【文献】
J. Brew. Soc. Japan, 1981年,Vol.76, No.6,p.418-423
【文献】
ティント・デ・ベラーノ レシピ・作り方 by *REN-REN*,楽天レシピ, 2011年,https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1760002730/, 検索日:2018年5月23日
【文献】
白ワインのサングリア&赤ワインのレモンソーダ割り,マイナビウーマン, 最終更新日:2012年,https://woman.mynavi.jp/article/070601-020/, 検索日:2018年5月23日
【文献】
J. Brew. Soc. Japan,1988年,Vol. 83, No. 3,p. 171-176
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸ガスを含有する果実酒、特に市場に出回っている発泡性赤ワインは、味の厚みに乏しいものや、逆に厚みが強く飲みにくいものが多いという問題が指摘されている。
【0006】
本発明は、味の厚みと爽快感がバランスよく付与され、飲みやすい炭酸ガス含有果実酒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、炭酸ガスを含有する果実酒に特定量のクエン酸、コハク酸、及び乳酸を配合することで、味の厚みと爽快感を好ましいバランスで付与できることを見出した。結果として、飲みやすい炭酸ガス含有果実酒を製造することが可能となった。
【0008】
即ち、本発明は、以下のものに関するが、これらに限定されない。
(1)炭酸ガスを含有し、下記(A)〜(C)の全てを満たすことを特徴とする果実酒。
(A)クエン酸の含有量:2500〜7200ppm
(B)コハク酸の含有量:30〜250ppm
(C)乳酸の含有量:30〜250ppm
(2)ワインである、(1)に記載の果実酒。
(3)赤ワインである、(1)又は(2)に記載の果実酒。
(4)アルコール度数が1〜16v/v%である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の果実酒。
(5)炭酸ガス圧が0.7〜3.5kgf/cm
2である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の果実酒。
(6)Brix値が3〜20である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の果実酒。
(7)果実酒のpHが3.00〜4.00の範囲にある際のOD525nmにおける吸光度により表される色調が0.05以上である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の果実酒。
(8)炭酸ガスを含有する果実酒の製造方法であって、下記(A)〜(C)の全てを満たすように、果実酒中のクエン酸の含有量、コハク酸の含有量、及び乳酸の含有量を調整することを特徴とする、前記製造方法。
(A)クエン酸の含有量:2500〜7200ppm
(B)コハク酸の含有量:30〜250ppm
(C)乳酸の含有量:30〜250ppm
(9)炭酸ガスを含有する果実酒に、味の厚みと爽快感をバランスよく付与する方法であって、下記(A)〜(C)の全てを満たすように、果実酒中のクエン酸の含有量、コハク酸の含有量、及び乳酸の含有量を調整することを特徴とする、前記方法。
(A)クエン酸の含有量:2500〜7200ppm
(B)コハク酸の含有量:30〜250ppm
(C)乳酸の含有量:30〜250ppm
【発明の効果】
【0009】
本発明では、味の厚みと爽快感がバランスよく付与され、飲みやすい炭酸ガス含有果実酒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味する。
【0011】
(果実酒)
本発明の果実酒は、特定量のクエン酸、コハク酸、及び乳酸を含有するものである。そして、本発明の果実酒は、味の厚みと爽快感がバランスよく付与されており、結果として、飲みやすい炭酸ガス含有果実酒を提供することができる。なお、本明細書において、「味の厚み」とは、口に含んだ時に感じる香味の広がり、アタックの強さ、味わいの複雑さを意味する。
【0012】
本明細書における「果実酒」とは、原料となる果汁を酵母の作用によりアルコール発酵させて得られる発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。そして、本発明におけるクエン酸、コハク酸、及び乳酸の含有量の条件を満たす限り、果実酒中の当該発酵飲料の含有量に制限はないが、下限については、典型的には、5v/v%以上、10v/v%以上、20v/v%以上、25v/v%以上、又は50v/v%以上であり、上限については、典型的には、100v/v%以下、90v/v%以下、80v/v%以下、70v/v%以下、又は60v/v%以下である。当該発酵原料としては、ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、グレープフルーツ果汁、パイナップル果汁、マンゴー果汁等が挙げられ、これらの果汁を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。前記定義を満たす限り、本発明における果実酒は、酒税法等の法律に基づくカテゴリーに限定されないが、本発明における果実酒の範囲には、日本の酒税法による果実酒、甘味果実酒、リキュール、その他の醸造酒が含まれる。
【0013】
本発明における好ましい果実酒の一つはワインである。本明細書における「ワイン」とは、ブドウ果汁を主な原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。
【0014】
本明細書におけるワインには、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインが含まれる。本明細書における「赤ワイン」とは、ブドウの果肉、果皮、及び種を含む果実全体から搾り取った果汁を原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。また、本明細書における「白ワイン」とは、ブドウの果肉のみから搾り取った果汁を原料として製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。さらに、本明細書における「ロゼワイン」とは、前記赤ワインの製造方法と前記白ワインの製造方法を組み合わせて、又は前記赤ワインと前記白ワインを混合して製造される発酵飲料、及びそのような発酵飲料を主な原料として含む飲料を意味する。
【0015】
さらに好ましくは、本発明の果実酒は赤ワインである。代表的な発泡性ワインの多くは白ワイン又はロゼワインであり、発泡性の赤ワインはほとんど知られていない。さらに、炭酸ガスを含有する発泡性の赤ワインは、日本人の味覚に必ずしも適合せず、万人受けするものではないとされている。例えば、発泡性の赤ワインは、味の厚みに乏しいものや、逆に厚みが多く飲みにくいものが多いという問題が特に顕著である。そのため、味の厚みと爽快感をバランスよく付与し、飲みやすい炭酸ガス含有果実酒を提供することができる本発明は、赤ワインに特に好適である。
【0016】
(クエン酸)
クエン酸は、レモンなどの柑橘類に多く含まれる有機酸であり、やや渋味のある酸味を有する。本発明の果実酒に含有されるクエン酸の含有量は、2500〜7200ppm、好ましくは2500〜5000ppm、より好ましくは2500〜4000ppmである。クエン酸の含有量の別の好ましい範囲は、3500〜5700ppmである。
【0017】
果実酒を製造する際には、精製又は単離されたクエン酸を用いてもよいし、クエン酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。クエン酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中のクエン酸の含有量も適切な範囲となる。クエン酸を含む原料としては、例えば、オレンジ、ミカン、グレープフルーツ、レモン、柚子、ライム等の柑橘類の果実及び果皮、並びにそれらの果汁及び抽出物が挙げられる。本発明においてクエン酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
クエン酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0019】
(コハク酸)
コハク酸は、貝類などに多く含まれる有機酸であり、うま味を有する。本発明の果実酒に含有されるコハク酸の含有量は、30〜250ppm、好ましくは50〜150ppmである。
【0020】
果実酒を製造する際には、精製又は単離されたコハク酸を用いてもよいし、コハク酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。コハク酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中のコハク酸の含有量も適切な範囲となる。コハク酸を含む原料としては、例えば、貝類、藻類、菌類及びその抽出物が挙げられる。本発明において、コハク酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
コハク酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0022】
(乳酸)
乳酸は、ヨーグルトなどに多く含まれる有機酸である。本発明の果実酒に含有される乳酸の含有量は、30〜250ppm、好ましくは50〜150ppmである。
【0023】
果実酒を製造する際には、精製又は単離された乳酸を用いてもよいし、乳酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。乳酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中の乳酸の含有量も適切な範囲となる。乳酸を含む原料としては、例えば、ヨーグルト、チーズ及びその抽出物が挙げられる。本発明において乳酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
乳酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0025】
(酢酸)
酢酸は、酢などに多く含まれる有機酸である。本発明の果実酒に含有される酢酸の含有量は、好ましくは10〜250ppm、より好ましくは10〜100ppmである。
【0026】
果実酒を製造する際には、精製又は単離された酢酸を用いてもよいし、酢酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。酢酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中の酢酸の含有量も適切な範囲となる。酢酸を含む原料としては、例えば、酢などが挙げられる。本発明において酢酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
酢酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0028】
(酒石酸)
酒石酸は、ブドウなどに多く含まれる有機酸であり、刺激のある酸味を有する。本発明の果実酒に含有される酒石酸の含有量は、好ましくは10〜500ppm、より好ましくは50〜450ppmである。
【0029】
果実酒を製造する際には、精製又は単離された酒石酸を用いてもよいし、酒石酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。酒石酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中の酒石酸の含有量も適切な範囲となる。酒石酸を含む原料としては、例えば、酸味のある果実、特にブドウ、ワイン、レモン、リンゴ、梅干等が挙げられる。本発明において酒石酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
酒石酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0031】
(リンゴ酸)
リンゴ酸は、リンゴやブドウ等の果実に多く含まれる有機酸であり、あっさりとした酸味を有する。本発明の果実酒に含有されるリンゴ酸の含有量は、好ましくは10〜600ppm、より好ましくは50〜550ppmである。
【0032】
果実酒を製造する際には、精製又は単離されたリンゴ酸を用いてもよいし、リンゴ酸を含む原料を用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。リンゴ酸自体及びそれを含む原料の使用量が適切であれば、果実酒中のリンゴ酸の含有量も適切な範囲となる。リンゴ酸を含む原料としては、例えば、リンゴやブドウ等が挙げられる。本発明においてリンゴ酸を含有する原料を用いる場合には、そのような原料を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
リンゴ酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。
【0034】
(総酸量)
本明細書における「総酸量」とは、飲料中の酸が全て一価の酸であると仮定して、その酸の総モル濃度を酒石酸量に換算した値を指す。試料となる飲料中の酸の総モル濃度は、滴定などの公知の方法で測定することができ、例えば、試料が中性(pH7.0)となるまでに要した水酸化ナトリウムの添加量から算出することができる。詳しくは、試料20mLをホールピペットで100mLのビーカーに分取し、蒸留水を加えて液量を約50mLとし、当該液中にpHメーターの電極を挿入する。その後、当該液を撹拌しながら1/10N水酸化ナトリウム溶液をビュレットから滴下し、pHメーターの目盛りが7.0を示すところを終点とする。そして、終点に達するまでに要した水酸化ナトリウム溶液量から、試料中の酸の総モル濃度を求める。さらに、得られた酸の総モル濃度と酒石酸(確認のために記載するが、ここでは、遊離の酒石酸を意味する)の分子量及びカルボン酸の数を考慮して、以下の式に基づき試料中の総酸量を算出する:総酸量=試料中の酸の総モル濃度×(酒石酸の分子量/酒石酸のカルボン酸の数)。なお、滴定には自動滴定装置を用いてもよい。
【0035】
総酸量は、果実酒の酸味の度合いを表すものと考えられる。総酸量の調整は、酸の添加や希釈等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0036】
本発明の総酸量は特に限定されないが、好ましくは0.43〜1.0g/100mL、より好ましくは0.45〜0.8g/100mLである。
【0037】
(pH)
本発明の果実酒のpHは特に限定されないが、好ましくはpH3.00〜4.00、より好ましくはpH3.00〜3.50である。
【0038】
(アルコール)
本発明の果実酒のアルコール度数は、特に限定されないが、好ましくは1〜16v/v%、より好ましくは2〜10v/v%、さらにより好ましくは3〜7v/v%である。アルコール度数の調整方法は、添加するアルコール成分の量の調整などの、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0039】
本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。本明細書において、果実酒のアルコール度数は公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、果実酒から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いて試料を調製し、調製した試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度数が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0040】
(炭酸ガス)
本発明の果実酒は、炭酸ガスを含む。例えば、発酵過程で発生する二酸化炭素がワインに溶け込んだものでもよい。また、炭酸ガスは当業者に通常知られる方法を用いて果実酒に付与することもできる。具体的には、二酸化炭素を加圧下で果実酒に溶解させてもよく、カーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と果実酒とを混合してもよく、二酸化炭素が充満したタンク中に果実酒を噴霧することにより二酸化炭素を果実酒に吸収させてもよく、果実酒と炭酸水とを混合してもよいが、これらに限定されるものではない。また、これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0041】
炭酸ガス圧の測定は、公知の方法によって行うことができる。例えば、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA−500Aを用いて測定することができる。より詳細には、試料温度を20℃とし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって炭酸ガス圧を測定する。
【0042】
本発明の果実酒の炭酸ガス圧は、特に限定されないが、測定時の液温が20℃の際の果実酒のスニフト後のガス圧が、好ましくは0.7〜3.5kgf/cm
2、より好ましくは0.8〜2.8kgf/cm
2、さらにより好ましくは0.8〜2.5kgf/cm
2である。
【0043】
(色調)
本発明の果実酒の色調は、果実酒のpHが3.00〜4.00の範囲にある際のOD525nmにおける吸光度で表される。本発明の果実酒の鮮やかな赤色は、ブドウなどの果肉や果皮に豊富に含まれる色素であるアントシアニンによるものである。ここで、アントシアニンはpHに応じて吸光スペクトルが変化するという性質を有するため、pHが所定の範囲になければ、OD525nmにおける吸光度と果実酒の色調との相関関係を規定することは難しい。そのため、本明細書においては、特に断りがない限り、果実酒のpHが3.00〜4.00の範囲にある際の、果実酒の吸光度を測定するものとする。果実酒のpHが所定の範囲になければ、pHを所定の範囲に調整した後で、OD525nmにおける吸光度を測定する。なお、本明細書におけるpHの調整は、果実酒を過度に希釈しないように、高濃度の酸性水溶液若しくは塩基性水溶液、又は固体の酸若しくは塩基を果実酒に添加し、当該果実酒のpH調整前後の容量変化及び質量変化を0.5%未満に抑えた条件で、当該果実酒のpHを3.00〜4.00の範囲に調整することをいう。
【0044】
当該色調は特に限定されないが、果実酒に赤ワインの鮮やかな赤色を付与するために、果実酒のpHが3.00〜4.00の範囲にある際のOD525nmにおける吸光度が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上である。色調の調整は、公知の方法によって行うことができるが、例えば、果実酒を珪藻土による濾過、フィルター濾過、MF膜濾過、UF膜濾過、遠心分離等に供することが挙げられる。
【0045】
(他の成分)
本発明の果実酒は、味の調整のために、糖類を含有してもよい。糖類の種類は特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース等が挙げられ、これらの糖類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、糖類を含む原料、例えば、糖液や蜂蜜を用いてもよい。本発明の果実酒に糖類が含まれる場合には、その含有量は、Brix値を指標として見積もることができる。Brix値は、好ましくは3〜20、より好ましくは5〜15である。飲料のBrixは、公知の方法を用いて測定してもよく、例えば、市販のBrix計を使用することができる。
【0046】
本発明の果実酒は、本発明の設計品質を超えない範囲で、果汁を含有してもよい。果汁の種類は特に限定されないが、例えば、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、ミカン果汁、ユズ果汁、カボス果汁、イヨカン果汁、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ及びライチ等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁、キウイフルーツ果汁、サクランボ果汁及びクリ果汁等)、スイカ果汁、イチゴ果汁、カシス(ブラックカーラント)果汁、レッドラズベリー果汁、及びメロン果汁等が挙げられる。
【0047】
果汁としては、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁であってもよく、濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよく、それらの果汁を冷凍して得られる冷凍果汁を用いてもよい。これらの果汁は、1種類の果汁を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の果実酒には、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0049】
(果実酒の製造方法、及び味の厚みと爽快感をバランスよく付与する方法)
本発明は、別の側面では、果実酒の製造方法であって、果実酒中のクエン酸の含有量、コハク酸の含有量、及び乳酸の含有量を調整する工程を含むものである。クエン酸、コハク酸、乳酸、及び他の成分の含有量や成分比率、及びその好ましい範囲、並びにその調整方法については、果実酒に関して上記した通りである。また、酢酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種類の有機酸を含有する工程を含んでもよく、炭酸ガスを含有する工程を含んでもよい。炭酸ガスの含有方法や炭酸ガス圧は上記の通りである。これらの工程は、どの順序で行ってもよく、最終的に得られた果実酒における含有量や比率が所要の範囲にあればよい。また、果実酒の原料や、その発酵方法については、公知の方法を用いればよい。
【0050】
本発明の果実酒の製造方法では、炭酸ガスを含有する果実酒に味の厚みと爽快感をバランスよく付与することができる。従って、当該製造方法は、別の側面では、炭酸ガスを含有する果実酒に味の厚みと爽快感をバランスよく付与する方法である。
【0051】
(容器詰飲料)
本発明の果実酒は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、瓶、缶、樽、又はペットボトル等の密封容器に充填して、容器詰飲料とすることができる。
【0052】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値〜上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1〜2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(ベース果実酒)
230Lの赤ワイン用原料酒(甘味果実酒)に対して、糖、イチゴ果汁、カシス果汁、ラズベリー果汁等を混合し、水で容量を1000Lに調整した。さらに炭酸ガスを2.2kgf/cm
2となるように含有させて、ベース果実酒を調製した。当該ベース果実酒のアルコール度数は5.0v/v%であった。
【0055】
(サンプル果実酒)
上記のベース果実酒に、クエン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酒石酸、及びリンゴ酸を種々の量で添加して、サンプル果実酒1〜15を製造した。比較例1〜4は4種類の市販の果実酒を購入して使用した。次に、サンプル果実酒1〜15及び比較例1〜4について、クエン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酒石酸、及びリンゴ酸の含有量を測定した。また、前述の方法を用いて総酸量を求めた。
【0056】
各果実酒中の有機酸の量は、高速液体クロマトグラフ(島津社製LC−10シリーズ)を用いて、以下の方法で測定した。
【0057】
使用機器:コントローラー(SCL−10A)、送液ポンプ(LC−10AD)、デガッサー(DGU−14A)、カラム槽(CTO−10AC)、オートサンプラー(SIL−10AD)、電気伝導度検出器(CDD−6A)、カラム(Shim−pack SCR−102H(8mm(I.D)×300mm(L))を2本直列)、ガードカラム(SCR−102H(6mm(I.D)×50mm(L)))
移動液:p−トルエンスルホン酸4.8gを1Lのメスフラスコに量り採り蒸留水にて定容し、それを使用時に5倍希釈し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過したものを移動液とした。また、カラムを通した後に反応させる液としてp−トルエンスルホン酸4.8g及びEDTA150mgとBis−Tris20.9gを1Lのメスフラスコに量り採り蒸留水にて定容し、それを使用時に5倍希釈し、0.45μmのメンブレンフィルターを用いて濾過したものを用いた。
【0058】
流量:1.6mL/分
検出:電気伝導度(Polarityは+に設定)
サンプル注入量:10μL
分析時間:30分
サンプル果実酒1〜15及び比較例1〜4について、クエン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸の含有量、及び総酸量を表1に示す。
【0059】
次に、各サンプル果実酒を試飲し、「爽快感」、「飲みやすさ」、「飲みごたえ」、「余韻」、「総合」の5項目について、5〜6名のパネラーで以下の基準(1〜5点)で官能評価試験を行った。
【0060】
<評価点の基準>
5点:良い
4点:やや良い
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
さらに、各パネラーの「総合」の評価点の平均点を総合評点として算出し、総合評点に応じて◎、○、△、及び×の記号を付した。各記号は以下の意味を有する。
【0061】
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
△:2点以上3点未満
×:2点未満
結果を表1に示す。表1に記載の通り、クエン酸、コハク酸、及び乳酸の含有量を本発明の範囲内に調整することで、本発明の効果が認められることが示された。具体的には、クエン酸、コハク酸、及び乳酸の含有量が本発明の範囲内であるサンプル果実酒2〜5、14、及び15は、官能評価の結果が全て◎又は○であり、飲みやすいことが実証された。一方で、クエン酸、コハク酸、及び乳酸のうち、一種類でも本発明の含有量範囲を外れたサンプル果実酒については、官能評価の結果が×又は△であることが示された。
【0062】
【表1】