特許第6467570号(P6467570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6467570
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】ガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20190204BHJP
   F24C 15/16 20060101ALI20190204BHJP
   F24C 3/00 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   A47J37/06 366
   F24C15/16 X
   !F24C3/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-243497(P2014-243497)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-104108(P2016-104108A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年7月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年12月19日付で提出された「新規性の喪失の例外証明書提出書」に記載の展示会における公開、刊行物への掲載による公開、販売による公開及びウェブサイトへの掲載による公開の事実について、これら全てを発明の新規性喪失の理由とみなさなかった。なお、適用の対象とした公開の事実が多数のため、当該欄には適用の対象とした公開の事実の一部を以下(1)〜(4)に摘記する。(適用の対象とした公開の事実の全部は、上記「新規性の喪失の例外証明書提出書」を参照。) (1)展示会: 第85回 2014 秋・冬 暮らしの彩展(平成26年6月4日から平成26年6月5日まで開催) (2)刊行物への掲載: 長谷製陶株式会社「長谷園2014秋冬新商品カタログ 第3頁」(平成26年6月3日発行); 長谷製陶株式会社「長谷園の土鍋レシピ recipe vol.8 第2頁,第4頁,第5頁,第12頁,第13頁,第20頁,第21頁,第23頁」(平成26年9月1日発行) (3)販売: 伊賀焼窯元 長谷園 ギャラリー; 長谷園 東京店 イガモノ; 長谷製陶株式会社のウェブサイト; 提出物件の一覧に記載された百貨店 (平成26年8月25日販売) (4)ウェブサイトへ掲載: ・http://www.igamono.co.jp/(平成26年9月30日掲載); http://www.igamono.co.jp/index.html (平成26年9月30日掲載),ほか
(73)【特許権者】
【識別番号】597149364
【氏名又は名称】長谷製陶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】長谷 祐次
【審査官】 西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3159585(JP,U)
【文献】 特開2005−237464(JP,A)
【文献】 特開2014−200627(JP,A)
【文献】 特開平11−164776(JP,A)
【文献】 特開2004−361021(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0116210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
37/06
F24C 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する有底の容器本体と、該容器本体に組み付けられて該容器本体の開口部を覆蓋する蓋体を備えるガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器において、
前記容器本体の底壁の外面には、前記外面から下方に突出して前記外面を上方に支持する複数の支持脚部が相互に離隔位置して設けられており、
前記蓋体の全体が、フラットな平板形状を有していると共に、該蓋体の表面に複数の溝が設けられている
ことを特徴とするガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器。
【請求項2】
少なくとも前記容器本体の内面と前記蓋体の前記容器本体の前記開口部を覆う覆蓋面に対して、加熱により遠赤外線を発生する釉薬が施されている請求項1に記載のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器。
【請求項3】
前記容器本体の側壁が、前記底壁から前記開口部に向かって次第に外周側に広がって傾斜している請求項1又は2に記載のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器。
【請求項4】
前記容器本体の前記底壁の内面には、複数の凸条部と、隣接する前記凸条部の間に設けられて該凸条部の頂点よりも低く前記底壁の前記内面よりも高く位置された底部を有する複数の凹条部が突設されており、
前記凹条部の長さ方向両端部が前記底壁の前記内面に開口していると共に、前記凹条部の前記長さ方向中央部分から前記両端部に向かって、前記底部の高さ位置が次第に低くなっている請求項1〜3の何れか1項に記載のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロのグリル庫内に収容してオーブン料理等を行うために用いられるガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚等の食材を、庫内に設けられたガスバーナの熱源により焼成して調理するグリル庫を備えたガスコンロが広く用いられており、近年では、調理の途中でグリル庫を開けて食材を表裏反転させないで済むように、庫内の天面に設けた上火ガスバーナのみならず側面下部にも下火ガスバーナを備えたものが普及しつつある。このような天面と側面にガスバーナを備えたグリル庫では、蓋つきの調理器に食材を収容しパンやケーキを焼いたり、煮込み料理を行う、所謂オーブン料理をすることが可能となり、グリル庫専用の蓋つき容器をガスオーブンと共に販売することも進められている。例えば、特開2014−214968号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。
【0003】
ところで、このようなガスコンロのグリル庫では、庫内の最下面に食材から出る油や吹きこぼれ汁等を収容支持する皿状のトレーが配置されている。さらに、トレーの上部に、食材を載せる網や容器を支持するための専用の支持枠体を載置して、下火ガスバーナに対して適当な位置に食材や調理器が位置されるように調節して、様々なグリル料理ができるようになっている。
【0004】
ところが、このような専用の支持枠体を種々準備しなければならないことは、部品点数の増加に繋がり、それらの収容場所の確保も煩雑であった。また、専用の支持枠体に適合する専用の調理器しか庫内に収容することができず、ガスコンロのメーカーが異なる場合、調理器をそのまま使用することができず、著しく汎用性に劣るという問題も有していた。加えて、ガスコンロに付属の調理器は鋳物製が多く、重く取扱い性が悪いという問題も内在していた。
【0005】
【特許文献1】特開2014−214968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、比較的軽量で取扱いに優れており、専用の支持枠体を用いることなくグリル庫で用いることができる汎用性の高い、新規な構造のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、食品を収容する有底の容器本体と、該容器本体に組み付けられて該容器本体の開口部を覆蓋する蓋体を備えるガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器において、前記容器本体の底壁の外面には、前記外面から下方に突出して前記外面を上方に支持する複数の支持脚部が相互に離隔位置して設けられており、前記蓋体の全体が、フラットな平板形状を有していると共に、該蓋体の表面に複数の溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本態様によれば、容器本体の底壁の外面には、かかる外面から下方に突出して外面を上方に支持する複数の支持脚部が相互に離隔位置して設けられている。それ故、専用の支持枠体を用いることなくそのまま容器本体をグリル庫のトレー上に載置しても、容器本体の底面をトレーより上方に支持して、グリル庫の側面下部に設けられた下火ガスバーナに近づけることができる。
【0010】
しかも、複数の支持脚部が相互に離隔位置して設けられていることから、それらの間を通ってトレーと容器本体の底面の間に下火ガスバーナや庫内の熱を流通させることができる。それ故、調理器の周囲全体に庫内の熱対流を及ぼすことができ、容器内をむらなく加熱することができて、支持枠体を用いた場合と同様の効果を得ることができる。さらに、グリル庫用の調理器が陶磁器製とされていることから、従来の鋳物製のものに比して軽量で取扱性にも優れている。また、蓋体が、全体としてフラットな平板形状を有していることから、庫内の天面に設けた上火ガスバーナの熱を、調理器の内部に収容された食材により均一に及ぼすことができる。それ故、容器本体の収容位置により熱むら等が生じることを有利に防ぎ得る。さらに、蓋体が平板形状であることから、鍋敷や器として用いることも可能となる。
【0011】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様に従うガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器であって、少なくとも前記容器本体の内面と前記蓋体の前記容器本体の前記開口部を覆う覆蓋面に対して、加熱により遠赤外線を発生する釉薬が施されているものである。
【0012】
本態様によれば、少なくとも容器本体の内面と蓋体の容器本体の開口部を覆う覆蓋面に対して、加熱により遠赤外線を発生する釉薬が施されていることから、煮汁を用いずに容器本体に収容した食材の表面を水分を飛ばしてさっくりと仕上げることができる。しかも、容器本体と蓋体が陶磁器製であることから、従来の鋳物製に比して輻射が多くかかる陶磁器の輻射熱や遠赤外線を用いて食材の内部まで十分に加熱してふっくらジューシーに調理することができる。従って、本態様のグリル庫用陶磁器製調理器に揚げ物用の食材を収容するだけで、油を用いることなくノンフライで揚げ物を美味しく調理することも可能となる。
【0013】
本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様に記載のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器であって、前記容器本体の側壁が、前記底壁から前記開口部に向かって次第に外周側に広がって傾斜しているものである。
【0014】
本態様によれば、容器本体の側壁が、底壁から開口部に向かって次第に外周側に広がって傾斜しているものであるから、庫内の側面下部に設けられた下火ガスバーナや庫内の熱を底壁とトレーの間に有利に導くことができ、庫内の熱対流を一層有利に促すことができて、容器全体のむらの無い加熱がさらに有利に実現される。
【0015】
本発明の第四の態様は、上記第一〜第三の態様の何れか1つに記載のガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器であって、前記容器本体の前記底壁の内面には、複数の凸条部と、隣接する前記凸条部の間に設けられて該凸条部の頂点よりも低く前記底壁の前記内面よりも高く位置された底部を有する複数の凹条部が突設されており、前記凹条部の長さ方向両端部が前記底壁の前記内面に開口していると共に、前記凹条部の前記長さ方向中央部分から前記両端部に向かって、前記底部の高さ位置が次第に低くなっているものである。
【0016】
本態様によれば、容器本体の内部に食材のみ収容して調理を行う場合に、食材から排出される油等を凹条部に収容して、凹条部の中央から両端部に向かう傾斜により油等を内面に排出することができる。これにより、内面よりも高い位置に設けられた凸条部の頂点に支持された食材が余分な油等に接触することが避けられて、食材を美味しい状態に保持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容器本体の底壁の外面に複数の支持脚部を相互に離隔位置して設けて底壁を上方に支持するようにしている。それ故、専用の支持枠体を用いることなくそのまま容器本体をグリル庫のトレー上に載置しても、容器本体の底面をトレーより上方に支持して、グリル庫の側面下部に設けられた下火ガスバーナに近づけることができる。さらに、複数の支持脚部の間を通ってトレーと容器本体の底面の間に下火ガスバーナや庫内の熱を流通させることができ、従来の支持枠体を用いた場合と同様に、調理器の周囲全体に庫内の熱対流を及ぼすことができる。また、陶磁器製故、従来の鋳物製のものに比して軽量で取扱性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一の実施形態としてのガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器を示す斜視図。
図2図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の平面図。
図3図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の底面図。
図4図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の正面図。
図5図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の側面図。
図6図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の蓋体の底面図。
図7図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の蓋体の正面図。
図8図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の蓋体の側面図。
図9図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の容器本体の平面図。
図10図9のX−X断面の要部部分拡大図。
図11図9のXI−XI断面の要部部分拡大図。
図12図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器の容器本体の斜視図。
図13図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器を使用するグリル庫を備えたガスコンロ全体構成を示す斜視図。
図14図1に示したグリル庫用陶磁器製調理器を収容した状態の図13に示すグリル庫の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1図12には、本発明の一実施形態であるガスコンロのグリル庫用陶磁器製調理器10が示されている。このグリル庫用陶磁器製調理器10は、調理対象物としての食品が収容される有底の容器本体12と、容器本体12に組み付けられて、容器本体12の開口部14を閉塞する蓋体16を備えている。なお、以下の説明において、上下方向とは、使用状態下において鉛直上下方向となる、図4図5中の上下を言うものとする。
【0023】
より詳細には、容器本体12と蓋体16は陶磁器製であり、特に、本実施形態では、泥状の陶土を型に流し込んで1100℃〜1250℃で焼成して成形した半磁によって構成されていることから、耐熱性に優れている。また、泥状の陶土を型に流し込んで焼成することで、厚さ寸法を薄くして均一な厚みの容器本体12と蓋体16を有利に形成することができる。
【0024】
容器本体12は、平面視で略オーバル形状の底壁18と、かかる底壁18の周囲を囲んで略上方に立ち上がる側壁20を有している。図4図5および図12から明らかなように、側壁20は底壁18から開口部14に向かって次第に外周側に広がって傾斜している。そして、側壁20の上端面には、後述する蓋体16の係止突起42の突出端面が載置される平面視楕円環状の内方載置面22と、かかる内方載置面22の外周側に位置して且つ内方載置面22よりも上方に突出し、後述する蓋体16の外周縁部44が載置される平面視楕円環状の外方載置面24が段差形状で設けられている。さらに、側壁20の上方側外周面には、底壁18の長軸方向で対向する位置(図9中、左右方向)において、平面視略矩形状で外方に突出する一対の本体側把持部26,26が突設されており、容器本体12の把持が容易に為されるようになっている。
【0025】
さらに、図3〜5に示すように、容器本体12の底壁18には、底壁18の外面28から下方に突出する略半球状の複数の支持脚部30(本実施形態では7つ)が、外面28の外周縁部の周方向で相互に離隔した部位と略中央の部位に、相互に離隔位置して突設されている。これら複数の支持脚部30により、容器本体12の底壁18の外面28が上方に支持されるようになっており、容器本体12の載置面(例えば後述するグリル庫52のトレー62)と底壁18の外面28の間に空間が保持されるようになっている。
【0026】
容器本体12の底壁18の内面32には、複数の凸条部34と、複数の凹条部36が底壁18の短軸方向に延出すると共に長軸方向に交互に並列配置されており、隣接する凸条部34の間に凹条部36が配設されている。図10乃至図12から明らかなように、凸条部34が最も底壁18の内面32から上方に突出しており、凹条部36の底部38は、凸条部34の頂点よりも低く底壁18の内面32よりも高く位置されている。凹条部36の長さ方向両端部は、底壁18の内面32に向かって開口していると共に、凹条部36の底部38の高さ位置が、凹条部36の長さ方向の中央部分から両端側に向かって次第に低くなるようにされている(図11参照)。なお、凸条部34や凹条部36が設けられていない最も高さ位置が低くされた内面32は、外周縁部に楕円環状に残されている。
【0027】
これにより、容器本体12の内部に食材のみを収容して調理を行う場合等に、食材から排出される油等を凹条部36に収容して、凹条部36の中央から両端部に向かう傾斜により油等を最も低くされた底壁18の内面32に排出して収容することができる。要するに、内面32よりも高い位置に設けられた凸条部34の頂点に支持された食材が余分な油等に接触することが避けられて、食材を美味しい状態に保持することができる。
【0028】
一方、蓋体16は、容器本体12の開口部14を覆蓋し得るように、平面視において容器本体12全体の外形形状と略同じ外形形状を有する略オーバル形状とされており、全体としてフラットな平板形状を有している。図2に示すように、蓋体16の表面には、長軸方向に延びる複数の浅い凹溝39が並列状態で設けられている。一方、図6に示すように、蓋体16の裏面側には、中央部分に本体の開口部14を覆う覆蓋面40が設けられている。覆蓋面40の外周縁部には、覆蓋面40を囲うように略楕円環状の係止突起42が突設されている。係止突起42の外周側には覆蓋面40と同じ高さ位置で広がる外周縁部44が幅広の略楕円環状で広がっている。
【0029】
そして、かかる蓋体16が容器本体12に組み付けられる際には、係止突起42が容器本体12の内方載置面22と外方載置面24の間の段差面の内側に沿って嵌め入れられることにより、蓋体16が容器本体12に対して位置決めされる。これにより、蓋体16の覆蓋面40が容器本体12の開口部14を上方から覆蓋する一方、蓋体16の係止突起42の突出端面が容器本体12の内方載置面22に載置されると共に、蓋体16の外周縁部44が容器本体12の外方載置面24に載置されて、容器本体12の開口部14が蓋体16に覆蓋されるようになっている。なお、蓋体16の覆蓋面40の略中央部分には、平面視略円錐台形状の凸部46が設けられており、調理中に蓋体16の覆蓋面40に被着した水滴を集めて容器本体12側に戻すよう機能することができる。なお、凸部46の突出端面は係止突起42の突出端面と略面一とされている。
【0030】
なお、蓋体16にも、長軸方向で対向する位置(図2中、左右方向)において、一対の本体側把持部26,26と対応する位置に同様の形状である平面視略矩形状で外方に突出する一対の蓋体側把持部48,48が突設されている。これにより、蓋体16の把持が容易に為されると共に、図4に示す容器本体12に蓋体16を組み付けた状態においても、本体側把持部26,26と蓋体側把持部48,48を重ね合わせた状態で一緒に把持できて、グリル庫用陶磁器製調理器10全体の把持も容易に為されるようになっている。
【0031】
そして、これら容器本体12の内面を含む表面全体と、蓋体16の覆蓋面40を含む表面全体には、加熱により遠赤外線を発生する釉薬が施されている。かかる釉薬は、加熱により遠赤外線を発生するものであれば何れでもよいが、例えば、チタン系釉薬、錫系釉薬、アンチモン系釉薬等の釉薬が有利に採用され得る。さらに、酸化焼成により焼成することが好ましい。
【0032】
このような構造とされた本実施形態のグリル庫用陶磁器製調理器10は、図13に示すガスコンロ50のグリル庫52の内部に収容してグリル調理に用いることができる。このガスコンロ50は、システムキッチンのカウンタートップ内に埋設して使用するビルトイン式である。ガスコンロ50の天板54には、鍋等を支持する五徳55が3つ設けられており、各五徳55の中央部分にガスバーナ57が組み付けられている。
【0033】
グリル庫52は、ガスコンロ50の内部に設けられており、魚等の食品を加熱調理するグリル料理ができるようになっている。より具体的には、図13図14に示されているように、グリル庫52の内部には、底部に2本のスライドレール56,56が敷設されており、スライドレール56には、スライド枠部58がスライド自在に組み付けられている。スライド枠部58の上部には、図示しない魚焼き用の網等を保持する保持突部60が設けられており、スライド枠部58の下部には、調理される食品から排出される油やグリル鍋等から漏れ出る煮汁等を収容保持するトレー62が組み付けられている。さらに、スライド枠部58の前方側端部(図13中、手前側)には、グリル扉64が固設されており、スライドレール56に沿ってスライド枠部58を前後方向に移動させることにより、グリル庫52の開口窓66がグリル扉64により自在に開閉されるようになっている。
【0034】
図14には、グリル庫用陶磁器製調理器10をトレー62に直接載置してグリル庫52内に収容し、グリル調理を行う様子が概略的に示されている。グリル庫52内の天面68には、上火ガスバーナ70が設けられており、グリル庫52内の両側面72の下部側には、下火ガスバーナ74,74がそれぞれ設けられている。
【0035】
かかる構造のグリル庫52内にグリル庫用陶磁器製調理器10を収容してグリル調理を行う場合、上火ガスバーナ70および下火ガスバーナ74が熱源となり加熱が行われる。ここで、容器本体12の底壁18の外面28には、かかる外面28から下方に突出する複数の支持脚部30が相互に離隔位置して設けられている。それ故、専用の支持枠体を用いることなくそのままグリル庫用陶磁器製調理器10をグリル庫52のトレー62上に載置しても、容器本体12の底壁18をトレー62より上方に支持して、グリル庫52の側面72下部に設けられた下火ガスバーナ74に近づけることができる。さらに、複数の支持脚部30が相互に離隔位置して設けられていることから、それらの間を通ってトレー62と容器本体12の底壁18の間に下火ガスバーナ74やグリル庫52内の熱を流通させることができる。それ故、グリル庫用陶磁器製調理器10の周囲全体にグリル庫52内の熱対流を及ぼすことができ、従来必要とされた支持枠体を用いなくとも、むらのない加熱を有利に実現することができる。従って、専用の支持枠体がなくともあらゆる種類のグリル庫52に対してグリル庫用陶磁器製調理器10を用いることが可能となり、汎用性の高いグリル庫用の調理器を提供することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、容器本体12の側壁20が、底壁18から開口部14に向かって次第に外周側に広がって傾斜しているものであるから、グリル庫52内の側面72の下部に設けられた下火ガスバーナ74やグリル庫52内の熱を底壁18とトレー62の間の空間に有利に導くことができ、グリル庫52内の熱対流を一層有利に促すことができて、むらの無い加熱がさらに有利に実現され得る。
【0037】
加えて、グリル庫用陶磁器製調理器10は陶磁器製とされていることから、従来の鋳物製のものに比して軽量で取扱性にも優れている。
【0038】
また、容器本体12の表面全体と蓋体16の表面全体に対して、加熱により遠赤外線を発生する釉薬が施されていることから、煮汁を用いずに容器本体12に収容した食材の表面を水分を飛ばしてさっくりと仕上げることができる。しかも、容器本体12と蓋体16が陶磁器製であることから、従来の鋳物製に比して輻射が多くかかる陶磁器の輻射熱を用いて食材の内部まで十分に加熱してふっくらジューシーに調理することができる。これにより、グリル庫用陶磁器製調理器10に揚げ物用の食材を収容するだけで、油を用いることなくノンフライで揚げ物を美味しく調理することも可能となる。
【0039】
さらに、蓋体16が、全体としてフラットな平板形状を有していることから、グリル庫52内の天面68に設けた上火ガスバーナ70の熱を、グリル庫用陶磁器製調理器10の内部に収容された食材により均一に及ぼすことができる。それ故、容器本体12の収容位置により熱むら等が生じることを有利に防ぎ得る。なお、蓋体16が平板形状であることから、鍋敷や器として用いることもできる。その際、蓋体16の表面に設けた複数の浅い凹溝39が絶縁層として機能したり、食品のスリップを防止することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上述の実施形態では、加熱により遠赤外線を発生する釉薬は、容器本体12と蓋体16の表面全体に施されていたが、少なくとも容器本体12の内面と蓋体16の覆蓋面40に施されていればよい。
【0041】
また、支持脚部30の突出高さ、配設位置、個数、形状等は例示にものに限定されず任意に選択可能である。例えば、支持脚部30の突出高さをさらに大きくして、より一層下火ガスバーナ74に近づけたり、容器本体12の底壁18とトレー62の間の空間を広く取るようにしてもよい。
【0042】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10:グリル庫用陶磁器製調理器,12:容器本体,14:開口部,16:蓋体,18:底壁,20:側壁,28:外面,30:支持脚部,32:内面,34:凸条部,36:凹条部,38:底部,40:覆蓋面,62:トレー
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