(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面修飾された前記ジルコニア粒子における前記シランカップリング剤の質量が0.1質量部以上5質量部未満となるように前記シランカップリング剤を配合することを特徴とする、
請求項1に記載の光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献1に開示される半導体封止用樹脂組成物においては、シリコーン樹脂も使用可能とされているが、実施例としてはエポキシ樹脂の使用のみが開示されている。LEDの封止用材料においては、LEDから発せられた光のうち、紫外線のエネルギーによって、ラジカルが発生することがある。このラジカルは、エポキシ樹脂を酸化させるため、LEDの封止用材料にエポキシ樹脂が含まれていると、酸化によって封止用材料が黄変しやすくなる。
【0008】
LEDの封止用材料においては、エポキシ樹脂の代わりにシリコーン樹脂を用いれば、黄変のおそれは回避することが可能である。しかしながら、シリコーン樹脂を含む封止用材料は、光の屈折率が低いためLEDからの光の取出し効率が低下するおそれがある。
【0009】
特許文献2に開示される熱硬化性シリコーン樹脂組成物および特許文献3に開示される透明複合体のいずれにおいても、樹脂成分としてシリコーン樹脂を用いている。ただし、引用文献2に開示される熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、シリコーン誘導体100重量部に対して、金属酸化物微粒子の含有量が1〜70重量%である。この金属酸化物微粒子の含有量は相対的に少ないことから、硬化物の屈折率は十分に向上しているとは言い難い。
【0010】
一方、特許文献3に開示される透明複合体は、シランカップリング剤等により修飾された正方晶ジルコニア粒子をシリコーン樹脂に分散させた構成となっており、正方晶ジルコニア粒子の含有率は1重量%以上80重量%以下である。ただし、正方晶ジルコニア粒子の修飾部分の重量比(すなわち表面修飾剤の量)が相対的に多いことから、透明複合体の屈折率は十分に向上していない。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、ジルコニア粒子の含有量を相対的に多くすることができ、かつ、表面修飾剤の量を相対的に少なくすることができることによって、硬化物の屈折率を優れたものにすることが可能な光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法およびその硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法は、前記の課題を解決するために、ジルコニア粒子と、分散助剤と、シリコーン樹脂と、を含有する光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法であって、前記ジルコニア粒子として、シランカップリング剤の加熱還流により表面修飾されたジルコニア粒子が分散媒に分散されているジルコニア分散体を用い、表面修飾される前の前記ジルコニア粒子、表面修飾に用いられたシランカップリング剤、及びシリコーン樹脂の質量の総量である固形成分の総量を100質量部としたときに、表面修飾された前記ジルコニア粒子の前記固形成分中における配合量が、表面修飾される前の前記ジルコニア粒子換算で50質量部以上75質量部以下となるように、前記ジルコニア分散体を配合し、表面修飾される前の前記ジルコニア粒子の質量を100質量部としたときに、表面修飾された前記ジルコニア粒子における前記シランカップリング剤の質量が、0.1質量部以上10質量部以下となるように前記シランカップリング剤を配合し、前記シリコーン樹脂として、熱硬化性シリコーン樹脂を用いるとともに、前記固形成分中における配合量が25質量部以上50質量部以下となるように、当該シリコーン樹脂を配合し、前記分散助剤として、ケトン類およびアルコール類を用いるとともに、当該分散助剤を、前記光半導体用シリコーン樹脂組成物の全成分のうち当該分散助剤を除いた成分100質量部に対して300質量部以上2000質量部以下となるように配合し、前記ジルコニア分散体、前記シリコーン樹脂、および前記分散助剤を配合して混合した後に、前記ジルコニア分散体に含まれる前記分散媒を除去し、前記混合により、表面修飾された前記ジルコニア粒子が分散状態となり、かつ、分散粒子径が1nm以上50nm以下となっている構成である。
【0013】
前記構成によれば、分散状態にあるジルコニア粒子の分散粒子径が前記の範囲内にあり、分散助剤として、ケトン類およびアルコール類が含まれ、シランカップリング剤を加熱還流させることによりジルコニア粒子を表面修飾することにより、光半導体用シリコーン樹脂組成物中において、ジルコニア粒子の含有量を相対的に多くすることができる。また、表面修飾されたジルコニア粒子においては、表面修飾剤であるシランカップリング剤の量を相対的に少なくすることができる。これにより、光半導体用シリコーン樹脂組成物を硬化させた硬化物の屈折率を優れたものにすることができる。
【0014】
前記構成の光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法においては、表面修飾された前記ジルコニア粒子における前記シランカップリング剤の質量が0.1質量部以上5質量部未満となるように、前記シランカップリング剤を配合する構成であってもよい。
【0015】
また、前記構成の光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法においては、前記分散助剤は、1000質量部以下となるように配合する構成であってもよい。
【0016】
さらに本発明には、前記構成の光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法により得られる光半導体用シリコーン樹脂組成を硬化させる光半導体用シリコーン樹脂硬化物の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、以上の構成により、ジルコニア粒子の含有量を相対的に多くすることができ、かつ、表面修飾剤の量を相対的に少なくすることができることによって、硬化物の屈折率を優れたものにすることが可能な光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法およびその硬化物の製造方法を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、表面修飾されたジルコニア粒子と、分散助剤と、シリコーン樹脂と、を含有し、表面修飾された前記ジルコニア粒子が分散状態にある。特に、表面修飾された前記ジルコニア粒子の分散粒子径が1nm以上50nm以下となっており、かつ、分散助剤として、ケトン類およびアルコール類の少なくとも一方が含まれている。
【0019】
[表面修飾されたジルコニア粒子]
本発明で用いられるジルコニア粒子は、表面修飾剤で表面修飾されたものであって、表面修飾剤としては、シランカップリング剤が用いられる。表面修飾される前のジルコニア粒子の具体的な構成は特に限定されず、分散状態で分散粒子径が前記範囲内に入る一次粒子径を有するものであればよい。また、ジルコニア粒子は、その光学的な性質または分散性能を妨げない限り、ジルコニア(酸化ジルコニウム)以外の成分を含んでもよい。本発明では、表面修飾される前のジルコニア粒子としては、例えば、分散媒中にジルコニア粒子が分散したジルコニア分散体を好適に用いることができる。
【0020】
ジルコニア粒子を表面修飾するシランカップリング剤の具体的な種類は特に限定されず、シランカップリング剤として公知の化合物を好適に用いることができる。具体的には、例えば、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シラン化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物;ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のフェニル系シラン化合物;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル系シラン化合物;ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2−ウレイドエチルトリメトキシシラン、2−ウレイドエチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン化合物;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート系シラン化合物;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シラン化合物;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の硫黄含有官能基を有するシラン化合物;等が挙げられる。これら化合物は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アルコキシシラン化合物、フェニル系シラン化合物、(メタ)アクリル系シラン化合物等が好ましく用いられる。
【0021】
ジルコニア粒子をシランカップリング剤で表面修飾する方法は、公知の方法を適用することができる。具体的には、ジルコニア分散体にシランカップリング剤を添加して、所定温度、所定時間、および所定圧力の条件で攪拌を行う。このとき用いられるジルコニア分散体は、市販のものであってもよいし、ジルコニア粒子および公知の分散媒を用いてその都度調製してもよい。なお、本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物を製造する際には、表面修飾されたジルコニア粒子の分散体(表面修飾ジルコニア分散体)をそのまま用いることができる。
【0022】
本発明で用いられるジルコニア粒子は、シランカップリング剤により表面修飾されているが、このジルコニア粒子の表面修飾部分(シランカップリング剤)の質量は、表面修飾される前のジルコニア粒子の質量を100質量部としたときに、0.1質量部以上10質量部以下であればよく、0.1質量部以上5質量部未満であることが好ましい。つまり、表面修飾されたジルコニア粒子の表面には、表面修飾される前のジルコニア粒子の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲内の表面修飾部分が形成されていればよく、表面修飾部分が0.5質量%未満であることが好ましい。
【0023】
表面修飾されたジルコニア粒子の分散粒子径は、前記の通り、1nm〜50nmの範囲内であればよい。分散粒子径が1nm未満であれば、粒子径が小さすぎて屈折率の向上を図ることが困難となる。また、分散粒子径が50nmを超えると、粒子径が大きすぎて分散性が低下するとともに組成物または硬化物中の光学特性が低下する傾向にある。なお、本実施の形態では、表面修飾されたジルコニア粒子の分散粒子径は、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA-UZ152(製品名)を用いて測定している。
【0024】
[シリコーン樹脂]
本発明で用いられるシリコーン樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂であって、光半導体を封止する分野で公知の光学特性を有するものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0025】
代表的な熱硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、シラン、シリコーンオリゴマー、シリコーン樹脂、オルガノシロキサン、ジオルガノシロキサン、オルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサン等の骨格構造を有し、当該骨格構造が一つ以上の反応性官能基を有する構成を挙げることができる。前記骨格構造は直鎖構造であってもよいし分岐鎖を有してもよい。
【0026】
また、反応性官能基としては、前記骨格構造に含まれるケイ素原子に結合する、ヒドロキシ基、アルケニル基、ハイドロジェンシリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基、フェノール基等が挙げられるが特に限定されない。また、前記骨格構造には、前記反応性官能基以外に、アルキル基、アルケニル基、芳香族基等の官能基を有してもよい。
【0027】
本発明で用いられる熱硬化性シリコーン樹脂は、単一種の骨格構造および単一種の反応性官能基を有するものであってもよいし、複数種の骨格構造および複数種の反応性官能基を有するものであってもよい。また、反応性官能基は、前記の通り、一つの骨格構造に一つ以上含まれていればよいが、言い換えれば、1分子のシリコーン樹脂(任意の骨格構造を有する)が少なくとも一つの反応性官能基を有していればよい。なお、反応性官能基は、骨格構造の末端にあってもよいし、側鎖にあってもよいし、末端および側鎖のいずれにあってもよい。
【0028】
[分散助剤]
本発明で用いられる分散助剤は、ケトン類およびアルコール類の少なくともいずれかであればよい。本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物においては、表面修飾されたジルコニア粒子およびシリコーン樹脂に加え、分散助剤としてケトン類またはアルコール類を含有することにより、組成物中で表面修飾されたジルコニア粒子を良好に分散させることができる。
【0029】
また、分散助剤としてのケトン類は特に限定されないが、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン等を挙げることができる。これらケトン類は、分散助剤として1種類のみが用いられてもよいし2種類以上が適宜組み合わせて用いられてもよい。
【0030】
分散助剤としてのアルコール類は特に限定されないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。これらアルコール類は、分散助剤として1種類のみが用いられてもよいし2種類以上が適宜組み合わせて用いられてもよい。
【0031】
さらに、分散助剤としては、ケトン類およびアルコール類をそれぞれ少なくとも1種類ずつ併用してもよい。例えば、後述する実施例では、プロピレングリコールモノメチルエーテルとメチルイソブチルケトンとを併用している。また、ケトン類およびアルコール類を併用する場合の混合比も特に限定されず、表面修飾されたジルコニア粒子を組成物中で良好に分散できるように、適宜、混合比を設定することができる。
【0032】
なお、本発明においては、分散助剤として、ケトン類およびアルコール類以外の公知の他の溶剤を用いてもよいし、この他の溶剤をケトン類またはアルコール類とともに併用してもよい。
【0033】
ケトン類とアルコール類の好ましい組合せとしては、具体的には、メチルエチルケトンとメタノール、メチルエチルケトンとエタノール、メチルエチルケトンとプロパノール、メチルエチルケトンとブタノール、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコール、メチルエチルケトンとテトラヒドロフルフリルアルコール、メチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンとエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルエチルケトンとジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンとジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルケトンとメタノール、メチルイソブチルケトンとエタノール、メチルイソブチルケトンとプロパノール、メチルイソブチルケトンとブタノール、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトンとテトラヒドロフルフリルアルコール、メチルイソブチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケトンとエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルケトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルイソブチルケトンとジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケトンとジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケトンとプロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチルメチルケトンとメタノール、ブチルメチルケトンとエタノール、ブチルメチルケトンとプロパノール、ブチルメチルケトンとブタノール、ブチルメチルケトンとイソプロピルアルコール、ブチルメチルケトンとテトラヒドロフルフリルアルコール、ブチルメチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルメチルケトンとエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルメチルケトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルメチルケトンとジエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルメチルケトンとジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルメチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルメチルケトンとプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられるが特に限定されない。
【0034】
本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物においては、分散助剤として、ケトン類およびアルコール類の少なくともいずれかを用いることで、ジルコニア粒子の表面修飾部分を少なくすることができ(すなわち、表面処理剤の使用量を少なくすることができ)、かつ、ジルコニア粒子そのものの含有量を多くすることができる。それゆえ、得られる硬化物の屈折率等の光学特性をより優れたものとすることができる。
【0035】
[シリコーン樹脂組成物およびその硬化物]
本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、前述したように、表面修飾されたジルコニア粒子、シリコーン樹脂、および分散助剤を含んでいるが、これら各成分の含有量は特に限定されない。
【0036】
光半導体用シリコーン樹脂組成物全体を100質量部としたときに、表面修飾されたジルコニア粒子の配合量は、20質量部以上80質量部以下であればよく、50質量部以上75質量部以下であることが好ましい。表面修飾されたジルコニア粒子が20質量部未満であれば、組成物中のジルコニア粒子が少なすぎて良好な屈折率を実現することができないおそれがある。また、ジルコニア粒子が80質量部を超えていると、組成物中でジルコニア粒子が多すぎて良好に分散できない場合、あるいは、ジルコニア粒子の含有量が多いために硬化物にクラックが発生しやすくなる可能性があり、良好な硬化物が得られない場合がある。
【0037】
さらに、本発明では、表面修飾されたジルコニア粒子の含有量を、組成物を調製する際の固形成分の総量に基づいて特定してもよい。具体的には、表面修飾される前の前記ジルコニア粒子の質量、表面修飾に用いられたシランカップリング剤の質量、およびシリコーン樹脂の質量の総量を100質量部としたときに、組成物中の表面修飾された前記ジルコニア粒子の含有量は、表面修飾される前の前記ジルコニア粒子換算で50質量部以上75質量部以下であることが好ましい。
【0038】
つまり、本発明によれば、光半導体用シリコーン樹脂組成物の固形成分中の半分以上(50質量%以上)がジルコニア粒子となっている。これにより、光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物の透明性を維持しつつ、組成物中のジルコニア粒子を高濃度化することができるので、硬化物の屈折率を優れたものにすることが可能となる。なお、固形成分中のジルコニア粒子が80質量部(80質量%)を超えると、十分な量のシリコーン樹脂および表面修飾部分を確保できなくなるおそれがある。
【0039】
また、光半導体用シリコーン樹脂組成物の各成分のうち、シリコーン樹脂の配合量は、固形成分中の20質量部以上80質量部以下であればよく、25質量部以上50質量部以下であることが好ましい。シリコーン樹脂が20質量部未満であると、シリコーン樹脂の量が少なすぎて良好な硬化物を得ることができないおそれがある。一方、シリコーン樹脂が80質量部を超えると、固形成分中のジルコニア粒子の含有量が低くなるため屈折率も低くなり、得られる硬化物において十分な性能が発揮できない。
【0040】
また、分散助剤の配合量は、光半導体用シリコーン樹脂組成物の全成分のうち分散助剤を除いた成分100質量部に対して50質量部以上2000質量部以下であればよく、300質量部以上1000質量部以下であることが好ましい。分散助剤が50質量部未満であると、表面修飾されたジルコニア粒子が組成物中で十分に分散できず、組成物が白濁凝集してしまうおそれがある。一方、分散助剤が2000質量部を超えると、シリコーン樹脂およびジルコニア粒子に対して液体成分である分散助剤が多くなりすぎ、良好な硬化物が得られなくなるおそれがある。
【0041】
また、本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、光半導体を封止する用途に求められる機能または物性等を妨げない限り、公知の各種添加剤を含んでもよい。具体的な他の添加剤は特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、離型剤、変性剤、界面活性剤、変色防止剤、紫外線吸収剤、ジルコニア粒子以外の無機充填剤等を挙げることができる。なお、これら他の添加剤の含有量も特に限定されず、前述した表面修飾されたジルコニア粒子、シリコーン樹脂、および分散助剤のそれぞれの含有量の範囲を満たすように添加すればよい。
【0042】
本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、表面修飾されたジルコニア粒子、シリコーン樹脂、および分散助剤(必要に応じて他の添加剤)を適宜配合して混合することにより製造すればよい。配合または混合の手法も特に限定されず、公知の手法を好適に用いることができる。
【0043】
ここで、表面修飾されたジルコニア粒子は、前述したように、ジルコニア粒子そのものではなくジルコニア分散体であることが好ましい。そこで、ジルコニア分散体とシリコーン樹脂および分散助剤とを配合して混合した後に、公知の手法にてジルコニア分散体に含まれる分散媒を除去すればよい。分散媒を除去する手法は特に限定されず、公知の手法を好適に用いることができる。
【0044】
本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、硬化前の状態であっても良好な透明性を有している。具体的には、塗膜を形成したときに、目視により濁りがほとんど確認できないか、わずかに確認できる程度の透明性を有していればよい。後述する実施例では、ガラス基板上に20μmの塗膜の塗膜を形成したときに、12ポイントのアルファベット文字を判別できるか否かに基づいて透明性を評価しているが、本発明において硬化前の光半導体用シリコーン樹脂組成物の透明性の評価はこれに限定されない。
【0045】
本発明には、前記構成の光半導体用シリコーン樹脂組成物に加えて、当該組成物を硬化させて得られる光半導体用シリコーン樹脂硬化物も含まれる。硬化物の具体的な構成は特に限定されず、対象となる光半導体の種類または使用条件に応じてさまざまな構成を採用することができる。本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、ジルコニア粒子が分散した液状またはインク状(もしくはペースト状)であるので、光半導体の使用条件等に応じて必要な箇所に光半導体用シリコーン樹脂組成物を塗工して加熱硬化させることにより、さまざまな構成の硬化物を得ることができる。
【0046】
ここで、硬化物の光学特性については特に限定されないが、全光線透過率が70%以上であればよく80%以上であることが好ましい。また、硬化物の屈折率は、波長589nmにおいて1.43以上であればよく、1.53以上であることが好ましい。硬化物の光学特性が前記の下限値以上であれば、光半導体用途として特に好適に用いることができる。なお、得られる硬化物においては、全光線透過率も屈折率も高いほど好ましいので、上限値は特に限定されない。
【0047】
なお、硬化物の全光線透過率は、日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH4000(製品名)を用いて測定している。また、波長589nmにおける屈折率は、METORICON CORPORATION 製のモデル2010プリズムカプラを用いて測定している。また、後述する実施例では、硬化物の透明性について、硬化前の組成物と同様に、12ポイントのアルファベット文字を判別できるか否かに基づいて透明性を評価しているが、本発明においては、透過率の測定とともに、このような目視による透明性の評価を行ってもよい。
【0048】
このように、本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物は、分散状態にあるジルコニア粒子が、シランカップリング剤を加熱還流させることにより表面修飾されたものであり、かつ、分散粒子径が前記の範囲内にある。これにより、光半導体用シリコーン樹脂組成物中において、ジルコニア粒子の含有量を相対的に多くすることができる。また、表面修飾されたジルコニア粒子においては、表面修飾剤であるシランカップリング剤の量を相対的に少なくすることができる。これにより、光半導体用シリコーン樹脂組成物を硬化させた硬化物の屈折率を優れたものにすることができる。
【0049】
また、本発明には、ジルコニア粒子にシランカップリング剤を加熱還流させることで、表面修飾されたジルコニア粒子を取得し、この表面修飾されたジルコニア粒子が分散状となり、かつ、分散粒子径が1nm以上50nm以下となるように、表面修飾されたジルコニア粒子と、分散助剤と、シリコーン樹脂とを混合する、光半導体用シリコーン樹脂組成物の製造方法が含まれてもよい。
【実施例】
【0050】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における各種合成反応や物性等の測定・評価は次に示すようにして行った。
【0051】
(塗膜および硬化物膜の外観)
光半導体用シリコーン樹脂組成物の塗膜、並びに、当該塗膜を硬化させた硬化物膜の外観を、目視により観察し、以下の基準で透明性を評価した。
◎:12ポイントのアルファベット文字を鮮明に判別することができる。
○:硬化膜にごくわずかの濁りを生じているが、12ポイントのアルファベット文字を判別することができる。
×:硬化膜に濁りがあり、12ポイントのアルファベット文字を判別することができない。
【0052】
(硬化物膜の屈折率)
METORICON CORPORATION製のモデル2010プリズムカプラを用いて、硬化物膜の波長589nmにおける屈折率を測定した。
【0053】
(硬化物膜の全光線透過率)
日本電色工業株式会社製のHaze Meter NDH4000(製品名)を用いて、硬化物膜の全光線透過率を測定した。
【0054】
(実施例1)
市販のジルコニア分散体(堺化学工業株式会社製、製品名SZR−M、一次粒子径3nm、30重量%のジルコニアを含有するメタノール分散体)100質量部に、アルコキシシラン化合物であるデシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名KBM−3103)0.3質量部を添加して、60℃で5時間加熱撹拌しながら加熱還流した。これにより、表面修飾されたジルコニア粒子の分散体(表面修飾ジルコニア分散体)を得た。
【0055】
この表面修飾ジルコニア分散体にシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製、製品名LPS3410)を10質量部、分散助剤として、メチルイソブチルケトン108質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル12質量部を添加し、ロータリーエバボレーターを用いてメタノールを減圧除去した。これにより、実施例1に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物を得た。
【0056】
さらに、この組成物をガラス基板上に20μmの膜厚となるように塗布して塗膜を形成した。この塗膜(すなわち光半導体用シリコーン樹脂組成物)についてその外観を前記の通り評価した。その結果を表1に示す。
この塗膜を、100℃で2時間加熱した後に150℃で2時間加熱した。これにより、実施例1に係る光半導体用シリコーン樹脂硬化物の膜(硬化物膜)を得た。得られた硬化物膜について、その外観、屈折率および全光線透過率を前記の通り評価または測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
シリコーン樹脂(製品名LPS3410)の添加量を30質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
デシルトリメトキシシラン(製品名KBM−3103)の添加量を0.03質量部とした以外は、前記実施例1と同様にして、実施例3に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
デシルトリメトキシシラン(製品名KBM−3103)の添加量を3質量部とした以外は、前記実施例1と同様にして、実施例4に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
シランカップリング剤として、デシルトリメトキシシランに代えて、フェニル系シラン化合物であるジフェニルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM−202SS)を同量(0.3質量部)添加した以外は、前記実施例1と同様にして、実施例5に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例6)
シランカップリング剤として、デシルトリメトキシシランに代えて、(メタ)アクリル系シラン化合物である3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名KBM−5103)を同量(0.3質量部)添加した以外は、前記実施例1と同様にして、実施例6に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
(実施例7)
シランカップリング剤として、デシルトリメトキシシランに代えて、(メタ)アクリル系シラン化合物である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名KBM−503)を同量(0.3質量部)添加した以外は、前記実施例1と同様にして、実施例7に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
(実施例8)
シリコーン樹脂として、信越化学工業株式会社製の製品名LPS3410に代えて、信越化学工業株式会社製の製品名KER−6020Fを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、実施例8に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
(実施例9)
分散助剤をメチルイソブチルケトンのみ120質量部とした以外は、前記実施例1と同様にして、実施例9に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0065】
(実施例10)
分散助剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルのみ120質量部とした以外は、前記実施例1と同様にして、実施例10に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
(実施例11)
分散助剤をメチルイソブチルケトン360質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部とした以外は、前記実施例1と同様にして、実施例11に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物膜を得た。これら組成物および硬化物膜について、前記の通り外観を評価するとともに、硬化物膜について屈折率および全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
前記実施例1と同様にして得られた表面修飾ジルコニア分散体に対して、分散助剤を添加せずにシリコーン樹脂(製品名LPS3410)のみを添加して、前記実施例1と同様にしてロータリーエバボレーターを用いてメタノールを減圧除去し、シリコーン樹脂組成物の製造を試みた。しかしながら、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0068】
(比較例2)
シランカップリング剤を添加せずに表面処理を行わなかったジルコニア粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてロータリーエバポレーターを用いてメタノールを減圧除去し、シリコーン樹脂組成物の製造を試みた。しかしながら、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0069】
(比較例3)
シランカップリング剤を添加したものの加熱還流を行わなかったジルコニア粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてロータリーエバポレーターを用いてメタノールを減圧除去し、シリコーン樹脂組成物の製造を試みた。しかしながら、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0070】
(比較例4)
分散助剤として、エステル類であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、これを120質量部とした以外は、前記実施例1と同様にしてロータリーエバポレーターを用いてメタノールを減圧除去し、シリコーン樹脂組成物の製造を試みた。しかしながら、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0071】
(比較例5)
分散助剤をメチルイソブチルケトン27質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル3質量部とした以外は、前記実施例1と同様にしてロータリーエバポレーターを用いてメタノールを減圧除去し、シリコーン樹脂組成物の製造を試みた。しかしながら、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
このように、本発明に係る光半導体用シリコーン樹脂組成物およびその硬化物(実施例1〜8)はいずれも、良好な光学特性を有していたが、分散助剤を添加しなかったり(比較例1)、ジルコニア粒子を表面処理しなかったり(比較例2)、ジルコニア粒子の表面にシランカップリング剤の化学結合が形成されていなかったり(比較例3)、分散助剤としてケトン類およびアルコール類の少なくとも一方が用いられていなかったり(比較例4)、あるいは、分散助剤の量が少なかったり(比較例5)した場合には、白濁凝集した組成物しか得られなかった。
【0074】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。