(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467501
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
F04B9/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-512364(P2017-512364)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公表番号】特表2017-527734(P2017-527734A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2015066068
(87)【国際公開番号】WO2016041655
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】102014218489.4
(32)【優先日】2014年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】グラスペウントナー,クリスチャン
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−159191(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/079831(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/156195(WO,A1)
【文献】
特開2009−121338(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0068064(US,A1)
【文献】
特開平06−159193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラタペット(2)と、このローラタペット(2)と作動結合したポンプピストン(10)とを包含し、ここで、ローラタペット(2)が、ローラサポート(3)とローラ(4)とピン(5)を具備し、ここで、ローラサポート(3)の中に第1のベアリングアイ(6)と第2のベアリングアイ(7)が形作られており、ここで、ピン(5)が第1のベアリングアイ(6)と第2のベアリングアイ(7)において軸受けされており、ローラ(4)が回転自在にピン(5)の上に配置されているピストンポンプ(1)であって、
前記ピン(5)が前記第1のベアリングアイ(6)において、前記第2のベアリングアイ(7)におけるより高い弾性をもって軸受けされていて、
前記第1のベアリングアイ(6)の中に凹部(8)が形作られ、
前記凹部(8)が貫通スリットであり、これで、前記第1のベアリングアイ(6)が、片側で互いに分かれた2つのベアリング脚を包含し、
前記ピン(5)が前記第1のベアリングアイ(6)の中に挟み込まれ、前記第2のベアリングアイ(7)の中に圧し込まれていて、
前記凹部(8)が、前記ピストンポンプ(1)の運転時に、前記第1のベアリングアイ(6)の中における、前記ピン(5)と前記ローラサポート(3)との間の相対摺動を可能にしていることを特徴とするピストンポンプ(1)。
【請求項2】
前記ローラサポート(3)がタペットハウジング(15)の中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項3】
前記第1のベアリングアイ(6)が第1の幅(b6)を有し、前記第2のベアリングアイ(7)が第2の幅(b7)を有し、ここで、前記第1の幅(b6)が前記第2の幅(b7)より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項4】
前記第1のベアリングアイ(6)が弾力的に拡幅可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項5】
前記第2のベアリングアイ(7)の中に更なる凹部が形作られていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項6】
前記更なる凹部が前記第2のベアリングアイ(7)の壁厚を減じた形であることを特徴とする請求項5に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項7】
前記ピン(5)が前記第1のベアリングアイ(6)と前記第2のベアリングアイ(7)の中に挟み込まれていることを特徴とする請求項5又は6に記載のピストンポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のピストンポンプ(1)を備えた燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラタペットを備えたピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピストンポンプが、特許文献1から知られている。この公知のピストンポンプは、ローラタペットと、このローラタペットと作動結合したポンプピストンとを包含し、ここで、ローラタペットが、ローラサポートとローラとピンを具備する。ローラサポートの中に第1のベアリングアイと第2のベアリングアイが形作られており、ここで、ピンが第1のベアリングアイと第2のベアリングアイにおいて軸受けされており、ローラが回転自在にピン上に配置されている。
【0003】
この公知のピストンポンプのローラタペットは、温度負荷の下で熱応力にさらされており、これがピストンポンプの寿命の短縮、動作円滑性の低減および効率の低下につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国公開第102011076022A1号公報
【発明の概要】
【0005】
これと比べて、本発明によるピストンポンプは、温度負荷に抗して堅牢なローラタペットを具備する。従って、このピストンポンプの寿命と効率は温度負荷によって縮減されず、ピストンポンプのより高い動作円滑性が得られる。
【0006】
加えて、ピストンポンプは、ローラタペットと、このローラタペットと作動結合したポンプピストンとを具備する。ローラタペットは、ローラサポートとローラとピンを包含する。ローラサポートの中に第1のベアリングアイと第2のベアリングアイが形作られており、ここで、ピンが第1のベアリングアイと第2のベアリングアイにおいて軸受けされている。ローラは回転自在にピン上に配置されている。本発明によれば、ピンは、第1のベアリングアイにおいて、第2のベアリングアイにおけるより高い弾性をもって軸受けされている。
【発明の効果】
【0007】
第1のベアリングアイにおける弾性が比較的高く、第1のベアリングアイとピンの間の継手の剛性が比較的低いことから、ピンとローラサポートは異なる縦伸びを呈し、そこで過大な応力を部材に引き込むことがない。部材が特に温度負荷の下でこうむる応力は、これで大きく減じられるので、その分、ピストンポンプ全体の寿命は延びることになる。更に、これにより、ピストンポンプの動作円滑性と効率は高まることになる。
【0008】
更に進んだ有利な一形態では、ローラサポートがタペットハウジングの中に配置されている。これにより、ローラの回転運動がポンプピストンの並進運動に転換される時に生じる公差を相殺することができる。ローラタペットは、これで、タペットハウジングの中で自ら直立でき、これにより、軸受条件下で生じる応力が阻止されることになる。
【0009】
本発明の有利な一形態では、第1のベアリングアイが第1の幅を有し、第2のベアリングアイが第2の幅を有し、ここで、第1の幅が第2の幅より小さい。これにより、低コストの作りにおいて、第1のベアリングアイとピンの間の継手は、第2のベアリングアイとピンの間の継手より低い剛性で作られている。更に、これにより、第1のベアリングアイ自体も、第2のベアリングアイより低い剛性で作られている。これで、ピンとローラサポートが異なる縦伸びを呈した時、これを第2のベアリングアイとピンの間の継手における弾性で相殺することができる。
【0010】
更に進んだ有利な一形態では、第1のベアリングアイの中に凹部が形作られている。この凹部により、第1のベアリングアイの剛性は減じられ、従ってまた、第1のベアリングアイとピンの間の継手の剛性も減じられる。これにより、ピンとローラサポートの異なる長さ変化が相殺できる。凹部は、補助的に更なる機能の一体化、例えば第1のベアリングアイへの潤滑剤注入にも役立つ。
【0011】
有利な一形態では、凹部が第1のベアリングアイの壁厚を減じた形である。これにより、第1のベアリングアイの剛性は極めて単純な仕方で減じられる。特に、ローラサポートが鋳造法で作られている場合、これは極めて低コストの解決策である。
【0012】
有利なことに、第1のベアリングアイは弾力的に拡幅可能である。これにより、ピンに接触圧が加わった途端、凹部を通して第1のベアリングアイの直径が比較的大きく増すことになる。
【0013】
有利な一形態では、凹部が貫通スリットであり、これで、第1のベアリングアイは、片側で互いに分かれた2つのベアリング脚を包含する。貫通スリットを持つことから、第1のベアリングアイはもはやその周囲全体にわたって閉じられてはいない。その結果、第1のベアリングアイの剛性は極めて大きく減じられる。これにより、極めて大きい温度勾配のある時でも、ローラサポートとピンの異なる縦伸びを相殺することができる。
【0014】
本発明の有利な形態では、ピンが第1のベアリングアイの中に挟み込まれ、第2のベアリングアイの中に圧し込まれている。これは、第1のベアリングアイとピンの間の面圧力が、第2のベアリングアイとピンの間の面圧力より明らかに小さいことを意味する。従って、ピストンポンプ運転時、第1のベアリングアイの中でピンはローラサポートとの間で相対摺動を実行できる。
【0015】
更に進んだ有利な一形態では、第2のベアリングアイの中に更なる凹部が形作られている。これにより、第2のベアリングアイも比較的柔軟に作られており、第1のベアリングアイにおいても第2のベアリングアイにおいても、ローラサポートとピンの異なる縦伸びを相殺することができる。
【0016】
有利なことに、更なる凹部は、第2のベアリングアイの壁厚を減じた形である。これにより、第2のベアリングアイの剛性は極めて単純な仕方で減じられる。特に、ローラサポートが鋳造法で作られている場合、これは低コストの解決策である。
【0017】
更に進んだ有利な一形態では、ピンが第1のベアリングアイと第2のベアリングアイの中に挟み込まれている。これにより、第1のベアリングアイにおいても第2のベアリングアイにおいても、もはやピンには比較的僅かな接触力しか加わらない。ピンは、第1のベアリングアイの中でも第2のベアリングアイの中でも、ローラサポートとの間で相対摺動を実行し、これに呼応してローラサポートとピンの異なる熱膨張を相殺することができる。
【0018】
有利な形態において、本発明によるピストンポンプは燃料噴射システムのコンポーネントである。特に燃料噴射システムの高圧ポンプでは、その内部を高い圧力と高い温度が支配する。高圧ポンプとして配備されたピストンポンプのローラタペットは、従って強大な応力にさらされている。そこで、ローラタペットにおいて熱で誘発された応力を減少させ、回避することは、ピストンポンプの寿命を延ばすだけでなく、燃料噴射システム全体の寿命も延ばすことになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ローラタペットを備えたピストンポンプを示す。
【
図3】更なる実施形態におけるローラタペットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ポンプハウジング20を備えたピストンポンプ1を示す。ポンプハウジング20の中にカムシャフト21とローラタペット2とポンプピストン10が配置されている。ローラタペット2は、タペットボディ15とローラサポート3とローラ4とピン5を包含する。
【0021】
ローラサポート3は、タペットボディ15の中に配置されている。代替の実施形態では、タペットボディ15とローラサポート3がワンピースで形作られていてもよい。ピン5は、ローラサポート3において軸受けされている。加えて、ローラサポート3において、第1の幅b6を有する第1のベアリングアイ6と第2の幅b7を有する第2のベアリングアイ7が形作られており、その中にそれぞれピン5は軸受けされ、圧し込まれている。ローラ4は回転自在にピン5で軸受けされている。
【0022】
カムシャフト21に形作られたカム22がローラ4と協働し、これで、ローラ4は、カムシャフト21の回転時にカム22の上を転がる。ローラサポート3は、カム22と向き合った側でポンプピストン10と作動結合している。スプリング25が、ワッシャ26を間に敷いた上でポンプピストン10にプリテンションをかけ、これをローラサポート3に圧し付ける。
【0023】
図2は、
図1からのローラタペット2を側面図で示す。この側面図は、ローラサポート3とローラ4とピン5と第1のベアリングアイ6を示す。第1のベアリングアイ6の中に凹部8が形作られている。凹部8は、第1のベアリングアイ6の壁厚全体にわたって貫通スリットの形で走り、これで、第1のベアリングアイ6は、第1のベアリング脚6aと第2のベアリング脚6bとに分割されており、ここで、第1のベアリング脚6aは、片側で第2のベアリング脚6bから分けられている。これで、中にピン5が挟み込まれた、ないしは圧し込まれた第1のベアリングアイ6の内面6cが、凹部8に基づいて比較的大きい弾性をもって形作られている。
【0024】
図3は、更なる実施形態におけるローラタペット2を示す。
図2の実施形態と異なり、第1のベアリングアイ6における凹部8は、第1のベアリングアイ8の壁厚全体にわたって貫通する形でなく、かかる領域において第1のベアリングアイ6の壁厚を局部的にのみ減じる形に作られている。これにより、この実施例においても、内面6cは弾力的に拡幅可能な形をなしている。すなわち、凹部8の領域において第1のベアリングアイ6は比較的柔軟な形をなしている。
【0025】
ピストンポンプ1の機能の仕方は下記の通りである。
【0026】
カムシャフト21は、図示されていない駆動ユニット、例えば内燃機関と結合したコッグドベルトにより駆動される。これにより、カム22は回転運動を行い、カム軌道を描く。ローラ4を介してカム22と作動結合したローラタペット2は、カム軌道に基づいてポンプハウジング20の中で並進上下運動を行い、その時の運動の方向はカムシャフト21の軸に対して垂直をなす。ローラタペット2と共にポンプピストン10も上下運動を行い、これにより、ローラタペット2と向き合った側でフルードが図示されていない圧縮室において圧縮される。こうして、例えば、燃料噴射システムの燃料を高圧下でピストンポンプ1の中に入れることができる。
【0027】
ピストンポンプ1は、運転時に温度変化にさらされており、これが結果的にコンポーネントの長さ変化をもたらす。本発明によれば、今や、ピン5と第1のベアリングアイ6の間の継手は、ピン5と第2のベアリングアイ7の間の継手より弾力的ないしは柔軟に形作られている。これにより、ピン5は、熱負荷の下で自らの軸方向において第1のベアリングアイ6に対して相対運動を行うことができる。これで、ピン5とローラサポート3における熱応力が減じられ、あるいは回避されもする。
【0028】
両方のベアリングアイ6、7において剛性の異なる継手は、例えば下記の通り形作ることができる。
−ピン5と両方のベアリングアイ6、7の間の両方のプレスばめのオーバサイズが第1のベアリングアイ6において第2のベアリングアイ7におけるより小さくなるようにする。
−例えば第1の幅b6を第2の幅b7より小さくすることで、ピン5と第1のベアリングアイ6の間のプレスばめの摩擦力がピン5と第2のベアリングアイ7の間のプレスばめの摩擦力より小さくなるようにする。
−例えば凹部8を設けることにより、第1のベアリングアイ6が第2のベアリングアイ7より柔軟になるようにする。
【符号の説明】
【0029】
1 ピストンポンプ
2 ローラタペット
3 ローラサポート
4 ローラ
5 ピン
6 第1のベアリングアイ
6a 第1のベアリング脚
6b 第2のベアリング脚
7 第2のベアリングアイ
8 凹部
10 ポンプピストン
15 タペットボディないしはタペットハウジング
20 ポンプハウジング
21 カムシャフト
22 カム
b6 第1のベアリングアイの第1の幅
b7 第2のベアリングアイの第2の幅