(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添加剤化合物は、非水電解質全体の質量を100mass%としたときに、0.01mass%以上5.0mass%以下で含まれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の非水電解質及び非水電解質二次電池を、リチウムイオン二次電池用非水電解質及びそれを用いたリチウムイオン二次電池で実施した形態として、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
[実施形態1]
本形態の二次電池は、
図1にその構成を模式的に示したリチウムイオン二次電池1である。リチウムイオン二次電池1は、正極2,負極3,非水電解質4を有する。
【0015】
[非水電解質]
非水電解質4は、支持電解質と、非水溶媒と、上記の(1)式で示される添加剤化合物と、を有する。本形態の非水電解質4は、支持電解質及び添加剤化合物が非水溶媒に溶解してなる。
【0016】
支持電解質は、リチウムを含有するものであること以外は限定されるものではない。例えば、LiPF
6,LiBF
4,LiClO
4及びLiAsF
6から選ばれる無機塩,これらの無機塩の誘導体,LiSO
3CF
3,LiC(SO
3CF
3)
3及びLiN(SO
2CF
3)
2,LiN(SO
2C
2F
5)
2,LiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9),から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。これらの支持電解質は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持電解質の濃度についても特に限定されるものではなく、支持電解質及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。具体的には、支持電解質が非水電解質4において、0.7〜1.4mol/Lの割合となるように含有することが好ましく、0.9〜1.1mol/Lの割合となるように含有することがより好ましい。
【0017】
非水溶媒は、支持電解質を溶解する。非水溶媒は、支持電解質を溶解するものであること以外は限定されるものではない。例えば、カーボネート類,ハロゲン化炭化水素,エーテル類,ケトン類,ニトリル類,ラクトン類,オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート(EC),1,2−ジメトキシエタン,ジメチルカーボネート(DMC),ジエチルカーボネート(DEC),エチルメチルカーボネート(EMC),ビニレンカーボネート(VC)等及びそれらの混合溶媒が好ましい。これらの有機溶媒のうち、特にカーボネート類,エーテル類からなる群より選ばれた1種以上の非水溶媒を用いることが、支持電解質の溶解性、誘電率及び粘度において優れ、リチウムイオン二次電池1の充放電効率が高くなるため好ましい。
【0018】
添加剤化合物は、上記の(1)式で示した化合物である。(1)式で示したように、本形態で加えられる添加剤化合物は、ボロキシン環に、Oを介してシリル基(例えば、アルキルシリル基,トリアルキルシリル基)が結合した化合物である。
【0019】
添加剤化合物は、非水電解質4において、非水溶媒に溶解する。非水電解質4は、添加剤化合物が溶解することで、充放電を繰り返しても電池容量の低下が抑えられた非水電解質電池を得られる。
【0020】
具体的には、添加剤化合物は、電池を組み立てた後、充放電によるコンディショニングを行った際に、電極(正極)の表面で支持電解質及び非水溶媒よりも先に分解し、電極(正極)表面に被膜を形成する。この添加剤化合物に由来する被膜は、電極(正極)の表面と化学的結合を有することで高い安定性を示す。従って、充電電圧が高い電極(正極)においても被膜が分解されず、以降の副反応である電解質の酸化分解が低減され、電解質中の継続的なリチウム消費を抑制することができる。この結果、充放電による電池容量の低下を大幅に抑制できる。
【0021】
添加剤化合物は、上記の(1)式で示した化合物であり、ボロキシン環に、Oを介してシリル基(アルキルシリル基,トリアルキルシリル基)が結合した化合物である。シリル基に結合するアルキル基の炭素数が大きくなればなるほど、非水溶媒に溶解しにくくなり、炭素数が9以上となると、非水溶媒に溶解しなくなる。R
1〜R
9のそれぞれは、炭素数4以下のアルキル基(炭素数ゼロの水素原子を含む)より選ばれることがより好ましい。添加剤化合物のR
1〜R
9のそれぞれは、後述の実施例で用いたように、炭素数が1〜2の鎖状のアルキル基であることが最も好ましい。
【0022】
上記の(1)式で示した化合物において、シリル基に結合したアルキル基は、お互いに架橋していてもよい。お互いの架橋とは、R
1〜R
9のアルキル基のいずれかが、別のアルキル基と架橋した状態を示す。
シリル基に結合したアルキル基(R
1〜R
9)が別のアルキル基と架橋していない鎖状であることがより好ましい。
【0023】
本形態の添加剤化合物は、
1H−NMRにより得られるスペクトルにおいて、化学シフト−1.0ppm〜7.0ppmの間にピークを持つことが好ましい。
1H−NMRによると、R
1〜R
9の水素の状態を観察できる。化学シフト−1.0ppm〜7.0ppmの間にピークを持つことで、上記の(1)式で示した化合物となる。
1H−NMRによりスペクトルを得る方法については、限定されるものではなく、市販の測定装置を用いて得られる。
【0024】
本形態の添加剤化合物は、
13C−NMRの化学シフトにより得られるスペクトルにおいて、化学シフト0.0ppm〜140ppmの間にピークを持つことが好ましい。
13C−NMRによると、R
1〜R
9のアルキル基の炭素の状態を観察できる。化学シフト0.0ppm〜140ppmの間にピークを持つことで、上記の(1)式で示した化合物となる。
13C−NMRによりスペクトルを得る方法については、限定されるものではなく、市販の測定装置を用いて得られる。
【0025】
本形態の添加剤化合物は、
11B−NMRの化学シフトにより得られるスペクトルにおいて、化学シフト−30ppm〜30ppmの間にピークを持つことが好ましい。
11B−NMRによると、ボロキシン環のホウ素の状態を観察できる。化学シフト−30ppm〜30ppmの間にピークを持つことで、上記の(1)式で示した化合物となる。
11B−NMRによりスペクトルを得る方法については、限定されるものではなく、市販の測定装置を用いて得られる。
【0026】
添加剤化合物は、非水電解質4全体の質量を100mass%としたときに、0.01mass%以上5.0mass%以下で含まれることが好ましい。添加剤化合物がこの割合で含有することで、上記の効果を確実に発揮できる。0.01mass%未満では、添加剤化合物の含有割合が少なく、添加の効果が十分に発揮できなくなる。また、5.0mass%を超えて添加されても、非水溶媒へ十分に溶解できなくなる。より好ましい割合は、0.1〜2.0mass%である。
【0027】
添加剤化合物は、上記の(1)式で示した化合物であれば、具体的な構成(組成)が限定されるものではない。上記の(1)式で示した化合物に含まれる異なる組成の化合物の混合物であってもよい。
【0028】
また、非水電解質4は、添加剤化合物以外の、従来公知の添加剤を添加していてもよい。この場合、従来公知の添加剤の添加量(添加割合)は限定されるものではないが、添加剤化合物の効果を低下させないことが好ましい。
【0029】
[正極]
正極2は、正極集電体20の表面に、正極活物質を含む正極活物質層21を有する。正極活物質層21は、正極活物質と導電材と結着材とを混合して得られた正極合材を正極集電体20の表面に塗布、乾燥して形成される(塗工して形成される)。導電材と結着材は任意であり、混合しなくともよい。正極合材は、適当な溶媒によりペースト状(スラリー状)をなしている。
【0030】
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な正極活物質を有するものであること以外は限定されるものではない。例えば、種々の酸化物、硫化物、リチウム含有酸化物、導電性高分子などを挙げることができる。正極活物質としては、リチウム−遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。
【0031】
本形態の正極活物質は、充電電圧が高い化合物であることが好ましく、充電電圧が4.3V以上であることがより好ましい。本形態の非水電解質4の添加剤化合物は、このように高い充電電圧でも分解することなく被膜が維持される。このため、高容量を得られる、充電電圧が高い正極活物質を用いることが好ましい。
【0032】
このような正極活物質としては、リチウム−遷移金属複合酸化物を用いることが好ましく、層状構造を有する複合酸化物や、スピネル構造を有する複合酸化物や、ポリアニオン構造を有する複合酸化物を用いることがより好ましい。
【0033】
層状構造を有する複合酸化物は、例えば、LiNi
xCo
yMn
zO
2(x+y+z=1、0≦x,y,z≦1)、LiNi
xAl
wMn
zO
2(x+w+z=1、0≦x,w,z≦1)、LiNi
xCo
yAl
wMn
zO
2(x+y+w+z=1、0≦x,y,w,z≦1)を挙げることができる。後述の実施例1〜3で用いられるLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を例示できる。
【0034】
スピネルを有する複合酸化物は、例えば、LiNi
xM
yMn
zO
4(x+y+z=2、0≦x,y,z≦2)を挙げることができる。なお、M:Co,Fe,Cu,Cr,Mg,Ca,Zn,Tiより選ばれる1種以上を任意で含有可能である。後述の実施例4〜6で用いられるLiNi
0.5Mn
1.5O
4を例示できる。
【0035】
ポリアニオン構造を有する複合酸化物は、例えば、Li
αM
βX
ηO
4−γZ
γとすることができる。(なお、M:Mn,Co,Ni,Fe,Cu,Cr,Mg,Ca,Zn,Tiより選ばれる1種以上、X:P,As,Si,Mo,Geより選ばれる1種以上、Z:Al,Mg,Ca,Zn,Tiより選ばれる1種以上を任意で含有可能、0<α≦2.0、0≦β<1.5、1≦η≦1.5、0≦γ≦1.5)これらのうち、オリビン構造のLiMn
1−xFe
xPO
4(0≦x<0.5,Mn>Fe)、LiMnPO
4、LiCoPO
4を挙げることができる。
【0036】
なお、正極活物質は、これらの複合酸化物以外に、従来公知の正極活物質と、の混合物であってもよい。この場合、その混合割合が限定されるものではない。上記した複合酸化物がリッチな状態、すなわち、正極活物質のLi原子の合計数を100%としたときに、上記した複合酸化物のLi原子数が50%以上であることが好ましい。また、正極活物質の合計の質量を100mass%としたときに、上記した複合酸化物の質量が50mass%以上であることが好ましい。
【0037】
正極活物質において、上記した複合酸化物及び他の正極活物質は、その製造方法が限定されるものではなく、従来公知の製造方法を用いて製造することができる。これらの複合酸化物及び他の正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子を形成していてもよい。一次粒子は、その形状が限定されるものではなく、鱗片状、球状、ポテトライク状を挙げることができる。また、一次粒子は、短径が1μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。一次粒子は、粒径(平均粒子径、D50)が1μm以下の略球状の粒子であることがより好ましく、粒径が0.5μm(500nm)以下であることが更に好ましい。
【0038】
(導電材,結着材,合材,正極集電体)
導電材は、正極2の電気伝導性を確保する。導電材としては、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック(AB),ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。
【0039】
正極合材の結着材は、正極活物質粒子や導電材を結着する。結着材としては、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。
【0040】
正極合材の溶媒としては、通常は結着材を溶解する有機溶媒を使用する。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMPと称される),ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N,N−ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで正極活物質をスラリー化する場合もある。
【0041】
正極集電体20は、従来の集電体を用いることができ、アルミニウムなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0042】
正極集電体20の厚さは、限定されるものではない。従来から用いられている正極集電体と同様な厚さとすることができる。正極集電体20の厚さは、20μm以下であることが好ましい。例えば、15μm程度の厚さの箔を用いることが好ましい。
【0043】
[負極]
負極3は、負極活物質を含有する。負極3は、負極集電体30の表面に負極活物質層31を有する。負極活物質層31は、負極活物質と結着材とを混合して得られた負極合材を負極集電体30の表面に塗布、乾燥して形成される(塗工して形成される)。負極合材は、適当な溶媒によりペースト状(スラリー状)をなしている。
【0044】
(負極活物質)
負極3の負極活物質は、従来の負極活物質を用いることができる。Sn,Si,Sb,Ge,Cの少なくともひとつの元素を含有する負極活物質を挙げることができる。これらの負極活物質のうち、Cは、リチウムイオン二次電池の電解質イオンを吸蔵・放出可能な(Li吸蔵能がある)炭素材料であることが好ましく、グラファイトであることがより好ましい。
【0045】
また、これらの負極活物質のうち、Sn、Sb、Geは、特に、体積変化の多い合金材料である。これらの負極活物質は、Ti−Si、Ag−Sn、Sn−Sb、Ag−Ge、Cu−Sn、Ni−Snなどのように、別の金属と合金をなしていてもよい。
【0046】
(導電材,結着材,合材,負極集電体)
負極3の導電材としては、炭素材料、金属粉、導電性ポリマーなどを用いることができる。導電性と安定性の観点から、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどの炭素材料を使用することが好ましい。
【0047】
負極3の結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素樹脂共重合体(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体)SBR、アクリル系ゴム、フッ素系ゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・マレイン酸樹脂、ポリアクリル酸塩、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などを挙げることができる。
負極3の合材の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒、又は水などを挙げることができる。
【0048】
負極集電体30は、従来の集電体を用いることができ、銅、ステンレス、チタンあるいはニッケルなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0049】
[その他の構成]
本形態の非水電解質二次電池1は、正極2及び負極3を、正極活物質層21と負極活物質層31とが対向した状態で、セパレータ5を介した状態で非水電解質4とともに、電池ケース6内に収容する。
【0050】
(セパレータ)
セパレータ5は、正極2及び負極3を電気的に絶縁し、非水電解質4を保持する役割を果たす。セパレータ5は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることが好ましい。
【0051】
(電池ケース)
電池ケース6は、正極2及び負極3を、セパレータ5を介した状態で非水電解質4とともに、その内部に収容(封入)する。
電池ケース6は、内部と外部との間で水分の透過を阻害する材質よりなる。このような材質としては、金属層を有する材質を挙げることができる。金属層を有する材質としては、金属そのものや、ラミネートフィルムを挙げることができる。
【0052】
[本形態の効果]
上記したように、本形態のリチウムイオン二次電池1は、(1)式で示した化合物よりなる添加剤化合物を非水電解質が含有する。この添加剤化合物は、ボロキシン環に、Oを介してシリル基(アルキルシリル基,トリアルキルシリル基)が結合した化合物である。この添加剤化合物は、電池を組み立てた後、充放電によるコンディショニングを行った際に、電極(正極)の表面で支持電解質及び非水溶媒よりも先に分解し、電極(正極)表面に被膜を形成する。この添加剤化合物に由来する被膜は、電極(正極)の表面と化学的結合を有することで高い安定性を示す。従って、充電電圧が高い電極(正極)においても被膜が分解されず、以降の副反応である電解質の酸化分解が低減され、電解質中の継続的なリチウム消費を抑制することができる。この結果、充放電による電池容量の低下を大幅に抑制する効果を発揮する。
【0053】
添加剤化合物は、
1H−NMR,
13C−NMR,
11B−NMRにより得られるスペクトルにおいて、化学シフトの特定の領域にピークを持つ。この構成を持つことで、添加剤化合物が上記の(1)式で示した化合物となる。
【0054】
添加剤化合物は、非水電解質全体の質量を100mass%としたときに、0.01mass%以上5.0mass%以下で含まれる。この構成を持つことで、添加剤化合物を添加したことによる効果を確実に発揮できる。
本形態のリチウムイオン二次電池1は、上記の非水電解質を用いてなるものであり、上記の効果を発揮できる。
【0055】
上記の非水電解質は正極が高電位となっても活物質表面に形成された被膜が分解しないため、充電電圧が4.3V以上の正極活物質を用いた二次電池1であっても、上記の効果を発揮できる。
【0056】
[実施形態2]
本形態は、実施形態1の二次電池1をコイン型の電池に適用した形態であり、正極2,負極3,非水電解質4等の構成は、実施形態1と同様である。本形態の二次電池1の構成を、
図2に断面図で示した。
【0057】
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2及び負極3を金属よりなる電池ケース6に収容(封入)してなる。なお、本形態で特に限定されない構成は、実施形態1と同様とする。
【0058】
具体的には、本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2,負極3,非水電解質4,セパレータ5,正極ケース61,負極ケース62,シール材63,保持部材64を有する。
【0059】
本形態のリチウムイオン二次電池1では、正極ケース61と負極ケース62が、絶縁性のシール材63を介して内蔵物を密封する。内蔵物は、正極2,負極3,非水電解質4,セパレータ5及び保持部材64を有する。シール材63は、ガスケットを例示できる。
なお、
図2に示したように、正極2と負極3は、正極活物質層21と負極活物質層31とが向き合った状態でセパレータ5を介して配される。
【0060】
セパレータ5は、正極2及び負極3を電気的に絶縁し、非水電解質4を保持する役割を果たす。セパレータ5は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることが好ましい。
【0061】
正極ケース61には正極集電体20を介して正極活物質層21が面接触して導電する。負極ケース62には負極集電体30を介して負極活物質層31が面接触して導電する。
【0062】
[本形態の効果]
本形態のリチウムイオン二次電池1は、その形態が異なること以外は実施形態1と同様な構成の二次電池である。このため、本形態においても、実施形態1と同様な効果を発揮する。
【0063】
なお、本形態ではコイン型のリチウムイオン二次電池1を形成しているが、その形状には特に制限を受けるものではなく、上記のコイン型のリチウムイオン二次電池1以外に、円筒型,角型等、種々の形状の電池や、ラミネート外装体に封入した不定形状の電池としても同様な効果を発揮できる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明を具体的に説明するための実施例として、実施形態2に示したリチウムイオン二次電池1を製造した。
【0065】
(実施例1)
正極2は、正極活物質91質量部,アセチレンブラック2質量部,PVDF7質量部を混合して得られた正極合剤をアルミニウム箔よりなる正極集電体20に塗布して正極活物質層21を形成したものを用いた。正極活物質は、層状構造のLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を用いた。この正極活物質は、充電電圧が4.3V以上(具体的には、4.5V)である。
【0066】
負極3には、負極活物質である金属リチウムを、厚さ0.01mmの銅箔よりなる負極集電体30の両面に貼り付けたものを対極として用いた。負極活物質が、
図2中の負極活物質層31に相当する。
【0067】
非水電解質4には、EC:DMC:EMCが30:30:40の割合(vol%)になるように混合した混合溶媒に、LiPF
6を1.0mol/Lとなるように溶解させ、更に添加剤化合物を添加したものを用いた。
【0068】
非水電解質4の添加剤化合物は、(2)式で表される化合物である。非水電解質4の全体の質量を100mass%としたときに、0.5mass%となるように添加された。(2)式で表される化合物は、(1)式で表される化合物において、R
1〜R
9のそれぞれがメチル基である化合物である。
【0069】
【化3】
【0070】
本例の二次電池1は、組み立てられた後に、1/3C×2サイクルの充放電での活性化処理が行われた。
以上により、本例の二次電池1が製造された。
【0071】
(NMR)
非水電解質4の添加剤化合物に対し、測定装置(日本電子製、商品名:AL−300)を用いて
1H−NMRを測定した。測定結果を
図3に示した。
図3に示したように、化学シフト−1.0ppm〜7.0ppmの間にピークを持つことが確認できる。
【0072】
非水電解質4の添加剤化合物に対し、測定装置(日本電子製、商品名:AL−300)を用いて
13C−NMRを測定した。測定結果を
図4に示した。
図4に示したように、化学シフト0.0ppm〜140ppmの間にピークを持つことが確認できる。
【0073】
非水電解質4の添加剤化合物に対し、測定装置(日本電子製、商品名:AL−300)を用いて
11B−NMRを測定した。測定結果を
図5に示した。
図5に示したように、化学シフト−30ppm〜30ppmの間にピークを持つことが確認できる。
【0074】
(実施例2)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物が異なること以外は、実施例1と同様である。
添加剤化合物は、(3)式で表される化合物である。(3)式で表される化合物は、(1)式で表される化合物において、R
1〜R
9のそれぞれがエチル基である化合物である。
【0075】
【化4】
【0076】
本例に用いられる添加剤化合物に対し、
1H−NMRを測定したところ、実施例1の時と同様に、化学シフト−1.0ppm〜7.0ppmの間にピークを持つことが確認できた。
同様に、
13C−NMRを測定したところ、化学シフト0.0ppm〜140ppmの間にピークを持つことが確認できた。
同様に、
11B−NMRを測定したところ、化学シフト−30ppm〜30ppmの間にピークを持つことが確認できた。
【0077】
(実施例3)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物が異なること以外は、実施例1と同様である。
添加剤化合物は、(4)式で表される化合物である。(4)式で表される化合物は、(1)式で表される化合物において、R
1〜R
9のそれぞれがビニル基である化合物である。
【0078】
【化5】
【0079】
本例に用いられる添加剤化合物に対し、
1H−NMRを測定したところ、実施例1の時と同様に、化学シフト−1.0ppm〜7.0ppmの間にピークを持つことが確認できた。
同様に、
13C−NMRを測定したところ、化学シフト0.0ppm〜140ppmの間にピークを持つことが確認できた。
同様に、
11B−NMRを測定したところ、化学シフト−30ppm〜30ppmの間にピークを持つことが確認できた。
【0080】
(比較例1)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物を含まないこと以外は、実施例1〜3と同様である。
【0081】
(比較例2)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物が異なること以外は、実施例1〜3と同様である。
添加剤化合物は、(5)式で表されるトリメトキシボロキシンである。
【0082】
【化6】
【0083】
(実施例4)
本例の二次電池1は、正極活物質が異なること以外は、実施例1と同様である。
正極活物質は、スピネル構造のLiNi
0.5Mn
1.5O
4を用いた。この正極活物質は、充電電圧が4.3V以上(具体的には、4.8V)である。
【0084】
(実施例5)
本例の二次電池1は、正極活物質が異なること以外は、実施例2と同様である。
正極活物質は、スピネル構造のLiNi
0.5Mn
1.5O
4を用いた。
【0085】
(実施例6)
本例の二次電池1は、正極活物質が異なること以外は、実施例3と同様である。
正極活物質は、スピネル構造のLiNi
0.5Mn
1.5O
4を用いた。
【0086】
(比較例3)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物を含まないこと以外は、実施例4〜6と同様である。
【0087】
(比較例4)
本例の二次電池1は、非水電解質4の添加剤化合物が異なること以外は、実施例4〜6と同様である。
添加剤化合物は、(5)式で表されるトリメトキシボロキシンである。
【0088】
[コンディショニング]
各例の二次電池1に対し、充放電によるコンディショニングを行い、電極(正極)の表面に被膜を形成させた。
実施例1〜3及び比較例1〜2の二次電池1に対しては、1/10Cレートで4.5VのCC−CV充電と、1/10Cレートで3.0VのCC放電を1サイクル行った。
実施例4〜6及び比較例3〜4の二次電池1に対しては、1/10Cレートで4.8VのCC−CV充電と、1/10Cレートで3.5VのCC放電を1サイクル行った。
【0089】
[評価]
コンディショニングを実施した各例の二次電池1に対し、充放電を繰り返す充放電試験を行い、試験後の容量維持率を測定した。なお、各例の二次電池1は、2032型コイン電池として形成されている。
【0090】
(充放電試験)
実施例1〜3及び比較例1〜2の二次電池1に対しては、1/5Cレートで4.5VのCC−CV充電と、1/5Cレートで3.0VのCC放電と、を100サイクル繰り返す充放電試験を行った。
【0091】
実施例4〜6及び比較例3〜4の二次電池1に対しては、1/5Cレートで4.8VのCC−CV充電と、1/5Cレートで3.5VのCC放電と、を100サイクル繰り返す充放電試験を行った。
【0092】
(容量維持率)
容量維持率は、初回と100サイクル後の電池容量を測定し、その比から各二次電池の容量維持率を求めた。容量維持率の測定結果を表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示したように、実施例1〜6の二次電池1は、比較例1〜4の二次電池と比較して、容量維持率に優れていることが確認できる。すなわち、(1)式(具体的には、(2)式〜(4)式)で表される化合物を添加剤化合物として非水電解質4に含有した二次電池1は、そうでない二次電池1と比較して、容量維持率に優れていることが確認できる。
その上で、実施例1〜6の二次電池1は、充電電圧が4.3V以上と高い正極活物質を用いているが、この構成でも容量維持率に優れていることが確認できる。
【0095】
詳しくは、ボロキシン環構造は備えているが、(1)式で表される化合物とは異なる組成の比較例2,4の二次電池1は、比較例1,3の二次電池1と比較して、容量維持率は向上している。しかし、実施例1〜6の二次電池1は、比較例2,4の二次電池1よりもはるかに容量維持率が高くなっている。比較例2,4の二次電池1では、添加剤化合物が正極の表面に被膜を生成しても、正極の電位が4.3V以上に高くなると、被膜が分解し正極活物質層と電解質が直接接触するため副反応である電解質の酸化分解が継続して進行し、電解質中のリチウムが消費され大きな容量低下が発生する。対して、実施例1〜6の二次電池1は、正極の電位が4.3V以上に高くなっても、被膜が分解せず、正極の分解が抑えられる。