特許第6467517号(P6467517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467517
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/044 20060101AFI20190204BHJP
   F15B 11/20 20060101ALI20190204BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20190204BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   F15B11/044
   F15B11/20 D
   F15B11/02 C
   E02F9/22 E
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-543403(P2017-543403)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057680
(87)【国際公開番号】WO2017154186
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2017年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−029180(JP,A)
【文献】 特開2010−014244(JP,A)
【文献】 特開2014−098404(JP,A)
【文献】 特開2012−237423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
E02F 3/42−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の作動油を汲み上げて吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出される作動油により駆動される油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータから排出される作動油が流れるメータアウト流路と、
前記メータアウト流路に設けられ、開口面積を変更することで前記メータアウト流路の作動油流量を制御するメータアウト制御弁と、
前記油圧アクチュエータに作用する負荷を検出する負荷検出器と、
前記油圧アクチュエータを操作する操作装置と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器とを備える建設機械において、
前記負荷と前記操作量を基に前記メータアウト制御弁の開口面積を制御する通常動作モードと、前記操作量を基に前記メータアウト制御弁の開口面積を制御する代替動作モードとを択一的に選択するように構成された制御装置を備え、
前記制御装置は、前記代替動作モードの選択時には、前記通常動作モードの選択時よりも前記油圧ポンプの吐出流量を増加させるように構成されており、
前記タンク内の作動油温を検出する温度検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記作動油温が閾値を下回る場合に前記代替動作モードを選択し、前記作動油温が前記閾値以上の値に達した場合に前記通常動作モードを選択するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1の建設機械において、
前記制御装置は、前記代替動作モードの選択時に、前記負荷が小さいほど前記油圧ポンプの吐出流量を増加し、前記操作量が大きいほど前記油圧ポンプの吐出流量が増加するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1の建設機械において、
前記制御装置から入力される制御信号を基に駆動され、前記メータアウト制御弁の開口面積を制御するメータアウト制御弁制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記メータアウト制御弁制御装置の異常を検知した場合には、前記代替動作モードを選択するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1の建設機械において、
前記制御装置は、前記負荷検出器の異常を検知した場合には、前記代替動作モードを選択するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項の建設機械において、
前記制御装置は、前記代替動作モードが一旦選択された以後に前記異常が回復したとき、かつ、前記代替動作モードから前記通常動作モードへの変更を許可する許可信号が入力されたとき、前記代替動作モードに代えて前記通常動作モードを選択するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧アクチュエータを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械は、一般に、原動機で駆動される油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに対する作動油の給排を制御する流量制御弁とを備える。各流量制御弁はメータイン絞りとメータアウト絞りを有し、メータイン絞りでポンプから油圧アクチュエータに流入する作動油の流量を制御し、メータアウト絞りで油圧アクチュエータから作動油タンクに排出される作動油の流量を制御している。油圧ショベルにおける油圧アクチュエータとしては、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダなどがある。
【0003】
このような油圧アクチュエータを備える建設機械では、油圧アクチュエータの支持対象物(例えば、アームシリンダであればアームおよびバケット(アタッチメント)を含む)の自重が、当該油圧アクチュエータの動作方向と同一方向の負荷(以下、「負の負荷」と称することがある)として作用することがある。この場合、当該油圧アクチュエータの動作速度が増加するとともに、メータイン側の作動油の流量が不足して、息継ぎ現象(キャビテーション)が発生するおそれがある。息継ぎ現象は建設機械の操作性の悪化と油圧機器の損傷の原因になるおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するため、油圧アクチュエータから作動油タンクに至るメータアウト通路にメータアウト制御弁を設け、そのメータアウト制御弁の開口面積をシリンダ圧に応じて調整することで、シリンダ速度を抑制するとともに息継ぎを防止する構成が知られている(例えば、特開2010−14244号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−14244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冬季や寒冷地で外気温が低く十分暖機が出来ていない状態では、作動油の粘度が大きくなり、バルブ切り替えに用いるパイロット圧の立ち上げやその伝達に時間がかかる。これにより、メータアウト制御弁の開口面積をパイロット圧で制御する場合、作動油温低温時ではメータアウト制御弁の制御性が著しく悪化するため、メータアウト制御弁の開口面積制御を控えた方が好ましい。
【0007】
メータアウト制御弁の開口面積制御をしない場合には、メータアウト制御弁はノーマル位置(非制御状態でスプール/ポペット弁を押すバネ力によって決まる位置)に固定される。この時、上記文献のように、メータアウト制御弁がノーマルオープン特性(ノーマル位置で最大開口を取る特性)の構造を有する場合は、メータアウト側の作動油の絞りが広くなる。したがって、油圧シリンダを自重落下方向に動作させた場合に、十分なメータアウト圧を立てられなくなり、シリンダ速度が上昇し、息継ぎ現象が生じる恐れがある。
【0008】
本発明は上述の事柄に基づいて発明されたもので、その目的は、低作動油温を理由にメータアウト制御弁の開口面積制御を控えた場合においても、油圧アクチュエータの息継ぎ現象を防止できる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、タンク内の作動油を汲み上げて吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される作動油により駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータから排出される作動油が流れるメータアウト流路と、前記メータアウト流路に設けられ、開口面積を変更することで前記メータアウト流路の作動油流量を制御するメータアウト制御弁と、前記油圧アクチュエータに作用する負荷を検出する負荷検出器と、前記油圧アクチュエータを操作する操作装置と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器とを備える建設機械において、前記負荷と前記操作量を基に前記メータアウト制御弁の開口面積を制御する通常動作モードと、前記操作量を基に前記メータアウト制御弁の開口面積を制御する代替動作モードとを択一的に選択するように構成された制御装置を備え、前記制御装置は、前記代替動作モードの選択時には、前記通常動作モードの選択時よりも前記油圧ポンプの吐出流量を増加させるように構成されており、前記タンク内の作動油温を検出する温度検出器をさらに備え、前記制御装置は、前記作動油温が閾値を下回る場合に前記代替動作モードを選択し、前記作動油温が前記閾値以上の値に達した場合に前記通常動作モードを選択するように構成されているものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メータアウト制御弁の開口面積制御を行わない場合においても、ポンプ流量を通常時より増加させることで、油圧アクチュエータの息継ぎ現象を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る建設機械の全体図。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る油圧回路と機器の構成を示す概念図。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る動作モード切替制御のフローチャート。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ポンプとメータアウト開口制限演算の制御ブロック線図。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る電磁比例弁電流指示値演算の制御ブロック線図。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るメータアウト開口制限値演算テーブル。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るポンプ流量補正値の決定方法。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る油圧回路と機器の構成を示す概念図。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る動作モード切替制御のフローチャート。
図10】本発明の第3の実施の形態に係る動作モード切替制御のフローチャート。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る油圧ポンプとメータアウト開口制限演算の制御ブロック線図。
図12】本発明に係るコントローラのハードウェア構成図。
図13】本発明の第2の実施の形態に係る油圧回路と機器の構成を示す概念図。
図14】本発明の第4の実施の形態に係る動作モード切替制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
<第1実施形態>
本実施の形態では、作動油温が低温でメータアウト開口面積をアクチュエータ負荷に応じて調整する機構の応答性が悪化する場合の息継ぎ現象防止策を説明する。
【0014】
図1において、油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及び旋回体20に装設したフロント作業装置30を備えている。
【0015】
走行体10は、一対のクローラ11a、11b及びクローラフレーム12a、12b(図1では片側のみを示す)、各クローラ11a、11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13a、13b及びその減速機構等で構成されている。
【0016】
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジン22により回転駆動され、作動油タンク40(図2参照)内の作動油を汲み上げて吐出する油圧ポンプ23と、油圧ポンプ23から吐出される作動油により駆動される油圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ32,34,36)と、油圧ポンプ23から吐出される作動油を各油圧アクチュエータへ配分する、複数の流量制御弁(例えば図2の流量制御弁41)を備えたコントロールバルブユニット24を備えている。また、旋回体20には旋回油圧モータ25およびその減速機構が備えられており、旋回油圧モータ25は下部走行体10に対して上部旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
【0017】
さらに、旋回体20にはフロント作業装置30が搭載されている。フロント作業装置30は、基端部で回転自在に旋回体20に軸支されたブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
【0018】
図2は本発明の建設機械の油圧制御装置に係る第1の実施形態において、アームシリンダ34に関する油圧回路と機器の構成を示す概念図である。以下では油圧アクチュエータとしてアームシリンダ34を例にとって説明するが、油圧アクチュエータの駆動対象の自重による動作方向と当該油圧アクチュエータによる当該駆動対象物の動作方向が一致し得る油圧アクチュエータであれば、バケットシリンダ36をはじめとしたその他の油圧アクチュエータにも本実施形態は適用可能である。
【0019】
図2において、本発明に係る油圧制御装置は、エンジン22と、エンジン22により回転駆動される油圧ポンプ23と、油圧ポンプ23への作動油供給源である作動油タンク40と、油圧ポンプ23の吐出ラインL1に接続され、アームシリンダ34に供給される作動油の流量および方向を制御するアーム用の操作装置であるパイロット弁42を備えている。
【0020】
エンジン22の回転数はピックアップセンサSE1で検出されコントローラ44に入力される。
【0021】
油圧ポンプ23は、可変容量型であり、コントローラ44からの指令を基に油圧ポンプ23の押しのけ容積(吐出流量)を変化させるレギュレータ(ポンプ吐出流量制御装置)23aを備えている。また、油圧ポンプ23の吐出圧はポンプ吐出圧センサSE2によって検知されコントローラ44に入力される。
【0022】
制御弁41はセンタバイパス型であり、センタバイパス部41aは中立位置AでセンタバイパスラインL2に接続される。センタバイパスラインL2の下流側は作動油タンク40に接続されている。また、制御弁41はポンプポート41b、タンクポート41cおよびアクチュエータポート41d、41eを有する。ポンプポート41bは吐出ラインL1に接続される。タンクポート41cはタンク40に接続される。アクチュエータポート41d、41eはアクチュエータラインL3又はL4を介してアームシリンダ34のボトム側油室又はロッド側油室に接続される。
【0023】
パイロット弁42は、操作レバー42aと、一対の減圧弁(図示せず)を内蔵したパイロット圧発生部42bとを有し、パイロット圧発生部42bはパイロットラインL5、L6を介して制御弁41のパイロット圧受圧部41f、41gに接続する。操作レバー42aが操作されると操作パイロット圧発生部42bはその操作方向に応じて一対の減圧弁の一方を作動させ、その操作量に応じたパイロット圧をパイロットラインL5、L6の一方に出力する。L5、L6に発生する操作パイロット圧はパイロット圧センサSE3、SE4により検知されコントローラ44に出力される。
【0024】
制御弁41は、その切換位置として、中立位置A、切り換え位置B及び切り換え位置Cを有する。パイロットラインL5により受圧部41fにパイロット圧が与えられると、図示左側の切り換え位置Bに切り換えられる。この時、アクチュエータラインL3がメータイン側、L4がメータアウト側となり、アームシリンダ34のボトム側油室に作動油が供給されて、アームシリンダ34のピストンロッドが伸長する。一方パイロットラインL6により受圧部41gにパイロット圧が与えられると、図示右側のC位置に切り換えられる。この時、アクチュエータラインL4がメータイン側、L3がメータアウト側となり、アームシリンダ34のロッド側油室に作動油が供給されてアームシリンダ34のピストンロッドが収縮する。アームシリンダ34のピストンロッドの伸長はアームを引き込む動作、すなわちクラウド動作に対応し、アームシリンダ34のピストンロッドの収縮はアームを押し出す作業、すなわちダンプ動作に対応する。
【0025】
ボトム側油室の圧力(以下ボトム圧)は圧力センサSE5、ロッド側油室の圧力(以下ロッド圧)は圧力センサSE6でそれぞれ検出可能であり、圧力センサSE5,SE6の検出圧力はコントローラ44に入力される。本実施の形態では、圧力センサSE5を、アームシリンダ34に作用する負荷を検出する負荷検出器として利用している。
【0026】
また、制御弁41はメータイン絞り41h、41iおよびメータアウト絞り41j、41kを有している。これら絞り41h,41i,41j,41kは制御弁41の切り換え位置に応じて開口面積が変化する可変絞りとして機能する。メータアウト絞り41j,41kは、メータアウト流路(アクチュエータラインL4又はL3)の作動油流量を制御するメータアウト制御弁として制御弁41を機能させる。制御弁41が切り換え位置Bにあるときにはメータイン絞り41hによりアームシリンダ34に供給される作動油を制御し、メータアウト絞り41jによりアームシリンダ34からの戻り流量を制御する。一方、制御弁が切り換え位置Cにあるときには、メータイン絞り41iによりアームシリンダ34に供給される作動油を制御し、メータアウト絞り41kによりアームシリンダ34からの戻り流量を制御する。
【0027】
また、本実施の形態に係る建設機械の油圧制御装置は、パイロットラインL5上に設置された電磁比例弁43を備えている。電磁比例弁43は、コントローラ44から入力される電磁弁電流(制御信号)を基に駆動され、制御弁41のメータアウト絞り41jの開口面積を制御する制御装置(メータアウト制御弁制御装置)として機能している。電磁比例弁43に入力される電磁弁電流値はゼロ以上である電磁比例弁最小電流IMIN(例えば100mA)と電磁比例弁最大電流IMAX(例えば600mA)の間の値を取り、電磁弁電流値がIMINの時は電磁弁スプール43aは切り換え位置Dにあり、油路43bの開口は最大とする。この時、操作パイロット圧発生部42bで発生したパイロット圧を直接受圧部41fに導く。電磁弁電流値がIMAXの時には電磁弁スプールaは切り換え位置Fにあり、油路43bを遮断することでパイロットラインL5に生じるパイロット圧が受圧部41fに導かれるのを防ぐとともに、油路43cの開口は最大とし、受圧部41fの作動油をドレン回路L7へ排出する。電磁弁電流値がIMINとIMAXの間の制御領域を取る場合、電磁比例弁43は切り換え位置Dと切り換え位置Eの間でスプール43aを制御することで、操作パイロット圧発生部42bから受圧部41fへの油路43bを絞るとともに、受圧部41fの作動油を油路43cを通して一部ドレン回路L7へ排出する。こうすることで、操作パイロット圧発生部42bで発生したパイロット圧以下の任意の圧力をパイロット圧として受圧部41fに導くことができる。
【0028】
作動油タンク40には作動油温センサ(温度検出器)SE7が備えられており、作動油タンク40内の作動油温を検出してコントローラ44に出力している。
【0029】
また、本実施の形態に係る建設機械の油圧制御装置は、コントローラ44を備えている。コントローラ44は、コンピュータで構成されており、各センサSE1−SE7の値を取得するとともに、ポンプレギュレータ23aおよび電磁比例弁43の制御を行う。
【0030】
図12に、コントローラ44のハードウェア構成を示す。コントローラ44は、入力部91と、プロセッサである中央処理装置(CPU)92と、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と、出力部95とを有している。入力部91は、各センサSE1〜SE7からの信号を入力し、A/D変換を行う。ROM93は、後述する図3等のフローチャートを実行するための制御プログラムと、当該フローチャートに実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり、CPU92は、ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力部91及びメモリ93,94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力部95は、CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し、その信号を電磁比例弁43やポンプレギュレータ23aに出力することで、制御弁41のメータアウト絞り41jの開口面積を制御や、油圧ポンプ23の吐出流量を制御が可能なように構成されている。なお、図12のコントローラ44は、記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが、記憶装置であれば特に代替可能であり、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
【0031】
図3に第1の実施形態における動作モード切替制御のフローチャートを示す。フローチャートの開始時は、キースイッチはOFF位置にあり、車体の動作モードとして通常動作モードが選択されているものとする。
【0032】
ステップS1では、オペレータによりキースイッチがON位置(キーON)に切り換えられたかどうかを判定し、キーONと判定されたらコントローラ44を起動させてステップS2に進む。ステップS2ではキースイッチがON位置からスタート位置に切り換えられたかどうかを判定し、スタート位置と判定されたらエンジン22を始動してステップS20に進む。次にステップS20で、コントローラ44は作動油温センサSE7で検出した作動油温T0を取得し、ステップS21へ進む。
【0033】
ステップS21では、コントローラ44は、作動油温T0とメータアウト開口制限無効温度閾値T1とメータアウト開口制限有効温度閾値T2とを比較する。メータアウト開口制限無効温度閾値T1、メータアウト開口制限有効温度閾値T2にはT1<T2という関係が成立する。例えば、作動油の粘度が高く、メータアウト開口制限制御が困難になる温度範囲の最高値をメータアウト開口制限無効温度閾値T1として設定することができ、当該温度範囲より高い値をメータアウト開口制限無効温度閾値T2として設定することができる。またT1とT2の差は作動油温の短期間変化量に対して十分大きな値となるようにする(例えばT1=0℃、T2=5℃)。
【0034】
ステップS21でT0<T1の場合はステップS22に進み、T1≦T0<T2の場合はステップS23に進み、T2≦T0の場合はステップS24に進む。ステップS22では車体の動作モード(初期値は通常動作モード)を代替動作モード(後述)に切り替え、ステップS20に戻る。ステップS23ではその時点の動作モードを維持してステップS21に戻る。ステップS24では動作モードを通常動作モード(後述)に切り替えてステップS20に戻る。
【0035】
次に図4、5を用いて、通常動作モードと代替動作モードにおける、油圧ポンプ23の吐出流量と電磁比例弁43のコントローラ44による制御について説明する。
【0036】
図4において、まず、パイロット圧センサSE3によって検出したアームクラウド操作パイロット圧(アームクラウド操作量)からテーブルT1を用いてポンプ23の流量基準値Q1を決める。また、エンジン回転数がラグダウンしないように設定されたポンプ出力基準値とアームクラウド操作量からアームクラウドパワー要求値POW1を演算し、これをポンプ吐出圧センサSE2から検出したポンプ吐出圧で割ることで、馬力によるポンプ流量制限値Qlimを演算する。流量基準値Q1と馬力によるポンプ流量制限値Qlimの最小値をポンプ流量要求値Q2とする。
【0037】
また、アームクラウド操作パイロット圧(アームクラウド操作量)と圧力センサSE5で検出したアームボトム圧(アームシリンダ負荷)から、テーブルT2を用いてメータアウト絞り41jの開口面積値(以下、メータアウト開口制限値と称することがある)を演算する。テーブルT2はアームクラウド操作パイロット圧が大きいほど(アーム速度が大きいほど)メータアウト開口制限値を大きくするような特性とする。また、テーブルT2中の矢印はアームボトム圧の大きさを示し、テーブルT2はアームボトム圧が小さいほど(アームシリンダ34に息継ぎが発生する可能性が大きいとき)、メータアウト開口制限値を小さくするような特性とする。アームボトム圧が最も高いレベルにあるときのグラフは制御弁41のメータアウト開口特性A0(後述の図6参照)と一致する。
【0038】
スイッチSW1の切り換え位置は、図3のフローチャートで決定された動作モードに応じて択一的に切り換えられる。通常動作モードでは、スイッチSW1は位置Ps1に切り換えられ、テーブルT2を用いて計算した開口面積値を図5のテーブルT4に出力する。一方、代替動作モードでは、スイッチSW1は位置Ps2に切り換えられ、アームボトム圧は考慮せずに、制御弁41がメータアウト開口特性A0をとるときの最大値Amax(後述の図6参照)を図5のテーブルT4に出力する。
【0039】
図5ではメータアウト開口制限値を基に電磁比例弁43への制御信号(電磁比例弁電流指示値)を決定する演算方法を説明する。まず、T2のメータアウト開口制限値からテーブルT4を用いて電磁比例弁2次圧目標値(パイロット圧)を演算する。ここでテーブルT4は受圧部41fの圧力に対するメータアウト絞り41jの開口特性の縦軸と横軸を入れ替えたものである。T4にAmaxが入力された場合(代替動作モードでSW1がPs2にあるとき)には、電磁比例弁2次圧目標値は最大値をとる。
【0040】
次にテーブルT5を用いて、T4の電磁比例弁2次圧目標値から電磁弁電流指示値を演算する。ここでテーブルT5は電磁比例弁43の電流‐2次圧特性(I−P特性)の縦軸と横軸を入れ替えたものである。電磁比例弁2次圧目標値が最大値の場合(代替動作モードでSW1がPs2にあるとき)には電流値はゼロになるので、制御弁41は操作パイロット圧発生部42bで発生したパイロット圧で駆動される。なお、ここでは代替動作モード選択時にテーブルT5で算出される電流指示値はゼロとしたが、電磁比例弁43がノーマル位置に保持される電流値の範囲内であればゼロを越える値でも構わない。
【0041】
以上テーブルT4、T5を用いた演算により、コントローラ44はT5の電磁弁電流指示値を電磁比例弁43に出力し、メータアウト絞り41jの開口面積が目標値となるように電磁比例弁43を制御する。
【0042】
次に、図4に戻り、ポンプ流量補正値ΔQの演算方法を説明する。アームクラウド操作パイロット圧とアームボトム圧から、テーブルT3を用いてポンプ流量補正値を計算する。テーブルT3は操作パイロット圧が大きいほどポンプ流量補正値ΔQが増加する特性とする。そして、テーブルT3中の矢印はアームボトム圧の大きさを示し、テーブルT3はボトム圧(アクチュエータ負荷)が小さい(アームシリンダに息継ぎが発生する可能性が大きいとき)ほど、ポンプ流量補正値ΔQを増加する特性とする。また、ボトム圧が大きい場合(アームシリンダに息継ぎが発生する可能性が少ないとき)はボトム圧が小さい場合に比べてポンプ流量補正値ΔQが減少する特性とする。テーブルT3で算出されたポンプ流量補正値ΔQはスイッチSW2に出力される。
【0043】
スイッチSW2の切り換え位置は、図3のフローチャートで決定された動作モードに応じて択一的に切り換えられる。通常動作モードでは、スイッチSW2は位置Ps1に切り換えられ、ポンプ流量補正値ΔQとしてゼロを出力する。一方、代替動作モードでは、スイッチSW2は位置Ps2に切り換えられ、ポンプ流量補正値ΔQとしてテーブルT3で算出された値を出力する。
【0044】
スイッチSW2から出力されたポンプ流量補正値ΔQは、ポンプ流量要求値Q2に加算され、最終的なポンプ流量目標値Q3が決定する。ポンプ流量目標値Q3を基にポンプレギュレータ23aへの電流指示値が生成される。コントローラ44は、その電流指示値をポンプレギュレータ23aに出力し、油圧ポンプ23の吐出流量が目標値(Q2、又はQ2+ΔQ)となるようにポンプレギュレータ23aを制御する。これにより代替動作モードの選択時にはゼロより大きいポンプ流量補正値ΔQがQ2加算されるので、常にQ2が維持される通常動作モードの選択時よりも油圧ポンプ23の吐出流量が増加され、メータイン側の流量不足が緩和/解消される。
【0045】
次に図6を用いてテーブルT2の役割を説明する。図6はテーブルT2の模式図である。テーブルT2はアームボトム圧のレベルが最もが高いとき、すなわちアームシリンダに息継ぎ現象が生じにくいときには、メータアウト開口制限値は制御弁41のメータアウト開口特性(図中A0)を取る。この時、アームクラウド操作パイロット圧と電磁弁2次圧が一致するため、パイロット圧の減圧を行わない。アームボトム圧が低く息継ぎ現象発生の可能性がある場合は、図中A1のように、A0から一定程度開口を減じた特性をメータアウト開口制限値とする。この時、メータアウト絞り41jが絞られるため、アームシリンダロッド圧が上昇し、シリンダ速度が低下することで息継ぎを防止する。アームボトム圧がさらに低下した場合は、A1からさらに開口を減じた特性をメータアウト開口制限値とする。アームボトム圧に対してどの程度開口を減少させるかは、実験により導出する。
【0046】
次に図7の数式を用いてテーブルT3の導出方法を説明する。今、実験によりテーブルT2が決定されたとすると、息継ぎ現象を防止するのに必要なメータアウト圧pMO(ここではアームシリンダロッド圧に一致)は(1)式のように導かれる。ここでQ(PI)は操作パイロット圧PIに対応したポンプ基準流量、cは流量係数、A1(PI)は図5のA1の特性に対応する。代替動作モードではメータアウト開口を制限しないため、メータアウト絞り開口の特性は制御弁41のメータアウト開口特性A0となる。息継ぎ現象防止のためには、代替運作モードにおいても通常運作モードと同等のメータアウト圧を維持する必要がある。ここで、A1はA0より小さいため、(2)式のように、ポンプ基準流量Qに正の値のポンプ補正流量ΔQを加算すればよい。(1)、(2)式からポンプ補正流量ΔQは(3)式のように一意に決まる。
【0047】
なお、上記の説明では図3のフローチャート、即ち作動油温を基に1つの動作モードが自動的に選択されたが、動作モードの切り換えスイッチ(図示せず)を設け、当該スイッチによりオペレータが所望する動作モードに合わせてスイッチSW1及びスイッチSW2の切り換え位置を変更可能に構成しても良い。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、作動油タンク40内の作動油を汲み上げて吐出する油圧ポンプ23と、油圧ポンプ23から吐出される作動油により駆動されるアームシリンダ34と、アームシリンダ34から排出される作動油が流れるメータアウト流路L4と、メータアウト流路L4に設けられ、絞り41jの開口面積を変更することでメータアウト流路L4の作動油流量を制御する制御弁41と、アームシリンダ34に作用する負荷(アクチュエータ負荷)を検出する圧力センサSE5と、アームシリンダ34を操作する操作装置42と、操作装置42の操作量を検出する圧力センサSE3とを備える油圧ショベルにおいて、センサSE5によるアクチュエータ負荷とセンサSE3による操作量を基に絞り41jの開口面積を制御する通常動作モードと、アクチュエータ負荷は考慮せず、センサSE3による操作量のみを基に絞り41jの開口面積を制御する代替動作モードとを択一的に選択して絞り41jの開口面積を制御するように構成されたコントローラ44を備えた。さらにコントローラ44は、代替動作モードの選択時には、通常動作モードの選択時で同じ操作量のときよりも油圧ポンプ23の吐出流量を増加させるように構成した。
【0049】
このように構成した油圧ショベルによれば、制御弁41の絞り41jの開口面積を制御することでメータアウト流路(L4)の作動油流量をアクチュエータ負荷に応じて制御しない場合(すなわち代替動作モードが選択された場合)には、通常動作モードの選択時よりも油圧ポンプ23の吐出流量が増加してメータイン流路(L3)の作動油流量不足を回避できるので、アームシリンダ(油圧アクチュエータ)34での息継ぎ現象の発生を防止できる。これにより油圧ショベルの操作性の悪化と油圧機器の損傷を防止することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、テーブルT3を備えることにより、コントローラ44が、代替動作モードの選択時に、アクチュエータ負荷が小さいほど油圧ポンプ23の吐出流量を増加し、操作量が大きいほど油圧ポンプ23の吐出流量が増加するように構成されている。
【0051】
このように構成した油圧ショベルによれば、アクチュエータ負荷が小さく息継ぎ現象の発生可能性が高いときほど油圧ポンプ23の吐出流量が増加するので、息継ぎ現象の発生防止の確実性を向上できる。
【0052】
また、本実施の形態では、作動油タンク40内の作動油温を検出する温度センサSE7をさらに備え、コントローラ44が、温度センサSE7が取得した作動油温T0が閾値T1を下回る場合に代替動作モードを選択し、作動油温が閾値T1以上の値(T2)に達した場合に通常動作モードを選択するように構成されている。
【0053】
このように構成した油圧ショベルによれば、外気温等により作動油温が低下し、メータアウト開口制限制御(制御弁41の絞り41jの開口面積を制御することでメータアウト流路(L4)の作動油流量をアクチュエータ負荷に応じて制御すること)が困難になる程度まで作動油の粘度が高くなった場合には、自動的に代替動作モードが選択され、メータアウト開口制限制御の実行が回避されるとともに油圧ポンプ23の吐出流量が増加する。これにより負荷に応じたメータアウト流量制御の実行/不実行が作動油温に応じて自動的に選択されるとともに、メータアウト流量制御が実行されない場合にもアームシリンダ(油圧アクチュエータ)34での息継ぎ現象の発生を防止できるので、油圧ショベルの操作性の悪化と油圧機器の損傷を防止できる。
【0054】
<第2実施形態>
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。図8は本実施の形態の油圧回路と機器の構成図である。本実施形態の油圧回路と機器の構成は、作動油温センサSE7を取り除いた点で第1実施形態の構成と異なるが、他の構成については同じなので説明は省略する。
【0055】
図13は本実施の形態に係る油圧ポンプとメータアウト開口制限演算の制御ブロック線図である。図13中のT2は図4中のテーブルT2を示し、T4,T5は図5中のテーブルT4,T5を示す。図4,5の制御ブロック図と異なる点はスイッチSW1に代えてスイッチSW3を備える点である。スイッチSW3の切り換え位置は、後述する図9のフローチャートで決定された動作モードに応じて択一的に切り換えられる。通常動作モードでは、スイッチSW3は位置Ps1に切り換えられ、テーブルT2,T4,T5を用いて計算した電流指示値を電磁比例弁43に出力する。一方、代替動作モードでは、スイッチSW3は位置Ps2に切り換えられ、コントローラ44と電磁比例弁43の電気的接続を切断する。これにより電磁比例弁43への電流出力が行われず(即ち、電流指示値はゼロ)、電磁比例弁43はノーマル位置で最大開口をとる。その結果、制御弁41は、アクチュエータ負荷に関わらず、操作パイロット圧発生部42bで発生したパイロット圧で駆動される。
【0056】
図9に第1の実施形態における動作モード切替制御のフローチャートを示す。先のフローチャートと同じ処理には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0057】
ステップS1でキースイッチがON位置であることが確認できたら、コントローラ44を起動させて、ステップS30に進む。
【0058】
S30では、コントローラ44は、前回キーOFF時の動作モードが代替動作モードか否かの判定を行う。前回キーOFF時の動作モードはコントローラ44のROM93に記憶されており、コントローラ44はその情報に基づいてS30の判定を行う。S30で代替動作モードと判定された場合には、S34で通常動作モードに切り換えてS2に進む。一方、S30で通常動作モードと判定された場合にはS2に進む。
【0059】
ステップS3ではコントローラ44が図13に示した制御で決まる電磁比例弁電流指示値Iを出力する。ステップS4ではコントローラ44が電磁比例弁43に出力される電流(フィードバック電流値)IFBをコントローラ44内の電流センサで検出しステップS5へ進む。なお、ステップS3で電磁比例弁電流指示値Iの出力要求の有無を検出し、出力有りの場合にステップS4に進み、出力無しの場合にステップS3に戻るように構成しても良い(後述の図14のステップS40参照)。
【0060】
ステップS5では、S4の電磁比例弁フィードバック電流値IFBがフィードバック電流上限閾値Ith1(例えば900mA)を上回るか、またはフィードバック電流下限閾値Ith2(例えば50mA)を下回るかを判断する。ここで、Ith1は電磁比例弁最大電流IMAXより大きい値であり、電磁比例弁43のソレノイドまたはワイヤハーネスが短絡しているかどうかを判断可能な電流値とする。また、Ith2は電磁比例弁最小電流IMINより小さいゼロ以上の値であり、電磁比例弁43のソレノイドまたはワイヤハーネスが断線しているかどうかを判断可能な電流値とする。すなわち、ステップS5では電磁比例弁43の短絡・断線に伴う故障を判定する。ステップS5で電磁比例弁フィードバック電流値IFBが、フィードバック電流上限閾値Ith1を上回るか、またはフィードバック電流下限閾値Ith2を下回る場合(すなわち短絡・断線のおそれがある場合)はステップS6に進む。
【0061】
ステップS6ではタイマTa(初期値はゼロ)にコントローラ44の演算周期(例えば0.01sec)を加算し、ステップS8に進む。
【0062】
一方、S5で電磁比例弁フィードバック電流値IFBが、フィードバック電流上限閾値Ith1以下の場合と、フィードバック電流下限閾値Ith2以上の場合には、ステップS7に進む。ステップS7ではタイマTaをゼロにしてステップS8に進む。
【0063】
ステップS8ではタイマTaとタイマ閾値Tth(例えば5sec)とを比較し、タイマTaがタイマ閾値Tth以下のときはステップS9、タイマTaがタイマ閾値Tthより大きいときは、電磁比例弁43(メータアウト制御弁制御装置)に異常が発生したと判断して、ステップS10にすすむ。
【0064】
ステップS9では車体の動作モードを通常動作モードにし、キースイッチがOFF位置にあるか否かを判定する(S36)。S36で、キーOFFの場合にはエンジン22及びコントローラ44を停止して処理を終了し、キーONの場合にはステップS3に戻る。
【0065】
ステップS10ではコントローラ44は車体の動作モードを代替動作モードに切り替え、スイッチSW3が位置Ps2に切り換えられる。その結果、ステップS11で電磁比例弁電流指示値Iがゼロに設定され(即ち、制御弁41は操作パイロット圧発生部42bで発生したパイロット圧で駆動される)、処理を終了する。これにより代替動作モードに切り替わった場合には次回キーOFF、キーONが行われない限り、通常動作モードに切り替わらないことになる。
【0066】
なお、上記では前回キーOFF時の動作モードを記憶しておき、それをS30で確認する場合について説明したが、動作モードの記憶とS30,34を省略し、図9のフローの開始時の動作モードは常に通常動作モードとする構成を採用しても良い。
【0067】
ところで、電磁比例弁43に不具合や故障が発生すると、電磁比例弁43で適切な2次圧を出力することが難しくなるので、アクチュエータ負荷に応じた適切なメータアウト流量制御が不可能となる。
【0068】
そこで上記のように構成した本実施の形態では、コントローラ44から入力される電磁比例弁電流指示値I(制御信号)を基に駆動され、制御弁41の絞り41jの開口面積を制御するメータアウト制御弁制御装置として機能する電磁比例弁43の異常をコントローラ44が検知した場合には、電磁比例弁43への電流出力を中止し、動作モードとして代替動作モードを選択するように油圧ショベルを構成した。
【0069】
このように油圧ショベルを構成すると、電磁比例弁43の故障でメータアウト流量制御ができない場合には自動的に代替動作モードに切り換えられ、ポンプ流量が増加するので息継ぎ現象を防止することができる。
【0070】
なお、上記では、電磁比例弁43及びその周辺設備の故障により電磁比例弁43に誤った電流が出力されることを防止するために代替動作モードではSW3により電磁比例弁43とコントローラ44の接続を遮断したが、図13の電磁比例弁43の制御に代えて第1実施形態と同様に図4,5を基に行っても良い。
【0071】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態では、メータアウト開口制限演算に用いるセンサが故障した場合にも息継ぎ現象を防止する。以下、メータアウト開口制限演算に用いるセンサとしてアームシリンダボトム圧センサSE5を例に説明する。本発明の油圧回路と機器の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0072】
図11に本実施の形態での通常動作モードと代替動作モードにおける、油圧ポンプ23の吐出流量と電磁比例弁43の制御方法を示す。油圧ポンプ23の吐出流量と電磁比例弁43の制御方法は第1の実施の形態とほぼ同じであるが、アームボトム圧を用いず、操作パイロット圧のみからポンプ補正流量ΔQを演算する(テーブルT3a)ことのみ異なる。この例のテーブルT3aでは、図4のテーブルT3でアームボトム圧が最小のときの特性を利用している。
【0073】
図10に本実施の形態における動作モード切替制御のフローチャートを示す。ステップS1、S2は第1の実施の形態と同じである。次にステップS12でアームボトム圧センサSE5の出力電圧V0を検出し、ステップS13に進む。ステップS13ではシリンダ圧センサ電圧V0がシリンダ圧センサ電圧最小値VMINを下回るか、あるいはシリンダ圧センサ電圧最大値VMAXを上回るかを判断する。シリンダ圧センサ最小値VMINはシリンダ圧センサが短絡したとき場合を検出できる値にする。また、シリンダ圧センサ最大値VMAXはシリンダ圧センサが断線した場合を検出できる値にする。シリンダ圧センサ電圧V0がシリンダ圧センサ電圧最小値VMINを下回るか、あるいはシリンダ圧センサ電圧最大値VMAXを上回る場合はステップS14に進み、そうでない場合ステップS15に進む。
【0074】
ステップS14ではタイマTa(初期値はゼロ)にコントローラ44の演算周期を加算し、ステップS16に進む。
【0075】
ステップS15ではタイマTaをゼロにしてステップS16に進む。
【0076】
ステップS16ではタイマTaとタイマ閾値Tth(例えば5sec)とを比較し、タイマTaがタイマ閾値Tth以下のときはステップS17に、タイマTaがタイマ閾値Tthより大きいときはステップS18にすすむ。
【0077】
ステップS17では車体の動作モードを通常動作モードにし(初期状態は正常モード)、ステップS36に進む。
【0078】
一方、ステップS18では車体の動作モードを代替動作モードに切り替えステップS19に進む。ステップS19では電磁弁43の電流指示値を最小値(電磁弁43がノーマル位置に保持される電流値であり、例えばゼロが選択可能)にして処理を終了する。
【0079】
ところで、シリンダ圧センサSE5など制御弁41の動作を制御するのに用いるセンサが故障した場合は、息継ぎ現象を防止するために必要なメータアウト絞り開口を適切に調整することが難しい。よって、この場合には、少なくとも従来の方法でメータアウト流量制御を行うべきではない。
【0080】
そこで、本実施の形態では、コントローラ44が、センサSE5の異常を検知した場合には、代替動作モードを選択するように油圧ショベルを構成した。
【0081】
このように油圧ショベルを構成すると、メータアウト流量制御に用いるセンサが故障し、制御弁41を従来の方法で制御できない場合においても、ポンプ流量を増加させることで、息継ぎ現象を防止することができる。
【0082】
特に図11のテーブルT3aでは、図4のテーブルT3でアームボトム圧が最小のときの特性(すなわち最も息継ぎが発生する可能性が大きい場合の特性)を利用している。このようにポンプ補正流量ΔQを演算すると、ボトム圧センサSE5に異常が生じた場合にもメータイン側の作動油が最大限に確保されるので息継ぎ現象の発生を防止できる。
【0083】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。第4の実施の形態では、メータアウト制御弁制御装置の異常が回復し、代替動作モードから通常動作モードへの変更を許可する許可信号が入力されたとき、代替動作モードから通常動作モードに切り換えている。
【0084】
図14は本発明の第4の実施の形態に係る動作モード切替制御のフローチャートである。その他の構成は第2の実施形態と同じであり、既述の構成の説明は省略する。
【0085】
ステップS8でタイマTaとタイマ閾値Tth(例えば5sec)とを比較し、タイマTaがタイマ閾値Tth以下のときはステップS42にすすむ。
【0086】
ステップ42では、コントローラ44は、現在の動作モードが通常動作モードであるか否かを判定する。通常動作モードの場合はステップS9に進み、代替動作モードの場合はステップS44に進む。
【0087】
ステップS44では、電磁比例弁43の故障が回復したか否かを判定するためのフラグ(正常フラグと称する)を1に設定し、ステップS36に進む。正常フラグが0のときは電磁比例弁43に異常が発生していることを示し、正常フラグが1のときは電磁比例弁43の異常が回復したことを示す。
【0088】
ステップS36でキースイッチがOFF位置にあると判定され、フロント作業装置30の非操作が担保された場合には、ステップS48で正常フラグが1かどうかを判定する。正常フラグが1のときは、動作モードを代替動作モードから通常動作モードに変更して処理を終了する。正常フラグが0のときは通常動作モードのまま処理を終了する。ステップS36において、キースイッチがOFF位置にあるか否かは、キースイッチをOFF位置に切り換えた場合にコントローラ44に入力される信号(「許可信号」と称する)を基に判定する。許可信号は、代替動作モードから通常動作モードへの変更を許可する信号である。
【0089】
ところで、電磁比例弁43の異常が回復したことのみをトリガーにして動作モードを代替動作モードから通常動作モードへ復帰させると、フロント作業装置30の操作中に動作モードが変更され、オペレータの操作フィーリングを損ねる可能性がある。
【0090】
しかし、上記のように構成した油圧ショベルでは、電磁比例弁43に発生した異常が回復したことと、キースイッチがOFF位置に切り換えられフロント作業装置30の非操作が保証されていることをトリガーにして動作モードを通常動作モードに復帰することとした。そのため、フロント作業装置30の操作中に動作モードが変更されることが回避され、オペレータの操作フィーリングを良好に維持できる。さらに、電磁比例弁43の異常が回復した場合には速やかに通常動作モードに復帰することが可能となる。
【0091】
なお、上記では、キースイッチをOFF位置に切り換え場合に許可信号がコントローラ44に出力されると説明したが、フロント作業装置30の非操作が保証されている状況であれば、その他の場合に許可信号を出力しても良い。例えば、キースイッチをON位置又はスタート位置に切り換えた場合、パイロット弁42から制御弁41へのパイロット圧の出力の有無を制御するゲートロックレバー(図示せず)を立てた場合(パイロット圧の遮断位置に切り換えた場合)、エンジン22のオートアイドル制御が開始された場合、所定時間操作レバー42aの操作がなかった場合等に許可信号を出力できる。さらに、許可信号出力用の専用スイッチを運転室内に設置し、オペレータの所望のタイミングで許可信号を出力しても良い。この場合、本実施形態の制御は第1の実施形態にも適用可能となる。
【0092】
本実施形態は、第3の実施形態に係るセンサ(例えばセンサSE5)の異常が回復した場合にも適用可能である。
【0093】
<付記>
上記では、アームシリンダ34のボトム圧を検出する圧力センサSE5をアームシリンダ34の負荷検出器として利用したが、圧力センサSE5に加えて圧力センサSE6を負荷検出器として利用しても良い。この場合圧力センサSE5とSE6の差圧からアームシリンダ34の負荷を検出できる。また、圧力センサSE5に代えて、ポンプ吐出圧を検出する圧力センサSE2を負荷検出器として利用しても良い。
【0094】
第1実施形態では、閾値T1近辺で作動油温が短期間で頻繁に変動して動作モードも頻繁に変更されることを防止する観点から、作動油温T0が閾値T1を下回る場合に代替動作モードを選択し、作動油音T0が閾値T0以上の値(T2)以上に達した場合に通常動作モードを選択するように構成したが。つまり、T1及びT2の2つの閾値を使用したが、作動油温変化が単調に増加または減少する傾向がある環境での使用等であれば、1つの閾値のみを使用しても良い。また、メータアウト開口制限制御が困難になる温度範囲の最高値をT1とする例を挙げたが、これに限らず作動油粘度に応じて所望の値をT1として設定できる。
【0095】
上記の各実施形態のフローチャートでは、キースイッチがスタート位置に切り換えられたタイミング(S1,S2)を実質的な処理の開始タイミングとしているが、S1,S2を省略してコントローラ起動後かつエンジン始動後の適宜のタイミングで処理を開始しても良い。また、各フローチャートの処理の順番は得られる結果が同じであれば適宜変更しても構わない。
【0096】
上記の説明では、メータアウト流路(アクチュエータライン)L4の流量制御を制御弁41内の絞り41jによって行ったが、メータアウト流量の制御システムはこれだけに限られず種々の変更が可能である。例えば、アクチュエータラインL4に他の流路を接続して当該他の流路に備えた可変絞りの開口面積を制御しても良い。また、当該可変絞りと絞り41jの開口面積の合計値でメータアウト流量を制御しても良い。
【符号の説明】
【0097】
10…走行体、11…クローラ、12…クローラフレーム、13…走行用油圧モータ、20…旋回体、21…旋回フレーム、22…エンジン、23…油圧ポンプ、23a…ポンプレギュレータ、24…コントロールバルブユニット、25…旋回油圧モータ、30…フロント作業装置、31…ブーム、32…ブームシリンダ、33…アーム、34…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、35…バケット。36…バケットシリンダ、40…作動油タンク、41…制御弁(メータアウト制御弁)、42…パイロット弁(操作装置)、43…電磁比例弁、44…コントローラ(制御装置)、SE1…エンジン回転数ピックアップセンサセンサ、SE2…ポンプ吐出圧センサ、SE3…操作パイロット圧センサ(アームクラウド操作)、SE4…操作パイロット圧センサ(アームダンプ操作)、SE5…アームボトム圧センサ、SE6…アームロッド圧センサ、SE7…作動油温センサ、SW1…スイッチ、SW2…スイッチ、SW3…スイッチ、L1…吐出ライン、L2…センタバイパスライン、L3…アクチュエータライン(アームボトム側)、L4…アクチュエータライン(アームロッド側・メータアウト流路)、L5…パイロットライン(アームクラウド)、L6…パイロットライン(アームダンプ)
L7…ドレン油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14