【実施例】
【0022】
図1に示されるように、本発明の実施例に係る道板10は、その前端が自動車運搬用車両1の下段デッキ(自動車積載用デッキ)2の後端部に設けられた掛止部3に掛けられた状態で、後端が路面4に接触して、路面4と掛止部3との間に傾斜した車路を形成するものである。
図1の符号5は、自動車運搬用車両1に道板10を通って乗降される自動車を示す。
【0023】
道板10は、
図2、
図3に示されているように、車両幅方向に長く、自動車運搬用車両1の掛止部3に引掛け可能のフック部12と、フック部12が自動車運搬用車両1の掛止部3に引掛けられている状態で、路面4に接触する路面側端末材14と、フック部12及び路面側端末材14における、これらの車両幅方向両端部に接続された左右一対のサイドメンバー16A、16Bと、フック部12及び路面側端末材14の間に、長手方向に間隔をおいて配置され、左右一対のサイドメンバー16A、16Bを車両幅方向に連結する複数の横桁18とを備えて構成されている。
【0024】
サイドメンバー16A、16B(以下、これらを総称する場合は単に16とする)は、
図5、
図6に示されるように、軽量棒状部材20と、該軽量棒状部材20の上面に設けられた上面補強部材26及び下面に設けられた下面補強部材28とから構成されている。
【0025】
軽量棒状部材20は、
図8A、
図8B、
図8Cに示されるように、芯材22、及び、該芯材22の外周に巻付け接着された補強部材24から構成されている。
【0026】
軽量棒状部材20における芯材22は、断面が四角形の中空発泡樹脂製であり、例えば積水化学株式会社製の発泡樹脂フォーマック(登録商標)を独立発泡させたものであり、比重は0.057、耐熱温度は115℃である。この実施例において、前記断面四角形の部材は、板状に発泡した樹脂を
図5あるいは
図8Aに示されるように、中空四角形に組み立て、接着して構成されている。
【0027】
芯材22に巻付けられる補強部材24は、炭素繊維平織プリプレグシート(以下、平織シート)24Aを2枚重ねで、芯材22の外周に少なくとも2周巻付けて接着剤により接着されたものである。軽量棒状部材20の断面剛性を強化するためには最低2周巻付ける必要があるが、製造コストとの関係で最大5周巻付ければよい。
【0028】
平織シート24Aを2枚重ねで同時に巻付けて接着すると、巻付け状態で、繊維の重複がなく、強度の均一化及び樹脂材料の使用量の低減を図ることができる。平織シート24A2枚を順次に巻付けた場合は、2枚のシートの繊維の位置同士が重なったり、外側に巻付けたシートの繊維が内側のシートの繊維に引掛かったりして重複が生じる。
【0029】
なお、芯材22は、
図7に示されるように、長手方向中間部分が断面形状が均一の直線状のストレート部20Aと、前端側の、フック部12に差込み可能な差込み部20Bと、後端側の路面側部20Cとから構成されている。差込み部20Bは、上面が下向きに傾斜する先端先細り形状であり、また、路面側部20Cは、ストレート部20Aの後端から、下面が上向きに傾斜して、後端側ほど薄くなり、且つ、道板幅方向内側に広がるテーパ形状とされている。
【0030】
また、軽量棒状部材20は芯材22に対応して、ストレート部20Aと、差込み部20Bと、路面側部20Cとから構成され(
図11参照)ている。
【0031】
図4に示されるように、上面補強部材26は、炭素繊維の方向が長手方向とされた炭素繊維UDプリプレグシート(以下、UDシート)27を複数枚重ねて、軽量棒状部材20の上面に接着した構成となっている。
【0032】
下面補強部材28は、炭素繊維の方向が長手方向とされた、炭素繊維UDプリプレグシート(以下、UDシート)29を複数枚重ねて、軽量棒状部材20の下面に接着した構成となっている。
【0033】
フック部12は、
図4、
図9に示されるように、サイドメンバー差込み接着部12Aとフック部本体12Bとを有する構成であって、サイドメンバー差込み接着部12Aは、左右一対のサイドメンバー16A、16Bの軽量棒状部材20の差込み部20Bが挿入可能とされ、該挿入部分を上下から挟み込む、断面が横向きU字形状とされている。
【0034】
フック部本体12Bは、サイドメンバー差込み接着部12Aの前側にあって、
図4に拡大して示されるように、自動車運搬用車両1の掛止部3に上方から引掛けられるように、下向きのU字形状とされている。
【0035】
上面補強部材26を構成するUDシート27は、
図4に示されるように、軽量棒状部材20の前端の差込み部20Bが、サイドメンバー差込み接着部12A内に挿入接着された状態で、軽量棒状部材20の上面から、サイドメンバー差込み接着部12Aの上面にかけて連続的に覆った状態で、軽量棒状部材20及びサイドメンバー差込み接着部12Aの上面に接着されている。
【0036】
即ち、サイドメンバー差込み接着部12Aの上面である傾斜面13は、上面補強部材26の傾斜面13に沿って折曲げられた折曲げ部分であるカバー部26Aにより覆われている。
【0037】
ここで、サイドメンバー差込み接着部12Aの上面は、前方に5度以上10度以下の傾斜角θで傾く傾斜面13とされている。従って、軽量棒状部材20のストレート部20Aの上面に対して、傾斜面13は5度以上10度以下の角度を成すようにされている。
【0038】
傾斜面13の傾斜角度を5度以上としたのは、傾斜面13から上面補強部材26が剥がれ難いからであり、10度以下としたのは、UDシート27、29の折曲げ限界を考慮したものである。
【0039】
また、上面補強部材26は、
図11に示されるように、ストレート部20Aと同一幅で、路面側部20Cと重なる部分で、平面内で幅方向内側に屈曲された後端側屈曲炭素繊維UDプリプレグシート(以下、後端側屈曲UDシート)27Aと、長手方向全体にわたってストレート部20Aと同幅のストレート炭素繊維UDプリプレグシート(以下、ストレートUDシート)27Bとが交互に接着された状態の構成となっている。
【0040】
図11に示されるように、上面補強部材26の最も上面のUDシートは、軽量棒状部材20の上面と同一平面形状の上面カバー炭素繊維UDプリプレグシート(以下、上面カバーUDシート)27Cとされている。なお、これらUDシート27、27A、27B、27Cは、上面補強部材26の裏面となる直平面と平行になるようにされている。
【0041】
即ち、上面補強部材26においては、後端側が道板幅方向内側に広がった上面カバーUDシート27Cと軽量棒状部材20との間に、後端側屈曲UDシート27Aと、ストレートUDシート27Bとを重ねて接着することによって、軽量棒状部材20の上面と同一平面形状を構成している。
【0042】
図4に示されるように、下面補強部材28の厚さ方向上側の一部の前端部は、軽量棒状部材20の差込み部20Bの下側を覆った状態のままで、サイドメンバー差込み接着部12A内に挿入接着される内側前端部28Aとされ、下面補強部材28の厚さ方向下側の残りの前端部は、上記の状態でサイドメンバー差込み接着部12Aの下側面を覆う下側前端部28Bとされている。
【0043】
下面補強部材28を構成する複数枚のUDシートは、軽量棒状部材20のストレート部20Aから路面側部20Cに至るとき、所定角度で上向きに屈折されている。
【0044】
また、下面補強部材28における厚さ方向最も下側の底面カバー炭素繊維UDプリプレグシート(以下、底面カバーUDシート)29Aは、その平面形状が、軽量棒状部材20の下面と同一となるようにされていて、その前端が、上記サイドメンバー差込み接着部12A内に入り込んで接着される内側前端部28Aと、サイドメンバー差込み接着部12Aの下面を覆う下側前端部28Bとに、厚さ方向に分岐されている。
【0045】
下面補強部材28における底面カバーUDシート29Aと、軽量棒状部材20の下側面との間の部分は、軽量棒状部材20とともに、前端部が、平面視で道板幅方向内側に屈曲され、サイドメンバー差込み接着部12A内に差込み接着される前端側屈曲炭素繊維UDプリプレグシート(以下、前端側屈曲UDシート)29Bと、後端部が、平面視で道板幅方向内側に屈曲された後端側屈曲炭素繊維UDプリプレグシート(以下、後端側屈曲UDシート)29Cとを交互に複数枚重ねて接着された構成となっている。
【0046】
下面補強部材28においては、底面カバーUDシート29Aと軽量棒状部材20の下側面との間に、前端側屈曲UDシート29Bと、後端側屈曲UDシート29Cとを重ねて接着することにより、軽量棒状部材20の下面と同一平面形状を構成している。
【0047】
路面側端末材14は、フック部12と連結されたサイドメンバー16A、16Bに、
図6に示されるように取付けられて、一対のサイドメンバー16A、16Bの後端を強固に連結する。
【0048】
詳細には、路面側端末材14は、サイドメンバー16A、16Bを上側から押え込む押さえ部材14Aと、サイドメンバー16A、16Bの後端の下側面及び後端面を覆う断面L字形状の端末材本体14Bと、端末材本体14Bの下側角部に取付けられたゴム板14Cとから構成されている。
【0049】
横桁18は、
図5に示されるように、道板幅方向両端下側が切り欠かれた断面扁平四角形状の横桁本体18Aと、該横桁本体18Aの下側面をサイドメンバー16A、16Bの道板幅方向の内側面に連結するためのアングル部材18Bとを備えて構成され、該横桁本体18Aの道板幅方向両端下側に形成された切欠18C内側面のサイドメンバー16A、16Bの表面に固着された構成となっている。
【0050】
上記のような構成の道板10は、サイドメンバー16A、16Bを構成する軽量棒状部材20の大部分が、断面四角形の中空発泡部材からなる芯材22により構成されるとともに、芯材22に平織シート24Aを巻付けてなる補強部材24によって、断面剛性が大幅に向上され、従って、重量を大幅に軽減することができる。
【0051】
実際に、従来のアルミニウム製の道板は19.9kgであったが、本実施例の道板10は、15.1kgであり重量を24%軽減できた。
【0052】
また、従来の技術においては、軽量化された道板は自動車の下段デッキへの乗降に際して、自動車の重さにより大きくたわむことが予想されたが、本実施例では、軽量棒状部材20の上下面に、長手方向に繊維がある炭素繊維UDプリプレグシートを複数枚重ねて接着することによって重量の増大を少なくして、且つ、曲げ剛性を大幅に向上することができた。
【0053】
更に、サイドメンバー16の上面は、炭素繊維UDプリプレグシートを複数枚重ねて接着した上面補強部材26から構成しているので、アルミニウムと比較して、重量を低減させた上に、サイドメンバー16の曲げ剛性を増大することができる。
【0054】
また、上面補強部材26及び下面補強部材28が、フック部12のサイドメンバー差込み接着部12Aの上面及び下面を軽量棒状部材20の上面及び下面から連続的に覆って形成されているので、フック部12にかかる自動車5の荷重を均一に分散して、サイドメンバー16A、16Bとフック部12との負荷が集中することを抑制している。
【0055】
上記の後端側屈曲UDシート27A、29C、前端側屈曲UDシート29Bは、いずれも幅が均一であるので、平面内で屈曲されていても、これが上記角度θの範囲であれば、ストレートUDシート27Bと同様の引張強
さを維持することができる。
【0056】
次に、
図7〜
図12を参照して、本発明の実施例に係る道板10の製造過程について説明する。
【0057】
まず、
図7に示されるように、巻付け用金型30上に2枚重ねの平織シート24Aを、
図7において示される上下方向に、前後方向の縦糸が重ならないように、わずかにずらして配置する。
【0058】
次に、軽量棒状部材20の芯材22を、横向きに、且つ、前端が前方向になるように配置し、この状態で、接着剤を用いながら、2枚重ねの平織シート24Aを芯材22の外周に巻付けつつ接着する。
【0059】
前述のように、2枚重ねの平織シート24Aは、同時に芯材22に巻付けられ、且つ、接着されるので、繊維の重なりが抑制され、従って、接着後の表面が均一になり、繊維の重なりによる凹凸が殆ど生じない。この巻付けの過程を、
図8A〜
図8Cに示す。
【0060】
平織シート24Aを接着する接着剤が硬化した後は、
図9及び
図10に示される、サイドメンバー形成金型40により、サイドメンバー16A、16B、及びこれらにフック部12が連結した中間体を形成する。
【0061】
サイドメンバー形成金型40は、その一端中央部に、軽量棒状部材20における、上方に屈折する路面側部20Cに対応して屈折して、突出された折曲突出部42を有している金型本体41と、この金型本体41の上面41Aにおける幅方向両側に配置される左右一対の外幅規制金型43A、43Bと、金型本体41の中央部に載置して配置される内幅規制金型44とを備えて構成されている。
図9の符号45は、内幅規制金型44の中央の隙間に設けられるスペーサを示す。
【0062】
サイドメンバー形成金型40は、
図10に示されるように組み立てられ、金型本体41の上面41Aの中央位置に内幅規制金型44が配置され、その両側からサイドメンバー形成用隙間46A、46Bを間にして、外幅規制金型43A、43Bが配置される。
【0063】
外幅規制金型43A、43Bの間の位置において、金型本体41の上面41Aは、サイドメンバー16A、16Bの下面を形成するようにされている。
【0064】
サイドメンバー形成用隙間46A、46Bの底面(上面41A)に、底面カバーUDシート29Aを、複数枚のUDシートを接着しながら重ねて形成する(
図11参照)。形成された底面カバーUDシート29Aの前端部に、フック部12をサイドメンバー差込み接着部12Aに接続する。このとき、サイドメンバー差込み接着部12Aの下側面は、底面カバーUDシート29Aの前端の分岐された部分の間に入り込む。
【0065】
次に、前端側屈曲UDシート29Bと後端側屈曲UDシート29Cとを交互に重ね合わせながら底面カバーUDシート29A上に接着して、下面補強部材28を形成する。下面補強部材28上には、軽量棒状部材20を載せて接着する。
【0066】
なお、前端側屈曲UDシート29Bと後端側屈曲UDシート29Cの前端部は、フック部12のサイドメンバー差込み接着部12A内で、フック部12に接着される。
【0067】
次に、接着された軽量棒状部材20の上面に、後端側屈曲UDシート27AとストレートUDシート27Bとを交互に重ねて接着していく。
【0068】
このとき、これら後端側屈曲UDシート27AとストレートUDシート27Bの前端部は、フック部12におけるサイドメンバー差込み接着部12Aの上側の傾斜面13を覆うようにして接着固定する。
【0069】
上記交互に重ねて接着された後端側屈曲UDシート27AとストレートUDシート27Bの上面には、上面カバーUDシート27Cが接着され、これによって、上面補強部材26が完成し、同時にフック部12に取付けられた状態の一対のサイドメンバー16A、16Bからなる中間体が完成する。
【0070】
この中間体に対しては、横桁18を順次取付け、最後に、路面側端末材14をサイドメンバー16A、16Bの後端部を連結するようにして取付けて、道板10の製造が完了する。
【0071】
上記軽量棒状部材20は、本実施例においては自動車運搬車両用の道板に適用されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、重量軽減と断面剛性強化の要求される棒状材に一般的に適用されるものである。