝状又はひげ状の電着物である。電着物とは、電気分解によって析出した物質を意味する。樹枝状の電着物とはJIS H0400−1982で定義されている樹枝状めっきのことである。触媒層2は、例えば白金製、ロジウム製、パラジウム製、コバルト製、銅製、或いはこれらの金属のうち二種以上の金属の合金製、或いはこれらの金属のうち一種以上を含む化合物製である。
【0019】
このように触媒層2が抵抗体3上に電着により形成した樹枝状又はひげ状の電着物であるため、触媒層2は抵抗体3上に直接接し、或いは後述する合金層31を介して抵抗体3に重なっている。このため触媒層2と抵抗体3との間の熱の移動は非常に速やかにおこなわれる。また、触媒層2の質量を小さくすることが可能であり、このことによっても、触媒層2と抵抗体3との間の熱の移動は非常に速やかにおこなわれる。このため、抵抗体3が通電されて加熱されると、触媒層2も速やかに加熱され、このため接触燃焼式水素ガスセンサの起動に要する時間が非常に短くなる。また、触媒層2上で水素ガスが燃焼することで触媒層2が加熱されると、抵抗体3も速やかに加熱されるため、水素ガスが低濃度であっても良好な感度及び速い応答性が得られる。
【0020】
更に触媒層2は樹枝状又はひげ状の電着物であるため、センサ素子1はケイ素化合物に対する優れた耐久性を有する。すなわち、センサ素子1に、ケイ素化合物で被毒されることによる感度の低下が生じにくい。これは、触媒層2が樹枝状又はひげ状の電着物であると、触媒層2は複雑な凹凸形状を有するため、ケイ素化合物が触媒層2に到達しても、ケイ素化合物の分子は触媒層2に付着しにくく、付着したとしても触媒層2の凹部の内奥には入り込まずに表面に留まりやすいためであると考えられる。このため、触媒層2はケイ素化合物で覆われにくくなり、水素ガスと触媒層2との接触を妨げられにくくなって、長期に亘って高い感度及び速い応答性が維持されると考えられる。
【0021】
触媒層2は、10m2/g以上の比表面積を有する。このため、センサ素子1は非常に高いケイ素化合物に対する耐久性を有する。これは、触媒層2の比表面積が大きいことで触媒層2は微細な空孔を有し、この空孔内にケイ素化合物が侵入しにくいために、触媒層2にケイ素化合物が付着しにくいからであると、推察される。触媒層2の比表面積が20m2/g以上であれば更に好ましい。この場合、ケイ素化合物に対する耐久性が更に高くなる。また、触媒層2の比表面積は、実用上は例えば200m2/g以下である。尚、触媒層2の比表面積は、窒素吸着法で測定される。
【0022】
触媒層2の厚みSTは3μm以上であることが好ましい。この場合、センサ素子1のケイ素化合物に対する耐久性が更に高くなる。これは、触媒層2の厚みSTが大きいほど、触媒層2の内奥へケイ素化合物が侵入しにくくなるためであると推察される。特に高い耐久性を得るためには、触媒層2の厚みSTは6μm以上であれば更に好ましい。また、センサ素子1の速い応答性を確保するためには触媒層2の厚みSTは20μm以下であることが好ましく、12μm以下であれば更に好ましい。
【0023】
触媒層2の空隙率が30体積%以上であることも好ましい。この場合も、センサ素子1のケイ素化合物に対する耐久性が更に高くなる。これは、空隙率が大きいほど、触媒層2の表面がケイ素化合物で覆われても目詰りが起こりにくくなり、触媒層2内部への気体の拡散が阻害されないためであると推察される。特に高い耐久性を得るためには、触媒層2の空隙率は40体積%以上であることが好ましい。また、触媒層2の構造維持のためには触媒層2の空隙率は80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であれば更に好ましい。尚、触媒層2の空隙率は、触媒層2の断面の顕微鏡画像を画像解析することで算出される。
【0024】
抵抗体3と触媒層2との間には、抵抗体3を構成する金属と触媒層2を構成する金属との合金からなる合金層31が介在していることが好ましい。触媒層2は樹枝状又はヒゲ状の電着物であるため脆く、そのため本来であれば抵抗体3から脱落しやすいが、抵抗体3と触媒層2との間に合金層31が介在していると、抵抗体3と触媒層2との密着性が高くなるため、抵抗体3から触媒層2が脱落しにくくなる。このため、例えばセンサ素子1が車載用途などのように大きな振動や衝撃が加えられる可能性の高い用途に適用されても、抵抗体3から触媒層2が脱落しにくくなる。このため、高い信頼性が得られる。抵抗体3が白金製であり、触媒層2がパラジウム製、パラジウム合金製、又はパラジウム化合物製である場合に、抵抗体3と触媒層2との間に白金−パラジウム合金製の合金層31が介在すると、抵抗体3から触媒層2が特に脱落しにくくなる。
【0025】
触媒層2は電気めっき法等の電着法で形成される。触媒層2を形成するためには、例えば、まず硝酸パラジウム、塩化パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム等のパラジウム塩を含む電解液中に、抵抗体3と電解用電極とを浸漬する。電解用電極は例えば白金製である。抵抗体3と電解用電極との間に電圧を印加することで、触媒層2を形成することができる。
【0026】
触媒層2を形成するための電着の条件は、触媒層2が所望の比表面積を有し、或いは更に所望の厚み、空隙率等を有するように、適宜設定される。例えば電着時の電解液中の金属濃度が2〜20g/Lの範囲内であることが好ましい。電着時の抵抗体3の表面の電流密度は5〜40A/dm2の範囲内であることが好ましい。電着時間は6〜50秒の範囲内であることが好ましい。
【0027】
抵抗体3に電圧が印加されることで加熱される場合に、抵抗体3内に生じる温度差が小さいことが好ましい。抵抗体3がコイル状である場合には、この抵抗体3に電圧が印加されることで加熱される場合、通常は抵抗体3の中心部分よりも端部の方が温度が低くなるが、このように生じる抵抗体3内の温度差は小さいことが好ましい。抵抗体3内の温度差が大きいと、センサ素子1に温度が過剰に高い部分が生じてしまい、この部分で水素ガスが燃焼すると、この部分の温度が更に高くなってしまう。そうすると、ケイ素化合物による被毒の影響が大きくなる部分が生じてしまう。これに対して、抵抗体3に電圧が印加されても抵抗体3内に生じる温度差が小さいと、触媒層2全体をケイ素化合物による被毒が小さい温度に容易に制御できる。
【0028】
特に、抵抗体3は、常温常圧の大気中にセンサ素子1が配置された状態で抵抗体3の温度の理論値が600℃となるように抵抗体3に電圧が印加されると、抵抗体3内に生じる温度差が250℃以内になる特性を有することが好ましい。この場合、抵抗体3内に温度差が特に生じにくくなり、センサ素子1のケイ素化合物に対する耐久性が特に高く維持される。この温度差が200℃以内であれば更に好ましい。尚、抵抗体3の温度の理論値とは、抵抗体3に印加される電圧と、この電圧が印加されることで抵抗体3に通電する電流と、抵抗体3の温度係数とから算出される温度である。
【0029】
このような抵抗体3の特性は、抵抗体3の形状を適切に設計することで得られる。例えば、抵抗体3のターン数が少ないほど抵抗体3内に生じる温度差は小さくなる。抵抗体3の外径SEが大きくなるほど抵抗体3内に生じる温度差は小さくなる。抵抗体3の線径SDが大きくなるほど抵抗体3内に生じる温度差は大きくなる。抵抗体3内での線間ピッチSPが大きくなるほど、抵抗体3内に生じる温度差は大きくなる。抵抗体3の形状及び寸法が適切に設計されることで、所望の特性を備える抵抗体3が得られる
上記のとおり抵抗体3内に生じる温度差が小さくなるためには抵抗体3の線径SDは小さい方が好ましい。また、抵抗体3の線径SDが小さすぎると、抵抗体3の熱容量が過度の小さくなることでセンサ素子1上で水素ガスが燃焼した場合に抵抗体3の温度が過度に上昇し、それが原因で触媒層2が焼結してしまうおそれもある。更に、抵抗体3の温度変化が大きくなることで抵抗体3が熱ストレスにより劣化しやすくなる。このことからも、抵抗体3の線径SDは大きい方が好ましい。シリコン化合物に対する良好な耐久性を維持すると共に熱ストレスを抑制するためには、抵抗体3の線径SDは10μm以上であることが好ましく、30μm以上であれば更に好ましい。一方、線径SDが大きすぎると抵抗体3の電気抵抗値が過度に小さくなると共に熱容量が過度に大きくなることで、感度及び応答性が低下してしまう。このため、水素ガスの検知及び濃度測定にあたって良好な感度と速い応答性を維持するためには、抵抗体3の線径SDは50μm以下であることが好ましく、40μm以下であれば更に好ましい。
【0030】
上記のとおり抵抗体3内に生じる温度差が小さくなるためには抵抗体3の外径SEが大きいことが好ましい。抵抗体3の熱ストレスによる劣化を抑制するためにも、抵抗体3の外径SEが大きいことが好ましい。シリコン化合物に対する良好な耐久性を維持すると共に熱ストレスを抑制するためには、抵抗体3の外径SEが0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であれば更に好ましい。また、速い応答性を維持するためには抵抗体3の外径SEは0.7mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であれば更に好ましい。
【0031】
上記のとおり抵抗体3内に生じる温度差が小さくなるためには抵抗体3内の線間ピッチSPは小さいことが好ましい。特に線間ピッチSPは100μm以下であることが好ましく、60μm以下であれば更に好ましい。但し、線間ピッチSPが小さすぎるとセンサ素子1からの熱放散性が低下してセンサ素子1の過度な温度上昇が生じ、触媒層2が焼結するおそれがある。更に、線間ピッチSPが大きいと、触媒層2の厚みSTを大きくすることが容易となり、これによってケイ素化合物に対する耐久性を更に向上することができる。特に線間ピッチSPは20μm以上であることが好ましく、30μm以上であれば更に好ましい。
【0032】
上記のとおり抵抗体3内に生じる温度差が小さくなるためには抵抗体3のターン数が少ないことが好ましい。特に抵抗体3のターン数は15以下であることが好ましく、10以下であれば更に好ましい。また、ターン数が少なすぎると抵抗体3の電気抵抗値が低くなり消費電力が増大してしまうため、抵抗体3のターン数は、3以上であることが好ましく、5以上であれば更に好ましい。
【0033】
また、抵抗体3のコイル形状を維持するために必要な機械的強度を確保するためには、抵抗体3の長さSLは抵抗体3の外径SDの0.5〜3倍の範囲内であることが好ましい。
【0034】
センサ素子1の両端には、それぞれリード線9が接続されている。このリード線9は例えば抵抗体3と同一材質の金属線である。リード線9及び抵抗体3は、一本の金属線が成形されることで得られてもよい。
【0035】
接触燃焼式水素ガスセンサは、センサ素子1と、このセンサ素子1の抵抗体3へ電圧を印加するように構成された回路30とを備える。接触燃焼式水素ガスセンサは、更に補償用素子14を備えてもよい。
【0036】
補償用素子14は、雰囲気温度変化等によって生じる抵抗体3の電気抵抗値の変化を補償するために用いられる。これにより、水素ガスの燃焼に起因する抵抗体3の電気抵抗値の変化がより正確に測定される。
【0037】
補償用素子14は、水素ガスの燃焼を促進させる触媒活性を有しない以外はセンサ素子1と同じ或いは近似する温度−電気抵抗値特性を有することが好ましい。例えば補償用素子14は、触媒層2を備えない以外はセンサ素子1と同じ構造を有する。また、補償用素子14がセンサ素子1の場合と同様の触媒層2を備え、更にこの触媒層2上にマンガン等の触媒活性を有しない卑金属が電着されていることで触媒層2が失活されていてもよい。補償用素子14が触媒層2を備えず、それにマンガン等の触媒活性を有しない卑金属が電着されてもよい。或いは補償用素子14は触媒活性を有しない不活性な膜に覆われていてもよい。
【0038】
接触燃焼式水素ガスセンサにおいて、センサ素子1と補償用素子14は、例えば図3に示すような回路30に接続される。回路30は、測定装置15、第一の固定抵抗17、第二の固定抵抗18、可変抵抗19、可変抵抗20、直流電源21、第一の端子23、第二の端子24、第三の端子25、第四の端子26、並びにこれらの要素を接続する配線を備える。
【0039】
回路30にセンサ素子1と補償用素子14が接続されることで、センサ素子1及び補償用素子14と、第一の固定抵抗17及び第二の固定抵抗18とが、ブリッジ回路を構成している。測定装置15は、ブリッジ回路の第三の端子25と第四の端子26との間の電圧を測定し、その結果から抵抗体3の電気抵抗値の変化を算出し、これに基づいて水素ガスの濃度を算出して、その結果を外部へ出力する。
【0040】
図示の回路30にセンサ素子1と補償用素子14とが接続されることで、第一の端子23と第二の端子24との間にセンサ素子1と補償用素子14とが直列に接続されると共に、第一の固定抵抗17と第二の固定抵抗18が直列に接続されている。このセンサ素子1と補償用素子14からなるユニットと第一の固定抵抗17と第二の固定抵抗18からなるユニットとは、第一の端子23と第二の端子24との間で並列になっている。第三の端子25は第一の固定抵抗17と第二の固定抵抗18との間の配線にあり、第四の端子26はセンサ素子1と補償用素子14との間の配線にある。
【0041】
第一の端子23と第二の端子24の間には平衡調整用の可変抵抗19が接続されている。この可変抵抗19の中間タップは、第一の固定抵抗17と第二の固定抵抗18との間の配線に接続されている。第一の端子23と第二の端子24との間には、可変抵抗20、及び直流電源21も設けられている。第一の端子23と第二の端子24との間では、可変抵抗19と、可変抵抗20、及び直流電源21で構成されているユニットとが、並列になっている。可変抵抗20の電気抵抗値が調整されると、第一の端子23と第二の端子24との間に印加される電圧が調整される。
【0042】
直流電源21からセンサ素子1に電圧が印加されると、抵抗体3の温度が、水素ガスを検知可能な所定の温度に維持される。この場合の抵抗体3の温度の理論値が200〜600℃であることが好ましい。すなわち、センサ素子1が常温常圧の大気中に配置された状態で電圧が抵抗体3に印加される場合、抵抗体3の温度の理論値が200〜600℃の範囲内となることが好ましい。そのためには、回路30は、センサ素子1が常温常圧の大気中に配置された状態で抵抗体3に印加されると、抵抗体3の温度の理論値が200〜600℃の範囲内となる電圧を印加するように構成されていることが好ましい。抵抗体3の温度の理論値が200℃以上であると、ケイ素に対する耐久性が更に高くなる。これは、触媒層2にケイ素化合物が付着したとしても、触媒層2上でケイ素化合物が重合することでケイ素化合物の体積が減少し、これにより触媒層2全体がケイ素化合物で覆われることが抑制されるためであると推察される。また、抵抗体3の温度の理論値が200℃以上であると、触媒層2が部分的にケイ素化合物で覆われていても、触媒層2の高い触媒活性が充分に維持されると推察される。抵抗体3の温度の理論値が250℃以上であれば更に好ましい。また抵抗体3の温度の理論値が600℃以下であると、抵抗体3の熱ストレスによる劣化が抑制される。抵抗体3に印加される電圧は、必要に応じて可変抵抗20によって調整される。
【0043】
本実施形態に係る接触燃焼式水素ガスセンサにより水素ガスの検知及び濃度測定がおこなわれる場合には、まず直流電源21から第一の端子23と第二の端子24との間に電圧が印加されると共に、可変抵抗19が調整されてブリッジ回路の平衡状態が維持される。この場合、センサ素子1に電圧が印加され、抵抗体3が通電することで加熱され、それにより触媒層2が加熱される。
【0044】
この状態で、センサ素子1に水素ガスが到達すると、触媒層2上で水素ガスが燃焼し、それにより抵抗体3の温度が上昇してその電気抵抗値が増大する。一方、触媒活性を有しない補償用素子14に水素ガスが到達しても、水素ガスは燃焼せず、補償用素子14の電気抵抗値は変化しない。したがって、センサ素子1と補償用素子14との間で電気抵抗値の差が発生し、端子25,26間にブリッジ電圧が発生する。このブリッジ電圧は水素ガスの濃度に比例する。このブリッジ電圧が測定装置15で測定され、その結果に基づいて水素ガスが検知されると共にその濃度が求められる。
【0045】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態であるが、本発明はこれらの実施形態に制限されず、本発明の目的を逸脱しないのであれば、材質、形状の変更、公知技術の付加、転用などの、適宜の設計変更が可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、本発明はこれらの実施例に制限されることはない。
【0047】
[試験例1]
サンプルA〜Eというコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表1に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表1に示す条件で通電させた。図4はサンプルEのセンサ素子の全体の電子顕微鏡写真、図5はサンプルEのセンサ素子の一部の電子顕微鏡写真であり、これによると、触媒層は樹枝状の電着物であることが確認できる。各サンプルについての、触媒層の比表面積を測定した結果も、あわせて下記表に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0050】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0051】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0052】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0053】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0054】
この試験の結果を、図6に示す。図6において、横軸は触媒層の比表面積を示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。図6に示す結果によれば、触媒層の比表面積が10m2/g以上であれば、感度の維持率は高く、ケイ素化合物に対する高い耐久性が得られた。触媒層の比表面積が20m2/g以上であれば、特に高い耐久性が得られた。
【0055】
[試験例2]
サンプルA〜Eというコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表2に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表2に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表2に併せて示す。
【0056】
また、サンプルA〜Gの各々のセンサ素子における抵抗体の温度の理論値が600℃となるように抵抗体に電圧を印加した場合の、抵抗体内に生じる温度差の最大値も、下記表2に示す。尚、この温度差の最大値は、熱流体解析によるシミュレーションにより導出した。
【0057】
【表2】
【0058】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0059】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0060】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0061】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0062】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0063】
この結果を図7に示す。図7において、横軸は抵抗体の温度の理論値600℃における抵抗体内に生じる温度差の最大値であり、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。
【0064】
図7に示される結果によると、抵抗体内の温度差が250℃以下であると、試験後の感度の劣化が特に抑制されることが確認できる。
【0065】
[試験例3]
サンプルA〜Cというコイル状の3種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層の比表面積及び厚みを表3に併せて示す。
【0066】
【表3】
【0067】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0068】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより3種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0069】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が所定の値になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。この出力値から、抵抗体の温度を算出した。その結果を図8に示す。この図8において、横軸は抵抗体の温度の理論値を示し、縦軸は水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での出力値に基づいて算出された抵抗体の温度を示す。
【0070】
この結果によると、抵抗体の線径が大きくなるほど、水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での抵抗体の温度上昇が小さくなることが確認された。特に、線径が30μm及び40μmの場合には、抵抗体の温度の理論値が250℃以上であっても水素濃度3万5千ppmの雰囲気中での抵抗体の温度が600℃以下であることを達成できた。
【0071】
[試験例4]
サンプルA1、A2、B1、B2、C1、C2というコイル状の6種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表4に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表4に併せて示す。尚、サンプルA1とA2は同じ構造を有し、サンプルB1とB2は同じ構造を有し、サンプルC1とC2は同じ構造を有する。
【0072】
【表4】
【0073】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0074】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより6種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0075】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0076】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0077】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度2万ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0078】
その結果を図9に示す。図9において、横軸は抵抗体の外径を示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。図9によれば、外径が0.2mmの場合に比べ、外径が0.4mm及び0.6mmの場合は耐久試験後の感度の低下が抑制されたことが確認できた。
【0079】
[試験例5]
サンプルA及びサンプルBという、抵抗体の線間ピッチが異なるコイル状の2種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表5に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表5に併せて示す。
【0080】
【表5】
【0081】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0082】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより2種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0083】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0084】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0085】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度3万5千ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0086】
この結果を図10に示す。図10において、横軸は抵抗体の線間ピッチを示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。この結果によれば、抵抗体の線間ピッチが大きいほど耐久試験後の感度の低下が抑制されることが確認できる。
【0087】
[試験例6]
サンプルA〜Eという、触媒層の厚みが異なるコイル状の5種のセンサ素子を用意した。各サンプルにおいて、抵抗体を白金線から作製し、その線径、外径(コイル径)、長さ、ターン数、及び線間ピッチを、下記表7に示すようにした。また、各サンプルにおいて、触媒層としてパラジウム製の樹枝状の電着物を形成した。触媒層を形成するにあたっては、まずパラジウム濃度10g/Lの硝酸パラジウム水溶液に白金製の電解用電極と抵抗体とを浸漬し、この状態で抵抗体と電解用電極との間に電流を下記表4に示す条件で通電させた。触媒層の比表面積及び厚みを表6に併せて示す。
【0088】
【表6】
【0089】
各センサ素子と対となる補償用素子としては、触媒層を備えない以外はセンサ素子と同じ構成で触媒活性を有しない素子を用意した。
【0090】
各センサ素子と、それと対となる補償用素子とを回路に接続して接触燃焼式水素ガスセンサを構成した。これにより5種の接触燃焼式水素ガスセンサを得た。
【0091】
各接触燃焼式水素ガスセンサのセンサ素子に電圧を抵抗体の温度の理論値が250℃になるように印加した。この状態でセンサ素子を水素濃度10000ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値(初期値)を記録した。
【0092】
続いて、センサ素子をヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)濃度10ppmの雰囲気中に250時間曝露した。
【0093】
続いて、再びセンサ素子を水素濃度10000ppmの雰囲気中に曝露し、接触燃焼式水素ガスセンサの出力値を安定化させてからその値を記録した。
【0094】
その結果を図11に示す。図11において、横軸は触媒層の厚みを示し、縦軸は初期値からの感度の維持率を示す。初期値からの感度の維持率は、耐久試験後の出力値の、初期値に対する百分率である。図11によれば、触媒層の厚みが3μm以上であると、耐久試験後の感度の低下が特に抑制されたことが確認できた。
【符号の説明】
【0095】
1 接触燃焼式水素ガスセンサ素子
2 触媒層
3 抵抗体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11