【文献】
JONA, A. et al.,"Novel treatment strategies for patients with relapsed classical Hodgkin lymphoma",Blood Rev.,2010年 9月15日,Vol.24,No.6,P.233-238,[online],[検索日 2017年8月28日],<URL,http://ac.els-cdn.com/S0268960X10000421/1-s2.0-S0268960X10000421-main.pdf?_tid=ed0313a4-8bba-11e7-bb-96-00000aacb360&acdnat=1503902242-a01765ee8d9c288bf002bc8ac0b8cc58>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0004】
定義および略語
他に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、記載した方法および組成物に関係する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書中で用いるとき、以下の用語および語句は、特に他で規定しなければ、それらに基づく意味を有する。
【0005】
他に明記しない限り、用語「アルキル」は、約1〜約20個の炭素原子(ならびにそこに含まれる炭素原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)を有する飽和の直鎖または分子鎖の炭化水素を意味し、約1〜約8個の炭素原子が好ましい。アルキル基の例は以下のもの:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、および3,3-ジメチル-2-ブチルである。
【0006】
アルキル基は、単独でまたは他の基の一部として「置換されて」いてもよい。置換されたアルキル基は1個以上の基、好ましくは1〜3個の基(およびハロゲンから選択される追加の基)で置換されたアルキル基であって、かかる置換基には、限定されるものでないが、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ[ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される]、ここで前記-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、および-C
2-C
8アルキニル基は任意にさらに1個以上の基で置換されていてもよく、前記置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれる[ここで、各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される]。
【0007】
他に明記しない限り、「アルケニル」および「アルキニル」は、約2〜約20個の炭素原子(ならびにそこに含まれる炭素原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)を有する直鎖および分岐鎖状の炭素鎖を意味し、約2〜約8個の炭素原子が好ましい。アルケニル鎖はその鎖中に少なくとも1つの二重結合を有し、アルキニル鎖はその鎖中に少なくとも1つの三重結合を有する。アルケニル基の例には、限定されるものでないが、エチレンもしくはビニル、アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、および-2,3-ジメチル-2-ブテニルが含まれる。アルキニル基の例には、限定されるものでないが、アセチレニック、プロパルギル、アセチレニル、プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、および-3-メチル-1-ブチニルが含まれる。
【0008】
アルキル基と同じように、アルケニルおよびアルキニル基は置換されていてもよい。「置換された」アルケニルまたはアルキニル基は1個以上の基、好ましくは1〜3個の基(およびハロゲンから選択される追加の基)で置換されたものであって、かかる置換基には、限定されるものでないが、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ、ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択され、前記-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、および-C
2-C
8アルキニル基は任意にさらに1個以上の基で置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれ、ここで各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される。
【0009】
他に明記しない限り、用語「アルキレン」とは、約1〜約20個の炭素原子(ならびにそこに含まれる炭素原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)、好ましくは約1〜約8個の炭素原子を有し、かつ親アルカンの同一のまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除くことにより誘導された2つの1価ラジカル中心を有する、飽和の分岐鎖または直鎖の炭化水素基を意味する。典型的なアルキレンには、限定されるものでないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デカレン、1,4-シクロヘキシレンなどが含まれる。アルキレン基は、単独であろうと他の基の一部としてであろうと、1個以上の基、好ましくは1〜3個の基(およびハロゲンから選択される追加の置換基)で場合により置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ、ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択され、前記-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、および-C
2-C
8アルキニル基は場合により1個以上の置換基でさらに置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれ、ここで各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される。
【0010】
他に明記しない限り、「アルケニレン」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む、場合により置換されたアルキレン基を意味する。例示のアルケニレン基には、例えば、エテニレン(-CH=CH-)およびプロペニレン(-CH=CHCH
2-)が含まれる。
【0011】
他に明記しない限り、「アルキニレン」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む、場合により置換されたアルキレン基を意味する。例示のアルキニレン基には、例えば、アセチレン(-C≡C-)、プロパルギル(-CH
2C≡C-)、および4-ペンチニル(-CH
2CH
2CH
2C≡CH-)が含まれる。
【0012】
他に明記しない限り、「アリール」は、親芳香族環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を除くことにより誘導された、6〜20個の炭素原子(ならびにそこに含まれる炭素原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)の1価芳香族炭化水素基を意味する。いくつかのアリール基は例示の構造式において「Ar」と表される。典型的なアリール基には、限定されるものでないが、ベンゼン、置換されたベンゼン、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導される基が含まれる。
【0013】
アリール基は、単独であろうと他の基の一部としてであろうと、場合により1個以上、好ましくは1〜5個、それどころか1〜2個の基で置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-ハロゲン、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、-NO
2、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ、ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択され、前記-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、および-アリール基は場合により1個以上の置換基でさらに置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれ、ここで各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される。
【0014】
他に明記しない限り、「アリーレン」は2価(すなわち、親芳香族環系の同一のまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除くことにより誘導されたもの)であり、場合により置換されていてもよいアリール基を意味し、前記アリーレン基は、例示のアリール基としてフェニルを持つ以下の構造で示したオルト、メタまたはパラ立体配置であってもよい。
【0015】
典型的な「-(C
1-C
8アルキレン)アリール」、「-(C
2-C
8アルケニレン)アリール」、および「-(C
2-C
8アルキニレン)アリール」基には、限定されるものでないが、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが含まれる。
【0016】
他に明記しない限り、用語「複素環」は、3〜14個の環原子(環員ともいう)を有する単環式、二環式、または多環式環系であって、少なくとも1個の環の少なくとも1個の環原子がN、O、PまたはS(ならびにそこに含まれる炭素原子およびへテロ原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)から選択されるヘテロ原子である前記環系を意味する。複素環はN、O、PまたはSから独立して選択される1〜4個の環へテロ原子を含んでもよい。複素環中の1個以上のN、CまたはS原子は酸化されていてもよい。単環式複素環は好ましくは3〜7個の環員(例えば、2〜6個の炭素原子と1〜3個のN、O、PまたはSから独立して選択されるヘテロ原子)を有し、そして二環式複素環は好ましくは5〜10個の環員(例えば、4〜9個の炭素原子と1〜3個のN、O、PまたはSから独立して選択されるヘテロ原子)を有する。ヘテロ原子を含む環は芳香族または非芳香族でありうる。他に明記しない限り、複素環には安定な構造をもたらすヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基が結合している。
【0017】
複素環は、Paquette, "Principles of Modern Heterocyclic Chemistry"(W.A. Benjamin, New York, 1968)の特に第1、3、4、6、7および9章;"The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs"(John Wiley & Sons, New York, 1950年から現在に至るまで)の特に第13、14、16、19および28巻;ならびにJ. Am. Chem. Soc. 82:5566 (1960)に記載されている。
【0018】
他に明記しない限り、「ヘテロシクロ」とは、2価(すなわち、親複素環系の同一のまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除くことにより誘導されたもの)であり、場合により置換された上記定義の複素環基を意味する。
【0019】
「複素環」基の例には、限定されるものでないが、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス-テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4H-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、およびイサチノイルが含まれる。好ましい「複素環」基には、限定されるものでないが、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンゾピラゾリル、クマリニル、イソキノリニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、キノリニル、ピリミジニル、ピリジニル、ピリドニル、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、およびテトラゾリルが含まれる。
【0020】
複素環基は、単独であろうと他の基の一部としてであろうと、場合により1個以上の基、好ましくは1〜2個の基で置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ、ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択され、ここで前記-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、および-アリール基は場合により1個以上の置換基でさらに置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれ、ここで各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、またはアリールから選択される。
【0021】
限定ではなく、例として、炭素結合型複素環は以下の位置で結合することができる:ピリジンの2、3、4、5または6位;ピリダジンの3、4、5または6位;ピリミジンの2、4、5または6位;ピラジンの2、3、5または6位;フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの2、3、4または5位;オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの2、4または5位;イソオキサゾール、ピラゾールまたはイソチアゾールの3、4または5位;アジリジンの2または3位;アゼチジンの2、3または4位;キノリンの2、3、4、5、6、7または8位;イソキノリンの1、3、4、5、6、7または8位。さらに典型的には、炭素結合型複素環は2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、または5-チアゾリルを含む。
【0022】
限定ではなく、例として、窒素結合型複素環は以下の位置で結合することができる:アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、または1H-インダゾールの1位;イソインドールまたはイソインドリンの2位;モルホリンの4位;カルバゾールまたはβ-カルボリンの9位。さらに典型的には、窒素結合型複素環は1-アジリジル、1-アゼチジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、および1-ピペリジニルを含む。
【0023】
他に明記しない限り、用語「炭素環」は、全ての環原子が炭素原子であって、3〜14個の環原子(およびそこに含まれる炭素原子の範囲および特定数の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせ)を有する、飽和もしくは不飽和の非芳香族単環式、二環式、または多環式環系を意味する。単環式炭素環は好ましくは3〜6個の環原子、さらに好ましくは5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は好ましくは、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]もしくは[6,6]系として配置される7〜12個の環原子を有し、あるいはビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系として配置される9または10個の環原子を有する。用語「炭素環」には、例えば、アリール環に縮合した単環式炭素環(例えば、ベンゼン環に縮合した単環式炭素環)が含まれる。炭素環は3〜8個の炭素環原子をもつことが好ましい。
【0024】
炭素環基は、単独であろうと他の基の一部としてであろうと、1個以上の基、好ましくは1〜2個の基(およびハロゲンから選択される追加の置換基)で場合により置換されていてもよく、かかる基には、限定されるものでないが、-ハロゲン、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH
2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')
2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO
3R'、-S(O)
2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N
3、-NH
2、-NH(R')、-N(R')
2および-CNが含まれ、ここで各R'は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択され、前記-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、および-アリール基は場合により1個以上の置換基でさらに置換されてもよく、かかる置換基には、限定されるものでないが、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH
2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')
2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO
3R''、-S(O)
2R''、-S(O)R''、-OH、-N
3、-NH
2、-NH(R'')、-N(R'')
2および-CNが含まれ、ここで各R''は独立して-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、または-アリールから選択される。単環式炭素環置換基の例には、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-1-シクロペンタ-1-エニル、-1-シクロペンタ-2-エニル、-1-シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキシル、-1-シクロヘキサ-1-エニル、-1-シクロヘキサ-2-エニル、-1-シクロヘキサ-3-エニル、-シクロヘプチル、-シクロオクチル、-1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、および-シクロオクタジエニルが含まれる。
【0025】
「カルボシクロ」は、単独で用いようと他の基の一部として用いようと、2価である(すなわち、親炭素環系の同一のまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除くことにより誘導された)、場合により置換された上記定義どおりの炭素環基を意味する。
【0026】
文脈によって他に示されない限り、ハイフン(-)はペンダント分子との結合点を示す。したがって、「-(C
1-C
8アルキレン)アリール」または「-C
1-C
8アルキレン(アリール)」は、アルキレン基がそのアルキレン基の炭素原子のいずれかでペンダント分子と結合し、かつアルキレン基の炭素原子に結合した水素原子のうちの1個が本明細書中で定義したアリール基により置換された、本明細書中で定義したC
1-C
8アルキレン基を意味する。
【0027】
特定の基が「置換」される場合、その基は1個以上の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、さらに好ましくは1〜3個の置換基、最も好ましくは1または2個の置換基を有することができ、かかる置換基は置換基の表から独立して選択される。しかし、その基は一般にハロゲンから選択される任意数の置換基を有してもよい。置換された基はそのように示される。
【0028】
ある分子の特定の位置におけるいずれかの置換基または変数の定義は、その分子の他の位置でのその定義にはよらないと考えている。当然、当業者は化学的に安定でありかつ当技術分野で公知の技法ならびに本明細書に記載した方法によって容易に合成できる化合物を提供するために、本明細書に記載した化合物の置換基および置換パターンを選択することができる。
【0029】
本明細書で用いる保護基は、一時的または永続的に、多官能性化合物の1つの反応部位を選択的にブロックする基を意味する。本明細書に記載の化合物において用いる好適なヒドロキシ保護基は、製薬上許容されるものであってかつその化合物を活性化するために被験者に投与後、親化合物から切断する必要があってもまたはなくてもよい。切断は体内での正常な代謝プロセスを介して行われる。ヒドロキシ保護基は当技術分野で周知であり(T. W. GreeneおよびP. G. M. WutsによるPROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & sons, 3
rd Editionを参照されたい;本文献は全ての目的のために参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)、例えば、エーテル(例:アルキルエーテルおよびシリルエーテル、例えばジアルキルシリルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、ジアルキルアルコキシシリルエーテルを含む)、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート、およびホスフェート保護基が含まれる。ヒドロキシ保護基の例には、限定されるものでないが、以下が含まれる:メチルエーテル、メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル、p-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、o-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、(4-メトキシフェノキシ)メチルエーテル、グアヤコールメチルエーテル、t-ブトキシメチルエーテル、4-ペンテニルオキシメチルエーテル、シロキシメチルエーテル、2-メトキシエトキシメチルエーテル、2,2,2-トリクロロエトキシメチルエーテル、ビス(2-クロロエトキシ)メチルエーテル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル、メントキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、1-メトキシシクロヘキシルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル S,S-ジオキシド、1-[(2-クロロ-4-メチル)フェニル]-4-メトキシピペリジン-4-イルエーテル、1-(2-フルオロフェニル)-4-メトキシピペリジン-4-イルエーテル、1,4-ジオキサン-2-イルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテル、テトラヒドロチオフラニルエーテル;置換エチルエーテル、例えば1-エトキシエチルエーテル、1-(2-クロロエトキシ)エチルエーテル、1-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]エチルエーテル、1-メチル-1-メトキシエチルエーテル、1-メチル-1-ベンジルオキシエチルエーテル、1-メチル-1-ベンジルオキシ-2-フルオロエチルエーテル、1-メチル-1フェノキシエチルエーテル、2-トリメチルシリルエーテル、t-ブチルエーテル、アリルエーテル、プロパルギルエーテル、p-クロロフェニルエーテル、p-メトキシフェニルエーテル、ベンジルエーテル、p-メトキシベンジルエーテル、3,4-ジメトキシベンジルエーテル、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリプロピルシリルエーテル、ジメチルイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ジメチルヘキシルシリルエーテル、t-ブチルジメチルシリルエーテル、ジフェニルメチルシリルエーテル、748ベンゾイルギ酸エステル、酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、ジクロロ酢酸エステル、トリクロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、フェニル酢酸エステル、安息香酸エステル、アルキルメチルカーボネート、アルキル9-フルオレニルメチルカーボネート、アルキルエチルカーボネート、アルキル2,2,2,-トリクロロエチルカーボネート、1,1,-ジメチル-2,2,2-トリクロロエチルカーボネート、アルキルスルホネート、メタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トシレート、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、およびt-ブチルメチリデンケタール。好ましい保護基は式:-R、-Si(R)(R)(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NH(R)、-S(O)
2R、-S(O)
2OH、P(O)(OH)
2、および-P(O)(OH)ORで表され、ここで、RはC
1-C
20アルキル、C
2-C
20アルケニル、C
2-C
20アルキニル、-C
1-C
20アルキレン(炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(炭素環)、-C
6-C
10アリール、-C
1-C
20アルキレン(アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(アリール)、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)であり、ここで前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基、アリール、炭素環および複素環基は単独であろうと他の基の一部としてであろうと、場合により置換されている。
【0030】
略語「MMAE」は、モノメチルアウリスタチンEを意味する。
【0031】
略語「MMAF」は、ドバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニンを意味する。
【0032】
本明細書で使用する略語「cAC10-vcE」はvc-MMAE(mc-vc-MMAEとも呼ぶ)抗体薬物複合体を意味し、ここで抗体はキメラAC10抗体である。例示の実施形態において、このキメラAC10抗体は配列番号1に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域、配列番号2に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域、配列番号11に示したアミノ酸配列を有するヒトγI定常域および配列番号12に示したアミノ酸配列を有するヒトκ定常域を有する。例示のcAC10-vcE組成物は抗体当たり平均約3〜約5個の薬物を有し、前記薬物は抗体とチオエーテル結合を介して結合されている。ブレンツキシマブ・ベドチン(ブレンツキシマブベドチン)は臨床試験(Seattle Genetics)中であるcAC10-vcE複合体に対するUSAN名称である。
【0033】
略語「h1F6-mcF」は、抗体がヒト化1F6抗体であるmc-MMAF抗体薬物複合体を意味する。例示の実施形態において、h1F6抗体は配列番号5に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域、配列番号6に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域、配列番号11に示したアミノ酸配列を有するヒトγI定常域および配列番号12に示したアミノ酸配列を有するヒトκ定常域を有する。例示のh1F6-mcF組成物は抗体当たり平均約3種〜約5個の薬物を有し、前記薬物は抗体とチオエーテル結合を介して結合されている。SGN-75は臨床試験(Seattle Genetics)中であるh1F6-mcF複合体である。
【0034】
略語「hBU12-mcF」は、抗体がヒト化BU12抗体であるmc-MMAF抗体薬物複合体を意味する。例示の実施形態において、hBU12抗体は配列番号9に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域、配列番号10に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域、配列番号11に示したアミノ酸配列を有するヒトγI定常域および配列番号12に示したアミノ酸配列を有するヒトκ定常域を有する。例示のhBU12-mcF組成物は抗体当たり平均約3〜約5個の薬物を有し、前記薬物は抗体とチオエーテル結合を介して結合されている。SGN-19Aは臨床試験(Seattle Genetics)中であるhBU12-mcF複合体である。
【0035】
用語「特異的に結合する」は、結合剤、例えば抗体が高度に選択的な様式でその対応する抗原と反応し、多数の他の抗原とは反応しないことを意味する。
【0036】
本明細書で使用する用語「インヒビター」は標的ポリペプチドの生物学的機能を阻害する能力を有する分子を意味する。用語「選択的阻害」または「選択的に阻害する」は標的との直接的または間接的相互作用を介して標的外のシグナル伝達活性と比較して、標的シグナル伝達活性を選好的に低下する薬剤の能力を意味する。
【0037】
「抗体」は、(a)免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的活性部分、すなわち、特定の抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリンファミリーのポリペプチドもしくはそのフラグメント、または(b)抗原と免疫特異的に結合するこのような免疫グロブリンポリペプチドもしくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を意味する。抗体フラグメントの例には、限定されるものでないが、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、scFvおよびscFv-Fcフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体、およびその他の抗体フラグメントから形成される多特異的抗体が含まれる(Holliger and Hudson, 2005, Nat. Biotechnol. 23:1126-1136を参照)。免疫グロブリン分子は免疫グロブリン分子のいずれかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはサブクラスであってもよい。用語免疫グロブリンに含まれるのは、定常域に改変を有する免疫グロブリン分子であり、前記改変にはFcγ受容体と相互作用するアミノ酸残基における改変(例えば、置換、欠失または付加が含まれる)。抗体は一般的に、例えば、Harlow & Lane, Antibody: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)に記載されている。文脈から特に断りがなければ、抗体への言及は抗体誘導体も含む。
【0038】
「抗体誘導体」は以上に規定した抗体であって、異種分子の共有結合付着により改変された、例えば、その抗体に通常無関係な異種ポリペプチドの付着により、またはグリコシル化、脱グリコシル、アセチル化またはリン酸化などにより改変された前記抗体を意味する。
【0039】
本明細書に記載の方法および組成物で使われる抗体は、好ましくは、モノクローナルであり、そしてこれらの抗体をリンカーを介して直接または間接のどちらかでアウリスタチン薬物と複合しうることを条件として、多特異的、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、1本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーにより作製されるフラグメントおよび上記のいずれかの結合フラグメントであってもよい。
【0040】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体;すなわち、集団を構成する個々の抗体が少量存在しうる自然突然変異を除いて同一であることを意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であって、エピトープとも呼ばれる単一の抗原性決定因子を指向する。修飾語「モノクローナル」は、同一のエピトープを指向する抗体の実質的に均質な集団を示すものであって、いずれかの特別な方法による抗体の作製を必要とすると考えてはならない。モノクローナル抗体は公知のいずれかの技法または手法;例えば、最初にKohler et al., 1975, Nature 256:495が記載したハイブリドーマによる方法、または公知の組換えDNA方法(例えば、米国特許4,816,567を参照)により作ることができる。他の例においては、モノクローナル抗体はまた、Clackson et al., 1991, Nature 352: 624-628およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581-597が記載した技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。対照的に、ポリクローナル抗体の調製物中の抗体は典型的には免疫グロブリンアイソタイプおよび/またはクラスの異質集団であって、様々なエピトープ特異性も表す。
【0041】
細胞に対する薬剤の効果に関して、「細胞傷害効果」は細胞の殺滅を意味する。「細胞分裂停止効果」は細胞の増殖阻害を意味する。「細胞傷害剤」は、細胞に対する細胞傷害効果または細胞分裂停止効果を有し、それにより細胞集団内の細胞を、それぞれ枯渇させるかまたはその増殖を阻害する薬剤を意味する。
【0042】
治療を目的とする用語「被験者」または「患者」は、いずれかの動物、特に哺乳動物に分類される動物を意味し、それには、ヒト、家庭および農園の飼育動物、および動物園、スポーツ、または愛玩動物、例えば、イヌ 、ウマ、ネコ、ウシなどが含まれ、好ましくは前記被験者はヒトである。
【0043】
本明細書中で用いる「治療」および「治療法」は、被験者における癌の進行を遅らせる、停止させる、または改善させることを意味する。治療は、腫瘍増殖の阻害、腫瘍増殖の停止、既存の腫瘍の退縮、または生存期間の延長により確認することができる。
【0044】
用語「治療上有効な量」または「有効量」は、被験者における癌の進行を遅らせる、停止させる、または改善するまたは患者の生存期間を延長するのに十分である本明細書に記載の1以上の薬剤または組成物の量を意味する。治療上有効な量は、例えば、疾患進行を遅らせるのに有効であることが示された標的血清濃度を意味してもよい。併用療法に関して用語「治療上有効な量」を用いる場合、これは併用効果が所望の生物学的または医療応答を生じるための、一緒に用いる薬剤の併用量を意味する。効力は治療する症状に応じて慣用の方法で測定することができる。例えば、新生物疾患においては、効力を、疾患進行の時間(TTP)を評価するか、または応答速度(RR)を確認することにより測定することができる。
【0045】
本明細書で使用する用語「製薬上許容される」は、動物における、およびさらに特にヒトにおける使用に対して、連邦または州政府の規制当局により認可されたまたは米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に掲載されたことを意味する。用語「製薬上適合しうる成分」は、それらと共に薬剤または組成物を投与することが製薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。
【0046】
抗体薬物複合体
本明細書に記載の方法は抗体薬物複合体の使用であって、腫瘍細胞を殺滅するおよび/またはその増殖を阻害するための併用療法における前記使用を包含する。本明細書に記載の方法は癌を治療する併用療法における抗体薬物複合体の使用を包含する。抗体-薬物複合体はリガンドユニットとしての抗体および薬物ユニットとしてのアウリスタチンを含む。抗体は、癌細胞の表面上に存在する癌細胞抗原と特異的に結合するものである。抗体薬物複合体は、抗体が特異的に結合する癌細胞抗原を発現する細胞に対して強力な細胞障害性および/または細胞分裂停止活性を有する。薬物ユニットはリンカーユニット(-LU-)を介して抗体と共有結合で連結される。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗体薬物複合体は次式:
L-(LU-D)
p (I)
[式中、Lはリガンドユニットでありかつ癌細胞の表面上にある癌細胞抗原と特異的に結合する抗体であり;(LU-D)はリンカーユニット-薬物ユニット部分であり、ここでLU-はリンカーユニットであり、そして-Dは標的細胞に対して細胞分裂停止のまたは細胞傷害性活性を有するアウリスタチン薬物であり;そしてpは1〜20である]
またはその製薬上許容される塩を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、pは1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、または1〜2の範囲にある。いくつかの実施形態において、pは2〜10、2〜9、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、2〜4または2〜3の範囲にある。他の実施形態において、pは1、2、3、4、5または6である。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体薬物複合体は次式:
L-(A
a-W
w-Y
y-D)
p (II)
[式中、Lはリガンドユニットでありかつ癌細胞の表面上に存在する癌細胞抗原と特異的に結合する抗体であり、-A
a-W
w-Y
y-はリンカーユニット(LU)であり、ここで-A-はストレッチャーユニットであり、aは0または1であり、各-W-は独立してアミノ酸ユニットであり、wは0〜12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサーユニット(例えば、自壊型スペーサーユニット)であり、yは0、1または2であり;
-Dは、標的細胞に対して細胞分裂停止または細胞傷害性活性を有するアウリスタチン薬物ユニットであり:そしてpは1〜20である]
またはその製薬上許容される塩を有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、aは0または1であり、wは0または1であり、そしてyは0、1または2である。いくつかの実施形態において、aは0または1であり、wは0または1であり、そしてyは0または1である。いくつかの実施形態において、pは1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、または1〜2の範囲にある。いくつかの実施形態において、pは2〜10、2〜9、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、2〜4、または2〜3の範囲にある。他の実施形態において、pは1、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態において、wがゼロでない場合、yは1または2である。いくつかの実施形態において、wが1〜12である場合、yは1または2である。いくつかの実施形態において、wは2〜12であり、そしてyは1または2である。いくつかの実施形態において、aは1であり、そしてwおよびyは0である。
【0051】
複数の抗体薬物複合体を含む組成物において、pはリガンド1個当たりの薬物分子の平均数であり、また平均薬物負荷と呼ばれる。平均薬物負荷はリガンド1個当たり1〜約20個の範囲の薬物(D)であってもよい。いくつかの実施形態において、pが平均薬物負荷を表す場合、pは約1、約2、約3、約4、約5または約6である。好ましい実施形態において、pが平均薬物負荷を表す場合、pは約2〜約6、または約3〜約5である。複合反応物の調製におけるリガンド1個当たりの薬物の平均数は通常の手段、例えば、質量分光計、ELISAアッセイ、およびHPLCにより特徴付けることができる。pで表した抗体薬物複合体の定量分布も決定することができる。いくつかの事例において、pが他の薬物負荷をもつ抗体薬物複合体由来のある特定値である均質な抗体薬物複合体の分離、精製、および特徴付けを、逆相HPLCまたは電気泳動などの手法により達成することができる。例示の実施形態において、pは2〜約8である。
【0052】
抗体薬物複合体の作製は当業者に公知のいずれかの技法により実施することができる。概要を述べると、抗体薬物複合体はリガンドユニットとしての抗体、薬物、および場合によって薬物と結合剤を結合するリンカーを含むものである。いくつもの異なる反応が薬物および/またはリンカーの抗体との共有結合に利用可能である。これは抗体分子のアミノ酸残基の反応により実施されることが多く、そのアミノ酸残基にはリシンのアミン基、グルタミン酸およびアスパラギン酸のフリーカルボン酸基、システインのスルフヒドリル基および芳香族アミノ酸の様々な部分が含まれる。最も普通に用いられる共有結合の非特異的方法は、化合物のカルボキシ(またはアミノ)基を抗体のアミノ(またはカルボキシ)基と連結するカルボジイミド反応である。さらに二官能性薬剤、例えば、ジアルデヒドまたはイミドエステルが化合物のアミノ基を抗体分子のアミノ基と連結するために用いられている。薬物の結合剤との結合にはまた、シッフ塩基反応も利用可能である。この方法はグリコールまたはヒドロキシ基を含有する薬物の過ヨウ素酸酸化、そしてアルデヒドの形成に関わり、次いでこれを結合剤と反応させる。結合は結合剤のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して起こる。イソチオシアネートも、薬物を結合剤と共有結合するためのカップリング剤として用いることができる。他の技法は当業者に公知である。
【0053】
特定の実施形態においては、リンカーの前駆体である中間体を適当な条件下で薬物と反応させる。ある特定の実施形態においては、薬物および/または中間体上の反応基を用いる。薬物と中間体の間の反応の生成物、または誘導された薬物を、続いて抗体と適当な条件下で反応させる。
【0054】
リンカーユニット
典型的な抗体薬物複合体は、薬物ユニットとリガンドユニットの間にリンカー領域を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは細胞内条件のもとで切断可能であり、その結果、リンカーの切断により細胞内環境において薬物ユニットがリガンドから遊離される。なお他の実施形態においては、リンカーユニットが切断可能でなくても、薬物は、例えば、抗体分解により遊離される。
【0055】
いくつかの実施形態において、リンカーは細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤により切断されうる。リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素(限定されるものでないが、リソソームまたはエンドソームのプロテアーゼを含む)により切断されるペプチドリンカーであってもよい。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは長さが少なくとも2個のアミノ酸または少なくとも3個のアミノ酸からなる。切断剤にはカテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ、これらは全てジペプチド薬物誘導体を切断して標的細胞内で活性薬物を遊離することが公知である(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照されたい)。最も典型的なものは、標的癌細胞内に存在する酵素により切断されるペプチドリンカーである。例えば、チオール依存性プロテアーゼのカテプシン-B(癌組織において高度に発現される)により切断されるペプチドリンカーを用いることができる(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。かかるリンカーの他の例は、例えば、米国特許6,214,345または米国特許7,659,241に記載されていて、これらはそれぞれ本明細書に参照によりその全てが全ての目的のために組み込まれる。具体的な実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである (例えば、val-citリンカーをもつドキソルビシンの合成を記載する米国特許6,214,345を参照されたい)。治療薬の細胞内タンパク質分解による遊離を用いる利点は、その薬剤が複合体化されると一般に弱毒化されかつその複合体の血清安定性が典型的には高いことである。
【0056】
さらに他の実施形態において、リンカーは還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で知られており、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPTを用いて形成できるものが含まれる(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931;Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987);さらに米国特許4,880,935を参照されたい)。
【0057】
さらに他の具体的な実施形態において、リンカーはマロネートリンカー(Johnsonら, 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら, 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、または3'-N-アミド類似体(Lauら, 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)である。
【0058】
さらに他の実施形態において、リンカーユニットは切断可能でなく、薬物は抗体の分解により遊離される(本明細書に参照によりそのまま全ての目的のために組み込まれる米国特許7,498,298を参照されたい)。
【0059】
一態様において、リンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性がない。本明細書中でリンカーに関して用いる「細胞外環境に対して実質的に感受性がない」は、抗体-薬物複合体が細胞外環境(例えば、血漿中)に存在するとき、その抗体-薬物複合体のサンプルにおいて、リンカーの約20%以下、一般的には約15%以下、より一般的には約10%以下、さらに一般的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下しか切断されないことを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性がないかどうかは、例えば、抗体-薬物複合体を血漿と共に所定の時間(例えば、2、4、8、16または24時間)インキュベートし、その後、血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することにより、確認することができる。
【0060】
他の非相互排他的な実施形態において、リンカーは細胞の内部取込みを促進する。特定の実施形態において、リンカーは治療薬剤と結合している場合(すなわち、本明細書に記載した抗体薬物複合体のリンカー-治療薬剤部分の環境で)細胞の内部取込みを促進する。さらに他の実施形態では、リンカーはアウリスタチン化合物および抗体の両方と結合した状態で細胞の内部取込みを促進する。
【0061】
本組成物および方法と一緒に使用できる例示のリンカーユニット、ストレッチャーユニット、アミノ酸ユニット、自壊型スペーサーユニット、および薬物ユニットの合成および構造は、例えば、WO 2004010957、米国特許公開20060074008、米国特許公開20050238649、および米国特許公開20060024317、および米国特許公開2009010945に記載されている(これらはそれぞれ全ての目的のために参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)。
【0062】
「リンカーユニット」(LU)は抗体薬物複合体を形成するために薬物ユニットとリガンドユニットを連結するために用いることができる二官能性化合物である。いくつかの実施形態において、リンカーユニットは次式:
-A
a-W
w-Y
y-
[式中、-A-はストレッチャーユニットであり、aは0または1であり、各-W-は独立して、アミノ酸ユニットであり、wは0〜12の整数であり、-Y-は自壊型スペーサーユニットであり、そしてyは、0、1または2である]
を有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、aは0または1であり、wは0または1であり、そしてyは0、1または2である。いくつかの実施形態において、aは0または1であり、wは0または1であり、そしてyは0または1である。いくつかの実施形態において、wが1〜12である場合、yは1または2である。いくつかの実施形態において、wは2〜12でありおよびyは1または2である。いくつかの実施形態において、aは1でありそしてwおよびyは0である。
【0064】
ストレッチャーユニット
ストレッチャーユニット(A)は、存在する場合、リガンドユニット(例えば、抗体)を(もし存在すれば)アミノ酸ユニット(-W-)に、(もし存在すれば)スペーサーユニット(-Y-)に、または薬物ユニット(-D)に連結することができる。抗体上に自然にまたは化学操作を介して存在しうる有用な官能基には、限定されるものでないが、スルフヒドリル、アミノ、ヒドロキシル、炭水化物のアノマーのヒドロキシル基、およびカルボキシルが含まれる。好適な官能基はスルフヒドリルおよびアミノである。一つの例として、スルフヒドリル基を抗体の分子内ジスルフィド結合の還元により生成することができる。他の実施形態においては、スルフヒドリル基を、抗体のリシン部分のアミノ基を、2-イミノチオラン(Traut試薬)または他のスルフヒドリル生成試薬と反応させることにより生成することができる。特定の実施形態において、抗体は組換え抗体であり、1個以上のリシンを含むように遺伝子操作する。特定の他の実施形態においては、組換え抗体を追加のスルフヒドリル基、例えば追加のシステインを含むように遺伝子操作する。
【0065】
一実施形態において、ストレッチャーユニットはリガンドユニットの硫黄原子と結合している。硫黄原子はリガンドのスルフヒドリル基由来であってもよい。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットは式IIIaおよびIIIbの角括弧内に記されていて、ここでL-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは先に定義した通りであり、そしてR
aは-C
1-C
10アルキレン-、-C
2-C
10アルケニレン-、-C
2-C
10アルキニレン-、-カルボシクロ-、-O-(C
1-C
8アルキレン)-、O-(C
2-C
8アルケニレン)-、-O-(C
2-C
8アルキニレン)-、-アリーレン-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-、-C
2-C
10アルケニレン-アリーレン、-C
2-C
10アルキニレン-アリーレン、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-、-アリーレン-C
2-C
10アルケニレン-、-アリーレン-C
2-C
10アルキニレン-、-C
1-C
10アルキレン-(カルボシクロ)-、-C
2-C
10アルケニレン-(カルボシクロ)-、-C
2-C
10アルキニレン-(カルボシクロ)-、-(カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-(カルボシクロ)-C
2-C
10アルケニレン-、-(カルボシクロ)-C
2-C
10アルキニレン、ヘテロシクロ-、-C
1-C
10アルキレン-(ヘテロシクロ)-、-C
2-C
10アルケニレン-(ヘテロシクロ)-、-C
2-C
10アルキニレン-(ヘテロシクロ)-、-(ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-(ヘテロシクロ)-C
2-C
10アルケニレン-、-(ヘテロシクロ)-C
2-C
10アルキニレン-、-(CH
2CH
2O)
r-、または-(CH
2CH
2O)
r-CH
2-から選択され、そしてrは1〜10の整数であり、ここで前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、カルボシクロ、ヘテロシクロ、およびアリーレン基は、単独であろうと他の基の一部としてであろうと、場合により置換されている。いくつかの実施形態において、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、カルボシクロ、ヘテロシクロ、およびアリーレン基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、無置換である。いくつかの実施形態において、R
aは-C
1-C
10アルキレン-、-カルボシクロ-、-O-(C
1-C
8アルキレン)-、-アリーレン-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-(カルボシクロ)-、-(カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-C
3-C
8ヘテロシクロ-、-C
1-C
10アルキレン-(ヘテロシクロ)-、-(ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-(CH
2CH
2O)
r-、および-(CH
2CH
2O)
r-CH
2-から選択され;そしてrは1〜10の整数であり、ここで前記アルキレン基は無置換であり、そしてこれらの基の残部は場合により置換されている。
【0066】
明示されない場合でも、全ての例示の実施形態から、1〜20個の薬物部分または薬物-リンカー部分を1個のリガンドに連結しうる(p=1〜20)ことは理解されよう。
【化1】
(IIIa)
【0068】
ストレッチャーユニットの1つの具体例は、R
aが-(CH
2)
5-である式IIIa:
【化3】
【0070】
ストレッチャーユニットの他の具体例は、R
aが-(CH
2CH
2O)
r-CH
2であり;rが2である式IIIa:
【化4】
【0072】
ストレッチャーユニットの1つの具体例は、R
aが-アリーレン-またはアリーレン-C
1-C
10アルキレン-である式IIIaである。いくつかの実施形態において、アリール基は無置換のフェニル基である。
【0073】
さらなる他のストレッチャーユニットの具体例は、式IIIbにおいてR
aが-(CH
2)
5-である式IIIa:
【化5】
【0075】
特定の実施形態において、ストレッチャーユニットは、リガンドユニットの硫黄原子とストレッチャーユニットの硫黄原子の間のジスルフィド結合を介して、リガンドユニットに連結される。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットは、式IV(式中、R
a、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは先に定義したとおりである)の角括弧内に示される:
【化6】
(IV)
【0076】
本出願全体を通して、下記式のS部分は、特に文脈によって示されない限り、リガンドユニットの硫黄原子を意味することに留意されたい。
【化7】
【0077】
さらに他の実施形態において、ストレッチャーはLとの結合前に、リガンドの一級または二級アミノ基と結合を形成しうる反応部位を含む。かかる反応部位の例には、限定されるものでないが、活性型エステル、例えば、スクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、酸無水物、酸塩化物、スルホニルクロリド、イソシアネートおよびイソチオシアネートが含まれる。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットを、式VaおよびVb:
【化8】
(Va)
【0079】
[式中、-R
a-、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは先に定義したとおりである]の角括弧内に示した。
【0080】
いくつかの実施形態において、ストレッチャーはリガンド上に存在しうる修飾された炭水化物の(-CHO)基と反応する反応部位を含む。例えば、炭水化物を過ヨウ素酸ナトリウムなどの試薬によりおだやかに酸化し、生じる酸化された炭水化物の(-CHO)ユニットを、ヒドラジド、オキシム、一級または二級アミン、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドなどの官能基(例えば、Kanekoら, 1991, Bioconjugate Chem. 2:133-41に記載のもの)を含むストレッチャーと縮合させることができる。この実施形態の代表的なストレッチャーユニットを、式VIa、VIbおよびVIc(式中、-R17-、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは先に定義したとおりである):
【化10】
(VIa)
【0084】
アミノ酸ユニット
アミノ酸ユニット(-W-)は、存在する場合、ストレッチャーユニットを、もしスペーサーユニットが存在すれば、スペーサーユニットに連結し、もしスペーサーユニットが存在しなければ、薬物ユニットに連結し、そしてもしストレッチャーユニットとスペーサーユニットが存在しなければ、リガンドユニットを薬物ユニットに連結する。
【0085】
-Ww-は、例えば、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドまたはドデカペプチドユニットであってもよい。各-W-ユニットは、独立して、角括弧で以下に示した式:
【化13】
【0086】
[式中、R
b は水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ベンジル、p-ヒドロキシベンジル、-CH
2OH、-CH(OH)CH
3、-CH
2CH
2SCH
3、-CH
2CONH
2、-CH
2COOH、-CH
2CH
2CONH
2、-CH
2CH
2COOH、-(CH
2)
3NHC(=NH)NH
2、-(CH
2)
3NH
2、-(CH
2)
3NHCOCH
3、-(CH
2)
3NHCHO、-(CH
2)
4NHC(=NH)NH
2、-(CH
2)
4NH
2、-(CH
2)
4NHCOCH
3、-(CH
2)
4NHCHO、-(CH
2)
3NHCONH
2、-(CH
2)
4NHCONH
2、-CH
2CH
2CH(OH)CH
2NH
2、2-ピリジルメチル-、3-ピリジルメチル-、4-ピリジルメチル-、フェニル、シクロヘキシル、
【化14】
【0087】
である]を有し、そしてwは0〜12の整数である。
【0088】
いくつかの実施形態においては、アミノ酸ユニットは1種以上の酵素(癌または腫瘍関連プロテアーゼを含む)により酵素的に切断されて薬物ユニット(-D)を遊離し、これが、一実施形態においては、遊離されるとin vivoでプロトン化され、薬物(D)を与えうる。
【0089】
特定の実施形態において、アミノ酸ユニットは天然のアミノ酸を含みうる。他の実施形態では、アミノ酸ユニットは非天然のアミノ酸を含みうる。具体的なWwユニットは式(VII)〜(IX)で表される:
【化15】
(VII)
【0090】
[式中、R
cおよびR
dは次表:
【表1】
【0091】
の通りである];
【化16】
(VIII)
【0092】
[式中、R
c、R
dおよびR
eは次表:
【表2】
【0093】
の通りである];
【化17】
(IX)
【0094】
[式中、R
c、R
d、R
eおよびR
fは次表:
【表3】
【0096】
例示のアミノ酸ユニットには、限定されるものでないが、式VIIのユニット[式中、R
cはベンジルでありかつR
dは-(CH
2)
4NH
2である;R
cはイソプロピルでありかつR
dは-(CH
2)
4NH
2である;またはR
cはイソプロピルでありかつR
dは-(CH
2)
3NHCONH
2である]が含まれる。他の例示のアミノ酸ユニットは、式VIIIのユニット[式中、R
cはベンジルであり、R
dはベンジルであり、そしてR
eは-(CH
2)
4NH
2)である]が含まれる。
【0097】
有用な-Ww-ユニットは、特定の酵素(例えば、腫瘍関連プロテアーゼ)による酵素的切断に対するそれらの選択性を考慮して設計し、最適化することができる。一実施形態において、-Ww-ユニットは、その切断がカテプシンB、CおよびD、またはプラスミンプロテアーゼにより触媒されるものである。
【0098】
一実施形態において、-Ww-はジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドである。R
b、R
c、R
d、R
eまたはR
fが水素以外である場合、R
b、R
c、R
d、R
eまたはR
fが結合する炭素原子はキラルである。
【0099】
R
b、R
c、R
d、R
eまたはR
fが結合する各炭素原子は、独立して、(S)または(R)立体配置である。
【0100】
アミノ酸ユニットの一態様において、アミノ酸ユニットはバリン-シトルリン(すなわち、vcまたはval-cit)である。他の態様において、アミノ酸ユニットはフェニルアラニン-リシン(すなわち、fk)である。さらに他の態様において、アミノ酸ユニットはN-メチルバリン-シトルリンである。さらに他の態様において、アミノ酸ユニットは5-アミノ吉草酸、ホモフェニルアラニンリシン、テトライソキノリンカルボキシレートリシン、シクロヘキシルアラニンリシン、イソニペコチン酸リシン、β-アラニンリシン、グリシンセリンバリングルタミンおよびイソニペコチン酸である。
【0101】
スペーサーユニット
スペーサーユニット(-Y-)は、存在する場合、アミノ酸ユニットが存在すれば、アミノ酸ユニットを薬物ユニットに連結する。あるいは、スペーサーユニットは、アミノ酸ユニットが存在しなければ、ストレッチャーユニットを薬物ユニットに連結する。スペーサーユニットはまた、アミノ酸ユニットとストレッチャーユニットの両方が存在しなければ、薬物ユニットをリガンドユニットに連結する。
【0102】
スペーサーユニットには2つの一般的な型、すなわち非自壊型または自壊型がある。非自壊型スペーサーユニットは、抗体-薬物複合体からのアミノ酸ユニットの切断(特に酵素的切断)後に、スペーサーユニットの一部または全部が薬物部分に結合したまま残るものである。非自壊型スペーサーユニットの例には、限定されるものでないが、(グリシン-グリシン)スペーサーユニットおよびグリシンスペーサーユニットが含まれる(両方をスキーム1に示す)(下記)。グリシン-グリシンスペーサーユニットまたはグリシンスペーサーユニットを含む複合体が酵素(例えば、腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼ、またはリンパ球関連プロテアーゼ)による酵素的切断を受けると、グリシン-グリシン-薬物部分またはグリシン-薬物部分がL-Aa-Ww-から切断される。一実施形態においては、独立した加水分解反応が標的細胞内で起こり、グリシン-薬物部分の結合を切断して薬物を遊離する。
【0104】
いくつかの実施形態において、非自壊型スペーサーユニット(-Y-)は-Gly-である。いくつかの実施形態において、非自壊型スペーサーユニット(-Y-)は-Gly-Gly-である。
【0105】
一実施形態においては、スペーサーユニットが存在しない薬物-リンカー複合体(y=0)、またはその製薬上許容される塩が提供される。
【0106】
あるいは、自壊型スペーサーユニットを含む複合体は-Dを遊離することができる。本明細書中で用いる「自壊型スペーサー」とは、間隔のあいた2つの化学部分を一緒に、安定した三成分分子へと共有結合で連結することができる二官能性化学成分を意味する。前記二官能性化学部分は、第1の化学部分との結合が切断されると、第2の化学部分から自発的に分離しうる。
【0107】
いくつかの実施形態において、-Y
y-はp-アミノベンジルアルコール(PAB)ユニット(スキーム2および3参照)であり、そのフェニレン部分がQ
mで置換されており、ここでQは-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、そしてmは0〜4の整数である。前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、-Y-はPAB基であり、これはPAB基のアミノ窒素原子を介して-Ww-に連結され、かつカーボネート、カルバメートまたはエーテル基を介して-Dに直接連結される。いずれの特定の理論または作用機序にもとらわれることなく、スキーム2は、Toki et al., 2002, J. Org. Chem. 67:1866-1872に記載された、カルバメートまたはカーボネート基を介して-Dに直接結合されたPAB基の起こりうる薬物遊離の機構を示す。
【0110】
スキーム2において、Qは-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0〜4の整数であり、そしてpは1〜約20である。
【0111】
前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよい。
【0112】
いずれの特定の理論または作用機序にもとらわれることなく、スキーム3は、エーテルまたはアミン結合を介して-Dに直接結合されたPAB基の起こりうる薬物遊離メカニズムを示し、ここでDは薬物ユニットの一部として酸素または窒素基を含む。
【0114】
スキーム3において、Qは-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0〜4の整数であり、そしてpは1〜約20である。前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよい。
【0115】
自壊型スペーサーの他の例には、限定されるものでないが、PAB基と電子的に類似する芳香族化合物、例えば2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体 (Hay et al., 1999, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)およびオルトまたはパラ-アミノベンジルアセタール類が含まれる。アミド結合の加水分解の際に環化を受けるスペーサーを用いることができ、例えば、置換および非置換の4-アミノ酪酸アミド(Rodriguesら, 1995, Chemistry Biology 2:223)、適当に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al., 1972, J. Amer. Chem. Soc. 94:5815)、2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al., 1990, J. Org. Chem. 55:5867)などが用いられる。また、グリシンのα位で置換されたアミン含有薬物の脱離(Kingsburyら, 1984, J. Med. Chem. 27:1447)も自壊型スペーサーの例である。
【0116】
いくつかの実施形態において、-D部分は同じものである。さらに他の実施形態において、-D部分は異なるものである。
【0117】
一態様において、スペーサーユニット(-Y
y-)は式(X)〜(XII):
【化21】
(X)
【0118】
[式中、Qは-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-O-(C
2-C
8アルケニル)、-O-(C
2-C
8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり;そしてmは0〜4の整数であり、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよい]、
【化22】
(XI)
【0121】
選択した実施形態のグループにおいて、式IおよびIIの複合体は
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0123】
[式中、A
a、W
w、Y
y、DおよびLは本明細書に記載の意味を有する]である。ある特定の実施形態において、wおよびyはそれぞれ0、1または2である(好ましくは、wが1または2である場合、yは1または2である)。
【0124】
薬物ユニット
抗体薬物複合体の薬物ユニットはアウリスタチン、例えば、アウリスタチンE(ドラスタチン-10の誘導体として当技術分野では公知である)またはその誘導体である。前記アウリスタチンは、例えば、アウリスタチンEとケト酸の間で形成されるエステルであってもよい。例えば、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させてそれぞれAEBおよびAEVBを作製してもよい。他の典型的なアウリスタチンにはAFP、MMAF、およびMMAEが含まれる。例示のアウリスタチンの合成および構造は、米国特許出願2003-0083263、2005-0238649および2005-0009751;国際特許出願WO02/088172、および米国特許6,323,315;6,239,104;6,034,065;5,780,588;5,665,860;5,663,149;5,635,483;5,599,902;5,554,725;5,530,097;5,521,284;5,504,191;5,410,024;5,138,036;5,076,973;4,986,988;4,978,744;4,879,278;4,816,444;および4,486,414に記載されており、これらはそれぞれ本明細書に参照によりそのまま全ての目的のために組み込まれる。
【0125】
アウリスタチンは微小管動力学ならびに核および細胞分裂を妨害しそして抗癌活性を有することが知られている。アウリスタチンはチューブリンと結合して、所望の細胞株に対して細胞傷害または細胞静止効果を示しうる。当技術分野で公知のいくつかの異なるアッセイがあり、これを用いてアウリスタチンまたは得られる抗体薬物複合体が所望の細胞株に対して細胞傷害または細胞静止効果を示すかどうかを確認することができる。
【0126】
化合物がチューブリンと結合するかどうかを調べるための方法は当技術分野で公知である。例えば、Muller et al., Anal. Chem 2006, 78, 4390-4397; Hamelら, Molecular Pharmacology, 1995 47: 965-976; およびHamel et al., The Journal of Biological Chemistry, 1990 265:28, 17141-17149を参照されたい。本発明の目的のために、チューブリンに対する化合物の相対的親和性を測定することが可能である。
【0127】
いくつかの好ましい本発明のアウリスタチンは、チューブリンに対するMMAEの結合親和性より10倍低い親和性(より弱い親和性)から、チューブリンに対するMMAEの結合親和性より10倍高い、20倍高い、または100倍さえも高い親和性(より高い親和性)の範囲でチューブリンと結合する。
【0128】
いくつかの実施形態において、-Dは式D
EまたはD
F:
【化30】
【0129】
[式中、独立して各位置において、波線は結合を示し;
R
2は-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり;
R
3は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、炭素環、-C
1-C
20アルキレン(炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(炭素環)、-アリール、-C
1-C
20アルキレン(アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(アリール)、-複素環、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)であり;
R
4は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、炭素環、-C
1-C
20アルキレン(炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(炭素環)、-アリール、-C
1-C
20アルキレン(アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(アリール)、-複素環、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)であり;
R
5は-Hまたは-C
1-C
8アルキルであるか;
または、R
4とR
5は一緒に炭素環を形成しかつ式-(CR
aR
b)
s-を有し、ここでR
aおよびR
bは独立して-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、または-炭素環であり、そしてsは2、3、4、5または6であり、
R
6は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり;
R
7は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、-炭素環、-C
1-C
20アルキレン(炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(炭素環)、-アリール、-C
1-C
20アルキレン(アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(アリール)、複素環、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)であり;
各R
8は独立して-H、-OH、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、-O-(C
1-C
20アルキル)、-O-(C
2-C
20アルケニル)、-O-(C
1-C
20アルキニル)、または-炭素環であり;
R
9は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり;
R
19は-アリール、-複素環、または-炭素環であり;
R
20は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、-炭素環、-O-(C
1-C
20アルキル)、-O-(C
2-C
20アルケニル)、-O-(C
2-C
20アルキニル)、またはOR
18であり、ここでR
18は-H、ヒドロキシル保護基、またはOR
18が=Oを表す場合は直接結合であり、
R
21は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニル、-アリール、-複素環、または-炭素環であり;
R
10は-アリールまたは-複素環であり;
Zは-O-、-S-、-NH-、または-NR
12-であり、ここでR
12は-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニルであり;
R
11は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、-アリール、-複素環、-(R
13O)
m-R
14であり;
または-(R
13O)
m-CH(R
15)
2であり;
mは0〜1000の整数であり;
R
13は-C
2-C
20アルキレン、-C
2-C
20アルケニレン、または-C
2-C
20アルキニレンであり;
R
14は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり;
各R
15は独立して-H、-COOH、-(CH
2)
n-N(R
16)
2、-(CH
2)
n-SO
3H、-(CH
2)
n-SO
3-C
1-C
20アルキル、-(CH
2)
n-SO
3-C
2-C
20アルケニル、または-(CH
2)
n-SO
3-C
2-C
20アルキニルであり;
各R
16は独立して-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニルまたは-(CH
2)
n-COOHであり;そして
nは0〜6の整数であり;ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよい]
のアウリスタチンまたはその製薬上許容される塩の形である。
【0130】
式D
Eのアウリスタチンには、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、および複素環基が無置換であるものが含まれる。
【0131】
式D
Eのアウリスタチンには、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、およびR
9の基が無置換でありかつR
19、R
20およびR
21の基が場合により本明細書に記載の通り置換されたものが含まれる。
【0132】
式D
Eのアウリスタチンには、
R
2は-C
1-C
8アルキルであり;
R
3、R
4およびR
7は独立して、-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、単環式C
3-C
6炭素環、-C
1-C
20アルキレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
6-C
10アリール、-C
1-C
20アルキレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(C
6-C
10アリール)、-複素環、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)から選択され;ここで前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、炭素環、アリール、および複素環基は場合により置換されていて;
R
5は-水素であり;
R
6は-C
1-C
8アルキルであり;
各R
8は独立して-OH、-O-(C
1-C
20アルキル)、-O-(C
2-C
20アルケニル)、または-O-(C
2-C
20アルキニル)から選択され、ここで前記アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は場合により置換されていて;
R
9は-水素または-C
1-C
8アルキルであり;
R
19は任意に置換されたフェニルであり;
R
20はOR
18であり;ここでR
18はH、ヒドロキシル保護基、またはOR
18が=Oを表す場合には直接結合であり;
R
21は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、または-炭素環から選択され;ここで前記アルキル、アルケニル、アルキニル、および炭素環基は任意に置換されているもの;
またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0133】
式D
Eのアウリスタチンには、
R
2はメチルであり;
R
3は-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、または-C
2-C
8アルキニルであり、ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は場合により置換されていて;
R
4は-H、-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニル、-C
2-C
8アルキニル、単環式C
3-C
6炭素環、-C
6-C
10アリール、-C
1-C
8アルキレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
8アルケニレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
8アルキニレン(C
6-C
10アリール)、-C
1-C
8アルキレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
8アルケニレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
8アルキニレン(単環式C
3-C
6炭素環)であり;前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていて;
R
5はHであり; R
6はメチルであり;
R
7は-C
1-C
8アルキル、-C
2-C
8アルケニルまたは-C
2-C
8アルキニルであり;
各R
8はメトキシであり;
R
9は-水素または-C
1-C
8アルキルであり;
R
19はフェニルであり;
R
20 はOR
18であり;ここでR
18は-H、ヒドロキシル保護基、またはOR
18が=Oを表す場合には直接結合であり;
R
21はメチルであるもの;
またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0134】
式D
Eのアウリスタチンには、R
2はメチルであり;R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり;R
4はC
1-C
5アルキルであり;R
5はHであり;R
6はメチルであり;R
7はイソプロピルまたはsec-ブチルであり;R
8はメトキシであり;R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり;R
19はフェニルであり;R
20はOR
18であり;ここでR
18はH、ヒドロキシル保護基、またはOR
18が=Oを表す場合には直接結合であり:そしてR
21はメチルであるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0135】
式D
Eのアウリスタチンには、R
2はメチルまたはC
1-C
3アルキルであり;R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり;R
4はC
1-C
5アルキルであり;R
5はHであり;R
6はC
1-C
3アルキルであり;R
7はC
1-C
5アルキルであり;R
8はC
1-C
3アルコキシであり;R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり;R
19はフェニルであり;R
20はOR
18であり;ここでR
18はH、ヒドロキシル保護基、またはOR
18が=Oを表す場合には直接結合であり:そしてR
21はC
1-C
3アルキルであるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0136】
式D
Fのアウリスタチンには、
R
2はメチルであり;
R
3、R
4、およびR
7は独立して-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、単環式C
3-C
6炭素環、-C
1-C
20アルキレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
20アルケニレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
2-C
20アルキニレン(単環式C
3-C
6炭素環)、-C
6-C
10アリール、-C
1-C
20アルキレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
20アルケニレン(C
6-C
10アリール)、-C
2-C
20アルキニレン(C
6-C
10アリール)、-複素環、-C
1-C
20アルキレン(複素環)、-C
2-C
20アルケニレン(複素環)、または-C
2-C
20アルキニレン(複素環)から選択され;前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、単独であろうとまたは他の基の一部であろうと、場合によっては置換されていてもよく;
R
5は-Hであり;
R
6はメチルであり;
各R
8はメトキシであり;
R
9は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり;ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は場合により任意に置換されていて;
R
10は任意に置換されたアリールまたは任意に置換された複素環であり;
Zは-O-、-S-、-NH-、または-NR
12-であり、ここでR
12は-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり、それらはそれぞれ場合により置換されていて;
R
11は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニル、-アリール、-複素環、-(R
13O)
m-R
14、または-(R
13O)
m-CH(R
15)
2であり、ここで前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、および複素環基は場合により置換されていて;
mは0〜1000の整数であり;
R
13は-C
2-C
20アルキレン、-C
2-C
20アルケニレン、または-C
2-C
20アルキニレンであり、それらはそれぞれ場合により置換されていて;
R
14は-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、または-C
2-C
20アルキニルであり、ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は場合により置換されていて;
各R
15は独立して-H、-COOH、-(CH
2)
n-N(R
16)
2、-(CH
2)
n-SO
3H、-(CH
2)
n-SO
3-C
1-C
20アルキル、-(CH
2)
n-SO
3-C
2-C
20アルケニル、または-(CH
2)
n-SO
3-C
2-C
20アルキニルであり、ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は場合により置換されていて;
R
16はそれぞれ独立して-H、-C
1-C
20アルキル、-C
2-C
20アルケニル、-C
2-C
20アルキニルまたは-(CH
2)
n-COOHであり、ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は任意に置換されていて;
nは0〜6の整数であるもの;
またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0137】
これらの特定の実施形態において、R
10は場合により置換されたフェニルである。
【0138】
式D
Fのアウリスタチンには、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、およびR
9の基が無置換でありかつR
10およびR
11が本明細書に記載の通りであるものが含まれる。
【0139】
式D
Fのアウリスタチンには、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、および 複素環基は無置換であるものが含まれる。
【0140】
式D
Fのアウリスタチンには、R
2はC
1-C
3アルキルであり:R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり:R
4はC
1-C
5アルキルであり:R
5はHであり:R
6はC
1-C
3アルキルであり:R
7はC
1-C
5アルキルであり:R
8はC
1-C
3アルコキシであり:R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり:R
10は任意に置換されたフェニルであり:ZはO、S、またはNHであり:そしてR
11は本明細書に定義した通りであるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0141】
式D
Fのアウリスタチンには、R
2はメチルであり;R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり;R
4はC
1-C
5アルキルであり;R
5はHであり;R
6はメチルであり;R
7はイソプロピルまたはsec-ブチルであり;R
8はメトキシであり;R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり;R
10は任意に置換されたフェニルであり;ZはO、S、またはNHであり:そしてR
11は本明細書に定義した通りであるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0142】
式D
Fのアウリスタチンには、R
2はメチルであり;R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり;R
4はC
1-C
5アルキルであり;R
5はHであり;R
6はメチルであり;R
7はイソプロピルまたはsec-ブチルであり;R
8はメトキシであり;R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり;R
10はフェニルであり:そしてZはOまたはNHであり、およびR
11は本明細書に定義した通りで、好ましくは水素であるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0143】
式D
Fのアウリスタチンには、R
2はC
1-C
3アルキルであり;R
3はHまたはC
1-C
3アルキルであり;R
4はC
1-C
5アルキルであり;R
5はHであり;R
6はC
1-C
3アルキルであり;R
7はC
1-C
5アルキルであり;R
8はC
1-C
3アルコキシであり;R
9は水素またはC
1-C
8アルキルであり;R
10はフェニルであり:そしてZはOまたはNHであり、およびR
11は本明細書に定義した通りで、好ましくは水素であるもの;またはそれらの製薬上許容される塩の形が含まれる。
【0144】
式D
EまたはD
Fのアウリスタチンには、R
3、R
4およびR
7は独立してイソプロピルまたはsec-ブチルであり、そしてR
5は-Hであるものが含まれる。例示の実施形態において、R
3およびR
4はそれぞれイソプロピルであり、R
5はHであり、そしてR
7はsec-ブチルである。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0145】
式D
EまたはD
Fのアウリスタチンには、R
2およびR
6はそれぞれメチルであり、そしてR
9はHであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0146】
式D
EまたはD
Fのアウリスタチンには、存在するR
8は-OCH
3であるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0147】
式D
EまたはD
Fのアウリスタチンには、R
3およびR
4はそれぞれイソプロピルであり、R
2およびR
6はそれぞれメチルであり、R
5はHであり、R
7はsec-ブチルであるものが含まれる。存在するR
8はそれぞれ-OCH
3であり、そしてR
9はHである。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0148】
式D
Fのアウリスタチンには、Zは-O-または-NH-であるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0149】
式D
Fのアウリスタチンには、R
10はアリールであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0150】
式D
Fのアウリスタチンには、R
10は-フェニルであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0151】
式D
Fのアウリスタチンには、Zは-O-であり、そしてR
11はH、メチルまたはt-ブチルであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0152】
式D
Fのアウリスタチンには、Zは-NHである場合、R
11は-(R
13O)
m-CH(R
15)
2であり、ここで、R
15は-(CH
2)
n-N(R
16)
2であり、そしてR
16は-C
1-C
8アルキルまたは-(CH
2)
n-COOHであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0153】
式D
Fのアウリスタチンには、Zは-NHである場合、R
11は-(R
13O)
m-CH(R
15)
2であり、ここでR
15はHまたは-(CH
2)
n-SO
3Hであるものが含まれる。置換基の残りは本明細書に定義した通りである。
【0154】
好ましい実施形態において、Dは式D
Eのアウリスタチンである場合、wは1〜12、好ましくは2〜12の整数であり、yは1または2であり、そしてaは1または2、好ましくは1である。
【0155】
Dは式D
Fのアウリスタチンであるいくつかの実施形態において、aは1でありそしてwおよびyは0である。
【0156】
具体的な薬物ユニット(-D)には、次の構造:
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0157】
を有する薬物ユニットまたはそれらの製薬上許容される塩もしくは溶媒和物が含まれる。
【0158】
一態様においては、親水性基、例えば、限定されるものでないが、トリエチレングリコールエステル(TEG)を薬物ユニットとR
11にて結合することができる。理論にとらわれることなく、前記親水基は薬物ユニットの内部移行および非凝集化を助ける。
【0159】
例示の抗体薬物複合体は次に掲げた構造(ここで「mAb」はモノクローナル抗体を表しかつSは抗体の硫黄原子を表す)を有する。一態様において、この硫黄原子はシステイン残基由来である。一実施形態において、システイン残基は還元で生じた鎖間チオールのシステイン残基である。他の態様において、システイン残基は抗体中に導入されたシステイン残基である。添字pは1〜20の整数であり、好ましくは1〜約5である。pが複数の抗体薬物複合体を含む組成物中のリガンド1個当たりの薬物分子の平均数を表す実施形態において、pは好ましくは約2〜約6、または約3〜5である。
【化35】
L-mc-vc-MMAF、
【0160】
【化36】
L-mc-vc-MMAE(vcEまたはvcMMAE)または
【0161】
【化37】
L-mc-MMAF(mcFまたはmcMMAF)、
【0162】
またはそれらの製薬上許容される塩の形。
【0163】
リガンドユニット
本発明においては、抗体薬物複合体中のリガンドユニット(例えば、抗体)が癌細胞の表面上にある癌細胞抗原と特異的に結合する。
【0164】
例示の実施形態において、抗体はPI3K-AKT-mTOR経路の上方調節(PI3K/AKT mTOR経路の構成的活性化を含む)を示す癌細胞の表面上にある癌細胞抗原と特異的に結合しうる。一態様において、抗体薬物複合体は内部移行を介して細胞障害活性を示す。
【0165】
リガンドユニット(L)はリンカーユニットの官能基と結合を形成する少なくとも1個の官能基を有する。リンガーユニット上に自然にまたは化学操作もしくは遺伝子操作を介して存在しうる有用な官能基には、限定されるものでないが、スルフヒドリル(-SH)、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシ、炭水化物のアノマーのヒドロキシル基、およびカルボキシルが含まれる。いくつかの実施形態において、リガンドユニット官能基はスルフヒドリル基である。スルフヒドリル基は典型的には溶媒接触可能なスルフヒドリル基、例えばシステイン残基上の溶媒接触可能なスルフヒドリル基である。スルフヒドリル基はリガンドの分子内または分子間ジスルフィド結合の還元により作製することができる。スルフヒドリル基はまた、リガンドのリシン部分のアミノ基を、2-イミノチオラン(Traut試薬)または他のスルフヒドリル生成試薬を用いる反応により作製することができる。
【0166】
いくつかの実施形態においては、1個以上のスルフヒドリル基をリガンドユニット中に遺伝子操作により、例えばアミノ酸置換により作製する。例えば、スルフヒドリル基をリガンドユニット中に導入することができる。いくつかの実施形態において、セリンもしくはトレオニンのシステイン残基へのアミノ酸置換により、および/またはシステイン残基のリガンドユニットへの付加により、スルフヒドリル基を導入する(遺伝子操作で作製したシステイン残基)。いくつかの実施形態において、システイン残基は内部システイン残基である、すなわち、リガンド部分のN-末端またはC-末端に位置しない。
【0167】
リガンドユニットと結合する薬物またはリンカーユニット-薬物ユニットの数を調節するために、1個以上のシステイン残基をアミノ酸置換により除くことができる。例えば、免疫グロブリンのヒンジ領域における溶媒接触可能なシステイン残基の数を、システインのセリン残基へのアミノ酸置換により減ずることができる。
【0168】
いくつかの実施形態において、リガンドユニットは1、2、3、4、5、6、7または8個の溶媒接触可能なシステイン残基を含む。ある実施形態では、抗体ユニットは2または4個の溶媒接触可能なシステイン残基を含む。
【0169】
本明細書に記載した方法および組成物で使われる抗体は、好ましくは、モノクローナルであり、そしてアウリスタチン薬物と直接にまたはリンカーを介して間接に複合化できることを条件として、多特異的な、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、1本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーにより作製したフラグメント、および上記のいずれかの結合フラグメントであってもよい。典型的には、抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、または、マウスモノクローナル抗体由来の可変域とヒト免疫グロブリン定常域を有するキメラ抗体である。いくつかの実施形態において、抗体はげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ科動物、ウマ、またはニワトリであってもよい。
【0170】
抗体は単特異的、二特異的、三特異的、またはさらに多特異的であってもよい。多特異的抗体は色々な標的抗原の色々なエピトープに対して特異的であってもよく、または同じ標的抗原上の色々なエピトープに対して特異的であってもよい(例えば、WO 93/17715;WO 92/08802;WO 91/00360;WO 92/05793;Tutt et al., 1991, J. Immunol. 147:60-69;米国特許4,474,893;4,714,681;4,925,648;5,573,920;および5,601,819;Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547-1553を参照)。
【0171】
抗体はまた、標的抗原にする結合親和性が10
-7M、5x10
-8M、10
-8M、5x10
-9M、10
-9M、5x10
-10M、10
-10M、5x10
-11M、10
-11M、5x10
-12M、10
-12M、5x10
-13M、10
-13M、5x10
-14M、10
-14M、5x10
-15M、または10
-15Mであると記載しうる。
【0172】
いくつかの実施形態において、抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体は抗体の色々な部分が異なる動物種由来の分子、例えば、マウスモノクローナル抗体の可変域とヒト免疫グロブリン定常域を有する抗体である。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で公知である(例えば、Morrison, Science, 1985, 229:1202; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214;Gillies et al., 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許5,807,715;4,816,567;および4,816,397を参照)。
【0173】
いくつかの実施形態において、抗体は張り合わせ(veneered)抗体を含むヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体は所望の抗原と結合する抗体分子であって、非ヒト種からの1以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワークと定常域を有する。しばしば、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基をCDRドナー抗体からの対応する残基で置換し、抗原結合を改変、または好ましくは改善しうる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデル化することにより、抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を特定し、配列比較して特別な位置の異常なフレームワーク残基を特定することにより特定される(例えば、Queenら、米国特許5,585,089; Riecbmann et al., 1988, Nature 332:323を参照)。
【0174】
抗体はまた、ヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は当技術分野で公知の様々な方法、例えば、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法により作ることができる。例えば、米国特許4,444,887および4,716,111;WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741を参照されたい。
【0175】
抗体の例には、PI3K/AKT mTOR経路の構成的活性化を含むPI3K-AKT-mTOR経路の上方調節を示す癌により発現される抗原と特異的に結合する抗体が含まれる。例示の実施形態において、前記抗体はCD19、CD30、またはCD70抗原と結合しうる。
【0176】
例示の抗体には、例えば、キメラまたはマウスAC10(抗CD30)、マウス1F6(抗CD70)、およびマウスBU12(抗CD19)抗体のヒト化型が含まれる。マウスAC10抗体は配列番号1に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号2に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有する。マウス1F6抗体は配列番号3に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号4に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有する。マウスBU12抗体は配列番号3に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域7および配列番号8に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有する。これらの抗体はさらに、米国特許7,090,843;および米国特許出願20090148942、および20090136526に記載されており、これらは参照によりその全てが全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0177】
例示の実施形態において、抗体はマウス抗体のキメラまたはヒト化バージョンであって、(i)配列番号1に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号2に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域;(ii)配列番号3に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号4に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域;または(iii)配列番号7に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号8に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有するものである。例示の実施形態において、かかる抗体はさらに、配列番号11に記載のヒトγI定常域のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸1〜329および配列番号12に記載のヒトκ定常域のアミノ酸配列を含むものである。
【0178】
例示の実施形態において、抗体は配列番号1に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号2に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有するキメラAC10抗体である。例示の実施形態において、かかる抗体はさらに、配列番号11に記載のヒトγI定常域のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸1〜329および配列番号12に記載のヒトκ定常域のアミノ酸配列を含むものである。
【0179】
例示の実施形態において、抗体は配列番号5に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号6に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有するヒト化h1F6抗体である。例示の実施形態において、かかる抗体はさらに、配列番号11に記載のヒトγI定常域のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸1〜329および配列番号12に記載のヒトκ定常域のアミノ酸配列を含むものである。
【0180】
例示の実施形態において、抗体は配列番号9に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変域および配列番号10に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変域を有するヒト化h1F6抗体である。例示の実施形態において、かかる抗体はさらに、配列番号11に記載のヒトγI定常域のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸1〜329および配列番号12に記載のヒトκ定常域のアミノ酸配列を含むものである。
【0181】
抗体は、通常の方法により標的抗原との特異的結合について試験することができ、前記方法には、例えば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫放射アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、およびフローサイトメトリーなどの技法を用いる競合および非競合イムノアッセイ系が含まれる(例えば、Ausubel et al., eds., Short Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc., New York, 4th ed. 1999);Harlow & Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999を参照されたい)。
【0182】
さらに、抗体の標的抗原との結合親和性および抗体-抗原相互作用のオフ速度は表面プラズモン共鳴、標識化抗体を用いる競合FACSまたはその他の競合結合アッセイにより測定することができる。
【0183】
抗体は、抗体の型に応じた標準の手順により、標的抗原の抗原を含有する断片から作ることができる(例えば、Kohler, et al., Nature, 256:495, (1975); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (C.S.H.P., NY, 1988); Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989)およびWO 90/07861; Dower et al., WO 91/17271 および McCafferty et al., WO 92/01047 (これらはそれぞれ、参照によりその全てが全ての目的のために本明細書に組み込まれる)。
【0184】
抗体薬物複合体に対する細胞傷害性アッセイ
薬物または抗体薬物複合体が細胞に細胞分裂停止および/または細胞傷害性効果を及ぼすかどうかを確認する方法は公知である。一般に、抗体薬物複合体の細胞分裂停止活性を測定する方法は、抗体薬物複合体の標的タンパク質を発現する細胞を細胞培地に曝すステップ;前記細胞を約6時間〜約5日の間細胞を培養するステップ;および細胞生存率を測定するステップより成る。細胞に基づくin vitroアッセイを用いて、抗体薬物複合体の生存率(増殖)、細胞障害性、およびアポトーシス(カスパーゼ活性化)の誘導を測定することができる。
【0185】
抗体-薬物複合体が細胞分裂停止効果を及ぼすかどうかを確認するためには、チミジン取込みアッセイを用いることができる。例えば、96ウェルプレートにウェルあたり5,000個の細胞密度でまいた標的抗原を発現する癌細胞を72時間培養し、その72時間のうち最後の8時間にわたり0.5μCiの
3H-チミジンに曝露してもよい。培養物の細胞中への
3H-チミジンの取込みを抗体薬物複合体の存在下および非存在下で測定する。
【0186】
細胞傷害性を調べるためには、ネクローシス(壊死)またはアポトーシス(プログラム細胞死)を測定することができる。ネクローシスは典型的には、原形質膜の透過性亢進、細胞の膨張、および原形質膜の破裂を伴う。アポトーシスは典型的には、膜小胞化、細胞質の凝縮、および内在性エンドヌクレアーゼの活性化で特徴付けられる。癌細胞に対するこれらの効果のいずれかを確認することで、抗体薬物複合体が癌の治療に有用であることが示される。
【0187】
細胞の生存は、細胞におけるニュートラルレッド、トリパンブルー、またはALAMAR
TMブルーのような色素の取込みを確認することにより測定することができる(例えば、Page et al., 1993, Intl. J. of Oncology 3:473-476を参照)。かかるアッセイでは、細胞を色素を含有する培地でインキュベートし、細胞を洗浄し、残留色素(細胞による色素取込みを反映する)を分光光度法により測定する。タンパク質結合性色素であるスルホローダミンB(SRB)を用いて細胞傷害性を測定することもできる(Skehan et al., 1990, J. Nat'l Cancer Inst. 82:1107-12)。
【0188】
あるいは、テトラゾリウム塩、例えば、MTTが生細胞を検出する(しかし死細胞を検出しない)ことによって哺乳動物の細胞生存および増殖のための定量比色アッセイに用いられる(例えば、Mosmann, 1983, J. Immunol. Methods 65:55-63を参照)。
【0189】
アポトーシスは、例えば、DNA断片化を測定することにより定量することができる。DNA断片化のin vitro定量用の比色法が市販されている。かかるアッセイの例にはTUNEL(断片化DNA中の標識したヌクレオチドの取込みを検出する)およびELISA系アッセイが含まれ、これらはBiochemica, 1999, no. 2, pp. 34-37 (Roche Molecular Biochemicals)に記載されている。
【0190】
アポトーシスはまた、細胞における形態学的変化を測定することにより確認することができる。例えば、ネクローシスについては、原形質膜統合性の喪失を、ある特定の色素(例えば、アクリジンオレンジまたは臭化エチジウムなど)の取込みを測定することにより確認することができる。アポトーシス細胞数を測定する方法は、Duke and Cohen, Current Protocols in Immunology(Coligan et al. eds., 1992, pp. 3.17.1-3.17.16)により記載されている。細胞はまた、DNA色素(例えば、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、またはヨウ化プロピジウム)で標識し、その細胞をクロマチン凝縮および内角膜沿いの縁取りについて観察することができる。アポトーシスを確認するために測定することができる他の形態学的変化には、例えば、細胞質凝縮、膜小胞形成の増加、および細胞収縮が含まれる。
【0191】
アポトーシス細胞の存在は、培養物の付着および「浮上する」コンパートメントの両方で測定することができる。例えば、両方のコンパートメントを上清を除去することにより採集し、付着した細胞をトリプシン化し、調製物を組み合わせ、続いて遠心分離洗浄し(例えば、10分間、2000pmにて)、そしてアポトーシスを検出する(例えば、DNA断片化を測定することにより)ことができる(例えば、Piazza et al., 1995, Cancer Research 55:3110-16を参照)。
【0192】
抗体薬物複合体の効果は、動物モデルで試験するかまたは実証することができる。いくつもの確立された癌の動物モデルは当業者に公知であり、そのいずれかを用いて抗体薬物複合体の効力を試験することができる。かかるモデルの非限定の例を以下に記載する。さらに、抗体薬物複合体のin vivo効力を試験するための小動物は、ヒト腫瘍細胞株を適当な免疫不全症のげっ歯類菌株、例えば、胸腺欠損ヌードマウスまたはSCIDマウス中に移植することにより作製することができる。
【0193】
PI3K-AKT-mTOR経路インヒビター
mTORは2つの型の複合体、raptorサブユニットを含有するmTORClとrictorサブユニットを含有するmTORC2で存在する。当技術分野では公知のように、「rictor」はヒト遺伝子遺伝子座5pl3.1を有する細胞増殖調節タンパク質を意味する。これらの複合体は異なるやり方で調節されかつ異なる基質スペクトルを有する。
【0194】
mTORC2は一般にラパマイシンおよび選択的インヒビターに不感性である。mTORC2はいくつかのAGCキナーゼ、例えばAktのC-末端疎水性モチーフをリン酸化することにより成長因子シグナル伝達をモジュレートすると考えられる。多くの細胞環境においてmTORC2はAktのS473部位のリン酸化に必要である。そこで、mTORC1活性はAktにより部分的に調節されるが、Akt自体はmTORC2により部分的に調節される。
【0195】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の成長因子刺激はAktの活性化を、2つの重要な部位、S473およびT308のリン酸化により引き起こす。Aktの全活性化にはS473およびT308の両方のリン酸化による活性化を必要とすることが報じられている。Aktは多くの経路で細胞生存および増殖を促進し、それには、アポトーシスの抑制、グルコース取込みの促進、および細胞代謝の改変が含まれる。Akt上の2つのリン酸化部位のうち、T308における活性化ループリン酸化はキナーゼ活性に不可欠であると考えられる一方、S473における疎水性モチーフのリン酸化はAKTキナーゼ活性を増進する。S473におけるAKTリン酸化はPI3K/AKT mTOR経路の構成的活性化に対するマーカーとして用いることができる。いくつかの実施形態において、S473およびT308の両方におけるAKTリン酸化はPI3K/AKT mTOR経路の構成的活性化に対するマーカーとして使われる。
【0196】
mTORインヒビター
本発明で用いるmTORインヒビターをアウリスタチン系抗体薬物複合体との併用療法で用いると、癌治療、腫瘍細胞の殺滅および/または腫瘍細胞の増殖阻害に対して、相乗効果を与えることができる。
【0197】
本明細書で使用する用語「mTORインヒビター」は、mTORタンパク質の少なくとも1つの活性、例えば、その基質(例えば、p70S6キナーゼ1、4E-BP1、AKT/PKBおよびeEF2)の少なくとも1つに対するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼ活性を阻害する化合物またはリガンドを意味する。
【0198】
本発明のmTORインヒビターはmTORC1および/またはmTORC1と直接結合し、それらとの結合により、mTORC1、mTORC2、またはmTORC1およびmTORC1の両方を阻害することができる。
【0199】
本発明に用いるmTORインヒビターの1つのクラスは活性部位インヒビターである。これらはmTORのATP結合部位(ATP結合ポケットとも呼ぶ)と結合するmTORインヒビターであって、mTORC1およびmTORC2の両方の触媒活性を阻害する。従って、一態様において、本発明で用いるmTORインヒビターは、mTORC1および/またはmTORC2上のATP結合部位との結合について、ATPと競合する。化合物がATPと競合するかどうかについての例示のアッセイは当技術分野で公知である。かかる1つのアッセイを実施例12に掲げる。
【0200】
本発明で用いる活性部位インヒビターの1つのクラスは、それらがPI3KおよびmTORの両方を標的化しかつ直接阻害するので、二重特異的インヒビターである。二重特異的インヒビターはmTORおよびPI3KのATP結合部位の両方と結合する。かかるインヒビターの例には、ワートマニン、LY294002、PI-103(Cayman Chemical)、SF1126(Semafore)、BGT226(Novartis)、XL765(Exelixis)およびNVP-BEZ235(Novartis)が含まれる(Liu et al., Nature Review、8、627-644、2009)。いくつかの態様において、二重特異的インヒビターはイミダゾキナゾリン(イミダゾ[4,5-c]キノリン誘導体)でありうる。化合物がPI3Kおよび/またはmTORと結合および/または阻害するかどうかの例示のアッセイは当技術分野で公知である。かかる1つのアッセイを実施例12に掲げる。
【0201】
本発明で用いる活性部位インヒビターの他のクラスは選択的mTORインヒビターである。このクラスのmTORインヒビターは、1以上のI型ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼと比較してmTORC1およびmTORC2活性を選択的に阻害する。I型ホスファチジルイノシトール3-キナーゼは、例えば、PI3キナーゼα、PI3キナーゼβ、PI3キナーゼγ、またはPI3キナーゼδから選択することができる。これらの活性部位インヒビターはmTORの活性部位と結合するがPI3Kとは結合しない。かかるインヒビターの例には、Torin1(Guertin and Sabatini)、PP242(2-(4-アミノ-1-イソプロピル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-1H-インドール-5-オール)、PP30、Ku-0063794、WAY-600(Wyeth)、WAY-687(Wyeth)、WAY-354(Wyeth)、およびAZD8055(Sparks and Guertin, Oncogene, 29, 2733-2744, 2010;Liu et al., Nature Review, 8, 627-644, 2009)が含まれる。いくつかの態様において、mTorインヒビターはピラゾロピリミジンでありうる。mTORインヒビターの選択性を確認する方法は当技術分野で公知である。1つのかかるアッセイを実施例12に掲げる。
【0202】
一態様において、選択的なmTORインヒビターは、あるいは、1、2、3、またはそれ以上のI型PI3-キナーゼに対するインヒビターのIC50より、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上低いmTORClおよび/またはmTORC2に対する50%阻害濃度(IC50)を示す薬剤を意味すると解釈することができる。
【0203】
いくつかの実施形態において、選択的mTORインヒビターは、あるいは、全てのI型PI3-キナーゼに対するインヒビターのIC50より、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上低いmTORClおよび/またはmTORC2に対する50%阻害濃度(IC50)を示す薬剤を意味すると解釈することができる。
【0204】
さらに他の態様において、選択的mTORインヒビターは、1以上のタンパク質キナーゼに対するインヒビターのIC50より、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上低いmTORに対する50%阻害濃度(IC50)を示す化合物を意味すると解釈することができる。
【0205】
本発明に用いるmTORインヒビターの他のクラスは本明細書で「ラパログ」と呼ばれる。本明細書で使用する用語「ラパログ」は、mTOR FRBドメイン(FKBPラパマイシン結合ドメイン)と特異的に結合し、構造的にラパマイシンに関係し、そしてmTOR阻害特性を保持する化合物を意味する。用語ラパログはラパマイシンを除外する。ラパログには、エステル、エーテル類、オキシム、ヒドラゾン、およびラパマイシンのヒドロキシルアミン、ならびにラパマイシンコア構造上の官能基が、例えば、還元または酸化により修飾された化合物が含まれる。かかる化合物の製薬上許容される塩もラパマイシン誘導体と考えられる。いくつかの実施形態において、ラパログはラパマイシンのように、mTORC2と比較してmTORC1を選択的に阻害する。本発明で用いる例示のラパログには、例えば、テムシロリムス(CC1779)、エベロリムス(RAD001)、デフォロリムス(AP23573)、AZD8055(AstraZeneca)、およびOSI-027(OSI)が含まれる。化合物がmTOR FRBドメインと結合するかどうかを同定する例示のアッセイは当技術分野で公知である。例えば、Chen et al. (1995) PNAS vol 92 pp. 4947-4951を参照されたい。
【0206】
本発明で用いる他のmTORインヒビターはラパマイシン(シロリムス)である。
【0207】
上記のmTORインヒビターのいずれかのクラスを含むいずれかのmTORインヒビターを、本発明のアウリスタチン系抗体薬物複合体と併用して用いることができる。いくつかの実施形態において、本明細書で用いるmTORインヒビターはラパマイシン(シロリムス)ではない。
【0208】
一態様において、本発明で用いる例示のmTORインヒビターはmTORC1、mTORC2またはmTORC1とmTORC2の両方のいずれかを、約200nM以下、好ましくは約100nm以下、さらにより好ましくは約60nM以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100pM、50pM、25pM、10pM、1pM、またはそれ以下のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で阻害する。一態様において、本発明で用いるmTORインヒビターはmTORC1、mTORC2またはmTORC1とmTORC2の両方のいずれかを、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で阻害する。
【0209】
一態様において、本発明で用いる例示のmTORインヒビターはP13KおよびmTORC1、mTORC2またはmTORC1とmTORC2の両方およびP13Kのいずれかを、約200nM以下、好ましくは約100nm以下、さらにより好ましくは約60nM以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100pM、50pM、25pM、10pM、1pM、またはそれ以下のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で阻害する。一態様において、本発明で用いるmTORインヒビターはP13KおよびmTORC1、mTORC2またはmTORC1とmTORC2の両方およびP13Kのいずれかを、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で阻害する。
【0210】
IC50定量は当技術分野で公知のいずれかの通常の技法を用いて行うことができる。例えば、IC50は、研究中のインヒビターのある濃度範囲の存在のもとで所与の酵素の活性を測定することにより定量してもよい。実験で得た酵素活性を、次に、使用したインヒビター濃度に対してプロットする。50%酵素活性(いずれかのインヒビター非存在のもとでの活性と比較して)を示すインヒビターの濃度を「IC50」値として採用する。同様に、他の阻害濃度を活性の適当な定量を介して定義することができる。
【0211】
mTORは、ウェスタンブロットにおける蛍光体-特異的抗体により測定した生理学的基質タンパク質、p70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)およびe1F4E結合タンパク質1(4EBP1)に対して強固でかつ特異的な触媒活性を示すことが公知である。一態様において、IC50定量は、基質タンパク質、例えばp70S6K1および4EBP1のリン酸化レベルを測定することにより行うことができる。細胞を、例えば、研究中のインヒビターと、mTOR基質p70S6K1および4EBP1のリン酸化を通常生じうる条件下で接触させてもよい。細胞を次いで、固定化または溶解を含む当技術分野で公知の様々な方法により調製し、mTOR基質のリン酸化レベルについて分析することができる。リン酸化レベルは、限定されるものでないが、免疫ブロットまたはフローサイトメトリーを介して、基質のリン酸化型に特異的な抗体の使用を含む、当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて分析することができる。
【0212】
mTORClおよび/またはmTORC2活性の阻害はPI3K/Akt/mTOR経路のシグナル伝達の低下により確認することができる。広範囲の読出し値を利用してかかるシグナル伝達の出力の低下を確立することができる。いくつかの非限定の例示の読出し値には、(1)限定されるものでないが、S473およびT308を含む残基におけるAktリン酸化の減少;(2)例えば、限定されるものでないが、Fox01/O3a T24/32、GSK3α/β;S21/9、およびTSC2T 1462を含むAkt基質のリン酸化の低下により確証されるAkt活性化の減少;(3)限定されるものでないが、リボソームS6 S240/244、70S6K T389、および4EBP1 T37/46を含むmTOR下流のシグナル伝達のリン酸化の減少;ならびに(4)癌細胞の増殖阻害が含まれる。
【0213】
mTORClおよび/またはmTORC2の選択的阻害を確立する細胞に基づくアッセイは様々なフォーマットをとることができる。これは一般に研究中の生物学活性および/またはシグナル伝達読出し値に依存しうる。例えば、下流基質をリン酸化するmTORClおよび/またはmTORC2を阻害する薬剤の能力は当技術分野で公知の様々な形式のキナーゼアッセイにより定量することができる。代表的なアッセイには、限定されるものでないが、抗体、例えば、リン酸化されたタンパク質を認識する抗ホスホチロシン、抗ホスホセリンまたは抗ホスホトレオニン抗体による免疫ブロットおよび免疫沈降が含まれる。あるいは、キナーゼ基質(例えば、抗ホスホAKT S473または抗ホスホAKT T308)の特別なリン酸化型を特異的に認識する抗体を用いることができる。さらに、キナーゼ活性はハイスループット化学発光アッセイにより検出することができる。他の態様においては、単一細胞アッセイ、例えば、ホスフロー(phosflow)実験に記載したフローサイトメトリーを用いて、混合集団中の多重下流mTOR基質のリン酸化を測定することができる。
【0214】
mTORClおよび/またはmTORC2および/またはP13Kの阻害の効果は、細胞コロニー形成アッセイまたは他の型の細胞増殖アッセイにより確立することができる。広範囲の細胞増殖アッセイが当技術分野で利用可能であり、それらの多くはキットとして利用可能である。細胞増殖アッセイの限定されるものでない例には、トリチウム化チミジン取込みアッセイ、BrdU(5'-ブロモ-2'-デオキシウリジン)取込み(Calibochemの市販キット)、MTS取込み(Promegaの市販キット)、MTT取込み(Cayman Chemicalの市販キット)、CyQUANT(登録商標)色素取込み(Invitrogenの市販キット)に対する試験が含まれる。
【0215】
アポトーシスおよび細胞サイクル停止分析は、本明細書に例示したいずれかの方法ならびに当技術分野で公知の他の方法を用いて実施することができる。多数の異なる方法がアポトーシスを検出するために工夫されている。
【0216】
解離-増強型ランタニド蛍光イムノアッセイおよびToral-Barz et al., Biochemical and Biophysical Research Communications, 332 (2005), 304-310に記載のアッセイを用いて、ある化合物がmTORインヒビターであるかどうかを確認することができる。
【0217】
PI3Kインヒビター
本発明で用いるPI3Kインヒビターは、アウリスタチン系抗体薬物複合体との併用療法において相乗効果を与えることができる。
【0218】
本明細書で使用する用語「PI3Kインヒビター」は、P13Kと結合して少なくともその1つの活性を阻害する化合物またはリガンドを意味する。PI3Kタンパク質は3つのクラス、クラス1-P13K、クラス2-P13K、およびクラス3-P13Kに分類することができる。クラス1-P13Kは4つのp110触媒サブユニット(p110α、p110β、p110δ、およびp110γ)の1つと2つの調節サブユニットファミリーの1つとから成るヘテロ二量体として存在する。本発明のPI3Kインヒビターは好ましくはクラス1-PI3Kインヒビターを標的化する。一態様において、PI3Kインヒビターはクラス1-PI3Kインヒビターの1以上のイソ型(すなわち、p110α、p110β、p110δ、およびp110γまたは1以上のp110α、p110β、p110δ、およびp110γ)に対して選択性を発揮しうる。他の態様において、PI3Kインヒビターはイソ型選択性を発揮しないであろう。一態様において、PI3KインヒビターはATPとPI3K触媒ドメインとの結合について競合しうる。
【0219】
PI3Kインヒビターは、例えば、PI3KならびにPI3K-AKT-mTOR経路中のさらなるタンパク質を標的化しうる。mTORとPI3Kの両方を標的化するPI3KインヒビターをmTORインヒビターまたはPI3Kインヒビターと呼ぶことがありうる。PI3Kだけを標的化するPI3Kインヒビターを選択的PI3Kインヒビターと呼んでもよい。一態様においては、選択的PI3Kインヒビターは、mTORおよび/またはその経路中の他のタンパク質に対するインヒビターのIC50よりも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上低いPI3Kに対する50%阻害濃度を示す薬剤を意味すると解釈することができる。
【0220】
一態様において、本発明で用いる例示のPI3KインヒビターはPI3Kを、約200nM以下、好ましくは約100nm以下、さらにより好ましくは約60nM以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100pM、50pM、25pM、10pM、1pM、またはそれ以下のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で阻害する。一態様において、本発明で用いるPI3KインヒビターはPI3Kを、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で阻害する。
【0221】
アウリスタチン系抗体薬物複合体との併用で用いるPI3Kインヒビターの例には、例えば、BKM120(クラス-1 P13Kインヒビター、Novartis)、XL147(クラス-1 P13Kインヒビター、Exelixis)、GDC0941(クラス-1 P13Kインヒビター、Genentech)、GSK1059615(pan-P13Kインヒビター、GlaxoSmithKline)、PX-866(クラス-1 P13Kインヒビター;p110α、p110β、およびp110γイソ型、Oncothyreon)、およびCAL-101(クラス-1 P13Kインヒビター;p110δイソ型、Calistoga)が含まれる。
【0222】
AKTインヒビター
本明細書で使用するAKTインヒビターは、アウリスタチン系抗体薬物複合体と併用療法で用いる場合、相乗効果を与えることができる。
【0223】
本明細書で使用する用語「AKTインヒビター」はAKTと結合してその少なくとも1つの活性を阻害する化合物を意味する。AKTインヒビターはいくつかのクラスにグループ化することができ、それには、脂質に基づくインヒビター(例えば、AKTが原形質膜に限局化するのを阻止するAKTのプレクストリン相同性を標的化するインヒビター)、ATP-競合性インヒビター、およびアロステリックインヒビターが含まれる。一態様において、AKTインヒビターはAKT触媒部位との結合により作用する。一態様において、AKTインヒビターは下流AKT標的、例えば、mTORのリン酸化を阻害することにより作用する。
【0224】
AKTインヒビターは3種のAKTイソ型、AKT1、AKT2、AKT3の全てを標的化してもよく、またはイソ型選択的であって1もしくは2種のAKTイソ型だけを標的化してもよい。AKTインヒビターは、例えば、AKTならびにPI3K-AKT-mTOR経路におけるさらなるタンパク質を標的化してもよい。AKTだけを標的化するAKTインヒビターを選択的AKTインヒビターと呼ぶことができる。一態様において、選択的AKTインヒビターは、その経路中の他のタンパク質に対するインヒビターのIC50よりも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上低いAKTに対する50%阻害濃度を示す薬剤を意味すると解釈することができる。
【0225】
一態様において、本発明で用いる例示のAKTインヒビターはAKTを、約200nM以下、好ましくは約100nm以下、さらにより好ましくは約60nM以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100pM、50pM、25pM、10pM、1pM、またはそれ以下のIC50(活性の50%を阻害する濃度)で阻害する。一態様において、本発明で用いるAKTインヒビターはAKTを、約2nM〜約100nm、より好ましくは約2nM〜約50nM、さらにより好ましくは約2nM〜約15nMのIC50で阻害する。
【0226】
アウリスタチン系抗体薬物複合体との併用で用いるAKTインヒビターの例には、例えば、ペリフォシン(Keryx)、MK2206(Merck)、VQD-002(VioQuest)、XL418(Exelixis)、およびPX316(PROLX Pharmaceuticals)が含まれる。
【0227】
癌
本発明の方法は癌を治療するために被験者に併用療法を投与することを包含する。例示の実施形態において、本発明により治療する癌はPI3K-AKT-mTOR経路の上方調節を示す。
【0228】
本発明の方法は癌を治療するために被験者に併用療法を投与することを包含する。例示の実施形態において、本発明により治療する癌はPI3K-AKT-mTOR経路の上方調節を示す。
【0229】
PI3K-AKT-mTOR経路の上方調節はPI3K/AKT/mTOR経路のシグナル伝達の増加により確認することができる。様々な読出しを利用してかかるシグナル伝達経路の出力の増加を確立することができる。いくつかの非限定の例示の読出しには、(1)限定されるものでないが、S473およびT308を含む残基におけるAktのリン酸化の増加;(2)限定されるものでないが、Fox01/O3a T24/32、GSK3α/β;S21/9、およびTSC2 T1462を含むAkt基質のリン酸化の減少により確証されるAktの活性化の増加;および(3)限定されるものでないが、リボソームのS6 S240/244、70S6K T389、および4EBP1 T37/46を含むmTOR下流のシグナル伝達分子のリン酸化の増加が含まれる。
【0230】
従って、一態様において、本発明の方法により治療される癌は、リン酸化AKT(pAKT)の存在、特に、2つの重要な部位、S473およびT308における、好ましくは、両方の部位におけるAKTのリン酸化により実証されるPI3K/AKT mTOR経路が構成的に活性化される前記癌である。一態様において、癌組織は非癌組織と比較してpAktのレベルの上昇を有しうる。
【0231】
他の態様において、本発明の方法により治療される癌は、リン酸化されたp70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)、リン酸化されたS6リボソームタンパク質、および/またはe1F4E結合タンパク質1の存在により実証される、PI3K/AKT mTOR経路が上方調節される癌である。一態様において、癌組織は非癌組織と比較してp70S6K1および/またはホスホ-e1F4E結合タンパク質1のレベルの上昇を有しうる。
【0232】
pAKTの存在は今まで多数の癌において報じられている。かかる癌には血液学的悪性が含まれる。従って、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は血液学的悪性を治療する方法である。一態様において、血液学的悪性はリンパ腫である。一態様において、血液学的悪性はB細胞リンパ腫である。他の実施形態において、血液学的悪性はT細胞リンパ腫である。特別なリンパ腫には、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)が含まれる。NHLの例には、例えば、例えば、マントル細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚のT細胞リンパ腫、末梢のT細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、および濾胞性リンパ腫が含まれる。他の実施形態において、血液学的悪性は白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病または慢性リンパ性白血病である。
【0233】
pAKTの存在は今まで多数の固体腫瘍において報じられており、それには、例えば、結腸直腸、腎、胃、前立腺、甲状腺、子宮内膜、肺、脳および乳房の癌が含まれる。従って、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は固体腫瘍を治療する方法である。本発明の方法により治療可能な固体腫瘍の例には、例えば、結腸直腸、腎、胃、前立腺、甲状腺、子宮内膜、肺、脳および乳房の癌が含まれる。
【0234】
本発明はpAKTの存在を特徴とする癌を治療するための併用療法を包含する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明により治療可能な血液学的悪性、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、NHL、または白血病はリン酸化AKTを発現しうる。同様に、いくつかの実施形態において、結腸直腸、腎、胃、前立腺、甲状腺、子宮内膜、肺、脳および乳房の癌はリン酸化AKTを発現しうる。その発現は細胞質であってもまたは核であってもよい。一態様において、その発現は実質的に細胞質である。他の態様において、その発現は実質的に核である。他の態様において、その発現は細胞質および核である。
【0235】
本発明はリン酸化されたp70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)および/またはe1F4E結合タンパク質1の存在を特徴とする癌を治療する併用療法を包含する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明により治療可能な血液学的悪性、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、またはNHLは、リン酸化されたp70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)および/またはe1F4E結合タンパク質1を発現しうる。同様に、いくつかの実施形態において、固体腫瘍、結腸直腸、腎、胃、前立腺、甲状腺、子宮内膜、肺、脳または乳房の癌は、リン酸化されたp70 S6リボソームタンパク質キナーゼI(p70S6K1)および/またはe1F4E(ホスホ-e1F4E結合タンパク質1)を発現しうる。
【0236】
いくつかの実施形態において、癌は高いpAKT発現を有しうる。例示の実施形態において、高いpAKT発現は約25細胞/mm
2より大きい、より大きい、50細胞/mm
2より大きい、またはさらに100細胞/mm
2より大きいp-AKT+細胞/mm
2腫瘍面積のメジアン数を意味する。pAKT+細胞の量の定量は一般に免疫組織化学技法を用いて行われる。
【0237】
本明細書に記載の癌のいずれかはアウリスタチン系抗体薬物複合体とmTORインヒビターとの併用療法を用いて治療することができ、前記併用には本明細書に記載のmTORインヒビターのクラスのいずれかと本明細書に記載のアウリスタチン系抗体薬物複合体のいずれかが含まれる。アウリスタチン系抗体薬物複合体の抗体成分は、治療する癌細胞の表面上に発現される癌細胞抗原と特異的に結合しうる。
【0238】
いくつかの実施形態において、癌はCD30抗原を発現するものでありうるのであって、アウリスタチン系抗体薬物複合体はCD30抗原と特異的に結合するもの(例えば、抗体成分は抗CD30抗体、好ましくは抗CD30モノクローナル抗体)でありうる。抗原との結合後、アウリスタチン系抗体薬物複合体は癌細胞中に内部化され、そこでその効果を発揮する。一態様において、CD30抗原を発現する癌はpAKT(S473およびT308上のリン酸化AKT)を発現する。一態様において、癌は高いpAKT発現を有しうる。癌は、例えば、血液学的悪性であってもよく、それには、例えば、B細胞もしくはT細胞リンパ腫または白血病が含まれる。いくつかの実施形態において、癌はホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球白血病、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、または他の固体腫瘍を含む本明細書に記載のCD30を発現する癌のいずれかである。従って、本発明による併用療法は、CD30を発現する癌のいずれか(例えば、B細胞またはT細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、NHL、白血病、または固体腫瘍)を治療するための、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターと抗CD30アウリスタチン系抗体薬物複合体との投与を含みうる。いくつかの態様において、インヒビターはmTORインヒビター、PI3Kインヒビター、またはAKTインヒビターでありうる。一態様において、mTORインヒビターは活性部位インヒビターであってもよく、それには、例えば、二重特異性インヒビター、例えば、ワートマニン、LY294002、PI-103、BGT226、SF1126、XL765およびNVP-BEZ235(Liu et al., Nature Review、8、627-644、2009)または、選択的mTORインヒビター、例えば、Torin1、PP242、PP30、Ku-0063794、WAY-600、WAY-687、WAY-354、およびAZD8055が含まれる。他の態様において、mTORインヒビターはラパログであってもよく、それには、例えば、テムシロリムス(CC1779)、エベロリムス(RAD001)、およびデフォロリムス(AP23573)が含まれる。一態様において、インヒビターはAKTインヒビターであってもよ
く、それには、例えば、ペリフォシン、MK2206、VQD-002、XL418、およびPX316が含まれる。他の態様において、インヒビターはPI3Kインヒビターでありうるのであって、それには、例えば、BKM120、XL147、GDC0941、GSK1059615、PX-866、またはCAL-101が含まれる。
【0239】
いくつかの実施形態において、癌はCD70抗原を発現するものでありうるのであって、アウリスタチン系抗体薬物複合体はCD70抗原と特異的に結合するもの(例えば、抗体成分は抗CD70抗体、好ましくは抗CD70モノクローナル抗体)でありうる。抗原と結合後、アウリスタチン系抗体薬物複合体は癌細胞中に内部化され、そこでその効果を発揮する。一態様において、CD70抗原を発現する癌はpAKT(S473およびT308上のリン酸化AKT)を発現する。一態様において、癌は高いpAKT発現を有しうる。前記癌は、例えば、血液学的悪性でありうるのであって、それには、例えば、B細胞またはT細胞リンパ腫または白血病が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫であり、それには本明細書に記載のNHLのいずれか(例えば、マントル細胞リンパ腫およびびまん性大B細胞リンパ腫)が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は固体腫瘍であり、例えば、腎細胞癌が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は白血病であり、それには、例えば、慢性リンパ性白血病または急性リンパ芽球白血病が含まれる。従って、本発明の方法による併用療法は、CD70を発現する癌(例えば、B細胞またはT細胞リンパ腫、白血病、NHL、または腎細胞癌を含む固体腫瘍)を治療するための、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターと抗CD70アウリスタチン系抗体薬物複合体との投与を含みうる。いくつかの態様において、インヒビターはmTORインヒビター、PI3Kインヒビター、またはAKTインヒビターでありうる。いくつかの態様において、mTORインヒビターは活性部位インヒビターであってもよく、それには、例えば、二重特異性インヒビター、例えば、ワートマニン、LY294002、PI-103、BGT226、SF1126、XL765およびNVP-BEZ235 (Liu et al.、Nature Review、8、627-644、2009)または選択的mTORインヒビター、例えば、Torin1、PP242、PP30、Ku-0063794、WAY-600、WAY-687、WAY-354、およびAZD8055が含まれる。他の態様において、mTORインヒビターはラパログであってもよく、それには、例えば、テムシロリムス(CC1779)、エベロリムス(RAD001)、およびデフォロリムス(AP23573)が含まれる。一態様において、インヒビターはAKTインヒビターでありうるのであって、それには、例えば、ペリフォシン、MK2206、VQD-002、XL418、および PX316が含まれる。他の態様において、インヒビターはPI3Kインヒビターでありうるのであって、それには、例えば、BKM120、XL147、GDC0941、GSK1059615、PX-866、またはCAL-101が含まれる。
【0240】
いくつかの実施形態において、癌はCD19抗原を発現するものでありうるのであって、アウリスタチン系抗体薬物複合体はCD19抗原と特異的に結合するもの(例えば、抗体成分は抗CD19抗体、好ましくは抗CD19モノクローナル抗体)でありうる。抗原との結合後、アウリスタチン系抗体薬物複合体は癌細胞中に内部化され、そこでその効果を発揮する。一態様において、CD19抗原を発現する癌はpAKT(S473およびT308上のリン酸化AKT)を発現する。一態様において、癌は高いpAKT発現を有しうる。癌は、例えば、血液学的悪性であってもよく、それには、例えば、B細胞もしくはT細胞リンパ腫または白血病が含まれる。いくつかの実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫であってもよく、それには本明細書に記載のNHL(例えば、マントル細胞リンパ腫およびびまん性大B細胞リンパ腫)のいずれかが含まれる。いくつかの実施形態において、癌は白血病であり、例えば、慢性リンパ性白血病または急性リンパ芽球白血病が含まれる。従って、本発明の方法による併用療法は、CD19を発現する癌(例えば、B細胞リンパ腫、白血病、またはNHL)を治療するための、抗CD19アウリスタチン系抗体薬物複合体のPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターとの一緒の投与を含みうる。いくつかの態様において、インヒビターはmTORインヒビター、PI3Kインヒビター、またはAKTインヒビターでありうる。いくつかの態様において、mTORインヒビターは活性部位インヒビターであってもよく、それには、例えば、二重特異性インヒビター、例えば、ワートマニン、LY294002、PI-103、BGT226、SF1126、XL765 および NVP-BEZ235 (Liu et al.、Nature Review、8、627-644、2009)または選択的mTORインヒビター、例えば、Torin1、PP242、PP30、Ku-0063794、WAY-600、WAY-687、WAY-354、およびAZD8055が含まれる。他の態様において、mTORインヒビターはラパログであってもよく、それには、例えば、テムシロリムス(CC1779)、エベロリムス(RAD001)、およびデフォロリムス(AP23573)が含まれる。一態様において、インヒビターはAKTインヒビターであって
もよく、それには、例えば、ペリフォシン、MK2206、VQD-002、XL418、および PX316が含まれる。他の態様において、インヒビターはPI3Kインヒビターでありえて、それには、例えば、BKM120、XL147、GDC0941、GSK1059615、PX-866、またはCAL-101が含まれる。
【0241】
mTORインヒビターとの併用療法に用いる抗CD30、抗CD19、または抗CD70のアウリスタチン系抗体薬物複合体は、アウリスタチン系抗体薬物複合体用に本明細書で与えられた構造のいずれを有してもよい。一態様において、抗CD30、抗CD19、または抗CD70のアウリスタチン系抗体薬物複合体は、アウリスタチンMMAEまたはMMAFとリンカーを介して結合されている。抗CD30、抗CD19、または抗CD70アウリスタチン系抗体薬物複合体は、例えば、抗CD30、抗CD19、または抗CD70 vcMMAEもしくはmcF抗体薬物複合体(例えば、cAC10-vcE、h1F6-mcF、またはhBU12-mcF)であってもよい。一態様において、抗CD30、抗CD19、または抗CD70vcMMAEまたはmcF抗体薬物複合体を含む組成物は1抗体当たり平均約2〜約6個、または約3〜約5個の薬物を有する。一態様において、それぞれの薬物は還元された鎖間ジスルフィド結合の硫黄原子を介して抗体に付着している。他の態様において、それぞれの薬物は導入されたシステイン残基の硫黄原子を介して抗体に付着している。システイン残基は好ましくは、抗体のCH2領域中に導入される。
【0242】
併用療法
アウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターによる併用療法は相乗効果を与えうることを見出した。
【0243】
本明細書で使用する用語「相乗作用」または「相乗効果」は、薬剤の併用の効力の記載に関係して用いる場合、個々の薬剤の効果の合計から予測される効果より大きいいずれかの併用効果が測定されることを意味する。
【0244】
2つの化合物の相乗効果は、in vitroの方法を用いて確認することができる。例えば、各薬物の組合わせに対する相乗作用、加算性、または拮抗作用はChou-Talalayのメジアン効果式:
D=D
m[f
a/(1-f
a)]
1/m (メジアン効果式)
を用いて決定することができる。(D)は薬物の用量である。(D
m)はメジアン-効果用量であって、効力を意味する。これはメジアン-効果プロットのx-インターセプトにより決定される。(f
a)は用量により影響される分率である。(f
u)は影響されない分率、すなわち(1-f
a)である。(m)は用量-効果曲線のシグモイド性(形状)を意味する指数である。これはメジアン-効果プロットのスロープにより決定される。線形相関係数「r」は0.90以上でなければならない。薬物濃度単位は任意である。併用指数(CI)値<0.9は相乗作用を意味し、CI値=0.9〜1.1は加算性を示し、そしてCI値>1.1は拮抗作用を示す。
【0245】
相乗作用を確認する一例では、腫瘍をドナー動物から採取し、ばらばらにほぐして計数した後、宿主マウス中に注射して戻す。典型的には次いでいくらか後の時点に、併用抗癌剤を腹腔内、静脈内に注射するかまたは経口経路により投与し、そして無処置の対照および1つの治療法だけで処置した対照と比較して、腫瘍増殖速度および/または生存率を確認する。典型的には、増殖速度を動物の前脇腹で増殖する腫瘍について測定し、そして、腫瘍幅の垂直直径を全腫瘍量または体積の見積値に翻訳する。その後、所定の腫瘍量に達する時間(例えば、腫瘍が3倍になる時間)を、対照動物において同等の腫瘍増殖に要する時間と比較する。併用療法で処置した動物に対する所定の腫瘍量に達する時間が、治療法「A」で処置した動物と治療法「B」で処置した動物(すなわち、それぞれの治療法だけで処置した動物)に対する所定の腫瘍量に達する時間を加算して得た数値より大きいならば、その併用療法は相乗効果をもたらすといえる。他の例では、併用療法で処置した動物に対する所定の腫瘍量に達する時間が、治療法「A」で処置した動物および治療法「B」で処置した動物に対する所定の腫瘍量に達する時間を加算することから得た数値より大きくないかもしれない;しかし、個々の薬剤の効果の総和から予測した効果を上回る薬剤併用の他の測定効果は、その併用療法が相乗作用であると十分に特定/判定される。例えば、併用療法で処置した動物についての持続的または完全な応答の数がそれぞれの治療アーム単独での持続的または完全な応答の数の和より大きい場合、その併用療法は相乗効果を与える。持続的応答は動物に触診可能な腫瘍が存在しないことと定義する。
【0246】
一般に、癌治療に有効であるアウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターの量は標準臨床技法により確認することができる。さらに、場合によっては、in vitroアッセイを使って最適な用量範囲の特定を助けることができる。製剤に使う正確な用量はまた、投与経路、および悪性の段階にも依存しうるのであって、医師の判断および各患者の環境によって決定すべきであろう。有効用量はin vitroまたは動物モデル試験系から誘導した用量-応答曲線より外挿することができる。
【0247】
例えば、2以上の成分間の相乗作用を確認するに当たり、効果に対する最適範囲および効果に対する各成分の絶対用量範囲は、治療を必要とする患者に対する異なるw/w比範囲および用量にわたる成分の投与により測定してもよい。1つの種における相乗作用の観察から他の種における効果を予測することができる。相乗効果を測定するための動物モデルが存在するので、かかる研究を用いて薬物動態学的および薬物動態学的手法の応用により他の種に必要な絶対用量および血漿濃度を予測することができる。
【0248】
いくつかの実施形態においては、2種の薬物、すなわち、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターとアウリスタチン系抗体薬物複合体を、被験者にそれぞれの最大許容用量(MTD)だけ投与しうる。MTDは許容できない副作用なしに投与しうる医薬の最高用量に対応する。MTDの決定は当技術に含まれる。いくつかの態様においては、アウリスタチン系抗体薬物複合体をそのMTDだけ投与し、そしてmTORインヒビターをMTDの50%〜100%、好ましくは50%〜90%だけ投与しうる。あるいは、mTORインヒビターをMTDの50%〜100%だけ、好ましくは 50%〜90%だけ投与し、そしてアウリスタチン系抗体薬物複合体をMTDの50%〜100%だけ、好ましくは50%〜90%だけ投与しうる。いくつかの態様においては、アウリスタチン系抗体薬物複合体とmTORインヒビターの両方をMTDの60%〜90%だけ投与しうる。特定の態様においては、MTDと比較して少ない用量のmTORインヒビターをアウリスタチン系抗体薬物複合体と併用して投与することにより、治療に関連する毒性(すなわち、有害な影響)を低減することができる。CD70を発現する癌を治療する方法における1つの例においては、アウリスタチン系抗体薬物複合体をMTDだけ与え、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターをMTDの50%〜90%だけまたはそれどころかMTDの30%〜75%だけ投与しうる。一態様においては、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターをMTDの50%〜90%だけまたはそれどころかMTDの30%〜75%だけ投与しうる、そして抗CD70アウリスタチン薬物複合体(例えば、h1F6-mcF)を0.5mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、4.5mg/kgまたは6mg/kg/用量(例えば、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg3mg/kg、4.5mg/kgまたは6mg/kg、毎3週)だけ投与しうる。
【0249】
mTORインヒビター、PI3KインヒビターおよびAKTインヒビターは現在、経口投与剤形および静脈内投与剤形の両方で提供される。1つの例示の実施形態においては、テムシロリムスで得た結果に基づいて、mTORインヒビターを静脈内注入投与で提供しうる。一態様において、その用量は例えば、約0.1〜100mg/m
2であって、例えば、約2.5〜70mg/m
2が好ましい。現在、mTORインヒビターのテムシロリムスは、腎細胞癌の治療用に、毎週注入で25〜50mg(一般に25mg)の用量にて投与される。他の例示の実施形態においては、エベロリムスで得た結果に基づいて、mTORインヒビターを経口製剤で提供しうる。一態様において、その用量は、毎日約1〜50mg/m
2であって、毎日約2.5〜20mg/m
2が好ましい。現在、mTORインヒビターのエベロリムスは、腎細胞癌の治療用に、経口で毎日約2.5〜20mg/m
2(一般に10mg)の日用量にて投与される。
【0250】
アウリスタチン系抗体薬物複合体の投与量は典型的には、1用量当たり被験者体重の約0.5mg/kg〜約15mg/kgであろう。いくつかの実施形態において、投与量は1用量当たり約0.5mg/kg〜約10mg/kgまたは1用量当たり約1mg/kg〜約7mg/kgであろう。特別な実施形態において、投与量は被験者の体重の約0.8mg/kg、約1.0mg/kg、約1.2mg/kg、約1.8mg/kg、約2.0mg/kg、約2.7mg/kg、約3mg/kg、約3.6mg/kg、約4.5mg/kgまたは約6mg/kgであろう。
【0251】
本発明で使用する併用レジメンは同時に与えてもよく、または、連続したレジメン、すなわち、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターを治療コース中にアウリスタチン系抗体薬物複合体と異なる時点で与えてもよい。一態様においては、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターを薬物複合体に先行して与える。他の態様において、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターを薬物複合体に続いて与える。2つの薬剤の投与の間の時間差は数分間、数時間、数日間、または数週間の範囲であってもよい。それ故に、用語「併用(combination)」は必ずしも同時にまたはユニット用量として投与することでなく、成分のそれぞれを所望の治療期間中に投与することを意味する。いくつかの方法においては、それぞれの薬剤を十分近くに投与するので、ある期間、両方の薬剤が治療する患者中に同時に検出可能なレベルで存在する、例えば、mTORインヒビターとアウリスタチン系抗体薬物複合体の両方が血液(例えば、血清または血漿)中に検出可能である。それぞれの薬剤を異なる経路により投与してもよい。化学治療レジメンでは典型的であるように、化学治療法のコースを数週間後に繰り返してもよく、そして2つの薬剤の投与を同じ時間枠で続けてもよく、または患者の応答に基づいて改変してもよい。化学治療レジメンでは典型的であるように、投与レジメンは治療する医師により、多数の因子、例えば、疾患の重症度、疾患に対する応答、毒性、毒性に関するいずれかの処置、患者の年齢、健康、およびその他の随伴性障害または処置に基づいて、きめ細かくモニターされる。
【0252】
本発明は、抗体薬物複合体化合物を治療サイクル中に1回投与する治療スケジュールを包含する。例えば、ある実施形態において、抗体薬物複合体を21日の投与サイクルの第1日に投与しうる。かかるある実施形態において、患者に投与される抗体薬物複合体化合物の用量は典型的には、例えば、治療サイクルにわたって被験者の体重当たり0.8mg/kg〜8mg/kg、好ましくは約1.5〜約7mg/kg、約1.5mg/kg〜約6mg/kg、約1.5mg/kg〜約2.2mg/kg、または1mg/kg〜約3mg/kgでありうる。
【0253】
本発明は、抗体薬物複合体を治療サイクル中に1回以上投与しうる治療スケジュールを包含する。例えば、ある実施形態において、抗体薬物複合体化合物を28日サイクルにおいて3連続週に対して毎週投与しうる。例えば、ある実施形態において、抗体薬物複合体化合物を各28日治療サイクルの第1、8、および15日に投与しうる。かかるある実施形態において、患者に投与する抗体薬物複合体化合物の用量は、治療サイクルにわたって被験者体重当たり0.8mg/kg〜8mg/kg、好ましくは治療サイクルにわたって約1.5〜約7mg/kg、約1.5mg/kg〜約6mg/kg、約1.5mg/kg〜約2.2mg/kg、または1mg/kg〜約3mg/kgでありうる。
【0254】
一態様においては、CD30を発現する造血性癌、例えば、ホジキンリンパ腫またはALCLの治療に対して、アウリスタチン系抗体薬物複合体を毎週約1mg/kgまたは毎3週約1.8mg/kgの用量で投与する。
【0255】
一態様においては、CD70を発現する癌(例えば、NHLまたは腎細胞癌)を治療するために、アウリスタチン系抗体薬物複合体を毎3週間、約0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、1.8mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、4.5mg/kg、6mg/kgまたは8mg/kgの用量で投与する。
【0256】
特定の例示の実施形態において、アウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターの両方の投与は注入による。一態様において、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターの投与は静脈内(例えば、注入)または経口投与による。
【0257】
アウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターは、1以上の製薬上適合しうる成分を含む医薬組成物を含む組成物として投与される。例えば、医薬組成物は典型的には、1以上の医薬品担体(例えば、無菌液、例えば水および油、それには、石油、動物、野菜または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが含まれる)を含む。医薬組成物を静脈内に投与する場合、水はなかでも典型的な担体である。生理食塩水溶液およびブドウ糖およびグリセロール水溶液も、液担体、特に注入可能な溶液として使うことができる。好適な医薬品賦形剤は当技術分野で公知である。組成物は、もし所望であれば、少量の湿潤もしくは乳濁化剤、またはpH緩衝化剤を含有してもよい。好適な医薬品担体の例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は投与モードに対応する。
【0258】
典型的な実施形態においては、医薬組成物をヒト静脈内投与用に適合化した医薬組成物として通常の手順に従って製剤化する。典型的には、静脈内投与用組成物は無菌等張性緩衝化水溶液である。必要な場合、医薬品はまた、可溶化剤および注入部位における疼痛を和らげるために局部麻酔薬、例えばリグノカインを含んでもよい。一般に、前記成分は別々にまたは一緒に混合して単位投与剤形、例えば、気密性封入容器、例えば活性薬の量を示すアンプルまたはサシェット中の凍結乾燥した粉末または無水濃縮物で供給される。医薬組成物を注入により投与する場合、それを、例えば、無菌医薬品グレードの水もしくは生理食塩水を含有する注入ボトルで予製することができる。医薬組成物を注射により投与する場合、例えば、成分を投与前に混合できるように、無菌注射用水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0259】
特定の実施形態において、PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターは経口投与用に好適な剤形、例えば、丸薬、カプセル、溶液または懸濁液の剤形であってもよい。かかる製剤は経口製剤を作製するための当技術分野で公知のいずれかの方法により調製することができ、甘味剤、香料、着色剤および保存剤を含む1以上の薬剤を含有してもよい。もし錠剤の剤形であれば、組成物は錠剤賦形剤、例えば、フィラーまたは希釈剤(例えば、炭酸カルシウムまたはナトリウム、リン酸カルシウムまたはナトリウム)、崩壊剤(トウモロコシデンプンまたはアルギン酸)、バインダー(例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア)、流動促進剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)、抗接着剤、香料、または着色剤を含んでもよい。
【0260】
本発明は以下の実施形態を包含する:
(1)被験者の癌を治療する方法であって、それを必要とする被験者にアウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターを投与するステップを含むものである前記方法。
(2)被験者の腫瘍細胞を殺滅するおよび/またはその増殖を阻害する方法であって、それを必要とする被験者にアウリスタチン系抗体薬物複合体とPI3K-AKT-mTOR経路インヒビターを投与するステップを含むものである前記方法。
(3)PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターがmTORインヒビター、PI3Kインヒビター、またはAKTインヒビターである、実施形態1または2に記載の方法。
(4)癌がPI3K-AKT-mTOR経路のAKTの構成的活性化を特徴とする、実施形態1または2に記載の方法。
(5)癌がリン酸化AKTの存在を特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
(6)癌がリン酸化S6リボソーム結合タンパク質および/またはリン酸化e1F4E結合タンパク質1の存在を特徴とする、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
(7)癌が血液学的悪性である、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
(8)血学的悪性がB細胞リンパ球増殖障害である、実施形態7に記載の方法。
(9)血学的悪性がT細胞リンパ球増殖障害である、実施形態7に記載の方法。
(10)血液学的悪性がホジキンリンパ腫である、実施形態7に記載の方法。
(11)血液学的悪性が非ホジキンリンパ腫である、実施形態7に記載の方法。
(12)血液学的悪性がびまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)である、実施形態7に記載の方法。
(13)血液学的悪性がマントル細胞リンパ腫(MCL)である、実施形態7に記載の方法。
(14)血液学的悪性が未分化大細胞リンパ腫である、実施形態7に記載の方法。
(15)血液学的悪性が濾胞性リンパ腫である、実施形態7に記載の方法。
(16)血液学的悪性が白血病である、実施形態7に記載の方法。
(17)癌が固体腫瘍である、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
(18)癌が腎細胞癌である、実施形態17に記載の方法。
(19)PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターが活性部位mTORインヒビターである、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
(20)活性部位インヒビターがPI3KおよびmTORC1/2の二重特異性インヒビターである、実施形態19に記載の方法。
(21)PI3KおよびmTORC1/2の二重特異性インヒビターがNVP-BEZ235、BGT226、XL765またはSF1126である、実施形態20に記載の方法。
(22)活性部位インヒビターが選択的mTORインヒビターである、実施形態19に記載の方法。
(23)選択的インヒビターがPIKキナーゼα、PIKキナーゼβ、PIKキナーゼδ、およびPIKキナーゼγと比較してmTORC1およびmTORC2を選択的に阻害する、実施形態22に記載の方法。
(24)選択的mTORインヒビターがTorin1、PP242、PP30、Ku-0063794、WAY-600、WAY-687、WAY-354およびAZD8055である、実施形態22に記載の方法。
(25)PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターが非活性部位mTORインヒビターである、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
(26)非活性部位インヒビターがラパログである、実施形態25に記載の方法。
(27)ラパログがシロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、またはデフォロリムス(AP23573)である、実施形態26に記載の方法。
(28)PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターがPI3Kインヒビターである、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
(29)PI3Kインヒビターが選択的PI3Kインヒビターである、実施形態28に記載の方法。
(30)PI3KインヒビターがBKM120、XL147、GDC0941、GSK1059615、PX-866、CAL-101である、実施形態28に記載の方法。
(31)PI3K-AKT-mTOR経路インヒビターがAKTインヒビターである、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
(32)AKTインヒビターがペリフォシン、MK2206、VQD-002、XL418、およびPX316である、実施形態31に記載の方法。
(33)アウリスタチン系抗体薬物複合体が次式:
L-(LU-D)p (I)
[式中、
Lは癌細胞の表面上にある癌細胞抗原と特異的に結合する抗体であり;そして
(LU-D)はリンカーユニット-薬物ユニット部分であり、ここでLU-はリンカーユニットであり、-Dは標的細胞に対して細胞分裂停止または細胞傷害活性を有するアウリスタチンであり;そして
pは1〜20である]
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態1〜32のいずれかに記載の方法。
(34)アウリスタチンが次式:
【化38】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態33に記載の方法。
(35)アウリスタチンが次式:
【化39】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態33に記載の方法。
(36)リンカーユニットが次式:
-Aa-Ww-Yy-
[式中、
-A-はストレッチャーユニットであり;
aは0または1であり;
各-W-は独立してアミノ酸ユニットであり;
wは独立して0〜12の整数であり;
-Y-はスペーサーユニットであり;そして
yは0、1または2である]
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態33に記載の方法。
(37)アウリスタチン系抗体薬物複合体が次式:
【化40】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(38)アウリスタチン系抗体薬物複合体が次式:
【化41】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(39)アウリスタチン系抗体薬物複合体が次式:
【化42】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(40)アウリスタチン系抗体薬物複合体が次式:
【化43】
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(41)アウリスタチン系抗体薬物複合体は次式:
【化44】
[式中、mAbはモノクローナル抗体であり、Sは抗体の硫黄原子であり、そしてpは1〜8である]
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(42)アウリスタチン系抗体薬物複合体は次式:
【化45】
[式中、mAbはモノクローナル抗体であり、Sは抗体の硫黄原子であり、そしてpは1〜8である]
またはその製薬上許容される塩の形を有する、実施形態36に記載の方法。
(43)抗体薬物複合体を被験者に投与するステップを含みかつ組成物中の1抗体当たり薬物分子の平均数が2〜6である、実施形態1〜42のいずれかに記載の方法。
(44)組成物中の1抗体当たり薬物分子の平均数が3〜5である、実施形態43に記載の方法。
(45)Sがシステイン残基の硫黄原子由来である、実施形態40〜44のいずれかに記載の方法。
(46)システイン残基が還元された鎖間チオールのシステイン残基である、実施形態45に記載の方法。
(47)癌がCD30抗原を発現しかつアウリスタチン系抗体薬物複合体が抗CD30アウリスタチン系抗体薬物複合体である、実施形態1〜46のいずれかに記載の方法。
(48)癌がホジキンリンパ腫である、実施形態47に記載の方法。
(49)アウリスタチン系抗体薬物複合体がcAC10-vcE抗体薬物複合体である、実施形態47または48に記載の方法。
(50)cAC10-vcE抗体薬物複合体がブレンツキシマブ・ベドチンである、実施形態49に記載の方法。
(51)癌がCD70抗原を発現しかつアウリスタチン系抗体薬物複合体が抗CD70アウリスタチン系抗体薬物複合体である、実施形態1〜46のいずれかに記載の方法。
(52)癌が腎細胞癌である、実施形態51に記載の方法。
(53)癌がNHLである、実施形態51に記載の方法。
(54)癌がマントル細胞リンパ腫またはびまん性大B細胞リンパ腫である、実施形態53に記載の方法。
(55)アウリスタチン系抗体薬物複合体がh1F6-mcFである、実施形態51〜54のいずれかに記載の方法。
(56)h1F6-mcF抗体薬物複合体がSGN-75である、実施形態55に記載の方法。
(57)癌がCD19抗原を発現しそしてアウリスタチン系抗体薬物複合体が抗CD19アウリスタチン系抗体薬物複合体である、実施形態1〜46のいずれかに記載の方法。
(58)癌がNHLである、実施形態57に記載の方法。
(59)癌がマントル細胞リンパ腫またはびまん性大B細胞リンパ腫である、実施形態58に記載の方法。
(60)癌が慢性リンパ性白血病または急性リンパ芽球白血病である、実施形態57に記載の方法。
(61)アウリスタチン系抗体薬物複合体がhBU12-mcFである、実施形態57〜59のいずれかに記載の方法。
(62)hBU12-mcF複合体がSGN-19Aである、実施形態61に記載の方法。
本発明を、さらに次の実施例で記載するが、これらは本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0261】
実施例
本発明のさらなる理解を助けるために実施例を提供する。用いた特別な材料、プロトコルおよび条件は本発明のさらなる説明を意図しており、本発明の合理的な見方を限定すると解釈してはならない。
【実施例1】
【0262】
細胞株培養
786-O細胞はRoswell Park Memorial Institute 培地(RPMI)1640+10%ウシ胎児血清(FBS)で培養した。Caki-1細胞はMcCoy's 5A培地+10%FBSで培養した。Caki-2細胞はMcCoy's 5A培地+2%FBSで培養した。786-O、Caki-1、およびCaki-2細胞(腎細胞癌細胞株)は全て37℃にて5%CO
2で培養した。L540cy細胞はRPMI 1640+20%FBSで培養した。L428細胞はRPMI 1640+10%FBSで培養した。L540cyおよびL428細胞株はホジキンリンパ腫細胞株である。Karpas-299細胞はRPMI 1640+10%FBSで培養した。Karpas-299細胞株は未分化大細胞リンパ腫細胞(ALCL)株である。HT細胞はRPMI 1640+10%FBSで培養した。Raji 4RH細胞(クローン-11)はFrancisco J. Hernandez-Ilizaliturriから贈られたものであり、RPMI 1640+10%FBSで培養した。HTおよびRaji 4RH細胞株は非ホジキンリンパ腫細胞株である。Jeko-1細胞はRPMI-1640+10% FBSで培養した。Jeko-1細胞はマントル細胞リンパ腫細胞株である。
【実施例2】
【0263】
アウリスタチンADCまたは非複合アウリスタチンとmTOR経路インヒビターの併用を試験するin vitro方法
1ウエル当たり100μL増殖培地中の細胞を黒色-角型-クリア-平底96-ウエルプレート中にまいた。次いで低分子インヒビターと抗体薬物複合体の4X濃度の作業ストックを調製し、次いで2倍連続希釈物として用量設定し、10点の用量曲線を作った。単独薬物条件に対しては、50μL低分子インヒビターまたはADCまたは非複合アウリスタチンを各ウエルに、四重で50μLの培地と共に加え、最終体積200μL/ウエルとした。併用条件に対しては、50μL低分子インヒビターと50μLのADCまたは非複合アウリスタチン希釈液を細胞に四重で加え(各薬物の用量設定液に重ねて:高から低へ)、最終体積200μL/ウエルとした。処理した細胞を96時間、37℃にて、5%CO
2にてインキュベートした。細胞傷害性を、100μL Cell Titer Glo(Promega)溶液で1時間インキュベートすることにより測定し、次いで発光をFusion HTプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。データをExcel(Microsoft)およびGraphPad(Prism)で処理して用量応答曲線を作製し、各用量濃度において影響を受けた分率(f
a)を計算した。次いでCalcuSyn(Biosoft)ソフトウエアを用い、Chou-Talalayのメジアン-効果式:
D=D
m[f
a/(1-f
a)]
1/m(メジアン-効果式)
を使って、各薬物併用に対する相乗作用、加算性、または拮抗作用を決定した。ここで、(D)は薬物の用量である。(D
m)は効力を意味するメジアン-効果用量である。これはメジアン効果プロットのx-インターセプトにより決定する。(f
a)は用量により影響される分率である。(f
u)は影響されない分率、すなわち(1-f
a)である。(m)は用量-効果曲線のシグモイド性(形状)を意味する指数である。これはメジアン-効果プロットのスロープにより決定する。線形相関係数「r」は0.90以上でなければならない。薬物濃度ユニットは任意である。
【0264】
併用指数(CI)値<0.9は相乗作用を意味し、CI値=0.9〜1.1は加算性を示し、そしてCI値>1.1は拮抗作用を示す。表4は相乗作用、加算性および拮抗作用に対応するCIを示す。
【0265】
表4
【表4】
【0266】
別の日にそれぞれの併用研究を、他に明記しない限り、全部でn=3回繰り返し、平均併用指数値を平均の標準誤差(sem)と共に報じた。
【実施例3】
【0267】
薬物効力を試験するためのELISAアッセイ
細胞を1細胞株当たり2枚の6ウエルプレート中に、4.5mL増殖培地中の2.5 x 10
5細胞/ウエルでまいた。テムシロリムス(Wyeth, Madison, New Jersey)の作業ストックを10X濃度にて作り、次いで2倍連続希釈物として用量設定し、10点の用量曲線を作った。上記in vitro併用研究で用いたのと同等の最終濃度で、テムシロリムス(0.5mL)を細胞に加えた。処理した細胞を24時間、37℃、5%CO
2にて24時間インキュベートした。細胞ペレットを採集し、溶菌液を、PathScan ホスホ-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)サンドイッチELISAキット(Cell Signaling, Beverly, Massachusetts)で提供される溶解バッファーにComplete Mini EDTA-free プロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を加えて調製した。タンパク質濃度を定量し、1サンプル当たり10μgの合計タンパク質抽出物をELISAプレート上に供給し、取扱説明書に従って処理した。プレートをHT Fusion(Perkin Elmer)を用いて読出した。ELISAを実施して、次の併用研究で用いた濃度のテムシロリムスの存在におけるホスホ-S6リン酸化の量を検出した。
【実施例4】
【0268】
PI3K-AKT-mTORシグナル伝達経路の成分のウェスタンブロット
PI3K-AKT-mTORシグナル伝達を測定するために用いた一次抗体は、抗ヒトホスホ-AKT(Ser473)(クローン:193H12)、抗ヒトAKT、抗ヒトホスホ-4E-BP1(Thr37/46)、抗ヒト4E-BP1、抗ヒトホスホ-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)(クローン:2F9)、および抗ヒトS6リボソームタンパク質(クローン:54D2)(Cell Signaling; Beverly, Massachusetts)であった。用いた二次抗体は、Peroxidase-AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat anti-Rabbit IgG、F(ab')2 Fragment Specific、およびPeroxidase-AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat anti-Mouse IgG、Fcγ Fragment Specific (Jackson ImmunoResearch, West Grove, Pennsylvania)であった。ウェスタンブロットをSuperSignal West Picoミノール増強溶液(Thermo Scientific; Rockford, Illinois)化学発光基質を用いて現像し、そしてフィルムに曝露後、可視化した。
【実施例5】
【0269】
腎細胞癌におけるラパログとの併用治療
用量応答曲線を、RCC細胞株において、ADC h1F6-mcF、テムシロリムス、シロリムス、エベロリムス、h1F6-mcF+テムシロリムス、h1F6-mcF+シロリムス、およびh1F6-mcF+エベロリムスに対して作製した。RCC細胞株786-OおよびCaki-2において、低FBSの培地で増殖したCaki-2細胞株を除いて、テムシロリムスおよびシロリムス単独は強力な細胞障害性薬物でない。しかし、テムシロリムスとシロリムスは両方共、h1F6-mcFの細胞障害性を増強する。
【0270】
CIを、上記786-O細胞株中のh1F6-mcF+テムシロリムス、h1F6-mcF+テムシロリムス、およびh1F6-mcF+エベロリムスについて計算した。
図2はh1F6-mcFおよびMMAE単独が786-O細胞株において、ラパログ類、テムシロリムス、シロリムス、およびエベロリムスと相乗作用を有することを示す。
【0271】
CIをまた、上記のように、Caki-1細胞株中のh1F6-mcF+テムシロリムスおよびh1F6-mcF+テムシロリムスに対して計算した。
図3はh1F6-mcFおよびMMAE単独がCaki-1細胞株において、ラパログ類、テムシロリムスおよびシロリムスと相乗作用を有することを示す。
【0272】
h1F6-mcFはシロリムス、テムシロリムス、およびエベロリムスと相乗作用を有することを示すこれらの結果を表5に総括した。
【0273】
表5
【表5】
【実施例6】
【0274】
ホジキンリンパ腫およびALCLにおけるラパログ類による併用治療
CIを、上記のように、L540cy細胞株中のcAC10-vcE+テムシロリムス、MMAE+テムシロリムス、およびcAC10-vcE+エベロリムスについて計算した。CIを、上記のように、Karpas 299細胞株中のcAC10-vcE+テムシロリムス、MMAE+テムシロリムス、およびcAC10-vcE+エベロリムスについて計算した。
図4はcAC10-vcEおよびMMAEがラパログ類、テムシロリムスおよびシロリムスと相乗作用を有することを示す。
【0275】
cAC10-vcEがシロリムス、エベロリムスおよびテムシロリムスと相乗作用を有することを示す結果を表6に総括した。
【0276】
表6
【表6】
【0277】
* cAC10-vcEはL428細胞株にin vitro細胞傷害性を示さないので、併用研究はできなかった。
【実施例7】
【0278】
B-様ホジキンリンパ腫におけるcAC10-vcEとテムシロリムスのin vivo併用治療
B-様ホジキンリンパ腫においてin vivo併用治療を試験するために、マウス異種移植モデルを用いた。L428細胞をNOD-SCID-γマウス(The Jackson Laboratory)中に移植して腫瘍を作製した。腫瘍を平均90mm
3まで増殖し、次いで7マウスのグループに分類した。マウスを治療しない、テムシロリムス(20mg/kg)で治療する、cAC10-vcE(1.0mg/kg)で治療する、またはcAC10-vcEとテムシロリムスで治療するの各グループであった。cAC10-vcEはq4dx4 ipで投与した。テムシロリムスはq4dx4 ipまたはq3dx6 ipで投与した。併用治療において、cAC10-vcEを投与した2日後にテムシロリムスを投与した。最初の投与後120日間、腫瘍体積を定期的に測定した。データを腫瘍3倍化の速度を示すKaplan-Meierプロットとしてプロットした。P値をLog-rank試験を用いて計算し、統計的に有意であることを確認した。
図5に示しうるように、cAC10-vcE+テムシロリムスはいずれの単独治療よりも有意に優れた抗腫瘍活性を有した(Log-Rank 試験によるP-値=0.0011)
表7
【表7】
【実施例8】
【0279】
B-様ホジキンリンパ腫におけるcAC10-vcEとエベロリムスのin vivo併用治療
in vivoのB-様ホジキンリンパ腫の併用治療を試験するために、マウス異種移植モデルを用いた。L428細胞をNOD-SCID-γマウス(The Jackson Laboratory)中に移植して腫瘍を作製した。腫瘍を増殖して平均90mm
3に増殖し、次いで10マウスのグループに分類した。マウスを治療しない、エベロリムス(15mg/kg)で治療する、cAC10(1mg/kg)で治療する、cAC10-vcE(1.0mg/kg)で治療する、cAC10とエベロリムスで治療する、またはcAC10-vcEとエベロリムスで治療するの各グループであった。cAC10-vcEおよびcAC10はq4dx4 ipで投与した。エベロリムスはq4dx4 ipまたはq1dx14 poで投与した。第61日にcAC10-vcEとエベロリムス併用治療アームは10/10完全な応答を有し、そしてcAC10-vcEおよびエベロリムス単独治療アームは完全な応答がなかった。
【実施例9】
【0280】
非ホジキンリンパ腫におけるラパログ類による併用治療
CIを、上記のように、HT細胞株中のhBU12-mcF+テムシロリムスおよびhBU12-mcF+シロリムスについて計算した。
図6はhBU12-mcFがHT細胞株においてラパログ類、テムシロリムスおよびシロリムスと相乗作用を有することを示す。
【0281】
hBU12-mcFはシロリムス、テムシロリムス、およびエベロリムスと相乗作用を有することを示す結果を表8に総括した。
【0282】
表8
【表8】
【実施例10】
【0283】
二重特異性PI3K-mTORインヒビターと選択的mTORインヒビターによる併用療法
CIを、786-O細胞、Caki-1細胞、Jeko-1細胞、およびRaji-4RH-11細胞中のh1F6-mcF+BEZ235;L540cy(HL)細胞中のcAC10-vcE+BEZ235およびcAC10-vcE+PP242;Karpas-299細胞中のcAC10-vcE+BEZ235;HT細胞中のhBU12-mcF+BEZ235;ならびにJeko-1細胞中のh1F6-mcF+PP242について、上記のように計算した。
図8はNVP-BEZ235が多細胞株中のアウリスタチンADCと(ラパログ類、テムシロリムスおよびシロリムスの様に)相乗作用を有することを示す。RCCおよびNHL細胞株におけるさらに低いCI値(とりわけED
90にて)は、さらに大きい相乗作用を示唆する。
【0284】
NVP-BEZ235およびPP242はアウリスタチンADCと相乗作用を有することを示す結果を表9に総括した。
【0285】
表9
【表9】
【実施例11】
【0286】
P13KとAKTインヒビターによる併用治療
CIを、Jeko-1細胞中のh1F6-mcF+MK-2206ならびにHT細胞中のhBU12-mcF+XL147について計算した。
【0287】
P13KおよびAKTインヒビターがアウリスタチンADCと相乗作用を有することを示す結果を表10に総括した。
【0288】
表10
【表10】
【実施例12】
【0289】
例示のアッセイ
ある化合物がPI3Kを阻害するかどうかを確認する例示のアッセイは、Knight et al (2006) Cell vol. 125 pp. 733-747に与えられ、これは参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。概略を述べると、IC50値を、脂質キナーゼ活性に対する標準TLCアッセイまたはハイスループット膜捕獲アッセイのいずれかを用いて測定する。キナーゼ反応は、キナーゼ、インヒビター(2%DMSO最終濃度)、バッファー(25mM HEPES、pH 7.4、10mM MgCl2)、および新しく超音波処理したホスファチジルイノシトール(100μg/ml)を含有する反応混合物を調製することにより実施する。γ-32P-ATPの10μCiを含有するATPを最終濃度10または100μMまで加えることにより反応を開始する。反応は室温にて20分間進行させる。TLC分析については、反応を105μlの1N HClを、続いて160μlのCHCl3:MeOH(1:1)加えることにより終結させる。二層混合物を撹拌し、簡単に遠心分離し、そして有機相を、CHCl3をプレコートしたゲル添加ピペットを用いて新しいチューブに移す。この抽出物をTLCプレート上にスポットし、3〜4時間、n-プロパノール:1M酢酸の65:35溶液中で発色させる。TLCプレートを乾燥し、ホスホロイメージャースクリーン(Storm, Amerham)に曝し、そして定量する。各化合物に対して、キナーゼ活性を、典型的には、試験最高濃度(100μM)から2倍希釈の10〜12インヒビター濃度にて測定する。
【0290】
キナーゼ選択性(mTORC1/2)を確認する例示のアッセイは次の通りである。キナーゼインヒビターの選択性を確認するために、化合物をin vitroで大パネルの精製タンパク質キナーゼに対して(10uM ATPの存在のもとで)、mTORの阻害に対するIC50値より100倍高い濃度にて試験した(Feldman et al. (2009) PLOS Biology vol 7(2) pp. 371-383)。約100倍以上のIC50値の差(mTOR-対-他のキナーゼについて)は選択性を示す。各キナーゼはユニークなタンパク質または脂質基質を有する。
【0291】
ある化合物がATPと結合について競合するかどうかを確認する例示のアッセイは、その化合物がキナーゼ酵素活性を減少するが、基質濃度(ATP)を増加することにより克服できることを確立するMichaelis-Menten動力学を利用する。キナーゼ基質(タンパク質またはペプチド)中への放射標識したATP(32P-ATP)組込みがキナーゼアッセイの読出し値である。化合物を滴定すると、基質中に組込まれた32P-ATPの量を減じるであろう。アッセイにおいて存在するATPの量を増加すると、もしその化合物がATPと競合する化合物であれば、その化合物の効力を克服するであろう。