(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本出願人は、燃料タンクの外側に配置され内燃機関の燃料噴射装置へと燃料を供給する燃料供給装置を提案している(特許文献1参照)。この燃料供給装置は、例えば、円筒状のポンプケースの内部にフューエルポンプが収容され、このフューエルポンプの回転軸にインペラが連結されインペラー室に収容される。そして、フューエルポンプのロータが回転しインペラが回転することで入口から内部へと燃料が吸い込まれ、通路を通じて出口へと流れて吐出される。
【0003】
また、フューエルポンプにおける筒体の端部には第1端面部材が設けられ、この第1端面部材に形成された脱気ポートから燃料中の気体成分が通路へと排出され、一方、燃料供給装置の端部に設けられたプレッシャレギュレータから余剰燃料が戻し管へと排出され、気体成分及び余剰燃料はそれぞれ燃料タンクへ戻される。
【0004】
そして、通路と戻し管との間にチェックバルブを設け、燃料タンクから通路側への燃料の流入を防止することで、前記燃料タンク内のダストが前記通路へと進入することを防止し、前記通路内に配置されたプレッシャレギュレータへのダストの噛み込みを防止している。
【0005】
上述した燃料供給装置は、例えば、二輪車等の車両において、通常の状態では燃料ポンプの中心軸線が水平方向に延在するように搭載されているが、フューエルポンプが停止した状態で、この車両が傾いて入口の形成されたニップルの開口部が重力方向下方に向いた状態で燃料供給装置内の燃料が空となった場合に、燃料タンクから前記燃料供給装置へと燃料が供給されるとニップル内に空気層ができてしまう。
【0006】
このように燃料タンクとフューエルポンプとの間に空気層のできた状態で、前記フューエルポンプを始動して燃料を内燃機関に向けて吐出させるためには、ニップル内の空気層が全てインペラー室内へと吸引され、さらに燃料が前記インペラー室へと到達する必要があるが、脱気ポートの下流とチェックバルブとの間の通路が密閉空間であるため、インペラの回転によって通路内の空気を圧縮した分だけしか、ニップル内の空気及び燃料をインペラー室へと導入することができない。
【0007】
すなわち、インペラー前となるニップル内の空気が全てインペラー室内に導入され燃料がインペラー室内へと到達すれば燃料を吸い上げ可能となるが、そのためには、インペラの下流側となる通路の空間がある程度の容量を備える必要がある。
【0008】
そのため、上述したような車両が所定角度だけ傾いた状態となり、それに伴って、燃料の供給される入口が重力方向下方となるように傾いた場合でも、燃料を確実に吸い込んで吐出可能な燃料供給装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、燃料ポンプの内部に燃料が空の状態でも確実に燃料を吸い上げて吐出することが可能な燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両に搭載された燃料タンクの外側に配置され、燃料ポンプを収納する筐体を備えた燃料供給装置において、
燃料ポンプは、インペラを収容するポンプ室と、燃料を吸入する吸入管と連通しポンプ室の上流端に開口するポンプ室吸入口と、ポンプ室の下流端に開口するポンプ室吐出口と、ポンプ室吸入口とポンプ室吐出口との間に設けられ燃料ポンプと筐体との間に形成される脱気室と連通した脱気孔とを備え、
脱気室は、脱気室から外部への燃料の流れのみを許容するチェック弁を介して燃料タンクと接続され、ポンプ室吸入口の上流側が脱気室の外側に位置し、
脱気室、ポンプ室及びポンプ室の上流側に燃料のない状態から、燃料タンクと吸入管とを接続する供給通路へと燃料が供給される際、燃料ポンプの作動停止状態において、吸入管及び供給通路内でポンプ室吸入口の上流側に形成される空気層の体積V1と、脱気室の体積V2との関係が、V2/V1≧240であ
り、車両に搭載された状態で吸入管の上流側が重力方向下方となるように配置された際、吸入管の上流側において吸入管の延在方向に対して角度をなす境界部位の重力方向上方側を屈曲点とした場合、空気層は、屈曲点を通る水平面よりも重力方向上方であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、燃料供給装置を構成する筐体の内部に燃料ポンプが収納されると共に、筐体と燃料ポンプとの間には脱気室が設けられ、この脱気室は、外部への燃料の流れのみを許容するチェック弁を介して燃料タンクと接続されると共に、ポンプ室の上流端に形成されたポンプ室吸入口の上流側が脱気室の外側に位置している。
【0013】
そして、燃料ポンプの作動停止状態において、脱気室、ポンプ室及びポンプ室の上流側に燃料のない状態から燃料タンクと吸入管とを接続する供給通路へと燃料が供給される際に、吸入管及び供給通路内でポンプ室吸入口の上流側に形成される空気層の体積V1と脱気室の体積V2とをV2/V1≧240の関係となるように設定している。
【0014】
これにより、燃料ポンプの作動作用下にポンプ室吸入口とポンプ室吐出口との間に設けられた脱気孔を通じて脱気室の空気層を圧縮することで、インペラの上流側に溜まった空気層をポンプ室を通じて脱気室へと排出することができるため、燃料ポンプの内部に燃料が空の状態でも、供給通路まで達している燃料の液面をポンプ室へと到達させ、液体燃料を燃料ポンプ内へと確実に吸い込んで吐出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0022】
すなわち、燃料ポンプの作動停止状態において、筐体における脱気室、燃料ポンプのポンプ室及びポンプ室の上流側に燃料のない状態から供給通路へと燃料が供給される際に、吸入管及び供給通路内でポンプ室吸入口の上流側に形成される空気層の体積V1と脱気室の体積V2とをV2/V1≧240の関係となるように設定することで、燃料ポンプの作動作用下にポンプ室吸入口とポンプ室吐出口との間に設けられた脱気孔を通じて脱気室の空気層を圧縮し、インペラの上流側に溜まった空気層をポンプ室から脱気室へと排出することができる。その結果、燃料ポンプの内部に燃料が空の状態でも、インペラの上流側の空気層を脱気室側へと押し込むことで供給通路まで達している燃料の液面をポンプ室へと到達させ、液体燃料をポンプ室内へと確実に吸い込んで吐出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る燃料供給装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1A及び
図1Bにおいて、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る燃料供給装置を示す。
【0025】
この燃料供給装置10は、図示しない二輪車等の車両において燃料タンクT(
図6参照)の外側に配置され使用されるものであり、
図1A〜
図5に示されるように、筒状のハウジング(筐体)12と、該ハウジング12の内部に収納される燃料ポンプ14と、前記ハウジング12の一端部に連結されフィルタ16の収納されるフィルタボディ(筐体)18と、前記ハウジング12の他端部を閉塞するカバー部材(筐体)20とを含む。そして、燃料供給装置10は、
図2〜
図5に示されるように、車両において燃料ポンプ14の軸線が矢印A、B方向に沿って略水平となるように搭載される。
【0026】
ハウジング12は、例えば、樹脂製材料から有底筒状に形成され、その一端部となる底部22には筒状に突出した連結部24(
図2参照)が形成され、後述するフィルタボディ18が接続される。連結部24は、
図2に示されるようにハウジング12の中心から径方向外側にオフセットして形成され、その中心には軸方向(矢印A、B方向)に貫通した吸入通路26が形成されると共に、前記吸入通路26と同軸上となるようにハウジング12の内部に燃料ポンプ14が収納される。
【0027】
また、ハウジング12の内部には、燃料ポンプ14の側方となる位置に所定容積を有した脱気室28が設けられ、この脱気室28には、後述する燃料ポンプ14で脱気された燃料の気体成分が排出されると共に、燃料ポンプ14から吐出され余剰となった燃料が導入される。また、脱気室28は燃料ポンプ14と略平行に設けられている。
【0028】
燃料ポンプ14は、例えば、円筒状のケーシング30と、このケーシング30の一端部側(矢印A方向)に収納されるポンプ部32と、前記ケーシング30の中央部に収納され該ポンプ部32を駆動するモータ部34と、前記ケーシング30の他端部側(矢印B方向)に設けられ前記ポンプ部32によって吸い込まれた燃料を吐出する吐出部36とを含む。
【0029】
ポンプ部32は、ポンプボディ38と、該ポンプボディ38を覆うポンプカバー40と、前記ポンプボディ38と前記ポンプカバー40との間に設けられるインペラ42とを含み、前記ポンプボディ38と前記ポンプカバー40とが軸方向(矢印A、B方向)に沿って積層された状態でケーシング30の一端部に固定される。
【0030】
ポンプボディ38には、その中央部にモータ部34を構成するシャフト44が挿通されると共に、該シャフト44の径方向外側には軸方向(矢印A、B方向)に貫通し燃料の吐出される吐出口(ポンプ室吐出口)46が形成され、内部に形成された断面円形状のポンプ室48に円盤状のインペラ42が回転自在に収納される。そして、ポンプ室48と吐出口46とが連通している。
【0031】
ポンプカバー40は、ポンプボディ38のポンプ室48を覆うように設けられ、その一端面に形成され軸方向(矢印A、B方向)に貫通した吸入口50と、ポンプボディ38に臨む他端面に形成されたポンプ流路52と、このポンプ流路52に開口し気体燃料を外部へと排出させる脱気孔54(
図4参照)とを備える。そして、吸入口50は、ポンプカバー40の一端面から軸方向(矢印A方向)へ突出した吸入管56に形成され、この吸入管56がハウジング12の吸入通路26と接続され連通している。また、脱気孔54は、ハウジング12の脱気室28と連通している。
【0032】
上述した吸入口50がポンプ室48において上流側に開口し、吐出口46が前記ポンプ室48における下流側に開口している。
【0033】
モータ部34は、ブラシレスモータからなり、ケーシング30内に回転自在に設けられるロータ(図示せず)を含み、このロータの中心に保持されるシャフト44の一端部がインペラ42の中心に連結され、他端部がポンプボディ38に対して回転自在に支持される。そして、図示しないコントローラからの制御信号によってステータコア及びロータが回転することでシャフト44を介してインペラ42がポンプ室48で回転する。
【0034】
吐出部36は、モータ部34の他端部に臨むようにケーシング30の他端部に固定され、前記ケーシング30に連結される基部58と、該基部58に対して前記ケーシング30から離間する方向(矢印B方向)へ突出した円筒部60とを含み、この円筒部60が後述するカバー部材20へ挿入され保持される。
【0035】
円筒部60の中心には、ケーシング30の燃料を外部へ吐出する燃料出口(吐出口)62が軸方向に沿って貫通すると共に、内部に燃料が所定圧力となることで弁開状態となり前記燃料出口62を開放する第1チェック弁64が設けられる。この第1チェック弁64は、円筒部60との間に介装されたスプリング65によってモータ部34側(矢印A方向)へと常に付勢されており、弁閉状態から燃料の圧力によって開放される。
【0036】
フィルタボディ18は、ハウジング12の一端部に連結され、円筒状に形成されたボディ本体66と、該ボディ本体66の外周面から突出した燃料供給管68及び燃料排出管70とを有し、前記ボディ本体66の開口した一端部にキャップ72が装着されることで閉塞される。
【0037】
ボディ本体66は、ハウジング12の一端部に対して燃料ポンプ14と同軸となるように設けられ、前記ハウジング12の吸入通路26を通じてフィルタボディ18の内部と燃料ポンプ14のポンプ室48とが連通している。
【0038】
また、ボディ本体66の内部には、ホルダ73を介して円筒状のフィルタ16が装着され、このホルダ73の中央がハウジング12の連結部24に保持されることで、前記フィルタ16が燃料ポンプ14と同軸状となるように保持されると共に、前記フィルタ16の内部に吸入通路26が開口した状態となる。このフィルタ16は、燃料供給管68からフィルタボディ18内へ導入される燃料中の塵埃等を除去する目的で設けられている。
【0039】
燃料供給管68は、ボディ本体66の外周面から該ボディ本体66の軸線と直交方向に延在した管状に形成され、図示しない配管を介して燃料タンクTと接続されている。そして、燃料タンクT中の燃料が燃料供給管68を通じてフィルタボディ18の内部へと導入され、フィルタ16を通過することで塵埃等が除去された後、吸入通路26を通じて燃料ポンプ14へと吸入される。すなわち、フィルタボディ18は、燃料タンクTと燃料ポンプ14とを接続する燃料の供給通路として機能する。
【0040】
燃料排出管70は、燃料供給管68と同様にボディ本体66の外周面から該ボディ本体66の軸線と直交方向に延在した管状に形成され、前記燃料供給管68と所定間隔離間して略平行に形成される。この燃料排出管70は、ボディ本体66及び燃料供給管68と非連通に設けられると共に、後述するハウジング12の連通路102を通じて脱気室28と連通している。
【0041】
また、燃料排出管70には、
図5に示されるように、連通路102から燃料タンクT側への燃料の流れのみを許容する第2チェック弁74が設けられている。第2チェック弁74は、燃料排出管70内の弁座76に着座する第1弁体78と、この第1弁体78を弁座76側へと付勢するスプリング80と、燃料排出管70の開口部に設けられ前記スプリング80を保持する保持部材82とを有し、前記保持部材82との間に介装されたスプリング80によって第1弁体78がボディ本体66側に向かって常に付勢されている。
【0042】
そして、燃料排出管70は、図示しない配管を介して燃料タンクTと接続され、脱気室28へと排出された余剰燃料の圧力によって第2チェック弁74が開口されることで前記燃料排出管70を通じて前記燃料タンクTへと戻される。
【0043】
換言すれば、燃料排出管70を通じた燃料タンクTから燃料供給装置10側への燃料及び塵埃等の流入を第2チェック弁74によって規制している。
【0044】
カバー部材20は、
図1A、
図2及び
図3に示されるように、円盤状のベース部84と、該ベース部84の外周面から突出した吐出管86とを有し、前記ベース部84はハウジング12の他端部を閉塞するように装着される。
【0045】
ベース部84の内部には、ハウジング12側(矢印A方向)に開口した吐出燃料通路88を有し、この吐出燃料通路88には燃料ポンプ14の吐出部36が接続され燃料出口62と連通すると共に、前記吐出燃料通路88が後述する吐出管86と連通している。
【0046】
また、ベース部84には、
図4に示されるように、脱気室28に臨む端面からフィルタボディ18側に向かって突出した取付部90が形成され、その中心には軸方向(矢印A、B方向)に貫通した連通孔92が形成され吐出燃料通路88及び脱気室28と連通すると共にプレッシャレギュレータ94が装着されている。
【0047】
このプレッシャレギュレータ94は、連通孔92の段部に着座自在な第2弁体96と、該第2弁体96を段部側に向かって付勢するスプリング98とを有し、前記第2弁体96がスプリング98の弾発力によって段部に着座することで前記連通孔92を通じた吐出燃料通路88と脱気室28との連通が遮断された弁閉状態となる。一方、吐出燃料通路88から連通孔92へと流入する燃料(余剰燃料)によって第2弁体96が押圧されることで弁開状態となり、燃料が吐出燃料通路88から脱気室28へと流れる。
【0048】
吐出管86は、ベース部84の外周面から径方向外側へと突出した管状に形成され、図示しない配管を介して内燃機関のインジェクタ100(
図6参照)と接続されている。そして、燃料ポンプ14の燃料出口62から吐出された燃料は、ベース部84の吐出燃料通路88から吐出管86を経て外部へと吐出される。
【0049】
本発明の実施の形態に係る燃料供給装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、燃料ポンプ14の作動停止状態において、燃料タンクTの燃料は、図示しない配管を通じて燃料供給装置10の燃料供給管68からフィルタボディ18の内部まで導入されている。
【0050】
先ず、燃料供給装置10において、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて燃料ポンプ14におけるモータ部34のロータ(図示せず)が回転駆動することでシャフト44を介してポンプ部32のインペラ42がポンプ室48で回転駆動する。そして、このインペラ42の回転によってフィルタボディ18の内部に導入されている燃料が吸入通路26及び吸入管56の吸入口50を通じてポンプ室48の内部へと吸入される。
【0051】
そして、吸入口50から吸入された燃料は、ポンプ室48においてポンプ流路52を通じてポンプカバー40に沿って周方向へと流れることで徐々に圧力が上昇すると共に、その気体成分が脱気孔54を通じて外部へと排出された後、ポンプボディ38の吐出口46へと流通して高圧となった燃料が吐出される。
【0052】
この吐出口46から吐出された燃料は、モータ部34の内部空間を通じて吐出部36の燃料出口62まで流れ、第1チェック弁64を押圧して弁開状態とすることで前記燃料出口62からカバー部材20側へと吐出される。この燃料は、カバー部材20の吐出燃料通路88及び吐出管86を通じて外部へと吐出され、図示しない配管を通じて内燃機関のインジェクタ100へと供給される。
【0053】
また、燃料ポンプ14から吐出され余剰となった燃料は、吐出燃料通路88において所定の圧力より高いことで、プレッシャレギュレータ94の第2弁体96を押圧して弁開状態となることで、燃料の一部が前記プレッシャレギュレータ94を通じて脱気室28へと流入する。そして、余剰燃料は、脱気室28からフィルタボディ18の連通路102を通じて燃料排出管70へと流れ、第2チェック弁74の第1弁体78を押し上げて開放状態とすることで、図示しない配管を通じて燃料タンクT(
図6参照)へと戻される。
【0054】
次に、上述した燃料供給装置10の作動停止状態において、この燃料供給装置10の搭載された車両が傾斜し、燃料ポンプ14の吐出部36が重力方向上方(矢印C1方向)となり、吸入管56が重力方向下方(矢印C2方向)となるように所定角度θだけ傾いた場合の動作について
図6を参照しながら説明する。
【0055】
このような状態で燃料ポンプ14が作動停止状態において、脱気室28、ポンプ室48及び該ポンプ室48の上流側に燃料のない状態から燃料タンクTと吸入管56とを接続する燃料供給管68へと燃料が供給される際に、ハウジング12の吸入通路26及び燃料ポンプ14の吸入口50には、フィルタボディ18の内部に導入されている燃料と前記燃料ポンプ14のポンプ室48との間に空気層ができる。一方で、燃料ポンプ14の脱気孔54の下流側となる脱気室28が密閉空間となっている。
【0056】
この燃料供給装置10が水平状態から所定角度θだけ傾斜している状態において、ハウジング12の吸入通路26及び燃料ポンプ14の吸入口50における空気層の体積V1と、前記ハウジング12における脱気室28の体積V2との関係が、V2/V1≧240となるように、前記吸入通路26及び前記脱気室28を有するハウジング12、吸入口50を有する燃料ポンプ14を形成している。
【0057】
なお、体積V1となる空気層は、上述した燃料供給装置10の傾いた状態において、ハウジング12の吸入通路26とフィルタボディ18との境界部位となる屈曲点Dを通る水平面Sよりも重力方向上方(矢印C1方向)となり、且つ、吸入口50の上流側に連続して存在するものである。この屈曲点Dは、ポンプ室48の上流側となる吸入通路26と、燃料ポンプ14が作動する前に燃料の導入されているフィルタボディ18とが所定角度で接続される際の重力方向上方側(矢印C1方向)となる境界部である。
【0058】
このような構成とすることで、燃料供給装置10を構成する燃料ポンプ14を作動させると、インペラ42の回転作用下にポンプ室48内において脱気孔54を通じて脱気室28が加圧され、それに伴って、前記脱気室28における空気層が所定容積だけ圧縮される。この圧縮によって、インペラ42の上流側となる吸入通路26及び吸入口50の空気層(体積V1)がポンプ室48内へと吸入される。
【0059】
そして、上述した吸入通路26及び吸入口50内の空気層が体積V1のポンプ室48内に全て吸引されることで、フィルタボディ18内まで導入されていた燃料の液面が吸入通路26及び吸入口50を通じてポンプ室48内へと到達し、インペラ42の回転作用下に前記燃料を吸い上げ可能となることで吐出部36の燃料出口62を通じて吐出される。
【0060】
そのため、燃料供給装置10の搭載された車両が水平状態から所定角度θだけ傾斜している場合でも、燃料ポンプ14によって燃料タンクTの燃料を確実に吸入して内燃機関のインジェクタ100へと供給することができる。
【0061】
なお、上述した空気層の体積V1と脱気室28の体積V2との関係は、実際に燃料供給装置10を傾斜させるテストを行うことで得られた実績値である。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、車両における燃料タンクTの外側に配置される燃料供給装置10において、燃料ポンプ14を収納するハウジング12に脱気室28を備え、この脱気室28から外部への一方向の流れのみを許容する第2チェック弁74を介して前記燃料タンクTと接続されると共に、燃料ポンプ14における吸入口50及び吸入管56の上流側が前記脱気室28と非連通に形成され、前記燃料ポンプ14の作動停止状態において、燃料を吸入する吸入管56及び前記燃料タンクTと前記吸入管56とを接続するフィルタボディ18内に形成される空気層の体積V1と、前記脱気室28の体積V2との関係をV2/V1≧240となるように設定している。
【0063】
これにより、脱気室28、燃料ポンプ14のポンプ室48及び前記ポンプ室48の上流側に燃料のない状態から前記燃料が供給される際、インペラ42の上流側と下流側の脱気室28とが脱気孔54を介してのみ連通し、直接連通しておらず該脱気室28が前記脱気孔54の下流において密閉空間である場合であっても、燃料ポンプ14の作動作用下に脱気孔54を通じて脱気室28の空気層を圧縮することで、インペラ42の上流側に溜まった体積V1の空気層をポンプ室48を通じて前記脱気室28へと排出することが可能となる。
【0064】
すなわち、インペラ42の上流側の体積V1に対し、前記インペラ42の下流側となる脱気室28の体積V2を所定比率以上となるように十分な容量で確保することにより、前記脱気室28の空気層を圧縮して上流側の空気層を確実に押し込むことが可能となる。
【0065】
その結果、燃料ポンプ14の内部に燃料が空の状態でも、インペラ42の上流側に存在している空気層を前記インペラ42の下流側へと吸い込むことでフィルタボディ18まで達している燃料の液面をポンプ室48へと到達させ、液体燃料を燃料ポンプ14へと確実に吸い込んで吐出することができる。
【0066】
また、燃料ポンプ14の燃料出口62を、カバー部材20の吐出燃料通路88を介してプレッシャレギュレータ94と接続し、この吐出燃料通路88に吐出された余剰燃料が前記プレッシャレギュレータ94を通じて脱気室28へと排出されると共に、前記プレッシャレギュレータ94が、ハウジング12において燃料ポンプ14の径方向に配置され、前記ハウジング12の外壁面(壁面)12aによって覆われている。
【0067】
そのため、燃料ポンプ14の径方向外側に配置したプレッシャレギュレータ94を覆うように脱気室28を形成することで、燃料供給装置10における燃料ポンプ14の軸方向の大型化を抑制しながら所定体積の脱気室28を確保することが可能となり、さらに、燃料ポンプ14におけるインペラ42の上流側に空気層が存在する場合であっても、前記インペラ42の下流側となる脱気室28の体積を大きく確保できることで、ポンプ室48内に燃料のない空の状態からの燃料の吸い込みが可能となる。
【0068】
さらに、フィルタボディ18における燃料供給管68及び燃料排出管70を、燃料ポンプ14の軸線と直交方向に延在し、且つ、プレッシャレギュレータ94を覆うハウジング12の径方向外側に向かって延在させ、且つ、前記プレッシャレギュレータ94を覆う外壁面12aと同一方向に延在するように設けることで、前記燃料供給管68及び燃料排出管70の延在方向と前記プレッシャレギュレータ94を覆うハウジング12の張り出し方向とを同一方向にできる。そのため、燃料ポンプ14の軸方向から見て燃料供給管68及び燃料排出管70のハウジング12からの径方向への張り出しを抑え、径方向の大型化を抑制しつつ装置全体を軸方向に小型化できる。
【0069】
なお、本発明に係る燃料供給装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【解決手段】燃料供給装置10を構成するハウジング12には、燃料ポンプ14との間に脱気室28が設けられ、この脱気室28は外部への燃料の流れのみを許容する第2チェック弁74を有した燃料排出管70を介して燃料タンクTに接続され、燃料ポンプ14の吸入口50と非連通に設けられている。そして、燃料ポンプ14のポンプ室48、脱気室28及びポンプ室48の上流側に燃料のない状態から燃料が供給された際、前記燃料ポンプ14の作動停止状態において吸入口50の上流側で連続して形成される空気層の体積V1と前記脱気室28の体積V2とを、V2/V1≧240の関係とすることで、燃料供給装置10の作動時に燃料出口62が上方となるように傾斜している場合でも燃料を燃料ポンプ14で確実に吸い上げて内燃機関へと吐出できる。