(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467300
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】蒸気システムの異常検出システム
(51)【国際特許分類】
F16T 1/48 20060101AFI20190204BHJP
F22B 37/26 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
F16T1/48 D
F22B37/26 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-126604(P2015-126604)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-9070(P2017-9070A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 健
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−071697(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/004602(WO,A1)
【文献】
特開昭59−222697(JP,A)
【文献】
特開平06−258198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/00, 1/22, 1/48
F16K 37/00
F22B 37/26
G01M 99/00
G01N 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が使用される蒸気使用部と、該蒸気使用部と配管接続され、該蒸気使用部で蒸気が使用されて発生したドレンを通過させる弁とを備えた蒸気システムにおいて、上記弁の異常状態を検出する蒸気システムの異常検出システムであって、
上記弁に取り付けられ、該弁の振動周波数を検出する第1センサと、
上記蒸気使用部またはその近傍に取り付けられ、該蒸気使用部の振動周波数を検出する第2センサと、
上記第1センサによって検出された振動周波数の音圧レベルが所定値以上になった時に、上記第2センサによって検出された振動周波数の音圧レベルが上記所定値以上になっている場合は上記弁は正常であると判定し、上記第2センサによって検出された振動周波数の音圧レベルが上記所定値未満になっている場合は上記弁は異常であると判定する異常判定部とを備えている
ことを特徴とする蒸気システムの異常検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気システムの異常検出システムにおいて、
上記弁は、スチームトラップである
ことを特徴とする蒸気システムの異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、蒸気システムにおいてドレンを通過させる弁の異常状態を検出する異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気が使用される蒸気使用部(蒸気タービン等)を備えた蒸気システムが知られている。この種の蒸気システムでは、蒸気使用部の下流側にスチームトラップ等の弁が設けられ、蒸気使用部で蒸気が使用されて発生したドレンが弁を介して排出される。また、上述したような蒸気システムにおける弁の異常状態を検出する技術が、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1の検出技術は、振動センサ(振動検出部)をスチームトラップに接触させて該スチームトラップの振動を検出し、その検出した振動のレベルに基づいてスチームトラップの異常状態が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−4993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の検出技術では、誤検出する場合があった。即ち、蒸気使用部(特に、蒸気タービン)で発生した振動がスチームトラップに伝わり、スチームトラップが振動しその振動が振動センサによって検出される。そのため、スチームトラップは正常状態であるにも拘わらず、スチームトラップが異常状態であると誤判定されてしまう場合があった。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸気システムにおけるスチームトラップ等の弁の異常状態を検出する異常検出システムにおいて、誤検出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、蒸気が使用される蒸気使用部と、該蒸気使用部と配管接続され、該蒸気使用部で蒸気が使用されて発生したドレンを通過させる弁とを備えた蒸気システムにおいて、上記弁の異常状態を検出する蒸気システムの異常検出システムを前提としている。本願の異常検出システムは、第1センサおよび第2センサと、異常判定部とを備えている。上記第1センサは、上記弁に取り付けられ、該弁の振動を検出するものである。上記第2センサは、上記蒸気使用部またはその近傍に取り付けられ、該蒸気使用部の振動を検出するものである。上記異常判定部は、上記第1センサが振動を検出した時に、上記第2センサが振動を検出した場合は上記弁は正常であると判定し、上記第2センサが振動を検出していない場合は上記弁は異常であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本願の蒸気システムの異常判定システムによれば、2つのセンサのうち第1センサのみが振動を検出した場合は、弁は異常状態であると判定される。つまり、第1センサによって検出された弁の振動は蒸気使用部の振動によるものではなく弁自身によるものであるとして、弁は異常状態であると判定することができる。また、第1センサおよび第2センサの両方が同時期に振動を検出した場合は、弁は正常状態であると判定される。つまり、第1センサによって検出された弁の振動は弁自身によるものではなく蒸気使用部の振動によるものであるとして、弁は正常状態であると判定することができる。これにより、蒸気使用部の振動によって起こる弁の振動に基づいて異常状態であるとする誤判定を防止することができる。したがって、弁の異常検出の誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蒸気システムの異常検出システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1センサおよび第2センサの動作状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の蒸気システム1は、蒸気使用部2とスチームトラップ3を備えている。そして、蒸気システム1には本願の請求項に係る異常検出システム10が設けられている。
【0011】
蒸気使用部2は、高温高圧の蒸気が使用されてドレン(復水)が発生するものである。具体的に、蒸気使用部2は蒸気によって羽根車を回転させ動力を得る蒸気タービンである。蒸気使用部2には、蒸気供給管4およびドレン排出管5が接続されている。蒸気使用部2では、ボイラー等の蒸気生成部(図示省略)から蒸気供給管4を通じて高温高圧の蒸気が供給される。また、蒸気使用部2では、羽根車の回転に使用された蒸気の一部が凝縮してドレン(復水)となりドレン排出管5に排出される。なお、図示しないが、蒸気使用部2では使用された残りの蒸気は別の配管に排出される。
【0012】
スチームトラップ3は、蒸気使用部2の下流側であるドレン排出管5に設けられている。スチームトラップ3は、蒸気使用部2からドレン排出管5を介してドレンまたは蒸気混じりのドレンが流入する。そして、スチームトラップ3は、流入したドレンのみを自動的に出口部から排出するものである。つまり、スチームトラップ3は、蒸気使用部2と配管接続され、蒸気使用部2で蒸気が使用されて発生したドレン(復水)を通過させる弁である。
【0013】
異常検出システム10は、スチームトラップ3の異常状態を検出するものである。本実施形態において、スチームトラップ3の異常状態は蒸気漏れ(蒸気の排出)が生じている状態である。異常検出システム10は、2つのセンサ11,12(第1センサ11、第2センサ12)と、異常判定部13とを備えている。
【0014】
2つのセンサ11,12は、それぞれ、対象物に接触してその対象物の振動(例えば、40キロヘルツの振動周波数)を検出するものである。具体的に、第1センサ11は、スチームトラップ3に取り付けられ、スチームトラップ3の振動周波数を検出する。第2センサ12は、蒸気使用部2の近傍に位置するドレン排出管5に取り付けられ、ドレン排出管5の振動周波数を検出する。第2センサ12によって検出される振動周波数は、蒸気使用部2の振動周波数に相当する。そして、第1センサ11および第2センサ12は、検出した振動周波数の大きさ(音圧レベル)(以下、検出値という。)が所定値以上になると、信号(ON信号)を異常判定部13に送信する。上述した所定値は、第1センサ11および第2センサ12について同じ値とすることができる。
【0015】
スチームトラップ3では、流体が流れるときに振動が発生する。そして、このスチームトラップ3の振動は、蒸気漏れが生じるとドレンが正常に排出されているときよりも大きくなる。上述した所定値は、スチームトラップ3で蒸気漏れが生じたときに発生する振動周波数の大きさを示す値に予め設定されている。
【0016】
異常判定部13は、第1センサ11および第2センサ12からの信号の組み合わせに基づいて、スチームトラップ3が異常状態であるか否かを判定するように構成されている。具体的に、異常判定部13の判定動作について
図2も参照しながら説明する。第1センサ11および第2センサ12の両方からON信号が異常判定部13に送信された場合(
図2の時間t1)、異常判定部13はスチームトラップ3が正常状態であると判定する。また、2つのうち第1センサ11からのみON信号が異常判定部13に送信された場合(
図2の時間t3)、異常判定部13はスチームトラップ3が異常状態であると判定する。なお、当然ではあるが、2つのうち第2センサ12からのみON信号が異常判定部13に送信された場合(
図2の時間t2)、異常判定部13はスチームトラップ3が正常状態であると判定する。
【0017】
つまり、本実施形態の異常判定部13は、第1センサ11の検出値が所定値以上になった時に、第2センサ12の検出値も所定値以上になっている場合、スチームトラップ3は正常であると判定する。また、異常判定部13は、第1センサ11の検出値が所定値以上になった時に、第2センサの検出値が所定値未満である場合、スチームトラップ3は異常であると判定する。
【0018】
以上のように、上記実施形態の異常検出システム10によれば、2つのセンサ11,12のうち第1センサの検出値のみが所定値以上になった場合は、スチームトラップ3は異常状態であると判定される。つまり、スチームトラップ3の振動周波数の大きさのみが所定値以上になった場合、スチームトラップ3の振動は蒸気使用部2の振動が伝達されたものではなくスチームトラップ3自身によるものであると把握できる。したがって、この場合、スチームトラップ3は異常状態であると判定することができる。
【0019】
また、第1センサおよび第2センサの両方の検出値が同時期に所定値以上になった場合は、スチームトラップ3は正常状態であると判定される。つまり、蒸気使用部2およびスチームトラップ3の両方の振動周波数の大きさが所定値以上になった場合、スチームトラップ3の振動はスチームトラップ3自身によるものではなく蒸気使用部2の振動が伝達されたものであると把握できる。したがって、この場合、スチームトラップ3は正常状態であると判定することができる。
【0020】
以上により、異常検出システム10によれば、蒸気使用部2の振動が伝達されて起こるスチームトラップ3の振動に基づいて異常状態であるとする誤判定を防止することができる。したがって、スチームトラップ3の異常検出の誤検出を防止することができる。
【0021】
また、本願の異常検出システム10は、上記実施形態のように蒸気使用部2が蒸気タービンである場合は特に有効である。即ち、蒸気タービンは比較的大きな振動が発生するところ、その蒸気タービンの振動によるスチームトラップ3の振動が発生しやすくなるが、この場合でもスチームトラップ3の異常検出の誤検出を防止することができる。
【0022】
なお、上記実施形態の異常検出システム10では異常検出対象をスチームトラップ3としたが、その他の弁類を異常検出対象としてもよい。つまり、本願に開示の技術は、蒸気使用部2と配管接続され、蒸気使用部2のドレンを通過させる弁であって、振動に基づいて異常状態を検出することができる弁であれば同様に適用することができる。
【0023】
また、上記実施形態の異常検出システム10において、第2センサ12は蒸気使用部2に取り付けるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本願に開示の技術は、蒸気システムにおいてドレンを通過させる弁の異常状態を検出する異常検出システムについて有用である。
【符号の説明】
【0025】
1 蒸気システム
2 蒸気使用部
3 スチームトラップ(弁)
5 ドレン排出管(配管)
10 異常検出システム
11 第1センサ
12 第2センサ
13 異常判定部