【実施例】
【0017】
実施例に係る転写シート製造方法、及び転写シートにつき、
図1から
図9を参照して説明する。尚、以下
図1から
図9における転写体2,2,…の厚み等は、わかりやすく説明するために強調して表す。
図1に示されるように、本実施例の転写シート1は、例えば、壁面に対して、立体的に連続的な模様を形成して装飾するために用いられるものである。この転写シート1は、後述する転写体2,2,…がそれぞれ同一パターンに配置されて形成された複数の集合体21,21,…と、集合体21,21,…に貼着されるシート状の剥離紙3(剥離部材)と、集合体21,21,…を挟んだ剥離紙3の反対側で該集合体21,21,…を被覆して保持するシート状の台紙4(カバー部材)と、から主に構成されている。
【0018】
この転写シート1は、剥離紙3を剥がして集合体21,21,…を構成する後述の各複数の転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…(
図2参照)を露出させ、且つ台紙4とともに図示しない壁面に押し付けることにより、転写体2,2,…を該壁面に貼り付け、その後、台紙4を剥がすことにより、集合体21,21,…を壁面に対して転写するようになっている。また、この転写シート1は、同一のパターンの集合体21,21,…を複数備えているため、その集合体21,21,…を壁面の広範囲に亘って一度に複数転写できるようになっている。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、集合体21は、独立した複数の微細なドット状の転写体2,2,…が互いに離間して所定の配置パターンで集中して配置されることにより構成されている。このように、集合体21は、転写体2,2,…が互いに離間しているため、各粘着部2a,2a,…同士が影響し合うことがないばかりか、転写した壁面の質感を害することがない。また、集合体21は、複数の転写体2,2,…により構成されているため、互いの転写体2,2,…同士の隙間や凹凸感を利用して種々の表現を行うことができるようになっている。ここで言う種々の表現とは、例えば、モザイク手法のように転写体2,2,…とその隙間を利用した濃淡表現や、転写体2,2,…の厚みを利用した立体表現等のことを指す。
【0020】
本実施例の集合体21を構成する転写体2,2,…は、互いの各離間幅Xが1mm以下となるように配置されている。このように、転写体2,2,…同士の各離間幅Xを極めて小さくすることにより、例えば、集合体21を壁面の広範囲に複数転写した際に、転写体2,2,…同士の離間幅Xを利用した濃淡表現を細やかに行うことができる。
【0021】
また、転写体2は、後述するシート部材5を型抜き加工することにより形成されており、基部2bと、基部2bの片側に塗着された粘着部2aと、から成る。この転写体2は、平面視における幅寸法Y(直径)が略1mmとなっている。このように、極めて小さい転写体2,2,…を用いて集合体21を構成しているため、複数の転写体2,2,…同士の隙間を利用した濃淡表現をより細やかに行うことができる。
【0022】
転写体2の高さ寸法Z(粘着部2aを含む厚み)は、略0.15mmとなっている。すなわち、転写体2の幅寸法Yは、転写体2の高さ寸法Zの略7倍以下となっている。この略7倍という値は、幅寸法Yにおける粘着部2aの粘着力に対して、転写体2を壁面に安定して転写可能な高さ寸法Zの割合の最大値である。そのため、集合体21を転写時には、各転写体2,2,…を安定的に転写できるとともに、複数の転写体2,2,…で成す集合体21の凹凸表現を強調することができるようになっている。
【0023】
また、剥離紙3は、その外面に合成樹脂により剥離加工が施されている。すなわち、転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…の粘着力に関わらず、転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…から剥がしやすくなっており、剥離紙3を剥がしても、その剥離紙3に追従して台紙4から転写体2,2,…が剥がれることが無い。
【0024】
また、
図2に示されるように、台紙4は、転写体2,2,…側の面に、各転写体2,2,…の基部2b,2b,…に貼着して各転写体2,2,…を保持する保持部4a(弱粘着層)を有している。この保持部4aの粘着力は、転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…の粘着力よりも弱くなっているため、粘着部2a,2a,…により壁面に貼着された状態の転写体2,2,…から台紙4を剥がしやすくなっている。
【0025】
転写体2,2,…は、
図3に示される転写体形成装置6を用いて形成される。転写体形成装置6は、後述にて詳述する積層体7を載置する載置台8と、上下方向に延びる軸部材9,9,…(本実施例では4本)と、軸部材9,9,…に沿って移動する移動体10と、移動体10に対して着脱可能な刃型11(刃部材)と、を備えている。移動体10は、図示しない油圧式のロッドにより移動可能となっており、その移動が軸部材9,9,…によりガイドされている。尚、移動体10と刃型11とは、ネジやボルト等の固定具により着脱可能に固定されている。
【0026】
図4に示されるように、刃型11は、鋼板等の剛性部材により形成されたプレート状の板状部11aと、板状部11aの下面側に突出する複数の刃部11b,11b,…と、を備えている。刃部11bは、その側壁部11cが下方から見て略円形を成すように連続しており、刃部11bの内部が中空となっている。また、刃部11bの側壁部11cは、下方に向けて漸次先細りする形状を成し、すなわち、刃部11bの断面視において側壁部11cの内面11dが下方に向けて漸次拡径するテーパ状になっている。
【0027】
図5に示されるように、前述した積層体7は、転写体2,2,…の原紙となる前記シート部材5を、転写体2,2,…を形成時に使用する剥離紙3’の上方にスペーサ部材12を介して積層させたものである。このシート部材5は、シート状を成す樹脂製の基部2bの片側に粘着部2aが塗設されており、粘着部2aを下方側にしてスペーサ部材12上に貼着固定することで積層されている。
【0028】
また、スペーサ部材12は、例えばロール状に変形可能なボール紙等の厚紙から形成されている。このスペーサ部材12は、複数の刃部11b,11b,…がそれぞれ挿通可能な開孔12a,12a,…を備えており、この開孔12a,12a,…は、シート部材5により被覆されている。尚、このスペーサ部材12は、厚紙に限られず、プラスチックなどの合成樹脂から形成されていてもよいが、変形可能であることが好ましい。更に尚、スペーサ部材12の厚みは、後述するように転写体2,2,…と残存するシート部材5’とを確実に上下に分離させるという観点から、シート部材5の厚みよりも厚く形成されることが好ましい。
【0029】
次に、
図3及び
図5ないし
図9を用いて転写シート1の製造方法について説明する。先ず、前述したようにシート部材5を、その粘着部2aによりスペーサ部材12上に貼着固定させるとともに、スペーサ部材12を剥離紙3’の上方に積層固定して、積層体7を形成する。そして、転写体形成装置6の載置台8上に積層体7を載置するとともに、移動体10の下方に刃型11を取付ける(
図3参照)。このときには、転写体形成装置6に設けられた図示しないフォトセンサ等の位置決め手段によって、剥離紙3’に設けられた孔31,31,…(
図5参照)を検出することで、刃型11に対する積層体7の位置を位置決めする。
【0030】
そして、
図6に示されるように、刃型11を移動体10により積層体7に向けて進行させる。これにより、刃部11b,11b,…が、積層体7のシート部材5を切断して、複数の転写体2,2,…が形成される。このときには、シート部材5がスペーサ部材12上に粘着部2aにより貼着固定されているため、刃部11b,11b,…の押圧力によりシート部材5が位置ズレすることを防止できる。また、前述のように、転写体2,2,…は、集合して複数の集合体21,21,…を構成しているため、小さい刃型11であっても一度に大量の集合体21,21,…を形成でき、集合体21,21,…の生産効率が高い。
【0031】
その後、刃部11b,11b,…が剥離紙3’を上方から略3分の1程度切り込むまで更に移動体10を進行させると、転写体2,2,…が刃部11b,11b,…に押し込まれながら、スペーサ部材12の開孔12a,12a,…内をそれぞれ通過し、剥離紙3’の上面にその粘着部2a,2a,…により貼着配置される。これにより、転写体2,2,…が、開孔12a,12a,…を介してスペーサ部材12上に残存する不要部分であるシート部材5’から上下に分離される。このように、刃型11の刃部11b,11b,…で形成された複数の転写体2,2,…が、スペーサ部材12の開孔12a,12a,…内を通過するため、各転写体2,2,…を高い精度で剥離紙3’上に位置決め配置することができる。また、前述のように、各刃部11bの側壁部11cの各内面11dが下方に向けて漸次拡径するテーパ状になっていることから、転写体2,2,…が側壁部11cの各内面11dにより剥離紙3’側に押し付けられ、転写体2,2,…を剥離紙3’上に安定的に貼着させることができる。
【0032】
次いで、
図7に示されるように、移動体10に対して、刃型11に替えて複数の押圧部13a,13a,…を備えた押圧部材13を取付け、押圧部材13を移動体10により進行させる。この押圧部13a,13a,…は、各転写体2,2,…と対応する位置に設けられ、各転写体2,2,…側に突出しており、スペーサ部材12の開孔12a,12a,…内をそれぞれ通過して、転写体2,2,…を押圧する。これにより、転写体2,2,…が剥離紙3’に確実に定着する。
【0033】
その後、
図8に示されるように、スペーサ部材12上に残存するシート部材5’をスペーサ部材12と共に剥離紙3’から取外す。このときには、前述のように、転写体2,2,…が、スペーサ部材12上に残存するシート部材5’から上下に分離されているため、残存するシート部材5’の粘着部2aと各転写体2,2,…とが再度影響し合うことが無く、すなわち、本実施例のような平面視における幅寸法Yが略1mmに形成された寸法の小さな転写体2,2,…であっても剥離紙3’上に確実に貼着した状態にできる。
【0034】
また、転写体2,2,…を押圧部13a,13a,…により押圧することにより、転写体2,2,…が剥離紙3’上に確実に定着固定されるため、その後スペーサ部材12と残存するシート部材5’とを剥離紙3’から取外しても、各転写体2,2,…の配置状態が影響を受けることがない。
【0035】
更に、スペーサ部材12とスペーサ部材12上に残存するシート部材5’とを剥離紙3’上から一緒に取外すことができるので、スペーサ部材12及び残存するシート部材5’を取外す工程を簡略化できる。
【0036】
続いて、
図9(a)に示されるように、剥離紙3’に定着した転写体2,2,…に対して台紙4をその保持部4aにより貼り付け、図示しないローラ等により剥離紙3’、転写体2,2,…、及び台紙4を押圧する。その後、
図9(b)に示されるように、刃型11により傷3a,3a,…(
図9(a)参照)が付いた剥離紙3’を転写体2,2,…から取外す。そして、
図9(c)に示されるように、剥離紙3’とは別の新たな剥離紙3を転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…に貼り付けることにより、転写シート1が形成される。このように、剥離紙3’から別の新たな剥離紙3に取り替えることにより、剥離紙3’の傷3a,3a,…内に転写体2,2,…の粘着部2a,2a,…が液垂れすることを防止できるため、転写シート1を使用時に各転写体2,2,…と剥離紙3との剥離作業をスムーズに行うことができるようになる。
【0037】
尚、本実施例では、集合体21,21,…を壁面に転写して装飾を施す態様について説明したが、これに限られず、例えば、ポスターの印刷面等の転写対象面に立体感や濃淡を表現するために、複数の集合体を転写するようにしてもよいし、複数の集合体を上下に複数積層させて種々の立体構造物を形成してもよい。特に、立体構造物を形成する場合には、同一のパターンの集合体を一度に転写できることから、その製品の生産効率を高めることができる。
【0038】
また、転写シート1は、同一の形状にパターン化された集合体21,21,…を備えていたが、これに限らず、それぞれ異なるパターンの集合体を複数備えていてもよい。また、転写シート1は、集合体21を複数備えることに限られず、1つの集合体を有するものであってもよい。
【0039】
また、転写体2は、平面視における幅寸法Yが略1mmであることに限らないが、前記濃淡表現をより細やかに行うために、5mm以下であることが好ましい。また、転写体2は、略円形のドット形状に限られず、歪な楕円や矩形状、星形等の多角形等であってもよい。
【0040】
また、転写体2,2,…は、転写体形成装置6を使用せず、積層体7に対して手動で刃型11を押し付けて切断してもよい。更に、転写体2,2,…は、シート部材5を刃型11により切断することで形成されることに限られず、例えば、レーザ切断機や熱切断機によりシート部材5を切断して形成するようにしてもよい。
【0041】
また、開孔12a,12a,…は、複数の刃部11b,11b,…をそれぞれ挿通可能とする形状に設けられていたが、これに限られず、開孔は、複数個の刃部11b,11b,…が挿通できる大きな形状であってもよい。また、刃型11は、長手方向に走行するシート部材上を回転しながら切断するロータリ型の刃型等を利用して、シート部材を切断して複数の転写体を形成するとともに、その複数の転写体を剥離紙上に貼着するようにしてもよい。
【0042】
また、転写シート1の製造方法について、スペーサ部材12とスペーサ部材12上に残存するシート部材5’とを剥離紙3’上から一緒に取外すことについて実施例を用いて示したが、例えば転写体を形成し、剥離紙上に貼着した後、スペーサ部材12及び残存するシート部材5’を剥離紙3’上から一緒に取外し、更に残存するシート部材5’のみをスペーサ部材12から取り外し、その後残存するシート部材5’のみをスライドさせてスペーサ部材12上にシート部材5を配置して切断工程へ移行してスペーサ部材12を再利用するようにしてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。