特許第6467369号(P6467369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467369原子力プラントおよび原子力プラントの構内施設配置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467369
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】原子力プラントおよび原子力プラントの構内施設配置方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/00 20060101AFI20190204BHJP
   E04H 9/04 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G21C13/00 300
   E04H9/04
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-45407(P2016-45407)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-161330(P2017-161330A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 直美
(72)【発明者】
【氏名】飯村 芳則
(72)【発明者】
【氏名】遠山 典秀
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−173860(JP,A)
【文献】 特開2014−089134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0294134(US,A1)
【文献】 特開平05−087962(JP,A)
【文献】 特開昭56−137296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00−13/10
G21D 1/00−9/00
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を用いて発電運転する原子力プラントであって、
前記原子力プラントは、内部に原子炉が設置された原子炉建屋と、
内部に前記原子炉の安全機能を維持する設備が設置された特重建屋と、
前記原子炉建屋と前記特重建屋とを連結する連絡トレンチと、を有し、
前記特重建屋は、水中に設置されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力プラントであって、
前記原子炉建屋は、前記特重建屋に近接して陸上に設置されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の原子力プラントであって、
前記特重建屋は、前記原子力プラントの冷却水源である海中、河川の水中、湖の水中のいずれかに設置されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の原子力プラントであって、
前記連絡トレンチは、地下に設置されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の原子力プラントであって、
前記特重建屋は、外部環境との間で空気の給排気を行う複数の給排気筒を備え、
前記複数の給排気筒の各々の給排気口は陸上に設置され、
前記各々の給排気口は、前記原子力プラント内の建屋または構造物を挟んで互いに離間して設置されることを特徴とする原子力プラント。
【請求項6】
核燃料を用いて発電運転する原子力プラントの構内施設配置方法であって、
内部に原子炉が設置された原子炉建屋を陸上に配置し、
内部に前記原子炉の安全機能を維持する設備が設置された特重建屋を水中に配置し、
前記原子炉建屋と前記特重建屋を連絡トレンチで連結することを特徴とする原子力プラントの構内施設配置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の原子力プラントの構内施設配置方法であって、
前記原子炉建屋は、前記特重建屋に近接して配置されることを特徴とする原子力プラントの構内施設配置方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の原子力プラントの構内施設配置方法であって、
前記特重建屋は、前記原子力プラントの冷却水源である海中、河川の水中、湖の水中のいずれかに配置されることを特徴とする原子力プラントの構内施設配置方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の原子力プラントの構内施設配置方法であって、
前記連絡トレンチは、地下に配置されることを特徴とする原子力プラントの構内施設配置方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の原子力プラントの構内施設配置方法であって、
前記特重建屋の複数の給排気口は陸上に配置され、
前記複数の給排気口の各々は、前記原子力プラント内の建屋または構造物を挟んで互いに離間して配置されることを特徴とする原子力プラントの構内施設配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の構内施設の配置方法に係り、特に、予期せぬ災害や人為的な行為により陸上の施設が損傷を受けた場合であっても、原子力発電所全体の安全性が維持される原子力発電所の構内配置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、何重もの安全対策を講じ、万一事故が発生した場合でも周辺環境に影響を及ぼさないように安全管理がなされている。事故発生時は、原子炉を安全に停止し、核燃料を冷却し、放射性物質を閉じ込める様々な安全機能が働く。
【0003】
一般に上記のような安全機能を備えた施設(建屋)の構内配置において、航空機などの外部飛来物が衝突する脅威に対し、原子炉を停止可能な安全機能が防護される必要である。そのため、外部飛来物の落下を確率的に考慮する必要のないサイト(敷地,用地)を選定することでこれまでは対応していた。
【0004】
しかしながら、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以降、テロ対策の社会的な要求が高まったことから、国内の新設の原子力発電所において、航空機などの外部飛来物の衝突に対して原子炉建屋内の安全機能を維持するための設備が破損した場合でも原子炉建屋の炉心及び使用済燃料を冷却維持するため、特定重大事故等対処施設(以下、特重建屋)の設置が求められている。
【0005】
特重建屋は、原子炉建屋内の安全機能維持のバックアップであるため、航空機などの外部飛来物が原子炉建屋と同時に衝突、または外部飛来物侵入経路上にあることで連続的に衝突し、破損するのを防ぐことが求められている。
【0006】
一般的に、建屋の外壁の厚さを外部飛来物が貫通しない頑健な鉄筋コンクリート構造にすることで、建屋内に設置されている安全機能の系統や機器を外部飛来物の衝突から防護することが可能である。
【0007】
本技術分野の背景技術として、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、原子炉建屋を地下60m〜地下100mに建設する地下埋没型原子力発電所が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、予期せぬ事故が発生した場合に中性子線対策として水没させる原子力発電所が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、津波により陸上の電源設備を喪失した場合でも、港湾または沖合いに設置した外部電源および淡水受容れ設備を介して船舶から電気と淡水を供給可能な原子力発電所が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−190409号公報
【特許文献2】特開2003−240886号公報
【特許文献3】特開2012−233726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、頑健なコンクリートの外壁でも、外部飛来物が衝突することで発生する振動影響や燃料搭載物であった場合に発生する火災の建屋への侵入による安全機能設備の損傷を防ぐことはできない。すなわち、原子炉建屋と特重建屋に外部飛来物が同時に、または連続的に衝突する場合、物理的な衝撃や振動及び火災により安全機能設備が損傷する可能性が生じる。
【0012】
上記特許文献1の地下埋没型原子力発電所は、水素爆発に対する耐性や放射能漏れ防止の観点で有効な手段であると考えられるが、膨大な建設費用を必要とし、また、地下に様々な建屋や構造物を建設する必要があるため発電所の規模が限定的となり、実用化は困難である。
【0013】
また、特許文献2は原子力発電所の具体的な水没方法が開示されておらず、やはり実用化は困難である。
【0014】
また、特許文献3の原子力発電所は、外部からの電源および淡水供給の継続が可能であるが、安全機能を備えた主要な施設(建屋)は陸上に設置されており、上述したような非常時の安全機能の維持は困難である。
【0015】
そこで、本発明は、津波等の予期せぬ自然災害時や航空機等の外部飛来物が原子力発電所構内に侵入し建屋に衝突する場合であっても、特重建屋内の安全機能設備の健全性を維持することが可能な原子力発電所の構内配置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、核燃料を用いて発電運転する原子力プラントであって、前記原子力プラントは、内部に原子炉が設置された原子炉建屋と、内部に前記原子炉の安全機能を維持する設備が設置された特重建屋と、前記原子炉建屋と前記特重建屋とを連結する連絡トレンチと、を有し、前記特重建屋は、水中に設置されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、核燃料を用いて発電運転する原子力プラントの構内施設配置方法であって、内部に原子炉が設置された原子炉建屋を陸上に配置し、内部に前記原子炉の安全機能を維持する設備が設置された特重建屋を水中に配置し、前記原子炉建屋と前記特重建屋を連絡トレンチで連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特重建屋が従来の他建屋と同等の躯体構造であっても、津波による被災や航空機等の外部飛来物の衝突から回避することができ、原子力発電所の安全機能設備の健全性を確保できる。
【0019】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る原子力発電所の構内配置を示す平面図である。
図2図1に示す原子力発電所のA−A’部断面図である。
図3】従来の代表的な原子力発電所の構内配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【実施例1】
【0022】
先ず比較のため、図3を用いて従来の原子力発電所の構内配置について説明する。図3は従来の代表的な原子力発電所の構内配置を示す平面図である。
【0023】
原子力発電所は、火力発電所と同様に、発電に利用した蒸気の冷却に大量の水を必要とするため、多くは海岸沿い、または河川や湖のそばに建設される。図3の符号10は海や河川、湖などの冷却水源を示している。
【0024】
一般的な原子力発電所の構内には、内部に原子炉が設置された原子炉建屋2、原子炉で発生した蒸気により回転して発電する蒸気タービン及び発電機が設置されたタービン建屋13、主に原子炉の安全機能を維持するための設備が設置された特重建屋9、原子力発電所を維持管理するためのその他の建屋や構造物4〜6などが配置されている。なお、発電機は蒸気タービンとは別の建屋、例えば、他建屋/構造物6に設置する場合もある。
【0025】
原子炉建屋2内の原子炉では、核燃料(主にウラン)を核分裂させて熱エネルギーを得て、水を沸かして蒸気を発生させる。
【0026】
原子炉建屋2と特重建屋9の間には、連絡通路となる連絡トレンチ11が設けられている。特重建屋9には、給排気を行うための特重建屋給排気筒7が設けられている。
【0027】
上述したように、特重建屋9は、原子炉建屋内の安全機能維持のバックアップであるため、航空機などの外部飛来物が原子炉建屋と同時に衝突、または外部飛来物侵入経路上にあることで連続的に衝突し、破損するのを防ぐことが求められている。
【0028】
そこで、従来の原子力発電所では、図3のように、特重建屋9と原子炉建屋2を、十分な離隔距離(例えば約100m)を設けて配置している。また、平面的に見て、特重建屋9と原子炉建屋2を同一直線上に配置した場合、特重建屋9と原子炉建屋2のいずれか一方に外部飛来物が衝突した場合、連続してもう一方の建屋に衝突する可能性が高いため、図3のように、特重建屋9と原子炉建屋2をずらした位置に配置している。そのため、より広い敷地が必要となり、構内施設配置の配置効率が低下する。
【0029】
図1および図2を用いて、本実施例の原子力発電所の構内配置を説明する。図1は本発明の構内施設配置方法による原子力発電所の平面図である。また、図2図1のA−A’部断面を概念的に示している。
【0030】
本実施例の原子力発電所(原子力プラント)1では、特重建屋9が冷却水源10となる水中、すなわち海中、または河川や湖の水中に設置されている。また、原子炉建屋2は特重建屋9の近傍となるよう冷却水源10側の陸上に設置している。
【0031】
水中に設置される特重建屋9には、原子力発電所1の中央制御室の代替設備(バックアップ設備)の他、溶融炉心の冷却や使用済み燃料ピット(SFP:Spent Fuel Pit)及び格納容器への冷却水のスプレイを実施する代替注水設備、制御監視計器などが収容されており、原子炉建屋2内の同等の機能を有する設備に航空機などの外部飛来物が衝突したり、津波により損傷が生じた場合であっても、原子炉の炉心及び使用済み燃料の冷却維持が可能である。
【0032】
また、仮に、原子炉建屋2と特重建屋9が航空機などの衝突経路上(同一直線上)に設置され、連続衝突が考えられる場合であっても、特重建屋9を水中に設置することで海水や河川・湖の水により衝撃が緩和され、特重建屋9の健全性を保つことができる。
【0033】
また、図1において特重建屋9用の換気空調給排気筒は地上露出構造物となり、原子炉建屋2と同時衝突または連続的衝突の可能性が生じる。このため、特重建屋給排気筒7,8のように複数設けて多重性を持たせることで、一方が衝突により機能を喪失した場合であっても、もう一方の機能は損失しないよう他建屋または構造物(他建屋/構造物3〜6)が障壁となる位置に換気空調給排気筒を設置する。
【0034】
なお、航空機等の衝突により屋外で火災が発生した場合でも、換気空調給排気筒を多重化し、他建屋または構造物を衝突からの障壁とすることで、影響を受けない。これにより、特重建屋9の換気空調機能が維持される。
【0035】
特重建屋内9内の安全機能設備は、原子炉の炉心及び燃料プール冷却を維持するもので、連絡トレンチ11によって原子炉建屋2に連絡物を接続する。この連絡トレンチ11は地下埋設とし、1.5m以上の厚さの鉄筋コンクリート製の壁により建設された構造であり、仮に航空機が衝突した場合であっても衝撃に耐え得る構造としている。これにより、原子炉の炉心及び使用済み燃料の冷却が維持される。
【0036】
また、原子炉建屋2は、特重建屋9を設置した冷却水源10側に設置することで、原子炉建屋2及び特重建屋9を連絡する計画物及び連絡トレンチ11の建設時のコンクリート量を低減することができる。
【0037】
なお、上述したように、図1および図2に示す原子力発電所の構内配置では、特重建屋9を水中に建設し、原子炉建屋2を特重建屋9に近接した陸上に建設することで、原子炉建屋2と特重建屋9の同時損傷を防止することができる。そのため、それら以外の建屋、他建屋/構造物3〜6は自由な配置(レイアウト)が可能である。例えば、他建屋/構造物3内に蒸気タービンや発電機を設置したり、他建屋/構造物4内に原子力発電所1の中央制御室を設けてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施例の原子力発電所の構内配置によれば、従来のように原子炉建屋と特重建屋間に十分な離隔距離を取る必要がなく、原子力発電所の構内配置のスペース効率を向上することができる。
【0039】
また、特重建屋9を水中に建設することで、津波等の予期せぬ自然災害時や航空機等の外部飛来物が原子力発電所構内に侵入し建屋に衝突する場合であっても、特重建屋内の安全機能設備の健全性を維持することが可能となり、原子力発電所の安全性が向上する。
【0040】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…原子力発電所(原子力プラント)、2…原子炉建屋、3,4,5,6…他建屋/構造物、7,8…特重建屋給排気筒、9…特重建屋、10…冷却水源、11…連絡トレンチ、12…空調ダクト、13…タービン建屋。
図1
図2
図3