【実施例】
【0020】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0021】
<実施例1>
(1)診断システムの構成
本実施例に係る診断システム1は、
図1に示すように、粒子計数装置3と、この粒子計数装置3にネットワーク4を介して接続されるコンピュータ5と、を備えている。なお、本実施例では、機械システム(例えば、発電機、原動機、航空機、船舶、車両等)の潤滑対象部(例えば、軸受部、ギヤー部、摺動部等)の状態診断を行う診断システム1を例示するとともに、本発明に係る「粒子計数装置」として潤滑対象部で使用される潤滑油中の粒子を計数する粒子計数装置3を例示する。
【0022】
上記粒子計数装置3は、
図2に示すように、潤滑油が流れる測定部8(「セル」とも称される。)と、半導体レーザ等からなる発光体9と、フォトダイオード等からなる遮断光受光体10と、フォトダイオード等からなる第1散乱光受光体11及び第2散乱光受光体12と、後述する粒子計数処理を司る制御部13(
図1参照)と、を備えている。
【0023】
上記測定部8は、透光性を有する管状に形成されている。この測定部8の上流端側及び下流端側のそれぞれには、
図1に示すように、機械システムの潤滑対象部に連なる配管15、16が連絡されている。この配管15には、潤滑油を測定部に圧送するポンプ17が設けられている。なお、上記測定部8には、
図2の紙面と略直交する方向に向かって潤滑油が流れるものとする。
【0024】
上記発光体9は、
図2に示すように、測定部8を流れる潤滑油に光(例えば、レーザ光)を照射する。また、上記遮断光受光体10は、発光体9からの照射光の光軸上で測定部8を介して発光体9と反対側に配設されている。この遮断光受光体10は、潤滑油中の粒子pにより遮断された遮断光を受光して、所定の遮断光パルス信号(すなわち、測定値)に変換する。この遮断光パルス信号のパルス高さは、粒子pの大きさ(例えば、粒径等)に比例した値を示す。さらに、上記第1及び第2散乱光受光体11、12のそれぞれは、発光体9からの照射光の光軸の外周側に配設されている。これら第1及び第2散乱光受光体11、12は、潤滑油中の粒子pにより散乱された散乱光を受光して、所定の散乱光パルス信号(すなわち、測定値)に変換する。
【0025】
上記制御部13には、上記ポンプ17、発光体9、及び各受光体10、11、12等が電気的に接続されている。この制御部13は、
図3に示すように、以下に述べる粒子計数処理を実行する。
【0026】
上記制御部13は、潤滑油に関する情報(例えば、流量等)を取得するとともに、構成部品に関する情報(例えば、発光体の駆動時間等)を把握する(ステップS1)。次に、各受光体10、11、12からの測定値を取得する(ステップS2)。次いで、測定値に基づいて粒子の材質を識別し(ステップS3)、粒子の大きさ及び材質毎に個数をカウントする(ステップS4)。その後、所定の測定時間が経過して測定終了となったか否かが判定される(ステップS5)。その結果、測定終了でない場合(ステップS5でNO判定)には、上述のステップS2〜S5が繰り返される。一方、測定終了である場合(ステップS5でYES判定)には、潤滑油を測定部8に流すことで測定部8を洗浄する洗浄指令を出力する(ステップS6)。
【0027】
ここで、上記粒子の材質識別処理(
図3のステップS3)では、各測定値を多次元グラフ上にプロットすることで粒子の材質を識別する。具体的には、例えば、
図6及び
図7に示すように、遮断光受光体10の測定値をX軸に示し、第1散乱光受光体11の測定値をY軸に示し、第2散乱光受光体12の測定値をZ軸に示すこと等で粒子の材質を識別する。
【0028】
例えば、上記粒子pがガラス(ケイ砂)である場合には、
図6(a)に示すように、散乱光が殆ど無いためX軸の近傍にプロット点が集中する。また、粒子pが水である場合には、
図6(b)に示すように、第1及び第2散乱光受光体11、12に対する散乱光が略均等で比較的小さいためX軸からY軸方向及びZ軸方向に僅かに離間した箇所にプロット点が集中する。また、粒子pが金属粉である場合には、金属粉が異形状であるため乱反射が生じる(
図5(b)参照)。そして、
図7(a)に示すように、第1及び第2散乱光受光体11、12に対する散乱光が異なり、その強度差が比較的大きいためX軸からY軸方向及びZ軸方向のうちの一方の軸方向に大きく離間した箇所にプロット点が集中する。さらに、粒子pが気泡である場合、気泡が略球形であるため第1及び第2散乱光受光体11、12に対する散乱光が略均等となる(
図5(a)参照)。そして、
図7(b)に示すように、XYZ軸の交点を頂点とする円錐領域S内にプロット点が集中する。したがって、粒子の材質に応じて多次元グラフ上の座標領域を予め複数設定しておけば、多次元グラフ上の測定値の座標位置に基づいて粒子の材質を識別することができる。
【0029】
なお、上記制御部13の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。
【0030】
上記コンピュータ5は、
図4に示すように、以下に述べる診断処理を実行する。すなわち、コンピュータ5は、制御部13の測定結果(すなわち、粒子の大きさ及び材質毎の個数情報)に基づいて粒径分布A(
図8(a)参照)を算出する(ステップST1)。次に、算出された粒径分布Aと記憶された過去の粒径分布Aとに基づいて粒径分布比B(
図8(b)参照)等を算出する(ステップST2)。この粒径分布比Bは、注目している所定サイズの粒径(
図8(b)中でAμm及びBμm)の時間経過に伴う変化の比率を示している。
【0031】
なお、本実施例では、所定サイズの粒子の粒径分布比B(
図8(b)参照)を採用したが、これに限定されず、例えば、
図8(c)に示すように、粒径分布全体の時間経過に伴う変化の比率を表す粒径分布比B’を採用してもよい。
【0032】
次に、例えば、粒径分布比B等と予め設定されたしきい値とを比較すること等で異常であるか否かを判定する(ステップST3)。その結果、異常であると判定された場合(ステップST3でYES判定)には、アラーム等により異常を報知する(ステップST4)。一方、異常でないと判定された場合(ステップST3でNO判定)には、診断処理を終了する。
【0033】
(2)診断システムの作用
次に、上記構成の診断システム1の作用について説明する。上記粒子計数装置3では、
図3に示すように、潤滑油情報及び構成部品情報が取得され(ステップS1)、その後、測定が開始されて各受光体からの各測定値が取得される(ステップS2)。
【0034】
次いで、各測定値を多次元グラフ上にプロットすることで粒子の材質が識別され(ステップS3)、粒子の大きさ及び材質毎に個数がカウントされる(ステップS4)。以後、所定の測定時間の間で上記ステップS2〜S4を繰り返して測定が終了されると(ステップS5でYES判定)、潤滑油を流すことで測定部8が洗浄される(ステップS6)。
【0035】
一方、コンピュータ5では、
図4に示すように、粒子の大きさ及び材質毎の総個数に基づいて粒径分布A及び粒径分布比Bが算出される(ステップST1、ST2)。次いで、粒径分布比B等に基づいて異常であると判定された場合(ステップST3でYES判定)、アラーム等で異常報知が行われる(ステップST4)。
【0036】
(3)実施例の効果
本実施例の粒子計数装置3によると、材質識別手段(
図3のステップS3)により遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の材質が識別される。これにより、潤滑油中の粒子の性状を詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
【0037】
また、本実施例では、遮断光及び複数の散乱光の測定値を多次元グラフ上に示すことで粒子の材質を識別する。これにより、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、粒子計数装置2と、粒子計数装置2にネットワーク4を介して接続されるコンピュータ5と、を備えて診断システム1を構成したので、オンラインでの遠隔診断を好適に実施することができる。
【0039】
<実施例2>
次に、本実施例2に係る診断システムの構成について説明する。なお、本実施例2に診断システムにおいて、上記実施例に係る診断システム1と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である粒子計数装置について詳説する。
【0040】
(1)診断システムの構成
本実施例に係る診断システム31は、粒子計数装置33及びコンピュータ5を備えている。この粒子計数装置33は、
図9に示すように、測定部8と、発光体9と、遮断光受光体10と、複数の第1散乱光受光体11a〜11g及び第2散乱光受光体12a〜12gと、制御部13と、を備えている。
【0041】
上記第1及び第2散乱光受光体11a〜11g、12a〜12gのそれぞれは、発光体9からの照射光の光軸に対して略平行な軸線上に並ぶように配設されている。これら第1及び第2散乱光受光体11a〜11g、12a〜12gは、潤滑油中の粒子pにより散乱された散乱光を受光して、所定の散乱光パルス信号(すなわち、測定値)に変換する。
【0042】
上記制御部13は、
図10に示すように、以下に述べる粒子計数処理を実行する。この制御部13は、上記実施例の診断システム1と略同様な各種処理(ステップS1〜S6)を実行することに加えて、粒子の形状識別処理(ステップSS1)及び粒子の摩耗形態識別処理(ステップSS2)を実行する。
【0043】
上記粒子の形状識別処理(
図10のステップSS1)では、
図11に示すように、遮断光受光体10の測定値と、複数の第1散乱光受光体11a〜11gの各測定値より得られる第1散乱パターンP1a〜P4aの強度分布と、複数の第2散乱光受光体12a〜12gの各測定値より得られる第2散乱パターンP1b〜P4bの強度分布と、に基づいて粒子の形状を識別する。なお、上記散乱パターンP1a〜P4a、P1b〜P4bは、横軸に、照射光の光軸方向に対する各散乱光受光体11a〜11g(12a〜12g)の配設位置をとり、縦軸に、各散乱光受光体の散乱光パルス信号のパルス高さの値(すなわち、測定値)をとり、さらに各パルス高さの値を補間してなる線状のパターン(すなわち、複数の散乱光の強度分布)である。
【0044】
例えば、遮断光受光体10の測定値が比較的小さな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP1a、P1bが異なる場合には、薄片状金属粉M1(
図12(a)参照)であると識別される。また、遮断光受光体10の測定値が比較的大きな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP2a、P2bが異なる場合には、カール状金属粉M2(
図12(b)参照)であると識別される。さらに、遮断光受光体10の測定値が比較的小さな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP3a、P3bが略均等である場合には、ボール状金属粉M3(
図12(c)参照)であると識別される。
【0045】
上記粒子の摩耗形態識別処理(
図10のステップSS2)では、粒子の形状識別処理で識別された粒子の形状に応じて摩耗形態を識別する。ここで、上記薄片状金属粉M1は、機械の正常なすべり摩耗により発生する正常摩耗粒子であることが知られている。また、上記カール状金属粉M2は、砂等の混入により金属表面が削られて発生する切削摩耗粒子であることが知られている。さらに、上記ボール状金属粉M3は、軸受疲労により発生する疲労摩耗粒子であることが知られている。したがって、粒子の形状が薄片状金属粉M1である場合には、正常摩耗であると識別される。また、粒子の形状がカール状金属粉M2である場合には、切削摩耗であると識別される。さらに、粒子の形状がボール状金属粉M3である場合には、疲労摩耗であると識別される。
【0046】
なお、本実施例における粒子の材質識別処理(
図10のステップS3)では、上記実施例の診断システム1と略同様にして、遮断光受光体10の測定値、複数の第1散乱光受光体11a〜11gのうちの1つの受光体の測定値、及び複数の第2散乱光受光体12a〜12bのうちの1つの受光体の測定値を多次元グラフ上にプロットすることで粒子の材質を識別する(
図6及び
図7参照)。ただし、第1及び第2散乱光受光体11a〜11g、12a〜12gの個数に応じて複数の多次元グラフを形成したり、特定の多次元グラフ(例えば、4軸以上の多軸グラフやxyz軸に加えて時間軸を備えるグラフ等)を形成したりすれば、粒子の材質を更に正確に識別することができる。さらに、上述のような複数の散乱光の強度分布を用いて粒子の材質を識別するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、複数の散乱光の測定値の強度分布に基づいて粒子の形状を識別する(
図10のステップSS1)ようにしたが、これに限定されず、例えば、遮断光及び複数の散乱光の測定値の測定値を多次元グラフ上に示すことで粒子の形状を識別するようにしてもよい。この場合、例えば、複数の散乱光受光体の個数に応じて複数の多次元グラフを形成したり、特定の多次元グラフ(例えば、4軸以上の多軸グラフやxyz軸に加えて時間軸を備えるグラフ等)を形成したりすることができる。
【0048】
(2)診断システムの作用
次に、上記構成の診断システム31の作用について説明する。診断システム31では、上記実施例の診断システム1と略同様の作用を奏することに加えて、
図10に示すように、遮断光発光体10の測定値と第1及び第2散乱パターンP1a〜P4a、P1b〜P4bとに基づいて粒子の形状が識別される(ステップSS1)。次いで、粒子の形状に基づいて摩耗形態が識別される(ステップSS2)。この摩耗形態は、表示モニタ等の表示手段により表示される。
【0049】
(3)実施例の効果
本実施例の粒子計数装置33によると、上記実施例の粒子計数装置3と略同様の効果を奏することに加えて以下の効果を奏する。すなわち、本実施例では、遮断光及び複数の散乱光の値に基づいて粒子の形状を識別する形状識別手段(
図10のステップSS1)を備える。これにより、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
【0050】
また、本実施例では、複数の散乱光の強度分布を用いることで粒子の形状を識別する。これにより、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
【0051】
さらに、本実施例では、粒子の形状に応じて摩耗形態を識別する摩耗形態識別手段(
図10のステップSS2)を備える。これにより、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
【0052】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、複数の散乱光受光体11a〜11g、12a〜12gを直線上に並設するようにしたが、これに限定されず、複数の散乱光受光体を曲線上に並設するようにしてもよい。また、例えば、
図13に示すように、複数の散乱光受光体11a〜11i、12a〜12iを光の光軸と測定部との交点を中心とする円弧上に並設するようにしてもよい。さらに、例えば、
図14に示すように、複数の散乱光受光体をドーム状に立体的に並設するようにしてもよい。さらに、複数の散乱光受光体を筒状に立体的に並設するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施例では、各測定値を多次元グラフ上にプロットして粒子の材質や形状を識別する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、各測定値と所定の相関関係となるパラメータに基づいて粒子の材質や形状を識別するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施例では、粒子の形状として、薄片状金属粉M1、カール状金属粉M2、ボール状金属粉M3等を識別するようにしたが、これに限定されず、例えば、これらに加えて、平板状金属粉、直線状エッジを有する平板金属粉等を識別するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施例では、粒子の摩耗形態として、正常摩耗、切削摩耗、疲労摩耗等を識別するようにしたが、これに限定されず、例えば、これらに加えて、異常すべり摩耗、腐食摩耗、凝着摩耗、溶融摩耗等を識別するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施例において、測定部8に、機械システムで使用中の潤滑油をリアルタイムで流して測定したり、機械システムで予め採取された潤滑油をバッチ式で流して測定したりしてもよい。
【0057】
また、上記実施例において、粒径分布比Bに基づく状態診断により機械システムに運転停止信号を出力したり、粒径分布比に基づく潤滑対象部の摩耗状態、その発生原因、摩耗対策、その実施時期等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを表示したりしてもよい。
【0058】
また、上記実施例において、遠隔から粒子計数装置3、33の測定開始、停止、潤滑油の逆洗等の操作を実施可能に構成してもよい。
【0059】
また、上記実施例において、構成部品に関する情報(例えば、発光体の駆動時間等)に応じて構成部品の交換期限等を報知するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上記実施例では、粒子計数装置3、33とは別物のコンピュータ5によって診断処理を行うようにしたが、これに限定されず、例えば、粒子計数装置3、33の制御部13により診断処理を行うようにしてもよい。
【0061】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0062】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。