特許第6467430号(P6467430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467430
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】輸送装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/24 20060101AFI20190204BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B66B23/24 Z
   B66B31/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-541656(P2016-541656)
(86)(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公表番号】特表2017-501949(P2017-501949A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014003426
(87)【国際公開番号】WO2015096895
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】102013227130.1
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516033190
【氏名又は名称】ティッセンクルップ エレベーター アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Elevator AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュラットマン,ユリウス
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−190819(JP,A)
【文献】 特開2009−249056(JP,A)
【文献】 特開2008−265993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
B66B 3/00− 3/02
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
B64F 1/00− 5/60
B64G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を輸送するための輸送装置において、少なくとも1の固体伝播音伝達部位(104)であって、人が触れると前記人の身体を介して固体伝播音として伝達され前記人に聞こえる振動を発生させる固体伝播音変換器(106)によって、直接的または間接的に作動される、固体伝播音伝達部位(104)を有し、
前記輸送装置が、動く手摺りを有するエスカレータまたは動く歩道の形態でデザインされており、前記動く手摺りが、前記固体伝播音伝達部位と、固体伝播音を伝達しない部位とを有することを特徴とする輸送装置。
【請求項2】
請求項に記載の輸送装置において、前記少なくとも1つの固体伝播音伝達部位が、エスカレーターまたは動く歩道の動く手摺り(102)の中または上に形成されることを特徴とする輸送装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の輸送装置において、前記少なくとも1つの固体伝播音変換器が、手摺りガイド(202)に固定されていることを特徴とする輸送装置。
【請求項4】
請求項に記載の輸送装置において、前記少なくとも1つの固体伝播音変換器(106)が、エスカレーターまたは動く歩道の動く手摺り(102)中に統合されていることを特徴とする輸送装置。
【請求項5】
請求項に記載の輸送装置において、前記動く手摺り(102)と前記固体伝播音変換器(106)の間に、中間部品(204)が形成されていることを特徴とする輸送装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れかに記載の輸送装置において、前記固体伝播音伝達部位と、前記固体伝播音を伝達しない部位が、適切な印付けにより互いに判別可能であることを特徴とする輸送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の輸送装置において、前記固体伝播音伝達部位が、輸送される人とともに移動することを特徴とする輸送装置。
【請求項8】
請求項1乃至4、6、7の何れかに記載の輸送装置において、前記固体伝播音変換器が、前記動く手摺りとともに移動することを特徴とする輸送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の輸送装置において、前記輸送装置が、前記固体伝播音を利用することで、輸送される人に、選択的に情報またはエンターテインメントを提供することを特徴とする輸送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の人を輸送するための輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、例えばエスカレーター、動く歩道、エレベーターシステムなど、多くの種類の人を輸送するための輸送装置の例を開示している。
【0003】
従来の輸送装置には、輸送される人への情報の提供が困難であり、輸送手段の利用者は多くの場合輸送されている時間を他に使えないという欠点があった。
【0004】
例えば移動中のエスカレーター利用者に視覚的情報を提供することは、例えば使用される光学媒体(スクリーン)は多くの場合静的であるのに対し、輸送されている人は動いているから、特に不便であると考えられてきた。このような輸送装置では、アナウンスにより音響情報を提供することや、バックグラウンドミュージックを再生することも、その利用者が不必要または迷惑な情報の流れに晒されることとなるので、困難であった。
【0005】
したがって輸送される人に、選択的に情報やエンターテインメントを提供することができる輸送装置を提供することが望まれる。
【0006】
この従来技術から進展して、本発明は請求項1に記載の特徴を有する輸送装置を提案する。より有利な形状は従属項および以降に記載されている。
【発明の概要】
【0007】
固体伝播音伝達部位を有する輸送装置をデザインするという本発明に係る解決策は、輸送装置の利用者に対し、選択的に情報を提供することを簡単に実現させる。本発明のように固体伝播音を利用することで、輸送されている人は自ら、例えばある特定の情報などを聞き取りたいか否かを、決めることができる。これにより輸送される人々に晒される、一人にのみ、または特定の人にのみに関心がある音の情報は、最小化することもできるが、輸送装置により輸送される人々のすべて、もしくは輸送装置の付近にいる人にも受け取られることもできる。
【0008】
ユーザーにとっては、本発明に係る輸送装置を使おうとする動機になりうる。
【0009】
本発明に係る輸送装置は、特におよそ1000mまでの短い距離で、人を輸送するための手段として理解される。特に、輸送装置はエスカレーター、動く歩道、エレベーターシステムの形態でデザインされてもよい。しかし前述の文言は搭乗橋、例えば飛行場のターミナルビルと、停められた旅客機の少なくとも1つのキャビンのドアをつなぐメカニズムである、ジェット搭乗橋なども含むべきである。このような搭乗橋は、特にエスカレーターや動く歩道も設けてデザインされてもよい。しかし搭乗橋という言葉は、たとえばクルーズ船などの船に乗るための橋も含むべきである。輸送装置という言葉に含まれないのは、明確には自動車や電車などの、より長い距離での輸送手段である。
【0010】
本発明に係る輸送装置は、輸送される人が触れると振動は音として認識できる振動を発生させるのに適した固体伝播音伝達部位を有する。固体伝播音変換器と呼ばれるものが前記振動を発生させるために用いられる。固体伝播音伝達部位は固定されていてもよいし、例えば動く手摺りと伴に可動であってもよい。
【0011】
これらの振動は、例えば固体伝播音伝達部位上に置かれた利用者の手から、骨を通じて内耳へと伝達される。このような音の伝搬は固体伝搬音伝達と呼ばれる。
【0012】
内耳では、耳小骨の振動が処理され、電気信号の形態で、音や音色としてそれを知覚する脳の聴覚中枢へと伝達される。この音は他の乗客によっては知覚されない。
【0013】
本発明がエスカレーターまたは動く歩道の形態をとる場合、情報を発信するための手段、つまり固体伝播音変換器と固体伝播音伝達部位が、輸送されている人と一緒に移動できるため、特に有利である。
【0014】
前記少なくとも1つの固体伝播音伝達部位は好適に、輸送装置の手持ち器具内または器具上に形成される。手持ち器具は、例えばエスカレーターや動く歩道での動く手摺りや、エレベーターシステムの手摺りであってもよい。
【0015】
好適には、手持ち器具の特定の領域は固体伝播音伝達部位の形態をとり、他の領域はそうでない形態をとるようにデザインされる。ここで、固体伝播音伝達部位には、例えば色や手触りの手段を使って印を付けることが望ましい。このような印により、輸送される人が自ら固体伝播音伝達部位を触れるかどうか決めることができる。
【0016】
ここで特に固体伝播音伝達部位は、エスカレーターや動く歩道の動く手摺りの中、または上に形成されることが望ましい。例えば、固体伝播音変換器が動く手摺りの上、中、または下に固定され、これと伴に動くようにしてもよい。
【0017】
好ましい形態では、固体伝播音変換器と動く手摺りの間に中間部品を設けて、固体伝播音変換器がこの中間部品を介して動く手摺りへと振動を伝達してもよい。このような中間部品は、例えば適切な形状をした金属板で製造してもよく、動く手摺りに特に単純に取り付けることができる。固体伝播音変換器をこのような中間部品に取り付けることも単純な操作である。
【0018】
さらなる形態では、手摺りや動く手摺りがその上をスライドする手摺りガイドが導入される。固体伝播音変換器はこの手摺りガイド上に静的に固定されてもよい。この形態の利点は、固体伝播音変換器が伴に搬送されなくてもよいという点である。手摺りの上側への振動の伝達は、ここでも、手摺り内に導入された上述の中間部品により行われる。
【0019】
エレベーターのかごの場合を例えに、前記少なくとも1つの固体伝播音伝達部位をエレベーターのかごの壁に形成することも可能である。例えば、エレベーターのかごの1以上の壁はパネルで設計され、それぞれのパネルの後ろに固体伝播音変換器が形成されることが考えられる。このような形態では、これらのパネルがしたがって固体伝播音伝達部位を構成する。このような形態では、これらのパネルは頭の高さで設置されてもよく、これにより振動は、頭蓋骨を通じて、耳小骨に直接伝達されることができる。
【0020】
本発明の更なる利点と形態は、下記の説明とこれに伴う図面により理解される。
【0021】
当然、上述の特徴と、以下に説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれに記載されている組み合わせ通りだけでなく、異なる組み合わせ、または単独でも、利用することができる。
【0022】
本発明は図面に、典型的な実施例により概略的に表されており、以下に図面を参照しながら詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明に係る輸送装置の好適な実施例を概略的で、一部断面的に示す図である。
図2図2は本発明により利用できる動く手摺りのさらなる好適な実施例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1および図2で、同様のまたは類似する部品には、同じ参照番号が付されている。
【0025】
図1には、本発明に係る輸送装置の特に望ましい実施例が概略的に示されている。ここにデザインされている輸送装置は動く歩道の形態であり、全体を100で示されている。動く歩道は輸送される人108が立つベルトコンベヤ110と、動く手摺り102、102’がそれぞれに形成された、2つの側壁または欄干101、101’とを有する。
【0026】
動く手摺り102、102’の速さは通常運用時、つまり人が輸送されるとき、ベルトコンベヤ110の速さに合わせられる。
【0027】
固体伝播音変換器106は、それぞれの動く手摺り102、102’の下側に、一定の間隔で形成され、動く手摺り102、102’と伴に移動する。図1において、それぞれの動く手摺りには、1つの固体伝播音変換器のみが描かれている。例えば、各固体伝播音変換器は、例えば50cm、100cm、または200cmの間隔で、動く手摺り102、102’の中または上に形成されてもよい。
【0028】
固体伝播音変換器106は、それぞれの動く手摺り102、102’を通じて、動く手摺り102、102’に、手や他の適切な体の部位で触れている輸送装置使用者108に対し、固体伝播音として伝達される振動数の振動を生成する。動く手摺り102、102’のうち固体伝播音変換器が形成されている部分はしたがって、固体伝播音伝達部位104を構成する。これらの振動は図1に象徴的に、固体伝播音変換器106と動く手摺り102、102’の間の曲線として図示されている。
【0029】
輸送される人108は例えば手や肘を使って、動く手摺り102の固体伝播音伝達部位104に触れる。この接触により、固体伝播音変換器106により生成された振動が固体伝播音として、その人の体を介して、特にその人の骨や骨格を介して、固体伝播音を音や音色として知覚する耳(内耳)へと伝達される。
【0030】
動く手摺り102、102’のそれぞれの固体伝播音伝達部位は、便宜なことに、輸送装置利用者が判別できるように印をつけられる。例えば、固体伝播音伝達部位は、例えば動く手摺りにリブをつけるなど、色や手触りの手段を用いて認識されるようにしてもよい。したがって、それぞれの固体伝播音伝達部位の間に、固体伝播音変換器が設置されていない部位を設けてもよく、この部位では固体伝播音伝達が起こらない。したがって輸送装置利用者は、固体伝播音伝達機能を利用するか否かを選択することができる。
【0031】
図2は、第2の実施例に係る、動く歩道の一部の詳細な断面図である。動く手摺り102と側壁101は明記されている。この例示的な実施例では、固体伝播音変換器106は、動く手摺り102に直接接続されるのではなく、手摺りガイド202と中間部品204を介在して接続されている。固体伝播音変換器と手摺りガイド202は、このデザインでは固定されており、したがって動く手摺り102と伴には動かない。手摺りガイド202は、中間部品204がスライドするW型の形状で形成される。ここで、中間部品204は動く手摺り102と伴に動く。固定された固体伝播音変換器106の振動は、手摺りガイド202と中間部品204から動く手摺り102の上側へと伝達される。固体伝播音変換器106は、手摺りガイド202に直接、例えばW型形状の適切な位置に固定され、これを振動させてもよい。図2に含まれているように、接続部107は固体伝播音変換器106がより効果を発揮できるように描かれているだけである。手摺りガイドと中間部品は好適には、例えば適した金属材料など、よい固体伝播音伝導性を有する材料から製造される。
【0032】
さらなる形態では、中間部品により、固体伝播音変換器106が直接動く手摺り102に固定されている場合と比較して、固体伝播音変換器106から動く手摺り102のより広い範囲へと振動を伝達することも可能である。これは中間部品202により、固体伝播音伝達部位を所望の形状および/または範囲で形成することで実現できる。
【0033】
中間部品は、動く歩道の端や曲がった部分で、そこに存在する動く手摺りの湾曲に適合する程度にしなやかでなければならない。これは中間部品を形成する金属材料(例えば金属板)を適度に薄くおよび/または狭く形成することで実現できる。
【0034】
この好適な実施例によると、例えば固体伝播音変換器106は動く手摺り102の範囲と必ずしも合わせる必要がないため、既存の輸送装置に容易に固体伝播音変換器を追加導入することができ、費用効果があり、さまざまな調整オプションがある。
【0035】
固体伝播音伝達部位は、ミクロ構造やナノ構造の表面を有し、自浄作用を可能にしてもよい。これにより固体伝播音伝達部位が常に清潔に保たれ、輸送装置を利用する人が固体伝播音伝達部位に触れてみようという気を起こさせる。
【符号の説明】
【0036】
100 本発明に係る動く歩道
101 側壁、左側
101’側壁、右側
102 動く手摺り
102’動く手摺り
106 固体伝播音変換器、左側
106’固体伝播音変換器、右側
107 接続部
108 輸送される人
110 ベルトコンベヤ
202 手摺りガイド
204 中間部品
図1
図2