特許第6467402号(P6467402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6467402アルファ−ベータチタン合金の熱機械処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467402
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】アルファ−ベータチタン合金の熱機械処理
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/18 20060101AFI20190204BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20190204BHJP
   B21J 1/02 20060101ALI20190204BHJP
   B21J 1/06 20060101ALI20190204BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20190204BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   C22F1/18 H
   C22C14/00 Z
   B21J1/02 Z
   B21J1/06 Z
   B21J5/00 E
   B21J5/00 K
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 684C
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 692B
   !C22F1/00 693A
   !C22F1/00 693B
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 624
【請求項の数】41
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-500485(P2016-500485)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-517471(P2016-517471A)
(43)【公表日】2016年6月16日
(86)【国際出願番号】US2014019252
(87)【国際公開番号】WO2014149518
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年2月27日
(31)【優先権主張番号】13/844,196
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501187033
【氏名又は名称】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジーン−フィリップ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ミニサンドラム,ラメッシュ・エス
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス・ジョーンズ,ロビン・エム
(72)【発明者】
【氏名】マンティオーネ,ジョン・ヴィー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン,デヴィッド・ジェイ
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0060981(US,A1)
【文献】 特表2013−539820(JP,A)
【文献】 特開平01−272750(JP,A)
【文献】 特開昭61−060871(JP,A)
【文献】 特開平09−143650(JP,A)
【文献】 米国特許第05718779(US,A)
【文献】 RENAT IMAYEV,MATERIALS SCIENCE FORUM,スイス,TRANS TECH PUBLICATIONS LTD.,2010年 1月 1日,V638-642,P1702-1707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/18
C22C 14/00
B21J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法であって、
第1の温度範囲内の第1の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで前記第1の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域内にある、
前記第1の加工温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷すること、ここで前記第1の加工温度での加工および前記第1の加工温度からの徐冷の完了時に、前記アルファ−ベータチタン合金が、一次球状化アルファ相粒子微細構造を含み、徐冷することが、1分当たり5°F(2.8℃)を超えない冷却速度で前記アルファ−ベータチタン合金を冷却することを含む、
第2の温度範囲内の第2の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで前記第2の加工温度が、前記第1の加工温度より低く、そして前記第2の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金の前記アルファ−ベータ相領域内にある、および
第3の温度範囲内の第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで前記第3の加工温度が、前記第2の加工温度より低く、前記第3の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金の前記アルファ−ベータ相領域内にあり、そして前記第3の加工温度で加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金が、所望の微細化されたアルファ相粒度を含む、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)、Ti−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo合金(UNS R54620)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、およびTi−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)およびTi−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度より300°F(166.7℃)低い温度から、前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度より30°F(16.7℃)低い温度までである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度より600°F(333.3℃)低い温度から、前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度より350°F(194.4℃)低い温度までである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の温度範囲が、1000°F〜1400°F(537.8℃〜760.0℃)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
徐冷することが、炉冷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
徐冷することが、前記第1の加工温度の炉チャンバから前記第2の加工温度の炉チャンバに前記アルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の加工温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷するステップの前に、
前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度より300°F(166.7℃)低い温度から、前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度より30°F(16.7℃)低い温度までである熱処理温度範囲内の熱処理温度で、前記アルファ−ベータチタン合金を熱処理すること、および
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持すること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することが、1時間〜48時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の第2の加工温度で1回以上前記アルファ−ベータチタン合金を加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することが、30分〜12時間にわたって、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度より500°F(277.8℃)低い温度から、前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度より250°F(138.9℃)低い温度までの焼鈍温度範囲内の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加熱することを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、前記第2の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、および前記第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、前記第2の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、および前記第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、のうちの少なくとも1つが、複数の自由プレス鍛造ステップを含み、2つの連続するプレス鍛造ステップの中間で前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することが、前の加工温度に前記アルファ−ベータチタン合金を加熱すること、および30分〜12時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記前の加工温度に保持すること、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、据え込み鍛造することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、引抜き鍛造することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、据え込み鍛造および引抜き鍛造のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、前記アルファ−ベータチタン合金をラジアル鍛造することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工する前に、ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理すること、
ここで前記ベータ熱処理温度が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度から前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度を300°F(166.7℃)上回る温度までの温度範囲内にある、および
前記アルファ−ベータチタン合金を焼き入れすること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理することが、前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、ロール鍛造、スウェージング、展伸鍛錬、自由鍛造、インプレッション型鍛造、プレス鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、据え込み鍛造、引抜き鍛造、および多軸鍛造のうちの1つ以上を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アルファ−ベータチタン合金加工物のアルファ相粒度を微細化する方法であって、
第1の鍛造温度範囲内の第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで前記第1の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含み、そして
前記第1の鍛造温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を300°F(166.7℃)下回る温度から前記ベータトランザス温度を30°F(16.7℃)下回る温度にまで及ぶ、
前記第1の鍛造温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷すること、ここで、徐冷することが、1分当たり5°F(2.8℃)を超えない冷却速度で前記アルファ−ベータチタン合金を冷却することを含む、
第2の鍛造温度範囲内の第2の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで前記第2の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含み、
前記第2の鍛造温度範囲が、前記ベータトランザス温度を600°F〜350°F(333.3℃〜194.4℃)下回る範囲に及ぶ温度範囲を含み、そして
前記第2の鍛造温度が、前記第1の鍛造温度より低い、および
第3の鍛造温度範囲内の第3の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで前記第3の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、ラジアル鍛造することを含み、
前記第3の鍛造温度範囲が、1000°F〜1400°F(537.8℃〜760.0℃)であり、そして
前記第3の鍛造温度が、前記第2の鍛造温度より低い、
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)、Ti−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo合金(UNS R54620)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、およびTi−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)のうちの1つである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)およびTi−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)のうちの1つである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記徐冷することが、炉冷することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
徐冷することが、前記第1の鍛造温度に設定された炉から前記第2の鍛造温度に設定された炉に前記アルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の鍛造温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷するステップの後に、前記第1の鍛造温度範囲内の熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を熱処理すること、および前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持すること、を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することが、1時間〜48時間の時間範囲内の熱処理時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の鍛造温度で鍛造した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
焼鈍することが、前記ベータトランザス温度を500°F〜250°F(277.8℃〜138.9℃)下回る温度に及ぶ焼鈍温度範囲内の焼鈍温度で、および30分〜12時間にわたって、前記アルファ−ベータチタン合金を加熱することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つ以上のプレス鍛造ステップのうちのいずれかの中間で、前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
再加熱することが、前の加工温度に戻って前記アルファ−ベータチタン合金を加熱すること、および30分〜6時間に及ぶ範囲内の再加熱時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記前の加工温度に保持すること、を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ラジアル鍛造が、1度の一連の少なくとも2回であるが6回を超えない圧下を含み、前記ラジアル鍛造温度範囲が、1100°F〜1400°F(593.3℃〜760.0℃)である、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
ラジアル鍛造が、各圧下の前に再加熱ステップを伴う、1400°F(760.0℃)を超えない温度で開始し、1000°F(537.8℃)を下回らない温度まで低下するラジアル鍛造温度で、2度以上の一連の少なくとも2回であるが6回を超えない圧下を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造する前に、ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理すること、
ここで前記ベータ熱処理温度が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度から前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度を300°F(166.7℃)上回る温度までの範囲にある、および
前記アルファ−ベータチタン合金を焼き入れすること、
を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理することが、前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、ロール鍛造、スウェージング、展伸鍛錬、自由鍛造、インプレッション型鍛造、プレス鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、据え込み鍛造、引抜き鍛造、および多軸鍛造のうちの1つ以上を含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[連邦政府支援の研究開発に関する記述]
本発明は、米国国立標準技術研究所(NIST)、米国商務省によって授与されたNIST契約番号70NANB7H7038の下、米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明においてある特定の権利を有し得る。
【0002】
本開示は、アルファ−ベータチタン合金を処理するための方法に関する。より具体的に、本開示は、細粒、超細粒、または超微細粒微細構造を促進するようにアルファ−ベータチタン合金を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細粒(FG)、超細粒(SFG)、または超微細粒(UFG)微細構造を有するアルファ−ベータチタン合金は、例えば、改善された成形性、(クリープ形成のために有益である)より低い形成流動応力、および使用温度を緩和する外界でのより高い降伏応力のような多数の有益な特性を呈することが示されている。
【0004】
本明細書に使用される、チタン合金の微細構造を指す場合、「細粒」という用語は、15μm以下〜5μm超の範囲内のアルファ粒度を指し、「超細粒」という用語は、5μm以下〜1.0μm超の範囲内のアルファ粒度を指し、「超微細粒」という用語は、1.0μm以下のアルファ粒度を指す。
【0005】
粗粒または細粒微細構造を生成するための、チタンおよびチタン合金を製造する既知の商業用的方法は、複数の再加熱および鍛造ステップを使用して、0.03秒−1〜0.10秒−1のひずみ速度を用いる。
【0006】
細粒、微細粒、または超微細粒微細構造の製造のために意図される既知の方法は、0.001秒−1以下の超低ひずみ速度での多軸鍛造(MAF)プロセスを適用する(例えば、G.Salishchev,et.al.,Materials Science Forum, Vol.584−586,pp.783−788(2008)を参照)。一般的なMAFプロセスは、例えば、C.Desrayaud,et.al,Journal of Materials Processing Technology,172,pp.152−156(2006)に説明される。MAFプロセスに加えて、せん断押し出し(equal channel angle extrusion)(ECAE)または繰返し押し出し(equal channel angle pressing)(ECAP)と称されるプロセスが、チタンおよびチタン合金の細粒、微細粒、または超微細粒微細構造を達成するように使用され得ることが知られている。ECAPプロセスの説明は、例えば、V.M.Segal、ロシア特許第575892号(1977)、およびチタンおよびTi−6−4については、S.L.Semiatin and D.P.DeLo,Materials and Design,Vol.21,pp 311−322(2000)に見出せるが、ECAPプロセスはまたは、等温またはほぼ等温条件において非常に低いひずみ速度および非常に低い温度を必要とする。MAFおよびECAP等のそのような高い力のプロセスを用いることによって、任意の開始微細構造は、超微細粒化微細構造中に最終的に形質転換され得る。しかしながら、本明細書に更に説明される経済的理由のため、実験室規模のMAFおよびECAP処理のみが、現在行われている。
【0007】
超低ひずみ速度MAFおよびECAPプロセスにおける粒微細化への鍵は、使用される超低ひずみ速度、すなわち、0.001秒−1以下のひずみ速度の結果である、動的再結晶化の体制で継続的に動作する能力である。動的再結晶化中、粒は、同時に核形成し、成長し、転移蓄積する。新たに核形成した粒内の転移の発生は、粒成長のための駆動力を継続的に低減し、粒核形成は、エネルギー的に好ましい。超低ひずみ速度MAFおよびECAPプロセスは、動的再結晶化を使用して、鍛造プロセス中に粒を継続的に再結晶化する。
【0008】
粒微細化のためのチタン合金を処理する方法は、国際特許公開第WO98/17386号(「WO’386公開」)に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。WO’386公開の方法は、動的再結晶化の結果として細粒化された微細構造を形成するように合金を加熱および変形することを開示する。
【0009】
超微細粒Ti−6−4合金(UNS R56400)の比較的均一なビレットは、超低ひずみ速度MAFまたはECAPプロセスを使用して生成することができるが、MAFまたはECAPステップを実施するのに要する累積時間は、商業的設定においては過剰である可能性がある。それに加えて、従来の大規模な市販の自由プレス鍛造設備は、かかる実施形態において必要とされる超低ひずみ速度を達成する能力を有していないことがあり、したがって、特注の鍛造設備が、生産規模の超低ひずみ速度MAFまたはECAPを実行するために必要とされる場合がある。
【0010】
より細かい層状開始微細構造が、球状化細微細構造〜超微細微細構造を生成するために少ないひずみを必要とすることが一般に知られている。しかしながら、等温またはほぼ等温条件を用いることによって、細〜超微細アルファ粒度チタンおよびチタン合金の実験室規模の量を製造することが可能である一方で、実験室規模のプロセスを更に大規模にすることは、収量低下のため問題になり得る。また、工業規模の等温処理は、設備を稼働する支出のため、法外な費用がかかることが分かっている。非等温自由処理を含む高収量技術は、長期の設備使用を必要とする非常に低い鍛造速度が要求されるため、および収量を減少させる冷却関連亀裂のため、困難であることが分かっている。また、焼き入れされるにつれて、層状アルファ構造は、特に低処理温度で、低延性を呈する。
【0011】
微細構造が球状化アルファ相粒子で形成されるアルファ−ベータチタン合金が、層状アルファ微細構造を有するアルファ−ベータチタン合金より良い延性を呈することが一般的に知られている。しかしながら、球状化アルファ相粒子を用いてアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、著しい粒子微細化を生成しない。例えば、アルファ相粒子が、例えば10μm以上のある粒度に粗化されると、後続の熱機械処理中、視覚的金属組織学的に観察されるように、そのような粒子の粒度を減少させるように従来技術を用いることは、ほぼ不可能である。
【0012】
チタン合金の微細構造を微細化するための1つのプロセスは、欧州特許第1 546 429 B1号(「EP’429特許」)に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。EP’429特許のプロセスでは、アルファ相が高温で球状化されると、合金は焼き入れされて、比較的粗い球状アルファ相粒子の間に薄い層状アルファ相の形態で第2アルファ相を生成する。第1のアルファ処理より低い温度での後続の鍛造は、細アルファラメラの細アルファ相粒子への球状化をもたらす。得られる微細構造は、粗アルファ相粒子と細アルファ相粒子との混合である。粗アルファ相粒子のため、EP’429特許に開示された方法から得られた微細構造それ自体は、超微細〜細アルファ相粒の完全に形成された微細構造中への更なる粒微細化に役に立たない。
【0013】
米国特許公開第2012−0060981 A1号(「米国’981公開」)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、複数の据え込みおよび引抜き鍛造ステップ(「MUDプロセス」)の手段によって重複加工を付与するように、工業規模拡大を開示する。米国’981公開は、チタンまたはチタン合金のベータ相領域から焼き入れすることによって生成される層状アルファ構造を含む開始構造を開示する。MUDプロセスは、変形ステップと再加熱ステップとの交互のシーケンス中、過剰な粒子成長を阻害するように、低温で実施される。層状開始ストックは、使用される低温で低延性を呈し、自由鍛造のための規模拡大は、収量に関して問題であり得る。
【0014】
より高いひずみ速度に対応し、処理に要する時間を低減し、および/または特注の鍛造設備に対する必要性を排除する、細粒、微細粒、または超微細粒微細構造を有するチタン合金を生成するためのプロセスを提供することは、有利であろう。
【発明の概要】
【0015】
本開示の1つの非限定的な態様に従うと、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法は、第1の温度範囲内の第1の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工することを含む。第1の温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。アルファ−ベータチタン合金は、第1の加工温度から徐冷される。第1の加工温度で加工することおよび第1の加工温度から徐冷することの完了時に、アルファ−ベータチタン合金は、一次球状化アルファ相粒子微細構造を含む。アルファ−ベータチタン合金は、引き続いて、第2の温度範囲内の第2の加工温度で加工される。第2の加工温度は、第1の加工温度より低く、また、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。
【0016】
非限定的な実施形態では、第2の加工温度で加工することに続いて、アルファ−ベータチタン合金は、最終温度範囲内の第3の加工温度で加工される。第3の加工温度は、第2の加工温度より低く、第3の温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。第3の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工した後に、所望の微細化アルファ相粒度が、達成される。
【0017】
別の非限定的な実施形態では、第2の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工した後、かつ第3の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工する前に、アルファ−ベータチタン合金は、1つ以上の徐々に低下する第4の加工温度で加工される。1つ以上の徐々に低下する第4の加工温度のうちの各々は、第2の加工温度より低い。1つ以上の徐々に低下する第4の加工温度のうちの各々は、第4の温度範囲および第3の温度範囲内のうちの1つ内にある。第4の加工温度のうちの各々は、その直前の第4の加工温度より低い。非限定的な実施形態では、第1の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、第2の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、第3の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、および1つ以上の徐々に低下する第4の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工することのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップを含む。別の非限定的な実施形態では、第1の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、第2の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、第3の温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、および1つ以上の徐々に低下する第4の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工することのうちの少なくとも1つは、複数の自由プレス鍛造ステップを含み、方法は、2つの連続的プレス鍛造ステップの中間でアルファ−ベータチタン合金を再加熱することを更に含む。
【0018】
本開示の別の態様に従うと、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法の非限定的な実施形態は、第1の鍛造温度範囲内の第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することを含む。第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。第1の鍛造温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を300°F下回る温度からアルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度から30°F少ない温度にまで及ぶ温度範囲を含む。第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造した後に、アルファ−ベータチタン合金は、第1の鍛造温度から徐冷される。
【0019】
アルファ−ベータチタン合金は、第2の鍛造温度範囲内の第2の鍛造温度で鍛造される。第2の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。第2の鍛造温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を600F下回る温度からアルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を350°F下回る温度までにあり、第2の鍛造温度は、第1の鍛造温度より低い。
【0020】
アルファ−ベータチタン合金は、第3の鍛造温度範囲内の第3の鍛造温度で鍛造される。第3の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、ラジアル鍛造することを含む。第3の鍛造温度範囲は、1000°F〜1400°Fであり、最終鍛造温度は、第2の鍛造温度より低い。
【0021】
非限定的な実施形態では、第2の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造した後、かつ第3の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造する前に、アルファ−ベータチタン合金は、焼鈍され得る。
【0022】
非限定的な実施形態では、第2の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造した後、かつ第3の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造する前に、アルファ−ベータチタン合金は、1つ以上の徐々に低下する第4の鍛造温度で鍛造される。1つ以上の徐々に低下する第4の鍛造温度は、第2の鍛造温度より低い。1つ以上の徐々に低下する第4の鍛造温度のうちの各々は、第2の温度範囲および第3の温度範囲内のうちの1つ内にある。徐々に低下する第4の加工温度のうちの各々は、その直前の第4の加工温度より低い。
【0023】
本開示の別の態様に従うと、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法の非限定的な実施形態は、初期鍛造温度範囲内の初期鍛造温度で球状化アルファ相粒子微細構造を含むアルファ−ベータチタン合金を鍛造することを含む。初期鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。初期鍛造温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を500°F下回る温度からアルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を350°F下回る温度までにある。
【0024】
加工物は、最終鍛造温度範囲内の最終鍛造温度で鍛造される。最終鍛造温度で加工物を鍛造することは、ラジアル鍛造することを含む。最終鍛造温度範囲は、1000°F〜1400°Fである。最終鍛造温度は、初期鍛造温度より低い。
【0025】
本明細書に説明される物品および方法の特性および利点は、次の添付の図を参照することにより更に良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示に従ってアルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法の非限定的な実施形態のフロー図である。
図2】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って処理したステップ後のアルファ−ベータチタン合金の微細構造の模式図である。
図3】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金加工物の微細構造の後方散乱電子(BSE)顕微鏡写真である。
図4】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金の微細構造のBSE顕微鏡写真である。
図5】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金の後方散乱電子回折(EBSD)顕微鏡写真である。
図6A】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金の微細構造のBSE顕微鏡写真である。
図6B】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造され焼鈍された図6Aの非限定的な実施形態に従って鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金の微細構造のBSE顕微鏡写真である。
図7】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造され焼鈍された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金のEBSD顕微鏡写真である。
図8】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造され焼鈍された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金のEBSD顕微鏡写真である。
図9A】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造され焼鈍された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金である実施例2の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図9B図9Aに示される実施例2の試料の特定の粒度を有する粒の濃度を示す図である。
図9C図9Aに示される実施例2の試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。
図10A】第1の鍛造され焼鈍された試料のBSE顕微鏡写真である。
図10B】第2の鍛造され焼鈍された試料のBSE顕微鏡写真である。
図11】実施例3の第1の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図12】実施例3の第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図13A】実施例3の第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図13B】特定の粒度を有する実施例3の試料のアルファ粒の相対量の図である。
図13C】実施例3の試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。
図14A】実施例3の第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図14B】特定の粒度を有する実施例3の試料のアルファ粒の相対量の図である。
図14C】実施例3の試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。
図15】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金の微細構造のBSE顕微鏡写真である。
図16】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金のEBSD顕微鏡写真である。
図17A】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金である実施例4の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図17B図17Aに示される実施例4の試料の特定の粒度を有する粒の濃度を示す図である。
図17C図17Aに示される実施例4の試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。
図18】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金のEBSD顕微鏡写真である。
図19A】本開示の方法の非限定的な実施形態に従って更に鍛造された、鍛造され徐冷されたアルファ−ベータ相チタン合金である実施例4の試料のEBSD顕微鏡写真である。
図19B図19Aに示される実施例4の試料の特定の粒度を有する粒の濃度を示す図である。
図19C図19Aに示される実施例4の試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
読者は、本開示による特定の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、前述の詳細ならびにその他を理解する。
【0028】
本明細書に記載される実施形態のある説明が、本開示の実施形態の明確な理解に関連するこれらの特性、態様、特徴等のみを例示するために簡略化されており、一方、明瞭さのために、他の特性、態様、特徴等が除外されていることを理解されたい。当該分野の当業者は、本開示の実施形態の本説明を考慮することにより、他の要素および/または特性が、本開示の実施形態の特定の実装または適用において望ましい場合があることを認識する。しかしながら、そのような他の要素および/または特性が、本開示の実施形態の本説明を考慮することにより当該分野の当業者によって容易に確認され実施され得るため、よって、本開示の実施形態の完全な理解の必要はなく、そのような要素および/または特性の説明は、本明細書に提供されない。したがって、本明細書に記載される説明は、単に例示的な本開示の実施形態の例証であり、特許請求の範囲によってのみ定義されるように本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0029】
また、本明細書に列挙されるいかなる数の範囲も、その中に組み込まれる全ての部分的範囲を含むことが意図される。例えば、「1から10」の範囲は、記載される最小値1と記載される最大値10との間の(およびこれらを含む)、すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する、全ての部分範囲を含むように意図される。本明細書に記載される任意の最大数値限定は、その中に含まれる全てのより小さい数値限定を含むように意図され、また本明細書に記載される任意の最小数値限定は、その中に含まれる全てのより大きい数値限定を含むように意図される。したがって、出願人らは、本明細書に明示的に記載される範囲内に含まれる任意の部分範囲を明示的に記載するように、特許請求の範囲を含む本開示を改変する権利を留保する。全てのかかる範囲は、任意のかかる部分範囲を明示的に記載する改正が、米国特許法第112条第1項および米国特許法第132条(a)の要件に従うように、本明細書に本質的に開示されるように意図される。
【0030】
本明細書に使用される、「1つの」、「a」、「an」、および「the」という文法上の冠詞は、別途示されない限り、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むように意図される。したがって、本明細書において、冠詞は、その冠詞の文法上の対象物のうちの1つまたは1つ超え(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用される。例として、「構成要素」は、1つ以上の構成要素を意味し、またしたがって、1つを超える構成要素が企図され得、説明される実施形態の実装において用いられるか、または使用されてもよい。
【0031】
全ての百分率および比率は、別途示されない限り、合金組成の合計重量に基づいて、計算される。
【0032】
参照により本明細書に全体または一部が組み込まれることが言及されるあらゆる特許、刊行物、または他の開示資料は、組み込まれる資料が既存の定義、記述、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾しない範囲内でのみ本明細書に組み込まれる。したがって、また必要な範囲で、本明細書に記載の開示は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する資料に優先する。参照によって本願に組み込まれることが言及されるが、しかし既存の定義、声明、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾するあらゆる資料またはその一部分は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が発生しない範囲内でのみ組み込まれる。
【0033】
本開示は、種々の実施形態の説明を含む。本明細書に説明される全ての実施形態は、例示的、例証的、および非限定的であることが理解されるべきである。したがって、本発明は、種々の例示的、例証的、および非限定的な実施形態の説明によって限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に明示的または本質的に記載されるあらゆる特徴を記載するために改正され得る、そうでなければ本開示によって明示的または本質的に支持される、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0034】
本開示の態様に従うと、図1は、本開示に従ってアルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法100のいくつかの非限定的な実施形態を例示するフロー図である。図2は、本開示に従って処理するステップから得られる微細構造200の模式図である。本開示に従う非限定的な実施形態では、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法100は、層状アルファ相微細構造202を含むアルファ−ベータチタン合金を提供すること102を含む。当該分野の当業者にとっては、焼き入れがその後に続くアルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理することによって得られることは既知である。非限定的な実施形態では、アルファ−ベータチタン合金は、層状アルファ相微細構造202を提供するようにベータ熱処理され焼き入れされる104。非限定的な実施形態では、合金をベータ熱処理することは、ベータ熱処理温度で合金を加工することを含む。なおも別の非限定的な実施形態では、ベータ熱処理温度で合金を加工することは、ロール鍛造、スウェージング、展伸鍛錬、自由鍛造、インプレッション型鍛造、プレス鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、据え込み鍛造、引抜き鍛造、および多軸鍛造のうちの1つ以上を含む。
【0035】
更に図1および2を参照すると、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化するための方法100の非限定的な実施形態は、第1の温度範囲内の第1の加工温度で合金を加工すること106を含む。合金は、第1の温度範囲で1回以上鍛造され得、第1の温度範囲内の1つ以上の温度で鍛造され得ることが認識される。非限定的な実施形態では、合金が第1の温度範囲において2回以上加工される場合、合金は、まず、第1の温度範囲内のより低い温度で加工され、次いで、引き続いて第1の温度範囲内のより高い温度で加工される。別の非限定的な実施形態では、合金が第1の温度範囲において2回以上加工される場合、合金は、まず、第1の温度範囲内のより高い温度で加工され、次いで、引き続いて第1の温度範囲内のより低い温度で加工される。第1の温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。非限定的な実施形態では、第1の温度範囲は、一次球状アルファ相粒子を含む微細構造をもたらす温度範囲である。本明細書に使用される、「一次球状アルファ相粒子」という用語は、一般的に、本開示に従って第1の加工温度で加工した後に形成するか、または当該分野の当業者にすでに既知であるかまたは今後知られる任意の他の熱機械プロセスから形成する、チタン金属の六方最密アルファ相同素体を含む等軸粒子を指す。非限定的な実施形態では、第1の温度範囲は、アルファ−ベータ相領域のより高い分域にある。具体的な非限定的な実施形態では、第1の温度範囲は、合金のベータトランザスを300°F下回る温度からベータトランザス温度を30°F下回る温度までにある。アルファ−ベータ相領域において比較的高い場合がある第1の温度範囲内の温度で合金を加工すること104は、一次球状アルファ相粒子を含む微細構造204を生成することが認識される。
【0036】
本明細書に使用される、「加工」という用語は、熱機械加工または熱機械処理(「TMP」)を指す。「熱機械加工」は、制御された熱および変形処理を組み合わせて、例えば、限定することなく、強靭性の損失のない強度の改善等の相乗効果を獲得する、多様な金属形成プロセスを一般的に包含するように、本明細書に定義される。熱機械加工の本定義は、例えば、ASM Materials Engineering Dictionary,J.R.Davis,ed.,ASM International(1992),p.480に基づく意味と一致する。また、本明細書に使用される、「鍛造」、「自由プレス鍛造」、「据え込み鍛造」、「引抜き鍛造」、および「ラジアル鍛造」という用語は、熱機械加工の形態を指す。本明細書に使用される、「自由プレス鍛造」という用語は、材料流動が、各ダイセッションのためのプレスの単一加工動作を伴う機械的圧力または油圧によって完全に制約されないダイとダイとの間で、金属または金属合金を鍛造することを指す。自由プレス鍛造の本定義は、例えば、ASM Materials Engineering Dictionary,J.R.Davis,ed.,ASM International(1992),pp.298および343に基づく意味と一致する。本明細書に使用される、「ラジアル鍛造」は、2つ以上の移動アンビルまたはダイを用いる、それらの長さに沿って一定のまたは変化する直径で鍛造を生成するための、プロセスを指す。ラジアル鍛造の本定義は、例えば、ASM Materials Engineering Dictionary,J.R.Davis,ed.,ASM International(1992),p.354に基づく意味と一致する。本明細書に使用される、「据え込み鍛造」という用語は、加工物の長さが概して減少し、加工物の横断面が概して増加するように、加工物を自由鍛造することを指す。本明細書に使用される、「引抜き鍛造」という用語は、加工物の長さが概して増加し、加工物の横断面が概して減少するように、加工物を自由鍛造することを指す。冶金学分野の当業者は、これらのいくつかの用語の意味を容易に理解する。
【0037】
本開示に従う方法の非限定的な実施形態では、アルファ−ベータチタン合金は、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)、Ti−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo合金(UNS R54620)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、およびTi−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250;ATI 425(登録商標)合金)から選択される。本開示に従う方法の別の非限定的な実施形態では、アルファ−ベータチタン合金は、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)およびTi−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)から選択される。本開示に従う方法の具体的な非限定的な実施形態では、アルファ−ベータチタン合金は、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)である。
【0038】
第1の温度範囲内の第1の加工温度で合金を加工した106後に、合金は、第1の加工温度から徐冷される108。第1の加工温度から合金を徐冷することによって、一次球状アルファ相を含む微細構造が維持され、上述されるEP’429特許に開示されるように、急速冷却かまたは焼き入れ後に起こるように、第2の層状アルファ相中に形質転換されない。球状化アルファ相粒子で形成された微細構造は、層状アルファ相を含む微細構造より低い鍛造温度でより良い延性を呈すると考えられる。
【0039】
本明細書に使用される、「徐冷される」および「徐冷」という用語は、1分当たり5°Fを超えない冷却速度で加工物を冷却することを指す。非限定的な実施形態では、徐冷すること108は、1分当たり5°Fを超えない予めプログラムされたランプダウン速度で炉冷することを含む。本開示に従って徐冷することが、外界温度まで徐冷することかまたは合金が更に加工されるより低い加工温度まで徐冷することを含んでもよいことが認識される。非限定的な実施形態では、徐冷することは、第1の加工温度の炉チャンバから第2の加工温度の炉チャンバにアルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む。具体的な非限定的な実施形態では、加工物の直径が12インチ以上であり、加工物が十分な熱慣性を有することが確実にされると、徐冷することは、第1の加工温度の炉チャンバから第2の加工温度の炉チャンバにアルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む。第2の加工温度は、本明細書の以下に説明される。
【0040】
徐冷すること108の前に、非限定的な実施形態では、合金は、第1の温度範囲内の熱処理温度で熱処理され得る110。熱処理すること110の具体的な非限定的な実施形態では、熱処理温度範囲は、1600°Fから、合金のベータトランザス温度より30°F少ない温度にまで及ぶ。非限定的な実施形態では、熱処理すること110は、熱処理温度に加熱すること、およびその熱処理温度に加工物を保持することを含む。熱処理すること110の非限定的な実施形態では、加工物は、1時間〜48時間の熱処理時間にわたってその熱処理温度に保持される。熱処理することは、一次アルファ相粒子の球状化を完了するのに役立つと考えられる。非限定的な実施形態では、徐冷108または熱処理した110後に、アルファ−ベータチタン合金の微細構造は、アルファ相が球状一次アルファ相粒子を含むか、または球状一次アルファ相粒子からなる、少なくとも60容量パーセントのアルファ相画分を含む。
【0041】
球状一次アルファ相粒子を含む微細構造を含むアルファ−ベータチタン合金の微細構造が、上述のものと異なるプロセスによって形成され得ることが、認識される。そのような場合には、本開示の非限定的な実施形態は、球状一次アルファ相粒子を含むか、または球状一次アルファ相粒子からなる微細構造を含むアルファ−ベータチタン合金を提供すること112を含む。
【0042】
非限定的な実施形態では、第1の加工温度で合金を加工106および合金を徐冷した108後にか、または合金を熱処理110および徐冷した108後に、合金は、第2の温度範囲内の第2の加工温度で1回以上加工され114、第2の温度範囲内の1つ以上の温度で鍛造され得る。非限定的な実施形態では、合金が第2の温度範囲において2回以上加工される場合、合金は、まず、第2の温度範囲内のより低い温度で加工され、次いで、引き続いて第2の温度範囲内のより高い温度で加工される。加工物が、まず、第2の温度範囲内のより低い温度で加工され、次いで、引き続いて第2の温度範囲内のより高い温度で加工されると、再結晶化が強化されると考えられる。別の非限定的な実施形態では、合金が第1の温度範囲において2回以上加工される場合、合金は、まず、第1の温度範囲内のより高い温度で加工され、次いで、引き続いて第1の温度範囲内のより低い温度で加工される。第2の加工温度は、第1の加工温度より低く、第2の温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。具体的な非限定的な実施形態では、第2の温度範囲は、ベータトランザスを600°F〜350°F下回り、第1の温度範囲内の1つ以上の温度で鍛造され得る。
【0043】
非限定的な実施形態では、第2の加工温度で合金を加工した114後に、合金は、第2の加工温度から冷却される。第2の加工温度で加工した114後に、合金は、当該分野の当業者に既知のように、炉冷、空冷、および液体焼き入れのうちのいずれかによって提供される冷却速度を含むが、これらに限定されない、任意の冷却速度で冷却され得る。冷却は、以下に説明されるように、第3の加工温度かまたは徐々に低下する第4の加工温度のうちの1つのような、外界温度かまたは加工物が更に加工される次の加工温度に冷却することを含み得ることが認識される。非限定的な実施形態では、合金が第2の加工温度で加工された後に所望の程度の粒微細化が達成された場合、合金の更なる加工は、必要ないことも認識される。
【0044】
非限定的な実施形態では、第2の加工温度で合金を加工した114後に、合金は、第3の加工温度で加工される116か、または1つ以上の第3の加工温度で1回以上加工される。非限定的な実施形態では、第3の加工温度は、第3の加工温度範囲内の最終加工温度であってもよい。第3の加工温度は、第2の加工温度より低く、第3の温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域にある。具体的な非限定的な実施形態では、第3の温度範囲は、1000°F〜1400°Fである。非限定的な実施形態では、第3の加工温度で合金を加工した116後に、所望の微細化アルファ相粒度が、達成される。第3の加工温度で加工した116後に、合金は、当該分野の当業者に既知のように、炉冷、空冷、および液体焼き入れのうちのいずれかによって提供される冷却速度を含むが、これらに限定されない、任意の冷却速度で冷却され得る。
【0045】
更に図1および2を参照すると、任意の特定の理論に束縛されないが、アルファ−ベータ相領域において比較的高温でアルファ−ベータチタン合金を加工すること106、および場合により、徐冷すること108が続く熱処理すること110によって、微細構造が、アルファ相層状微細構造202を一次的に含むものから球状化アルファ相粒子微細構造204に形質転換されると考えられる。ベータ相チタンのある量、すなわち、チタンの体心立方相同素体が、アルファ相ラメラの間かまたは一次アルファ相粒子の間に存在し得ることが認識される。任意の加工および冷却ステップの後にアルファ−ベータチタン合金に存在するベータ相チタンの量は、主として、当該分野の当業者によってよく理解される、固有のアルファ−ベータチタン合金に存在する元素を安定させるベータ相の濃度に依存している。引き続いて一次球状化アルファ粒子204に形質転換される層状アルファ相微細構造202が、本明細書に上述されるように、第1の加工温度で合金を加工することおよび焼き入れすることの前に合金をベータ熱処理し焼き入れすること104によって、生成され得ることが注記される。
【0046】
球状化アルファ相微細構造204は、後続のより低温加工のための開始ストックとして機能する。球状化アルファ相微細構造204は、概して、層状アルファ相微細構造202より良い延性を有する。球状アルファ相粒子を再結晶化し微細化するのに必要とされるひずみが、層状アルファ相微細構造を球状化するのに必要とされるひずみより大きくなり得るが、アルファ相球状粒子微細構造204はまた、特に低温で加工する際、はるかに良い延性を呈する。加工することが鍛造することを含む本明細書の非限定的な実施形態では、より良い延性が、適度な鍛造ダイ速度であっても観察される。言い換えれば、球状化アルファ相微細構造204の適度なダイ速度でより良い延性によって可能にされたひずみを鍛造する際の粒が、例えば、低ダイ速度等のアルファ相粒度を微細化するためのひずみ要件を超え、より良い収量およびより低いプレス時間をもたらし得る。
【0047】
任意の特定の理論になおも束縛されないが、球状化アルファ相粒子微細構造204が層状アルファ相微細構造202より高い延性を有するため、球状アルファ相粒子204、206内の制御された再結晶化および粒成長を誘発するように、本開示に従うより低温加工のシーケンス(例えばステップ114および116等)を用いて、アルファ相粒度を微細化することが可能であると更に考えられる。終わりに、本明細書の非限定的な実施形態に従って処理されたアルファ−ベータチタン合金では、第1の加工するステップ106および冷却するステップ108によって達成された球状化において生成された一次アルファ相粒子は、それら自体が細かくないかまたは超微細ではないが、むしろ、多数の再結晶化された細〜超微細アルファ相粒208を含むかまたはそれらからなる。
【0048】
なおも図1を参照すると、本開示に従ってアルファ相粒を微細化する非限定的な実施形態は、第2の加工温度で合金を加工した114後、かつ第3の加工温度で合金を加工する116前に、任意の焼鈍または再加熱すること118を含む。任意の焼鈍すること118は、30分〜12時間の焼鈍時間にわたって、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を500°F下回る温度からアルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を250°F下回る温度にまで及ぶ焼鈍温度範囲の焼鈍温度に合金を加熱することを含む。より高温を選択するとより短時間が適用でき、より低温を選択するとより長い焼鈍時間が適用できることが認識される。いくつかの粒の粗化を費やしても、焼鈍することが再結晶化を増加させ、それが最終的に、アルファ相粒微細化を補助すると考えられる。
【0049】
非限定的な実施形態では、合金は、合金を加工するいずれのステップの前にも加工温度に再加熱され得る。一実施形態では、加工するステップのうちのいずれもが、例えば、複数の引抜き鍛造ステップ、複数の据え込み鍛造ステップ、据え込み鍛造および引抜き鍛造の任意の組み合わせ、複数の据え込み鍛造および複数の引抜き鍛造の任意の組み合わせ、およびラジアル鍛造等の複数の加工するステップを含んでもよい。本開示に従ってアルファ相粒度を微細化するいずれの方法においても、合金は、加工温度に、加工ステップかまたは鍛造ステップのうちのいずれかの中間にその加工温度で、再加熱され得る。非限定的な実施形態では、加工温度に再加熱することは、合金を所望の加工温度に加熱して、30分〜6時間にわたって合金をその温度に保持することを含む。加工物が、例えば端部を切断する等の中間調整のために30分以上のような延長時間にわたって炉から取り出されると、再加熱することは、12時間等の6時間を超えて、または当業者が、加工物全体が所望の加工温度に再加熱されることを知る如何なる長さにも延長され得ることが認識される。非限定的な実施形態では、加工温度に再加熱することは、合金を所望の加工温度に加熱して、30分〜12時間にわたって合金をその温度に保持することを含む。
【0050】
第2の加工温度で加工した114後に、合金は、本明細書に上述されるように、最終加工ステップであり得る、第3の加工温度で加工される116。非限定的な実施形態では、第3の温度で加工すること116は、ラジアル鍛造を含む。前の加工するステップが、自由端プレス鍛造を含む場合、自由端プレス鍛造は、同時係属中の米国特許出願第13/792,285号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、加工物の中心区域に更なるひずみを付与する。鍛造された加工物の表面区域のひずみが、鍛造された加工物の中心区域のひずみに相当し得るように、ラジアル鍛造が、より良い最終粒度制御を提供し、合金加工物の表面区域に更なるひずみを付与することが注記される。
【0051】
本開示の別の態様に従うと、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法の非限定的な実施形態は、第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することか、または第1の鍛造温度範囲内の1つ以上の鍛造温度で2回以上鍛造することを含む。第1の鍛造温度でかまたは1つ以上の第1の鍛造温度で合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。第1の鍛造温度範囲は、合金のベータトランザスを300°F下回る温度からベータトランザス温度を30°F下回る温度にまで及ぶ温度範囲を含む。第1の鍛造温度で合金を鍛造した後および場合によりそれを焼鈍した後に、合金は、第1の鍛造温度から徐冷される。
【0052】
合金は、第2の鍛造温度範囲内の、第2の鍛造温度でかまたは1つ以上の第2の鍛造温度で、1回または2回以上鍛造される。第2の鍛造温度で合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。第2の鍛造温度範囲は、ベータトランザスを600°F〜350°F下回る。
【0053】
合金は、第3の鍛造温度範囲内の、第3の鍛造温度でかまたは1つ以上の第3の鍛造温度で、1回または2回以上鍛造される。非限定的な実施形態では、第3の鍛造作業は、第3の鍛造温度範囲内の最終鍛造作業である。非限定的な実施形態では、第3の鍛造温度で合金を鍛造することは、ラジアル鍛造することを含む。第3の鍛造温度範囲は、1000°F〜1400°Fに及ぶ温度範囲を含み、第3の鍛造温度は、第2の鍛造温度より低い。
【0054】
非限定的な実施形態では、第2の鍛造温度で合金を鍛造した後、かつ第3の鍛造温度で合金を鍛造する前に、合金は、1つ以上の徐々に低下する第4の鍛造温度で鍛造される。1つ以上の徐々に低下する第4の鍛造温度は、第2の鍛造温度より低い。いくらかでもある場合、第4の加工温度のうちの各々は、その直前の第4の加工温度より低い。
【0055】
非限定的な実施形態では、高アルファ−ベータ領域鍛造作業、すなわち、第1の鍛造温度での鍛造は、15μm〜40μmの一次球状化アルファ相粒子度の範囲をもたらす。第2の鍛造プロセスは、ベータトランザスを500°F〜350°F下回る、1〜3回の据え込みおよび引抜きのような、複数回の鍛造、再加熱、および焼鈍作業によって開始され、ベータトランザスを550°F〜400°F下回る、1〜3回の据え込みおよび引抜きのような、複数回の鍛造、再加熱、および焼鈍作業が続く。非限定的な実施形態では、加工物は、任意の鍛造するステップの中間で再加熱されてもよい。非限定的な実施形態では、第2の鍛造プロセスの任意の再加熱ステップで、合金は、30分〜12時間の焼鈍時間にわたってベータトランザスを500°F〜250°F下回って、焼鈍され得、当業者によって認識されるように、より高温を選択するとより短時間が適用され、より低温を選択するとより長時間が適用され得る。非限定的な実施形態では、合金は、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を600°F〜450°F下回る温度で小さく鍛造され得る。鍛造のためのVeeダイは、例えば、窒化ホウ素または黒鉛シートのような潤滑化合物と一緒にこの時点で使用されてもよい。非限定的な実施形態では、合金は、1100°F〜1400°Fで実施された1の一連の2〜6圧下か、または2度以上の一連の2〜6圧下のいずれかにおいてラジアル鍛造され、1400°F未満で開始する温度で再加熱し、1000°F未満にならない温度まで、各新たな再加熱のために減少させる。
【0056】
本開示の別の態様に従うと、アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法の非限定的な実施形態は、初期鍛造温度範囲内の初期鍛造温度で球状化アルファ相粒子微細構造を含むアルファ−ベータチタン合金を鍛造することを含む。初期鍛造温度で合金を鍛造することは、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含む。初期鍛造温度範囲は、アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度を500°F〜350°F下回る。
【0057】
合金は、最終鍛造温度範囲内の最終鍛造温度で鍛造される。最終鍛造温度で加工物を鍛造することは、ラジアル鍛造することを含む。最終鍛造温度範囲は、ベータトランザスを600°F〜450°F下回る。最終鍛造温度は、1つ以上の徐々に低下する鍛造温度のうちの各々より低い。
【0058】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、特定の非限定的な実施形態を更に説明するように意図される。当業者は、以下の実施例の変形が、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲内で可能であることを理解する。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
実質的に球状化一次アルファ微細構造を形成する当該分野に精通している当業者にとって通常の方法に従って、Ti−6Al−4V合金を含む加工物を、第1の加工温度範囲に加熱し鍛造した。加工物を、次いで、(図1のボックス110のように)18時間にわたって第1の鍛造温度範囲にある1800°Fの温度に加熱した。次いで、その加工物を、1時間当たり−100°Fかまたは1分当たり1.5〜2°Fで1200°Fに下がるまで炉の中において徐冷し、次いで、外界温度に空冷した。鍛造され徐冷された合金の微細構造の後方散乱電子(BSE)顕微鏡写真を、図3および4に提示する。
【0060】
図3および4のBSE顕微鏡写真では、徐冷することが後に続く、アルファ−ベータ相領域において比較的高温で鍛造した後に、微細構造が、ベータ相が分散された一次球状化アルファ相粒子を含むことを観察した。顕微鏡写真では、灰色で網掛けしているレベルは、平均原子番号に関し、よって、化学組成変数を示し、結晶配向に基づいて局所的にも変化する。顕微鏡写真の淡色域は、バナジウムに富むベータ相である。バナジウムの比較的高い原子番号のため、ベータ相は、より淡い灰色の網掛けとして現れる。濃い色の域は、球状化アルファ相である。図5は、回析パターンの質を示す合金試料の後方散乱電子回折(EBSD)顕微鏡写真である。繰り返すが、淡色域は、これらの実験でより鋭い回析パターンを呈したようにベータ相であり、濃い色の域は、鋭さが少ない回析パターンを呈したアルファ相である。徐冷することが後に続く、アルファ−ベータ相領域において比較的高温でアルファ−ベータチタン合金を鍛造することは、ベータ相が分散された一次球状化アルファ相粒子を含む微細構造をもたらすことを観察した。
【0061】
[実施例2]
実施例1に類似の方法を用いて生成されたTi−6−4材料の4インチ立方体の形をした2つの加工物を、1300°Fに加熱し、約0.1〜1/秒のひずみ速度で作業されたむしろ急速な自由多軸鍛造の2つのサイクル(3.5インチ高さまで6回のヒット)を通じて鍛造し、少なくとも3つの中心ひずみに到達した。15個の第2の把持部をヒットとヒットの間に作製し、断熱加熱のいくつかの放散を可能にした。加工物を、引き続いて、ほぼ1時間1450°Fで焼鈍し、次いで、1300°Fで炉に移動させ、約20分浸漬した。第1の加工物を、最終的に空冷した。第2の加工物を、約0.1〜1/秒のひずみ速度で作業されたむしろ急速な自由多軸鍛造の2つのサイクル(3.5インチ高さまで6回のヒット)を通じて再度鍛造し、少なくとも3つの中心ひずみ、すなわち、合計6つのひずみを付与した。15個の第2の把持部をヒットとヒットの間に同様に作製し、断熱加熱のいくつかの放散を可能にした。図6Aおよび6Bは、それぞれ、第1および第2の試料が処理を経た後のBSE顕微鏡写真である。繰り返すが、灰色で網掛けしているレベルは、平均原子番号に関し、よって、化学組成変分、および結晶配向に対する局所的変分もまた示す。図6Aおよび6Bに示される本試料では、淡色区域がベータ相である一方で、濃い色の区域は、球状アルファ相粒子である。球状化アルファ相粒子内部の灰色レベルの変分は、亜粒および再結晶化粒の存在ような結晶配向の変化を明らかにする。
【0062】
図7および8は、それぞれ、実施例2の第1および第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色レベルは、EBSD回析パターンの質を表わす。これらのEBSD顕微鏡写真では、淡色域が、ベータ相であり、濃い域が、アルファ相である。これらの区域のいくつかは、部分構造がより濃くかつ網掛けで現れる。これらは、元のまたは一次アルファ粒子内の未再結晶化ひずみ区域である。それらを、それらのアルファ粒子の周辺部で核生成し成長した、小さいひずみを含まない再結晶化アルファ粒によって囲む。最も軽量の小粒は、アルファ粒子の間に分散された再結晶化ベータ粒である。図7および8の顕微鏡写真に見られるように、実施例1の試料のような球状化材料を鍛造することによって、一次球状化アルファ相粒子は、元のまたは一次球状化粒子内のより細かいアルファ相粒に再結晶化することを開始している。
【0063】
図9Aは、実施例2の第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、アルファ粒度を表し、粒界の灰色網掛けレベルは、それらの配向の乱れを示す。図9Bは、特定の粒度を有する試料のアルファ粒の相対量の図であり、図9Cは、試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。図9Bから判定できるように、実施例1の球状化試料を鍛造し、次いで1450°Fで焼鈍し、次いで再度鍛造した時に達成される大多数のアルファ粒は、超細粒、すなわち、直径1〜5μmであり、それらは、全体的に見て、いくつかの粒成長および中間の再結晶化の静的進行を可能にした1450°Fでの焼鈍直後、実施例2の第1の試料より細かい。
【0064】
[実施例3]
実施例1に類似の方法を用いて生成されたATI 425(登録商標)合金材料の4インチ立方体に成形された2つの加工物を、1300°Fに加熱し、約0.1〜1/秒のひずみ速度で作業されたむしろ急速な自由多軸鍛造の1つのサイクル(3.5インチ高さまで3回のヒット)を通じて鍛造し、少なくとも1.5個の中心ひずみに到達した。15個の第2の把持部をヒットとヒットの間に作製し、断熱加熱のいくつかの放散を可能にした。加工物を、引き続いて、1時間1400°Fで焼鈍し、次いで、1300°Fで炉に移動させ、30分浸漬した。第1の加工物を、最終的に空冷した。第2の加工物を、約0.1〜1/秒のひずみ速度で作業されたむしろ急速な自由多軸鍛造の1つのサイクル(3.5インチ高さまで3回のヒット)を通じて再度鍛造し、少なくとも1.5個の中心ひずみ、すなわち、合計3つのひずみを付与した。15個の第2の把持部をヒットとヒットの間に同様に作製し、断熱加熱のいくつかの放散を可能にした。
【0065】
図10Aおよび10Bは、それぞれ、第1および第2の鍛造され焼鈍された試料のBSE顕微鏡写真である。繰り返すが、灰色で網掛けしているレベルは、平均原子番号に関し、よって、化学組成変分、および結晶配向に対する局所的変分もまた示す。図10Aおよび図10Bに示される本試料では、淡色区域がベータ相である一方で、濃い色の区域は、球状アルファ相粒子である。球状化アルファ相粒子内部の灰色レベルの変分は、亜粒および再結晶化粒の存在ような結晶配向の変化を明らかにする。
【0066】
図11および12は、それぞれ、実施例3の第1および第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色レベルは、EBSD回析パターンの質を表わす。これらのEBSD顕微鏡写真では、淡色域が、ベータ相であり、濃い域が、アルファ相である。これらの区域のいくつかは、部分構造がより濃くかつ網掛けで現れる。これらは、元のまたは一次アルファ粒子内の未再結晶化ひずみ区域である。それらを、それらのアルファ粒子の周辺部で核生成し成長した、小さいひずみを含まない再結晶化アルファ粒によって囲む。最も軽量の小粒は、アルファ粒子の間に分散された再結晶化ベータ粒である。図11および12の顕微鏡写真に見られるように、実施例1の試料のような球状化材料を鍛造することによって、一次球状化アルファ相粒子は、元のまたは一次球状化粒子内のより細かいアルファ相粒に再結晶化することを開始している。
【0067】
図13Aは、実施例3の第1の試料のEBSD顕微鏡写真である。顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、アルファ粒度を表し、粒界の灰色網掛けレベルは、それらの配向の乱れを示す。図13Bは、特定の粒度を有する試料のアルファ粒の相対量の図であり、図13Cは、試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。図13Bから判定できるように、実施例1の球状化試料を鍛造し、次いで1400°Fで焼鈍し達成されたアルファ粒は、焼鈍中に再結晶化し再度成長して、大部分の粒が細粒、すなわち、直径5〜15μmである、幅広いアルファ粒度分布をもたらした。
【0068】
図14Aは、実施例3の第2の試料のEBSD顕微鏡写真である。顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、アルファ粒度を表し、粒界の灰色網掛けレベルは、それらの配向の乱れを示す。図14Bは、特定の粒度を有する試料のアルファ粒の相対量の図であり、図14Cは、試料のアルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。図14Bから判定できるように、実施例1の球状化試料を鍛造し、次いで1400°Fで焼鈍し、次いで再度鍛造した時に達成される多くのアルファ粒は、超細粒、すなわち、直径1〜5μmである。より粗い未再結晶化粒は、焼鈍中最も成長した粒の残遺物である。焼鈍時間および温度は、完全に有益になるように、すなわち、過剰な粒成長なく、再結晶化画分の増加を可能にするように、選択されなければならないことを示す。
【0069】
[実施例4]
実施例1に類似の方法を用いて生成されたTi−6−4材料の10インチ直径の加工物を、1450°F〜1300°Fの温度で実施された4回の据え込みおよび引抜きを通じて更に鍛造し、これらは1450°Fで1回目の一連の引抜きおよび再加熱をして7.5インチ直径へ戻し、次いで2回目に、1450°Fで約20%の据え込みからなる2つの類似の据え込みおよび引抜きシーケンス、および1300°Fで7.5インチ直径へ引き戻し、次いで3回目に、1300°Fで5.5インチ直径まで引き戻し、次いで4回目に、1400°Fでの約20%の据え込みからなる2つの類似の据え込みおよび引抜きシーケンス、および1300°Fで5.0インチ直径へ引き戻し、最終的に、1300°Fで4インチ直径へ引き戻す、の4回に分解される。
【0070】
図15は、得られた合金のBSE顕微鏡写真である。繰り返すが、灰色で網掛けしているレベルは、平均原子番号に関し、よって、化学組成変分、および結晶配向に対する局所的変分もまた示す。試料では、淡色区域は、ベータ相であり、濃い色の区域は、球状アルファ相粒子である。球状化アルファ相粒子内部の灰色網掛けレベルの変分は、亜粒および再結晶化粒の存在ような結晶配向の変化を明らかにする。
【0071】
図16は、実施例4の試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色レベルは、EBSD回析パターンの質を表わす。実施例1の球状化試料を鍛造することによって図16の顕微鏡写真に見られる、一次球状化アルファ相粒子は、元のまたは一次球状化粒子内のより細かいアルファ相粒に再結晶化される。再結晶化形質転換は、わずかな残りの未再結晶化面積のみが見られるように、ほぼ完了している。
【0072】
図17Aは、実施例4の試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、粒度を表し、粒界の灰色網掛けレベルは、それらの配向の乱れを示す。図17Bは、特定の粒度を有する粒の相対濃度を示す図であり、図17Cは、アルファ相粒界の配向の乱れの分布の図である。実施例1の球状化試料を鍛造し、1450°F〜1300°Fの温度で4回の据え込みおよび引抜きを通じて更なる鍛造を行った後に、アルファ相粒は、超細粒(1μm〜5μm直径)であることが、図17Bから判定され得る。
【0073】
[実施例5]
Ti−6−4の大規模ビレットを、ベータ領域において実施されたいくつかの鍛造作業後に焼き入れした。この加工物を、次のアプローチで合計5回の据え込みおよび引抜きを通じて更に鍛造した。最初に、第1の温度範囲において2回の据え込みおよび引抜きを実施してラメラ分解および球状化プロセスを開始し、約22インチ〜約32インチの範囲にその加工物の大きさおよび約40インチ〜75インチの長さまたは高さ範囲を維持した。次いで、実施例1の試料の微細構造に類似の微細構造を獲得する目的で、1750°Fで6時間にわたって焼鈍し、1時間当たり−100°Fで1400°Fまで炉冷した。その加工物を、次いで、1400°F〜1350°Fで再加熱して2回の据え込みおよび引抜きを通じて鍛造し、約40インチ〜75インチの長さまたは高さを有して約22インチ〜約32インチの範囲にその加工物の大きさを維持した。次いで、1300°F〜1400°Fで再加熱して別の据え込みおよび引抜きを実施し、約20インチ〜約30インチの大きさの範囲および約40インチ〜70インチの長さまたは高さ範囲にした。後続の約14インチ直径への引抜きを、1300°F〜1400°Fの再加熱で実施した。これは、いくつかのVダイ鍛造ステップを含む。最終的に、加工物を1300°F〜1400°Fの温度範囲でラジアル鍛造して約10インチ直径にした。このプロセス全体にわたって、中間調整および端部切断を挿入して亀裂伝播を阻止した。
【0074】
図18は、得られる試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、EBSD回析パターンの質を表わす。図18の顕微鏡写真に見られるように、まず高アルファ−ベータ領域、徐冷、および次いで低アルファ−ベータ領域において鍛造することによって、一次球状化アルファ相粒子は、元のまたは一次球状化粒子内のより細かいアルファ相粒に再結晶化することを開始する。低アルファ−ベータ領域において3回の据え込みおよび引抜きのみが実施されたことは、その温度範囲で4つのそのような据え込みおよび引抜きが実行された実施例3とは対照的であることが注記される。本実施例の場合には、これは、より低い再結晶化画分をもたらした。据え込みおよび引抜きの更なるシーケンスは、実施例3の微細構造に極めて類似の微細構造をもたらしたであろう。また、低アルファ−ベータの一連の据え込みおよび引抜き図1のボックス118)中の中間焼鈍は、再結晶化画分を改善したであろう。
【0075】
図19Aは、実施例5の試料のEBSD顕微鏡写真である。この顕微鏡写真の灰色網掛けレベルは、粒度を表し、粒界の灰色網掛けレベルは、それらの配向の乱れを示す。図19Bは、特定の粒度を有する粒の相対濃度の図であり、図19Cは、アルファ相粒の配向の図である。実施例1の球状化試料を鍛造して、1750°F〜1300°Fで5回の据え込みおよび引抜きを通じて更なる鍛造および焼鈍を実施した後に、アルファ相粒は、細粒(5μm〜15μm)から超細粒(1μm〜5μm直径)になると考えられることが図19Bから判定され得る。
【0076】
本説明が、本発明の明確な理解に関連する本発明の態様を例証することが理解される。当業者にとって明らかであり、したがって本発明のより良い理解を促進するものではない特定の態様は、本説明を簡略化するために提示されていない。本発明の限られた数の実施形態のみが本明細書に必然的に説明されるが、当業者は、前述の説明を考慮すれば、本発明の多くの修正または変形が採用され得ることを認識する。全てのかかる本発明の変形および修正は、前述の説明および以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
[発明の態様]
[1]
アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法であって、
第1の温度範囲内の第1の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで、前記第1の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のアルファ−ベータ相領域内にある、
前記第1の加工温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷すること、ここで、前記第1の加工温度で加工することおよび前記第1の加工温度から徐冷することの完了時に、前記アルファ−ベータチタン合金が、一次球状化アルファ相粒子微細構造を含む、
第2の温度範囲内の第2の加工温度でアルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで、前記第2の加工温度が、前記第1の加工温度より低く、そして前記第2の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金の前記アルファ−ベータ相領域内にある、および
第3の温度範囲内の第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、ここで、前記第3の加工温度が、前記第2の加工温度より低く、前記第3の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金の前記アルファ−ベータ相領域内にあり、そして前記第3の加工温度で加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金が、所望の微細化されたアルファ相粒度を含む、
を含む、前記方法。
[2]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)、Ti−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo合金(UNS R54620)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、およびTi−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)から選択される、[1]の方法。
[3]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)およびTi−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)から選択される[1]の方法。
[4]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)である、[1]の方法。
[5]
前記第1の温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザスを300°F下回る温度からベータトランザス温度を30°F下回る温度にまで及ぶ、[1]の方法。
[6]
前記第2の温度範囲が、前記ベータトランザスを600°F〜350°F下回る、[1]の方法。
[7]
前記第3の温度範囲が、1000°F〜1400°Fである、[1]の方法。
[8]
徐冷することが、炉冷することを含む、[1]の方法。
[9]
徐冷することが、1分当たり5°Fを超えない冷却速度で加工物を冷却することを含む、[1]の方法。
[10]
徐冷することが、前記第1の加工温度の炉チャンバから前記第2の加工温度の炉チャンバに前記アルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む、[1]の方法。
[11]
前記第1の加工温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷する前記ステップの前に、
前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザスを300°F下回る温度からベータトランザス温度を30°F下回る温度にまで及ぶ熱処理温度範囲内の熱処理温度で、前記アルファ−ベータチタン合金を熱処理すること、および
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持すること、
を更に含む、[1]の方法。
[12]
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することが、1時間〜48時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することを含む、[11]の方法。
[13]
前記第2の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、[1]の方法。
[14]
前記1つ以上の第2の加工温度で1回以上前記アルファ−ベータチタン合金を加工した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、[1]の方法。
[15]
前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することが、30分〜12時間にわたって前記ベータトランザスを500°F〜250°F下回る焼鈍温度範囲内の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加熱することを含む、[13]または[14]の方法。
[16]
前記第1の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、前記第2の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、および前記第3の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップを含む、[1]の方法。
[17]
前記第1の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、前記第2の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、および前記第3の温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工すること、のうちの少なくとも1つが、複数の自由プレス鍛造ステップを含み、前記方法が、2つの連続的プレス鍛造ステップの中間で前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することを更に含む、[1]の方法。
[18]
前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することが、前の加工温度に前記アルファ−ベータチタン合金を加熱すること、および30分〜12時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記前の加工温度に保持すること、を含む、[17]の方法。
[19]
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、据え込み鍛造することを含む、[16]の方法。
[20]
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、引抜き鍛造することを含む、[16]の方法。
[21]
前記少なくとも1つの自由プレス鍛造ステップが、据え込み鍛造および引抜き鍛造のうちの少なくとも1つを含む、[16]の方法。
[22]
前記第3の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、前記アルファ−ベータチタン合金をラジアル鍛造することを含む、[16]の方法。
[23]
前記第1の加工温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工する前に、ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理すること、
ここで、前記ベータ熱処理温度が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度から前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度を300°F上回る温度までの温度範囲内にある、および
前記アルファ−ベータチタン合金を焼き入れすること、を更に含む、[1]の方法。
[24]
前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理することが、前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することを更に含む、[26]の方法。
[25]
前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、ロール鍛造、スウェージング、展伸鍛錬、自由鍛造、インプレッション型鍛造、プレス鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、据え込み鍛造、引抜き鍛造、および多軸鍛造のうちの1つ以上を含む、[27]の方法。
[26]
アルファ−ベータチタン合金加工物のアルファ相粒度を微細化する方法であって、
第1の鍛造温度範囲内の第1の鍛造温度でアルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで、前記第1の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含み、そして
前記第1の鍛造温度範囲が、前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザスを300°F下回る温度からベータトランザス温度を30°F下回る温度にまで及ぶ、
前記第1の鍛造温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷すること、
第2の鍛造温度範囲内の第2の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで、前記第2の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含み、
前記第2の鍛造温度範囲が、前記ベータトランザスを600°F〜350°F下回る範囲に及ぶ温度範囲を含み、そして
前記第2の鍛造温度が、前記第1の鍛造温度より低い、および
第3の鍛造温度範囲内の第3の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで、前記第3の鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、ラジアル鍛造することを含み、
前記第3の鍛造温度範囲が、1000°F〜1400°Fであり、そして
前記第3の鍛造温度が、前記第2の鍛造温度より低い、
を含む、前記方法。
[27]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)、Ti−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo合金(UNS R54620)、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金(UNS R56260)、およびTi−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)のうちの1つである、[26]の方法。
[28]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−6Al−4V合金(UNS R56400)およびTi−6Al−4V ELI合金(UNS R56401)のうちの1つである、[26]の方法。
[29]
前記アルファ−ベータチタン合金が、Ti−4Al−2.5V−1.5Fe合金(UNS 54250)である、[26]の方法。
[30]
前記徐冷することが、炉冷することを含む、[26]の方法。
[31]
前記徐冷することが、1分当たり5°Fを超えない冷却速度で前記アルファ−ベータチタン合金を冷却することを含む、[26]の方法。
[32]
徐冷することが、前記第1の鍛造温度に設定された炉から前記第2の鍛造温度に設定された炉に前記アルファ−ベータチタン合金を移動させることを含む、[26]の方法。
[33]
前記第1の鍛造温度から前記アルファ−ベータチタン合金を徐冷するステップの後に、前記第1の鍛造温度範囲内の熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を熱処理すること、および前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持すること、を更に含む、[26]の方法。
[34]
前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することが、1時間〜48時間の時間範囲内の熱処理時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記熱処理温度に保持することを含む、[33]の方法。
[35]
前記第2の鍛造温度で鍛造した後に、前記アルファ−ベータチタン合金を焼鈍することを更に含む、[26]の方法。
[36]
焼鈍することが、前記ベータトランザスを500°F〜250°F下回る温度に及ぶ焼鈍温度範囲内の焼鈍温度で、および30分〜12時間にわたって、前記アルファ−ベータチタン合金を加熱することを含む、[35]の方法。
[37]
前記少なくとも1つ以上のプレス鍛造ステップのうちのいずれかの中間で、前記アルファ−ベータチタン合金を再加熱することを更に含む、[26]の方法。
[38]
再加熱することが、前の加工温度に戻って前記アルファ−ベータチタン合金を加熱すること、および30分〜6時間に及ぶ範囲内の再加熱時間にわたって前記アルファ−ベータチタン合金を前記前の加工温度に保持すること、を含む、[37]の方法。
[39]
ラジアル鍛造が、1度の一連の少なくとも2回であるが6回を超えない圧下を含み、前記ラジアル鍛造温度範囲が、1100°F〜1400°Fである、[26]の方法。
[40]
ラジアル鍛造が、各圧下の前に再加熱ステップを伴う、1400°Fを超えない温度で開始し、1000°Fを下回らない温度まで低下するラジアル鍛造温度で、2度以上の一連の少なくとも2回であるが6回を超えない圧下を含む、[26]の方法。
[41]
前記第1の鍛造温度で前記チタン合金を鍛造する前に、ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理すること、
ここで、前記ベータ熱処理温度が、前記アルファ−ベータチタン合金のベータトランザス温度から前記アルファ−ベータチタン合金の前記ベータトランザス温度を300°F上回る温度までの範囲にある、および
前記アルファ−ベータチタン合金を焼き入れすること、
を更に含む、[26]の方法。
[42]
前記アルファ−ベータチタン合金をベータ熱処理することが、前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することを更に含む、[41]の方法。
[43]
前記ベータ熱処理温度で前記アルファ−ベータチタン合金を加工することが、ロール鍛造、スウェージング、展伸鍛錬、自由鍛造、インプレッション型鍛造、プレス鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、据え込み鍛造、引抜き鍛造、および多軸鍛造のうちの1つ以上を含む、[42]の方法。
[44]
アルファ−ベータチタン合金のアルファ相粒度を微細化する方法であって、
初期鍛造温度範囲内の初期鍛造温度で球状化アルファ相粒子微細構造を含むアルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで、前記初期鍛造温度で前記加工物を鍛造することが、据え込み鍛造および引抜き鍛造の両方のうちの少なくとも1つのパスを含み、
前記初期鍛造温度が、前記ベータトランザスを500°F〜350°F下回る、および
最終鍛造温度範囲内の最終鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造すること、
ここで、前記最終鍛造温度で前記アルファ−ベータチタン合金を鍛造することが、ラジアル鍛造することを含み、
前記最終鍛造温度範囲が、1000°F〜1400°Fであり、そして
前記最終鍛造温度が、前記初期鍛造温度より低い、
を含む、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
図19C